以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
<インクジェット印刷機の全体構成>
図1は、本実施形態に係る印刷装置の一例であるインクジェット印刷機10の全体構成を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット印刷機10は、給紙部12、ベルト搬送部14、前処理液塗布部22、印字部26、印字検出部32、後乾燥部36、及び排紙部44等を備えている。
給紙部12は、用紙束の状態で給紙台の上に載置された記録媒体である用紙Pを、上から1枚ずつ一定間隔でベルト搬送部14に供給する。
ベルト搬送部14は、用紙PをY方向に搬送する。ベルト搬送部14は、ローラ16及びローラ18間に無端状のベルト20が巻き掛けられた構造を有している。ベルト20は、ゴム及び/又はウレタンから形成され、図示しない多数の吸引穴が貫通している。また、ベルト20は、X方向の幅が用紙PのX方向の幅よりも広く、外周面が用紙保持面となる。用紙保持面は、前処理液塗布部22、印字部26、印字検出部32、後乾燥部36に対向する部分において水平面をなすように構成されている。
印字部26及び印字検出部32に対向する位置には、ベルト20の内側に図示しない吸着チャンバが設けられている。この吸着チャンバによりベルト20の吸引穴を吸引して負圧にすることによって、ベルト20上に載置された用紙Pが吸着保持される。
また、ローラ16及びローラ18の少なくとも一方に図示しないモータの動力が伝達されることにより、ベルト20は図1において左回り方向に駆動される。これにより、ベルト搬送部14は、ベルト20の外周面に保持された用紙Pを、印字部26、印字検出部32、後乾燥部36の順に搬送する。
前処理液塗布部22は、用紙Pの記録面に処理液を塗布する。処理液は、インク中の色材成分を凝集させる機能、又はインク中の色材成分を不溶化させる機能を有する液体である。処理液が塗布された用紙Pに対して画像記録をすることにより、汎用の印刷用紙を使用した場合であっても高品質な画像の記録が可能になる。
前処理液塗布部22は、処理液塗布ローラ24を備えている。処理液塗布ローラ24には、図示しない処理液供給手段により外周面に処理液が供給される。処理液塗布ローラ24は、ベルト搬送部14によって搬送される用紙Pの記録面に外周面を押し当てて回転することで、用紙Pの記録面に処理液を塗布する。なお、インクジェット方式又はスプレイ方式などの方式で処理液を付与してもよい。
印字部26(印字処理部の一例)は、用紙Pの記録面に画像を印字する。印字部26は、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロの各色水性顔料インクをインクジェット方式で吐出するフルライン型のインクジェットヘッド28を備えている。
ベルト搬送部14により用紙Pがインクジェットヘッド28に対向する位置に搬送されてくると、用紙Pは吸着チャンバにより図1において下方向に吸引され、ベルト20に吸着保持される。吸着保持されて搬送される用紙Pに、インクジェットヘッド28のノズル56(図2参照)からインクを吐出することにより、用紙Pの記録面に画像を形成する。なお、ここでは搬送される用紙Pにインクが着弾する位置を画像形成部30と表記する。
印字検出部32は、画像形成部30において形成された画像を読み取り、画像を解析する。印字検出部32は、画像読取部としてセンサ34を備えている。センサ34は、ベルト搬送部14により搬送される用紙Pの記録面の画像を読み取り、読み取った画像データを図示しない画像解析手段であるコンピュータに送信する。コンピュータは、受信した画像データに基づいて用紙Pに印字された画像を解析する。
後乾燥部36(加熱処理部の一例)は、印字部26によってインクが付与された用紙Pの記録面を乾燥させる。後乾燥部36は、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42を備えている。
赤外線ヒータ38は、ベルト搬送部14により搬送される用紙Pの記録面に赤外線を照射し、用紙Pに付与されたインクの水分を蒸発させる。また、第1温風ヒータ40及び第2温風ヒータ42は、ベルト搬送部14により搬送される用紙Pの記録面に加熱した空気を供給し、用紙Pに付与されたインクの水分を蒸発させる。
ベルト搬送部14によって後乾燥部36を通過した用紙Pは、排紙部44へ送られる。排紙部44は、用紙Pを平積みする。排紙部44に、平積みした用紙P間に風を通して冷却する冷却装置を配置してもよい。
以上のように構成されたインクジェット印刷機10によれば、ユーザが図示しない印刷ボタンを押下すると、インクジェット印刷機10が予熱された状態である「スタンバイ状態」から、印刷に必要な部品の印刷準備が開始される。印刷に必要な部品の準備が終了すると給紙部12による給紙が開始され、ベルト搬送部14により用紙Pがインクジェット印刷機10内を搬送される。用紙Pは、その記録面に印字部26により適切な画像品質を持った画像が適切な画像強度で形成され、後乾燥部36において乾燥処理された後、排紙部44に排紙される。
このように、インクジェット印刷機10は、ベルト搬送部14によって搬送される用紙Pに対して給紙処理、前処理液塗布処理、印字処理、印字検出処理、後乾燥処理、及び排紙処理の複数の処理を一定の順番でそれぞれ施す処理工程を実施する。
<インクジェットヘッドの構成>
前述のように、インクジェットヘッド28は4色のインクを吐出するが、ここではブラックのインクを吐出する部分のみ説明する。なお、インクジェットヘッド28の各色の構成は同様である。図2は、インクジェットヘッド28を用紙Pと対向するノズル面52K側から見た図であり、図3は図2の一部拡大図である。
インクジェットヘッド28は、17個のヘッドモジュール54−1〜54−17をX方向に沿ってつなぎ合わせた長尺状の構造を有し、ノズル面52Kには用紙Pの全幅に対応する長さにわたって複数のノズル56が二次元状に配置されている。インクジェットヘッド28は、ピエゾ方式又はサーマル方式でノズル56からインクを吐出させる。
各ヘッドモジュール54−1〜54−17は、交換可能に構成されており、それぞれインクジェットヘッド28における短手方向の両側からヘッドモジュール支持部材58Bによって支持されている。また、インクジェットヘッド28の長手方向における両端部は、ヘッド支持部材58Dによって支持されている。
<インクジェット印刷機の電気的構成>
図4は、インクジェット印刷機10の電気的構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット印刷機10は、前述の給紙部12、ベルト搬送部14、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、第2温風ヒータ42、及び排紙部44からなる部品群46(複数の処理部の一例)の他、給紙制御部102、ベルト搬送制御部104、前処理液塗布制御部106、印字制御部108、センサ制御部110、赤外線ヒータ制御部112、第1温風ヒータ制御部114、第2温風ヒータ制御部116、排紙制御部118、タイミング制御部120、記憶部122、特定部124、及び操作部126を備えている。
