以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1(a)〜図1(c)は、第1の実施形態に係る歪検知素子を例示する模式図である。
図1(a)は、歪検知素子の模式的斜視図である。図1(b)は、歪検知素子の模式的断面図である。図1(c)は、歪検知素子が用いられる圧力センサを例示する模式的断面図である。図1(b)では、説明の便宜上、第1電極および第2電極を省略している。
図1(a)に表したように、実施形態に係る歪検知素子100は、第1磁性層10と、第2磁性層20と、中間層30と、を含む。この例では、歪検知素子100は、非磁性層40と、第1電極E1と、第2電極E2と、をさらに含む。非磁性層40は、必ずしも設けられていなくともよい。
例えば、第1磁性層10から第2磁性層20に向かう方向をZ軸方向(積層方向)とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
この例では、第2電極E2は、積層方向において第1電極E1とは離隔して設けられる。第1電極E1と第2電極E2との間に、第1磁性層10が設けられる。第1磁性層10と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第2磁性層20が設けられる。第2磁性層20と第2電極E2との間に、非磁性層40が設けられる。
第1磁性層10と第2磁性層20は、中間層30を挟んで、互いに入れ替わって配置されても良い。その場合、非磁性層40は、第2磁性層20と第1電極E1との間に設けられる。
第1磁性層10は、例えば参照層である。参照層として、磁化固定層、または、磁化自由層が用いられる。図1(a)および図1(b)に表した例では、第1磁性層10は、磁化固定層である。例えば、第1磁性層10には、シンセティックピン構造またはシングルピン構造が用いられる。この例では、第1磁性層10には、シンセティックピン構造が用いられている。後述するように、第1磁性層10は、磁化自由層であってもよい。
図1(a)および図1(b)に表した例では、第1磁性層10は、第1磁化固定層11と、第2磁化固定層12と、磁気結合層13と、を含む。磁気結合層13は、第1磁化固定層11と、第2磁化固定層12と、の間に設けられる。
第2磁化固定層12には、例えば、CoxFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは、0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層12として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層12として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。第2磁化固定層12として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。
第1磁性層10にシングルピン構造が用いられる場合には、シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、上述した第2磁化固定層12の材料と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層13は、第2磁化固定層12と第1磁化固定層11との間において、反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層13として、例えば、Ruが用いられる。第1磁化固定層11と第2磁化固定層12との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層13としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層13として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層11に用いられる磁性層は、磁気抵抗効果(MR効果)に直接的に寄与する。第1磁化固定層11として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層11として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは、0at.%以上100at.%以下であり、yは、0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。
第1磁化固定層11として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いても良い。
第1磁化固定層11には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層11として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層11として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層11として、bcc構造のFeCo合金材料、50%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50%以上のNi組成の材料(Ni合金)を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。
第1磁化固定層11として、例えば、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層11として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
第2磁性層20は、例えば、磁化自由層である。歪検知素子100に応力が加わり、歪検知素子100に歪が生ずると、第2磁性層20の磁化が変化する。例えば、第2磁性層20の磁化の変化は、第1磁性層10の磁化の変化よりも容易である。これにより、第1磁性層10の磁化と第2磁性層10の磁化との間の相対角度は、変化する。
第2磁性層20には、強磁性体材料が用いられる。
実施形態では、第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)を含む。第2磁性層20の全体が、Fe1−yBy(0<y≦0.3)により形成されていてもよい。例えば、Fe1−yBy(0<y≦0.3)は、第2磁性層20のうちで第2磁性層20と中間層30との間の境界面20sを含む領域に設けられる。
第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)のうちのFeの一部がCoもしくはNiに置換された材料、すなわち、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)を含んでいてもよい。前述した(FeaX1−a)1−yByにおいて、Xは、CoまたはNiである。つまり、第2磁性層20は、(FeaCo1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)または(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)を含んでいてもよい。
