以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[実施形態1]
(VリブドベルトB)
図1及び2は、実施形態1に係るVリブドベルトBを示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられるエンドレスの動力伝達部材である。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト外周側の背面ゴム層13との三層構造に構成されたゴム製のVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10における接着ゴム層12の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように第1の繊維部材としての心線14が埋設されている。Vリブドベルト本体10における圧縮ゴム層11のベルト内周側には、その表面を被覆するように第2の繊維部材としてのリブ補強布15が貼設されている。なお、背面ゴム層13の代わりに背面補強布が設けられ、Vリブドベルト本体10が圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12の二重層に構成されていてもよい。
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ16がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ16は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並列するように設けられている。各Vリブ16は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ16の数は例えば3〜6個である(図1では6個)。接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されており、その厚さが例えば1.0〜2.5mmである。背面ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば0.4〜0.8mmである。背面ゴム層13の表面には、背面駆動時の音発生を抑制する観点から、織布パターンが設けられていることが好ましい。圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13は、ゴム成分に種々のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンコポリマー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマーなどのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうち1種又は2種以上のブレンドゴムであることが好ましい。圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分は同一であることが好ましい。ゴム配合剤としては、補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物は、同一であっても、また、異なっていても、どちらでもよい。
心線14は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等で形成された撚り糸で構成されている。心線14の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。心線14には、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するための接着処理が施されている。
リブ補強布15は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等の布材で構成されている。リブ補強布15は、Vリブ16の表面に沿った被覆を行う観点から、伸縮糸を用いた織布や編物のような伸縮性に富む布材であることが好ましい。リブ補強布15の厚さは例えば0.3〜1.0mmである。
リブ補強布15は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するため、成形加工前に接着処理が施されている。具体的には、後述のように、リブ補強布15には、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という。)に浸漬して加熱するRFL接着処理が施されている。これにより、リブ補強布15は、図3に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層17aを介してVリブドベルト本体10に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層17aの下に下地接着層が設けられていることが好ましい。また、RFL接着処理の後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及びVリブドベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理が施され、RFL接着層17aの上にゴム糊接着層が設けられていてもよい。
RFL接着層17aは、RFL水溶液に含まれる固形分により形成されており、レゾルシン・ホルマリン樹脂(RF樹脂)とゴムラテックス由来のゴム成分とを含む。また、RFL接着層17aはセルロース系微細繊維を含む。RFL接着層17aがセルロース系微細繊維を含むことにより、リブ補強布15のVリブドベルト本体10の圧縮ゴム層11への高い接着力を得ることができる。ここで、本願における「微細繊維」とは、繊維径が1.0μm以下の繊維を意味する。
セルロース系微細繊維は、植物繊維を細かくほぐすことで得られる植物細胞壁の骨格成分で構成されたセルロース微細繊維を由来とする繊維材料である。セルロース系微細繊維の原料植物としては、例えば、木、竹、稲(稲わら)、じゃがいも、サトウキビ(バガス)、水草、海藻等が挙げられる。これらのうち木が好ましい。
セルロース系微細繊維は、セルロース微細繊維自体であっても、また、疎水化処理された疎水化セルロース微細繊維であっても、どちらでもよい。また、セルロース系微細繊維として、セルロース微細繊維自体と疎水化セルロース微細繊維とを併用してもよい。分散性の観点からは、セルロース系微細繊維は、疎水化セルロース微細繊維を含むことが好ましい。疎水化セルロース微細繊維としては、セルロースの水酸基の一部又は全部が疎水性基に置換されたセルロース微細繊維、及び表面処理剤によって疎水化表面処理されたセルロース微細繊維が挙げられる。
セルロースの水酸基の一部又は全部が疎水性基に置換されたセルロース微細繊維を得るための疎水化としては、例えば、エステル化(アシル化)(アルキルエステル化、複合エステル化、β−ケトエステル化など)、アルキル化、トシル化、エポキシ化、アリール化等が挙げられる。これらのうちエステル化が好ましい。具体的には、エステル化された疎水化セルロース微細繊維は、セルロースの水酸基の一部又は全部が、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸、若しくは、そのハロゲン化物(特に塩化物)によりアシル化されたセルロース微細繊維である。表面処理剤によって疎水化表面処理されたセルロース微細繊維を得るための表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。
