JP6551626B2 - 高マンガン鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、高マンガン鋼を溶製する方法として、マンガン鉱石を使用して、マンガン鉱石を還元しながら溶銑の脱炭精錬を行ない、脱炭終了後はアルミニウムによる溶鋼の脱酸処理を施さないまま溶鋼を真空脱ガス設備に搬送し、酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを吹き付けて脱炭処理を施す溶製方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、高マンガン鋼を溶製する方法として、マンガン濃度が8質量%以上の高Mn溶銑を、0.1質量%以下の炭素濃度になるまで減圧下で脱炭精錬する際に、精錬気体を搬送ガスとして、Mn酸化物を含有する粉体状の脱炭精錬用添加剤を溶銑に吹き付ける方法が提案されている。
しかしながら、このような溶製方法において、脱炭吹錬時あるいは出鋼時にマンガン源を添加した場合、添加されたマンガン源の歩留りが低いため、多量のマンガン源を添加する必要があり、処理時間の増加とマンガンコストの増加が問題となる。また、出鋼時や取鍋精錬時、真空脱ガス精錬時にマンガン源を添加する場合、マンガン源の溶解による熱ロスが発生するため、転炉以降のプロセスにて溶鋼を昇熱させる必要が出てくる。しかし、取鍋精錬装置や真空脱ガス装置による溶鋼の昇熱処理は、転炉での昇熱処理に比べて効率が悪く処理に掛かるコストの増加が問題となる。特に、マンガン濃度が5質量%以上の高マンガン鋼では、これらの問題が顕著となる。
<高マンガン鋼の溶製方法>
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係る高マンガン鋼の溶製方法について説明する。本実施形態では、高炉から出銑された溶銑に対して、後述する精錬処理を施すことで、マンガンを5質量%以上含有する溶鋼である高マンガン鋼を溶製する。
溶湯2は、高炉から出銑された溶銑であり、高炉から出銑された後に溶銑鍋やトーピードカー等の溶銑を収容可能な搬送容器で次工程となる製鋼工場へと搬送される。なお、転炉1で使用される石灰源等の媒溶剤を少なくするためには、溶銑を転炉1に装入する前に、溶銑の燐濃度を低減させる脱燐処理が施されることが好ましい。脱燐処理では、溶銑搬送容器に収容された溶銑に対して、酸化鉄等の固体酸素や気体酸素といった酸素源と、石灰を含む媒溶剤とが添加され、溶銑が気体酸素や攪拌用の気体によって攪拌されることで脱燐反応が進む。なお、脱燐処理では、転炉1で使用される媒溶剤を最大限少なくするためには、溶銑の燐濃度を高マンガン鋼の最終的な成分規格の上限濃度よりも低くすることが好ましい。さらに、後工程において添加されるマンガン源からの溶銑への燐ピックアップや、スラグからの復燐による燐濃度の上昇が懸念されるため、溶銑の燐濃度が成分規格の上限値よりも0.05mass%程度低くなるまで脱燐処理を行い、その後、処理により生じたスラグを取り除く(「除滓する」ともいう。)ことがより好ましい。さらに、溶銑の燐濃度を成分規格の上限値よりも低くするためには、脱燐処理の前に脱珪処理が施され、効率的な脱燐反応を阻害する珪素を予め除去しておくことが好ましい。
転炉1は、慣用的な転炉設備であり、図2に示すように、炉体10と、上吹きランス11と、複数の底吹きノズル12と、シュート13とを備える。炉体10は、上部に開口部である炉口を有する樽型または西洋梨型の精錬炉であり、内部に耐火物が設けられる。上吹きランス11は、炉体10の上方に配され、鉛直方向(図2の上下方向)に昇降可能に構成される。上吹きランス11は、下端に複数のノズル孔が形成され、この複数のノズル孔から、不図示の供給設備から供給される少なくとも酸素を含む酸化性ガスを、炉体10に収容された溶湯2に噴射する。複数の底吹きノズル12は、炉体10の底部に設けられ、不図示の供給装置から供給されるアルゴンや窒素等の不活性ガスである攪拌ガスを炉体10に収容された溶湯2に吹き込むことで、溶湯2を攪拌させる。シュート13は、炉体10の上方に配され、石灰を含む媒溶剤や合金鉄等の各種副原料を貯蔵する不図示の複数の炉上ホッパーに接続され、各炉上ホッパーから切り出される副原料を炉体10内部へと添加する。
ここで、脱炭工程後の溶湯2は酸素ポテンシャルが高いため、この溶湯2にマンガン源を添加すると、マンガン源中のマンガンは溶湯2内に歩留らずに、酸化されて酸化マンガン(MnO)となってスラグ3に含まれる。しかし、本実施形態では、マンガン源に加えてシリコン源を添加するため、マンガン源中のマンガンや脱炭工程によって生じたスラグ3中の酸化マンガンが、下記(2)式で示される反応によって還元されることで、溶湯2のマンガン濃度が高くなる。また、シリコン源中のシリコンが優先的に酸化されることで、溶湯2の酸素ポテンシャルが下がる。これにより、マンガン源中のマンガンが溶湯2に歩留り易くなり、溶湯2のマンガン濃度が高くなる。
