以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物を収容可能なチャンバ10を備えている。チャンバ10は、開閉可能な開閉蓋11を含んでいる。開閉蓋11は、チャンバ10の側部に装着されている。開閉蓋11を開放することにより、チャンバ10内への被滅菌物の搬出入が可能となる。開閉蓋11を閉じることにより、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。
チャンバ10の内底部には、ヒータ12が設置されている。ヒータ12は、チャンバ10の内底部に沿って延びるように配置されている。ヒータ12は、チャンバ10内に供給された水を加熱して、蒸気を発生させる。水は、滅菌処理のためにチャンバ10内に供給される液体の一例である。水は、常水(水道水)、井戸水、蒸留水または精製水であってもよい。液体は、水に限られず、生理食塩水などの水溶液であってもよい。
ヒータ12の上方には、図1には図示しない被滅菌物100を載置可能な載置台13が、チャンバ10の内底部に対して略平行に設けられている。
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
蒸気滅菌器1は、貯水槽20を備えている。貯水槽20は、チャンバ10から排出される水を貯留する。貯水槽20の内部空間には、貯水槽20内の水位を検出するためのレベルセンサ26が設置されている。
チャンバ10と貯水槽20とを連通する経路は、排気経路30と、排水経路40と、連結部50と、共通経路60とによって構成されている。排気経路30、排水経路40、連結部50および共通経路60は、その内部を流れる流体の流れ方向に直交する内断面積が全て等しくなるように、構成されている。排気経路30、排水経路40および共通経路60をそれぞれ構成している円管は、全て等しい内径を有している。
排気経路30は、チャンバ10から排出される気体が流れるための経路である。排気経路30は、チャンバ10に接続された排気入口端31と、排気入口端31と反対側の排気出口端32とを有している。排気入口端31は、排気経路30の一方の端部を構成している。排気出口端32は、排気経路30の他方の端部を構成している。
排気入口端31は、チャンバ10内の水面の最高位よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。排気入口端31は、チャンバ10内に水が供給されたときの水面の位置よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。チャンバ10内の空気、水蒸気またはこれらの混合気は、排気入口端31を通ってチャンバ10外へ排出され、排気入口端31から排気出口端32へ向かって排気経路30内を流れる。
排水経路40は、チャンバ10から排出される水が流れるための経路である。排水経路40は、チャンバ10に接続された排水入口端41と、排水入口端41と反対側の排水出口端42とを有している。排水入口端41は、排水経路40の一方の端部を構成している。排水出口端42は、排水経路40の他方の端部を構成している。
排水入口端41は、チャンバ10の底部10bに接続されている。チャンバ10内に供給された水はチャンバ10内部の底部10b付近に溜まり、排水入口端41はチャンバ10内に水が貯留される位置に接続されている。チャンバ10内の水は、排水入口端41を通ってチャンバ10外へ排出され、排水入口端41から排水出口端42へ向かって排水経路40内を流れる。
連結部50は、排気経路30と排水経路40とを連結している。排気経路30の排気出口端32は、連結部50に連結されている。排水経路40の排水出口端42は、連結部50に連結されている。連結部50は、排気出口端32と排水出口端42とを連通している。
連結部50は、チャンバ10の上面10tよりも上方に配置されている。排気経路30は、排気入口端31から排気出口端32へ向かう経路の間に、鉛直方向の上方へ向けて立ち上がる立上り部を有している。排水経路40は、排水入口端41から排水出口端42へ向かう経路の間に、鉛直方向の上方へ向けて立ち上がる立上り部を有している。排気経路30の排気出口端32と排水経路40の排水出口端42とは、連結部50に連結されているので、チャンバ10の上面10tよりも上方に配置されている。
共通経路60は、チャンバ10から排出され排気経路30を経由して連結部50へ到達した気体と、チャンバ10から排出され排水経路40を経由して連結部50へ到達した水との両方が流れるための経路である。共通経路60は、気体が流れるための経路と水が流れるための経路とを、共通している。共通経路60は、一方端61と、一方端61と反対側の他方端62とを有している。
共通経路60の一方端61は、連結部50に連結されている。一方端61は、連結部50を介して、排気経路30および排水経路40の両方と連通している。
連結部50は、T字状の形状を有している。連結部50は、管状の連通管部51と、管状の枝管部52とを有している。枝管部52は、連通管部51の途中に連結されている。中空の連通管部51の内部空間と、中空の枝管部52の内部空間とは、互いに連通している。連結部50は、ティー継手で構成されている。
連結部50は、ティー継手に限られず、Yコネクタなどの任意の継手によって構成されていてもよい。また代替的には、排気経路30および共通経路60を構成している一本の配管に、排水経路40を構成している配管が直接接合されて、連結部50が形成されてもよい。
連結部50の連通管部51の一端部に、排気経路30の排気出口端32が連結されている。連結部50の連通管部51の他端部に、共通経路60の一方端61が連結されている。連通管部51は、排気経路30の内部空間と共通経路60の内部空間とを、互いに連通している。
連結部50の枝管部52には、排水経路40の排水出口端42が連結されている。排水経路40の内部空間と、枝管部52の内部空間とが、互いに連通している。枝管部52および連通管部51を介在させて、排気経路30の内部空間と排水経路40の内部空間とが、互いに連通している。枝管部52および連通管部51を介在させて、共通経路60の内部空間と排水経路40の内部空間とが、互いに連通している。
