JP6546461B2 - 透明断熱材料及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば建物や車輌の窓等に使用される、透明な基材上にセラミックス薄膜や金属薄膜等の屈折率の異なる無機薄膜が積層されてなる透明断熱材料、及び、その製造方法に関する。
可視光線を透過するため透明で、かつ、赤外線を透過しないため断熱性を有する材料が知られている。このような材料は、透明断熱シートや熱線反射フィルム等と称されて市販され、様々な構成のものが提案されている。一般的にITO膜と称される、酸化インジウムスズ層とその他の金属層及び/又はセラミックス層とを積層した5層程度の積層膜が周知である。ITO膜は透明性と断熱性とを兼ね揃えたものであるが、原料であるインジウムが高価であることなどから、汎用的な透明断熱材料としては必ずしも好適ではなかった。
特許文献1は、断熱及び/又は太陽光線防護用グレージングを製造することについての発明であり、機能層として銀又は銀合金、吸収層として窒化チタン等を有すること、また、窒化アルミニウム等の2層の間に挿入された吸収層を含む多層構造が開示されている。特許文献1のグレージングは、光源D65下において40〜65%程度の透過率を有する。特許文献1の実施例に示された膜は、いずれも10層以上が積層された積層構造を有しており、その中で、窒化チタン層は0.6〜3nm程度に成膜され、吸収層として機能する。
特許文献2には、可視光を透過しつつ、熱線は高い反射率にて反射・遮断でき、安価に製造可能な熱線遮断透光部材として、特定の屈折率の変化幅を有する第一の要素反射層と第二の要素反射層との組み合わせを2周期以上含む多層構造が開示され、また、第一の要素反射層としてSi層、第二の要素反射層としてAlNやTiNを用いることが開示されている。特許文献2の発明では、1周期(第一の要素反射層と第二の要素反射層との組み合わせ)当たりの換算厚さが0.4〜2μmになることが好ましい旨が開示され、4周期(8層)の積層構造等が示されている。
また一方で、特許文献3は、積層の数の少ない多層膜で、高透明かつ断熱性の高いシートを提供する発明であり、基材シート上に、金属薄膜層がセラミックス層に挟持された3層構造を有するものを開示している。特許文献3の発明は、金属薄膜層としてPd、Nd及び/又はNiを0.5〜10wt%ドーピングしたAgを有することを特徴としている。
WO2012/099124号公開パンフレット 特開2003−285384号公報 特開2014−218042号公報
上述のように8層ないし10層以上という多層構造の透明断熱材料が公知であるが、層の数が多いほど製造工程は複雑になり、コストアップは避けられない。また一方で、層の数が少ない場合には、透明断熱性を得ることが難しいだけでなく、外部環境からの影響を受けやすく耐久性に問題があるため、透明断熱層に加えてさらにコーティング層などを設ける必要があった。この状況に鑑みて、本発明は、層の数が少なく、かつ、高い透明性と断熱性とを有し、耐久性にも優れた透明断熱材料を提供することを目的とする。
発明者らは前記の課題を解決するために検討を進め、中間層の薄膜としてチタン又はチタン合金の窒化物薄膜を用いることに着想した。そして、これらの薄膜を用いると、10nm程度の薄膜でも凝集効果が少ない、すなわち光の吸収が少ない積層膜が形成可能であり、セラミックス薄膜と組み合わせることで3層構造であっても高い透明性と断熱性が得られること、さらに、酸化を受け難いために耐環境性にも優れる透明断熱材料が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、透明な基材上に、反射性機能膜と、当該反射性機能膜の上下に積層される金属窒化物又は金属酸窒化物を含むセラミックス薄膜とで構成される3層膜を設けてなり、前記反射性機能膜が、チタン又はチタン合金の窒化物薄膜である、透明断熱材料に関する。
また本発明は、前記チタン又はチタン合金の窒化物薄膜が、窒化チタン(TiN)膜、もしくは、チタン(Ti)中にジルコニウム(Zr)及び/又はハフニウム(Hf)を0〜99wt%含有する合金の窒化物薄膜であることが好ましい。