給紙制御部102、ベルト搬送制御部104、前処理液塗布制御部106、印字制御部108、センサ制御部110、赤外線ヒータ制御部112、第1温風ヒータ制御部114、第2温風ヒータ制御部116、及び排紙制御部118は、それぞれ部品群46の各部品(給紙部12、ベルト搬送部14、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、第2温風ヒータ42、及び排紙部44)の動作を制御する調整部である。
タイミング制御部120は、部品群46の各部品の準備開始タイミングを制御する。記憶部122は、部品群46の各部品の準備開始(調整開始の一例)から準備終了(調整終了の一例)までに要する時間である準備時間を記憶する。特定部124は、記憶部122に記憶された調整時間に基づいて、部品群46から所望の部品を特定する。
操作部126(指示取得部の一例)は、ユーザがインクジェット印刷機10の動作を制御するための入力手段であり、特にテスト印刷開始ボタン128及び本番印刷開始ボタン130を備えている。インクジェット印刷機10は、ユーザによりテスト印刷開始ボタン128が押下されると、後述するテスト印刷の準備の終了後、テスト印刷を行う。また、ユーザにより本番印刷開始ボタン130が押下されると、後述する本番印刷の準備の終了後、本番印刷を行う。
<インクジェット印刷機の印刷準備方法:第1の実施形態>
ユーザが顧客に販売するための印刷物を作る印刷工程を、以下において「本番印刷」と表記する。
本番印刷において適切な画像品質を持った画像が印刷されるためには、印字部26が適切に調整されている必要がある。例えば、インクジェットヘッド28のノズル56からインクが適切な直進性を持って吐出されなければ、印刷画像品質は許容できないものになる。また、インクジェットヘッド28を構成する複数のヘッドモジュール54−1〜54−17によって印字される画像の印刷濃度が用紙Pの面内で均一でなければ、印刷物内で濃度ムラが目立つ画像になってしまう。そこで、本番印刷の前に印字部26の状態を適切に調整するために「テスト印刷」を実施する場合がある。ここでは、テスト印刷の一例として、不吐出ノズル特定テスト印刷について説明する。
不吐出ノズル特定テスト印刷では、ベルト搬送部14により搬送されてきた用紙Pに、印字部26において図5に示す線状のパタンPT1を形成し、続いてセンサ34がパタンPT1を読み取り、パタンPT1を画像データに変換する。この画像データはコンピュータによって解析され、インクの吐出ができないノズル56(不吐出ノズル)が特定される。不吐出ノズルが特定されると、その不吐出ノズルに近接した正常なノズル56によって画像を補正する。また、不吐出ノズルの数が基準よりも多い場合は、図示しないクリーニング部におけるヘッドクリーニング等により回復作業を行う。
ここで、テスト印刷においても、本番印刷においても、なるべく電力消費を抑えたいという課題がある。第1の実施形態では、テスト印刷において、準備に最も時間がかかる部品の準備が終了するタイミングに合わせて、残りの部品のうちの少なくとも一部の部品の準備が終了することで、省電力化を実現する。
図6は、第1の実施形態に係る印刷準備方法(印刷方法の一例)の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されているテスト印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS1)。図7に、テスト印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
テスト印刷を行うにあたっては、部品群46のうち、テスト印刷に必要な部品のみ準備をする。図7に示すように、テスト印刷に必要な部品は、給紙部12、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、及び排紙部44である。赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42はテスト印刷に不要であるため、ここでは準備を行わない。また、給紙部12及び排紙部44は消費電力が小さく、準備時間も短いため、本実施形態では制御対象から除外する。
特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータである「準備に必要な時間」に基づいて、テスト印刷に必要な部品の中から、準備時間が最も長いボトルネック部品(ボトルネック処理部の一例)を特定する(ステップS2)。
準備時間とは、スタンバイ状態から使用可能状態になるまでの時間であり、例えば、前処理液塗布部22においては塗布後の塗布液を乾燥させるための図示しないヒータの昇温時間であり、印字部26においてはインクジェットヘッド28の位置調整時間及びインクジェットヘッド28の内部のインクの圧力の調整時間であり、センサ34においては電源投入後に温度が安定するまでの時間である。
ここでは、図7に示すように、前処理液塗布部22、印字部26、及びセンサ34の準備時間は、それぞれ20秒、10秒、及び5秒である。したがって、特定部124は、準備時間が最も長い20秒である前処理液塗布部22をボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、記憶部122に記憶されているパラメータである「準備に必要な時間」に基づいて、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS3)。ボトルネック部品の準備時間をTRB、ボトルネック部品以外の部品(ボトルネック処理部以外の処理部の一例)であって、準備終了タイミング(調整終了タイミングの一例)をボトルネック部品の準備終了タイミングと一致させる部品の準備時間をTRとすると、その部品の準備開始タイミングは、ボトルネック部品の準備を開始してから下記式1で表される時間T1の経過後である。
T1=TRB−TR …(式1)
したがって、式1より、印字部26の準備終了タイミングを前処理液塗布部22の準備終了タイミングと一致させるための準備開始タイミングは、前処理液塗布部22の準備開始から20−10=10秒後であり、センサ34の準備終了タイミングを前処理液塗布部22の準備終了タイミングと合わせるための準備開始タイミングは、前処理液塗布部22の準備開始から20−5=15秒後である。
最後に、ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示(調整開始指示の一例)として取得し(ステップS4、指示取得工程の一例)、ステップS3において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS5、調整工程の一例、タイミング制御工程の一例)。
図8は、前処理液塗布部22、印字部26、及びセンサ34の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、インクジェット印刷機10のテスト印刷準備が開始される。