連結部50を介して、排気経路30と排水経路40とが連通し、排気経路30と共通経路60とが連通し、また排水経路40と共通経路60とが連通している。
共通経路60の他方端62は、貯水槽20の内部に配置されている。他方端62は、貯水槽20の内部に連通している。
貯水槽20の内部において、共通経路60は、コンデンサ部65を有している。コンデンサ部65は、共通経路60を構成している配管が屈曲して形成された複数個の環状部分が同心に重なる筒状に形成されている。コンデンサ部65は、貯水槽20内の液相部に水没する共通経路60の管長を増大している。コンデンサ部65は上記の形状に限られず、たとえば蛇行形状など、共通経路60の管長を増大できる任意の形状を有してもよい。
コンデンサ部65は、共通経路60の内部を通過する高温の水および水蒸気から貯水槽20内部に貯留された水への熱伝達を促進し、共通経路60を流れる流体の温度を低下させる。これによりコンデンサ部65は、水が貯水槽20内に排出されるときの騒音を低減する。コンデンサ部65は、蒸気滅菌器1の発生する音の大きさを低減する静音機能を有している。
貯水槽20の内部において、共通経路60は、屈曲部66を有している。共通経路60は、コンデンサ部65から上方に立ち上がり、貯水槽20内の液相部から気相部にまで亘って延びている。共通経路60は、屈曲部66において屈曲して、下方に向かって延びている。共通経路60の他方端62は、貯水槽20内の液面に向いて配置されている。これにより、共通経路60から貯水槽20の内部に排出される水または蒸気は、共通経路60の他方端62から、貯水槽20内に貯留されている水に向かって流出する。
共通経路60には、開閉弁68が設けられている。開閉弁68は、共通経路60の途中に配置されている。開閉弁68は、共通経路60を開閉する。開閉弁68は、連結部50から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、連結部50から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。開閉弁68は、電磁弁であってもよく、電動弁であってもよい。
共通経路60に開閉弁68が設けられている一方、排気経路30および排水経路40には、排気経路30および排水経路40を開閉する弁は設けられていない。排気経路30および排水経路40には、排気経路30および排水経路40を閉状態にし得る構成は設置されていない。排気経路30は、排気入口端31から排気出口端32まで、常時開状態である。排水経路40は、排水入口端41から排水出口端42まで、常時開状態である。チャンバ10と連結部50とは、排気経路30および排水経路40を介して、常時連通している。
蒸気滅菌器1は、圧力経路70をさらに備えている。圧力経路70は、圧力管71,73,75、継手72、圧力計74、および安全弁76を含んで構成されている。
圧力管71は、チャンバ10の上面10tの近傍に接続された一端と、継手72に接続された他端とを有している。圧力管73は、継手72に接続された一端と、圧力計74に接続された他端とを有している。チャンバ10内の気体は、圧力管71、継手72および圧力管73を介して、圧力計74に到達する。圧力計74は、チャンバ10内の気体の圧力を計測する。
圧力管75は、継手72に接続された一端と、安全弁76に接続された他端とを有している。安全弁76は、貯水槽20に設けられている。チャンバ10内の気体の圧力が過剰に上昇すると、安全弁76が開き、チャンバ10内の気体が圧力管71、継手72、圧力管73および安全弁76を順に経由して、貯水槽20内に排出される。これによりチャンバ10内の圧力が低下し、チャンバ10内の圧力が適切な範囲に維持される。
図2は、被滅菌物100が搬入されたチャンバ10を示す模式図である。上述した通り、被滅菌物100は、載置台13上に載せ置かれる。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、チャンバ10の開閉蓋11を開放することにより、被滅菌物100をチャンバ10内に搬入できる。
図2に示すチャンバ10内には、水Wが収容されている。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、被滅菌物100の滅菌処理を開始する前に、手動でチャンバ10内に水Wを供給する。図2には、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水Wの量が示されている。滅菌処理を開始した後はヒータ12による加熱で水Wが蒸発するので、図2に示す水Wの量が、チャンバ10内に存在する水Wの最大の量である。
図2には、水Wの水面Wsが図示されている。図2に示す水面Wsは、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水面Wsであって、チャンバ10内の水面Wsの最高位を示している。上述した通り、排気経路30の排気入口端31は、チャンバ10内の水面Wsの最高位よりも上方の位置で、チャンバ10に接続されている。排気入口端31は、鉛直方向において水面Wsの最高位よりも高く載置台13よりも低い位置で、チャンバ10に接続されている。
図3は、チャンバ10から貯水槽20への流体の経路の配置を示す斜視図である。図3には、図1に示す蒸気滅菌器1の主な構成のうち、チャンバ10と、貯水槽20と、排気経路30、排水経路40、連結部50および共通経路60によって構成されたチャンバ10と貯水槽20とを連通する経路と、が図示されている。チャンバ10および貯水槽20は、共にベース部2上に搭載されている。
