JP6551757B2 - 後挽き加工用の切削インサート - Google Patents

Description

本発明は、後挽き加工用の切削インサートに関する。

特許文献１には、後挽き加工において、切りくずがスムーズに排出できる切削インサートが開示されている。具体的には、ブレーカ溝（１５）の壁面のうち、前切刃（１３）に対向する前壁面（２１）の開き角（θ１）が、横切刃（１４）に対向する横壁面（２２）の開き角（θ２）よりも大きい切削インサート（１）が記載されている。

国際公開ＷＯ２０１５／１２９８３６号公報

しかしながら、後挽き用の切削インサートを被削材の回転軸に対して垂直に進入させて加工を開始する際に生成される切りくずが、チップブレーカの終端部に接触し破損する事態が発明者らにより観測された。そして、チップブレーカの壁面が終端部において鋭角にとがっている場合、切りくずの衝突による欠損や、チッピングを招きやすいことがわかった。

そこで本発明は、耐欠損性を改善する後挽き加工用の切削インサートを提供することを目的とする。

本発明の一態様に係る後挽き加工用の切削インサートは、第１の方向を向いた逃げ面と、逃げ面に接続し、第１の方向と反対の方向を向いた第１の端面と、逃げ面及び第１の端面と接続する上面と、上面側からみたときに、第１の端面からの距離が大きいほど第１の方向との角度が大きくなるように、逃げ面と上面とを接続する第１稜線と、第１の端面と上面とを接続する第２稜線と、第１稜線と第２稜線との間隙の上面に形成されるチップブレーカと、を備える。

そして、第１稜線には、第２稜線と接続するノーズ部と、このノーズ部に接続される第１切れ刃と、この第１切れ刃に接続される第２切れ刃が形成される。

さらに、チップブレーカの壁面は、第１稜線に沿って形成さる第１の壁面と、チップブレーカの第１切れ刃側の端部において第１の壁面及び第１の端面に接続し、第１の端面との角度が９０度または鈍角をなす強化面とを備える。

ここで、強化面と第１の端面との角度が９０度または鈍角をなすとは、強化面の表面と第１の端面とのなす角が９０度または鈍角であることをいう。

また、第１の方向を向いた逃げ面など、所定方向を向いた面とは、その面の法線が所定方向となる場合に限られず、傾斜して鋭角をなす場合も含まれる。

チップブレーカの頂面は、平面であっても曲面であってもよいが、チップブレーカの壁面の第１の壁面及び強化面とそれぞれ不連続に接続される。

一方で、第１の壁面と強化面は、連続的に滑らかに接続されることが好ましく、例えば、強化面にフィレット面を設けて第１の壁面と接続してもよい。

また、第１の端面からの距離が大きいほど第１の方向との角度が大きくなるとは、第１の端面からの距離が大きくなるほど第１の方向との角度が単調増加する場合に限られず、角度が所定の部分ごとに増加する場合も含む。

切削インサート１０の斜視図及び右側面図 切削インサート１０の平面図及び正面図 切削インサート１０の先端部の斜視図 切削インサート１０及び切削工具３０

[第１実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。

図１（ａ）は、本実施形態に係る後挽き加工用の切削インサート１０の斜視図であり、図１（ｂ）は、切削インサート１０の右側面図である。また、図２（ａ）は、切削インサート１０の平面図であり、図２（ｂ）は、切削インサート１０の正面図である。

図１（ａ）及び図１（ｂ）に示されるように、この切削インサート１０は、平面からなる端面１２（「第２の端面」）と、この第２の端面１２と平行で、第２の端面１２と反対側を向いた端面１６（「第１の端面」、図２（ａ））を備える。第２の端面１２の中央部には、この切削インサート１０を切削工具に固定するクランプねじが貫通するための貫通孔Ｈが形成されている。後挽き加工時において、この切削インサート１０をワークＷに対して、この貫通孔Ｈの中心軸に垂直な方向に相対的に移動させることでワークＷに切り込み、中心軸に平行で、第２の端面１２側を向いた方向である軸送り方向ＡＸ（「第１の方向」）に送ることでワークＷの後挽き加工をする。このとき端面１６は、ワークＷのツバ裏面、すなわち、加工後のワークＷに形成されるツバと呼ばれる段差の表面のうち、軸送り方向ＡＸを向いた面、と対向する。

