JP6546950B2 - タレット刃物台 - Google Patents

Description

本発明は、タレット刃物台に関する。

旋盤等に用いられる刃物台としてタレット刃物台がある。タレット刃物台は、刃物台本体に対して旋回可能に支持されたタレットヘッドを備えている。このタレットヘッドには、旋回する周方向に沿って、バイトやエンドミル等の複数の工具が装着され、タレットヘッドが旋回することで、ワークの加工に使用するいずれかの工具が選択される（例えば、特許文献１参照）。

タレットヘッドに装着される工具は、主として、ワークに接触させることでワークの加工を行う。タレットヘッドに、これらの工具とは種類の異なる特殊な工具をさらに搭載することができれば、加工のバリエーションを増やすことができる。特殊な工具としては、例えばレーザ加工を行うレーザ加工装置がある（例えば、特許文献１参照）。

特許第３６９１５７０号公報

特許文献１では、レーザ加工装置における、加工を行う加工本体部であるレーザヘッドを、他の工具と同様に旋回する部分に設けて、旋回させることで選択可能になっている。

また、レーザ加工装置以外の他の特殊な工具を設置する場合も、レーザヘッドと同様に旋回する部分に設けることが想定される。例えば、１分間に数十万回転という高速で回転する高周波スピンドルは、工具を回転させる回転部は、旋回するタレットヘッドに設置される。

タレットヘッドの旋回する部分に設けられた工具はワークの加工に際して、タレットヘッドの旋回と共に旋回させる必要があった。

本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、タレットヘッドに設けられた加工本体部を旋回させなくても加工可能とするタレット刃物台を提供することを目的とする。

本発明は、ワークを加工する工具が周囲に複数装着され、旋回することによっていずれかの工具を選択する旋回部と、前記旋回部の内側に配置され、前記ワークを加工する加工装置の加工本体部が装着された、前記旋回部に対して旋回しない非旋回部と、を備え、前記旋回部の旋回により前記加工本体部に対して所定の位置に位置決めされた状態で、前記加工本体部による加工を許容する加工許容部が、前記旋回部に形成されているタレット刃物台である。

本発明に係るタレット刃物台によれば、加工本体部を旋回させなくても加工することができる。

本発明の一実施形態であるタレット刃物台を示す概略斜視図である。 タレットヘッドを自動旋盤の主軸側から見た正面図（工具使用時）である。 タレットヘッドの、中心軸を含む面による断面図（工具使用時（結合状態））である。 タレットヘッドの、中心軸を含む面による断面図（工具選択時（結合解除状態））である。 タレットヘッドを自動旋盤の主軸側から見た正面図（レーザヘッド使用時）である。 タレットヘッドの、中心軸を含む面による断面図（レーザヘッド使用時（結合状態））である。 レーザヘッドを、図示の鉛直方向に移動させる移動部を介して固定壁部に設けた変形例を示す、図５相当の断面図である。

以下、本発明に係るタレット刃物台の実施形態について説明する。本実施形態のタレット刃物台１００は、例えば図１に示すように、自動旋盤において、ワーク２１０を把持した主軸２００と組み合わせて用いられる。タレット刃物台１００の中心軸Ｃは、主軸２００の中心軸Ｃ０（図１におけるｚ方向）と平行になるように設置される。

タレット刃物台１００は、図２及び図３に示すように、例えば正十角形の断面形状を有するタレットヘッド１０を備えている。タレットヘッド１０は、旋回部２０と、非旋回部３０と、端板５０と、を備えている。

旋回部２０は、タレットヘッド１０の外周に配置されて、正十角形の断面輪郭形状の外周壁部２１を有する。外周壁部２１の外周面を形成している正十角形の各辺に対応した複数のタレット面２２にはそれぞれ工具９０が装着されている。各工具９０は外周壁部２１の外面よりも外側でワーク２１０を加工する加工部（切削や穿孔の刃の部分）を有している。なお、図２において、工具９０は、中心軸Ｃを挟んだ鉛直方向に設置された２つだけを図示し、他の方向に設置された工具９０の図示は省略している。旋回部２０は、中心軸Ｃ回りに旋回可能に構成されている。旋回部２０は、図３Ａ，３Ｂに示す３ピースカップリング７０の結合が外れている状態（図３Ｂ参照）で旋回ギヤ７２が回転したときのみ旋回し、３ピースカップリング７０が結合している状態（図３Ａ参照）では旋回しない。

