JP6540111B2 - フェライト鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライト鋼に関し、より詳しくは、化学工業、ボイラ用等の高温耐熱部材として用いられるフェライト鋼に関する。
一般に、化学工業、ボイラ用の高温耐熱部材として、炭素鋼、3質量%以下のCrを含む低Cr合金鋼、9〜12質量%のCrを含む高Crフェライト鋼やステンレス鋼等が用いられている。これらのうち、炭素鋼及び低Cr合金鋼は、操業温度が550℃以下の熱交換器用配管部材や圧力容器用鋼板として使用されており、STB340、STB410、STB510、STBA12、STBA21、STBA22、STBA23、STBA24、SB410、SCMV鋼等がJISで規格化されている。
低Cr合金鋼は、炭素鋼と比較して、CrやMoを含有するため、耐酸化性、高温クリープ強度に優れている。低Cr合金鋼は、高Crフェライト鋼と比較して、経済性に優れる上、溶接性に優れている。低Cr合金鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼と比較して、経済性に優れる上、膨張率が低く、さらに溶接性が格段に優れている。
化学工業、ボイラ用の高温耐熱部材は、溶接を施した後、溶接部の靱性改善のため熱処理(溶接後熱処理)を受ける。しかし、規格化されている低Cr合金鋼、高Crフェライト鋼は、450℃以上の高温で使用中に、母材と溶接熱影響部との間に炭化物が凝集粗大化した層が形成し、これが原因となってクリープ強度が低下する問題がある。
低Cr合金鋼は、焼入れ性を向上させるCrの含有量が少ないため、フェライトとパーライトとの2相組織若しくはベイナイト組織、又はこれらを焼戻した組織を有する。高Crフェライト鋼は、マルテンサイト組織又はこれを焼戻した組織を有する。フェライトとパーライトの2相組織は、クリープ強度が低い。ベイナイト及びマルテンサイト並びにこれらを焼戻した組織は、高温強度は著しく向上するが、溶接熱影響部のクリープ強度が低下する問題がある。
このような問題に対し、低Cr合金鋼の高強度化を志向する開発がなされている。特開平8−325669号公報には、V、Nb析出物や微細炭化物の高温長時間安定性を高めるためにW、Moを添加し、W、Moを主成分とする粗大析出物の生成を抑制することを目的にMn量の低減及びBの適量添加を行うことが記載されている。
高Crフェライト鋼の高強度化を志向する開発もなされている。特開平8−085849号公報には、析出物を安定化するため、及び、固溶強化を狙って固溶Mo、Wを増量し、Co、Taを添加することが記載されている。
溶接熱影響部のクリープ強度の低下を抑制する開発もなされている。特開昭62−170419号公報には、硬度をHv220以下に調整する軟化処理をすることにより、溶接部のクリープ強度低下抑制を図った溶接継手が開示されている。特開2002−146484号公報には、フェライト単相組織とするために、Cr、W、Mo等のフェライト生成元素を多量に含有させることが開示されている。
特開平8−325669号公報 特開平8−085849号公報 特開昭62−170419号公報 特開2002−146484号公報
特開平8−325669号公報の耐熱鋼は、Cr含有量が3.5質量%以下であるため、フェライトとパーライトとの2相組織若しくはベイナイト組織、又はこれらを焼戻した組織を有する。そのため、母材と溶接熱影響部との間に、炭化物が凝集粗大化した層が形成することを阻止できない。
特開平8−085849号公報の耐熱鋼は、焼戻しマルテンサイト組織を有することから、溶接部のクリープ強度の低下を抑制できない。
特開昭62−170419号公報の溶接継手は、焼戻しを制御することによって溶接部の硬さを調節して、母材と溶接熱影響部との間に生じる層の生成を抑制する。しかし、焼戻しを必須としていること、及びCr含有量が5.0〜15.0質量%であることから、この溶接継手は、ベイナイト又はマルテンサイトを焼戻した組織を有し、母材と溶接熱影響部との間に、炭化物が凝集粗大化した層が形成することを阻止できない。
特開2002−146484号公報のフェライト単相耐熱鋼は、Crの添加量を40質量%以下と規定しているが、Cr添加量が8質量%以上の場合、ベイナイト変態又はマルテンサイト変態を完全には抑制できず、フェライト単相の組織にできない。一方、フェライト単相の組織にするためにCrを20質量%を超えて添加すると、σ相と呼ばれる脆化相の析出が顕著になり、靱性が著しく劣化する。
本発明は、溶接部のクリープ強度の低下を抑制できるフェライト鋼を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態によるフェライト鋼は、化学組成が、質量%で、C:0.05%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.30〜0.70%、Ti:0.010〜0.10%N:0.010〜0.050%、Co:5.00〜12.00%、W:0.50〜5.00%、B:0.0025〜0.020%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Al:0.03%以下、Cu:0.01%以下、Ni:0.01%以下、Cr:0〜11.50%、Mo:0〜2.00%、V:0〜0.50%、Nb:0〜1.00%、Ta:0〜1.00%、Zr:0〜0.10%、残部:Fe及び不純物であり、フェライト相の面積率が95%以上であり、前記フェライト相のフェライト粒径が50μm未満である組織を有する。
