JP6543492B2 - Yag蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、YAG蛍光体用複合粒子、YAG蛍光体及びその製造方法に関する。
従来、LED(Light Emitting Diode)からなる発光素子と、この発光素子の光を受けて励起される蛍光体とを備え、発光素子が発する色と蛍光体が発する色との混合によって白色光を放射する発光装置が知られている。詳細には、近紫外LED又は紫色LEDと赤色、緑色、青色の蛍光体の組み合わせや、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせなどが知られている。例えば特許文献1には窒化物赤色蛍光体をエポキシ樹脂等の樹脂に含ませて発光ダイオード光源を構成するチップ上に塗布した白色発光ダイオードが開示され、特許文献2には青色の光を吸収し、黄色の蛍光を発する性質を有する多結晶体であって、該多結晶体がYAG結晶である蛍光体材料が開示されている。
このような発光装置では、ハイパワー化に伴って発光素子の発熱が大きな問題となっている。具体的には、素子への投入電力の増大によって、発光素子特性が変動し、また蛍光体特性が温度上昇に伴って変動し、これらの変動が相互に影響しあうことによって、発光装置としての特性が変動するという問題がある。蛍光体は一般に、固有の量子収率(励起光を蛍光に変換する効率。量子効率と同義。)や、温度消光特性(温度の上昇に伴って量子収率が低下し、その結果発光強度が低下する性質)を有している。例えば青色発光素子は、ジャンクション温度が100〜150℃程度に上昇し、蛍光体の量子収率が10〜20%程度低下し、場合によっては40%程度も低下するものもある。量子効率の高い蛍光体を用いれば高輝度の発光装置を得ることができ、また温度消光特性に優れる蛍光体は、より高出力の発光装置に適用できる。
YAG結晶の蛍光体を開示した上記特許文献2では、蛍光体の製造方法として、原料粉末をボールミルで混合し、焼成する方法(以下、ボールミル法と呼ぶ)が開示されている。しかし、所定の温度消光特性等の蛍光体特性を有する蛍光体を得る為には、ボールミルでの混合に長時間を要する。また、非特許文献1によれば、2020年の蛍光体の温度消光特性について、室温での量子収率の保持率に対する150℃における量子収率の保持率が95%であることを目標値としており、この目標値を達成した蛍光体は未だ実現されていない。
特開2010−155891号公報 特開2008−231218号公報
Solid−State Lighting Research and Development Multi−Year Program Plan April 2013(P51 表A 1.3)
本発明は、YAG蛍光体を対象とし、従来のボールミル法よりも短時間で、ボールミル法で得られる蛍光体と同等又はそれ以上の温度消光特性を有する蛍光体を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、従来のYAG蛍光体よりも温度消光特性に優れたYAG蛍光体を得ることにある。
本発明は、YAG結晶を母結晶とし、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体の製造方法であって、Y23粉末、Al23粉末及び前記ドーパントの酸化物粉末を含む原料粉末の混合物をメカノケミカル法によって処理することで複合粒子を得、前記複合粒子を1300℃以上で焼成することを特徴とするYAG蛍光体の製造方法である。
上記製造方法において、前記Y23粉末、Al23粉末及び前記ドーパントの酸化物粉末を含む原料粉末の混合物を、乾式条件で圧縮しながらせん断して、原料粉末よりも粒成長した粒子を含む複合粒子を得ることが好ましい。このような態様において更に、有底円筒型容器と、この容器内周よりも小さい曲率の先端翼を有するローターとを備え、前記先端翼と容器内周との間に所定のクリアランスを設け、前記ローターを回転させることで、前記クリアランスで前記原料粉末の混合物を圧縮しながらせん断することが好ましい。
前記ローターの動力は前記原料粉末の混合物の合計質量に対して0.1kW/g以上であり、前記ローターを30分以上回転させることが好ましい。この場合、前記複合粒子を1500℃以下で焼成することができる。
本発明は、Y、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体用複合粒子であって、該複合粒子をEDX解析してYドメイン強度の面方向分布を調べて、Yドメイン強度が50%以上となる独立領域の面積に対する度数分布を求め、この度数分布において独立領域の累積度数が70%となる時の面積が120000nm2以下であるYAG蛍光体用複合粒子も包含する。また、本発明のYAG蛍光体用複合粒子は、Y、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体用複合粒子であって、該複合粒子のESB画像から0〜255階調グレースケールヒストグラムを作成し、このヒストグラムにおいて170〜255階調の割合が全体の40面積%以上であると言うこともできる。
また、本発明は、Y、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体用複合粒子であって、一次粒子が凝集した二次粒子を有し、前記一次粒子は、Y23、Al23又は前記ドーパントの酸化物であり、前記一次粒子の平均粒径は300〜600nmであるYAG蛍光体用複合粒子も包含する。前記二次粒子の平均粒径は600nm〜5μmであることがより好ましい。