第2磁性層20の全体が、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)により形成されていてもよい。つまり、第2磁性層20の全体が、(FeaCo1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)により形成されていてもよい。または、第2磁性層20の全体が、(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)により形成されていてもよい。例えば、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)は、境界面20sを含む領域に設けられる。
第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)および(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の両方を含んでいてもよい。XがCoである場合には、(FeaCo1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)が境界面20sを含む領域に設けられることがより好ましい。
第2磁性層20は、Co40Fe40B20を含んでいてもよい。この場合、Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられる。
例えば、第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)およびCo40Fe40B20の両方を含む。Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられる。あるいは、例えば、第2磁性層20は、(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)およびCo40Fe40B20の両方を含む。Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられる。
第2磁性層20は、アモルファス部分を含む。例えば、Fe1−yBy(0<y≦0.3)は、アモルファス状態を含む。例えば、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)は、アモルファス状態を含む。
第2磁性層20は、アモルファス部分と、結晶部分と、を含んでも良い。例えば、境界面20sを含む領域が結晶状態を含み、境界面20sを含まない領域がアモルファス状態を含む。
中間層30は、例えば、第1磁性層10と第2磁性層20との磁気的な結合を分断する。中間層30には、例えば、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層30として金属を用いる場合、中間層30の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(Mg−O等)、アルミニウム酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(Ti−O等)、亜鉛酸化物(Zn−O等)、または、ガリウム酸化物(Ga−O)などが用いられる。中間層30として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層30の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。中間層30として、例えば、CCP(Current-Confined-Path)スペーサ層を用いても良い中間層30としてCCPスペーサ層を用いる場合には、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)の絶縁層中に銅(Cu)メタルパスが形成された構造が用いられる。例えば、中間層30として、1.5nmの厚さのMgO層が用いられる。
非磁性層40には、例えば、酸化物、窒化物および酸窒化物の少なくともいずれかが用いられる。非磁性層40は、例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、錫(Sn)、カドミウム(Cd)及びガリウム(Ga)よりなる第1群から選択された少なくともいずれかの酸化物、及び、上記の第1群から選択された少なくともいずれかの窒化物の少なくともいずれかを含む。
非磁性層40は、例えば、マグネシウム、チタン、バナジウム、亜鉛、錫、カドミウム及びガリウムよりなる第2群から選択された少なくともいずれかの酸化物を含んでも良い。非磁性層40には、例えば、低抵抗が得られやすい酸化マグネシウムが用いられる。
第1電極E1及び第2電極E2には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。第1電極E1及び第2電極E2として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、歪検知素子100に効率的に電流を流すことができる。第1電極E1には、非磁性材料を用いることができる。
第1電極E1は、例えば、第1電極E1用の下地層(図示せず)と、第1電極E1用のキャップ層(図示せず)と、それらの間に設けられた、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層と、を含んでもよい。例えば、第1電極E1には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。第1電極E1用の下地層としてTaを用いることで、例えば、基板210と第1電極E1との密着性が向上する。第1電極E1用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
第1電極E1のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。第1電極E1用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いてもよい。
第1電極E1と第2電極E2との間に電圧を印加することで、第1磁性層10、中間層30、第2磁性層20を含む積層体に電流を流すことができる。電流は、第1磁性層10と第2磁性層20との間において、例えば、Z軸方向に沿っている。
第1電極Eと第1磁性層10との間に、図示しないピニング層が設けられていてもよい。ピニング層は、例えば、ピニング層の上に形成される第1磁性層10(強磁性層)に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して、第1磁性層10の磁化を固定する。ピニング層には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層には、例えば、IrMn、PtMn、PdPtMn及びRuRhMnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層の厚さは適切に設定される。
図1(c)に表したように、歪検知素子100は、圧力センサ200に用いられる。圧力センサ200は、基板210と、歪検知素子100と、を含む。基板210は、可撓性の領域を有する。歪検知素子100は、基板210の一部の上に設けられる。
本願明細書において、「上に設けられる」状態は、直接接して設けられる状態の他に、間に他の要素が挿入されて設けられる状態も含む。
基板210に力801が加わると、基板210は変形する。基板210の変形に伴い、歪検知素子100に歪みが生ずる。
実施形態にかかる歪検知素子100において、例えば、外部からの力に対して基板210が変形すると、歪検知素子100に歪みが生ずる。歪検知素子100は、この歪の変化を電気抵抗の変化に変換する。