図8に示すように、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始と同時にボトルネック部品である前処理液塗布部22の準備を開始する。そして、テスト印刷準備開始から10秒後に印字部26の準備を開始し、テスト印刷準備開始から15秒後にセンサ34の準備を開始する。これにより、前処理液塗布部22、印字部26、及びセンサ34の3つの部品の準備が、テスト印刷準備開始から20秒後に、同じタイミングで終了する。
このように各部品の準備時間に基づいて準備開始タイミングを決定することで、ボトルネック部品以外の部品の準備が終了してからボトルネック部品の準備が終了するまでの間のボトルネック部品以外の部品の無駄な待機時間がなくなり、その間のボトルネック部品以外の部品の消費電力を低減することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、本番印刷において、準備に最も時間がかかる部品の準備が終了するタイミングに合わせて、他の少なくとも一部の部品の準備がちょうど終了するようにすることで、省電力化を実現する。
図9は、第2の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されている本番印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS11)。図10に、本番印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
図10に示すように、本番印刷に必要な部品は、給紙部12、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、第2温風ヒータ42、及び排紙部44である。なお、第1の実施形態と同様に、給紙部12及び排紙部44は消費電力が小さく、準備時間も短いため、本実施形態では制御対象から除外する。
特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータである「準備に必要な時間」に基づいて、本番印刷に必要な部品の中から、準備時間が最も長いボトルネック部品を特定する(ステップS12)。
ここでは、図10に示すように、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備時間は、それぞれ20秒、10秒、5秒、35秒、40秒、及び60秒である。したがって、特定部124は、準備時間が最も長い60秒である第2温風ヒータ42をボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、記憶部122に記憶されているパラメータである「準備に必要な時間」に基づいて、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS13)。ここでは、第1の実施形態と同様に、式1により各部品の準備開始タイミングを決定する。すなわち、前処理液塗布部22の準備終了タイミングをボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備終了タイミングと合わせるための準備開始タイミングは、第2温風ヒータ42の準備開始タイミングから60−20=40秒後であり、印字部26の準備終了タイミングを第2温風ヒータ42の準備終了タイミングと合わせるための準備開始タイミングは、第2温風ヒータ42の準備開始タイミングから60−10=50秒後である。
以下同様に、センサ34、赤外線ヒータ38、及び第1温風ヒータ40の準備開始タイミングは、第2温風ヒータ42の準備開始タイミングからそれぞれ55秒後、25秒後、及び20秒後である。
最後に、ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS14)、ステップS13において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS15)。
図11は、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、インクジェット印刷機10の本番印刷準備が開始される。
図11に示すように、タイミング制御部120は、本番印刷準備開始と同時にボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始する。そして、本番印刷準備開始から20秒後に第1温風ヒータ40の準備を開始し、本番印刷準備開始から25秒後に赤外線ヒータ38の準備を開始し、本番印刷準備開始から40秒後に前処理液塗布部22の準備を開始する。さらに、本番印刷準備開始から50秒後に印字部26の準備を開始し、本番印刷準備開始から55秒後にセンサ34の準備を開始する。
これにより、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の6つの部品の準備が、本番印刷準備開始から60秒後に、同じタイミングで終了する。このように各部品の準備開始タイミングを決定することで、本番印刷においても、ボトルネック部品以外の部品が準備を終了してからボトルネック部品が準備を終了するまでの間の無駄な待機時間がなくなり、消費電力を低減することができる。
第1の実施形態及び第2の実施形態では、全ての部品が同じタイミングで準備を終了する構成を示したが、必ずしもその必要はなく、ボトルネック部品以外の部品の一部をボトルネック部品と同じタイミングで準備終了させることで、消費電力を削減する効果を得ることができる。
また、部品群46の各部品の準備時間を固定された時間として記憶しているが、各部品の使用履歴に応じて準備時間は変わり得る。例えば、第2温風ヒータ42の準備時間は60秒としているが、インクジェット印刷機10の内部の温度及びインクジェット印刷機10の設置環境に応じて50秒〜70秒に変動する。したがって、温度及び/又は環境を検知し、検知結果に応じて準備時間を補正してもよい。
また、第1の実施形態ではステップS2及びS3、第2の実施形態ではステップS12及びS13の処理をインクジェット印刷機10において行ったが、これらの処理の結果を予め記憶部122に記憶しておいてもよい。このように、記憶部122から部品群46の各部品の準備開始タイミングをパラメータとして読み出し、読み出した準備開始タイミングで部品群46を制御しても、消費電力を削減することができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、本番印刷において、消費電力が大きい部品についてはその部品が実際に使用されるタイミングを考慮して準備を開始する。
図12は、第3の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されている本番印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS21)。図13に、本番印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。なお、同図に示す「給紙開始後、必要になる時間」は、給紙部12において用紙Pの給紙を開始してから、ベルト搬送部14によってその用紙Pが各部品に到達するまでの時間に相当する。