また、本発明は、Y、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体用複合粒子であって、Y23粒子と、Al23粒子と前記ドーパントの酸化物粒子とが合一した、平滑表面を有する径拡大粒子を含むYAG蛍光体用複合粒子も包含する。
本発明はYAG結晶を母結晶とし、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体であって、450〜460nmの波長の光で励起したとき、150℃での発光強度が25℃での発光強度に対して95%以上であり、多結晶体であるYAG蛍光体も包含する。該YAG蛍光体では、SEM画像において、4μm2以上の平滑部を有することや、XRD分析での(400)面の回折ピークの半値幅が0.14〜0.18°であること、450〜460nmの波長の光で励起した際の内部量子効率が70%以上であること、またYAG単一相であることなどが好ましい。
更に、青色の光を発する発光素子と、前記発光素子の光を励起光として黄色の光を発する蛍光体を備える発光装置であって、前記蛍光体が上記した本発明のYAG蛍光体である発光装置も本発明に含まれる。
本発明によれば、YAG蛍光体の原料粉末をメカノケミカル法によって処理しているため、ボールミル法よりも格段に短い時間で、ボールミル法と同等またはそれ以上の温度消光特性を有する蛍光体を製造することができる。また、本発明の好ましい態様において、メカノケミカル法を所定の処理条件で行うことによって、従来のYAG蛍光体よりも温度消光特性に優れる蛍光体を得ることができる。
図1(a)は、メカノケミカル法に用いることのできる摩砕ミルの回転軸に垂直な断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図である。 図2は、複合粒子のESB画像である。 図3は、複合粒子のESB画像から作成したグレースケールヒストグラムである。 図4は、原料粉末の混合後の状態を観察したSEM写真である。 図5は、温度と相対発光強度との関係を示したグラフである。 図6は、焼成温度を変化させた際のXRD解析結果を示したグラフである。 図7は、YAG蛍光体を観察したSEM写真である。
本発明の特徴は、YAG蛍光体の製造に際し、原料粉末の混合物をメカノケミカル法によって処理する点にある。メカノケミカル法によれば、原料粉末が粉砕、混合され、各原料粒子が高度に分散した上で、これら原料粒子の凝集または合一が十分に進んだ粒子を含む複合粒子を得ることができる。このような複合粒子を焼成して得られる蛍光体は、結晶性(後述する半値幅で評価できる)が良好であり、しかもメカノケミカル法によれば短時間で前記複合粒子を得ることができるため、従来のボールミリング法で得られるYAG蛍光体と同等又はそれ以上の温度消光特性を有するYAG蛍光体を、ボールミリング法と比べて格段に短い時間で得ることができる。また、メカノケミカル法を所定の処理条件で行うことによって、従来のYAG蛍光体よりも優れた温度消光特性を有するYAG蛍光体を得ることもできる。
メカノケミカル法は、より具体的には、原料粉末の混合物を乾式条件で圧縮しながらせん断することによって行うことができ、これによって原料粉末が凝集または合一し、原料粉末よりも粒成長した粒子を形成できる。
原料粉末の混合物を圧縮しながらせん断する方法の一例を、図面を用いて説明する。図1は、原料粉末の混合物に圧縮力とせん断力を与えることのできる摩砕ミルの模式図であり、図1(a)は回転軸に垂直な断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’断面図である。図1の摩砕ミルは有底円筒型容器1と、ローター2とを備える。ローター2は有底円筒型容器1の内周よりも小さい曲率の先端翼3を有し、前記先端翼3と有底円筒型容器1の内周との間にはクリアランス4が設けられている。そして、前記ローター2を回転させることで、前記クリアランス4で原料粉末の混合物5が圧縮力とせん断力を受け、原料粉末よりも粒成長した粒子が形成される。
前記クリアランスの範囲は、原料粉末の量や、ローターの先端翼の曲率と容器内周の曲率の差などによっても異なるが、例えば20mm以下とできる。このようにすることで、原料粉末の混合物に圧縮力とせん断力を十分に与えることができ、原料粉末の凝集又は合一化(以下、複合化と呼ぶ場合がある)が促進される。クリアランスは好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下であり、特に3mm以下が好ましい。クリアランスの下限は、例えば100μmであり、好ましくは1mmである。
またローターの回転の動力は、原料粉末の混合物の合計質量に対して例えば0.05kW/g以上である。回転動力を高めることによって、原料粉末の複合化が促進される。前記回転の動力は0.06kW/g以上が好ましく、より好ましくは0.08kW/g以上であり、特に0.1kW/g以上が好ましい。前記回転の動力の上限は特に限定されないが、例えば0.5kW/gである。ローターの回転数は装置の大きさ、ローターの形状等によっても異なるが、上記範囲の回転動力とすれば、例えば1000〜4000rpm、好ましくは2000〜3000rpmとできる。