本発明によれば、溶接部のクリープ強度の低下を抑制できる、フェライト鋼が得られる。
本発明者らは、上記課題を解決するため、ベイナイト変態及びマルテンサイト変態を起こさないフェライト単相の組織を得ることを目的に、種々の化学組成の合金を溶解、圧延、熱処理して組織観察を実施した。さらに、応力の範囲を50〜100MPaとし、クリープ破断強度を調査した。その結果、5.00質量%以上のCoと、0.50質量%以上のWとを含有し、C含有量を0.05質量%以下に制限した化学組成とすれば、実質的にフェライト単相の組織が得られることが分かった。
フェライト相を主体とする組織は、一般に、ベイナイト相及びマルテンサイト相を主体とする組織と比較して、結晶粒が大きいため、靱性が低い。しかし、上記の化学組成であれば、フェライト粒径を50μm未満にすることができるので、加工に必要な靱性を確保できることが分かった。
本発明者らは、上記の知見に基づいて本発明を完成させた。以下、本発明の一実施形態によるフェライト鋼について詳細に説明する。
[化学組成]
本実施形態によるフェライト鋼は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.05%以下
炭素(C)は、炭化物を生成するとともに、鋼の焼入れ性を高め、ベイナイト又はマルテンサイト変態を促進する。0.05%を超えると、ベイナイト又はマルテンサイト変態を充分抑制できず、さらに、粗大な炭化物が析出するので、0.05%以下とする。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
Si:1.00%以下
シリコン(Si)は、脱酸剤であり、特に下限の規定を要しないが、脱酸の効果を確実に得るためには、0.05%以上が好ましい。より好ましくは0.10%以上である。Siは、耐水蒸気酸化特性を高める元素でもあるので、この点で0.20%以上が好ましい。一方、1.00%を超えると、鋼の靱性及び加工性が低下するので、1.00%以下とする。好ましくは0.70%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Mn:0.30〜0.70%
マンガン(Mn)は、Sを固定して熱間加工性を改善する。この効果を得るため、0.30%以上とする。Mnは、組織の安定化にも寄与するので、この点で0.40%以上が好ましい。一方、0.70%を超えると、加工性や溶接性が低下するので、0.70%以下とする。Mnは、焼戻し脆化感受性を高める元素でもあるため、0.60%以下が好ましい。
Ti:0.010〜0.10%
チタン(Ti)は、脱酸剤として機能する。この効果を得るため、0.010%以上とする。また、Tiは、強力な炭化物、窒化物生成元素であり、組織の微細化、並びに炭化物及び窒化物の安定化に寄与するので、この点で、0.040%以上が好ましい。一方、0.10%を超えると、粗大なTiNが生成し、靱性が低下するので、0.10%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
N:0.010〜0.050%
窒素(N)は、MX型析出物を形成し、高温強度の向上に寄与する。この効果を得るため、0.010%以上とする。好ましくは0.020%以上である。一方、Nを過剰に含有させると、粗大なTiNが生成し、靱性が低下するので、0.050%以下とする。好ましくは0.045%以下である。
Co:5.00〜12.00%
0.05%以上のコバルト(Co)添加は、フェライト粒径を微細化させる。Coはさらに、鋼の耐酸化性を向上させる。5.00%未満では、フェライト相の面積率の高い組織が得られないため、5.00%以上とする。高温強度を高める点で、7.00%以上が好ましい。一方、12.00%を超えると、溶接性や加工性が低下するので、12.00%以下とする。好ましくは10.00%以下である。
W:0.50〜5.00%
タングステン(W)は、固溶強化及び析出強化によって、クリープ強度を顕著に向上させる元素である。この効果を得るため、0.50%以上とする。高温強度を高める点で、1.50%以上が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると経済性が低下するので、5.00%以下とする。好ましくは、4.50%以下である。
B:0.0025〜0.020%
硼素(B)は、微量でも析出物の高温安定性を改善する。この効果を得るため、0.0025%以上とする。析出物を分散、安定化させ、クリープ強度を高める点で、0.003%以上が好ましい。一方、過剰に含有させると、溶接性や加工性が低下するので、0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下である。