また、切削インサート１０は、第２の端面１２及び端面１６と接続し、軸送り方向ＡＸを向いている逃げ面１４を備える。この逃げ面１４は、軸送り方向ＡＸと傾斜しており、第２の端面１２と鈍角をなし、端面１６と鋭角をなす平面部を備えている。

また、切削インサート１０は、逃げ面１４、端面１６及び第２の端面１２と接続し、すくい面１８Ｃを含む上面１８を備える。上面１８は、軸送り方向ＡＸと垂直な方向を向いている。

さらに、切削インサート１０は、上面１８と逃げ面１４とを接続する稜線２０（「第１稜線」）と、上面１８と端面１６を接続する稜線２２（「第２稜線」）を備える。

稜線２０には、稜線２２と接続するノーズ部２０Ａと、ノーズ部２０Ａに接続する正面切れ刃２０Ｂ（「第１の切れ刃」）と、正面切れ刃２０Ｂに接続する主切れ刃２０Ｃが設けられている。

一方で稜線２２（図２（ａ））には、切れ刃が形成されていない。

図２（ａ）は、切削インサート１０を上面１８側からみた平面図である。この図に示されるように、第１稜線２０は、端面１６からの距離が大きい部分ほど、軸送り方向ＡＸとの角度が段階的に大きくなるように構成されており、正面切れ刃２０Ｂが形成されている部分は、軸送り方向ＡＸとほぼ平行に僅かな角度を有する一方で、主切れ刃２０Ｃは、軸送り方向ＡＸに対して大きく傾斜する。また、図に示されるように、正面切れ刃２０Ｂ及び主切れ刃２０Ｃは、上面１８側からみて、ほぼ直線状または直線をなすように構成することができる。

更に図２（ａ）に示されるように、上面１８のうち稜線２０と稜線２２の間の領域には、チップブレーカ頂面１８Ａと、チップブレーカ頂面１８Ａに接続され、軸送り方向を向いた面を含むチップブレーカ壁面１８Ｂと、チップブレーカ壁面１８Ｂに接続され、チップブレーカ壁面１８Ｂと稜線２０の間に設けられるすくい面１８Ｃを備えるチップブレーカが形成されている。チップブレーカ頂面１８Ａは、軸送り方向ＡＸと略垂直な方向を向いた平面から構成してもよいし、曲面にしてもよい。また、平面または曲面ではなく、頂部が稜線または点となるように構成してもよい。チップブレーカ壁面１８Ｂの形状は、図３を用いて後に詳述するが、図２（ａ）に示されるとおり、主切れ刃２０Ｃに沿うように軸送り方向ＡＸに対して傾斜しているが、正面切れ刃２０Ｂに近づくほど、上面１８側からみたときの主切れ刃２０Ｃとの距離が小さくなるように構成されている。すくい面１８Ｃは、稜線２０と接続する平面部を含んでいてもよいし、チップブレーカ頂面１８Ａとの距離が大きくなるように凹んで壁面１８Ｂと接続してもよい。

また、図１（ａ）及び図１（ｂ）に示されるように上面１８の第２の端面１２及び端面１６と接続する部分には、軸送り方向ＡＸと垂直な方向に突出する二つの凸部２４Ａ及び凸部２４Ｂが設けられている。また、切削インサート１０の貫通孔Ｈの軸対称な位置に、軸送り方向ＡＸと垂直な方向に突出する二つの凸部２４Ｃ及び凸部２４Ｄが設けられている。後述するように、加工時には、この凸部２４Ａ及び凸部２４Ｂ間の領域ならびに凸部２４Ｃ及び凸部２４Ｄ間の領域に切削工具３０（図４）の把持部Ｈ１及び把持部Ｈ２を当接させることで、切削インサート１０を切削工具に対して固定する。

