以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態では、乗客コンベアの例として、多数の踏段が上下階に亘って斜めに移動するエスカレータを例示するが、勿論、本発明は、多数の踏段(踏板)が連続して水平方向に移動する動く歩道を点検対象とする場合にも有効に適用可能である。
図1は、本実施形態の運転制御システムの概略構成を示す図である。図1に示されるように、機械室20には、制御盤30と、パルス発生器21と、駆動機16と、踏段チェーンスプロケット15と、基準点スイッチ13と、駆動チェーン18と、が設置されている。
一方、診断対象となるエスカレータ1は、複数の踏段11と、基準踏段10と、を備えている。複数の踏段11と、基準踏段10と、は、踏段チェーン17に連結されている。駆動機16は、制御盤30によって動作制御され、駆動チェーン18を介して踏段チェーンスプロケット15を駆動させる。
踏段チェーン17は、踏段チェーンスプロケット15の駆動に従って、踏段チェーンスプロケット15と、(図示しない)従動スプロケットとの間を周回する。これにより、複数の踏段11と、基準踏段10と、が(図示しない)ガイドレールに沿って上階側乗降口と下階側乗降口との間で循環移動する。
基準点スイッチ13は、複数の踏段11のうちいずれか一つである基準踏段10が、基準点(所定の位置の例)を通過したことを検出する。本実施形態では、基準点スイッチ13が設けられた位置が、踏段11の位置を特定するための基準となる。
このため、基準点スイッチ13は、作業者がエスカレータ1の外観から容易に特定可能な位置に設けられる。例えば、基準点スイッチ13は、エスカレータ1の上段コムプレート先端の直下などに固定する。本実施形態においては、基準踏段装置12が当該基準点スイッチ13を通過した際の基準踏段10の位置を、基準点と称する。
基準踏段10には、基準踏段装置12が設けられている。そして、基準点スイッチ13が、基準踏段装置12を検知した場合に、検知したことを示す信号を、制御盤30に出力する。これにより、制御盤30は、基準踏段10の位置を把握できる。
パルス発生器21は、踏段11と基準踏段10とを循環移動させる駆動機16の回転に応じてパルスを発生させる。パルス発生器21は、稼働時において、常にパルス波形を、発生されたパルス信号として、制御盤30に出力する。これにより、制御盤30は、駆動機16の回転量、換言すれば、踏段チェーン17の移動量を算出できる。
制御盤30は、処理プログラムや計測結果を記憶可能な(図示しない)ROMと、一時的に情報を記憶可能な(図示しない)RAMと、(図示しない)入出力ポートと、通信インターフェース(以下、通信I/Fと称する)と、を備えている。また、制御盤30は、処理プログラムを(図示しない)CPUが実行することで、様々な処理を実行できる。
外部携帯通信装置60は、作業者が携帯するための外部装置とする。本実施形態の外部携帯通信装置60は、無線通信を用いて、制御盤30と通信可能とする。
外部携帯通信装置60は、制御盤30に対して、制御に関する情報を送信することで、エスカレータ1の運転制御を可能としている。本実施形態の外部携帯通信装置60は、制御盤30に対して制御に関する情報を送信するための処理プログラムを予めインストールされている。
図2は、本実施形態の基準踏段10の構造を例示した図である。図2に示されるように、基準踏段10は、踏段ササエ10aと、後輪10bと、を備えているとともに、穴部10cには、前輪22と接続されたシャフト23が設けられる。さらには、踏段ササエ10aに取り付けられる後輪10b近傍には、基準踏段装置12が設けられる。
本実施形態では、踏段長さ50は、基準踏段10の例を示しているが、踏段11の踏段長さも同じとする。
図3は、機械室20に設けられた基準点スイッチ13と、基準踏段装置12と、の位置関係を例示した図である。図3に示されるように、デッキボード29及びスカートガード28の下に機械室20が設けられている。
機械室20には、上段ガイドレール24が設置されている。上段ガイドレール24は、踏段11及び基準踏段10の、前輪22及び後輪10bが走行可能に敷設されている。
