JP6559996B2 - 耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに、耐熱性製品 - Google Patents

耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに、耐熱性製品 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物とそれらの製造方法、シランマスターバッチ、並びに、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を用いた耐熱性製品に関する。
電気・電子機器の内部配線若しくは外部配線に使用される絶縁電線、ケーブル、コード、光ファイバ心線又は光ファイバコードの各配線材には、難燃性、機械特性(例えば、引張特性)、耐油性(浸油しても物性の低下が小さい特性)など種々の特性が要求されている。これらの配線材の被覆層に使用される材料としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物を樹脂に多量に配合した樹脂組成物が挙げられる。
また、配線材は、長時間の使用により、80〜105℃、さらには125℃位にまで昇温することがあり、これに対する耐熱性も要求される場合がある。このような要求を満たすために、樹脂組成物中の樹脂を架橋(橋架け)する方法がとられている。
樹脂の架橋方法として、例えば、樹脂組成物に電子線を照射する電子線架橋法、化学架橋法等が挙げられる。化学架橋法としては、有機過酸化物等を加熱分解して樹脂を架橋反応させる架橋法、及び、下記のシラン架橋法が知られている。これらの架橋法のなかでも、特に、シラン架橋法は特殊な設備を要しないことが多いため、幅広い分野で使用することができる。
シラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有する加水分解性シランカップリング剤を樹脂にグラフト反応させてシラングラフト樹脂を得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフト樹脂を水分と接触させることにより、架橋した樹脂を得る方法である。
シラン架橋法を用いて、ハロゲンフリーの耐熱性シラン架橋樹脂からなる成形体を製造するには、まず、ポリオレフィン樹脂等の樹脂に加水分解性シランカップリング剤をグラフトさせたシラングラフト樹脂を含有するシランマスターバッチと、樹脂及び無機フィラーを混練して得られる耐熱性マスターバッチと、シラノール縮合触媒を含有した触媒マスターバッチとを、それぞれ、調製する。次いで、これらのマスターバッチを溶融混合して成形した後に水分と接触させる。
しかし、この方法では、樹脂100質量部に対して100質量部を超える無機フィラーを配合すると、シランマスターバッチと耐熱性マスターバッチとを乾式混合した後に単軸押出機や二軸押出機内にて均一に溶融混練することが困難になる。そのため、成形体の外観が悪くなる。また、成形体の物性が低下する。さらには、混練時の押出負荷を高くできない。
このように、シランマスターバッチと耐熱性マスターバッチとを乾式混合した後に均一に溶融混練するには、上述のように無機フィラーの割合が制限されてしまう。そのため、高難燃化・高耐熱化することが困難であった。
そもそも、上記のように無機フィラーを多量に配合する場合、所望のシランマスターバッチを調製することが困難となる。無機フィラーを多量に配合する場合、通常、連続混練機、加圧式ニーダーやバンバリーミキサー等の密閉型ミキサーを用いることが一般的である。しかし、ニーダー等を用いると、加水分解性シランカップリング剤がグラフト反応する前に揮発してしまう。そのため、シランマスターバッチを調製しにくくなる。
そこで、ニーダー等を用いる場合、耐熱性マスターバッチと、加水分解性シランカップリング剤と、有機過酸化物とを混合した後に単軸押出機内でグラフト反応させる方法が考えられる。しかし、この方法では、グラフト反応のばらつき等によって成形体に外観不良が生じることがある。また、製造工程が2工程となり、製造コスト面でもこれが難点となっている。
また、シランマスターバッチと無機フィラーを混練する方法も考えられる。しかし、この方法では、シラングラフト樹脂の調製時(混練中)に加水分解性シランカップリング剤が加水分解・縮合反応して、外観不良が発生しやすい。さらに、混練中の加熱温度が一定でないと所望の物性を成形体に付与できない。しかも、製造上の課題も多く、2工程となるため製造コスト面でも大きな難点となっている。
上記方法以外のシラン架橋法として、例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂及び無水マレイン酸系樹脂を混合してなる樹脂成分にシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー、シランカップリング剤、有機過酸化物及び架橋触媒をニーダーにて十分に溶融混練した後に、単軸押出機にて成形する方法が提案されている。
また、特許文献2〜4にはブロック共重合体等をベースポリマーとし、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を加えたビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を、シラン表面処理された無機フィラーを介して有機過酸化物を用いて部分架橋する方法が提案されている。
さらに、特許文献5には、エチレン酢酸ビニル樹脂を含むベースポリマー、有機過酸化物、シランカップリング剤、金属水和物を含有するシラン架橋性難燃ポリオレフィン成分を製造し、これとシラノール縮合触媒組成物とを溶融成形し、水存在下で架橋する方法が記載されている。
特開2001−101928号公報 特開2000−143935号公報 特開2000−315424号公報 特開2001−240719号公報 特開2012−255077号公報
特許文献1に記載された方法では、ニーダー等での溶融混練中に樹脂が架橋することがある。さらに、無機フィラーを表面処理しているシランカップリング剤以外のシランカップリング剤が揮発し、又は、互いに縮合することがある。そのため、得られる成形体に所望の耐熱性を付与できない。加えて、成形体に外観不良を引き起こす。
特許文献2〜4に記載された方法であっても、まだ、樹脂が十分な網状構造になっていないため高温で樹脂と無機フィラーの結合が切れやすく、得られた成形体の耐熱性が十分ではない。高温下で成形体が溶融し、例えば電線をハンダ加工中に絶縁材が熔けてしまうことがある。また2次加工する際に変形したり、発泡を生じたりすることがある。
特許文献5に記載された方法は、外観荒れや外観不良を生じるという問題がある。
ところで、配線材は、用途等に応じて、上記特性の他に、低温性(耐寒性ともいう)が要求される場合がある。例えば、冷蔵庫等に使用される配線や低温環境、所謂屋外で使用される配線等は、低温環境下でもクラックが発生しにくいこと(低温性)も考慮される。
本発明は、従来のシラン架橋法が有する課題を克服し、優れた外観を保持し、さらには機械特性、難燃性、耐油性及び低温性も兼ね備えた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、この耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な、シランマスターバッチ、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法で得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品を提供することを課題とする。
本発明者らは、シラン架橋法において、アクリルゴムとポリプロピレン樹脂とを特定量含むベース樹脂を用いて調製したシランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又はシラノール縮合触媒を含む触媒マスターバッチとを混合する特定の製造方法により耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造すると、得られる耐熱性シラン架橋樹脂成形体に、外観に加えて、機械特性、難燃性、耐油性及び低温性の各特性を優れたレベルで付与できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量
部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラ
ノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0
質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリ
ング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シラン
架橋性樹脂を含む耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られた耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を成形して成
形体を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹
脂成形体を得る工程
前記ベース樹脂が、アクリルゴム5〜80質量%と、ポリプロピレン樹脂3〜30質量%とを含有し、
前記工程(1)を行うにあたり、下記工程(a−2)においてベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し下記工程(a−2)において前記ベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合し
て混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸化
物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融
混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフ
ト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含むシランマスタ
ーバッチを調製する工程
工 程 (b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して
、触媒マスターバッチを調製する工程
工 程 (c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触
媒マスターバッチとを溶融混合する工程
<2>前記ベース樹脂が、前記アクリルゴム20〜80質量%を含有する<1>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<3>前記ベース樹脂が、前記アクリルゴム30〜65質量%と、前記ポリプロピレン樹脂3〜25質量%と、エチレン系樹脂65質量%以下とを含有する<1>又は<2>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<4>前記金属水和物の配合量が、前記ベース樹脂100質量部に対して、100〜220質量部である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<5>前記シランカップリング剤が、ベース樹脂100質量部に対して、4質量部を超え、15.0質量部以下の配合量で混合される<1>〜<4>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<6>前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランである<1>〜<5>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<7>前記工程(a−1)及び工程(a−2)において、シラノール縮合触媒を実質的に混合しない<1>〜<6>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
<8>ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含む耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を得る工程(1)を有する耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ベース樹脂が、アクリルゴム5〜80質量%と、ポリプロピレン樹脂3〜30質量%とを含有し、
前記工程(1)を行うにあたり、下記工程(a−2)においてベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し下記工程(a−2)において前記ベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