歪検知素子100が歪センサとして機能する動作は、「逆磁歪効果」と「磁気抵抗効果」との応用に基づく。「逆磁歪効果」は、磁化自由層に用いられる強磁性層において得られる。「磁気抵抗効果」は、磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層膜において発現する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化が強磁性体に生じた歪によって変化する現象である。すなわち、歪検知素子100の積層体に外部歪が印加されると、磁化自由層の磁化方向が変化する。その結果、磁化自由層の磁化と参照層(例えば磁化固定層)の磁化との間の相対角度が変化する。この際に「磁気抵抗効果(MR効果)」により、電気抵抗の変化が引き起こされる。MR効果は、例えば、GMR(Giant magnetoresistance)効果、または、TMR(Tunneling magnetoresistance)効果などを含む。積層体に電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで、MR効果が発現する。例えば、積層体(歪検知素子100)に歪が生じ、歪によって磁化自由層の磁化の向きが変化し、磁化自由層の磁化の向きと、参照層(例えば磁化固定層)の磁化の向きと、の相対角度が変化する。すなわち、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。
磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
以下、磁化自由層と、参照層(例えば磁化固定層)と、に用いられる強磁性材料が、それぞれ正の磁歪定数を有し、磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との磁化の相対角度が小さいときに抵抗が減少する場合の例に関して、磁化の変化の例について説明する。
図2(a)〜図2(c)は、第1の実施形態に係る歪検知素子の動作を例示する模式図である。
図2(a)は、歪検知素子100に引張応力tsが印加されたときの状態(引張状態STt)に対応する。図2(b)は、歪検知素子100が歪を有しないときの状態(無歪状態ST0)に対応する。図2(c)は、歪検知素子100に圧縮応力csが印加されたときの状態(圧縮状態STc)に対応する。
図2(a)〜図2(c)においては、図を見やすくするために、第1磁性層10と、第2磁性層20と、中間層30と、が描かれ、非磁性層40、第1電極E1および第2電極E2は省略されている。この例では、第2磁性層20は磁化自由層であり、第1磁性層10は磁化固定層である。
図2(b)に表したように、歪が無い無歪状態ST0(例えば初期状態)においては、第2磁性層20の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、間の相対角度は、所定の値に設定されている。初期状態の磁性層の磁化の方向は、例えば、外部磁場、ハードバイアス、または、磁性層の形状異方性などにより、設定される。この例では、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、は交差している。
図2(a)に表したように、引張状態STtにおいて、引張応力tsが印加されると、歪検知素子100に引張応力tsに応じた歪が生じる。このとき、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mは、磁化20mと引張応力tsの方向との角度が小さくなるように、無歪状態ST0から変化する。図2(a)に示した例では、引張応力tsが加わった場合は、無歪状態ST0に比べて、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、の間の相対角度が小さくなる。これにより、歪検知素子100における電気抵抗は、無歪状態ST0の時の電気抵抗に比べて減少する。
図2(c)に表したように、圧縮状態STcにおいて、圧縮応力csが印加されると、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mは、磁化20mと圧縮応力csの方向との角度が大きくなるように、無歪状態ST0から変化する。図2(c)に示した例では、圧縮応力csが加わった場合は、無歪状態ST0に比べて、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、の間の相対角度が大きくなる。これにより、歪検知素子100における電気抵抗は、増大する。
このように、歪検知素子100においては、歪検知素子100に生じた歪の変化が、電気抵抗の変化に変換される。上記の動作において、単位歪(dε)あたりの、電気抵抗の変化量(dR/R)をゲージファクター(GF:gauge factor)という。ゲージファクターの高い歪検知素子を用いることで、高感度な歪センサが得られる。
ここで、前述したように、歪検知素子100における電気抵抗の変化は、歪検知素子100に生じた歪により、第2磁性層20(磁化自由層)の磁化20mと、第1磁性層10(例えば磁化固定層)の磁化10mと、の間の相対角度に対応する抵抗変化として検出される。よって、歪による磁化の変化を大きくすることと、第1磁性層10の磁化と第2磁性層20の磁化との間の相対角度の差に依存する抵抗変化を大きくすることと、が高感度な歪センサの実現に求められる。
磁化自由層の磁化を動きやすくするためには、磁化自由層が強い異方性を持たない軟磁気特性を示すことが望ましい。磁化自由層の磁化を動きやすくするためには、磁化自由層が結晶磁気異方性を持たない構造を含むことが望ましい。
一方、一定以上の高い磁気抵抗効果を示すためには、磁化自由層が一定の結晶構造を含むことが望ましい。
このような特性のトレードオフは、歪検知素子100および圧力センサ200の感度の向上の実現を阻むことがある。
歪検知素子100の感度は、例えば、第1磁性層10および第2磁性層20の材料などに依存する。このため、わずかな歪でもより大きい抵抗変化を生ずる磁性材料が求められる。しかし、磁歪、軟磁気特性および磁気抵抗効果のそれぞれについて優れた特性を示す磁性材料は比較的多い一方で、磁歪、軟磁気特性および磁気抵抗効果のすべてについて優れた特性を示す磁性材料はあまり知られていない。したがって、歪検知素子の感度を向上させることが困難な場合がある。
これに対して、実施形態に係る歪検知素子100では、第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)を含む。または、第2磁性層20は、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)を含む。または、第2磁性層20は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)および(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の両方を含む。(FeaX1−a)1−yByにおいて、Xは、CoまたはNiである。
これによれば、磁歪、軟磁気特性および磁気抵抗効果を並立させ、歪検知素子100の感度の向上を図ることができる。この詳細については、後述する。
アモルファス状態は、理想的には結晶磁気異方性を持たず、優れた軟磁気特性を示す。Feベースのアモルファスは、比較的大きな磁歪を示すことが知られている。一方で、磁気抵抗効果を示すためには、第2磁性層20と中間層30との間の境界面20sにおいて結晶性が求められる。第2磁性層20のうちの境界面20sを含む領域が結晶性を有すると、より高い磁気抵抗効果を得ることができる。