そして、基準点スイッチ13は、サポート部材14を介して、上段ガイドレール24と接続されている。当該基準点スイッチ13は、基準踏段装置12が通過可能となる位置に設けられている。そして、基準点スイッチ13は、基準踏段装置12が通過したか否かを示す検出信号を、制御盤30に出力する。
図4は、本実施形態の制御盤30の構成を例示した図である。図4に示されるように、制御盤30は、記憶部301と、無線通信I/F302と、パルス信号取得部303と、位置算出部304と、検出信号取得部305と、検出処理部306と、運転制御部307と、通信制御部308と、停止位置算出部309と、通信I/F310と、を備えている。
通信I/F310は、公衆ネットワーク400と接続するためのインターフェースとする。例えば、通信I/F310は、公衆ネットワーク400を介して接続されている監視センター450との間で情報の送受信を可能とする。
記憶部301は、基本情報記憶部311と、踏段位置記憶部312と、停止位置記憶部313と、を備えている。
図5は、本実施形態の基本情報記憶部311のデータ構造を例示した図である。図5に示されるように、基本情報記憶部311は、“項目”と、“値”と、“備考”と、を対応付けて記憶している。基本情報記憶部311は、エスカレータ1の制御を行うための基本情報を記憶する。図5に示される例では、“備考”に、項目毎の種類を格納している。
例えば、“事前登録”と示されている場合には、製品仕様で示された値が登録されている。“事前登録”に対応する“項目”としては、例えば、1パルス移動距離、踏段個数、踏段長さがある。
1パルス移動距離は、パルス発生器21により発生した1パルス当たりの踏段11、基準踏段10の移動距離を示している。踏段個数は、エスカレータ1に設けられた踏段11(基準踏段10を含む)の個数とする。踏段長さは、踏段1個あたりの踏段長さ50とする。
また、“計測結果”と示されている場合には、制御盤30に入力されるパルス信号又は検出信号に基づいた計測結果を示した値が登録されている。“計測結果”に対応する“項目”としては、例えば、1周パルス加算値がある。1周パルス加算値は、基準踏段10が1周している間に増加するパルス値とする。
また、“演算結果”と示されている場合には、制御盤30により演算された結果を示した値が登録されている。“演算結果”に対応する“項目”としては、例えば、停止距離パルス値と、踏段長さパルス値と、がある。停止距離パルス値と、踏段長さパルス値と、は例えば、位置算出部304により算出される。算出は、どのタイミングで行っても良いが、例えば、初期設定時に設定されることが考えられる。
停止距離パルス値は、ブレーキスリップ距離をパルス値で示したものである。本実施形態では、エスカレータ1がブレーキを開始したときのパルス値と、エスカレータ1が停止したときのパルス値と、に基づいて算出される。本実施形態においては、位置算出部304が、下記の式(1)から算出する。
停止距離パルス値=エスカレータ1停止時のパルス値−エスカレータ1ブレーキ開始時のパルス値……(1)
踏段長さパルス値は、踏段長さ50と1パルス移動距離とから、踏段1個あたりの長さのパルス値を算出したものである。本実施形態においては、位置算出部304が、下記の式(2)から算出する。
踏段長さパルス値(N)=踏段長さ÷1パルス移動距離……(2)
踏段位置記憶部312は、複数の踏段11の各々について、基準踏段10を基準とした、踏段11の各々の距離情報を記憶する。図6は、本実施形態の踏段位置記憶部312のデータ構造を例示した図である。図6に示されるように、踏段位置記憶部312は、“踏段名”と、“距離パルス値”と、“基準踏段”フラグと、を対応付けて記憶している。
“踏段名”は、踏段11及び基準踏段10の各々を識別する情報とする。“距離パルス値”は、踏段11及び基準踏段10の各々について、基準踏段10を基準とした距離をパルス値で示したものである。
踏段11及び基準踏段10の“踏段名”は、各々を識別可能であれば良いが、例えば、基本情報記憶部311に記憶された“踏段個数”に基づいて登録しても良い。図6で示される例では頭文字“A”と、踏段毎に割り当てられた“数字”と、を組み合わせて、“踏段名”とする。これにより、基準踏段10の踏段名は“A0”となり、踏段11の踏段名は“A1、A2、……”となる。