図３は、切削インサート１０の先端部の斜視図である。この図に示されるように、チップブレーカ壁面１８Ｂは、主切れ刃２０Ｃに沿って、ただし、正面切れ刃２０Ｂに近づくほど主切れ刃２０Ｃに近づくように形成される第１壁面１８Ｂ１（「第１の壁面」）と、正面切れ刃２０Ｂに近接する端部において第１壁面１８Ｂ１と端面１６に接続する強化面１８Ｂ２を備えている。

強化面１８Ｂ２は、端面１６に対して直角に接続されており、端面１６に接続する部分において、軸送り方向ＡＸとほぼ平行な平面を備えている。一方で、強化面１８Ｂ２は、第１壁面１８Ｂ１と連続的に接続されており、第１壁面１８Ｂ１と接続する部分において丸みをつけたフィレット面が形成されている。

また、上面１８側からみたときの強化面１８Ｂ２の幅は、例えば、正面切れ刃２０Ｂの長さの３分の１以上の幅を持つように構成することが可能であり、２分の１以上の幅を有することが好ましい。

また、稜線２０とチップブレーカ壁面１８Ｂの間のすくい面１８Ｃは、ほぼ平坦な平坦部を備えており、第１壁面１８Ｂ１はこの平坦部から例えば、４５度前後の傾斜をもって接続する一方で、強化面１８Ｂ２はこの平坦部から緩やかな傾斜（例えば、３０度の傾斜）をもって接続している。なお、上面１８側からみたときに、第１壁面１８Ｂ１とチップブレーカ頂面１８Ａを接続する稜線は、略直線状である。

また、切削インサート１０は、貫通孔Ｈの軸対称に形成されており、切削インサート１０の他端は、同一の形状を有する切れ刃及びチップブレーカが形成されている。

図４（ａ）は、切削インサート１０が固定された切削工具３０の斜視図であり、図４（ｂ）は、切削工具３０の右側面図である。

この図に示されるように、切削工具３０は、ボデーＢと、二つの把持部Ｈ１及び把持部Ｈ２を備え、把持部Ｈ１を凸部２４Ａと凸部２４Ｂの間の領域に当接させ、把持部Ｈ２を凸部２４Ｃと凸部２４Ｄの間の領域に当接させ、かつ、貫通孔Ｈを貫通するクランプねじを切削工具３０に設けられたねじ部と螺合することによって、切削インサート１０が固定されている。

このような切削インサート１０を用いて後挽き加工をする場合、まずは切削インサート１０の先端側である正面切れ刃２０Ｂを用いてワークＷを軸送り方向ＡＸと垂直な方向に移動させることによりワークＷに切り込み、その後、主に主切れ刃２０Ｃを用いて、軸送り方向ＡＸに挽いて加工する。特に、先端側の正面切れ刃２０Ｂを用いてワークＷに切り込むときに、切りくずは、正面切れ刃２０Ｂからほぼ垂直に流出し、チップブレーカ壁面の先端に衝突しやすい。

しかしながら切削インサート１０は、強化面１８Ｂ２を設けたから、耐欠損性を向上させることができる。なお、チップブレーカ壁面部１８Ｂ２は、端面１６と鈍角で接続するようにしてもよい。

また、砥石を用いた研削加工でチップブレーカを形成する場合は、面取りのような強化面を有する形状にするとコスト高を招くため、敬遠されがちであったが、切削インサート１０は、金型に形状を設け、プレス・焼結でチップブレーカの壁面側を形成することで、安価に強化面として機能するチップブレーカ壁面部１８Ｂ２を設けることができる。ただし 、この実施形態の切削インサート１０は、貫通孔Ｈの中心軸の方向と、チップブレーカを有する上面１８の向く方向とが異なる。したがって、通常の金型によって、チップブレーカ形状と貫通孔Ｈとを同時にプレス成形することができない。チップブレーカ形状と貫通孔Ｈとを同時にプレス成形するためには、例えば、２つの成形方法がある。１つは、貫通孔Ｈを通常のプレス方向に配置し、チップブレーカ形状をプレス方向と交差して横方向に動作する横パンチなどによりプレス成形する方法である。もう１つは、チップブレーカ形状を通常のプレス方向に配置し、貫通孔Ｈをプレス方向と交差して横方向に動作する横パンチなどによりプレス成形する方法である。いずれの方法でも、通常の金型ではなく、横パンチなどを備えた特殊な金型を用いることで、チップブレーカ形状と貫通孔Ｈとを、同時にプレス成形することが可能になる。