工程(a−1):少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合し て混合物を調製する工程
工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸化
物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融
混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフ
ト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含むシランマスタ
ーバッチを調製する工程
工 程 (b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して
、触媒マスターバッチを調製する工程
工 程 (c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触
媒マスターバッチとを溶融混合する工程
<9>上記<8>に記載の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
<10>上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
<11>上記<10>に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品。
<12>アクリルゴム5〜80質量%及びポリプロピレン樹脂3〜30質量%を含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られる、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合して混合物を調製し、得られた混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを前記有機過酸化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られるシランマスターバッチ。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明により、従来のシラン架橋法が有する課題を克服し、優れた、外観、機械特性、難燃性、耐油性及び低温性を兼ね備えた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できる。
したがって、本発明により、優れた外観を保持し、さらには機械特性、難燃性、耐油性及び低温性も兼ね備えた耐熱性シラン架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供できる。また、このような外観、機械特性、難燃性、耐油性及び低温性のいずれにも優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を形成可能な、シランマスターバッチ、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物及びその製造方法を提供できる。さらには、外観に優れた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品を提供できる。
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
<ベース樹脂>
本発明に用いられるベース樹脂は、樹脂成分として、アクリルゴムと、好ましくはポリプロピレン樹脂とを含有する。ベース樹脂は、アクリルゴム及びポリプロピレン樹脂以外の樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、シランカップリング剤のグラフト化反応部位と有機過酸化物の存在下でグラフト化反応可能な部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子を主鎖中又はその末端に有する重合体の樹脂又はゴムであれば、特に限定されない。
また、ベース樹脂は、樹脂成分に加えて、後述するオイル成分を含有してもよい。
このベース樹脂は、各成分の総計が100質量%となるように、各成分の含有量が適宜に決定され、好ましくは下記範囲内から選択される。
(樹脂成分)
ベース樹脂は、アクリルゴムと、好ましくはポリプロピレン樹脂とを含有する。これにより、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に、優れた外観に加えて、さらには優れた、機械特性、難燃性、耐油性及び低温性を付与できる。特に、アクリルゴムを含有すると、表面平滑性及び外観に優れ、しかも、高い難燃性を維持しながら、架橋度の高い耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
アクリルゴムは、特に限定されないが、構成成分として、アクリル酸エチル又はアクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルと、不飽和炭化水素又は各種官能基を有する単量体とを共重合させて得られる共重合体からなるゴム弾性体が好ましい。アクリル酸アルキルと共重合させる単量体としては、特に限定されないが、エチレン、2−クロルエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、アクリル酸、アクリロニトリル又はブタジエン等を挙げることができる。
アクリル酸アルキルと官能基を有する単量体とを共重合してなるアクリルゴムとして、例えば、Nipol AR(商品名、日本ゼオン社製)、JSR AR(商品名、JSR社製)等が挙げられる。
アクリルゴムは、特に、構成成分としてアクリル酸メチルを含むのが好ましい。このようなアクリルゴムとしては、エチレンとの2元共重合体や、これにさらにカルボキシ基を側鎖に有する不飽和炭化水素を共重合させた3元共重合体等の各共重合体からなるゴム(エチレンアクリルゴムともいう)を特に好適に使用することができる。2元共重合体からなるエチレンアクリルゴムとしては、例えば、ベイマックDPやベイマックDLSが挙げられる。3元共重合体からなるエチレンアクリルゴムとしては、例えば、ベイマックG、ベイマックHG、ベイマックLS、ベイマックGLS(商品名、いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)が挙げられる。
アクリルゴムの含有量は、ベース樹脂100質量%中、5〜80質量%である。この含有量が少ないと、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に十分な難燃性、さらには耐油性を付与することができないことがある。一方、含有量が多いと、十分な機械強さ(引張強さ)を付与できないことがある。また、得られる耐熱性シラン架橋樹脂成形体がタックし、互いに融着することがある。
ベース樹脂中の、アクリルゴムの含有量は、20〜80質量%であることが好ましく、30〜65質量%であることがさらに好ましい。アクリルゴムの含有量が上記範囲内にあると、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の難燃性又は耐油性をさらに向上させることができる。
ポリプロピレン(PP)樹脂は、構成成分としてプロピレン成分を含む重合体からなる樹脂であれば特に限定されない。ポリプロピレンには、プロピレンの単独重合体(h−PP)、少量のエチレン及び/又は1−ブテンとの共重合体であるランダムポリプロピレン(r−PP)、及び、エチレンゴム等のゴム成分をh−PPやr−PPに分散したブロックポリプロピレン(b−PP)等の樹脂を含む。これらのなかでも、ランダムポリプロピレンの樹脂が好ましい。
このようなPP樹脂として、例えば、ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ社製)、サンアロマー(商品名、サンアロマー社製)、住友ノーブレン(登録商標、住友化学社製)、及びプライムポリプロ(登録商標、プライムポリマー社製)等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂の含有量は、ベース樹脂100質量%中、30質量%以下(0〜30質量%)である。PPの含有量が30質量%以下であると、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に優れた外観を付与できる。一方、PP樹脂の含有量が多いと、十分な低温性、機械強さを耐熱性シラン架橋樹脂成形体に付与できないことがある。また、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の架橋度が低下することがある。
ベース樹脂中の、PP樹脂の含有量は、3〜25質量%であることがより好ましい。PP樹脂の含有量が上記範囲内にあると、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の外観をさらに向上させることができる。
ベース樹脂が含有していてもよい、アクリルゴム及びPP樹脂以外の上記樹脂としては、エチレン系樹脂等が挙げられる。エチレン系樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このことは、ポリエチレン等の各樹脂成分についても同様である。
ベース樹脂がエチレン系樹脂を含有する場合、ベース樹脂中のアクリルゴム、PP樹脂及びエチレン系樹脂の各含有量は、各樹脂の含有量として記載した範囲から適宜に決定される。例えば、ベース樹脂は、アクリルゴム30〜65質量%と、前記ポリプロピレン樹脂3〜25質量%と、エチレン系樹脂65質量%以下とを含むことが好ましい。
ベース樹脂がエチレン系樹脂を含有する場合、アクリルゴム、PP樹脂及びエチレン系樹脂の合計が100質量%となるように、各樹脂の含有量が決定されることが好ましい。
エチレン系樹脂は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる重合体からなる樹脂(PP樹脂を除く)であれば、特に限定されず、従来、耐熱性樹脂組成物に使用されているものを使用することができる。例えば、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体等の各重合体からなる樹脂、又は上記各重合体からなるゴム若しくはエラストマー等が挙げられる。なかでも、ポリエチレン、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体及びエチレンゴムが好ましい。
エチレン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜80質量%であることが好ましく、0〜65質量%であることがより好ましく、10〜65質量%であることがさらに好ましい。上記含有量でエチレン系樹脂が含有されていると、強固なネットワークの形成が可能となり、高い耐熱性を付与することができる。また、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の難燃性及び耐油性をさらに向上させることができる。
ポリエチレンは、構成成分としてエチレン成分を含む重合体であれば特に限定されず、例えば、エチレンのみからなる単独重合体、エチレン成分を含む共重合体が挙げられる。共重合体には、エチレンと5mol%以下のα−オレフィレンとの共重合体、並びに、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけを持つ1mol%以下の非オレフィンとの共重合体が包含される(例えば、JIS K 6748)。上述のα−オレフィレン及び非オレフィンはポリエチレンの共重合成分として従来用いられる公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。なかでも、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが好ましい。
ポリエチレンからなる樹脂の含有量は、エチレン系樹脂の上記含有量の範囲内であれば特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、特に限定されないが、好ましくは、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体(ポリエチレン及びポリプロピレンに含まれるものを除く。)が挙げられる。α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブチレン共重合体(EBR)、及びシングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
エチレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂の含有量は、エチレン系樹脂の上記含有量の範囲内であれば特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体としては、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を含む重合体であれば特に限定されない。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分としては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸化合物、並びに、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸アルキル等の酸エステル化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、炭素数1〜12のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基が挙げられる。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体(ポリエチレンに含まれるものを除く。)としては、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましい。
酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体からなる樹脂の含有量は、エチレン系樹脂の上記含有量の範囲内であれば特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜50質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂の含有量が、上記範囲にあると、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の機械特性及び耐油性をさらに向上させることができる。一方、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂が、ベース樹脂100質量%中、50質量%より多くなると、高温下(例えば100℃)での耐油性が低下することがある。したがって、本発明において、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体の樹脂の含有量は、特に限定されないが、高温下での耐油性が要求される用途に用いる場合、ベース樹脂100質量%中、50質量%以下にすることが好ましい。
本発明に用いることができるゴムは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を構成成分とする重合体からなるゴム(エラストマーを含む)であれば特に限定されないが、好ましくはエチレンゴムが挙げられる。エチレンゴムとしては、好ましくは、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムが挙げられる。三元共重合体のジエン構成成分は、共役ジエン構成成分であっても非共役ジエン構成成分であってもよく、非共役ジエン構成成分が好ましい。すなわち、三元共重合体は、エチレンとα−オレフィンと共役ジエンとの三元共重合体、及び、エチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体等が挙げられ、エチレンとα−オレフィンとの共重合体及びエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとの三元共重合体が好ましい。
α−オレフィン構成成分としては、炭素数3〜12のα−オレフィンが好適に挙げられ、具体例としては、エチレン−α−オレフィン共重合体で挙げたものが挙げられる。共役ジエン構成成分の具体例としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、ブタジエン等が好ましい。非共役ジエン構成成分の具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。
エチレンとα−オレフィンとの共重合体からなるゴムとして、例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム等が挙げられる。エチレンとα−オレフィンとジエンとの三元共重合体からなるゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム等が挙げられる。なかでも、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム及びエチレン−ブテン−ジエンゴムが好ましく、エチレン−プロピレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムがより好ましい。
エチレンゴムは、共重合体中のエチレン構成成分量(エチレン含有量という)が20〜70質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましく、27〜52質量%であるのがさらに好ましい。エチレン含有量が20質量%未満であっても、また70質量%を超えても、ゴムとして柔軟性や低温性に劣ることがある。エチレン含有量の測定方法は、ASTM D3900に記載の方法に準拠して、測定される値である。
ゴムの含有量は、エチレン系樹脂の上記含有量の範囲内であれば特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜40質量%が好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。ゴムの含有量が40質量%以下であると、押出機を止めた場合にも優れた外観を保持できる。
上記の各重合体は、酸変性されていてもよい。酸変性に用いられる酸としては、特に限定されないが、不飽和カルボン酸又はその誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等を挙げることができる。これらのなかでも、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。酸変性量は、酸変性されたポリオレフィン系樹脂1分子中、通常0.1〜7質量%程度である。
本発明において、ベース樹脂は、上記各樹脂の他に、他の樹脂、オイル成分を含有していてもよい。他の樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を構成成分とする重合体からなるものであれば特に限定されない。このような樹脂として、好ましくはスチレン系エラストマーが挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、水素化SBS、水素化SIS、水素化スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR)等からなるものを挙げることができる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン構成成分の含有量(スチレン含有量)が30質量%以上であるのが好ましい。スチレン含有量が30質量%より少ないと耐油性が低下し、又は耐摩耗性が低下することがある。
エラストマーの含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂100質量%中、0〜45質量%であることが好ましく、0〜35質量%であることがより好ましい。スチレン系エラストマーの含有量が上記範囲内であると耐熱性を向上させることができる。
(オイル成分)
オイル成分は、特に限定されないが、有機油が挙げられる。ベース樹脂が有機油を含有していると、ブツ(表面に突出したツブ状物)の発生を抑制して優れた外観を有するシラン耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造することができる。
有機油として、パラフィンオイル又はナフテンオイルが好ましく、機械強さの点でパラフィンオイルがより好ましい。
オイルの含有量は、特に限定されないが、ベース樹脂がオイルを含有する場合、ベース樹脂100質量%中、2〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。オイルの含有量が上記範囲内にあると、混練中に混練物の温度が速やかに上昇し、シラングラフト反応が均一に進行しやすくなる。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤の樹脂成分へのラジカル反応によるグラフト化反応を生起させる働きをする。特にシランカップリング剤がエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基と樹脂成分とのラジカル反応(樹脂成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R〜Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR〜Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、120〜195℃であるのが好ましく、125〜180℃であるのが特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
<金属水和物>
本発明において、金属水和物は、その表面に、シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合又は共有結合等により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この金属水和物における、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
このような金属水和物としては、水酸基又は結晶水を有する化合物が挙げられる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、さらには、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ等のほか、水和ケイ酸アルミニウム、水和ケイ酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の無機酸塩又は無機酸化物等が挙げられる。
金属水和物は、なかでも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの少なくとも1種が好ましく、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
金属水和物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属水和物の平均粒径は、0.2〜10μmが好ましく、0.3〜8μmがより好ましく、0.4〜5μmがさらに好ましく、0.4〜3μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、シランカップリング剤の保持効果が高く、耐熱性に優れたものとなる。また、シランカップリング剤との混合時に金属水和物が2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均粒径は、アルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
金属水和物は、シランカップリング剤等で表面処理した表面処理金属水和物を使用することができる。例えば、シランカップリング剤表面処理金属水和物として、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学社製等)や水酸化アルミニウム等が挙げられる。シランカップリング剤による金属水和物の表面処理量は、特に限定されないが、例えば、3質量%以下である。
<シランカップリング剤>
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で樹脂成分にグラフト反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、金属水和物の化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられ、末端に加水分解性基を有する加水分解性シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、末端に、アミノ基、グリシジル基又はエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているものがより好ましく、さらに好ましくは末端にエチレン性不飽和基を含有する基と加水分解性基を含有する基とを有しているシランカップリング剤である。エチレン性不飽和基を含有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられる。またこれらのシランカップリング剤とその他の末端基を有するシランカップリング剤を併用してもよい。
このようなシランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0006559996
一般式(1)中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又はY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)で表されるシランカップリング剤のRa11は、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましく、エチレン性不飽和基を含有する基は、上述した通りであり、好ましくはビニル基である。
b11は脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13であり、脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。Rb11は、好ましくは後述のY13である。
11、Y12及びY13は、加水分解しうる有機基であり、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としては、具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。このなかでも、シランカップリング剤の反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましく、メトキシが特に好ましい。
シランカップリング剤としては、好ましくは加水分解速度の速いシランカップリング剤であり、より好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤、又は、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤であり、さらに好ましくはRb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤である。特に好ましくは、全てがメトキシ基である加水分解性シランカップリング剤である。
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシランを挙げることができる。
末端にグリシジル基を有するものとしては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記シランカップリング剤のなかでも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、そのままで用いても、溶媒等で希釈して用いてもよい。
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、樹脂成分にグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、樹脂成分同士が架橋される。その結果、優れた耐熱性を有する耐熱性シラン架橋樹脂成形体が得られる。
本発明に用いられるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらのなかでも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
<キャリア樹脂>
シラノール縮合触媒は、所望により樹脂に混合されて、用いられる。このような樹脂(キャリア樹脂ともいう)としては、特に限定されないが、ベース樹脂で説明した各樹脂を用いることができる。キャリア樹脂は、シラノール縮合触媒と親和性がよく耐熱性にも優れる点で、ベース樹脂のなかでもエチレンを構成成分として含む樹脂がより好ましく、ポリエチレンの樹脂がより好ましい。
<添加剤>
耐熱性シラン架橋樹脂成形体及び耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、又は、上記金属水和物以外の充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又はイオウ酸化防止剤等が挙げられる。アミン酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等が挙げられる。フェノール酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。イオウ酸化防止剤としては、例えば、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンヅイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。酸化防止剤は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
次に、本発明の製造方法を具体的に説明する。
本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」及び本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」は、いずれも、少なくとも下記工程(1)を行う。したがって、本発明の「耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法」及び本発明の「耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法」を併せて以下に説明する(両製造方法に共通する説明においては、本発明の製造方法ということがある。)。
また、本発明の「シランマスターバッチ」は、下記工程(a−1)及び工程(a−2)(両工程を併せて工程(a)という)により製造される。したがって、本発明の「シランマスターバッチの製造方法」を本発明の製造方法において説明する。
工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物80〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得る工程
この工程(1)が、下記工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合には工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し、下記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する。
工程(a−1):少なくとも金属水和物及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):混合物と、ベース樹脂の全部又は一部とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合して、シランマスターバッチを調製する工程
工程(b):ベース樹脂の残部及びシラノール縮合触媒を溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又は触媒マスターバッチとを溶融混合する工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
本発明の製造方法において、「ベース樹脂」とは、耐熱性シラン架橋樹脂成形体又は耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を形成するための樹脂である。したがって、本発明の製造方法においては、工程(1)で得られる混合物に100質量部のベース樹脂が含有されていればよい。例えば、工程(a)において、「ベース樹脂の全量(100質量部)が配合される態様」と、「ベース樹脂の一部が配合される態様」とを含む。
本発明において、「ベース樹脂の一部」とは、ベース樹脂のうち工程(a−2)で使用する樹脂であって、ベース樹脂そのものの一部(ベース樹脂と同一組成を有する)、ベース樹脂を構成する樹脂成分の一部、ベース樹脂を構成する一部の樹脂成分(例えば、複数の樹脂成分のうちの特定の樹脂成分全量)をいう。ベース樹脂の一部はベース樹脂を構成する一部の樹脂成分が好ましい。
また、「ベース樹脂の残部」とは、ベース樹脂のうち工程(a−2)で使用する一部を除いた残りのベース樹脂であって、具体的には、ベース樹脂そのものの残部(ベース樹脂と同一組成を有する)、ベース樹脂を構成する樹脂成分の残部、ベース樹脂を構成する残りの樹脂成分をいう。
工程(a−2)でベース樹脂の一部を配合する場合、工程(1)におけるベース樹脂の配合量100質量部は、工程(a−2)及び工程(b)で混合されるベース樹脂の合計量である。
ここで、工程(b)でベース樹脂の残部が配合される場合、ベース樹脂は、工程(a−2)において、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは94〜98質量%が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜6質量%が配合される。
工程(1)において、アクリルゴム及びPP樹脂等の、ベース樹脂中の配合量(含有量)は、上記した通りである。
工程(1)において、有機過酸化物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.01〜0.6質量部であり、0.1〜0.5質量部が好ましい。有機過酸化物の配合量が0.01質量部未満では、グラフト反応が進行せず、またシランカップリング剤同士が縮合して、耐熱性、場合によっては機械強さ、補強性を十分に得ることができないことがある。一方、0.6質量部を超えると、副反応によって樹脂成分の多くが直接的に架橋してブツを形成し、外観不良が生じる場合がある。特に外観不良の発生しやすい条件では外観不良が顕著に発生する。すなわち、有機過酸化物の配合量をこの範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト反応を行うことができ、ゲル状のブツも発生することなく押し出し性に優れた組成物を得ることができる。
金属水和物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、80〜300質量部であり、100〜220質量部が好ましい。金属水和物の配合量が80質量部未満では、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に優れた難燃性を付与できないことがある。また、シランカップリング剤のグラフト反応が不均一となることがある。これにより、十分な耐熱性が得られず、又は、外観が低下することがある。一方、300質量部を超えると、成形時や混練時の負荷が非常に大きくなり、2次成形が難しくなることがある。
シランカップリング剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、1〜15.0質量部であり、好ましくは4質量部を越え15.0質量部以下であり、より好ましくは6〜15.0質量部である。
シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では、架橋反応が十分に進行せず、優れた耐熱性を発揮しないことがある。特に外観不良の発生しやすい条件では外観不良が発生しやすくなる。一方、15質量部を超えると、それ以上の金属水和物の表面にシランカップリング剤が吸着しきれず、シランカップリング剤が混練中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合してしまい、成形体にブツや焼けが生じて外観が悪化するおそれがある。特に外観不良の発生しやすい条件で顕著である。
シランカップリング剤の配合量が4.0質量部を超えて15.0質量部以下であると、樹脂成分同士の架橋反応、及び、シランカップリング剤同士の縮合反応のいずれをも抑えることができ、外観のきれいなシラン耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造することができる。工程(a−2)において、上記特定量のシランカップリング剤を用いると、シランカップリング剤のグラフト化反応や、シランカップリング剤同士の縮合反応が支配的になる。これにより、外観荒れやブツの原因となる樹脂成分同士の架橋反応を抑えることができる。また、工程(a−2)では、多くのシランカップリング剤が金属水和物に結合又は吸着して固定化されている。これにより、金属水和物に結合又は吸着しているシランカップリング剤同士の縮合反応は起こりにくくなる。このように、特定量のシランカップリング剤を用いることにより、樹脂成分同士の架橋反応、及び、シランカップリング剤同士の縮合反応のいずれをも抑えることができ、外観のきれいなシラン耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造することができると、考えられる。