“基準踏段”フラグは、基準踏段10であるか否かを示した情報が格納されている。本実施形態では、“○”が設定された踏段を、基準踏段10とする。図6で示される例では“A0”が基準踏段10となる。
“距離パルス値”は、本実施形態においては、下記の式(3)から算出される。なお、変数Mは、上述した“踏段個数”に基づいて、踏段毎に割り当てられた“数字”とする(具体的には、踏段毎に‘1’から順に割り当てられたユニークな整数とする)。例えば、踏段名“A1”は、“M=1”となる。本実施形態では、基準踏段10のパルス値を“0”とした上で、踏段11の各々について、基準踏段10からの相対的な距離をパルス値で示したものとする。
距離パルス値=基準踏段10のパルス値+踏段長さパルス値(N)×M……(3)
停止位置記憶部313は、本実施形態のエスカレータ1における、踏段11及び基準踏段10を停止可能な位置を記憶する。図7は、本実施形態の停止位置記憶部313のデータ構造を例示した図である。図7に示されるように、停止位置記憶部313は、“停止位置名”と、“停止位置(パルス値)”と、を対応付けて記憶している。停止位置記憶部313に記憶される“停止位置”は、予め登録されていても良いし、作業者の要求に応じて登録されても良い。作業者の要求に応じて登録される場合については後述する。
“停止位置名”は、踏段11及び基準踏段10の各々の停止位置を識別する情報とする。本実施形態においては、外部携帯通信装置60において、踏段11を停止させる位置を示す情報として、“停止位置名”が示されると共に、外部携帯通信装置60から、踏段11の停止位置を示す情報として受信する。
“停止位置(パルス値)”は、“停止位置名”で示された停止位置毎に、当該停止位置を示したパルス値が設定されている。
図4に戻り、無線通信I/F302は、外部装置(例えば、外部携帯通信装置60)と無線通信を行うためのインターフェースとする。無線通信I/F302は、外部装置(例えば、外部携帯通信装置60)と通信するために、アクセスポイント機能を備えていても良い。
検出信号取得部305は、基準点スイッチ13から、基準踏段装置12が基準点を通過したか否かを示した検出信号を取得する。
検出処理部306は、検出信号取得部305が取得した検出信号に基づいて、基準点スイッチ13を通過した回数をカウントする。
さらに、検出処理部306は、検出信号に基づいて基準点スイッチ13を基準踏段装置12が通過したと判定した場合に、パルス値のリセット信号を、位置算出部304に出力する。
パルス信号取得部303は、パルス発生器21から、パルス波形を示すパルス信号を取得する。
位置算出部304は、パルス信号で示されたパルス波形に基づいて、パルス値をカウントする。例えば、位置算出部304は、検出処理部306にから送信されたリセット信号を受け付けた場合に、パルス値をリセットし、基準踏段装置12が基準点スイッチ13を通過してからのパルス値をカウントする。つまり、本実施形態では、基準点からの基準踏段10の位置がパルス値としてカウントされる。本実施形態では、基準踏段10の位置を示したパルス値をカウントする例について説明するが、パルス値のカウントに制限するものではなく、基準点からの実際の距離等を算出してもよい。
運転制御部307は、エスカレータ1の運転制御を行う。例えば、通信制御部308が受信した制御命令に基づいて、エスカレータ1の運転開始、停止等の制御を行う。
通信制御部308は、無線通信I/F302を介して、他の外部装置(例えば、外部携帯通信装置60)との間で情報の送受信を行う。
例えば、通信制御部308は、無線通信I/F302を介して、外部装置(例えば、外部携帯通信装置60)から、複数の踏段11のうちいずれか一つを指定する指定情報と、指定された踏段11を停止させる位置を示した位置情報と、を受信する。
停止位置算出部309は、外部装置からの要求に従って、踏段11を停止させるための位置を算出する。本実施形態の停止位置算出部309は、通信制御部308を介して、外部携帯通信装置60からの指定情報及び位置情報を取得した場合に、指定情報で示された踏段11又は基準踏段10を、位置情報で示された(目的)停止位置に停止させるために、ブレーキ開始位置を算出する。