前記反射性機能膜は、チタン、又は、チタン中にジルコニウム及び/又はハフニウムを0〜99wt%含有するチタン材料を、反応性スパッタ法により成膜して得られた膜であることが好ましい。
また前記反射性機能膜の厚みは、5〜50nmであることが好ましい。
また本発明は、前記セラミックス薄膜が、窒化アルミニウム(AlN)の膜である、前記のいずれかに記載の透明断熱材料に関する。前記セラミックス薄膜の厚みは20〜100nmであることが好ましい。
また、本発明は、透明な基材上に、N-MHVスパッタ法を用いて、
金属窒化物又は金属酸窒化物を含むセラミックス薄膜を成膜する工程と、
チタン又はチタン合金の窒化物からなる反射性機能膜を成膜する工程とを含み、
当該反射性機能膜の上下に前記セラミックス薄膜が積層された3層膜が形成される、透明断熱材料の製造方法に関する。
前記セラミックス薄膜を成膜する工程と、前記反射性機能膜を成膜する工程とは、20℃〜50℃で行われることが好ましい。
さらに本発明は、前記のいずれかの製造方法によって製造された、透明断熱材料に関する。
本発明の透明断熱材料は、透明な基材の上に形成された3層構造の積層膜を有する材料であり、従来は5層ないしそれ以上の多層構造によらねば実現が困難であった、高い透明性と断熱性とを有する。また、本発明の透明断熱材料は酸化を受け難く、高温高湿度環境下においても高い耐久性を有する。
本発明の透明断熱材料の模式的な断面図である。 N-MHVスパッタ装置を示す。 本発明の実施例及び比較例の透過スペクトルを示す。
(透明断熱材料の構成)
本発明の透明断熱材料に用いられる透明な基材としては、本発明の効果を得られる限り特に制限されないが、例えば、透光性の良好な各種の高分子フィルム及び/又はシート(いわゆるプラスチックフィルムやシート)、各種ガラス等を用いることができる。フィルムやシートを構成する高分子は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)等が挙げられる。
基材がガラスである場合、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよく、無機ガラスとしては、着色剤を添加しない透明なソーダライムシリカガラスや、所望の色に着色した有色透明ガラス等が挙げられ、有機ガラスとしては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリルガラス等が挙げられる。またこれらのガラスには、化学的強化、物理的強化等の任意の処理が施されていてもよい。
なお、「透明な」基材とは、可視光の透過率が高い基材をいい、波長550nmの可視光透過率が85%以上、好ましくは92%以上であるものが使用される。基材の厚みは特に限定されないが、通常は5〜250μm程度のものが用いられる。基材は、透明断熱材料の用途や所望の特性に応じて適宜選択することができ、1層であっても2層以上から構成されていてもよく、コーティング層や保護層等を有していてもよい。また、剥離紙等のその他の構成を有していてもよい。
透明断熱材料に含まれる反射性機能膜は、光透過性を阻害しないように、一般に極薄膜と呼ばれる非常に薄い膜で構成されるところ、本発明における、チタン又はチタン合金の窒化物膜も同様であり、その膜厚は5〜50nmであることが好ましく、7〜25nmがより好ましい。膜厚が50nmを超えると高い光透過性を確保することが困難となり、また5nm未満では光吸収や散乱が発生して透明性が低下する。
反射性機能膜を構成する金属は、チタン又はチタン合金の窒化物であり、チタン合金である場合、チタンとジルコニウム及び/又はハフニウムとが含有されていることが好ましい。ジルコニウム及び/又はハフニウムの含有割合は特に制限されず0〜99wt%とすることができるが、20〜50wt%であればより好ましい。チタン、ジルコニウム及びハフニウムはいずれもチタン族の遷移金属であり、その窒化物は窒化チタンと同様に金色を呈し、赤外反射率は窒化チタンより高いため、チタンと同様に赤外反射性を向上させられると考えられている。