３ピースカップリング７０は、図３Ａに示すピストン７４が中心軸Ｃに沿った図示左方向に移動することで、回転しない固定リング７３と回転する旋回ギヤ７２とにそれぞれ係合して結合された回転しない係合片７１が、固定リング７３及び旋回ギヤ７２から離れる（図３Ｂ参照）。これにより、旋回ギヤ７２は、図示を略した他からの動力を受けて中心軸Ｃまわりの回転が可能となり、旋回ギヤ７２の回転によって、タレットヘッド１０は旋回していずれかの工具９０が選択可能とされている。

タレットヘッド１０の旋回により所望とする工具９０の選択が行われたら、旋回ギヤ７２の回転が止められ、この状態で、ピストン７４が中心軸Ｃに沿った図示右方向に移動することで、係合片７１が固定リング７３と旋回ギヤ７２とにそれぞれ係合して結合される（結合状態；図３Ａ参照）。この結合により、旋回ギヤ７２に連結した旋回部２０の旋回が阻止される。

タレットヘッド１０は、３ピースカップリング７０の結合が外れた状態（結合解除状態）での旋回部２０の旋回により、設置されている複数の工具９０のうちの図示の最下部に配置された１つの工具９０を、ワーク２１０の加工用に選択する。選択された工具９０は、タレット刃物台１００からの駆動力を伝達する伝動機構６０と噛み合って、軸Ｃ２回りに回転することができる。なお、選択される工具９０は、例えばドリルのように伝動機構６０と噛み合って軸Ｃ２回りに回転するものに限定されず、バイトのように伝動機構６０と噛み合わず回転しないものであってもよい。

工具９０の選択後は、３ピースカップリング７０の結合により旋回部２０は固定される。タレット刃物台１００は、中心軸Ｃ回りの旋回の他、図１に示す、ｚ方向、ｙ方向（ｚ方向に直交する水平方向）及びｘ方向（ｚ方向に直交する鉛直方向）にも動くことで、ワーク２１０に対する位置が制御される。

外周壁部２１は、工具９０が設置されている部分よりも中心軸Ｃ方向に沿った前方（主軸２００に近い側）に延長されているが、正十角形の１つの辺に対応した一部分が開口している。

非旋回部３０は、旋回部２０の、旋回中心（中心軸Ｃ）回りの半径方向における内側に配置されている。非旋回部３０は、タレット刃物台１００の旋回しない部分に固定された固定壁部３１を有する。したがって、固定壁部３１は旋回部２０に対して旋回しない。固定壁部３１は、中心軸Ｃに交差する姿勢で配置されている。固定壁部３１は、旋回部２０の内面の直径よりも小さい寸法に形成されていて、旋回部２０が旋回しても、固定壁部３１が旋回部２０の内面に接触することはない。なお、固定壁部３１は、タレットヘッド１０とともにｚ方向、ｘ方向及びｙ方向に動く。

固定壁部３１には、図３Ａに示すように、工具９０とは別の加工装置の一例としてのレーザ加工装置のレーザヘッド８０（加工本体部の一例）が装着されている。レーザヘッド８０は、例えば、先端部８１（加工先端部）を図示下方に向いている。レーザヘッド８０は、外周壁部２１の半径方向内側の領域、特に、工具９０よりも中心軸Ｃ方向の前方に配置されている。レーザヘッド８０も、旋回する旋回部２０の内面の直径よりも小さい寸法であり、旋回部２０が旋回しても、レーザヘッド８０が旋回部２０の内面に接触することはない。

レーザヘッド８０には、光ファイバケーブル８５が繋がれている。光ファイバケーブル８５は、固定壁部３１の他、タレット刃物台１００の内部の旋回しない部分に固定されて、一端がレーザ加工装置の光源装置に繋がれ、他端がレーザヘッド８０までに繋がれ、光源装置で発生したレーザ光を導光する。レーザヘッド８０及び光ファイバケーブル８５は、旋回しない部分に固定されているため、旋回部２０が旋回しても、光ファイバケーブル８５は捻じれることがない。また、光ファイバケーブル８５は、反射鏡を用いて空間を導光する導光路に比べて、サイズを小さくすることができるとともに、ほこりやごみが導光路内に侵入することもなく、配索の自由度も高い。

レーザヘッド８０は、導光されたレーザ光を集光して先端部８１からワーク２１０に対して出射し、出射したレーザ光の熱によってワーク２１０を溶融して加工するとともに、レーザヘッド８０内に設置されたアシストガス吐出機構が、溶融したワーク２１０の部分に窒素等のアシストガスを吹き付けることで溶融物を吹き飛ばす。