連結部50は、上述した通り、チャンバ10の上面10tよりも上方に配置されている。排気経路30は、排気入口端31から排気出口端32へ向かう経路の間に、鉛直方向の上方へ向けて立ち上がる立上り部33を有している。排水経路40は、排水入口端41から排水出口端42へ向かう経路の間に、鉛直方向の上方へ向けて立ち上がる立上り部43を有している。排気経路30の立上り部33は、鉛直方向に対して傾斜して延びている。排水経路40の立上り部43は、鉛直方向に沿って延びている。
図2を併せて参照して、チャンバ10の上面10tは、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に位置している。連結部50は、チャンバ10の上面10tよりも上方に配置されている。そのため連結部50は、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に配置されている。連結部50は、チャンバ10内の水面Wsの最高位よりも、上方に配置されている。
排気経路30の排気出口端32と排水経路40の排水出口端42とは、連結部50に連結されているので、チャンバ10の上面10tよりも上方に配置されている。排気経路30の排気出口端32と排水経路40の排水出口端42とは、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に配置されている。排気経路30のうち排気出口端32を含む一部と、排水経路40のうち排水出口端42を含む一部とは、チャンバ10内に水Wが供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に配置されている。
他方、連結部50は、貯水槽20の上面20tよりも下方に配置されている。連結部50は、鉛直方向において、チャンバ10の上面10tと貯水槽20の上面20tとの間に配置されている。連結部50は、鉛直方向において、チャンバ10の上面10tよりも高く、貯水槽20の上面20tよりも低い位置に、配置されている。連結部50が貯水槽20の上面20tよりも低い位置に設けられるので、連結部50の配置が蒸気滅菌器1の外形寸法に影響を及ぼすことが回避され、蒸気滅菌器1の外形寸法の増大が防止されている。
図4は、蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。図4に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80を備えている。制御部80は、温度センサ16、レベルセンサ26および圧力計74に電気的に接続されている。制御部80は、温度センサ16からチャンバ10の内部の温度に係る検出値の出力を受ける。制御部80は、レベルセンサ26から貯水槽20内の水位に係る検出値の出力を受ける。制御部80は、圧力計74からチャンバ10の内部の圧力に係る検出値の出力を受ける。
制御部80はまた、入力部81を有する。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、加熱温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部81から制御部80に入力する。制御部80はさらに、所定時間を計測するタイマ82を有する。タイマ82は、詳細を後述する浸透工程および置換工程における経過時間を認識するために使用され、また、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用される。
制御部80は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、ヒータ12および開閉弁68などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部80からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物100の滅菌処理が確実に行なわれる。
以上の構成を備える蒸気滅菌器1の動作について、以下に説明する。図5は、蒸気滅菌器1の基本動作工程を示す流れ図である。図5に示す流れ図に従って、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌のための各工程における、蒸気滅菌器1の動作について説明する。
まず、事前準備として、蒸気滅菌器1を使用する操作者は、チャンバ10の開閉蓋11を開放して、被滅菌物100を載置台13上に載せ置く。操作者はまた、水Wを手動でチャンバ10内に供給する。所定量の水Wがチャンバ10内に収容されたことが確認されると、操作者は、図5に示す工程(S10)において、蒸気滅菌器1の電源をオンにし、蒸気滅菌器1を起動する。上記の操作に替えて、操作者は、蒸気滅菌器1の電源をオンにした待機状態において、事前準備を行なってもよい。
次に工程(S20)において、チャンバ10内の加熱が行なわれる。チャンバ10内の底面にあるヒータ12をオンにすることで、チャンバ10内に供給された水がヒータ12で加熱され、蒸気が発生する。同時に載置台13に載置された被滅菌物100も加熱される。
次に工程(S30)において、チャンバ10内に発生した蒸気を、被滅菌物100の内部にまで浸透させる。被滅菌物100の内部に残留していた空気を蒸気で排出させることにより、被滅菌物100の周辺および内部に蒸気が確実に存在する状態にする。
次に工程(S40)において、置換工程が行なわれる。ヒータ12により水が加熱されて発生した蒸気でチャンバ10内の空気が押し出され、押し出された空気は排気経路30を経由してチャンバ10の外部へ排気される。チャンバ10内の空気が水蒸気によって置換され、チャンバ10内の空気と水蒸気とが入れ替えられる。先の工程(S30)において被滅菌物100の内部から空気が排出されていることにより、チャンバ10内の残留空気が確実に排出され、チャンバ10内に蒸気が充満した状態になる。
次に工程(S50)において、チャンバ10内が被滅菌物100の滅菌処理のために必要な温度に達するまで、ヒータ12がオン状態に維持され、チャンバ10内の加圧が行なわれる。