シラノール縮合触媒の配合量は、特に限定されず、好ましくは、ベース樹脂100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。シラノール縮合触媒の配合量が上述の範囲内にあると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性、外観及び物性が優れ、生産性も向上する。すなわち、シラノール縮合触媒の配合量が少なすぎると、耐熱性、場合によって機械強さを、十分に得ることができないことがある。一方、多すぎると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応が不均一になり、外観及び生産性が劣る場合がある。
シランマスターバッチは、ベース樹脂の全部又は一部と、有機過酸化物と、金属水和物と、シランカップリング剤とを、上記配合量で、混合機に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱しながら溶融混練する工程(a)により、調製される。
本発明において、「ベース樹脂の全部又は一部、有機過酸化物、金属水和物及びシランカップリング剤を溶融混合する」とは、溶融混合する際の混合順を特定するものではなく、どのような順で混合してもよいことを意味する。すなわち、工程(a)における混合順は特に限定されない。
また、ベース樹脂の混合方法も特に限定されない。例えば、予め混合調製されたベース樹脂を用いてもよく、各成分、例えば樹脂成分及びオイル成分それぞれを別々に混合してもよい。
本発明においては、シランカップリング剤は、シランマスターバッチに単独で導入されず、金属水和物と前混合等される。すなわち、少なくとも金属水和物及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する(工程(a−1))。このようして前混合されたシランカップリング剤は、金属水和物の表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が金属水和物に吸着又は結合する。これにより、後の溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発を低減できる。また、金属水和物に吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混練が困難になることも防止できる。さらに、押出成形の際に所望の形状を得ることもできる。
このような混合方法として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、好ましくは室温(25℃)で有機過酸化物と金属水和物とシランカップリング剤を、数分〜数時間程度、乾式又は湿式で混合(分散)した後に、この混合物とベース樹脂とを溶融混合させる方法が挙げられる。この混合は、好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機で行われる。このようにすると、樹脂成分同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観が優れたものとなる。
この混合方法においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ベース樹脂が存在していてもよい。この場合、ベース樹脂とともに金属酸化物及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混合することが好ましい。本発明においては、上記各成分を一度に溶融混合することもできる。この場合、溶融混合時にシランカップリング剤の一部又は全部が金属水和物に吸着又は結合する。
金属水和物とシランカップリング剤とを混合する方法としては、特に限定されず、有機過酸化物は金属水和物等と同時に混合されても、また金属水和物とシランカップリング剤との混合段階のいずれにおいて混合されてもよい。
例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後に金属水和物と混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々に金属水和物に混合されてもよい。本発明においては、有機過酸化物とシランカップリング剤とは実質的に一緒に混合した方がよい。一方、生産条件によっては、シランカップリング剤のみを金属水和物に混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。
また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
金属水和物とシランカップリング剤と有機過酸化物との混合方法として、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。具体的には、アルコールや水等の溶媒に金属水和物を分散させた状態でシランカップリング剤を加える湿式処理、加熱又は非加熱で両者を加え混合する乾式処理、及び、その両方が挙げられる。本発明においては、金属水和物、好ましくは乾燥させた金属水和物中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
湿式混合では、シランカップリング剤と金属水和物との結力合が強くなるため、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えることができるが、シラノール縮合反応が進みにくくなることがある。一方、乾式混合では、シランカップリング剤が揮発しやすいが、金属水和物とシランカップリング剤の結合力が比較的弱くなるため、効率的にシラノール縮合反応が進みやすくなる。
本発明の製造方法においては、次いで、得られた混合物とベース樹脂の全部又は一部と、工程(a−1)で混合されていない残余の成分とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上に加熱しながら、溶融混練する(工程(a−2))。
工程(a−2)において、上記成分を溶融混合(溶融混練、混練りともいう)する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(25〜110)℃の温度である。この分解温度は樹脂成分が溶融してから設定することが好ましい。上記混合温度であれば、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解、作用して必要なシラングラフト反応が工程(a−2)において十分に進行する。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば金属水和物の配合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。樹脂成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、通常、このような金属水和物がベース樹脂100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーで混練りするのがよい。
工程(a−1)及び工程(a−2)、特に工程(a−2)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに上述の各成分を混練することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また押出成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(a−2)において、シラノール縮合触媒は、ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部以下であれば、存在していてもよい。
工程(1)においては、上記成分の他に用いることができる他の樹脂や上記添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。
工程(1)において、上記添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの工程で又は成分に混合されてもよいが、キャリア樹脂に混合されるのがよい。
工程(1)、特に工程(a−1)及び工程(a−2)において、架橋助剤は実質的に混合されないことが好ましい。架橋助剤が実質的に混合されないと、溶融混合中に樹脂成分同士の架橋が生じにくく、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の外観及び耐熱性が優れる。ここで、実質的に混合されないとは、架橋助剤を積極的に混合しないことを意味し、不可避的に混合することを除外するものではない。
このようにして、工程(a−1)及び工程(a−2)からなる工程(a)を行い、シランマスターバッチ(シランMBともいう)が調製される。このシランMBは、後述するように、工程(1)で調製される混合物(耐熱性シラン架橋性樹脂組成物)の製造に、好ましくは、シラノール縮合触媒又は後述する触媒マスターバッチとともに、用いられる。シランMBは、後述の工程(2)により成形可能な程度にシランカップリング剤が樹脂成分にグラフトしたシラン架橋性樹脂(シラングラフトポリマー)を含有している。
本発明の製造方法において、次いで、工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、ベース樹脂の残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製する工程(b)を行う。したがって、工程(a−2)でベース樹脂の全部を溶融混合する場合は、工程(b)を行わなくてもよく、また他の樹脂とシラノール縮合触媒とを混合してもよい。
キャリア樹脂としてのベース樹脂とシラノール縮合触媒との混合割合は、特に限定されないが、好ましくは、工程(1)における上記配合量を満たすように、設定される。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ベース樹脂の溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記工程(a−2)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
工程(b)において、ベース樹脂の残部に代えて、又は、加えて他の樹脂をキャリア樹脂として用いることができる。すなわち、工程(b)は、工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合する場合のベース樹脂の残部、又は、工程(a−2)で用いた樹脂成分以外の樹脂と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチを調製してもよい。
キャリア樹脂が他の樹脂である場合、工程(a−2)においてグラフト反応を促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、他の樹脂の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜40質量部である。
また、工程(b)において、無機フィラーを用いてもよい。この場合、無機フィラーの配合量は、特には限定されないが、キャリア樹脂100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。無機フィラーの配合量が多いとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋が進行しにくくなるためである。一方、無機フィラーの配合量が少なすぎると、成形体の架橋度が低下してしまい、十分な耐熱性が得られない場合がある。
この場合、使用可能な無機フィラーとしては、上記金属水和物以外に、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリア樹脂、所望により添加されるフィラーの混合物である。
この触媒MBは、シランMBとともに、工程(1)で調製される耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造に、マスターバッチセットとして、用いられる。
本発明の製造方法において、次いで、シランMBと、シラノール縮合触媒又は触媒MBとを混合して、混合物を得る工程(c)を行う。
混合方法は、上述のように均一な混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。
混合は、工程(a−2)の溶融混合と基本的に同様である。DSC等で融点が測定できない樹脂成分、例えばエラストマーもあるが、少なくとも樹脂成分等及び有機過酸化物のいずれかが溶融する温度で混練する。溶融温度は、ベース樹脂又はキャリア樹脂の溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
工程(c)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