P:0.03%以下
燐(P)は、不純物であり、鋼の靱性、加工性、及び溶接性を損なうので、0.03%以下に制限する。好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.001%が実質的な下限である。
S:0.015%以下
硫黄(S)は、不純物であり、鋼の靱性、加工性、及び溶接性を損なうので、0.015%以下に制限する。好ましくは0.003%以下であり、より好ましくは0.001%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.0001%が実質的な下限である。
Al:0.03%以下
アルミニウム(Al)は、脱酸剤として機能する。しかし、0.03%を超えると、クリープ強度の低下を招くので、0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。下限は特に規定しないが、実用鋼のコストの点から、0.001%が実質的な下限である。
Cu:0.01%以下
銅(Cu)は、スクラップ等の原料から混入し、鋼のクリープ強度を低下させる。Cu含有量が0.01%を超えると、クリープ強度の低下を招くので、0.01%以下とする。好ましくは、0.005%以下である。なお、下限は0%を含む。
Ni:0.01%以下
ニッケル(Ni)は、スクラップ等の原料から混入し、鋼のクリープ強度を低下させる。Ni含有量が0.01%を超えると、クリープ強度の低下を招くので、0.01%以下とする。好ましくは、0.005%以下である。なお、下限は0%を含む。
本実施形態によるフェライト鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、又は製造過程の環境等から混入する元素を意味する。
本実施形態によるフェライト鋼は、上記のFeの一部に代えて、Cr、Mo、V、Nb、及びTaからなる群から選択される1又は2以上、並びに、Zrを含有しても良い。Cr、Mo、V、Nb、及びTaは、いずれも析出強化によって鋼のクリープ強度を向上させる。Zrは、炭化物及び窒化物を形成して鋼のクリープ強度を向上させる。
Cr、Mo、V、Nb、Ta、及びZrはすべて選択元素であり、本実施形態によるフェライト鋼は、これらの元素を含有していなくても良い。本実施形態によるフェライト鋼は、これらの比較的高価な合金元素を含有していなくても、STBA244と同等以上のクリープ強度が得られる。そのため本実施形態によれば、CrやMo等を必須とする従来の耐熱鋼と比較して、省合金化を図ることができる。また、これらの合金元素を含有することで、さらに高いクリープ強度を得ることができる。
Cr:0〜11.50%
クロム(Cr)は、鋼の高温特性の向上に寄与する。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.01%以上とすることが好ましい。一方、11.50%を超えると靱性が低下するので、11.50%以下とする。好ましくは10.00%以下である。
Mo:0〜2.00%
モリブデン(Mo)は、固溶強化及び析出強化によって、クリープ強度を顕著に向上させる。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.01%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.30%以上である。一方、Moを過剰に含有させると経済性が低下するので、2.00%以下とする。好ましくは1.00%以下である。
V:0〜0.50%
バナジウム(V)は、微細な炭化物、窒化物を析出させてクリープ強度を高める。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.01%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.20%以上である。一方、Vを過剰に含有させると、析出物によって靱性が低下するので、0.50%以下とする。好ましくは0.35%以下である。
Nb:0〜1.00%
ニオブ(Nb)は、微細な炭化物を形成してクリープ強度を高める。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.01%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.04%以上である。一方、Nbを過剰に含有させると、粗大な炭化物が生成し、靱性が低下するので、1.00%以下とする。好ましくは0.07%以下である。
Ta:0〜1.00%
タンタル(Ta)は、微細な炭化物を形成してクリープ強度を高める。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.01%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.04%以上である。一方、Taを過剰に含有させると、粗大な炭化物が生成し、靱性が低下するので、1.00%以下とする。好ましくは0.07%以下である。