また、固定壁部３１には、レーザヘッド８０を覆う内側覆い部材４０（内側のカバー部材）が設けられている。内側覆い部材４０は、レーザヘッド８０の先端部８１だけを露出させてワークに臨ませる切欠き４１が形成され、露出した先端部８１以外のレーザヘッド８０の部分を覆っている。

ここで、外周壁部２１は、図２に示すようにいずれか１つの工具９０が選択されている状態では、図３Ａに示すようにレーザヘッド８０と、選択されている工具９０で加工されているときのワーク２１０との間に配置されている。これにより、外周壁部２１は、選択した工具９０がワーク２１０を加工中に、ワーク２１０における工具９０との接触部に向けて掛けられるクーラントがレーザヘッド８０に掛らないように遮蔽している。

一方、外周壁部２１の一部分（特に、中心軸Ｃの前方に延びた部分の一部分）は前述したように開口しているが、この開口（以下、切欠き２３（加工許容部）という。）は、外周壁部２１の正十角形のうち工具９０が設置されていない１辺に対応した部分である。したがって、図４に示すように、ワークを加工するためにレーザヘッド８０が選択されている状態、つまり、旋回部２０の旋回によって、図５に示すように、レーザヘッド８０の鉛直下方の位置に切欠き２３が位置決めされた状態で、切欠き２３は切欠き４１と重なる。これによって、レーザヘッド８０の先端部８１は外周壁部２１に遮蔽されず、ワーク２１０に臨んで加工が許容された状態となる。

端板５０は、旋回部２０の先端面側（主軸２００に近い側）に、中心軸Ｃに直交して配置されて、旋回部２０の一部として旋回部２０とともに旋回する。端板５０は、外周壁部２１の半径方向の内側の領域の略全面を覆っている。ただし、図２，４に示すように、端板５０には、切欠き２３が形成されている部分に対応する１辺を含み中心軸Ｃに向かう半径方向の内側に台形形状の切欠き５１が形成されている。したがって、中心軸Ｃ方向に見たとき、上述の内側の領域のうち、この切欠き５１に対応した部分は覆われていない。なお、切欠き５１は、図４に示した状態（レーザヘッド８０が選択された状態）で中心軸Ｃの前方から中心軸Ｃ方向に見て、レーザヘッド８０の先端部８１を露出させる高さ位置まで形成されている。

このように、端板５０に、中心軸Ｃに沿って切欠き２３に切欠き５１が形成されていることにより、ワーク２１０を切欠き２３の領域及び切欠き５１の領域に配置することができる。したがって、レーザヘッド８０が選択されている状態では、図５に示すように、外周壁部２１の内側の空間に配置されたレーザヘッド８０の先端部８１がワーク２１０に接触する程度まで近接することで、レーザ加工装置による加工を施すことができる。

また、タレット刃物台１００は、レーザヘッド８０を覆うカバー部が二重構造となっている。つまり、レーザヘッド８０は、外周壁部２１と端板５０とによって、工具９０で加工しているときのクーラントが掛らないように周囲が囲まれているが、図３Ａ，５に示すように、レーザヘッド８０はさらに、外周壁部２１と端板５０とで囲まれた内側の空間において内側覆い部材４０で囲まれている。このように、レーザヘッド８０は、外側において外周壁部２１と端板５０とで構成された旋回する外側のカバーと、それよりも内側において旋回しない内側覆い部材４０で構成された内側のカバーとで覆われている。

したがって、レーザヘッド８０が選択されている状態で、外側のカバーの切欠き２３及び切欠き５１と内側のカバーの切欠き４１とが鉛直方向の一直線上に並んで重なった状態（図４，５参照）となり、タレットヘッド１０に形成された１つの切欠きとして機能し、レーザヘッド８０によるワーク２１０の加工が許容される。

一方、いずれか１つの工具９０が選択されている状態では、端板５０は旋回部２０とともに回転して、外側のカバーの切欠き２３は、内側のカバーの切欠き４１とずれた角度位置に配置された状態（図２，３Ａ参照）となって、切欠き２３は切欠き４１と重ならず、切欠き２３とレーザヘッド８０との間を内側覆い部材４０が遮った状態となる。この結果、工具９０で加工しているときのクーラントが切欠き２３を通過して内側空間に入った場合であっても、切欠き２３とは異なる角度位置（最下部）に形成された切欠き４１まで到達しない。外側のカバーに加えて内側のカバーがあることによって、内側のカバーの切欠き４１から下方に露出した先端部８１を含めて、レーザヘッド８０の全体にクーラントが掛るのを一層抑制することができる。