このため、第2磁性層20のうちの境界面20sを含む領域が結晶性を有し、第2磁性層20のうちの境界面20sを含まない領域がアモルファス状態である場合には、磁歪、軟磁気特性および磁気抵抗効果を並立させることができる。第2磁性層20がFe1−yBy(0<y≦0.3)および(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の両方を含む場合であって、XがCoである場合において、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)が境界面20sを含む領域に設けられると、一定の磁気抵抗効果を示しながら、軟磁気特性と磁歪とを並立させることができる。これによれば、歪検知素子100の感度のさらなる向上を図ることができる。
第2磁性層20におけるホウ素(B)濃度の分布に関する情報は、SIMS分析(secondary ion mass spectrometry)により得られる。断面TEMとEDXとの組み合わせにより、この情報が得られる。EELS分析により、この情報が得られる。3次元アトムプローブ分析によっても、この情報が得られる。
実施形態に係る歪検知素子100においては、第2磁性層20は、中間層30と非磁性層40との間に設けられる。非磁性層40に用いられる材料は、例えば、前述した通りである。これによれば、ホウ素(B)の拡散が抑制され、第2磁性層20におけるホウ素濃度が維持される。そのため、第2磁性層20の特性の劣化を抑制することができる。例えば、歪検知素子100において、より小さい保磁力Hcと、より大きな磁歪による磁化変化によってより高いゲージファクターと、を得ることができる。
次に、実施形態に係る歪検知素子100の実験結果の例について、図面を参照しつつ説明する。
図3(a)〜図3(c)は、実施形態に係る歪検知素子の実験結果の例を表すグラフ図である。
図3(a)〜図3(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、Fe1−yByを含む。このときのホウ素(B)の原子量比yに関する実験結果の例は、図3(a)〜図3(c)に表した通りである。
図3(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率とホウ素の原子量比yとの関係の例を表す。図3(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力Hcとホウ素の原子量比yとの関係の例を表す。図3(c)は、ゲージファクターB(GFB)とホウ素の原子量比yとの関係の例を表す。
本発明者は、ゲージファクターB(GFB)という指標を用いて、実施形態に係る歪検知素子100の評価を行う。GFBは、MRと歪による磁化変化率の乗数で表され、ゲージファクター(GF)に比例する。つまり、GFBが相対的に大きいと、相対的に高いGFが得られる。GFBが相対的に小さいと、相対的に低いGFが得られる。図2(a)〜図2(c)に関して前述したように、ゲージファクターの高い歪検知素子を用いることで、高感度な歪センサが得られる。高感度な歪センサを得るために、より高いGF(より大きいGFB)が望まれる。
保磁力Hcは、磁化回転の容易さを示す特性指標である。高感度な歪センサを得るために、より小さい保磁力Hcが望まれる。
図1(a)〜図1(c)に関して前述したように、MR効果は、磁化の向きの相対角度の変化を電気抵抗変化として読み取ることで得られる効果である。高感度な歪センサを得るために、すなわち、第1磁性層10の磁化と第2磁性層20の磁化との間の相対角度の差に依存する抵抗変化を大きくするために、より高いMR変化率が望まれる。
図3(a)に表したように、ホウ素の原子量比yが0.3よりも大きくなると、MRが比較的小さくなることが分かる。図3(b)に表したように、ホウ素の原子量比yが0.3である場合には、比較的小さい保磁力Hcが得られることが分かる。図3(c)に表したように、ホウ素の原子量比yが0.3である場合には、歪による磁化変化が十分に生じ、4000以上のGFBが得られることが分かる。これにより、第2磁性層20のホウ素の原子量比yは、0.3以下であることが好ましい。
一方で、図3(a)に表したように、第2磁性層20がホウ素を含まない場合(y=0の場合)には、MRが比較的小さくなることが分かる。図3(b)に表したように、第2磁性層20がホウ素を含まない場合(y=0の場合)には、保磁力Hcが比較的大きいことが分かる。図3(c)に表したように、第2磁性層20がホウ素を含まない場合(y=0の場合)には、歪による磁化変化がほとんどなく、GFBが約0程度であることが分かる。これにより、第2磁性層20のホウ素の原子量比yは、0よりも大きいことが好ましい。
図3(a)〜図3(c)に表したように、第2磁性層20のホウ素の原子量比yは、0よりも大きく0.3以下であることが好ましい。図3(a)〜図3(c)に表したように、第2磁性層20のホウ素の原子量比yは、0.1以上0.3以下であることがより好ましい。
図4(a)〜図4(c)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図4(a)〜図4(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、(FeaCo1−a)1−yByを含む。このときの鉄(Fe)の原子量比a、言い換えれば、このときのコバルト(Co)の原子量比1−aに関する実験結果の例は、図4(a)〜図4(c)に表した通りである。
図4(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率と鉄の原子量比aとの関係の例を表す。図4(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力Hcと鉄の原子量比aとの関係の例を表す。図4(c)は、ゲージファクターB(GFB)と鉄の原子量比aとの関係の例を表す。
なお、本検討においては、ホウ素の原子量比yは、0.1≦y<0.3である。
図4(c)に表したように、鉄の原子量比aが約0.8以上である場合に、4000以上のGFBが得られることが分かる。言い換えれば、コバルトの原子量比1−aが約0.2以下である場合に、4000以上のGFBが得られることが分かる。このとき、図4(a)に表したように、比較的大きいMRが得られることが分かる。図4(b)に表したように、比較的小さい保磁力Hcが得られることが分かる。これにより、第2磁性層20の鉄の原子量比aは、0.8以上であることが好ましい。言い換えれば、第2磁性層20のコバルトの原子量比1−aは、0.2以下であることが好ましい。
図5(a)〜図5(c)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図5(a)〜図5(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、(FeaNi1−a)1−yByを含む。このときの鉄(Fe)の原子量比a、言い換えれば、このときのニッケル(Ni)の原子量比1−aに関する実験結果の例は、図5(a)〜図5(c)に表した通りである。
図5(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率と鉄の原子量比aとの関係の例を表す。図5(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力Hcと鉄の原子量比aとの関係の例を表す。図5(c)は、ゲージファクターB(GFB)と鉄の原子量比aとの関係の例を表す。
なお、本検討においては、ホウ素の原子量比yは、0.1≦y<0.3である。