2(MnO)+[Si]=(SiO2)+2[Mn] ・・・(2)
2[S]+[Si]+2(CaO)=2(CaS)+(SiO2) ・・・(3)
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
さらに、上記実施形態では、溶銑搬送容器に収容された溶銑に対して脱燐処理を施すとしたが、本発明はかかる例に限定されない。脱燐処理は、例えば、転炉型精錬炉に収容された溶銑に対して、上吹きランスから酸化性ガスを噴射することで処理を行う方法であってもよい。
(1)本発明の一態様に係る高マンガン鋼の溶製方法は、マンガンを5質量%以上含有する鋼を溶製する際に、転炉1にて、溶銑(溶湯2)に脱炭処理を施すことで、溶銑を炭素濃度の低い溶鋼(溶湯2)とする脱炭工程(ステップS100)と、脱炭工程の後、転炉1に収容された溶鋼に、マンガン源及びシリコン源を添加することで、溶鋼を還元処理する還元工程(ステップS102)と、還元工程の後、真空脱ガス装置5にて、溶鋼に真空脱ガス処理を行う脱ガス工程(ステップS104)と、を備え、還元工程では、目標とする鋼のマンガン濃度に応じてマンガン源を添加し、(1)式を満たすようにシリコン源を添加する。
上記(2)の構成によれば、脱窒処理や脱水素処理に要する時間を短くすることができ、さらに溶湯2へのスラグ3の巻き込みを抑えることができる。このため、真空脱ガス処理の処理時間を短くするができる。
還元工程では、脱炭処理を施した溶鋼である溶湯2に、高炭素フェロマンガンと金属マンガンとをマンガン源として添加し、フェロシリコンをシリコン源として添加した。そして、攪拌ガスで溶湯2を攪拌させながら、さらに上吹きランス11からの送酸を継続して行い還元処理を施すことで、マンガン源を溶解させ、溶湯2のマンガン濃度を上昇させた。シリコン源の添加量は、(1)式を満たすものとした。また、還元工程では、マンガン源と共に、石灰を添加した。還元処理終了時の溶湯2のマンガン濃度は、およそ24質量%であった。さらに、還元工程では、転炉1から取鍋4へ溶湯2を移注(出鋼)する際、出鋼される溶湯2に対して、金属アルミニウムを溶鋼1トン当たりに約0.8kg添加した。
表1に実施例1の結果として、還元工程におけるシリコン源の添加量、Mn歩留り、出鋼時の溶湯2のシリコン濃度及び脱ガス工程における脱ガス処理に要した時間を示す。なお、表1において、0.013×WMn×xMn/xSiは(1)式に示す範囲の下限値、0.150×WMn×xMn/xSiは(1)式に示す範囲の上限値をそれぞれ示す。表1に示すように、実施例1では、シリコン源の添加量WSiが(1)式の範囲内となる実施例1−1〜1−6の6条件、及びシリコン源の添加量WSiが(1)式の範囲外となる比較例1−1〜1−4の4条件の計10条件で高マンガン鋼を溶製した。また、表1におけるMn歩留りは、還元工程において用いられたマンガン源に含まれるマンガンが溶湯2にどれだけ添加されたか、つまり、マンガン源に含まれるマンガン分が、還元工程前後での溶湯2のマンガン濃度の増加にどれだけ寄与したかを示すものである。
一方、実施例1−1〜1−6の条件では、還元工程において高いマンガン歩留りを得られ、さらに必要以上にシリコン源が添加されなかったことで出鋼時のシリコン濃度を低くすることができた。このため、脱ガス工程に要する時間を短くすることができた。
10 炉体
11 上吹きランス
12 底吹きノズル
13 シュート
2 溶湯
3 スラグ
4 取鍋
40 吹き込み口
5 真空脱ガス装置
50 真空槽
51 排気管
52 攪拌ガス供給経路
53 上吹きランス
54 供給口
Claims (2)
- マンガンを5質量%以上含有する鋼を溶製する際に、
転炉にて、溶銑に脱炭処理を施すことで、前記溶銑を炭素濃度の低い溶鋼とする脱炭工程と、
該脱炭工程の後、前記転炉に収容された前記溶鋼に、マンガン源及びシリコン源を添加することで、前記溶鋼を還元処理する還元工程と、
前記還元工程の後、真空脱ガス装置にて、前記溶鋼に真空脱ガス処理を行う脱ガス工程と、
を備え、
前記還元工程では、前記マンガン源の添加量に応じて、(1)式を満たすように前記シリコン源を添加することを特徴とする高マンガン鋼の溶製方法。
xSi:シリコン源中のシリコン濃度(質量%)
WMn:マンガン源の添加量(kg/t)
WSi:シリコン源の添加量(kg/t)
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