このため、停止位置算出部309は、ブレーキスリップ距離を考慮した上で、ブレーキ開始位置を算出する。ブレーキ開始位置を算出するために、基本情報記憶部311に記憶された停止距離パルス値を用いる。
そして、位置算出部304は、取得したパルス値に基づいて、停止位置算出部306により算出されたブレーキ開始位置にきたと判定した場合に、ブレーキ開始を運転制御部307に要求する。
運転制御部307は、位置算出部304からの要求に従って、指定情報で示された踏段11又は基準踏段10を、目的停止位置に停止させるための制御を、エスカレータ1に対して行う。
また、通信制御部308は、公衆ネットワーク400を介して接続された監視センター450からの指示情報を受信する。
そして、運転制御部307は、指示情報に従って、指示情報で示された踏段11又は基準踏段10を、所定の位置まで移動させる制御を行う。所定の位置は、遠隔点検用に予め定められた位置(例えば、基準点)でも良いし、監視センター450の指示情報に含まれている停止位置でも良い。
次に、外部携帯通信装置60について説明する。外部携帯通信装置60は、処理プログラムを実行することで、エスカレータ1の運転制御を行うための画面が表示される。
図8は、本実施形態の外部携帯通信装置60に表示される画面の遷移を例示した図である。図8に示されるように、本実施形態の外部携帯通信装置60は、スタート画面801と、初期設定画面802と、停止位置設定画面803と、を表示可能とする。
スタート画面801は、「初期設定」ボタン801aと、「停止位置設定」ボタン801bと、「終了」ボタン801cと、を備えている。外部携帯通信装置60は、「初期設定」ボタン801aが押下された場合には、初期設定画面802を表示する。外部携帯通信装置60は、「停止位置設定」ボタン801bが押下された場合には、停止位置設定画面803を表示する。外部携帯通信装置60は、「終了」ボタン801cが押下された場合には、エスカレータ1の運転制御を行うための処理プログラムを終了する。
初期設定画面802は、「初期設定開始」ボタン802aと、「停止位置登録」ボタン802bと、「戻る」ボタン802cと、を備えている。
外部携帯通信装置60は、「初期設定開始」ボタン802aが押下された場合には、制御盤30に初期設定要求を送信する。また、外部携帯通信装置60は、「停止位置登録」ボタン802bが押下された場合には、制御盤30に、停止位置登録要求を送信する。外部携帯通信装置60は、「戻る」ボタン802cが押下された場合には、スタート画面801を表示する。
次に、停止位置設定画面803について説明する。図9は、実施形態の停止位置設定画面803の画面例を示した図である。図9に示されるように、停止位置設定画面803は、踏段位置確認画面911と、停止対象踏段指定画面912と、踏段停止位置指定画面913と、エスカレータ運転操作画面914と、で構成されている。
踏段位置確認画面911は、表示領域901に、基準踏段10(踏段名A0)と、踏段11(踏段名A1、A2、A3……)と、の位置が表示される。踏段位置確認画面911は、「更新」ボタン902が配置されている。外部携帯通信装置60は、「更新」ボタン902の押下を受け付けた場合に、現在位置取得要求を、制御盤30に送信する。その後、外部携帯通信装置60は、制御盤30から、踏段11の現在位置(例えば、基準踏段10の現在位置を示したパルス値、基本情報記憶部311に記憶されている1パルス移動距離、踏段個数、及び踏段長さ)を示した情報を受信する。当該情報に従って、踏段位置確認画面911の表示領域901が更新される。これにより、作業者は、踏段11及び基準踏段10の現在位置を認識できる。
図9に示される例では、基準踏段10と共に、基準踏段10を示す踏段名A0が表示される。そして、上方向に、踏段11を示す踏段名A1、A2が続いて表示される。
つまり、作業者は、点検時においては、エスカレータ1が停止しているものとする。そして、作業者は、「更新」ボタン902を押下して更新された後の、表示領域901を確認することで、現在の基準踏段10の位置と踏段11毎の位置とを確認できる。これにより作業者は、異常が生じている踏段11又は基準踏段10の踏段名を把握できる。