セルロース系微細繊維は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、繊維径の分布が広いことが好ましい。その繊維径の分布の下限は、その観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下である。上限は、同じ観点から、好ましくは500nm以上、より好ましくは700nm以上、更に好ましくは1μm以上である。セルロース系微細繊維の繊維径の分布範囲は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、50〜500nmを含むことが好ましく、20nm〜700mmを含むことがより好ましく、10nm〜1μmを含むことが更に好ましい。
セルロース系微細繊維の平均繊維径は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは700nm以下、より好ましくは100nm以下である。
セルロース系微細繊維の繊維径の分布は、セルロース系微細繊維を含む層の試料を凍結粉砕した後、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると共に、50本のセルロース系微細繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その測定結果に基づいて求められる。また、セルロース系微細繊維の平均繊維径は、その任意に選択した50本のセルロース系微細繊維の繊維径の数平均として求められる。
セルロース系微細繊維は、機械的解繊手段によって製造された高アスペクト比のものであっても、また、化学的解繊手段によって製造された針状結晶のものであっても、どちらでもよい。これらのうち、繊維径の分布が広いという観点からは、機械的解繊手段によって製造されたものが好ましい。また、セルロース系微細繊維として、機械的解繊手段によって製造されたものと化学的解繊手段によって製造されたものとを併用してもよい。機械的解繊手段に用いる解繊装置としては、例えば、二軸混練機などの混練機、高圧ホモジナイザー、グラインダー、ビーズミル等が挙げられる。化学的解繊手段に用いる処理としては、例えば、酸加水分解処理等が挙げられる。
RFL接着層17aでは、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。
RFL接着層17aにおけるセルロース系微細繊維の含有量は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
RFL接着層17aにおけるゴム成分100質量部に対するセルロース系微細繊維の含有量は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
なお、RFL接着層17aには、繊維径が10μm以上の短繊維が含まれていないことが好ましいが、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への接着性を阻害しない範囲でかかる短繊維が含まれていてもよい。
以上の構成の実施形態1に係るVリブドベルトBによれば、リブ補強布15とベルト本体10との間に設けられたRFL接着層17aがセルロース系微細繊維を含むことにより、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着力を得ることができる。その結果、Vリブ16へのクラックの発生が効果的に抑制されることとなり、優れた耐久性を得ることができる。加えて、乾燥時と湿潤時とでリブ補強布15の表面の摩擦係数の差が小さい性状が得られることから、被水時における異音の発生を抑制することができる。
図4は、実施形態1に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置20は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
この補機駆動ベルト伝動装置20では、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ21が設けられ、そのパワーステアリングプーリ21の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ22が設けられている。また、パワーステアリングプーリ21の左下方には平プーリのテンショナプーリ23が設けられており、そのテンショナプーリ23の下方には平プーリのウォーターポンププーリ24が設けられている。更に、テンショナプーリ23の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ25が設けられており、そのクランクシャフトプーリ25の右下方にリブプーリのエアコンプーリ26が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、或いは、ナイロン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
そして、この補機駆動ベルト伝動装置20では、VリブドベルトBは、Vリブ16側が接触するようにパワーステアリングプーリ21に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ23に巻き掛けられた後、Vリブ16側が接触するようにクランクシャフトプーリ25及びエアコンプーリ26に順に巻き掛けられ、更に、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ24に巻き掛けられ、そして、Vリブ16側が接触するようにACジェネレータプーリ22に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ21に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
<VリブドベルトBの製造方法>
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について、図5〜10に基づいて説明する。
図5及び6は、実施形態1に係るVリブドベルトBの製造に用いるベルト成形型30を示す。
このベルト成形型30は、同心状に設けられた、各々、円筒状の内型31及び外型32を備えている。
内型31はゴム等の可撓性材料で形成されている。外型32は金属等の剛性材料で形成されている。外型32の内周面は成型面に構成されており、その外型32の内周面には、Vリブ16の形状と同一のVリブ形成溝33が軸方向に一定ピッチで設けられている。外型32には、水蒸気等の熱媒体や水等の冷媒体を流通させて温調する温調機構が設けられている。また、内型31を内部から加圧膨張させるための加圧手段が設けられている。
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法は、材料準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上げ工程を有する。
<材料準備工程>
−圧縮ゴム層用、接着ゴム層用、及び背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’−
ゴム成分に各種のゴム配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層用、接着ゴム層用、及び背面ゴム層用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’を作製する。
−心線14’−
心線14’に対して接着処理を施す。具体的には、心線13’に、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。なお、RFL接着処理前にゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理を施してもよい。