次に、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータである「準備に必要な時間」に基づいて、本番印刷に必要な部品の中から、準備時間が最も長いボトルネック部品を特定する(ステップS22)。第2の実施形態と同様に、特定部124は、準備時間が最も長い60秒である第2温風ヒータ42をボトルネック部品として特定する。
続いて、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータである「消費電力」に基づいて、本番印刷に必要な部品であって、ボトルネック部品以外の部品の中から、消費電力が最も大きい大消費電力部品(大消費電力処理部の一例)を特定する(ステップS23)。
図13に示すように、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、及び第1温風ヒータ40の消費電力は、それぞれ2kW、1kW、1kW以下、15kW、5kW、及び5kWである。したがって、特定部124は、消費電力が最も大きい15kWである最も大きい赤外線ヒータ38を大消費電力部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS24)。
ここでは、大消費電力部品以外の部品は、準備終了タイミングをボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備終了タイミングと一致させる。したがって、第2の実施形態と同様に、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、及び第1温風ヒータ40の準備開始タイミングは、第2温風ヒータ42の準備開始タイミングからそれぞれ40秒後、50秒後、55秒後、及び20秒後である。
さらに、大消費電力部品である赤外線ヒータ38の準備開始タイミングを取得する。ここで、ボトルネック部品の準備時間をTRB、大消費電力部品の準備時間をTX、給紙開始から大消費電力部品が必要になるまでの時間をTNとし、ボトルネック部品の準備終了直後に給紙を開始するものとすると、大消費電力部品の準備開始タイミングは、ボトルネック部品の準備を開始してから下記式2で表される時間T2の経過後とすればよい。
T2=TRB−TX+TN …(式2)
図13に示す例では、TRB=60秒、TX=35秒、及びTN=16秒であるので、これを式2に代入すると、T2=60−35+16=41秒となる。したがって、大消費電力部品である赤外線ヒータ38の準備開始タイミングは、ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始してから41秒後である。
最後に、ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS25)、ステップS24において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS26)。
図14は、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、インクジェット印刷機10の本番印刷準備が開始される。
図14に示すように、タイミング制御部120は、本番印刷準備開始と同時にボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始する。そして、本番印刷準備開始から20秒後に第1温風ヒータ40の準備を開始し、本番印刷準備開始から40秒後に前処理液塗布部22の準備を開始する。さらに、本番印刷準備開始から41秒後に赤外線ヒータ38の準備を開始し、本番印刷準備開始から50秒後に印字部26の準備を開始し、本番印刷準備開始から55秒後にセンサ34の準備を開始する。
これにより、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の5つの部品の準備が、本番印刷準備開始から60秒後に、同じタイミングで終了する。したがって、ボトルネック部品以外の部品が準備を終了してからボトルネック部品が準備を終了するまでの間の無駄な待機時間がなくなり、消費電力を低減することができる。
さらに、インクジェット印刷機10は、本番準備終了とともに、本番印刷用の用紙P(最初の記録媒体の一例)の搬送を開始する。この用紙Pは、搬送開始から16秒後、すなわち、本番準備開始から76秒後に赤外線ヒータ38に到達する。赤外線ヒータ38は、この用紙Pが赤外線ヒータ38に到達するタイミングで準備を終了する。このように、大消費電力部品については準備開始タイミングをできるだけ遅らせることで、さらなる消費電力の削減が可能となる。
ここでは消費電力が最も大きい赤外線ヒータ38のみ準備開始タイミングを遅らせたが、例えば消費電力が2番目に大きい第1温風ヒータ40についても、同様の観点で調整開始タイミングを遅くすることが可能である。
<印刷機の変形例>
本実施形態がより効果的になるのは、赤外線ヒータ38等のように電力消費が大きい部品を有する場合である。これまで説明した消費電力低減効果をより得ることができる構成として、紫外線露光装置を使用する場合が考えられる。
図15は、インクジェット印刷機60の全体構成を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット印刷機60は、後乾燥部36に紫外線露光装置48(紫外線処理部の一例)を備えている。
インクジェット印刷機60において、印字部26のインクジェットヘッド28は、紫外線硬化型インクを吐出する。紫外線硬化型インクは、吐出後に紫外線を照射することにより、硬化させることができる。
印字部26において紫外線硬化型インクにより記録面に画像が印字された用紙Pは、ベルト搬送部14により後乾燥部36に搬送される。後乾燥部36では、紫外線露光装置48により、用紙Pに紫外線が照射される。これにより、用紙Pの記録面に付与された紫外線硬化型インクが硬化する。
紫外線露光装置48は、一般に消費電力が大きい。したがって、紫外線露光装置48を大消費電力部品として特定することで、消費電力の削減が可能となる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、テスト印刷後に本番印刷を実施する場合に、さらなる消費電力抑制と時間短縮効果を得る。ここでは、再び図1に示すインクジェット印刷機10について説明する。図16は、第4の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されているテスト印刷及び本番印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS31)。図17に、テスト印刷及び本番印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