ローターの回転時間は、ローターの回転動力によって適宜設定可能であるが、例えば5分以上である。ローターを5分以上回転させることによって、原料粉末に十分に圧縮力とせん断力を与えることができるため原料粉末の複合化が進み、得られる複合粒子を焼成することで、従来のボールミリング法で製造される蛍光体と同等の温度消光特性を有する蛍光体を得ることができる。ローターの回転時間の上限は特に限定されないが、長すぎると余計なエネルギーを消費することとなるため、60分程度とすれば良く、30分以下としても良い。但し、ローターの回転動力を0.1kW/g以上として、30分以上回転させることも好ましい。このようにすることで、一次粒子が凝集した二次粒子を有する複合粒子、または原料粉末が合一し、平滑表面を有する径拡大粒子を有する複合粒子が得られ、これを焼成して得られる蛍光体の150℃での温度消光特性を95%以上とできる。前記した径拡大粒子について及び蛍光体の温度消光特性については後述する。
前記した有底円筒型容器の材質は特に限定されないが、例えばSUS304などのステンレス鋼、炭素鋼などが挙げられる。該容器の内径は例えば50〜500mmである。また、先端翼は1以上あれば良く、好ましくは2以上であり、通常8以下である。
本発明は、YAG結晶を母結晶とし、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体を対象としている。このようなYAG結晶を製造するための原料としては、Y23粉末、Al23粉末及びドーパントの酸化物粉末を用いる。Y及びAlの原料としては、Y23粉末及びAl23粉末と共に更にYAlO3粉末を用いても良いし、Y23粉末及びAl23粉末に代えてYAlO3粉末を用いても良い。これら粉末の体積基準での平均粒径D50は、いずれも200〜700nm程度(好ましくは300〜600nm)とすれば良い。
上記したメカノケミカル法によって得られる本発明の複合粒子は、原料粉末由来のY、Alと、更にCe、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含んでいる。そして、本発明の複合粒子では、原料粉末が高度に分散している。これは以下の二通りの方法で特定できる。
第一に、複合粒子のESB(Energy and angle selective Backscattered electron detector)画像を撮影し、グレースケールヒストグラムを作成する。原料粉末が高度に分散しているYAG蛍光体用複合粒子は、各原料粉末が部分的に凝集しているものに比べて、色調が白くなる傾向がある。そこで、ESB画像から0〜255階調(0階調:黒、255階調:白)のグレースケールヒストグラムを作成し、該ヒストグラムにおいて白い側の割合が多い方が、原料粉末が高度に分散していると評価できる。本発明の複合粒子では、170〜255階調の割合が全体の40面積%以上である。170〜255階調の割合は、43面積%以上が好ましく、より好ましくは50面積%以上であり、上限は特に限定されないが例えば55面積%程度である。
第二に、本発明の複合粒子に含まれる元素のうち、特にY(イットリウム)の分散状態を特定することによって、原料粉末の分散状態を評価できる。
まず、メカノケミカル法によって得られた複合粒子をEDX分析し、Yの検出強度を測定し、Yの検出強度の最小値を0%、最大値を100%とするスケールで、各部位のYドメイン強度を規定する。そして、Yドメイン強度50%を基準に二値化した画像を作成し、Yドメイン強度50%以上である独立領域についてそれぞれの面積を求め、独立領域の面積に対する度数分布を調べる。該独立領域とは、例えば二値化した画像が海島構造を呈している場合で、Yドメイン強度50%以上の領域が島である場合の、各島の面積を意味する。二値化した画像において、面積の大きい独立領域は、Yが凝集している部分であり、すなわち面積の小さい独立領域の数が多いことはYの凝集が抑えられ高度に分散していることを意味する。よって、独立領域の累積度数(個数)が所定の値となる時の面積ができるだけ小さい方が、面積の小さい独立領域の数が多く、Yが高度に分散していると評価できる。本発明の複合粒子では、前記した度数分布において、独立領域の累積度数が70%となる時の面積を120000nm2以下とできる。独立領域の累積度数が70%となる時の面積は好ましくは110000nm2以下であり、より好ましくは100000nm2以下である。独立領域の累積度数が70%となる時の面積の下限は特に限定されないが、例えば50000nm2である。独立領域の度数分布を調べるに際しては、面積を所定範囲ごとに区間分けし(例えば5000nm2ごとや10000nm2ごと)、各区間の面積範囲を満たす独立領域の個数をカウントして度数分布を作成しても良い。
上記したメカノケミカル法において特に、前記した通り、ローターの回転動力を0.1kW/g以上として、30分以上回転させると、得られる複合粒子は、原料粉末に含まれるY、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含んでおり、複合粒子の構造は、一次粒子が凝集した二次粒子を有するものとできる。前記凝集とは、一次粒子の界面が同一化した径拡大粒子も含む意味である。前記一次粒子は、原料粉末であるY23、Al23又は前記ドーパントの酸化物であり、その平均粒径は300〜600nmである。前記二次粒子の平均粒径は600nm〜5μmであることが好ましい。