停止対象踏段指定画面912は、基準踏段10及び踏段11を示す踏段名の一覧903が表示されている。本実施形態においては、外部携帯通信装置60は、制御盤30から、踏段位置記憶部312に記憶されている踏段11毎の踏段名を受信する。そして、外部携帯通信装置60は、当受信した該踏段名の一覧903を表示する。そして、停止対象踏段指定画面912は、踏段名の一覧903から、任意の踏段名の欄の押下を受け付ける。このように、外部携帯通信装置60は、停止させたい踏段11を認識する。本実施形態では、欄が押下された踏段名が、踏段11を指定する指定情報に含まれる。
つまり、作業者は、表示領域901に表示された踏段11(基準踏段10を含む)毎の踏段名を確認した後、一覧903から、停止させたい踏段11(基準踏段10を含む)の選択を行うことができる。
踏段停止位置指定画面913は、踏段停止位置指定(距離指定)画面と、踏段停止位置指定(登録位置指定)画面と、で構成されている。
踏段停止位置指定(距離指定)画面は、距離指定一覧904と、距離の自由指定欄905と、で構成されている。そして、踏段停止位置指定(距離指定)画面は、距離指定一覧904から、基準点からの距離を示した欄の押下を受け付ける。また、踏段停止位置指定(距離指定)画面は、距離の自由指定欄905を介して、直接入力された基準点からの距離の入力を受け付ける。
踏段停止位置指定(登録位置指定)画面は、停止位置一覧906を含んでいる。停止位置一覧906に示されている停止位置は、初期設定画面802の「停止位置登録」ボタン802bを押下された場合に登録された位置であって、停止位置記憶部313に記憶された停止位置名(例えば、S0、S1、S2等)とする。なお、停止位置の登録手順については後述する。外部携帯通信装置60は、制御盤30から、停止位置記憶部313に登録された情報を受信することで、停止位置名の停止位置一覧906を表示する。また、外部携帯通信装置60は、受信した情報に基づいて、表示領域901の各位置に対応する停止位置名を表示しても良い。
そして、外部携帯通信装置60は、停止対象踏段指定画面912で指定された踏段11を示した指定情報(例えば、踏段名)と、踏段停止位置指定画面913で選択された踏段11を停止させる位置を示した位置情報(例えば、停止位置名又は基準点からの距離)と、を制御盤30に送信する。
エスカレータ運転操作画面914は、「START」ボタン907と、「STOP」ボタン908と、を備えている。外部携帯通信装置60は、「START」ボタン907の押下を受け付けた場合に、制御盤30に、エスカレータ1の運転開始を指示する情報を送信する。外部携帯通信装置60は、「STOP」ボタン908の押下を受け付けた場合に、制御盤30に、エスカレータ1の運転停止を指示する情報を送信する。
制御盤30は、外部携帯通信装置60から、エスカレータ1の運転開始を指示する情報を受信した場合に、運転制御部307が、エスカレータの運転制御を開始する。そして、制御盤30が、指定情報と位置情報とをすでに受信している場合には、運転制御部307は、指定情報で指定された踏段11又は基準踏段10を、位置情報で指定された位置まで移動させた後、エスカレータ1を停止させる。
これにより、本実施形態は、作業者が点検対象とした踏段11又は基準踏段10を、目的位置まで移動させる制御を実現できる。
次に、本実施形態の制御盤30における、外部携帯通信装置60からの操作に従った全体的な処理について説明する。図10は、本実施形態の制御盤30における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まずは、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、「初期設定開始」ボタン802aの押下に基づいた初期設定要求を受信したか否かを判定する(S1001)。
そして、通信制御部308が初期設定要求を受信したと判定した場合(S1001:Yes)、制御盤30は、基本情報記憶部311に格納された情報の初期設定を行う(S1002)。
次に、制御盤30は、踏段位置記憶部312に記憶された、踏段11毎の位置の設定を行う(S1003)。
一方、通信制御部308は、初期設定要求を受信しなかった場合(S1001:No)、又はS1003の処理が終了した後、外部携帯通信装置60から、「停止位置登録」ボタン802bの押下に基づいた停止位置登録要求を受信したか否かを判定する(S1004)。受信していないと判定した場合(S1004:No)、S1006に移動する。