次に、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、テスト印刷に必要な部品の中から、準備時間が最も長いテスト印刷ボトルネック部品を特定する(ステップS32)。第1の実施形態と同様に、特定部124は、前処理液塗布部22をテスト印刷ボトルネック部品として特定する。
同様に、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、本番印刷に必要な部品の中から、準備時間が最も長い本番印刷ボトルネック部品を特定する(ステップS33)。第2の実施形態と同様に、特定部124は、第2温風ヒータ42を本番印刷ボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS34)。
本実施形態では、部品群46のうちテスト印刷に使用する部品については、準備終了タイミングをテスト印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングと一致させ、部品群46のうちテスト印刷に使用せずに本番印刷に使用する部品については、準備終了タイミングを本番印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングと一致させる。
ここで、テスト印刷ボトルネック部品である前処理液塗布部22の準備時間は20秒である。したがって、インクジェット印刷機10は、図示しないテスト印刷ボタンを押下してから、テスト印刷の準備が完了してテスト印刷を開始するまで、20秒かかる。
さらに、テスト印刷用の用紙Pを給紙してから排紙するまで20秒かかる(図13参照)。したがって、テスト印刷準備開始から、テスト印刷を終了するまでは、20秒+20秒=40秒かかる。
本実施形態では、テスト印刷用の用紙Pの排紙が終了する前にテスト印刷の解析が終了し、テスト印刷の終了直後にユーザが本番印刷ボタンを押下するとする。
図17に示すように、テスト印刷ボトルネック部品である前処理液塗布部22及び本番印刷ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備開始タイミングは、テスト印刷準備開始と同時である。また、その他の部品である印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、及び第1温風ヒータ40の準備開始タイミングは、それぞれテスト印刷準備開始から20秒後、15秒後、25秒後、及び20秒後である。タイミング制御部120は、これらの準備開始タイミングを取得する。
最後に、ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS35)、ステップS34において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS36)。
図18は、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、インクジェット印刷機10のテスト印刷準備が開始され、本番印刷開始ボタン130を押下すると、インクジェット印刷機10の本番印刷準備が開始される。
図18に示すように、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始と同時にテスト印刷ボトルネック部品である前処理液塗布部22及び本番印刷ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始する。そして、テスト印刷準備開始から10秒後に印字部26の準備を開始し、テスト印刷準備開始から15秒後にセンサ34の準備を開始する。これにより、テスト印刷準備開始から20秒後にテスト印刷の準備が終了する。
インクジェット印刷機10は、テスト印刷準備開始から20秒後にテスト印刷の準備が終了すると、直後にテスト印刷を開始する。テスト印刷では、用紙PにパタンPT1(図5参照)を形成する。テスト印刷は給紙から排紙まで20秒かかるため、テスト印刷が終了するのはテスト印刷準備開始から40秒後である。前述のように、図示しないコンピュータによるテスト印刷の解析は、テスト印刷準備開始から40秒以内に終了する。
ユーザはこのタイミングで本番印刷ボタンを押下する。また、テスト印刷準備開始から20秒後に第1温風ヒータ40の準備を開始し、テスト印刷準備開始から25秒後に赤外線ヒータ38の準備を開始する。
そして、テスト印刷準備開始から60秒後に赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備が終了し、本番印刷が可能となる。
このように、テスト印刷に使用する部品についてはテスト印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングに合わせて準備を終了させ、テスト印刷に使用せず、本番印刷のみ使用する部品については本番印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングに合わせて準備を終了させることで、本番印刷の準備をテスト印刷中に進めつつ、さらに、消費電力低減に寄与することができる。
ここでは、テスト印刷終了直後に、図示しない本番印刷ボタンが押下される例を説明したが、ユーザによってはテスト印刷された用紙Pを目視確認する場合もある。このような場合には、目視確認に必要な時間だけ、テスト印刷に使用せず、本番印刷のみ使用する部品の準備開始を遅らせればよい。
例えば、目視確認に30秒かかるため、テスト印刷終了から30秒後(テスト印刷準備開始から70秒後)に本番印刷を開始すると予め期待される場合は、第2温風ヒータ42の準備終了タイミングをこのタイミングに合わせればよい。したがって、図19に示すように、本番印刷ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備終了タイミングは、テスト印刷準備開始から10秒後となる。また、赤外線ヒータ38及び第1温風ヒータ40の準備開始タイミングは、準備終了タイミングを第2温風ヒータ42の準備終了タイミングと一致させるため、テスト印刷準備開始からそれぞれ35秒後及び30秒後となる。
<第5の実施形態>
第5の本実施形態では、テスト印刷に使用する部品の準備終了タイミングを、テスト印刷用の用紙Pが到達するタイミングに合わせる。図20は、第5の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されているテスト印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS41)。図21に、テスト印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
これまでと同様に、テスト印刷に必要な部品は、給紙部12、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、及び排紙部44である。また、給紙部12及び排紙部44は制御対象から除外する。