図5(c)に表したように、鉄の原子量比aが約0.8以上である場合に、4000以上のGFBが得られることが分かる。言い換えれば、ニッケルの原子量比1−aが約0.2以下である場合に、4000以上のGFBが得られることが分かる。このとき、図5(a)に表したように、比較的大きいMRが得られることが分かる。図5(b)に表したように、比較的小さい保磁力Hcが得られることが分かる。これにより、第2磁性層20の鉄の原子量比aは、0.8以上であることが好ましい。言い換えれば、第2磁性層20のニッケルの原子量比1−aは、0.2以下であることが好ましい。
図6(a)〜図6(c)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図6(a)〜図6(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、Fe1−yByを含む。このときのFe1−yByの厚さtに関する実験結果の例は、図6(a)〜図6(c)に表した通りである。
図6(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率とFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。図6(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力HcとFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。図6(c)は、ゲージファクターB(GFB)とFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。
図6(a)に表したように、Fe1−yByの厚さtが2ナノメートル(nm)以上である場合に、比較的大きいMRが得られることが分かる。Fe1−yByの厚さtが2nmよりも小さくなると、MRが減少する。すると、十分な磁気特性が得られない場合がある。図6(b)に表したように、Fe1−yByの厚さtが2nm以上である場合に、比較的小さい保磁力Hcが得られることが分かる。図6(c)に表したように、Fe1−yByの厚さtが2nm以上である場合に、4000以上のGFBが得られることが分かる。これにより、Fe1−yByの厚さtは、2nm以上であることが好ましい。
Fe1−yByの厚さtが2nm以上である場合には、第2磁性層20のうちの境界面20sを含む領域が結晶性を有することを維持し、第2磁性層20のうちの境界面20sを含まない領域がアモルファス状態であることを維持することができる。
一方で、図6(c)に表したように、Fe1−yByの厚さtが12nmよりも厚くなると、GFBが4000よりも小さくなり、比較的小さい値となることが分かる。これにより、Fe1−yByの厚さtは、12nm以下であることがより好ましい。
図6(a)〜図6(c)に表したように、Fe1−yByの厚さtは、2nm以上であることが好ましい。図6(a)〜図6(c)に表したように、Fe1−yByの厚さtは、2nm以上12nm以下であることがより好ましい。
図7(a)〜図7(c)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図7(a)〜図7(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、Fe1−yByおよびCo40Fe40B20の両方を含む。Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられる。このときのFe1−yByの厚さtに関する実験結果の例は、図7(a)〜図7(c)に表した通りである。本実験では、Co40Fe20B20の厚さlを0nm、0.5nm、1nmにそれぞれ設定する。
図7(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率とFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。図7(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力HcとFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。図7(c)は、ゲージファクターB(GFB)とFe1−yByの厚さtとの関係の例を表す。
図7(c)に表したように、数nmのCo40Fe40B20を境界面20sに設けた場合でも、4000以上のGFBが得られることがわかる。これは、図7(a)に表したように、FeBのみの場合よりも大きなMRが得られ、図7(b)に表したように、比較的小さい保磁力Hcが得られるためである。これより、Fe1−yByおよびCo40Fe40B20の両方が第20磁性層に含まれる場合、Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられるのが望ましい。結晶化しやすいCo40Fe40B20を境界面に設けることでMRを増大させ、スピンの向きの変化に敏感な歪センサを実現することが可能となる。
図8(a)〜図8(c)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図8(a)〜図8(c)の実験結果の例における歪検知素子100の第2磁性層20は、(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)およびCo40Fe40B20の両方を含む。Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられる。このときの(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の厚さtに関する実験結果の例は、図8(a)〜図8(c)に表した通りである。本実験では、Co40Fe20B20の厚さlを0nm、0.5nm、1nmにそれぞれ設定する。
図8(a)は、実施形態に係る歪検知素子において、MR変化率と(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の厚さtとの関係の例を表す。図8(b)は、実施形態に係る歪検知素子において、保磁力Hcと(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の厚さtとの関係の例を表す。図8(c)は、ゲージファクターB(GFB)と(FeaNi1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の厚さtとの関係の例を表す。
図8(c)に表したように、数nmのCo40Fe40B20を境界面20sに設けた場合でも、4000以上のGFBが得られ、(FeaNi1-a)1−yByのみの構成を上回ることも可能なことがわかる。これは、図8(a)に表したように、(FeaNi1-a)1−yByのみの場合よりも大きなMRが得られ、図8(b)に表したように、比較的小さい保磁力Hcを維持できる。言い換えれば、保磁力Hcの微増分をMRの増加分で購うことが可能なためである。これより、(FeaNi1-a)1−yByおよびCo40Fe40B20の両方が第2磁性層20に含まれる場合、Co40Fe40B20は、境界面20sを含む領域に設けられるのが望ましい。結晶化しやすいCo40Fe40B20を境界面に設けることでMRを増大させ、スピンの向きの変化に敏感な歪センサを実現することが可能となる。
