JP6557929B1 - ピンニング工法用の注入ノズル、ピンニング工法用の接着剤注入器およびこれを用いたピンニング工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下穴8に挿入される単一の複合ノズル部21と、開口部8aを封止する開口封止部22と、内部に第1・第2接着剤流路61,62を有すると共に先端部に複合ノズル部21が取り付けられたノズルボディ23と、を備え、複合ノズル部21は、下穴8の奥部に臨む第1ノズル口37と、下穴8の開口部8a近傍に臨む第2ノズル口38と、第1接着剤流路61に連通すると共に第1ノズル口37に連通する第1注入流路35と、第2接着剤流路62に連通すると共に第2ノズル口38に連通する第2注入流路36と、を有している。
【選択図】 図3
Description
この注入ノズルは、注入器本体に装着され、内部に注入器本体に連なる接着剤流路を有するノズルボディと、ノズルボディの先端から突出するように且つ進退自在に設けられ、接着剤流路に連通するノズル内筒と、を備えている。また、ノズルボディは、間隙を存してノズル内筒を保持するノズル外筒と、ノズル外筒を囲繞する共に挿填穴の開口部を封止する封止部材と、を有している。そして、ノズル内筒の内部に第1注入流路が構成され、ノズル内筒の先端には第1注入流路に連なる吐出口が形成されている。また、ノズル内筒とノズル外筒との間隙に第2注入流路が構成され、ノズル外筒の先端には第2注入流路に連なる漏出口が形成されている。
封止部材により挿填穴の開口部を封止しつつ挿填穴に接着剤を注入してゆくと、接着剤は、第1注入流路を通ってノズル内筒の吐出口から吐出され、挿填穴の最深部から徐々に満たされてゆく。また、接着剤は、第2注入流路を通ってノズル外筒の漏出口から吐出され、挿填穴の手前から満たされてゆく、これにより、接着剤は、挿填穴に充填されると共に、挿填穴に連なる複数の「浮き部」にも充填される。
また、従来の注入ノズルでは、吐出口および漏出口の2つのノズル口により、接着剤を挿填穴の最深部および手前から注入可能であるが、ノズル内筒、ノズル外筒および封止部材廻りの部品点数が増し、構造が複雑になっている。このため、注入ノズルの洗浄に際し、作業が煩雑で時間を要する問題があった。
接着剤(エポキシ樹脂)には硬化時間があり、注入作業後或いは注入作業中に注入ノズルを溶剤で洗浄する必要がある(2液混合から2時間が目安)。この一連の洗浄作業は、分解、洗浄、組立の工程を経るため、部品点数が多く且つ構造が複雑になると、その分、作業が煩雑で時間を要することとなり、ピンニング工法の工期に大きな影響を与える。
また、下穴に挿入される複合ノズル部がノズルボディ取り付けられているため、複合ノズル部ががたつくことがなく、その先端が下穴の穴壁につかえる等の不具合を抑制することができる。また、第1注入流路(第1ノズル口)および第2注入流路(第2ノズル口)を有する複合ノズル部が、単一のもので形成されているため、複合ノズル部廻りの構造を単純化することができる。したがって、接着剤の注入作業を適切且つ円滑に行い得ると共に、洗浄作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
また、複合ノズル部を比較的簡単且つ低コストで形成することができ、複合ノズル部を使い捨ての部品とすることも可能となる。
この構成によれば、下穴の深さが決定した段階で、カットラインの数値を目安に複合ノズル部の先端側をカットすれば、現場において、下穴の深さに合った複合ノズル部を簡単に形成することができる。
図1は、外壁と接着剤注入器との関係を表した断面模式図である。同図に示すように、外壁1は、コンクリート躯体2と、コンクリート躯体2の表面に塗り付けた下地モルタル3と、下地モルタル3の表面に塗り付けた張付けモルタル4と、張付けモルタル4の表面に張り付けたタイル等の仕上げ材5とで構成されている。なお、仕上げ材5には、大型タイルや規格石(石材)も含まれる。
ここで、図1および図2を参照して、接着剤注入器10について簡単に説明する。両図に示すように、接着剤注入器10は、接着剤Rを供給するポンプ形式の注入器本体11と、注入器本体11の先端部に着脱自在に装着された注入ノズル12と、で構成されている。注入器本体11は、ポンピング操作により、貯留している接着剤Rを注入ノズル12に送り込み、注入ノズル12は、送り込まれた接着剤Rを外壁1に形成された下穴8に直接注入する。