特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、テスト印刷に必要な部品の中から、給紙開始後に必要になる時間を考慮したボトルネック部品を特定する(ステップS42)。
各部品の準備時間をTR、給紙開始後にその部品が必要になるまでの時間をTN、とすると、各部品の最短給紙開始時間TSは、下記式3で表される。
TS=TR−TN …(式3)
この最短給紙開始時間TSが最大となる部品が、本実施形態におけるボトルネック部品である。前処理液塗布部22であれば、TR=20秒、TN=5秒であるので、TS=20−5=15秒である。同様に、図21に示すように、印字部26及びセンサ34の最短給紙開始時間TSは、それぞれ0秒及び−7秒である。
したがって、特定部124は、最短給紙開始時間TSが最も長い前処理液塗布部22を、ボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS43)。ボトルネック部品の最短給紙開始時間をTSBとすると、最短給紙開始時間がTSの部品の準備開始タイミングは、ボトルネック部品の準備を開始してから下記式4で表される時間T3の経過後である。
T3=TSB−TS …(式4)
ここで、TSB=15秒であり、印字部26はTS=0秒であるので、印字部26の準備開始タイミングは、前処理液塗布部22の準備を開始してからT3=15−0=15秒後である。また、センサ34はTS=−7秒であるので、センサ34の準備開始タイミングは、前処理液塗布部22の準備を開始してからT3=15+7=22秒後である。
最後に、ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS44)、ステップS43において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS45)。
図22は、前処理液塗布部22、印字部26、及びセンサ34の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、インクジェット印刷機10のテスト印刷準備が開始される。
図22に示すように、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始と同時にボトルネック部品である前処理液塗布部22の準備を開始する。そして、テスト印刷準備開始から15秒後に印字部26の準備を開始し、テスト印刷準備開始から22秒後にセンサ34の準備を開始する。
これにより、前処理液塗布部22はテスト印刷準備開始から20秒後に、印字部26はテスト印刷準備開始から25秒後に、センサ34はテスト印刷準備開始から27秒後に準備が終了する。
また、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始から15秒後に用紙Pの給紙を開始する。したがって、用紙Pは、テスト印刷準備開始から20秒後に前処理液塗布部22に、テスト印刷準備開始から25秒後に印字部26に、テスト印刷準備開始から27秒後にセンサ34に到達する。
このように、テスト印刷準備開始指示を取得すると、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、複数の処理部である部品群46のうちテスト印刷に使用する各部品の調整開始から調整終了までに要する時間と、最初の用紙を搬送開始してから各部品にその用紙Pが到達するタイミングである各部品が最初の用紙Pに処理を施すタイミングまでの時間とから、各部品の最短給紙開始時間が最大となるボトルネック部品を特定し、特定したボトルネック部品の最短給紙時間と各部品の最短給紙開始時間との差分から各部品の準備開始タイミングを算出し、算出したタイミングで各部品の準備を開始させることで、各部品には、準備が終了するとともに用紙Pが到達する。したがって、準備が終了してから処理を行うまでの無駄な待機時間が発生しない。このため、用紙Pを搬送開始してからも、各部品に用紙Pが到達するまでは準備時間として活用できるので、印刷準備開始時間を早める効果があり、また消費電力を低減させることができる。
<第6の実施形態>
第6の本実施形態では、本番印刷に使用する部品の準備終了タイミングを、用紙Pが到達するタイミングに合わせる。図23は、第6の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されている本番印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS51)。図24に、テスト印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、本番印刷に必要な部品の中から、給紙開始後に必要になる時間を考慮したボトルネック部品を特定する(ステップS52)。
ここでは、第5の実施形態と同様に、式3により各部品の最短給紙開始時間TSを算出する。前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の最短給紙開始時間TSは、それぞれ15秒、0秒、−7秒、19秒、23秒、及び42秒である。
したがって、特定部124は、最短給紙開始時間TSが最も長い第2温風ヒータ42を、ボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS53)。ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備開始タイミングは、本番印刷準備開始と同時である。
また、その他の部品の準備開始タイミングは、第5の実施形態と同様に、式4により決定する。前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、及び第1温風ヒータ40の準備開始タイミングは、本番印刷準備開始から、それぞれ27秒後、42秒後、49秒後、23秒後、及び19秒後である。
最後に、ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS54)、ステップS53において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS55)。
図25は、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザが本番印刷開始ボタン130を押下すると、インクジェット印刷機10の本番印刷準備が開始される。
図25に示すように、タイミング制御部120は、本番印刷準備開始と同時にボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始する。そして、本番印刷準備開始から19秒後に第1温風ヒータ40の準備を開始し、本番印刷準備開始から23秒後に赤外線ヒータ38の準備を開始する。さらに、本番印刷準備開始から27秒後に前処理液塗布部22の準備を開始し、本番印刷準備開始から42秒後に印字部26の準備を開始し、本番印刷準備開始から49秒後にセンサ34の準備を開始する。