また、ローターの回転動力を0.1kW/g以上として、30分以上回転させると、一次粒子、すなわちY23粒子と、Al23粒子と前記ドーパントの酸化物粒子が合一化し、表面が平滑化した径拡大粒子を形成させることができ、本発明の複合粒子としては、Y、Alを含むと共に、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体用複合粒子であって、Y23粒子と、Al23粒子と前記ドーパントの酸化物粒子とが合一した、平滑表面を有する径拡大粒子を含むYAG蛍光体用複合粒子も包含する。径拡大粒子の表面の平滑化とは、一次粒子の凝集の痕跡が残っておらず平滑になっていることを意味する。
前記複合粒子の体積基準の平均粒径D50は、例えば0.55μm以上であり、好ましくは0.80μm以上である。また、前記複合粒子において、粒径が10μm以上である粒子の割合は11%以上であることも好ましい。
このような複合粒子を焼成することで、Y3Al512で表されるYAG母体結晶中に、発光元素となるドーパント元素(Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種)が固溶され、Y3-xxAl512(但し、Mはドーパント元素であり、xは0<x≦1を満たす値)で表される蛍光体となる。本発明では焼成温度を1300℃以上とする。焼成温度が1300℃未満であると固相反応が進みにくく、YAG単一相の蛍光体を得ることができない。YAG結晶の結晶性を高める観点からは、焼成温度は高いほど好ましいが、製造コストの低減や製造に要する時間を短縮する観点からは、焼成温度は上げすぎないのが良い。また、焼成温度が高くなりすぎると、緻密化しすぎてしまい、その後に粉体状に粉砕するために高いエネルギーを投入する必要がある。高いエネルギーで粉砕すると、蛍光体表面に欠陥が発生し、発光効率が低下する可能性もある。そこで、焼成温度の上限は1800℃であることが好ましい。特に、本発明の製造方法では、メカノケミカル法によって原料粉末が複合化しているため、1500℃以下の焼成温度でYAG単一相を得ることができる。通常のボールミリング法によって原料粉末を混合する場合には、焼結助剤を使った場合でも1500℃を超える焼成温度でなければ、YAG単一相を得ることができない。しかし、本発明では焼結助剤を使わなくても、1500℃以下の焼成温度でYAG単一相を得ることができる。
焼成時間は特に限定されないが、1〜6時間が好ましく、より好ましくは1〜4時間であり、更に好ましくは1〜3時間である。
焼成温度までの昇温に際しては、例えば室温から150〜250℃までを15〜25℃/分の平均昇温速度で昇温し、その後焼成温度までを5℃/分以上15℃/分未満の平均昇温速度で昇温する条件を採用できる。
焼成は、メカノケミカル法によって得られた複合粒子をそのまま焼成しても良いし、反応を促進させるために複合粒子を加圧成形してペレットにして焼成しても良い。複合粒子はルツボに入れて焼成すれば良い。ルツボは高耐熱性の材質が好ましく、例えばアルミナ製、窒化ホウ素製などのルツボを用いることができる。
焼成の雰囲気は特に限定されず、大気、不活性ガス、還元性ガスのいずれであっても良いが、不活性ガスまたは還元性ガスが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなど(特に窒素ガスが好ましい)が挙げられ、還元性ガスとしては前記不活性ガス(特に窒素ガス)と3〜5%の水素ガスとの混合ガスなどが挙げられる。焼成時の圧力は大気圧であることが好ましい。
焼成後は、得られた焼結体を室温まで炉冷した後、粉砕・混合し、蛍光体粉末を得ることができる。蛍光体粉末は、不純物を除去するために、塩酸、硫酸などの無機酸で酸洗浄することが好ましい。酸洗浄後は蛍光体粉末を純水で水洗し、粉体を沈殿させた後に上澄みを取り除き、100〜400℃程度(好ましくは200〜300℃)で1時間以上(好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは4時間以上)加熱して十分に水分を乾燥させるのが良い。蛍光体粉末に水分が残っているとLEDの通電などに影響を与える可能性がある。
水分を除去した後は、蛍光体粉末を篩いにかけることが好ましい。体積基準での平均粒径D50が30μmを超える大きな粒子が存在すると、LEDの封止剤中で蛍光体が分散・沈降できない。また、体積基準での平均粒径D50が0.1μmより小さいと、表面の欠陥量が増大し、蛍光体の発光強度が低下する。従って、蛍光体粉末の体積基準での平均粒径D50は0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmである。
上記した本発明の製造方法で得られるYAG蛍光体は、YAG結晶を母結晶とし、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体である。このYAG蛍光体は、Y3-xxAl512という組成式で表すことができる。該組成式において、Mは上記ドーパント元素であり、Yを置換して発光中心となる成分で、付活剤とも呼ばれる。ドーパントは、Ce、Tb及びYbよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、Ceが特に好ましい。前記xは0<x≦1を満たす値である。
前記xの値は、0.003〜0.2にすると良い。xの値が0.003未満では求められる発光強度の蛍光を得ることができない。一方、xの値が0.2を超えると、付活剤同士によるエネルギーの移動が起こり、濃度消光が生じる。濃度消光とは、隣接分子間のエネルギー移動が発生して本来のエネルギーが十分に蛍光として外部に放射されないこと(非発光遷移)等により、付活剤の高濃度化に応じて蛍光強度が増大しなくなる現象である。xの値は、好ましくは0.01〜0.2である。xを0.01以上とすることによって、発光装置に用いるのに適切な発光強度を有する蛍光体となる。