Zr:0〜0.10%
ジルコニウム(Zr)は、Tiと同様に、強力な炭化物、窒化物生成元素であり、組織の微細化、並びに炭化物及び窒化物の安定化に寄与する。微量でもこの効果は得られるが、より確実に得るためには0.001%以上とすることが好ましい。一方、Zrを過剰に含有させると、粗大なZrNが生成し、靱性が低下するので、0.10%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
[組織]
本実施形態によるフェライト鋼は、実質的にフェライト単相であり、フェライト相のフェライト粒径が50μm未満である組織を有する。
ここで、実質的にフェライト単相の組織とは、具体的には、フェライト相の面積率が95%以上の組織を意味する。換言すれば、本実施形態によるフェライト鋼は、フェライト相以外の組織を面積率で5%未満含んでいても良い。
組織の同定は例えば、硝酸アルコール混合液又は王水でエッチングした組織を光学顕微鏡によって倍率200倍程度で観察することで行うことができる。フェライト相の面積率は例えば、画像解析によって測定することができる。フェライト相の面積率が95%未満であると、母材と溶接熱影響部との間に、炭化物が凝集粗大化した層が形成し、溶接部のクリープ特性が低下する。そのため、フェライト相の面積率は95%以上である。フェライト相の面積率は、好ましくは98%以上である。
フェライト粒径は、JIS G0551(2013)に規定された切断法に準拠して測定する。フェライト粒径が50μm以上であると、加工に必要な靱性が得られない。そのため、フェライト粒径は50μm未満である。フェライト粒径は、好ましくは、45μm以下である。
[製造方法]
次に、本実施形態によるフェライト鋼の製造方法の一例を説明する。
本実施形態によるフェライト鋼は、常法により、鋼を溶製し、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延して製造される。熱間圧延後は空冷する。
熱間圧延前の加熱は、鋼の変形抵抗を低下させるとともに、鋳造時に鋼片に生成した析出物を固溶させる工程である。加熱温度は800℃以上にすることが好ましい。一方、加熱温度が高すぎると組織が粗大になるので、1250℃以下にすることが好ましい。
熱間圧延では、トータル圧下率を大きくするほど、組織を微細化できるため好ましい。熱間圧延のトータル圧下率は、好ましくは50%以上である。
熱間圧延の終了後、室温まで冷却する。冷却方法は例えば、空冷である。本実施形態によるフェライト鋼は、特に徐冷をしなくても、フェライト相の面積率が95%以上の組織が得られる。
冷却後、必要に応じて、1000℃以上に加熱した後に空冷する焼準しを実施しても良い。焼準しを実施すれば、組織が整うため好ましい。焼準しの温度は1200℃未満が好ましく、1150℃未満がより好ましい。
熱間圧延後の空冷の後又は焼準し後の空冷の後、必要に応じて、析出促進のための熱処理を行ってもよい。析出促進のための熱処理を行うと、金属間化合物、炭窒化物等の析出物が鋼中に生成する。熱処理の温度は、析出物の融点以下の温度であり、具体的には1100℃以下である。熱処理温度が高すぎるとフェライト粒径が大きくなるので、1000℃以下が好ましい。より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。熱処理の温度の下限は好ましくは500℃であり、さらに好ましくは600℃である。
析出促進のための熱処理を実施することで、初期のクリープ強度を向上させることができる。ただし、析出促進のための熱処理を実施しなくても、本実施形態によるフェライト鋼は、高温(例えば600℃)での使用中に析出物が析出するので、高いクリープ強度が得られる。
以上、本発明の一実施形態によるフェライト鋼について説明した。本実施形態によれば、溶接部のクリープ強度の低下を抑制できるフェライト鋼が得られる。
次に、本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1及び表2(表1の続き)に示す化学組成の鋼を溶製して鋳造し、得られた鋼片を表3に示す条件で熱間圧延し、空冷した。なお、化学組成の残部はFe及び不純物である。また、熱間圧延前の加熱温度はいずれも1150℃、熱間圧延のトータル圧下率はいずれも80%とした。熱間圧延後はいずれも空冷した。
空冷後、焼準し及び/又は熱処理を実施した。なお、鋼No.1,8,9,13,17,24は、焼準し及び熱処理のいずれも実施しなかった。焼準しを実施した場合は、表3に示す温度・時間で保持した後、空冷した。熱処理を実施した場合は、表3に示す温度・時間で保持した後、空冷した。
なお、本実施例では、短時間の実験で効果を確認するため、析出促進のための熱処理の温度を比較的高めに設定している。操業時には、表3の温度よりも低い温度で長時間の熱処理を行うことが好ましいと考えられる。