また反射性機能膜を構成するチタン又はチタン合金の窒化物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、ジルコニウム、ハフニウム以外の金属がドープされていてもよい。ドープされ得る金属としては、例えば、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)等が挙げられ、ドープ量は2〜10wt%程度とすることができる。また反射性機能膜にはこれら以外に、本発明の効果を妨げない限りにおいて、他の成分を含んでもよい。
また反応性スパッタリングで成膜を行う場合には、窒素の導入率を任意に制御できる。窒素の導入率は、本発明の効果を得られる限りにおいて特に制限されないが、例えば、TixNyと表すとき、x=1に対して、yが0.5〜2.0程度であることが好ましく、yが0.8〜1.0であるとさらに好ましい。窒素の導入割合を変更することによって、膜の光選択性を変化させることができ、所望の光学特性に応じた反射性機能膜を得ることができる。
本発明で用いる反射性機能膜は高い赤外線反射率を有し、例えば、膜厚10nmのTiN膜は、波長λ=1000nmにおける反射率が65%程度である。反射率は約60%よりも高いことが好ましく、65%以上であればさらに好ましい。この値は、赤外線反射率の高い公知の薄膜であるAg薄膜の同条件での反射率(60%)と同程度である。
また、チタン又はチタン合金の窒化物薄膜は、酸化を受け難く、耐酸・耐アルカリ性、耐候性など耐環境性が良好である。Ag薄膜は高温高湿度の環境下で酸化を受けやすいという課題があったが、チタン又はチタン合金の窒化物薄膜は、赤外反射性(断熱性)に優れ、かつ、耐環境性にも優れた透明断熱材料が得られる。
上述の反射性機能膜の上下に各1層のセラミックス薄膜が形成されている。なお本明細書において、反射性機能膜の「上」ないし「下」とは、基材と反射性機能膜との位置関係において、基材により近い側を「下」、基材から遠い側を「上」と称呼するものである。
本発明の透明断熱材料のセラミックス薄膜は、金属窒化物又は金属酸窒化物を含むセラミックス薄膜であり、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の窒化膜及び/又は酸窒化膜であることが好ましい。セラミックス薄膜は具体的には例えば、窒素による反応性スパッタ法で成膜された窒化アルミニウム膜がある。反応性スパッタ法において窒化アルミニウム膜は、ターゲットとしてアルミニウム及び/又はアルミニウム合金、スパッタガスとしてアルゴンガスに流量比0.1〜50%の窒素ガスを混入させたガスを用いて成膜することで得られる。アルミニウムへの窒素の導入率は、窒素ガスの分圧やスパッタ電力等の成膜条件で制御することが可能であり、AlNxと表すとき、xの値が0.7〜1.0程度であることが好ましい。
アルミニウム成分としては、純アルミニウム(例えば純度99.9〜99.999%のもの)やアルミニウム合金を用いる。アルミニウム合金としては、アルミニウムとSn,Tiなどからなる一般的な合金でもよく、アルミニウムにNd,Ni,Ag,Cu、Sn、Pd、Tiから選択される1又は複数の金属を少量(0.1〜10wt%)添加したアルミニウム合金でもよい。これらのうちでも、Cu,Sn及び/又はTiを0.1〜10wt%添加したアルミニウム合金が好ましい。
セラミックス薄膜の膜厚は20〜100nmとすることができ、20〜60nmがより好ましい。セラミックス薄膜は光の干渉による反射防止効果によって透過率が向上するため、膜の屈折率に応じた膜厚領域があり、厚すぎても薄すぎても透過率は低下するところ、セラミックス薄膜の厚みが20nm未満或いは100nmを超えると、可視光域での反射防止効果が減少するため透過率が低下し、また、赤外領域の透過率が上昇するため好ましくない。なお、反射性機能膜の上下に形成されるセラミックス薄膜の厚みは、互いに同じであってもよいし、上側の膜と下側の膜とで膜厚が異なっていてもよい。
セラミックス薄膜と反射性機能層とからなる3層構造の厚み(基材を含まない厚み)は45〜250nmであり、70〜150nmであればより好ましく、さらに好ましくは80〜120nmである。この膜厚範囲は、セラミックス薄膜と反射性機能層とのそれぞれの膜厚の最適値から導かれるものであり、厚みが45nm未満、或いは250nmを超えると、透過率が低下するため好ましくない。