一方、通信制御部308が、停止位置登録要求を受信したと判定した場合(S1004:Yes)、制御盤30は、停止位置記憶部313に格納された停止位置の設定を行う(S1005)。
そして、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、踏段11又は基準踏段10を指定する指定情報、及び停止位置を示した位置情報を受信したか否かを判定する(S1006)。受信していないと判定した場合(S1006:No)、S1009に移動する。
一方、通信制御部308は、指定情報、及び位置情報を受信したと判定した場合(S1006:Yes)、指定情報で指定された踏段11を、位置情報で指定された位置に停止させる制御を行う(S1007)。
そして、位置算出部304は、基本情報記憶部311に初期設定された情報と、パルス信号取得部303が取得したパルス信号と、の間にずれが生じているか否かを判定する(S1008)。ずれが生じていると判定した場合(S1008:Yes)、再びS1002から処理を行う。
一方、位置算出部304は、ずれが生じていないと判定した場合(S1008:No)、制御盤30は、外部携帯通信装置60からの処理が終了したか否かを判定する(S1009)。処理が終了していないと判定した場合(S1009:No)、再びS1006から処理を行う。
一方、制御盤30は、処理が終了したと判定した場合(S1009:Yes)、処理を終了する。
次に、本実施形態の制御盤30における、図10のS1002で示した初期設定について説明する。図11は、本実施形態の制御盤30における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、運転制御部307が、エスカレータ1の運転を開始する(S1101)。次に、位置算出部304が、パルス値のカウントを開始する(S1102)。
これにより、パルス信号取得部303が、パルス発生器21からパルス信号を取得し、位置算出部304が、取得したパルス信号に応じて、パルス値をカウントする(S1103)。
次に、検出信号取得部305が、基準点スイッチ13から検出信号を取得する(S1004)。そして、検出処理部306が、取得した検出信号に基づいて、基準点スイッチ13を、基準踏段装置12が通過したか否かを判定する(S1105)。通過していないと判定した場合(S1005:No)、再びS1103から処理を行う。
一方、検出処理部306が、基準点スイッチ13を、基準踏段装置12が通過したと判定した場合(S1005:Yes)、検出処理部306は、通過が1回目であるか否かを判定する(S1106)。
検出処理部306は、通過が1回目と判定した場合(S1106:Yes)、位置算出部304に対して、カウントのリセット信号を出力する(S1107)。これにより、カウントされているパルス値が‘0’となる。そして、再びS1103から処理を行う。
一方、検出処理部306は、通過が1回目ではないと判定した場合(S1106:No)、通過が2回目であるか否かを判定する(S1108)。検出処理部306は、通過が2回目と判定した場合(S1108:Yes)、位置算出部304が、S1107でリセット信号が入力されてからカウントされたパルス値を、1周パルス加算値として、基本情報記憶部311に登録する(S1109)。そして、再びS1103から処理を行う。
一方、検出処理部306は、通過が2回目ではない、換言すれば3回目と判定した場合(S1108:No)、運転制御部307が、エスカレータ1に対して、停止命令を出力する(S1110)。
そして、位置算出部304は、停止命令出力時のパルス値を記録する(S1111)。エスカレータ1は、停止命令に従って停止制御を行う(S1112)。
そして、位置算出部304は、パルス信号取得部303が取得したパルス信号に基づいて、エスカレータ1の停止時のパルス値を記録する(S1113)。
そして、位置算出部304は、S1111で記録されたパルス値と、S1113で記録されたパルス値と、から、式(1)に従って、停止距離パルス値を算出し、算出した停止距離パルス値を、基本情報記憶部311に登録する(S1114)。