Figure 0006540111
Figure 0006540111
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クリープ試験前の鋼材を切断し、研磨し、エッチングして、光学顕微鏡により金属組織を観察した。さらに、JIS G0551(2013)に規定された切断法に準拠して、フェライト粒径を測定した。結果を表3に示す。「フェライト粒径」の欄には、フェライト相の面積率が高い鋼についてはフェライト粒径を、フェライト相の面積率が低い鋼についてはフェライト以外の相を、それぞれ記載している。
クリープ強度は、クリープ試験を550℃において300MPa負荷試験、600℃において250MPa、220MPa負荷試験、さらに、650℃において100MPa、80MPa負荷試験を行い、クリープ破断強度を求めた。得られた結果を用いて、ラーソン・ミラー・パラメータにより、600℃、10時間の推定破断強度を評価した。結果を表3に示す。
表1〜表3に示すように、鋼No.1〜16は、本発明の化学組成を満たし、フェライト相の面積率が95%以上であり、フェライト粒径が50μm以下であった。また、これらの鋼は、マルテンサイトやフェライト・パーライト、ベイナイト組織を有する比較例と比較して、同等以上の推定破断強度を有していた。
鋼No.17及び18は、フェライト相の面積率が95%未満であった。これは、Co含有量が少なかったためと考えられる。
鋼No.19〜21は、フェライト相の面積率が95%未満であった。鋼No.19はC及びCr含有量が多すぎたため、又はCoを含有しなかったため、鋼No.20はC含有量が多すぎたため、又はCoを含有しなかったため、鋼No.21はCr含有量が多すぎたため、又はCo含有量が少なすぎたためと考えられる。
鋼No.22〜24は、フェライト相の面積率が95%未満であった。鋼No.22はC含有量が多すぎたため、又はCo若しくはW含有量が少なすぎたため、鋼No.23はC若しくはW含有量が多すぎたため、又はCo含有量が少なすぎたため、鋼No.24は、Co含有量が少なすぎたためと考えられる。
鋼No.25及び26は、フェライト相の面積率が95%未満であった。鋼No.25は、比較的C含有量及びCr含有量が多いため一部ベイナイト変態を引き起こし、さらに、N含有量が多すぎたため、粗大なCrの窒化物が析出し、クリープ強度の低下を起こしたと考えられる。鋼No.26はCoを含有しなかったためと考えられる。
本発明によれば、溶接熱影響部のクリープ強度低下を抑制できるフェライト組織が得られる。また、多量のCr、Mo、及び、希少元素を添加しなくても、従来と同等以上のクリープ強度を得ることができる。その結果、ボイラ、化学工業などで使用する耐熱鋼を安価に提供することが可能になるので、本発明は、産業上の利用可能性が極めて高いものである。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.05%以下、
    Si:1.00%以下、
    Mn:0.30〜0.70%、
    Ti:0.010〜0.10%
    N :0.010〜0.050%、
    Co:5.00〜12.00%、
    W :0.50〜5.00%、
    B :0.0025〜0.020%、
    P :0.03%以下、
    S :0.015%以下、
    Al:0.03%以下、
    Cu:0.01%以下、
    Ni:0.01%以下、
    Cr:0〜11.50%、
    Mo:0〜2.00%、
    V :0〜0.50%、
    Nb:0〜1.00%、
    Ta:0〜1.00%、
    Zr:0〜0.10%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    フェライト相の面積率が95%以上であり、前記フェライト相の平均フェライト粒径が50μm未満である組織を有する、フェライト鋼。
  2. 請求項1に記載のフェライト鋼であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.01〜11.50%、
    Mo:0.01〜2.00%、
    V :0.01〜0.50%、
    Nb:0.01〜1.00%、及び
    Ta:0.01〜1.00%、
    からなる群から選択される1又は2以上の元素を含有する、フェライト鋼。
  3. 請求項1又は2に記載のフェライト鋼であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Zr:0.001〜0.10%、
    を含有する、フェライト鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェライト鋼の製造方法であって
    熱間圧延後、1100℃以下の温度で熱処理する、フェライト鋼の製造方法
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