チャンバ10内が所定の滅菌処理のための必要温度に達すると、次に工程(S60)において、ヒータ12の加熱により発生した蒸気で、被滅菌物100の滅菌処理を行なう。滅菌処理中、ヒータ12のオン動作とオフ動作とを適宜繰り返し、チャンバ10内の温度が所定の滅菌温度を下回らないよう、チャンバ10内の温度を管理する。
工程(S60)で所定時間が経過し滅菌処理が終了した後、次に工程(S70)において、ヒータ12をオフし,チャンバ10内部の水および水蒸気を貯水槽20へ排出する排蒸工程が行なわれる。
次に工程(S80)において、被滅菌物の乾燥を行なう。排蒸工程(S70)完了時に、チャンバ内のヒータ12を一定サイクルで通電加熱して、被滅菌物の乾燥が所定の時間行われる。なお、チャンバ10の開閉蓋11を僅かに開放した状態で被滅菌物の乾燥を行ってもよい。
所定の乾燥時間を経過した後に、ヒータ12が停止されることにより、乾燥が終了して、工程(S90)に示すように被滅菌物の滅菌のための全工程が完了となる。この状態で、チャンバ10の開閉蓋11を開放し、滅菌の完了した被滅菌物100をチャンバ10から取り出すことができる。
図6は、蒸気滅菌器1の各機器の動作の第一の例を示すタイミングチャートである。図6には、図5を参照して説明した加熱工程(S20)から滅菌工程(S60)に至る工程における、ヒータ12および開閉弁68の動作、ならびに温度センサ16によって検出されるチャンバ10内の温度が、図示されている。工程(S10)の電源起動時に、開閉弁68は開にされている。ヒータ12はOFFのままとされている。
図6に示すように、加熱工程(S20)においては、開閉弁68は開のままとされ、ヒータ12がONされる。図4に示す制御部80から、ヒータ12へOFFからONに切り替えることを指令する制御信号が送信され、これによりヒータ12がONされる。ヒータ12の起動によって、チャンバ10内の水がヒータ12で加熱され、チャンバ10内に蒸気が発生する。これにより、温度センサ16で検出されるチャンバ10内の温度が上昇する。
開閉弁68が開であるため、チャンバ10と貯水槽20とは互いに連通している。チャンバ10内の空気の一部は、蒸気によってチャンバ10外へ押し出される。空気の一部と、水が蒸発して発生した蒸気の一部とが、排気入口端31からチャンバ10外へ排出される。排出された空気および蒸気の混合気は、排気経路30、連結部50および共通経路60を順に経由して、貯水槽20へ流れる。
圧力が飽和蒸気圧未満の不飽和蒸気の比重は、空気の比重よりも小さい。そのため、チャンバ10の内部空間のうち、より高い位置に蒸気が存在し、空気は水面Ws付近の低い位置に存在する。図2を参照して説明したように、排気経路30の排気入口端31は、水面Wsよりも少し高い位置においてチャンバ10に接続されている。排気入口端31は、加熱工程(S20)の間チャンバ10内に空気が存在する位置において、チャンバ10に接続されている。これにより、チャンバ10内に発生した蒸気がチャンバ10から排出されることが抑制されるとともに、空気をチャンバ10から効率よく排出できる。
温度センサ16から、チャンバ10内の温度が水の沸点に到達したことを示す検出値が制御部80に出力されると、加熱工程(S20)から、浸透工程(S30)に移行する。
浸透工程(S30)の開始後、すなわちチャンバ10内の温度が水の沸点に到達してから、30秒間、開閉弁68が開でヒータ12がONの状態が保たれる。制御部80は、図4に示すタイマ82を用いて、浸透工程(S30)の開始後の経過時間を認識する。
30秒が経過すると、開閉弁68が閉にされる。図4に示す制御部80から、開閉弁68へ開から閉に切り替えることを指令する制御信号が送信され、これにより開閉弁68が閉じられる。開閉弁68を閉にすることにより、チャンバ10の内部空間は密閉された空間となる。ヒータ12による加熱で蒸気がさらに発生すると、チャンバ10内の圧力が上昇し、チャンバ10内の温度は水の沸点を超えて上昇する。
チャンバ10内の圧力を大気圧よりも高くすることで、被滅菌物100の内部にまで蒸気を浸透させ、被滅菌物100の内部に残留していた空気を被滅菌物100から排出させる。
チャンバ10内の温度が水の沸点プラス1℃以上まで上昇すると、ヒータ12を停止する。制御部80から、ヒータ12へONからOFFに切り替えることを指令する制御信号が送信され、これによりヒータ12がOFFされる。ヒータ12が停止すると、チャンバ10内の温度が下がる。チャンバ10内の温度が水の沸点未満にまで下がると、ヒータ12を再び起動する。開閉弁68が閉の状態でヒータのONとOFFとが繰り返される時間が、60秒間継続される。制御部80は、図4に示すタイマ82を用いて、開閉弁68を閉じた後の経過時間を認識する。
60秒が経過すると、浸透工程(S30)から、置換工程(S40)に移行する。置換工程(S40)の開始時に、ヒータ12がOFFの場合には、ヒータ12がONされ、ヒータ12の加熱によりチャンバ10内に蒸気が発生する。また、置換工程(S40)においては、開閉弁68が開にされる。開閉弁68へ閉から開に切り替えることを指令する制御信号が送信され、これにより開閉弁68が開かれる。開閉弁68を開にすることにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の内部空間とは、排気経路30、連結部50および共通経路60を介して、互いに連通する。
開閉弁68が開であるため、加熱工程(S20)と同様に、チャンバ10内の空気と、水が蒸発して発生した蒸気の一部とが、排気入口端31からチャンバ10外へ排出される。排出された空気および蒸気の混合気は、排気経路30、連結部50および共通経路60を順に経由して、貯水槽20へ流れる。
先の浸透工程(S30)において、開閉弁68を閉じて被滅菌物100の内部にまで蒸気を浸透させる時間を設定している。これにより、チャンバ10内から空気がより確実に排出され、チャンバ10に残留している空気がより低減される。その結果、チャンバ10内の空気と蒸気とが、より確実に入れ替えられる。