注入器本体11は、有底円筒状の接着剤貯留部15と、接着剤貯留部15が着脱自在に取り付けられたポンプ部16と、ポンプ部16に保持された略「L」字状の操作レバー17とを備えている。ポンプ部16の基端側には、内部に接着剤Rが貯留された接着剤貯留部15が取り付けられ、先端側には注入ノズル12が装着されている。接着剤貯留部15を手持ちすると共に、手動で操作レバー17を操作する(ポンピング)ことにより、ポンプ部16を介して注入ノズル12から接着剤Rが一定量ずつ吐出される。
注入ノズル12は、下穴8に挿入される単一の複合ノズル部21と、複合ノズル部21に装着され下穴8の開口部8aを封止する開口封止部22と、複合ノズル部21を保持するノズルボディ23と、を備えている。また、ノズルボディ23は、先端部に複合ノズル部21が接合されたボディ本体24と、ボディ本体24を収容すると共に注入ノズル12を注入器本体11に装着するための装着カバー部25と、を有している。
図3および図4に示すように、複合ノズル部21は、接着剤R(の溶剤)に対し耐薬品性を有する硬質の樹脂等で形成され、先方に長く延びるノズル本体31と、ノズル本体31の基端に連なるフランジ部32と、フランジ部32の基端に連なる接合部33と、で一体に形成されている。また、複合ノズル部21の内部には、後述するボディ本体24の第1接着剤流路61に連通する第1注入流路35が形成されると共に、第2接着剤流路62に連通する第2注入流路36が形成されている。
開口封止部22は、接着剤Rの注入に際し下穴8の開口部8aを封止する部位であり、フッ素ゴム等の耐薬品性の弾性材料で形成されている。開口封止部22は、開口部8aを直接封止するテーパー形状のテーパー部51と、テーパー部51の基端側に連なるストレート部52と、で一体に形成されている。そして、開口封止部22は、複合ノズル部21の基端部に嵌め入れるようにして装着されている。
図3に示すように、ノズルボディ23のボディ本体24は、ステンレスやスチール等で略円柱状に形成されている。ボディ本体24の内部には、下流側を第1注入流路35(および第1円形流路42)に連通する第1接着剤流路61と、下流側を第2注入流路36(および第2円形流路43)に連通する第2接着剤流路62と、が形成されている。そして、第1接着剤流路61と第2接着剤流路62とは、同径に形成され、且つボディ本体24の軸心に対し180°点対称位置に配設されている。
次に、図5を参照して、注入器本体11について詳細に説明する。上述のように、注入器本体11は、接着剤貯留部15と、ポンプ部16と、操作レバー17とを備えている。ポンプ部16の基端側には、内部に接着剤Rが貯留された接着剤貯留部15が取り付けられ、先端側には注入ノズル12が装着される。接着剤貯留部15を手持ちすると共に、手動で操作レバー17を操作する(ポンピング)ことにより、ポンプ部16を介して注入ノズル12から接着剤Rが一定量ずつ吐出される。
接着剤貯留部15は、接着剤Rを貯留する部位であり、詳細は図示しないが、有底筒状に形成されている。接着剤貯留部15の先端部は、貯留部Oリング81を介在した状態で、ポンプ部16に着脱自在に装着(ネジ接合)されている。接着剤貯留部15の内部には、例えば椀型パッキンやこれを付勢するコイルバネが組み込まれており、貯留した接着材Rに所定の圧力を付与するようになっている。
ポンプ部16は、接着剤貯留部15が螺合するキャップ部84と、キャップ部84から突出しシリンダー85を形成したケーシング本体86と、ケーシング本体86に連なり操作レバー17を支持するブロック部87と、を有するポンプケーシング83を備えている。キャップ部84、ケーシング本体86およびブロック部87は一体に形成され、ダイキャスト製のポンプケーシング83を構成している。そして、ブロック部87の先端部には、注入ノズル12の第1凹部71に接合される第1接合継手88と、第2凹部72に接合される第2接合継手89とが取り付けられている。
操作レバー17は、ポンピングを行うためのレバー本体116と、レバー本体116とブロック部87とを連結する連結リンク117とを有している。連結リンク117は、一方の端部がブロック部87に回動自在に支持され、他方の端部がレバー本体116の先端部に回動自在に連結されている。レバー本体116は、接着剤貯留部15に沿うように長く延在し、連結リンク117側近傍でピストン95に回動自在に連結されている。