この工程(c)は、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合して混合物を得る工程であればよく、シラノール縮合触媒及びキャリア樹脂を含有する触媒マスターバッチとシランマスターバッチとを溶融混合する工程であるのが好ましい。
このようにして、工程(a)〜(c)(工程(1))、すなわち本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法を行い、混合物として、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物が製造される。この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、架橋方法の異なるシラン架橋性樹脂を含有する。このシラン架橋性樹脂において、シランカップリング剤の反応部位は、金属水和物と結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性樹脂は、金属水和物と結合又は吸着したシランカップリング剤がベース樹脂にグラフトした架橋性樹脂と、金属水和物と結合又は吸着していないシランカップリング剤がベース樹脂にグラフト化した架橋性樹脂とを少なくとも含む。また、シラン架橋性樹脂は、金属水和物が結合又は吸着したシランカップリング剤と、金属水和物が結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応の樹脂成分を含んでいてもよい。
上記のように、シラン架橋性樹脂は、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(c)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物について、少なくとも工程(2)での成形における成形性が保持されたものとする。
工程(1)において、工程(a)〜(c)は、同時又は連続して行うことができる。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法は、次いで、工程(2)及び工程(3)を行う。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法において、得られた混合物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、混合物を成形できればよく、本発明の耐熱性製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた押出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバケーブルである場合に、好ましい。
工程(2)は、シランカップリング剤の配合量が4質量部を超えている場合には、成形体の優れた外観を低下させることなく、押出機の掃除、段替え、偏心調整及び製造中段等の事由によって一旦停止させた後に再開することもできる。
また、工程(2)は、工程(c)と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、工程(c)の溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば押出成形の際に、又は、その直前に、成形原料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入(溶融混合)してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合し、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。より具体的には、シランMBとシラノール縮合触媒又は触媒MBとの混合物である成形材料を被覆装置内で溶融混練し、次いで、導体等の外周面に押出被覆して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の成形体が得られる。この成形体は耐熱性シラン架橋性樹脂組成物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法においては、工程(2)で得られた成形体を水と接触させる工程(3)を行う。これにより、シランカップリング剤の加水分解性の基が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こる。こうして、シランカップリング剤がシラノール縮合して架橋した耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得ることができる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。この架橋反応を促進ささせるために、成形体を水分と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法が実施され、本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物から耐熱性シラン架橋樹脂成形体が製造される。この耐熱性シラン架橋樹脂成形体は、後述するように、シラン架橋性樹脂がシロキサン結合を介して縮合した架橋樹脂を含んでいる。このシラン架橋樹脂成形体の一形態は、シラン架橋樹脂と金属水和物とを含有する。ここで、金属水和物はシラン架橋樹脂のシランカップリング剤に結合していてもよい。したがって、このシラン架橋樹脂は、複数の架橋樹脂がシランカップリング剤により金属水和物に結合又は吸着して、金属水和物及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋樹脂と、上記架橋性樹脂のシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シランカップリング剤を介して架橋した架橋樹脂とを少なくとも含む。また、シラン架橋樹脂は、金属水和物及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応の樹脂成分及び/又は架橋していないシラン架橋性樹脂を含んでいてもよい。
本発明の製造方法における反応機構の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、樹脂成分を有機過酸化物の存在下、金属水和物及びシランカップリング剤とともに有機過酸化物の分解温度以上で加熱混練すると、有機過酸化物が分解してラジカルを発生し、樹脂成分に対してシランカップリング剤のグラフト化が起こる。
工程(a−2)の加熱により、部分的には、シランカップリング剤と金属水和物の表面での水酸基等の基との共有結合による化学結合の形成反応も起きる。
本発明では、工程(c)で、最終的な架橋反応を行うこともあり、ベース樹脂にシランカップリング剤を上述のように特定量配合すると、成形時の押し出し加工性を損なうことなく金属水和物を多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも、耐熱性、さらには機械特性等を併せ持つことができる。
また、本発明の上記プロセスの作用のメカニズムはまだ定かではないが次のように推定される。すなわち、ベース樹脂との混練り前及び/又は混練り時に、金属水和物及びシランカップリング剤を用いることにより、シランカップリング剤は、化学結合しうる基で金属水和物と結合し、もう一方の末端に存在する、グラフト反応しうる基で樹脂成分の未架橋部分と結合して、保持される。又は、金属水和物と結合することなく、金属水和物の穴や表面に物理的又は化学的に吸着して、保持される。このように、金属水和物に対して強い結合で結びつくシランカップリング剤(その理由は、例えば、金属水和物表面の水酸基等との化学結合の形成が考えられる)と弱い結合で結びつくシランカップリング剤(その理由は、例えば、水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等が考えられる)を形成できる。この状態で、有機過酸化物を加えて混練りを行うと、後述するようにシランカップリング剤がほとんど揮発することなく、金属水和物との結合が異なるシランカップリング剤が樹脂成分にグラフト反応したシラン架橋性樹脂が形成される。
上述の混練りにより、シランカップリング剤のうち金属水和物と強い結合を有するシランカップリング剤は、金属水和物との結合が保持され、かつ、架橋基であるグラフト反応しうる基が樹脂成分の架橋部位とグラフト反応する。特に、1つの金属水和物粒子の表面に複数のシランカップリング剤が強い結合を介して結合した場合、この金属水和物粒子を介して樹脂成分が複数結合する。これらの反応又は結合により、この金属水和物を介した架橋ネットワークが広がる。すなわち、金属水和物に結合しているシランカップリング剤が樹脂成分にグラフト反応してなるシラン架橋性樹脂が形成される。
金属水和物と強い結合を有するシランカップリング剤の場合は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、金属水和物との結合が保持される。シラノール縮合反応が生じにくい理由は金属水和物とシランカップリング剤の結合エネルギーが非常に高く、シラノール縮合触媒下にあっても、縮合反応が起こらないからであると考えられる。このように、樹脂成分と金属水和物の結合が生じ、シランカップリング剤を介した樹脂成分の架橋が生じる。これにより樹脂成分と金属水和物の密着性が強固になり、機械強さ及び耐摩耗性が良好で、傷つきにくい成形体が得られる。特に、1つの金属水和物粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強さを得ることができる。このように、金属水和物に対して強い結合で結合したシランカップリング剤は、高い機械特性、場合によっては耐摩耗性、耐傷付性等に寄与すると考えられる。
一方、シランカップリング剤のうち金属水和物と弱い結合を有するシランカップリング剤は、金属水和物の表面から離脱して、シランカップリング剤の架橋基であるグラフト反応しうる基が、有機過酸化物の分解で生じたラジカルによる水素ラジカル引き抜きで生じた樹脂成分のラジカルと反応してグラフト反応が起こる。すなわち、金属水和物から離脱したシランカップリング剤が樹脂成分にグラフト反応したシラン架橋性樹脂が形成される。このようにして生じたグラフト部分のシランカップリング剤は、その後シラノール縮合触媒と混合され、水分と接触することにより、縮合反応(架橋反応)が生じる。この架橋反応により得られた耐熱性シラン架橋樹脂成形体の耐熱性は高くなり、高温でも溶融しない耐熱性シラン架橋樹脂成形体を得ることが可能となる。このように、金属水和物に対して弱い結合で結合したシランカップリング剤は、架橋度の向上、すなわち耐熱性の向上に寄与すると考えられる。
特に、本発明では、工程(c)における、水存在下でのシラノール縮合触媒を使用した縮合による架橋反応を、成形体を形成した後に行う。これにより、従来の最終架橋反応後に成形体を形成する方法と比較して、成形体形成までの工程での作業性が優れるとともに、従来以上に高い耐熱性を得ることが可能となる。
さらに、本発明の製造方法によりシランカップリング剤を金属水和物に混合すると、上記のように、シランカップリング剤同士の縮合が抑えられる等により、外観に優れたものとなる。しかも、本発明において、4.0質量部を超えて15.0質量部以下のシランカップリング剤を金属水和物に混合する場合には、上述したように、工程(1)、特に工程(a−2)での溶融混練時における樹脂成分同士の架橋反応を効果的に抑えることができる。また、シランカップリング剤は金属水和物に結合しており、工程(1)、特に工程(a−2)での溶融混練中にも揮発しにくく、遊離しているシランカップリング剤同士の反応も効果的に抑えることができる。したがって、押出機を停止した後に再開しても外観不良が発生しにくく、外観の良好なシラン耐熱性シラン架橋樹脂成形体を製造できると、考えられる。
ここで、一旦停止後、再開するとは、ベース樹脂の組成、加工条件等に左右され一義的に述べることはできないが、例えば、190℃で、間隔30分間まで、好ましくは90分間まで再開できることをいう。
本発明の製造方法において、ベース樹脂としてアクリルゴム及びPP樹脂を用いると、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に優れた機械特性、難燃性、耐油性及び低温性を付与できる。特に、ベース樹脂が上記配合量でアクリルゴム及びPP樹脂を含有していると、優れた難燃性を保持でき、しかも優れた耐油性をも付与できる。
このような優れた特性を耐熱性シラン架橋樹脂成形体に付与できることの詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。
すなわち、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に機械特性及び難燃性を付与できる理由としては、アクリル酸又はアクリル酸アルキル等を構成成分とする共重合体の樹脂により、難燃性を高めることができると考えられる。