本発明の製造方法によって得られるYAG蛍光体は、メカノケミカル法によって原料粉末を処理しているため、ボールミル法と比べて非常に短い時間で、ボールミル法によって得られるYAG蛍光体と同等またはそれ以上の温度消光特性を有するYAG蛍光体を得ることができる。具体的には、450〜460nmの波長の光で励起したときの、25℃での発光強度に対する150℃での発光強度(以下では「150℃の温度消光特性」と呼ぶ)を92%以上とできる。後述する実施例でも示す通り、メカノケミカル処理を5分程度行うだけで150℃での温度消光特性を92%以上とでき、これは従来のボールミリングによる混合を360分行った場合とほぼ同等の特性である。
更に、本発明の製造方法において、メカノケミカル処理条件を好適な範囲に設定したり、焼成温度を高くすることなどによって、得られる蛍光体の結晶性を更に高めることができ、温度消光特性を向上できる。具体的には、メカノケミカル処理条件として、前記ローターの動力を前記原料粉末の混合物の合計質量に対して0.1kW/g以上とし、前記ローターを30分以上回転させる条件を採用することが好ましい。このような条件によって、得られる蛍光体の150℃での温度消光特性を95%以上とでき、このような温度消光特性に優れる蛍光体も本発明に含まれる。更に、上記したメカノケミカル処理条件を採用すれば、150℃での温度消光特性が95%以上である蛍光体を、1500℃以下の焼成温度でも得ることができ、製造コスト等の観点から有利である。本発明のYAG蛍光体の150℃での温度消光特性は、96%以上が好ましく、より好ましくは97%以上である。
前記した本発明の複合粒子は、原料粒子の凝集または合一が十分に進んでおり、これを焼成して得られる本発明のYAG蛍光体では、固相反応が十分に進んで緻密化しており、好ましくはSEM画像において4μm2以上の平滑部が観察される。本発明のYAG蛍光体で、6μm2以上の平滑部が観察されることが好ましく、9μm2以上の平滑部が観察されることが好ましい。観察される平滑部の面積の上限は特に限定されないが、例えば25μm2以上である。150℃での温度消光特性が95%以上であるとともに、9μm2以上の平滑部を有することも好ましい。
本発明のYAG蛍光体は、XRD分析での(400)面の回折ピークの半値幅が0.14〜0.18°であることが好ましい。(400)面の回折ピークはYAG相であり、YAG相の回折ピークの半値幅が前記範囲であることは蛍光体の結晶性が高いことを意味する。前記半値幅は、0.175°以下が好ましく、より好ましくは0.170°以下である。また、本発明のYAG蛍光体は多結晶体である。更に本発明のYAG蛍光体はYAG単一相であることが好ましい。YAG蛍光体には、YAG相の他、YAlO3相などが含まれ得る。YAlO3相の面指数は(121)であり、34°付近に回折ピークが現れる。蛍光体がYAG単一相である場合には、具体的には、XRD分析での(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比が10%以下であることが好ましい。
また、本発明のYAG蛍光体は、450〜460nmの波長の光で励起した際の25℃での内部量子効率が70%以上であることが好ましい。内部量子効率は72%以上がより好ましく、更に好ましくは75%以上である。内部量子効率の上限は特に限定されないが通常90%程度である。また、450〜460nmの波長の光で励起した際の25℃での外部量子効率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%以上である。外部量子効率の上限は特に限定されないが、通常60%程度である。更に、450〜460nmの波長の吸収率は45%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは60%以上である。吸収率の上限は特に限定されないが例えば75%程度である。
本発明のYAG蛍光体は、近紫外から可視光領域で効率的に励起され、黄色発光する。励起光の波長は265〜470nmが好ましく、より好ましくは365〜470nm、更に好ましくは450〜460nmである。また100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などで励起されることによって黄色発光することも確認されている。紫外〜青色(特に青色)の光を発する窒化物半導体などからなるLEDやLDなどの発光素子と、本発明のYAG蛍光体とを備える発光装置であって、前記発光素子の光を励起光として本発明のYAG蛍光体を黄色発光させる発光装置は、本発明のYAG蛍光体の温度消光特性が良好なため、高出力(例えば5W以上)の発光装置とでき、このような発光装置も本発明に含まれる。このような発光装置としては、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
製造例1