図9(a)〜図9(d)は、歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図9(a)および図9(b)は、実施形態に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図9(c)および図9(d)は、比較例に係る歪検知素子の別の実験結果の例を表すグラフ図である。
図9(a)および図9(c)の縦軸は、磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))を表す。図9(a)および図9(c)の横軸は、磁場を表す。つまり、図9(a)および図9(c)は、いわゆるB−H曲線(B−Hループ)を表す。
図9(b)および図9(d)の縦軸は、定磁場(この例では0磁場)を表す。図9(b)および図9(d)の横軸は、歪を表す。
図9(a)および図9(b)の実験結果の例における実施形態に係る歪検知素子100の第2磁性層20は、Fe1−yByを含む。
図9(c)および図9(d)の実験結果の例における比較例に係る歪検知素子の第2磁性層20は、Co40Fe40B20を含む。
図9(a)のグラフ図と、図9(c)のグラフ図と、を比較すると、第2磁性層20がFe1−yByを含む場合において、歪が加わったときのB−Hが大きく変化する。これにより、図9(b)のグラフ図と、図9(d)のグラフ図と、を比較すると、第2磁性層20がFe1−yByを含む場合において、定磁場でのBを歪により大きく変化させることができる。したがって、この磁性材料(Fe1−yByを含む材料)によれば、一定のホウ素量を含む条件の下で、高い感度を持つ歪センサを実現することが可能となる。
なお、比較例に係る歪検知素子のCo40Fe40B20のGFBは、約1500程度である。
図10(a)〜図10(d)は、実施形態の歪検知素子の歪センサ特性の結果の例を示すグラフ図である。
図10(a)に表した例では、素子サイズが20μm×20μmの歪検知素子100について、歪検知素子100に加わる歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で、0.2(%0)刻みで固定値として設定する。図10(a)は、それぞれの歪で電気抵抗の磁場依存性を測定した結果の例をそれぞれ示している。図10(a)より、印加歪の値によりR−Hループ形状が変化していることがわかる。これは、逆磁歪効果によって、磁化自由層の面内磁気異方性が変化していることを示している。
図10(b)〜図10(d)は、歪検知素子100について、外部磁場は固定し、歪を−0.8(%0)以上0.8(%0)以下の間で連続的に掃引する場合の電気抵抗の変化を示す。歪については、−0.8(%0)から0.8(%0)へ掃引させ、続いて、0.8(%0)から−0.8(%0)へ掃引させる。これらの結果が、歪センサ特性を示している。図10(b)では、5Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図10(c)では、2Oeの外部磁場を加えて評価を行う。図10(d)では、0Oeで評価を行う。
実施形態の歪検知素子100では、適切なバイアス磁界を加えることで高いゲージファクターを得ることができる。外部磁界については、ハードバイアスを歪検知素子の側壁に設けたり、磁化自由層の上部にインスタックバイアスを設けることによっても加えることができる。実施形態の歪検知素子100では、簡易的に外部磁場をコイルによって与えて評価する。図10(b)〜図10(d)より、ゲージファクターを、歪に対する電気抵抗の変化から見積もる。
ゲージファクターは、次式で表される。
GF=(dR/R)/dε
図10(b)より、外部磁界が5Oeであるときのゲージファクターは、3086である。図10(c)より、外部磁界が2Oeであるときのゲージファクターは、4418である。図10(d)より、外部磁界が0Oeであるときのゲージファクターは、5290である。この結果より、バイアス磁界が0Oeの場合に、最大ゲージファクター(5290)が得られる。
図11(a)および図11(b)は、第1の実施形態に係る別の歪検知素子を例示する模式図である。
図11(a)は、歪検知素子の模式的斜視図である。図11(b)は、歪検知素子の模式的断面図である。図11(b)では、説明の便宜上、第1電極および第2電極を省略している。
図11(a)に表したように、実施形態に係る歪検知素子100aは、第1磁性層10と、第2磁性層20と、中間層30と、を含む。この例では、歪検知素子100aは、第1非磁性層51と、第2非磁性層52と、第1電極E1と、第2電極E2と、をさらに含む。第1非磁性層51および第2非磁性層52は、必ずしも設けられていなくともよい。
図1(a)および図1(b)に関して前述した歪検知素子100では、第1磁性層10は、磁化固定層である。
これに対して、図11(a)および図11(b)に表した歪検知素子100aでは、第1磁性層10は、磁化自由層である。
この例では、第2電極E2は、積層方向において第1電極E1とは離隔して設けられる。第1電極E1と第2電極E2との間に、第1非磁性層51が設けられる。第1非磁性層51と第2電極E2との間に、第1磁性層10が設けられる。第1磁性層10と第2電極E2との間に、中間層30が設けられる。中間層30と第2電極E2との間に、第2磁性層20が設けられる。第2磁性層20と第2電極E2との間に、第2非磁性層52が設けられる。
図11(a)および図11(b)に表した歪検知素子100aでは、第1磁性層10には、強磁性体材料が用いられる。第1磁性層10は、図1(a)および図1(b)に関して前述した第2磁性層20と同じ材料を含む。
すなわち、この例では、第1磁性層10は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)を含む。または、第1磁性層10は、(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)を含む。または、第1磁性層10は、Fe1−yBy(0<y≦0.3)および(FeaX1−a)1−yBy(0.8≦a<1、0<y≦0.3)の両方を含む。(FeaX1−a)1−yByにおいて、Xは、CoまたはNiである。
第1非磁性層51は、図1(a)および図1(b)に関して前述した非磁性層40と同じ材料を含む。第2非磁性層52は、図1(a)および図1(b)に関して前述した非磁性層40と同じ材料を含む。
第2磁性層20は、図1(a)および図1(b)に関して前述した通りである。中間層30は、図1(a)および図1(b)に関して前述した通りである。第1電極E1は、図1(a)および図1(b)に関して前述した通りである。図2電極E2は、図1(a)および図1(b)に関して前述した通りである。
実施形態に係る歪検知素子100aにおいても、実施形態に係る歪検知素子100と同様に、磁歪、軟磁気特性および磁気抵抗効果を並立させ、歪検知素子100aの感度の向上を図ることができる。
なお、第1非磁性層51と第1電極E1との間、および第2非磁性層52と第2電極E2との間の少なくともいずれかに、図1に関して前述した図示しない磁化固定層およびピニング層が設けられていてもよい。
(第2の実施形態)
実施形態は、圧力センサに係る。圧力センサにおいては、第1の実施形態の歪検知素子100、100a、及び、その変形の歪検知素子の少なくともいずれかが用いられる。以下では、歪検知素子として、歪検知素子100を用いる場合について説明する。
図12(a)及び図12(b)は、第2の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
図12(a)は、模式的斜視図である。図12(b)は、図12(a)のA1−A2線断面図である。
図12(a)及び図12(b)に表したように、実施形態に係る圧力センサ200は、基板210と、歪検知素子100と、を含む。