また、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に優れた機械特性、低温性を付与できる理由は、アクリルゴムにPP樹脂が分解を起こさず分散するためと思われる。一般にPP樹脂はラジカル存在下では分解反応が優先的に起こるが、アクリルゴムとの溶融混合下では、アクリルゴムへのグラフト反応が優先的に起きつつ、PP樹脂の分解は起こらないと考えられる。その結果、機械強度が低下せずに優れた機械特性を得ることができる。また、PP樹脂が分散することにより、低温性も悪化しない。
さらに、PP樹脂は高温下でも溶融しにくく高い結晶性を保ち、アクリルゴムは高温下では非結晶ではあるものの、溶融しにくく高い極性を持つ。このような特性、物性を有するアクリルゴム及びPP樹脂を特定の割合で用いることにより、高温下でも油が耐熱性シラン架橋樹脂成形体に浸入しにくくなり、高い耐油性を得ることができる。
工程(a)において、樹脂同士の重合が起こると溶融混合物の流動性が低下する。そうすると、樹脂同士がさらに重合しやすくなってより高分子量の樹脂が生成する。これにより、流動性がさらに悪化して表面平滑性が低下する。また、より高分子量になった樹脂がブツの原因となり、外観荒れが生じる。しかし、アクリルゴム及びPP樹脂を上記範囲の含有量で含有するベース樹脂を用いる本発明においては、外観及び表面平滑性が優れる。すなわち、アクリルゴムは結晶性が低く、これを含有するベース樹脂は温度による流動性の変化が小さくなる。したがって、樹脂同士の重合(分子量の増大)を防止できる。また、樹脂同士が重合したとしても、これにより溶融混合物の流動性はほとんど変化せず、表面平滑性の悪化を防止できると考えられる。
特に、層厚が薄い被覆層を形成する場合、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の押出速度を速める場合においても、溶融混合物の高い流動性を損なわない。したがって、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の流動性が高く、このような外観不良の発生しやすい条件であっても、優れた外観及び表面平滑性を付与できると考えられる。
本発明の製造方法は、耐熱性が要求される製品(半製品、部品、部材も含む。)、強度が求められる製品、難燃性が要求される製品、ゴム材料等の製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。したがって、本発明の耐熱性製品は、このような製品とされる。このとき、耐熱性製品は、耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む製品でもよく、耐熱性シラン架橋樹脂成形体のみからなる製品でもよい。
本発明の耐熱性製品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線又は耐熱難燃ケーブルの被覆材料、ゴム代替電線・ケーブルの材料、その他、耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気・電子機器の内部配線及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ケーブルが挙げられる。
本発明の製造方法は、上記製品のなかでも、特に電線及び光ケーブルの製造に好適に適用され、これらの被覆材料(絶縁体、シース)を形成することができる。
本発明の耐熱性製品が電線、ケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練して耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を調製しながら、この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を導体等の外周に押し出して、導体等を被覆する等により、製造できる(工程(c)及び工程(2))。このような耐熱性製品は、金属水和物を大量に加えた耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15〜5mm程度である。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
実施例1〜9及び比較例1〜10は、下記成分を用いて、それぞれの諸元を表1に示す条件に設定して実施し、表1に後述する評価結果を併せて示した。
表1中に示す各化合物の詳細を以下に示す。
<ベース樹脂>
(アクリルゴム)
「ベイマックDP」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、2元共重合体)
「ベイマックGLS」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、3元共重合体)
(ポリプロピレン樹脂)
「PB222A」(商品名、サンアロマー社製、ランダムポリプロピレン)
「BC8A」(ノバテック(登録商標)PP、日本ポリプロ社製、ブロックポリプロピレン)
(酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有する共重合体)
「エバフレックス EV360」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、エチレン酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル(VA)含有量25質量%)
「V9000」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、VA含有量40質量%)
「エルバロイ 2116」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸エチル(EA)含有量16質量%)
(ポリエチレン樹脂)
「UE320」(ノバテック(登録商標)PE、日本ポリエチレン社製、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE))
「ハイゼックス 5305E」(商品名、プライムポリマー社製、高密度ポリエチレン(HDPE))
(エチレン−プロピレン−ジエンゴム:EPDM)
「ノーデル IP−4760P」(商品名、ダウ・ケミカル社製、エチレン含有量67質量%、ジエン含有量4.9質量%)
<金属水和物>
(水酸化アルミニウム)
「ハイジライトH42M」(商品名、昭和電工社製、表面未処理水酸化アルミニウム)
(水酸化マグネシウム)
「キスマ5」(商品名、協和化学社製、表面未処理水酸化マグネシウム)
「キスマ5L」(商品名、協和化学社製、シランカップリング剤前処理水酸化マグネシウム)
各金属水和物は、23℃、相対湿度50%の環境下で1週間調湿した後に用いた。
<シランカップリング剤>
「KBM1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)
<有機過酸化物>
「パークミルD」(商品名、日油社製、ジクミルパーオキサイド、分解温度151℃)
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
<酸化防止剤>
「イルガノックス1076」(商品名、BASF社製、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
(実施例1〜9及び比較例1〜10)
実施例1〜9及び比較例1〜10において、ベース樹脂を構成する樹脂成分の一部(PE)を触媒MBのキャリア樹脂として用いた。
まず、有機過酸化物、金属水和物、シランカップリング剤及び酸化防止剤を、表1に示す質量比で、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入し、室温(25℃)で1時間混合して、粉体混合物を得た(工程(a−1))。次に、このようにして得られた粉体混合物と、表1のベース樹脂欄に示す樹脂成分とを、表1に示す質量比で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度、具体的には190℃において10分混練り後、材料排出温度190℃で排出し、シランMBを得た(工程(a−2))。得られたシランMBは、樹脂成分にシランカップリング剤がグラフト反応しシラン架橋性樹脂を含有している。
一方、キャリア樹脂とシラノール縮合触媒と酸化防止剤とを、表1に示す質量比で、180〜190℃でバンバリーミキサーにて溶融混合し、材料排出温度180〜190℃で排出して、触媒MBを得た(工程(b))。この触媒MBは、キャリア樹脂及びシラノール縮合触媒の混合物である。
次いで、シランMBと触媒MBを密閉型のリボンブレンダーに投入し、室温(25℃)で5分ドライドブレンドしてドライドブレンド物を得た。このとき、シランMBと触媒MBとの混合比は表1に示す質量比である。具体的には、各例において、シランMBのベース樹脂が95質量部で、触媒MBのキャリア樹脂が5質量部となる割合とした。
次いで、得られたドライドブレンド物を、下記押出成形条件(1)又は(2)で溶融混合、成形して、被覆導体をそれぞれ得た(工程(c)及び工程(2))。
<押出成形条件(1)>
得られたドライドブレンド物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=23、スクリュー直径90mmのスクリューを備えた押出機(シリンダー温度180℃、ヘッド温度200℃)に投入した。この押出機内でドライドブレンド物を溶融混合しながら、7/34/0.45Aの撚り線(導体径8.4mm)の外周に被覆厚さ2.0mmとなるように線速7m/分で押し出して、外径12.4mmの被覆導体を得た(工程(c)及び工程(2))。
<押出成形条件(2)>
押出成形条件(1)において、線速を20m/分に変更したこと以外は押出成形条件(1)と同様にして、被覆導体を得た(工程(c)及び工程(2))。
上記ドライブレンド物を押出機内で押出成形前に溶融混合することにより、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を調製した。この耐熱性シラン架橋性樹脂組成物は、シランMBと触媒MBとの混合物であって、上述のシラン架橋性樹脂を含有している。
得られた各被覆導体を温度80℃、相対湿度95%の雰囲気に24時間放置した(工程(3))。このようにして、上記押出成形条件(1)及び(2)により上記撚り線を耐熱性シラン架橋樹脂成形体で被覆した各電線を製造した。被覆としての耐熱性シラン架橋樹脂成形体は上述のシラン架橋樹脂を有している。
製造した各電線について、下記試験をし、その結果を表1に示した。
<外観試験(1)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線において、外観が優れていたものを「A」、電線としての外観に問題がないものを「B」、電線としての外観に問題があるほどブツが発生したものを「C」とした。評価が「B」以上であることが本試験の合格レベルである。
<外観試験(2)>
上記押出成形条件(2)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線において、外観が優れていたものを「A」、電線としての外観に問題がないものを「B」、電線としての外観に問題があるほどブツが発生したものを「C」とした。評価が「B」以上であることが本試験の合格レベルである。この外観試験(2)は参考試験である。
<引張特性(機械特性)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線から抜き取った被覆(管状片)について引張試験を行った。
この引張試験はJIS C 3005に準じて、標線間25mm、引張速度200mm/分の条件で、引張強さ(MPa)及び引張伸び(%)を測定した。
引張強さは、8MPa以上であったものを優れたレベルとして「A」で表し、6MPa以上8MPa未満であったものを本試験の合格レベルとして「B」で表し、6MPa未満であったもの本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
引張伸びは、125%以上であったものを優れたレベルとして「A」で表し、100%以上125%未満であったものを本試験の合格レベルとして「B」で表し、100%未満であったものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
<難燃性試験(A)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線について、IEC(国際電気標準会議:International Electronical Commission)60332−1−2に記載の「一条垂直燃焼試験」を行った。具体的には、試験時間を60秒として、試験後自消した際に、炭化距離が上部支持材より50mm以上で合格とし、50mm未満を不合格とした。この「ケーブル一条垂直燃焼試験」において、合格であった場合を「A」で表し、不合格であった場合を「C」で表した。