セラミックス薄膜と反射性機能膜の膜厚の組み合わせは、上記の範囲内で用途や所望の特性に応じて適宜選択することができるが、例えば、セラミックス薄膜を30〜50nm、反射性機能膜を5〜15nmとして組み合わせると特に好適な透明断熱性を有する透明断熱材料を得ることができる。反射性機能膜とセラミックス薄膜との膜厚の組み合わせを変更することにより、所望の可視光透過率及び赤外線反射率を有する透明断熱材料を得ることができる。
本発明の透明断熱材料の断面の模式図を図1に示す。
図1に示す透明断熱材料は、プラスチックの基材シートB上に積層された3層の積層膜を有し、積層膜は、例えば窒化チタンである反射性機能膜RMの上下両側を、例えば屈折率の高い(屈折率2.1)窒化アルミニウム薄膜であるセラミックス膜CMで挟み込んだ構造である。
本発明の透明断熱材料は、基材とセラミックス薄膜及び反射性機能膜以外にも、アンダーコート層、トップコート層等の公知の構成を有していてもよいが、本発明の透明断熱材料は耐環境性に優れるため、トップコート層を含まずに構成することが可能で、より高い透明性を実現できる可能性がある。
(製造方法)
本発明の透明断熱材料は、大略的には、基材上に順次、セラミックス薄膜と反射性機能膜とを成膜することで製造される。セラミックス薄膜と反射性機能膜の成膜方法としては、真空蒸着法やスパッタ法等の物理的蒸着(PVD)法、や化学的蒸着(CVD)法等が挙げられる。より好ましい成膜方法として、PVD法の一種であるNew Magnetic Hollow-cathode V型スパッタ法(N-MHVスパッタ法ということもある。)があり、かかる方法によれば、優れた反射性機能膜とセラミックス薄膜とを安定的に形成することができる。
N-MHVスパッタ法は、特許4473852号に詳細に説明されている方法であり、通常のマグネトロンスパッタ法に比べ低温・低ダメージで成膜することが可能なスパッタ法である、対向ターゲットスパッタ法(FTS法)を基礎とする方法である。
N-MHVスパッタ法によれば、一般のマグネトロンスパッタ法に比べて、対向二重磁極による高密度プラズマを発生させることにより極めて低エネルギー(−300V以下のスパッタ電圧)で成膜が可能で、金属極薄膜においては、低温プロセスにおいて均一な組成で欠陥の少ない良質な薄膜が得られ、膜の均一性と膜表面の平滑性を向上することができる。またN-MHVスパッタ法による反応性スパッタで成膜される薄膜は、高密度プラズマの下での十分な反応性が確保され、表面が平滑で吸収の少ないセラミックス薄膜を形成することができ、金属薄膜やセラミックス薄膜の表面に凹凸損傷を与えることなく積層膜を得ることができる。
図2はN-MHVスパッタ装置の詳細を示す。N-MHVスパッタ装置については特許4473852号に詳述されているとおりであり、スパッタ装置1は、一対のターゲット10a,10bを先端部に配置するターゲットホルダー11a,11b、真空チャンバー2、スパッタ電力供給用電源3、基板ホルダー4、排気装置5、ガス供給装置6を備えている。
N-MHVスパッタ装置を用いて成膜する際には、窒化物及び/又は酸化物となる金属材料(例えば金属アルミニウム)をターゲット10a,10bに用い、成膜しようとする基材シートBを基板ホルダー4にセットし、真空チャンバー2を所定の真空度まで真空排気を行い、スパッタガス(アルゴンガス)及び反応ガス(窒素ガス及び/又は酸素ガス)を所定量加えて、所定のスパッタパワーとスパッタ時間によるスパッタを行う。このスパッタによって、基材シートB上に所定の膜厚のセラミックス薄膜が形成される。
続いて反射性機能膜を成膜する。反射性機能膜の成膜は基本的にセラミックス薄膜の成膜と同様の工程によるが、窒化物となる金属材料(例えば金属チタン)をターゲット10a,10bに用い、表面にセラミックス薄膜を有する基材を基板ホルダー4にセットし、真空チャンバー2を所定の真空度まで真空排気を行い、スパッタガス(アルゴンガス)及び反応ガス(窒素ガス)を所定量加えて、所定のスパッタパワーとスパッタ時間によるスパッタを行う。このスパッタによって、セラミックス薄膜上に所定の膜厚の反射性機能膜が形成される。
さらに反射性機能膜の上に、上述の工程によってセラミックス薄膜を成膜し、基材上に3層積層構造を有する、透明断熱材料を得る。N-MHVスパッタ装置を用いた成膜の後、必要に応じて、公知の方法に従って透明断熱材料の表面にトップコート層を作成してもよい。