ここで、図5および図6を参照して、流路切替え機構部80について詳細に説明する。
流路切替え機構部80は、相互に平行に配設した第1送込み流路96および第2送込み流路97に臨み、第1送込み流路96と第2送込み流路97とを選択的に流路切替え可能に構成されている。具体的には、流路切替え機構部80は、第1送込み流路96を開放し且つ第2送込み流路97を開放する全開放位置と、第1送込み流路96を開放し且つ第2送込み流路97を閉塞する第1開放位置と、第1送込み流路96を閉塞し且つ第2送込み流路97を開放する第2開放位置と、の間で接着剤Rの流路を切り替え得るようになっている。
次に、図7を参照して、第1実施形態の第1変形例に係る流路切替え機構部80Aについて説明する。この流路切替え機構部80Aでは、弁座部121Aと弁体部122Aとがネジ機構を構成しておらず、単に弁座部121Aに弁体部122Aが回転可能に嵌合している。
次に、図8を参照して、第1実施形態の第2変形例に係る流路切替え機構部80Bについて説明する。この流路切替え機構部80Bは、シリンダー状の弁座部121Bと、プランジャー状の弁体部122Bとを有し、弁座部121Bに対し弁体部122Bをスライド(進退)させることにより、切替え操作される。
流路切替え機構部80の切替え操作は、例えば図1において、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cのうち、第1浮き部6aおよび第2浮き部6bの2箇所に「浮き」が生じている場合には、操作摘み部125を第1開放位置に切り替えて、接着剤Rを第1ノズル口37からのみ吐出させる。また、第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cの3箇所に「浮き」が生じている場合や、第1浮き部6aおよび第3浮き部6cの2箇所に「浮き」が生じている場合には、操作摘み部125を全開放位置に切り替えて、接着剤Rを第1ノズル口37および第2ノズル口38から吐出させる。
次に、図9および図10を参照して、上記の接着剤注入器10を用いたピンニング工法について説明する。このピンニング工法では、前工程として、ハンマー等により外壁1を打鍵して第1浮き部6a、第2浮き部6bおよび第3浮き部6cを探査し、下穴8の穿孔位置(タイルの中心部表面にマーキング)および穿孔深さが決定されているものとする。なお、後述する注入工程において、図9では、上記の全開放位置に切替えた注入形態について、図10(a)では、第1開放位置に切替えた注入形態について、図10(b)では、第2開放位置に切替えた注入形態について、それぞれ説明する。
次に、図11を参照して、第2実施形態に係る接着剤注入器10の注入ノズル12Aについて説明する。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。第2実施形態の接着剤注入器10では、注入器本体11が、シリンダーに連なる単一の送込み流路を有する一般的なものとなっている。したがって、ここでは注入器本体11の説明は省略する。一方、注入ノズル12Aは、第1ノズル口37および第2ノズル口38から接着剤Rを吐出可能に構成されているものの、上記のような流路切替え機構部80がなく、単純な構造を有している。
ノズルボディ23Aのボディ本体24Aは、ステンレスやスチール等で形成されている。ボディ本体24Aの内部には、その軸心部に、複合ノズル部21の第1注入流路35および第2注入流路36に連通する単一の接着剤流路161が形成されている。そして接着剤流路161は、ボディ本体24Aを軸方向に貫くように形成されている。
[ノズルボディ]
ノズルボディ22のボディ本体24Bは、ステンレスやスチール等で略円柱状に形成されている。ボディ本体24Bの内部には、下流側を複合ノズル部21の第1注入流路35(および第1円形流路42)に連通する第1接着剤流路201と、下流側を複合ノズル部21の第2注入流路36(および第2円形流路43)に連通する第2接着剤流路202と、上流側を注入器本体11に連通し下流側を第1接着剤流路201および第2接着剤流路202に連通する共有接着剤流路203と、が形成されている。
ここで、図12および図13を参照して、流路切替え機構部180について詳細に説明する。第1実施形態の流路切替え機構部80が注入器本体11に作り込まれているのに対し、第3実施形態の流路切替え機構部180は、注入ノズ12Bに作り込まれている。但し、両者の基本構造は、略同一である。