これにより、前処理液塗布部22は本番印刷準備開始から47秒後に、印字部26は本番印刷準備開始から52秒後に、センサ34は本番印刷準備開始から54秒後に、赤外線ヒータ38は本番印刷準備開始から58秒後に、第1温風ヒータ40は本番印刷準備開始から59秒後に、第2温風ヒータ42は本番印刷準備開始から60秒後に、準備が終了する。
また、タイミング制御部120は、本番印刷準備開始から42秒後に用紙Pの給紙を開始する。したがって、用紙Pは、本番印刷準備開始から47秒後に前処理液塗布部22に、本番印刷準備開始から52秒後に印字部26に、本番印刷準備開始から54秒後にセンサ34に、本番印刷準備開始から58秒後に赤外線ヒータ38に、本番印刷準備開始から59秒後に第1温風ヒータ40に、本番印刷準備開始から60秒後に第2温風ヒータ42に到達する。
このように、本番印刷準備開始指示を取得すると、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、複数の処理部である部品群46のうち本番印刷に使用する各部品の調整開始から調整終了までに要する時間と、最初の用紙を搬送開始してから各部品にその用紙Pが到達するタイミングである各部品が最初の用紙Pに処理を施すタイミングまでの時間とから、各部品の最短給紙開始時間が最大となるボトルネック部品を特定し、特定したボトルネック部品の最短給紙時間と各部品の最短給紙開始時間との差分から各部品の準備開始タイミングを算出し、算出したタイミングで各部品の準備を開始させることで、各部品には、準備が終了するとともに用紙Pが到達する。したがって、準備が終了してから処理を行うまでの無駄な待機時間が発生しない。このため、用紙Pを搬送開始してからも、各部品に用紙Pが到達するまでは準備時間として活用できるので、印刷準備開始時間を早める効果があり、また消費電力を低減させることができる。
<第7の実施形態>
第7の本実施形態では、テスト印刷後に本番印刷を実施する際に、テスト印刷及び本番印刷において部品の準備終了タイミングを、用紙Pが到達するタイミングに合わせる。なお、第4の実施形態と同様に、テスト印刷の終了直後にユーザが本番印刷ボタンを押下するとする。
図26は、第7の実施形態に係る印刷準備方法の処理の一例を示すフローチャートである。
特定部124は、記憶部122に記憶されているテスト印刷及び本番印刷に使用する部品のパラメータを読み出す(ステップS61)。図27に、テスト印刷及び本番印刷に関する部品群46の各部品の準備開始タイミングに関するパラメータを示す。
次に、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、テスト印刷に必要な部品の中から、給紙開始後に必要になる時間を考慮したテスト印刷ボトルネック部品を特定する(ステップS62)。第5の実施形態と同様に、特定部124は前処理液塗布部22をテスト印刷ボトルネック部品として特定する。
同様に、特定部124は、記憶部122に記憶されているパラメータに基づいて、本番印刷に必要な部品の中から、給紙開始後に必要になる時間を考慮した本番印刷ボトルネック部品を特定する(ステップS63)。第6の実施形態と同様に、特定部124は第2温風ヒータ42を本番印刷ボトルネック部品として特定する。
次に、タイミング制御部120は、各部品の準備開始タイミングを取得する(ステップS64)。
本実施形態では、部品群46のうちテスト印刷に使用する部品については、準備終了タイミングをテスト印刷用の用紙Pの到達タイミングに合わせる。このテスト印刷用の用紙Pは、テスト印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングにテスト印刷ボトルネック部品に到達するように搬送を開始する。
また、部品群46のうちテスト印刷に使用せずに本番印刷に使用する部品については、準備終了タイミングを本番印刷用の用紙Pの到達タイミングに合わせる。この本番印刷用の用紙Pは、本番印刷ボトルネック部品の準備終了タイミングに本番印刷ボトルネック部品に到達するように搬送を開始する。
これらの条件を満たす準備開始タイミングは、式3及び式4を用いて決定することができる。すなわち、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミングは、図27に示すように、本番印刷準備開始から、それぞれ0秒後、15秒後、22秒後、23秒後、19秒後、及び0秒後である。
最後に、ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、タイミング制御部120は、この操作を準備開始指示として取得し(ステップS65)、ステップS64において取得した準備開始タイミングにおいて各部品の準備を開始させる(ステップS66)。
図28は、前処理液塗布部22、印字部26、センサ34、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42の準備開始タイミング及び準備終了タイミングを示すタイミングチャートである。ユーザがテスト印刷開始ボタン128を押下すると、インクジェット印刷機10のテスト印刷準備が開始され、本番印刷開始ボタン130を押下すると、インクジェット印刷機10の本番印刷準備が開始される。
図28に示すように、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始と同時にテスト印刷ボトルネック部品である前処理液塗布部22及び本番印刷ボトルネック部品である第2温風ヒータ42の準備を開始する。そして、テスト印刷準備開始から15秒後に印字部26の準備を開始し、テスト印刷準備開始から22秒後にセンサ34の準備を開始する。
これにより、前処理液塗布部22、印字部26、及びセンサ34は、テスト印刷準備開始からそれぞれ20秒後、25秒後、及び27秒後に準備が終了する。
また、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始から15秒後にテスト印刷用の用紙Pの搬送を開始する。したがって、このテスト印刷用の用紙Pは、テスト印刷準備開始から20秒後に前処理液塗布部22に到達し、テスト印刷準備開始から25秒後に印字部26に到達し、テスト印刷準備開始から27秒後にセンサ34に到達する。
したがって、各部品には、準備が終了するとともに用紙Pが到達するので、準備が終了してからテスト印刷に関する処理を行うまでの無駄な待機時間が発生しない。
さらに、図28に示すように、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始から23秒後に赤外線ヒータ38の準備を開始し、テスト印刷準備開始から19秒後に第1温風ヒータ40の準備を開始する。
これにより、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42は、テスト印刷準備開始からそれぞれ58秒後、59秒後、及び60秒後に準備が終了する。