上述の方法によれば、成膜工程を基材シートBや真空チャンバー2内を加熱することなく(室温において)行うことが可能であり、基材シートを加熱することなく成膜を行うことで良好な薄膜を得ることができる。基板を加熱せず、室温(20〜50℃程度)で成膜を行うことによって、低ダメージ成膜が可能となり、より均一で欠陥の少ない薄膜が得られ、可視光と赤外光との選択吸収性が高い透明断熱シートを得ることができる。
次の手順で本発明の実施例及び比較例の透明断熱シートを作成した。
基材シートとして、100mm×100mm×100μmのPETフィルム(波長500nmの可視光透過率92%)を脱脂・洗浄・乾燥した。当該フィルム上に、図2に示すN-MHVスパッタ装置によって、所定の薄膜を成膜した。各種の薄膜は次の条件で成膜した。
1.窒化アルミニウム膜の成膜
アルミニウムAl(純度5N)、125mm×300mmをターゲットとして用いた。
当該Alをターゲットホルダーに設置し、前記PETフィルムを基板ホルダーにセットした。続いて真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気した後、スパッタガスであるアルゴンガス及び反応ガスである窒素ガスを順次供給して、真空チャンバー内を、アルゴンガス0.3Pa、窒素ガス0.15Paとした。スパッタ電力は500Wとし、所望の膜厚に応じてスパッタ時間を調整し、所定の膜厚の窒化アルミニウム薄膜を得た。
2.窒化チタン薄膜の成膜
チタンTi(純度5N)、125mm×300mmをターゲットとして用いた。
当該Tiをターゲットホルダーに設置し、1.により窒化アルミニウム薄膜を表面に成膜したPETフィルムを基板ホルダーにセットした。続いて真空チャンバー内を10−5Pa以下に真空排気した後、スパッタガスであるアルゴンガス及び反応ガスである窒素ガスを順次供給して、真空チャンバー内を、アルゴンガス0.3Pa、窒素ガス0.15Paとした。スパッタ電力は500Wとし、所望の膜厚に応じてスパッタ時間を調整し、所定の膜厚の窒化チタン薄膜を得た。
[実施例1]AlN/TiN/AlN積層膜
上記の成膜条件に基づき、AlN(30nm)/TiN(10nm)/AlN(30nm)の積層膜を作成した。AlN30nm薄膜の成膜(スパッタリング)時間は10分、TiN10nm薄膜の成膜(スパッタリング)時間は2分とした。
[実施例2]
基材シート側のAlN膜を50nm(スパッタリング時間17分)、TiNの上のAlN膜を40nm(スパッタリング時間13分)とする以外は実施例1と同様に、積層膜を作成した。
[比較例1]AlN/Ag/AlN積層膜
反射性機能層として、窒化チタンの代わりにAgPd(Pdドープ量2wt%)を用いた以外は実施例1の成膜条件と同様に積層膜を作成した。
[比較例2]AlN/Ag/AlN積層膜
反射性機能層として、窒化チタンの代わりにAgPd(Pdドープ量2wt%)を用いた以外は実施例2の成膜条件と同様に積層膜を作成した。
[参考例]ITO/Ag/ITO/Ag/ITO積層膜
公知のITO/Ag/ITO/Ag/ITO5層積層膜を含む透明断熱材料を用いた。
<透明断熱性の評価>
実施例1、2、比較例1、2及び参考例の透明断熱材料の可視光透過率(波長550nmでの透過率(%))及び赤外線透過率(波長1000nmでの透過率(%))を下表1に示す。透過率の測定は、朝日分光株式会社製、分光光度計HUS−100Sを用い、各基材でのリファレンスにて行った。
Figure 0006546461
表1に示されるとおり、実施例1、2の透明断熱材料は、比較例1、2の透明断熱材料と比べて、可視光透過率は同等であり、赤外線透過率はより低い値を示した。また、実施例1、2の透明断熱材料は、参考例と同等の可視光透過率及び赤外線透過率を示した。
<耐環境性の評価>
実施例2、比較例2及び参考例の透明断熱材料について、65℃×95%RHの高温高湿環境テストを実施し、白化・黒化等の膜の変質が生じるまでの膜変質発生時間を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006546461