また、本実施形態においては、切削インサート１０の逃げ面及びすくい面の一部（先端付近のみ）を研削加工により形成いているが、研削加工せずに、プレス及び焼結のみで工具形状全体を形成するようにしてもよい。

１０…切削インサート、１２…第２の端面、１４…逃げ面、１６…端面、１８…上面、１８Ａ…チップブレーカ頂面、１８Ｂ…チップブレーカ壁面、１８Ｂ１…壁面、１８Ｂ２…強化面、１８Ｃ…すくい面、２０…稜線、２０Ａ…ノーズ部、２０Ｂ…正面切れ刃、２０Ｃ…主切れ刃、２２…稜線、２４Ａ…凸部、２４Ｂ…凸部、２４Ｃ…凸部、２４Ｄ…凸部、３０…切削工具、ＡＸ…軸送り方向、Ｂ…ボデー、Ｈ…貫通孔、Ｈ１…把持部、Ｈ２…把持部

Claims (5)

1. 第１の方向を向いた逃げ面（１４）と、
   前記逃げ面（１４）に接続し、前記第１の方向と反対の方向を向いた第１の端面（１６）と、
   前記逃げ面（１４）及び前記第１の端面（１６）と接続する上面（１８）と、
   前記上面（１８）側からみたときに、前記第１の端面（１６）からの距離が大きいほど前記第１の方向との角度が大きくなるように、前記逃げ面（１４）と前記上面（１８）とを接続する第１稜線（２０）と、
   前記第１の端面（１６）と前記上面（１８）とを接続する第２稜線（２２）と、
   前記第１稜線（２０）と前記第２稜線（２２）との間隙の前記上面（１８）に形成されるチップブレーカと、
   を備える後挽き工具用の切削インサート（１０）であって、
   前記第１稜線（２０）には、前記第２稜線（２２）と接続するノーズ部（２０Ａ）と、このノーズ部（２０Ａ）に接続される第１切れ刃（２０Ｂ）と、この第１切れ刃に接続される第２切れ刃（２０Ｃ）が形成され、
   前記上面（１８）は、前記チップブレーカと前記第１稜線（２０）との間に形成されるすくい面（１８Ｃ）を備え、
   前記チップブレーカの壁面は、前記第１稜線（２０）に沿って形成される第１の壁面（１８Ｂ１）と、前記チップブレーカの前記第１切れ刃（２０Ａ）側の端部において前記第１の壁面（１８Ｂ１）及び前記第１の端面（１６）に接続し、前記第１の端面（１６）との角度が９０度または鈍角をなし、更に、前記上面（１８）側からみたときの幅が前記第１切れ刃（２０Ｂ）の長さの３分の１以上の幅を維持して前記すくい面（１８Ｃ）に接続する強化面（１８Ｂ２）とを備える後挽き加工用の切削インサート（１０）。
2. 前記強化面（１８Ｂ２）は、少なくとも前記第１の端面（１６）と接続する部分において平面であることを特徴とする請求項１に記載の後挽き加工用の切削インサート（１０）。
3. 前記第１の壁面（１８Ｂ１）と前記強化面（１８Ｂ２）は滑らかに接続していることを特徴とする請求項１又は２に記載の後挽き加工用の切削インサート（１０）。
4. 前記チップブレーカと前記第１稜線（２０）の間の前記すくい面（１８Ｃ）には平坦部が形成され、前記第１の壁面（１８Ｂ１）の前記平坦部に対する傾斜は、前記強化面（１８Ｂ２）の前記平坦部に対する傾斜より大きいことを特徴とする請求項１から３のいずれか一項に記載の後挽き加工用の切削インサート（１０）。
5. 請求項１から４のいずれか一項に記載の後挽き加工用の切削インサート（１０）を備える切削工具（３０）。