ヒータ12による加熱で、温度センサ16によって検出されるチャンバ10内の温度が上昇する。チャンバ10内の温度が水の沸点プラス2℃以上まで上昇すると、ヒータ12を停止する。ヒータ12が停止すると、チャンバ10内の温度が下がる。チャンバ10内の温度が水の沸点プラス1℃未満にまで下がると、ヒータ12を再び起動する。
置換工程(S40)中、ヒータ12をONにし続けると、チャンバ10から空気および蒸気の混合気が排出される量よりもチャンバ10の水が蒸発して蒸気が発生する量の方が多くなり、チャンバ10内の圧力が上昇する。チャンバ10内の圧力が過剰に上昇すると、蒸気によって水がチャンバ10外に押し出され排水経路40から排出されてしまう。この場合、共通経路60が水の流れによって塞がれて空気の排出が阻害される、チャンバ10内に滅菌処理に必要な水が不足するなどの事態が発生する。
そのため、本実施の形態では、チャンバ10で蒸気を発生させるとともにチャンバ10から空気を排出する置換工程(S40)の間、ヒータ12の起動と停止とを繰り返すように制御される。これにより、チャンバ10内の水の蒸発を適切に制御し、チャンバ10内の圧力上昇を抑制して、チャンバ10からの水の排出を抑制する。このようにして、チャンバ10から空気および蒸気の混合気のみを排出するように、制御が行なわれる。
排気経路30と排水経路40とを連結する連結部50は、チャンバ10内の水面Wsの位置よりも上方に配置されている。排水出口端42を水面Wsの位置よりも上方に配置することにより、排水経路40に立上り部43が設けられている。チャンバ10から排水経路40へ水が流出しても、流出した水が立上り部43内に留められて連結部50まで到達しなければ、上述した、水の流れが共通経路60を塞ぐまたは滅菌処理に必要な水が不足するなどの事態を回避できる。立上り部43を設けることにより、排水経路40内の水が連結部50に到達するには、重力に逆らった連結部50までの水位の上昇が必要となる。これにより、チャンバ10から流出した水が連結部50まで到達することが抑制されている。
立上り部43を設けることにより、置換工程(S40)中のチャンバ10からの少量の水の排出が許容されるので、置換工程(S40)中にチャンバ10内の圧力を大気圧以上に高めることが可能になる。これにより、ヒータ12のONおよびOFFの切替に係る制御が、より容易になる。
立上り部43を設けることにより、置換工程(S40)中にチャンバ10内の圧力を大気圧以上に高めてもチャンバ10から流出した水が連結部50まで到達することがないため、置換工程(S40)中にチャンバ10内の温度を水の沸点を上回る温度に維持することが可能にされている。これにより、チャンバ10内の水をより迅速に蒸発できるので、置換工程(S40)の所要時間が短縮されている。
ヒータのONとOFFとの繰り返しによってチャンバ10内の温度が水の沸点マイナス1℃以上に維持される時間が120秒間継続すると、置換工程(S40)から加圧工程(S50)に移行する。制御部80は、図4に示すタイマ82を用いて、置換工程(S40)中の経過時間を認識する。
加圧工程(S50)の開始時に、ヒータ12がOFFの場合には、ヒータ12がONされる。また、加圧工程(S50)においては、開閉弁68が閉にされる。開閉弁68を閉にすることにより、チャンバ10の内部空間は密閉された空間となる。ヒータ12による加熱で、チャンバ10内の温度は上昇する。
チャンバ10内の温度が、チャンバ10内が被滅菌物100の滅菌処理のために必要な温度プラス0.5℃に達するまで、ヒータ12がオン状態に維持され、チャンバ10内の加熱を行なう。たとえば、滅菌温度を115℃、121℃または135℃に設定してもよい。
チャンバ10内が所定の滅菌処理のための必要温度に達すると、加圧工程(S50)から滅菌工程(S60)に移行する。滅菌処理中、ヒータ12のオン動作とオフ動作とを適宜繰り返し、チャンバ10内の温度が所定の滅菌温度を下回らないよう、滅菌温度+0.5℃〜+1.0℃を目標に、チャンバ10内の温度を管理する。各滅菌温度における最低滅菌時間以上の時間、被滅菌物100の滅菌処理を行なう。
所定時間が経過し滅菌処理が終了すると、滅菌工程(S60)から排蒸工程(S70)に移行する。
図6には図示されていないが、排蒸工程(S70)においては、開閉弁68が開にされる。開閉弁68を開にすることにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の内部空間とは、排気経路30、連結部50および共通経路60を介して、互いに連通する。
チャンバ10内の蒸気は、排気経路30、連結部50および共通経路60を経由して、貯水槽20へ排出される。蒸気の圧力によって水がチャンバ10から排水経路40へ押し出され、さらに、連結部50を流れる蒸気の流速が大きいことによって排水経路40内の水位が上昇し、排水経路40から連結部50へ水が吸い上げられて、チャンバ10からの水の排出が促進される。連結部50に到達した水は、蒸気の流れとともに、共通経路60を流れ、貯水槽20へ排出される。
なお、上述したように加熱工程(S20)および置換工程(S40)においても、排気経路30から連結部50を経由して共通経路60へ向かう気体の流れが発生するが、このときは連結部50を流れる気体の流速が小さいため、排水経路40内の水位が上昇しても水が連結部50に到達することはない。排水経路40に立上り部43が設けられて排水経路40の一部がチャンバ10内の水面Wsの位置よりも上方に配置されることで、排水経路40の容積が増大しているために、加熱工程(S20)および置換工程(S40)において、チャンバ10から流出した水が連結部50まで到達することを、より確実に回避可能とされている。
図7は、蒸気滅菌器1の各機器の動作の第二の例を示すタイミングチャートである。図6に示す第一の例と、図7に示す第二の例とは、浸透工程(S30)および置換工程(S40)における設定温度において、異なっている。