YAG蛍光体の原料として、Y23(高純度化学製、体積基準のD50:0.6μm)、Al23(高純度化学製、体積基準のD50:0.4μm)、CeO2(高純度化学製、体積基準のD50:0.3μm)の粉末をそれぞれ、生成する蛍光体の組成がY2.97Ce0.03Al512となる化学量論比で、合計30g秤量し、図1に示した摩砕ミルに投入した。有底円筒型容器1はSUS304製で、その内径が80mmであり、該容器1の内周とローター2の先端翼とのクリアランス4は1mmとした。このような摩砕ミルを、回転数1000rpm、所要動力2kWで5分回転させ、メカノケミカル処理を行い、複合粒子を得た。製造例1で得られた複合粒子の体積基準のD50は0.56μmであり、粒径が10μm以上である粒子の割合は6.6%であった。
製造例2
摩砕ミルを、回転数3000rpm、所要動力3kWで30分回転させたこと以外は製造例1と同様にして複合粒子を得た。製造例2で得られた複合粒子の体積基準のD50は0.84μmであり、粒径が10μm以上である粒子の割合は11.3%であった。
製造例3
YAG蛍光体の原料として、Y23(高純度化学製、体積基準のD50:0.6μm)、Al23(高純度化学製、体積基準のD50:0.4μm)、CeO2(高純度化学製、体積基準のD50:0.3μm)の粉末をそれぞれ、生成する蛍光体の組成がY2.97Ce0.03Al512となる化学量論比で、合計500g秤量し、ボールミルを用いて大気中で6時間混合した。このとき、メディアと原料粉末は、それぞれ容器に対してそれぞれ1/3ずつとした。またメディアは直径10mmのアルミナ製であった。混合の後、原料粉末とメディアの混合物を篩いにかけて原料粉末の混合物のみ取り分けた。製造例3で得られた原料粉末の混合物の体積基準のD50は0.52μmであり、粒径が10μm以上である粒子の割合は9.1%であった。
(1)Y(イットリウム)の分散状態の評価
製造例1〜3について、それぞれ8.194×6.032μmの範囲をEDX分析し、Yの検出強度を測定した。EDX分析の条件は以下の通りである。
加速電圧:5kV
倍率 :1万倍
装置 :Quantax D200(Bruker製)
製造例ごとに、Yの検出強度を測定し、Yの検出強度の最小値を0%、最大値を100%とするスケールで、各部位のYドメイン強度を規定した。そして、Yドメイン強度50%を基準に二値化した画像を作成し、Yドメイン強度50%以上である独立領域についてそれぞれの面積を求め、独立領域の面積に対する度数分布を調べた。前記した度数分布において、Yドメイン強度が50%以上である独立領域の累積度数(個数)が70%となる時の面積を求めた。
その結果、独立領域の累積度数が70%となる時の面積は、製造例1が86820nm2であり、製造例2が76982nm2であり、製造例3が129143nm2であった。すなわち、従来のボールミリング法(製造例3)ではYの凝集した領域が多く、独立領域の累積度数が70%となる時の面積が大きくなったのに対し、本発明のメカノケミカル法(製造例1、2)によれば、Yが高度に分散しており、独立領域の累積度数が70%となる時の面積が小さかった。
(2)グレースケールによる原料粉末の分散状態の評価
製造例1〜3のそれぞれについて、5.689×4.267μmの範囲のESB画像を撮影した。図2にESB画像を示す。図2(a)は製造例1、図2(b)は製造例2、図2(c)は製造例3を示す。図2より、製造例2で作成した複合粒子が最も白っぽく観察される領域の面積が大きいことが分かる。次に、このESB画像からグレースケールヒストグラムを作成した。ESB解析の条件は以下の通りである。
加速電圧:2kV
倍率 :2万倍
装置 :UlTra Plus(Zeiss製)
各製造例について、ESB画像から0〜255階調(0階調:黒、255階調:白)のグレースケールヒストグラムを作成した。該ヒストグラムを図3に示す。図3のヒストグラムから、各製造例について170〜255階調の面積割合を求めた。その結果、製造例1では43.9面積%、製造例2では51.5面積%、製造例3では36.1面積%であった。つまり、従来のボールミリング法(製造例3)では、原料粉末が凝集している箇所があり、色調が白い側の割合が少ないのに対し、本発明のメカノケミカル法(製造例1、2)によれば、原料粉末が高度に分散しており、色調が白い側の割合が多く、特に製造例2では50面積%以上となった。
(3)複合粒子のSEM観察
製造例2の複合粒子及び製造例3で得られた粒子のSEM写真をそれぞれ図4(a)、(b)に示す。図4(a)では原料粉末が合一した径拡大粒子であって、表面が平滑である粒子が観察され、図4(b)ではそのような径拡大粒子は観察されない。また、図4(a)の複合粒子は、一次粒子が凝集した二次粒子であるということもできる。
実施例1
前記製造例1で得られた複合粒子をアルミナ製のルツボに入れ、ルツボを反応容器に入れて、反応容器内をロータリーポンプで減圧した後、窒素ガスを封入し、大気圧とした。その後、反応容器内を200℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、200℃から1500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、1500℃に到達後3時間保持し、焼結を完了した。
得られた蛍光体をメノウ乳鉢で粉砕混合し、不純物等を除去するために塩酸中で2時間撹拌し、純水で洗った後、170℃に加熱して水分を十分に除去し、その後、更に乳鉢で30分間粉砕混合し、蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造は、リガク製のXRD装置を用いて解析した。測定はCuKα線で行い、λ=1.5418nm、θ=10〜70°とした。その結果、得られた蛍光体粉末の結晶は多結晶のYAG単一相であり、(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比は8.6%であった。また、(400)面の半値幅は0.173°であった。