表2に示されるとおり、実施例2の透明断熱材料は、1000時間を超えても膜変質が発生しなかった。一方、中間膜としてAgを含む比較例2は、400〜500時間で白斑点が生じた。また、ITOとAgの5層膜である参考例は、700〜800時間で白斑点が生じた。
図3に、実施例2及び比較例2の膜の透過スペクトルを示す。図3に示されるとおり、実施例2は、特に赤外領域(波長約800nm以上)において、比較例2よりも透過率が低く、すなわち赤外線を通しにくい(断熱性が高い)結果であった。
上記のとおり、本発明の実施例の透明断熱材料は、ITOを含む5層膜と同等ないし優れた光透過特性を有するとともに、Agを含む3層膜と比較して赤外線遮断性能に優れることが確認され、また、耐環境性にも優れた透明断熱材料であることが確認された。
1 スパッタ装置
2 真空チャンバー
3 スパッタ電力供給用電源
4 基板ホルダー
5 排気装置
6 ガス供給装置
6’ スパッタガス導入供給口
6’’ 反応ガス供給口
10a,10b ターゲット
10a’,10b’ スパッタ面(対向面)
11a,11b ターゲットホルダー
12a,12b バッキングプレート
20a,20b ターゲット間磁場発生手段
30a,30b 補助磁場発生手段
K プラズマ発生空間
B 基材シート
B’ 被成膜面
RM 反射性機能膜
CM セラミックス薄膜

Claims (12)

  1. 透明な基材と、
    当該透明な基材上に設けられた、反射性機能膜と、当該反射性機能膜の上下に積層されたセラミックス薄膜と、からなる3層膜と、
    からなる透明断熱材料であって、
    前記反射性機能膜が、チタン又はチタン合金の窒化物薄膜であり、
    前記セラミックス薄膜が、金属窒化物又は金属酸窒化物を含むセラミックス薄膜である、
    透明断熱材料。
  2. 前記反射性機能膜と前記セラミックス薄膜とからなる3層膜の厚みが、45〜250nmである、請求項1に記載の透明断熱材料。
  3. 波長550nmにおける可視光透過率が75%以上である、請求項1又は2に記載の透明断熱材料。
  4. 前記透明な基材が、高分子フィルム又はシートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  5. 前記チタン又はチタン合金の窒化物薄膜が、窒化チタン膜、もしくは、チタン中にジルコニウム又はハフニウムを0〜99wt%含有する合金の窒化物膜である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  6. 前記反射性機能膜が、チタン、又は、チタン中にジルコニウム及び/又はハフニウムを0〜99wt%含有するチタン材料を、反応性スパッタ法により成膜して得られた膜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  7. 前記反射性機能膜の厚みが5〜50nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  8. 前記セラミックス薄膜が、窒化アルミニウム膜である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  9. 前記セラミックス薄膜の厚みが20〜100nmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明断熱材料。
  10. 透明な基板上に、N-MHVスパッタ法を用いて、
    金属窒化物又は金属酸窒化物を含むセラミックス薄膜を成膜する工程と、
    チタン又はチタン合金の窒化物からなる反射性機能膜を成膜する工程とを含み、
    当該反射性機能膜の上下に前記セラミックス薄膜が積層された3層膜が形成される、
    透明な基板と3層膜とからなる透明断熱材料の製造方法。
  11. 前記セラミックス薄膜が、窒化アルミニウム膜である、
    請求項10に記載の透明断熱材料の製造方法。
  12. 請求項10又は11のいずれかに記載の製造方法によって製造された、透明断熱材料。
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