より具体的には、図6に示す第一の例では、浸透工程(S30)において、水の沸点プラス1℃をチャンバ10内温度の上限として設定し、水の沸点をチャンバ10内温度の下限値として設定している。置換工程(S40)において、水の沸点プラス2℃をチャンバ10内温度の上限として設定し、水の沸点プラス1℃をチャンバ10内温度の下限値として設定している。図6に示す第一の例では、チャンバ10内温度に係る閾値が2つ設定されている。図6に示すチャートでは、温度が高い方の閾値に達しヒータ12がOFFされると直ちに温度が低下し始め、温度が低い方の閾値に達しヒータ12がONされると直ちに温度が上昇し始めている。しかし、実際にはオーバーシュートが発生するため、チャンバ10内の温度の振れ幅は1℃よりも大きくなる。
そこで図7に示す第二の例では、浸透工程(S30)における温度の閾値を水の沸点プラス1℃の1つ設定し、温度センサ16で検出されるチャンバ10内の温度が水の沸点プラス1℃以上になるとヒータ12を停止し、チャンバ10内の温度が水の沸点プラス1℃未満になるとヒータ12を起動するように制御する。置換工程(S40)における温度の閾値を水の沸点プラス2℃の1つ設定し、チャンバ10内の温度が水の沸点プラス2℃以上になるとヒータ12を停止し、チャンバ10内の温度が水の沸点プラス2℃未満になるとヒータ12を起動するように制御する。
このようにすれば、チャンバ10内温度の振れ幅が制御のオーバーシュート分のみになるため、図7に示すように、温度の振れ幅をより小さくできる。したがって、チャンバ10内の温度をより安定させることができる。
図8は、蒸気滅菌器1の各機器の動作の第三の例を示すタイミングチャートである。図6,7に示す例では、置換工程(S40)において、チャンバ10内の温度の検出値に応じてヒータ12を起動停止する例について説明した。図8に示す第三の例では、置換工程(S40)において、所定時間の経過に対応してヒータ12を起動停止する。制御部80は、図4に示すタイマ82を用いて、置換工程(S40)中の経過時間を認識する。
より具体的には、置換工程(S40)が開始すると、ヒータ12がONされる。ヒータ12がONの状態が30秒間保たれ、30秒経過すると、ヒータ12がOFFされる。ヒータ12がOFFの状態が15秒間保たれ、15秒経過すると、ヒータ12がONされる。ヒータ12がONの状態が15秒間保たれ、15秒経過すると、ヒータ12がOFFされる。このように、ヒータ12の起動後、所定時間が経過するとヒータ12を停止し、ヒータ12の停止後、所定時間が経過するとヒータ12を起動する。時間の経過に対応して、ヒータ12のONとOFFとが繰り返される。
このように、チャンバ10内の温度を水の沸点マイナス1℃以上に120秒間維持するために、時間の経過に対応してヒータ12を制御してもよい。
図9は、変形例の連結部50付近の構成を示す断面模式図である。連結部50について、その内部を流れる流体の流れ方向に直交する内断面積が排気経路30、排水経路40および共通経路60と等しい例について上述した。この例に限られず、図9に示すように、連結部50の内断面積が、排気経路30、排水経路40および共通経路60の内断面積よりも小さくてもよい。
連結部50は、連通管部51と枝管部52とを有している。枝管部52は連通管部51の途中に連結されている。連通管部51は、一端部53と、他端部54とを有している。枝管部52は、端部55を有している。連通管部51の一端部53付近は、排気出口端32から、排気経路30内に挿通されている。連通管部51の他端部54付近は、一方端61から、共通経路60内に挿通されている。枝管部52の端部55付近は、排水出口端42から、排水経路40内に挿通されている。
連通管部51は、排気経路30と共通経路60とを連通している。排水経路40の排水出口端42は、連通管部51に流体連通している。排水経路40の内部空間は、連通管部51の内部空間と連通している。排水経路40を流れる水は、枝管部52を経由して、連通管部51の内部に流入可能とされている。
連通管部51の外周面が、排気経路30の内周面に接触し、かつ共通経路60の内周面に接触している。連通管部51の外径は、排気経路30および共通経路60の内径と略等しくなっている。枝管部52の外周面が、排水経路40の内周面に接触している。枝管部52の外径は、排水経路40の内径と略等しくなっている。連通管部51の内径は、排気経路30の内径よりも小さく、かつ共通経路60の内径よりも小さい。枝管部52の内径は、排水経路40の内径よりも小さい。
連通管部51の内部空間の、流体が流れる方向に直交する断面積は、排気経路30の断面積より小さく、かつ共通経路60の断面積よりも小さい。連通管部51を流れる流体の流れ方向に直交する連通管部51の内断面積が、排気出口端32の開口面積よりも小さく、かつ一方端61の開口面積よりも小さい。
図9中に示す実線矢印は、排気経路30から共通経路60へ向けて連通管部51を流れる気体の流れを示す。図9中に示す破線矢印は、排水経路40から連結部50へ吸い上げられる水の流れを示す。上述したように、排蒸工程(S70)において、連結部50を流れる蒸気の流速が大きいことによって、排水経路40から連結部50へ水が吸い上げられる。
連通管部51を小径に形成して、連通管部51の内断面積を排気経路30および共通経路60の内断面積と比較して小さくすることにより、排気経路30および共通経路60を流れる空気の流速よりも、連通管部51を流れる空気の流速が増大している。そのため、ベルヌーイの定理に従って、連通管部51における圧力がより低下する。これにより、ベンチュリ効果によって排水経路40から水を吸い上げる能力が増大する。したがって、排蒸工程(S70)において水を排水経路40から連結部50へ吸い上げる能力を増大させ、チャンバ10から貯水槽20へより容易に水を移送することが可能になっている。
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。実施の形態1と比較して、実施の形態2の蒸気滅菌器は、図10に示すように、温度センサ17をさらに備える点で異なっている。温度センサ17は、チャンバ10の内部空間における底部10bに配置されている。温度センサ17は、実施の形態1で説明した温度センサ16とは異なる、第2の温度センサである。温度センサ17は、チャンバ10内に供給された水の温度を検出する。