<難燃性試験(B)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線について、IEC60332−3に記載の「垂直トレイ燃焼試験/カテゴリーA」を行った。具体的には、非金属部分体積を7l/mとし、3.5mの長さの電線を敷き詰め、試験時間を40分として、試験後自消した際、炭化位置がバーナより上部に250cm未満であれば合格とし、それ以外であれば不合格とした。この「垂直トレイ燃焼試験/カテゴリーA」において、合格であった場合を「A」で表し、不合格であった場合を「C」で表した。この難燃性試験(B)は参考試験である。
<耐油試験(A)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線について、JIS C 3005に記載の「耐油試験」を行った。耐油試験(A)においては、浸油温度を70℃、浸油時間を4時間とし、油としてIRM902を使用した。
本試験の評価は、耐油試験前後の引張強さの残率及び引張伸びの残率がともに60%以上であったものを本試験の合格レベルとして「A」で表し、引張強さの残率及び引張伸びの残率の一方でも60%未満であったものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
<耐油試験(B)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線について、JIS C 3005に記載の「耐油試験」を行った。耐油試験(B)においては、浸油温度を100℃、浸油時間を24時間、油としてIRM903を使用した。
本試験の評価は、耐油試験前後の引張強さの残率及び引張伸びの残率がともに60%以上であったものを本試験の合格レベルとして「A」で表し、引張強さの残率及び引張伸びの残率の一方でも60%未満であったものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。この耐油試験(B)は参考試験である。
<低温試験>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線を用いて、低温試験を行った。低温試験は、IEC60811−1−4に記載の方法に準拠して、−40℃の条件下で、行った。具体的には、−40℃の恒温槽にて6時間冷却した電線を、電線の外径に対して5倍の外径を有するマンドレルに巻き付けて、クラックの発生を目視にて確認した。本試験の評価は、電線にクラックが発生しなかったものを本試験の合格レベルとして「A」で表し、クラックが発生したものを本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
<ホットセット試験(耐熱性試験)>
上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いて製造した各電線と同様にして作製した管状片を用いて、ホットセット試験を行った。ホットセット試験は、IEC60811−2−1に記載の方法に準拠して、行った。試験条件は200℃、加熱時間は15分、荷重は20N/cmとし、加熱後の伸びが100%以下、かつ、加熱及び荷重除去後の伸びが25%以下であった場合を、本試験の合格レベルとして「A」で表し、それ以外を本試験の不合格レベルとして「C」で表した。
Figure 0006559996
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜9は、いずれも、外観試験(1)、引張特性、難燃性試験(A)、耐油試験(A)、低温試験及びホットセット試験に合格した。このように、本発明の実施例によれば、外観、機械特性、難燃性、耐油性及び低温性を兼ね備えた耐熱性シラン架橋樹脂成形体を被覆として有する電線を製造できた。
特に、アクリルゴム20〜80質量%を含有するベース樹脂を用いると、機械強さを維持しつつも難燃性試験(B)にも合格し、耐熱性シラン架橋樹脂成形体に優れた機械特性と高い難燃性とを付与できた。
また、合計で100質量%となるように、アクリルゴム30〜65質量%、PP樹脂3〜25質量%及びエチレン系樹脂65質量%以下を含有するベース樹脂を用いると、優れた外観を付与でき、しかも難燃性及び耐油性をさらに向上させることができた。
これに対して、ベース樹脂がアクリルゴムを含有しない比較例1は金属水和物を用いても難燃性試験(A)が不合格であった。一方、ベース樹脂がアクリルゴムを過剰に含有する比較例2は引張強さが不合格であった。また、ベース樹脂がPP樹脂を過剰に含有する比較例3は低温試験が不合格であった。金属水和物の配合量が少ない比較例4は難燃性試験(A)が不合格であった。また、有機過酸化物の配合量が少ない比較例5、シランカップリング剤の配合量が少ない比較例7及びシラノール触媒を配合しない比較例9は、いずれも、ホットセット試験が不合格であり、耐熱性に劣っていた。有機過酸化物の配合量が多い比較例6及びシランカップリング剤の配合量が多い比較例8は外観試験(1)が不合格であった。ベース樹脂がアクリルゴムを含有せず、高いVA含有量のEVAを含有する比較例10は、低温試験が不合格であった。

Claims (12)

  1. 下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法であって、
    工程(1):ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量
    部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラ
    ノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0
    質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリ
    ング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シラン
    架橋性樹脂を含む耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を得る工程
    工程(2):前記工程(1)で得られた耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を成形して成
    形体を得る工程
    工程(3):前記工程(2)で得られた成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋樹
    脂成形体を得る工程

    前記ベース樹脂が、アクリルゴム5〜80質量%と、ポリプロピレン樹脂3〜30質量%とを含有し、
    前記工程(1)を行うにあたり、下記工程(a−2)においてベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し下記工程(a−2)において前記ベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
    工程(a−1):少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合し
    て混合物を調製する工程
    工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸化
    物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融
    混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフ
    ト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含むシランマスタ
    ーバッチを調製する工程
    工 程 (b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して
    、触媒マスターバッチを調製する工程
    工 程 (c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触
    媒マスターバッチとを溶融混合する工程
  2. 前記ベース樹脂が、前記アクリルゴム20〜80質量%を含有する請求項1に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記ベース樹脂が、前記アクリルゴム30〜65質量%と、前記ポリプロピレン樹脂3〜25質量%と、エチレン系樹脂65質量%以下とを含有する請求項1又は2に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記金属水和物の配合量が、前記ベース樹脂100質量部に対して、100〜220質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記シランカップリング剤が、ベース樹脂100質量部に対して、4質量部を超え、15.0質量部以下の配合量で混合される請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランである請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記工程(a−1)及び工程(a−2)において、シラノール縮合触媒を実質的に混合しない請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法。
  8. ベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含む耐熱性シラン架橋性樹脂組成物を得る工程(1)を有する耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法であって、
    前記ベース樹脂が、アクリルゴム5〜80質量%と、ポリプロピレン樹脂3〜30質量%とを含有し、
    前記工程(1)を行うにあたり、下記工程(a−2)においてベース樹脂の全部を溶融混合する場合には、前記工程(1)下記工程(a−1)、工程(a−2)及び工程(c)を有し下記工程(a−2)において前記ベース樹脂の一部を溶融混合する場合には、前記工程(1)が下記工程(a−1)、工程(a−2)、工程(b)及び工程(c)を有する、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法。
    工程(a−1):少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合し て混合物を調製する工程
    工程(a−2):前記混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを、前記有機過酸化
    物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融
    混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフ
    ト化反応させることにより、シラン架橋性樹脂を含むシランマスタ
    ーバッチを調製する工程
    工 程 (b):前記ベース樹脂の残部及び前記シラノール縮合触媒を溶融混合して
    、触媒マスターバッチを調製する工程
    工 程 (c):前記シランマスターバッチと、前記シラノール縮合触媒又は前記触
    媒マスターバッチとを溶融混合する工程
  9. 請求項8に記載の耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体の製造方法により製造されてなる耐熱性シラン架橋樹脂成形体。
  11. 請求項10に記載の耐熱性シラン架橋樹脂成形体を含む耐熱性製品。
  12. アクリルゴム5〜80質量%及びポリプロピレン樹脂3〜30質量%を含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物80〜300質量部と、グラフト化反応部位及びシラノール縮合可能な反応部位を有するシランカップリング剤1〜15.0質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られる、耐熱性シラン架橋性樹脂組成物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
    少なくとも前記金属水和物及び前記シランカップリング剤を混合して混合物を調製し、得られた混合物と前記ベース樹脂の全部又は一部とを前記有機過酸化物の存在下で前記有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して前記シランカップリング剤と前記ベース樹脂とをグラフト化反応させることにより得られるシランマスターバッチ。
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