上述した処理手順によって、基本情報記憶部311に対して初期設定が行われる。
次に、本実施形態の制御盤30における、図10のS1003で示した踏段位置記憶部312の踏段11毎の位置設定について説明する。図12は、本実施形態の制御盤30における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、位置算出部304は、基本情報記憶部311から、1パルス移動距離を読み込む(S1301)。次に、位置算出部304は、基本情報記憶部311から、踏段長さ50を読み込む(S1302)。
そして、位置算出部304は、1パルス移動距離と、踏段長さ50と、を用いて、式(2)に従って、踏段長さパルス値を算出する(S1303)。
位置算出部304は、算出した踏段長さパルス値を、基本情報記憶部311に登録する(S1304)。
その後、位置算出部304は、基本情報記憶部311から、踏段個数を読み込む(S1305)。
そして、位置算出部304は、踏段個数で示された踏段毎に、踏段長さパルス値を用いて、式(3)に従って、基準踏段10からの距離を示した距離パルス値を算出する(S1306)。
そして、位置算出部304は、踏段11毎の距離パルス値を、踏段位置記憶部312に登録する(S1307)。
次に、本実施形態の制御盤30における、図10のS1005で示した停止位置記憶部313に登録する停止位置の設定について説明する。図13は、本実施形態の制御盤30における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、運転制御部307が、エスカレータ1の運転の開始制御を行う(S1201)。検出処理部306が、検出信号取得部305が取得した検出信号に基づいて、基準踏段10が基準点を通過したか否かを判定する(S1202)。通過していないと判定した場合(S1202:No)、当該処理を繰り返す。
一方、検出処理部306が、基準踏段10が基準点を通過したと判定した場合(S1202:Yes)、運転制御部307は、検出処理部306からの要求に従って、エスカレータ1の停止制御を行う(S1203)。
そして、作業者は、基準踏段10に対して印を付与する(S1204)。本フローチャートは、基準踏段10が存在する位置を、停止位置として登録する処理とする。このため、印は、基準踏段10が、他の踏段11と区別可能であればよい。
その後、運転制御部307が、エスカレータ1の再運転の開始制御を行う(S1205)。
そして、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、停止位置の登録要求を受信する(S1206)。そして、位置算出部304は、通信制御部308からの登録要求に従って、現在カウントされているパルス値、換言すれば、基準踏段10が現在存在する位置を示したパルス値を、停止位置パルス値として、停止位置記憶部313に登録する(S1207)。なお、停止位置パルス値と対応付けられる停止位置名は、自動的に生成されても良いし、外部携帯通信装置60から入力を受け付けても良い。
そして、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、停止位置指定完了を受け付けたか否かを判定する(S1208)。停止位置指定完了を受け付けていないと判定した場合(S1208:No)、再びS1206から開始する。
一方、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、停止位置指定完了を受け付けたと判定した場合(S1208:Yes)、運転制御部307が、エスカレータ1の停止制御を行い(S1209)、処理を終了する。
上述した処理手順により、停止位置記憶部313に、停止位置が登録される。これにより、作業者は、踏段11を所望する位置に停止させることが可能となる。
次に、本実施形態の制御盤30における、踏段11又は基準踏段10を、作業者が所望する位置に停止させる制御について説明する。図14は、本実施形態の制御盤30における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、停止させる対象となる踏段11(以下、目的踏段とも称する)の指定情報を受信する(S1401)。指定情報としては、例えば、踏段名とする。