また、本実施形態のタレット刃物台１００は、外周壁部２１の切欠き２３及び端板５０の切欠き５１が形成されているため、レーザヘッド８０の先端部８１を、外側のカバーで覆われた内側空間の中で、切欠き２３及び切欠き５１が形成されていないものに比べて高い位置に配置することができる。この結果、仮に、クーラントが外側のカバーの切欠き２３及び切欠き５１を通じて、外側のカバーで覆われた内側空間に大量に入って下方に流れ、外周壁部２１の内面を底面として溜まった場合であっても、先端部８１が相対的に高い位置に配置されているため、先端部８１に溜まったクーラントを付着させ難くすることができる。

なお、端板５０に切欠き５１を形成するのに代えて、図６に示すように、固定壁部３１に、レーザヘッド８０をワーク２１０に近接させる方向（図６においては鉛直下方）に移動させる移動部３２を設け、その移動部３２にレーザヘッド８０を設けた構成としてもよい。このように構成されたタレット刃物台１００によれば、移動部３２がレーザヘッド８０を下方に移動させることができる。これにより、端板５０に切欠き５１を形成しなくても、レーザヘッド８０による加工時には、端板５０の最下部よりも下に通されたワーク２１０に、切欠き２３を通じてレーザヘッド８０の先端部８１を近接させることができる。

また、レーザヘッド８０による加工が終了した後は、移動部３２がレーザヘッド８０を上方に移動させることがで、先端部８１をワーク２１０から離した状態で、レーザヘッド８０をより高い位置に保持させることができる。

なお、本実施形態のタレット刃物台１００は、別の工具の一例としてレーザ加工装置を適用し、ケーブルが繋がれた加工本体部の一例としてレーザヘッド８０を適用したものであるが、本発明に係るタレット刃物台は、この形態に限定されるものではない。すなわち、本発明に係るタレット刃物台において、加工本体部としてはレーザヘッド８０ではなく、例えば、高周波スピンドルなどを適用することもできる。

ここで、高周波スピンドルは、超高速（例えば、毎分数十万回転）で回転し、電源に接続された電源ケーブル（電源コード）が繋がれている。したがって、旋回部が旋回しても電源ケーブルが捻じれないようにすることが必要である。本発明に係るタレット刃物台は、上述したレーザヘッドの例示から解されるように、加工本体部及びケーブルは非旋回部に固定されていて、旋回部が旋回してもケーブルが捻じれることはないため、電源ケーブルが繋がれた高周波スピンドルを非旋回部に固定したものについても、本発明に係る効果を発揮する。

なお、ケーブルが繋がれた加工本体部としては、レーザヘッドや高周波スピンドルだけに限定されない。また、加工本体部に繋がれたケーブルには、チューブ等の管も含む。

上述したタレット刃物台１００は、レーザヘッド８０が旋回する外側のカバーと旋回しない内側のカバーとで二重に覆われているが、本発明に係るタレット刃物台は、特殊工具における加工本体部（レーザヘッド８０等）を二重に覆うものでなくてもよく、少なくとも外側のカバーを有するものであればよい。

１０ タレットヘッド
２０ 旋回部
２１ 外周壁部
２２ タレット面
２３，４１，５１ 切欠き
３０ 非旋回部
５０ 端板
８０ レーザヘッド
８１ 先端部
８５ 光ファイバケーブル
９０ 工具
１００ タレット刃物台
２１０ ワーク
Ｃ 中心軸

Claims (4)

1. ワークを加工する工具が周囲に複数装着され、旋回することによっていずれかの工具を選択する旋回部と、
   前記旋回部の内側に配置され、前記ワークを加工する加工装置の加工本体部が装着された、前記旋回部に対して旋回しない非旋回部と、を備え、
   前記旋回部の旋回により前記加工本体部に対して所定の位置に位置決めされた状態で、前記加工本体部による加工を許容する加工許容部が、前記旋回部に形成されているタレット刃物台。
2. 前記加工許容部は、前記加工本体部を前記ワークに臨ませる開口であり、
   前記非旋回部に固定された、前記工具が選択されているときは前記開口と前記加工本体部の間を遮る内側のカバー部を備えた請求項１に記載のタレット刃物台。
3. 前記旋回部に、前記旋回の中心軸方向に沿って前記開口に通じる切欠きが形成されている請求項２に記載のタレット刃物台。
4. 前記非旋回部に、前記加工本体部を前記ワークに近接させる方向に移動させる移動部を備えた請求項１から３のうちいずれか１項に記載のタレット刃物台。