ここで、ユーザは、テスト印刷の終了直後に本番印刷ボタンを押下する。したがって、タイミング制御部120は、テスト印刷準備開始から42秒後に本番印刷用の用紙Pの搬送を開始する。この本番印刷用の用紙Pは、テスト印刷準備開始から47秒後に前処理液塗布部22に到達し、テスト印刷準備開始から52秒後に印字部26に到達し、テスト印刷準備開始から54秒後にセンサ34に到達する。さらに、テスト印刷準備開始から58秒後に赤外線ヒータ38に到達し、テスト印刷準備開始から59秒後に第1温風ヒータ40に到達し、テスト印刷準備開始から60秒後に第2温風ヒータ42に到達する。
このように、テスト印刷が終了した時点から本番印刷を開始する場合と比較して、本番印刷開始までの時間を40秒短縮することができる。また、赤外線ヒータ38、第1温風ヒータ40、及び第2温風ヒータ42には、準備が終了するとともに用紙Pが到達するので、準備が終了してから本番印刷に関する処理を行うまでの無駄な待機時間が発生しない。したがって、消費電力を低減することができる。
<その他の印刷機の形態>
第1の実施形態〜第7の実施形態に係る印刷準備方法を適用できる印刷機は、インクジェット印刷機10及びインクジェット印刷機60に限定されず、例えば以下のような印刷機に適用することも可能である。
図29は、インクジェット印刷機70の全体構成を示す概略図である。なお、図1に示すインクジェット印刷機10と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。インクジェット印刷機70は、中間転写タイプのインクジェット印刷機であり、印字部26に転写ドラム72及びクリーニング部材74を備えている。
転写ドラム72(転写部の一例)は、ベルト搬送部14によって搬送される用紙Pの記録面に外周面が接触する位置に配置されている。なお、転写ドラム72の外周面と用紙Pとが接触する位置がインクジェット印刷機70における画像形成部30である。転写ドラム72は、図示しない駆動部によって図29において左回りに回転駆動される。
図29において転写ドラム72の上側にはインクジェットヘッド28が転写ドラム72の外周面に対向して配置されている。クリーニング部材74は、転写ドラム72の回転方向において、インクジェットヘッド28の上流側に設けられている。
インクジェットヘッド28は、転写ドラム72の外周面に対してインクを吐出する。転写ドラム72の外周面に付与されたインクは、転写ドラム72が回転することで、ベルト搬送部14によって搬送される用紙Pに画像形成部30において転写される。インクが転写された転写ドラム72の外周面は、インクジェットヘッド28に再び対向する位置に到達する前に、クリーニング部材74によってクリーニングされる。
インクジェット印刷機70のテスト印刷においては、転写ドラム72から用紙Pに転写された画像をセンサ34において読み取り、転写された画像が適切な画像であるか否かを確認する。したがって、テスト印刷においては後乾燥部36の準備が終了している必要はない。
図30は、電子写真印刷機76の全体構成を示す概略図である。電子写真印刷機76は、印字部26に感光ドラム78、帯電部80、レーザ描画部82、トナー付着部84、クリーニング部材86、及び定着部88を備えている。
感光ドラム78は、図示しない駆動部によって図30において左回りに回転駆動される。帯電部80は、感光ドラム78の外周面を所望の極性及び電位に一様に帯電する。レーザ描画部82は、感光ドラム78の回転方向において、帯電部80の下流側に配置される。レーザ描画部82は、帯電部80において一様に帯電された感光ドラム78の外周面を画像データに基づいて走査し、感光ドラム78の外周面に静電潜像を形成する。
トナー付着部84は、感光ドラム78の回転方向において、レーザ描画部82の下流側に配置され、感光ドラム78の外周面の静電潜像をトナーで現像する。感光ドラム78の外周面に付与されたトナーは、転写ドラム72が回転することで、ベルト搬送部14によって搬送される用紙Pに画像形成部30において転写される。
トナーが転写された感光ドラム78の外周面は、再び帯電部80に対向する位置に到達する前に、クリーニング部材86によってクリーニングされる。
また、定着部88は、加圧ローラ90を備えている。加圧ローラ90は、用紙Pの記録面のトナー像を加熱及び加圧し、用紙Pに定着させる。加圧ローラ90の内部には図示しないヒータが配置され、温度が制御される。
電子写真印刷機76のテスト印刷においては、感光ドラム78から用紙Pに転写された画像をセンサ34において読み取り、転写された画像が適切な画像であるか否かを確認する。したがって、テスト印刷においては定着部88の準備が終了している必要はない。
図31は、インクジェット印刷機92の全体構成を示す概略図である。なお、図29に示すインクジェット印刷機70と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。インクジェット印刷機92は、印字検出部32のセンサ34が、転写ドラム72に対向して設けられている。
インクジェット印刷機92によれば、インクジェットヘッド28によって転写ドラム72の外周面に形成された画像を読み取り、適切な画像が形成できるように調整することができる。したがって、テスト印刷においてベルト搬送部14が用紙Pを搬送する必要はない。
図32は、電子写真印刷機94の全体構成を示す概略図である。なお、図30に示す電子写真印刷機76と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。電子写真印刷機94は、印字検出部32のセンサ34が、感光ドラム78に対向して設けられている。
電子写真印刷機94によれば、印字部26によって感光ドラム78の外周面に形成された画像を読み取り、適切な画像が形成できるように調整することができる。したがって、テスト印刷においてベルト搬送部14が用紙Pを搬送する必要はない。
<その他のテスト印刷の形態>
インクジェット印刷機10、60、70、及び92におけるテスト印刷の他の形態として、インク吐出量テスト印刷を挙げることができる。図33は、インク吐出量テスト印刷におけるパッチ状のパタンPT2を示す図である。
インク吐出量テスト印刷では、インクジェット吸水層を有するインクジェット専用紙である用紙Pをベルト搬送部14において搬送し、前処理液塗布部22による処理液の塗布を行わずに、印字部26において図33に示すパッチ状のパタンPT2を形成する。このパッチ状のパタンPT2は色毎に各ヘッドモジュール54−1〜54−17によって形成される。続いて、センサ34がパタンPT2を読み取り、パタンPT2を画像データに変換する。この画像データはコンピュータによって解析され、色毎にヘッドモジュール54−1〜54−17間の濃度を適切な濃度範囲になるように調整する。具体的には、ピエゾ方式であれば内部の圧電素子にかける電圧を増減することで実現できる。
インク吐出量テスト印刷では、前処理液塗布部22を使用しないため、第1の実施形態でボトルネック部品として特定されていた前処理液塗布部22がボトルネック部品にならない。したがって、より短時間でテスト印刷を開始することができる。
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。