温度センサ17は、図4に示す制御部80に電気的に接続されている。制御部80は、温度センサ17から、チャンバ10の内部の水の温度に係る検出値の出力を受ける。なお、温度センサ16は、図1,10に示すようにチャンバ10の内部空間における載置台13よりも上方に配置されており、チャンバ10の内部の気体の温度を検出するものである。
実施の形態2では、チャンバ10の温度が水の沸点に到達したことを、温度センサ17を用いて検出する。実施の形態2では、温度センサ17から、チャンバ10内の水の温度が沸点に到達したことを示す検出値が制御部80に出力されると、加熱工程(S20)から浸透工程(S30)に移行する。
また実施の形態2では、チャンバ10内の温度が水の沸点プラス1℃以上まで上昇したこと、および水の沸点未満にまで下がったことを、温度センサ17を用いて検出する。実施の形態2では、浸透工程(S30)において、温度センサ17から、チャンバ10内の水の温度が沸点プラス1℃まで上昇したことを示す検出値が制御部80に出力されると、ヒータ12がOFFされる。温度センサ17から、チャンバ10内の水の温度が沸点未満にまで下がったことを示す検出値が制御部80に入力されると、ヒータ12がONされる。
また実施の形態2では、チャンバ10内の温度が水の沸点プラス2℃以上まで上昇したこと、および水の沸点プラス1℃未満まで下がったことを、温度センサ17を用いて検出する。実施の形態2では、置換工程(S40)において、温度センサ17から、チャンバ10内の水の温度が沸点プラス2℃まで上昇したことを示す検出値が制御部80に出力されると、ヒータ12がOFFされる。温度センサ17から、チャンバ10内の水の温度が沸点プラス1℃未満まで下がったことを示す検出値が制御部80に出力されると、ヒータ12がONされる。
このように、チャンバ10内の水の温度を検出する温度センサ17を設け、この温度センサ17によって検出されたチャンバ10内の水の温度に応じて、加熱工程(S20)から浸透工程(S30)への移行、浸透工程(S30)におけるヒータ12のON/OFF切替、および置換工程(S40)におけるヒータ12のON/OFF切替をしてもよい。
なお、実施の形態2のチャンバ10内に2つの温度センサ16,17を設けた構成と比較すると、実施の形態1の温度センサ16のみを備える構成では、温度センサ17が削減されているため蒸気滅菌器1の部品点数を削減できるという効果が奏される。
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。実施の形態1と比較して、実施の形態3の蒸気滅菌器は、図11に示すように、圧力検出手段18をさらに備える点で異なっている。圧力検出手段18は、チャンバ10内の内部空間における上面10tに設けられている。圧力検出手段18は、実施の形態1で説明した圧力計74とは異なる、第2の圧力計である。圧力検出手段18は、チャンバ10内の圧力を検出する。
圧力検出手段18は、図4に示す制御部80に電気的に接続されている。制御部80は、圧力検出手段18から、チャンバ10の内部の気相の圧力に係る検出値の出力を受ける。
実施の形態1および2では、チャンバ10内の温度に応じて、浸透工程(S30)におけるヒータ12のON/OFF切替、および置換工程(S40)におけるヒータ12のON/OFF切替を行なう例について説明した。この例に替えて、チャンバ10に圧力検出手段18を設け、浸透工程(S30)および置換工程(S40)において、圧力検出手段18によって検出されたチャンバ10内の圧力に応じてヒータ12のONとOFFとを切り替えるようにしてもよい。
なお、浸透工程(S30)および置換工程(S40)において、圧力計74により計測されたチャンバ10の内部の気相の圧力に係る検出値に応じて、ヒータ12のONとOFFとを切り替えるようにしてもよい。
上述した説明と一部重複する部分もあるが、本実施の形態の特徴的な構成を以下に列挙する。本実施の形態の蒸気滅菌器1は、図1に示すように、被滅菌物100を収容可能なチャンバ10と、排気経路30と、排水経路40と、連結部50と、共通経路60と、開閉弁68とを備えている。排気経路30には、チャンバ10から排出される気体が流れる。排気経路30は、チャンバ10に接続された排気入口端31と、排気入口端31と反対側の排気出口端32とを有している。排水経路40には、チャンバ10から排出される水が流れる。排水経路40は、チャンバ10に接続された排水入口端41と、排水入口端41と反対側の排水出口端42とを有している。連結部50は、排気出口端32と排水出口端42とを連結している。共通経路60は、連結部50を介して排気経路30および排水経路40の両方と連通する一方端61と、一方端と反対側の他方端62とを有している。開閉弁68は、共通経路60に設けられている。
チャンバ10から排出される気体が流れる排気経路30と、チャンバ10から排出される水が流れる排水経路40とを、連結部50で連結し、気体と水との両方が流れる共通経路60にのみ開閉弁68を設ける構成とされている。チャンバ10からの排気のための開閉弁とチャンバ10からの排水のための開閉弁とを共通化したことで、蒸気滅菌器1の必要な部品点数を低減することができるので、蒸気滅菌器1のコストを低減することができる。
また図1に示すように、排気経路30には開閉弁が設けられておらず、排気経路30は排気入口端31から排気出口端32まで常時連通している。排水経路40には開閉弁が設けられておらず、排水経路40は排水入口端41から排水出口端42まで常時連通している。そのため、チャンバ10と連結部50とは、排気経路30および排水経路40を介して、常時連通している。共通経路60に開閉弁68を設ける構成としたため、排気経路30または排水経路40に開閉弁を設ける必要がない。これにより、蒸気滅菌器1の必要な部品点数を低減することができ、蒸気滅菌器1のコストを低減することができる。