更に、得られた蛍光体粉末の発光特性を、日立ハイテク製のF−7000形分光蛍光光度計を用い、励起側スリット:2.5nm、蛍光側スリット:2.5nm、ホトマル電圧350Vの条件で測定した。その結果、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認された。その後、浜松フォトニクス製の絶対量子収率測定装置(Quantaurus−QY C11347−01)を用いて量子収率測定と温度消光測定を行った。その結果、励起光の波長を450nmとしたときの25℃での内部量子収率は72%であり、150℃における発光強度は25℃における発光強度に対して92.3%であった。またレーザー散乱回折法により測定した蛍光体粉末のD50は3.0μmであった。
実施例2
前記製造例1の複合粒子に代えて、前記製造例2で得られた複合粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造及び発光特性を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、蛍光体粉末の結晶は多結晶のYAG単一相であり、(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比は8.6%であった。また、(400)面の半値幅は0.176°であった。また、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認され、25℃での内部量子収率は75%であり、150℃における発光強度は95.0%であった。またレーザー散乱回折法により測定した蛍光体粉末のD50は2.3μmであった。
実施例3
ルツボを入れた反応容器を200℃から1800℃まで昇温し、1800℃に到達後3時間保持し、焼結を完了したこと以外は実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造及び発光特性を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、蛍光体粉末の結晶は多結晶のYAG単一相であり、(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比は8.6%であった。また、(400)面の半値幅は0.149°であった。また、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認され、25℃での内部量子収率は76%であり、150℃における発光強度は96.0%であった。またレーザー散乱回折法により測定した蛍光体粉末のD50は11.5μmであった。
実施例4
ルツボを入れた反応容器を200℃から1800℃まで昇温し、1800℃に到達後3時間保持し、焼結を完了したこと以外は実施例2と同様にして蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造及び発光特性を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、蛍光体粉末の結晶は多結晶のYAG単一相であり、(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比は8.6%であった。また、(400)面の半値幅は0.152°であった。また、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認され、25℃での内部量子収率は80%であり、150℃における発光強度は97.3%であった。またレーザー散乱回折法により測定した蛍光体粉末のD50は12.3μmであった。
比較例1
YAG蛍光体の原料として、Y23(高純度化学製、体積基準のD50:0.6μm)、Al23(高純度化学製、体積基準のD50:0.4μm)、CeO2(高純度化学製、体積基準のD50:0.3μm)の粉末をそれぞれ、生成する蛍光体の組成がY2.97Ce0.03Al512となる化学量論比で、合計10g秤量し、メノウ乳鉢を用いてエタノール溶媒中で撹拌し、溶媒が十分揮発するまで混合し(60分)、その後200℃に加熱して溶媒を完全に除去し、蛍光体の前駆体粒子を得た。
得られた前駆体粒子をアルミナ製のルツボに入れ、ルツボを反応容器に入れて、反応容器内をロータリーポンプで減圧した後、窒素ガス97%及び水素3%の混合ガスを封入し、大気圧とした。その後、反応容器内を200℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、200℃から1500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、1500℃に到達後3時間保持し、焼結を完了した。
得られた蛍光体をメノウ乳鉢で粉砕混合し、不純物等を除去するために塩酸中で2時間撹拌し、純水で洗った後、170℃に加熱して水分を十分に除去し、その後、更に乳鉢で30分間粉砕混合し、蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造及び発光特性を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、蛍光体粉末の結晶はYAG単一相であり、(400)面の半値幅は0.184°であった。また、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認され、25℃での内部量子収率は86%であり、150℃における発光強度は85.9%であった。