Claims (8)
- 注入器本体に装着して用いられ、
壁体を所定の深さまで穿孔した下穴に、その開口部を封止しながら接着剤を注入するピンニング工法用の注入ノズルであって、
前記下穴に挿入され、硬質の樹脂で一体に形成された複合ノズル部と、
前記複合ノズル部の基部に装着され、前記開口部を封止する開口封止部と、
前記注入器本体に装着され、内部に前記注入器本体に連なる接着剤流路を有すると共に先端部に前記複合ノズル部が取り付けられたノズルボディと、を備え、
前記複合ノズル部は、
前記下穴の奥部に臨む第1ノズル口と、
前記下穴の前記開口部近傍に臨む第2ノズル口と、
上流側を前記接着剤流路に連通すると共に下流側を前記第1ノズル口に連通する第1注入流路と、
上流側を前記接着剤流路に連通すると共に下流側を前記第2ノズル口に連通する第2注入流路と、を有していることを特徴とするピンニング工法用の注入ノズル。 - 前記第1注入流路と前記第2注入流路とは、相互に平行に且つ近接して配設されていることを特徴とする請求項1に記載のピンニング工法用の注入ノズル。
- 前記複合ノズル部は、外周面に軸方向のカット位置を指標する複数のカットラインを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のピンニング工法用の注入ノズル。
- 前記各カットラインには、前記下穴の深さに対応する数値が明示されていることを特徴とする請求項3に記載のピンニング工法用の注入ノズル。
- 前記接着剤流路は、
前記第1注入流路に連通する第1接着剤流路と、
前記第2注入流路に連通する第2接着剤流路と、から成り、
前記ノズルボディには、前記第1接着剤流路を開放し且つ前記第2接着剤流路を開放する全開放位置と、前記第1接着剤流路を開放し且つ前記第2接着剤流路を閉塞する第1開放位置と、前記第1接着剤流路を閉塞し且つ前記第2接着剤流路を開放する第2開放位置と、の相互間で接着剤の流路を切り替える流路切替え機構部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピンニング工法用の注入ノズル。 - 前記接着剤流路が、前記第1注入流路に連通する第1接着剤流路と、前記第2注入流路に連通する第2接着剤流路と、から成る請求項1ないし4のいずれかに記載のピンニング工法用の注入ノズルと、前記注入ノズルが着脱自在に装着される注入器本体と、から成るピンニング工法用の接着剤注入器であって、
前記注入器本体は、
接着剤を貯留する接着剤貯留部と、
吸込口を介して前記接着剤貯留部から吸い込んだ接着剤を吐出口から吐出するポンプ部と、
上流側を前記吐出口に連通し下流側を前記第1接着剤流路に連通する第1送込み流路と、
上流側を前記吐出口に連通し下流側を前記第2接着剤流路に連通する第2送込み流路と、
前記第1送込み流路を開放し且つ前記第2送込み流路を開放する全開放位置と、前記第1送込み流路を開放し且つ前記第2送込み流路を閉塞する第1開放位置と、前記第1送込み流路を閉塞し且つ前記第2送込み流路を開放する第2開放位置と、の相互間で接着剤の流路を切り替える流路切替え機構部と、を備えたことを特徴とするピンニング工法用の接着剤注入器。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載のピンニング工法用の注入ノズルと、前記注入ノズルが着脱自在に装着された前記注入器本体と、から成る接着剤注入器を用い、前記壁体を補修するピンニング工法であって、
前記壁体を所定の深さまで穿孔して前記下穴を形成する穿孔工程と、
前記接着剤注入器により、前記下穴の開口部を封止しつつ前記下穴に接着剤を注入する注入工程と、
接着剤が注入された前記下穴に、アンカーピンを挿入・装着する装着工程と、を備えたことを特徴とするピンニング工法。 - 請求項6に記載のピンニング工法用の接着剤注入器を用い、前記壁体を補修するピンニング工法であって、
前記壁体を所定の深さまで穿孔して前記下穴を形成する穿孔工程と、
前記接着剤注入器により、前記下穴の開口部を封止しつつ前記下穴に接着剤を注入する注入工程と、
接着剤が注入された前記下穴に、アンカーピンを挿入・装着する装着工程と、を備えたことを特徴とするピンニング工法。
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