また図2,3に示すように、排水経路40の一部は、チャンバ10内に水が供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に配置されている。排水経路40は、チャンバ10内の水面Wsの位置よりも上方にまで立上る立上り部43を有している。このようにすれば、置換工程(S40)においてチャンバ10内の圧力が上昇したとしても、排水経路40の立上り部43に水を留めて、水が連結部50にまで到達することを抑制できるので、貯水槽20への水の流出を防止することができる。また、チャンバ10内の圧力の上昇が許容されるので、ヒータ12の制御がより容易になり、加えて、蒸気の発生を促進できるため置換工程(S40)の所要時間を短縮することができる。
また図2,3に示すように、排水経路40の排水出口端42は、チャンバ10内に水が供給されたときの水面Wsの位置よりも、上方に配置されている。排水経路40は、排水出口端42へ向かってチャンバ10内の水面Wsの位置よりも上方にまで立上る立上り部43を有している。このようにすれば、置換工程(S40)においてチャンバ10内の圧力が上昇したとしても、排水経路40の立上り部43に水を留めて、水が連結部50にまで到達することを抑制できるので、貯水槽20への水の流出を防止することができる。
また図3に示すように、排水経路40の排水出口端42は、チャンバ10の上面10tよりも、上方に配置されている。このようにすれば、排水経路40の立上り部43の容積を増大することができる。したがって、置換工程(S40)中に貯水槽20への水の流出を防止できる効果を、より顕著に得ることができる。
なお、排水経路40の排水出口端42および連結部50がチャンバ10内の水面Wsの位置よりも下方に配置されていても、排水入口端41から排水出口端42に至る経路の一部が水面Wsの位置よりも上方に配置されていれば、当該部分を通過して排水出口端42へ向かう水の流れを抑制でき、立上り部としての機能が発揮される。そのため、チャンバ10内の水面Wsの位置よりも上方に配置される排水経路40の一部は、排水出口端42に限られるものではなく、排水入口端41から排水出口端42に至る経路の任意の一部であってもよい。
また図4に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部80をさらに備えている。図6〜8に示すように、制御部80は、チャンバ10内で蒸気を発生させるとともにチャンバ10から空気を排出する置換工程(S40)の間、ヒータ12の起動と停止とを繰り返すように制御する。
排気経路30と排水経路40とが連結された構成であるので、置換工程(S40)では、排水経路40が開放されている。チャンバ10内に発生する蒸気の量が過剰になると、チャンバ10内の圧力が上昇し、水が蒸気によってチャンバ10から排水経路40へ押し出されるとともに、排気経路30を流れる気体の流速が大きくなるため、チャンバ10内の水が貯水槽20へ流出してしまう事態が発生する。そのため、置換工程(S40)の間ヒータ12を常時ONにするのではなく、ヒータ12の起動と停止を繰り返すように制御する。このようにすれば、チャンバ10内に発生する蒸気の量を適切に制御でき、チャンバ10内の圧力を過剰な上昇を防止できるので、チャンバ10から流出する水を排水経路40内に留めることができ、貯水槽20への水の流出を防止することができる。
また図1に示すように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16をさらに備えている。図6,7に示すように、制御部80は、温度センサ16によって検出されたチャンバ10内の温度が閾値以上であるとヒータ12を停止し、温度センサ16によって検出されたチャンバ10内の温度が閾値未満であるとヒータ12を起動する。
このようにすれば、チャンバ10内の温度の検出値に従ってヒータ12の起動および停止を制御できるので、チャンバ12内の温度が過剰に上昇することを確実に防止することができる。なお、チャンバ10内の温度に係る閾値について、図6を参照して説明したように複数の閾値が設定されてもよく、図7を参照して説明したように1つの閾値が設定されてもよい。
また図6,7に示すように、上記閾値は、水の沸点以上の温度である。このようにすれば、チャンバ10内の温度を、チャンバ10内に蒸気が発生し得る水の沸点以上に確実に維持することができるので、蒸気の発生を促進でき、置換工程(S40)の所要時間を短縮することができる。
また図8に示すように、制御部80は、ヒータ12の起動後所定時間が経過するとヒータ12を停止し、ヒータ12の停止後所定時間が経過するとヒータ12を起動する。このようにすれば、時間の経過に従ってヒータ12の起動および停止を制御できるので、ヒータ12を簡易に制御することができる。
また図1に示すように、蒸気滅菌器1は、チャンバ10から排出される水を貯留する貯水槽20をさらに備えている。共通経路60の他方端62は、貯水槽20の内部に連通している。このようにすれば、チャンバ10から排出される水および蒸気を、貯水槽20の内部に導くことができ、貯水槽20内に水および蒸気を排出することができる。
また図9に示すように、連結部50は、排気経路30と共通経路60とを連通する連通管部51を有している。排水経路40の排水出口端42は、連通管部51に連通している。連通管部51を流れる流体の流れ方向に直交する連通管部51の内断面積が、排気経路30の排気出口端32の開口面積よりも小さく、かつ共通経路60の一方端61の開口面積よりも小さい。
このようにすれば、連通管部51を流れる気体の流速が大きくなるため、連通管部51における気体の圧力が低下する。これにより、排水経路40から連結部50に水を吸い上げる能力が増大する。よって、排蒸工程(S70)において、チャンバ10内の水を貯水槽20へより容易に排出することができる。
また図2に示すように、チャンバ10に供給される液体として、水が用いられている。安価で入手容易な水をチャンバ10内でヒータ12により加熱して蒸発させた高温高圧の飽和水蒸気によって、被滅菌物100の滅菌処理を行なうことができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。