図12(a)および図12(b)に表したように、実施形態に係る圧力センサ200は、支持部201と、基板210と、歪検知素子100と、を含む。
基板210は、支持部201に支持される。基板210は、例えば、可撓性領域を有する。基板210は、例えば、ダイアフラムである。基板210は、支持部201と一体的でも良く、別体でも良い。基板210には、支持部201と同じ材料を用いても良く、支持部201とは異なる材料を用いても良い。支持部201の一部を除去して、支持部201のうちの厚さが薄い部分が基板210となっても良い。
基板210の厚さは、支持部201の厚さよりも薄い。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分が基板210となり、厚い部分が支持部201となる。
支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられても良い。このとき、例えば、基板210となる材料の膜が、支持部201の貫通孔201h以外の部分の上にも延在している場合がある。このとき、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分が基板210となる。
基板210は、外縁210rを有する。基板210と支持部201とに同じ材料が用いられ、これらが一体的である場合は、厚さが薄い部分の外縁が、基板210の外縁210rとなる。支持部201が、支持部201を厚さ方向に貫通する貫通孔201hを有しており、貫通孔201hを覆うように基板210が設けられている場合は、基板210となる材料の膜のうちで、貫通孔201hと重なる部分の外縁が基板210の外縁210rとなる。
支持部201は、基板210の外縁210rを連続的に支持しても良く、基板210の外縁210rの一部を支持しても良い。
歪検知素子100は、基板210の上に設けられる。例えば、歪検知素子100は、基板210の一部の上に設けられる。この例では、基板210上に、複数の歪検知素子100が設けられる。膜部上に設けられる歪検知素子の数は、1でも良い。
図12に表した圧力センサ200においては、第1配線221及び第2配線222が設けられている。第1配線221は、歪検知素子100に接続される。第2配線222は、歪検知素子100に接続される。例えば、第1配線221と第2配線222との間には、層間絶縁膜が設けられ、第1配線221と第2配線222とが電気的に絶縁される。第1配線221と第2配線222との間に電圧が印加され、この電圧が、第1配線221及び第2配線222を介して、歪検知素子100に印加される。圧力センサ200に圧力が加わると、基板210が変形する。歪検知素子100においては、基板210の変形に伴って電気抵抗Rが変化する。電気抵抗Rの変化を第1配線221及び第2配線222を介して検知することで、圧力を検知できる。
支持部201には、例えば、板状の基板を用いることができる。基板の内部には、例えば、空洞部(貫通孔201h)が設けられている。
支持部201には、例えば、シリコンなどの半導体材料、金属などの導電材料、または、絶縁性材料を用いることができる。支持部201は、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを含んでも良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、例えば減圧状態(真空状態)である。空洞部(貫通孔201h)の内部に、空気などの気体、または、液体が充填されていても良い。空洞部(貫通孔201h)の内部は、基板210が撓むことができるように設計される。空洞部(貫通孔201h)の内部は、外部の大気とつながっていてもよい。
空洞部(貫通孔201h)の上には、基板210が設けられている。基板210には、例えば、支持部201の一部が薄く加工され部分が用いられる。基板210の厚さ(Z軸方向の長さ)は、支持部201の厚さ(Z軸方向の長さ)よりも薄い。
基板210に圧力が印加されると、基板210は変形する。この圧力は、圧力センサ200が検知すべき圧力に対応する。印加される圧力は、音波または超音波などによる圧力も含む。音波または超音波などによる圧力を検知する場合は、圧力センサ200は、マイクロフォンとして機能する。
基板210には、例えば、絶縁性材料が用いられる。基板210は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンの少なくともいずれかを含む。基板210には、例えば、シリコンなどの半導体材料を用いても良い。基板210には、例えば、金属材料を用いても良い。
基板210の厚さは、例えば、0.1マイクロメートル(μm)以上3μm以下である。この厚さは、0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。基板210には、例えば、厚さが0.2μmの酸化シリコン膜と、厚さが0.4μmのシリコン膜と、の積層体を用いても良い。
以下、実施形態に係る圧力センサの製造方法の例について説明する。以下は、圧力センサの製造方法の例である。
図13(a)〜図13(e)は、実施形態に係る圧力センサの製造方向を例示する工程順模式的断面図である。
図13(a)に表したように、基体241(例えばSi基板)の上に薄膜242を形成する。基体241は、支持部201となる。薄膜242は、基板210となる。
例えば、Si基板上に、SiOx/Siの薄膜242をスパッタにより形成する。薄膜242として、SiOx単層、SiN単層、または、Alなどの金属層を用いても良い。また、薄膜242として、ポリイミドまたはパラキシリレン系ポリマーなどのフレキシブルプラスティック材料を用いても良い。SOI(Silicon On Insulator)基板を、基体241及び薄膜242として用いても良い。SOIにおいては、例えば、基板の貼り合わせによってSi基板上にSiO2/Siの積層膜が形成される。
図13(b)に表したように、第2配線222を形成する。この工程においては、第2配線222となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第2配線222の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理においては、例えば、第2配線222のパターンのエッチング後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図13(c)に表したように、歪検知素子100を形成する。この工程においては、歪検知素子100となる積層体を形成し、その積層体を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。歪検知素子100の積層体の側壁を絶縁層で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、例えば、積層体の加工後、レジストを剥離する前、絶縁層を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図13(d)に表したように、第1配線221を形成する。この工程においては、第1配線221となる導電膜を形成し、その導電膜を、フォトリソグラフィー及びエッチングにより加工する。第1配線221の周辺を絶縁膜で埋め込む場合、リフトオフ処理を適用しても良い。リフトオフ処理において、第1配線221の加工後、レジストを剥離する前に、絶縁膜を全面に成膜して、その後レジストを除去する。