比較例2
製造例3で得られた原料粉末をアルミナ製のルツボに入れた後は、実施例1と同様にして蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末の結晶構造及び発光特性を実施例1と同様の方法で測定した。その結果、蛍光体粉末の結晶はYAG相と、YAlO3相が確認され、(400)面の回折ピーク強度に対する(121)面の回折ピーク強度の比は18.5%であった。また、(400)面の半値幅は0.164°であった。また、365〜500nm程度までの励起スペクトルを持ち、550nm付近に発光スペクトルのピークを持つ黄色発光が確認され、25℃での内部量子収率は79%であり、150℃における発光強度は93.1%であった。
実施例1〜実施例4及び比較例1〜2の試験条件及び結果を表1、2に示す。なお、表2には、200℃での温度消光特性、450〜460nmの波長の光で励起した際の外部量子収率、450〜460nmの波長を有する光の吸収率も併記した。
表1、2より、摩砕ミルを用いてメカノケミカル処理を行った実施例1〜4では、5〜30分という処理時間で、360分のボールミル混合を行った比較例2と同等またはそれ以上の温度消光特性(150℃)を実現できている。また実施例1と3、実施例2と4の比較により、焼成温度を上げることによって、温度消光特性を向上させることができることが分かる。更に、合計30gの原料粉末に対して動力を3kW(すなわち、0.1kW/g)とし、30分メカノケミカル処理を行った実施例2、4では、95%以上の温度消光特性(150℃)を達成でき、特に実施例2では、1500℃の焼成温度でも95%の温度消光特性(150℃)を達成できている。
図5は、実施例1〜実施例4及び比較例1〜2において、温度を200℃まで変化させた際の発光強度(各実施例における25℃での発光強度を100とする)を測定し、プロットしたグラフである。比較例1では、温度の上昇と共に発光強度が大きく低下しているのに対し、実施例1〜4は、温度上昇に伴う発光強度の低下が従来のボールミル法と同等かまたそれ以下である。つまり、本発明のメカノケミカル法によれば、6時間ボールミル混合して得られる蛍光体と同等の温度消光特性を有する蛍光体を、わずか5〜30分程度で得ることができる。
図6は、焼成温度を変化させた際の、蛍光体のXRD解析結果を示したグラフであり、図6(a)は比較例2で焼成温度を1200〜1600℃まで変化させたグラフ、図6(b)は実施例1で焼成温度を1200〜1600℃まで変化させたグラフ、図6(c)は実施例2で焼成温度を1200〜1600℃まで変化させたグラフである。各グラフにおいて表示される5本の回折スペクトルは、下から順に、焼成温度が1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃の場合のスペクトルを表している。図6(a)では1600℃で焼成した場合であってもYAlO3相が検出されているのに対し、図6(b)、(c)では1500℃以下でもYAG単一相が得られていることが分かる。
図7は、YAG蛍光体をSEM観察した画像であり、(a)は実施例1で得られた蛍光体、(b)は比較例2で得られた蛍光体である。
比較例2の蛍光体を観察した図7(b)では、直径が1μm程度以下の細かな粒の集合体が観察されるのに対し、実施例1の蛍光体を観察した図7(a)では4μm2以上の平滑部、すなわち粒同士の境界のない領域があり、緻密化している様子が分かる。
本発明のYAG蛍光体の製造方法は、従来のボールミリング法に比べて短い時間でYAG蛍光体を製造でき、また本発明で製造される蛍光体は、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などの発光装置に好適に用いられるため、産業上有用である。
1 有底円筒型容器、2 ローター、3 先端翼、4 クリアランス、5 原料粉末の混合物

Claims (3)

  1. YAG結晶を母結晶とし、Ce、Tb、Eu、Yb、Pr、Tm及びSmよりなる群から選択される少なくとも1種のドーパントを含むYAG蛍光体の製造方法であって、
    23粉末、Al23粉末及び前記ドーパントの酸化物粉末を含む原料粉末の混合物を乾式条件で圧縮しながらせん断するメカノケミカル法によって処理することで原料粉末よりも粒成長した粒子を含む複合粒子を得、
    前記メカノケミカル法では、
    有底円筒型容器と、
    この容器内周よりも小さい曲率の先端翼を有するローターとを備え、
    前記先端翼と容器内周との間に所定のクリアランスを設け、
    前記ローターを60分以下回転させることで、前記クリアランスで前記原料粉末の混合物を圧縮しながらせん断し、
    前記複合粒子を1300℃以上で焼成することを特徴とするYAG蛍光体の製造方法。
  2. 前記ローターの動力は前記原料粉末の混合物の合計質量に対して0.1kW/g以上であり、前記ローターを30分以上回転させる請求項に記載の製造方法。
  3. 前記複合粒子を1500℃以下で焼成する請求項に記載の製造方法。
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