そして、停止位置算出部309は、踏段位置記憶部312を参照して、指定情報で示された踏段名と対応付けられた距離パルス値と基準踏段フラグとを読み出す(S1402)。
また、通信制御部308は、外部携帯通信装置60から、目的踏段を停止させる位置(以下、目的停止位置とも称する)の位置情報を受信する(S1403)。位置情報としては、例えば、停止位置名とする。
そして、停止位置算出部309は、停止位置記憶部313を参照して、位置情報で示された停止位置名と対応付けられた停止位置パルス値を読み出す(S1404)。
そして、停止位置算出部309は、読み出した基準踏段フラグに基づいて、目的踏段が、基準踏段10であるか否かを判定する(S1405)。
停止位置算出部309は、目的踏段が、基準踏段10であると判定した場合(S1405:Yes)、停止位置算出部309が、基準踏段10の場合のブレーキ開始位置を算出する(S1406)。本実施形態においては、下記の式(4)又は式(5)から算出する。
式(4)は、目的踏段が基準踏段10であって、目的停止位置が基準点(S0)の場合とする。このため、停止位置算出部309は、基本情報記憶部311から“1周パルス加算値”を読み出す。“1周パルス加算値”は、基準踏段10の基準点(S0)として用いられる。
ブレーキ開始位置=1周パルス加算値−停止距離パルス値……(4)
式(5)は、目的踏段が基準踏段10であって、目的停止位置が基準点(S0)以外の場合とする。
ブレーキ開始位置=目的位置の停止位置パルス値−停止距離パルス値……(5)
一方、停止位置算出部309は、目的踏段が、基準踏段10ではないと判定した場合(S1405:No)、停止位置算出部309は、通常の踏段11の場合のブレーキ開始位置を算出する(S1407)。
式(6)は、目的踏段が通常の踏段11の場合とする。
ブレーキ開始位置=目的位置の停止位置パルス値+目的の踏段11の距離パルス値−停止距離パルス値……(6)
停止位置算出部309は、基本情報記憶部311から“1周パルス加算値”を読み出す。そして、停止位置算出部309は、式(6)で算出されたブレーキ開始位置が、“1周パルス加算値”より大きい場合には、さらに式(7)の処理を行う。
ブレーキ開始位置=式(6)で算出されたブレーキ開始位置−1周パルス加算値……(7)
停止位置算出部309により算出されたブレーキ開始位置は、位置算出部304に出力される。運転制御部307は、エスカレータ1の運転の開始制御を行う(S1408)。
そして、位置算出部304は、パルス信号取得部303が取得したパルス信号に基づいた、現在位置を示すパルス値が、ブレーキ開始位置を示すパルス値と、一致したか否かを判定する(S1409)。一致しないと判定した場合(S1409:No)、一致するまで処理を繰り返す。
位置算出部304が、一致したと判定した場合(S1409:Yes)、運転制御部307は、エスカレータ1に対して停止命令を出力し、ブレーキ開始制御を行う(S1410)。
これにより、エスカレータ1が停止する(S1411)。
本実施形態においては、上述した制御を行うことで、目的踏段を目的停止位置で停止させることができる。
本実施形態においては、運用開始前に初期設定を行うことで、パルス値のずれが抑止された状態となるため、エスカレータ1の停止精度を向上させることができる。
また、本実施形態においては、外部携帯通信装置60で、エスカレータ1の運転制御を行えることで、作業者は所望の位置から踏段11を視認しながら、停止制御を行うことができる。
また、本実施形態においては、外部携帯通信装置60が、受け付けた目的踏段を、目的停止位置に停止させる制御が実現できる。このため、エスカレータと称される、乗客コンベアにおいて、作業者の経験に左右されることなく、短時間で正確に、目的踏段を目的停止位置に停止させることができる。これにより、作業効率の向上を実現できる。
また、本実施形態においては、外部装置から受け付けた操作に従って、踏段の位置制御を実現しているので、任意の目的位置に関わらず、作業者が目視しながら操作を行うことができる。これにより、作業者の作業負担を軽減できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。