図13(e)に表したように、基体241の裏面からエッチングを行い、空洞部201aを形成する。これにより、基板210及び支持部201が形成される。例えば、基板210となる薄膜242として、SiOx/Siの積層膜を用いる場合は、薄膜242の裏面(下面)から表面(上面)へ向かって、基体241の深堀加工を行う。これにより、空洞部201aが形成される。空洞部201aを形成においては、例えば両面アライナー露光装置を用いることができる。これにより、表面の歪検知素子100の位置に合わせて、レジストのホールパターンを裏面にパターニングできる。
Si基板のエッチングにおいて、例えばRIEを用いたボッシュプロセスが用いることができる。ボッシュプロセスでは、例えば、SF6ガスを用いたエッチング工程と、C4F8ガスを用いた堆積工程と、を繰り返す。これにより、基体241の側壁のエッチングを抑制しつつ、基体241の深さ方向(Z軸方向)に選択的にエッチングが行われる。エッチングのエンドポイントとして、例えば、SiOx層が用いられる。すなわち、エッチングの選択比がSiとは異なるSiOx層を用いてエッチングを終了させる。エッチングストッパ層として機能するSiOx層は、基板210の一部として用いられても良い。SiOx層は、エッチングの後に、例えば、無水フッ化水素及びアルコールなどの処理などで除去されても良い。
このようにして、実施形態に係る圧力センサ200が形成される。実施形態に係る他の圧力センサも同様の方法により製造できる。
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態に係るマイクロフォンを例示する模式的平面図である。
図14に示すように、マイクロフォン410は、前述した各実施形態に係る任意の圧力センサ(例えば、圧力センサ200)や、それらの変形に係る圧力センサを有する。以下においては、一例として、圧力センサ200を有するマイクロフォン410について例示をする。
マイクロフォン410は、携帯情報端末420の端部に組み込まれている。マイクロフォン410に設けられた圧力センサ200の基板210は、例えば、携帯情報端末420の表示部421が設けられた面に対して実質的に平行とすることができる。なお、基板210の配置は例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
マイクロフォン410は、圧力センサ200などを備えているので、広域の周波数に対して高感度とすることができる。
なお、マイクロフォン410が携帯情報端末420に組み込まれている場合を例示したがこれに限定されるわけではない。マイクロフォン410は、例えば、ICレコーダーやピンマイクロフォンなどにも組み込むことができる。
(第4の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた音響マイクに係る。
図15は、第4の実施形態に係る音響マイクを例示する模式的断面図である。
実施形態に係る音響マイク430は、プリント基板431と、カバー433と、圧力センサ200と、を含む。プリント基板431は、例えばアンプなどの回路を含む。カバー433には、アコースティックホール435が設けられる。音439は、アコースティックホール435を通って、カバー433の内部に進入する。
圧力センサ200として、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
音響マイク430は、音圧に対して感応する。高感度な圧力センサ200を用いることにより、高感度な音響マイク430が得られる。例えば、圧力センサ200をプリント基板431の上に搭載し、電気信号線を設ける。圧力センサ200を覆うように、プリント基板431の上にカバー433を設ける。
実施形態によれば、高感度な音響マイクを提供することができる。
(第5の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた血圧センサに係る。
図16(a)及び図16(b)は、第5の実施形態に係る血圧センサを例示する模式図である。
図16(a)は、ヒトの動脈血管の上の皮膚を例示する模式的平面図である。図16(b)は、図16(a)のH1−H2線断面図である。
実施形態においては、圧力センサ200は、血圧センサ440として応用される。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
これにより、小さいサイズの圧力センサで高感度な圧力検知が可能となる。圧力センサ200を動脈血管441の上の皮膚443に押し当てることで、血圧センサ440は、連続的に血圧測定を行うことができる。
本実施形態によれば、高感度な血圧センサを提供することができる。
(第6の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いたタッチパネルに係る。
図17は、第6の実施形態に係るタッチパネルを例示する模式的平面図である。
実施形態においては、圧力センサ200が、タッチパネル450として用いられる。この圧力センサ200には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。タッチパネル450においては、圧力センサ200が、ディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
例えば、タッチパネル450は、複数の第1配線451と、複数の第2配線452と、複数の圧力センサ200と、制御部453と、を含む。
この例では、複数の第1配線451は、Y軸方向に沿って並ぶ。複数の第1配線451のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる。複数の第2配線452は、X軸方向に沿って並ぶ。複数の第2配線452のそれぞれは、Y軸方向に沿って延びる。
複数の圧力センサ200のそれぞれは、複数の第1配線451と複数の第2配線452とのそれぞれの交差部に設けられる。圧力センサ200の1つは、検出のための検出要素200eの1つとなる。ここで、交差部は、第1配線451と第2配線452とが交差する位置及びその周辺の領域を含む。
複数の圧力センサ200のそれぞれの一端261は、複数の第1配線451のそれぞれと接続される。複数の圧力センサ200のそれぞれの他端262は、複数の第2配線452のそれぞれと接続される。
制御部453は、複数の第1配線451と複数の第2配線452とに接続される。
例えば、制御部453は、複数の第1配線451に接続された第1配線用回路453aと、複数の第2配線452に接続された第2配線用回路453bと、第1配線用回路453aと第2配線用回路453bとに接続された制御回路455と、を含む。
圧力センサ200は、小型で高感度な圧力センシングが可能である。そのため、高精細なタッチパネルを実現することが可能である。
上記の各実施形態に係る圧力センサは、上記の応用の他に、気圧センサ、または、タイヤの空気圧センサなどのように、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
実施形態によれば、高感度の歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを提供することができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルに含まれる基板、歪検知素子、第1磁性層、第2磁性層、中間層および非磁性層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての歪検知素子、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。