−リブ補強布15’−
リブ補強布15’に対して接着処理を施す。具体的には、リブ補強布15’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。なお、RFL接着処理後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及びVリブドベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理を施してもよい。
《下地接着処理》
下地接着処理液は、例えば、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液である。下地接着処理液の液温は例えば20〜30℃である。下地接着処理液の固形分濃度は、好ましくは20質量%以下である。
下地接着処理液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。下地接着処理液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。下地接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。リブ補強布15’には下地接着処理剤が付着するが、その付着量(目付量)は、リブ補強布15’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば0.5〜8質量%である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスと共にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を混合した水溶液である。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは6.0質量%以上、より好ましくは9.0質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば100〜180℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜5分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。リブ補強布15’にはRFL接着層17aが付着するが、その付着量(目付量)は、リブ補強布15’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
<成形工程>
図7に示すように、表面が平滑な円筒ドラム34上にゴムスリーブ35を被せ、その外周上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線14’を円筒状の内型31に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付け、その表面をリブ補強布15’で被覆する。このとき、ゴムスリーブ35上には積層成形体B’が形成される。
<架橋工程>
積層成形体B’を設けたゴムスリーブ35を円筒ドラム34から外し、図8に示すように、それを外型32の内周面側に内嵌め状態にセットした後、図9に示すように、内型31を外型32にセットされたゴムスリーブ35内に位置付けて密閉する。
次いで、外型32を加熱すると共に、内型31の密封された内部に高圧空気等を注入して加圧する。このとき、内型31が膨張し、外型32の成型面に、積層成形体B’におけるリブ補強布15’が沿うように設けられると共に、未架橋ゴムシート11’,12’,13’が圧縮されて進入し、また、それらの架橋が進行して複合一体化し、且つ心線14’も複合一体化し、最終的に、図10に示すように、円筒状のベルトスラブSが成型される。なお、ベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、及び成型時間は例えば10〜60分である。
<仕上げ工程>
内型31の内部を減圧して密閉を解き、内型31と外型32との間でゴムスリーブ35を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定幅に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが製造される。
[実施形態2]
(VリブドベルトB)
実施形態2に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)は、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1及び2に基づいて説明する。
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、リブ補強布15には、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理、並びにゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及びVリブドベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理が施されている。これにより、リブ補強布15は、図11に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層17a及びゴム糊接着処理により形成されたゴム糊接着層17bを有する接着層17を介してVリブドベルト本体10に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層17aの下に下地接着層が設けられていることが好ましい。
RFL接着層17aは、実施形態1と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
ゴム糊接着層17bは、ゴム糊に含まれる固形分のゴム組成物により形成されており、そして、ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物は、ゴム成分にセルロース系微細繊維に加えて各種のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したものである。ゴム糊接着層17bがセルロース系微細繊維を含むことにより、リブ補強布15のVリブドベルト本体10の圧縮ゴム層11への高い接着力を得ることができる。
ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンコポリマー(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマーなどのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物のゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上のブレンドゴムであることが好ましい。ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物のゴム成分は、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分と同一であっても、また、異なっていても、どちらでもよい。
ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物に含まれるセルロース系微細繊維は、実施形態1におけるRFL接着層17aに含まれるのと同一の構成である。ゴム糊接着層17bでは、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。
ゴム糊接着層17bにおけるセルロース系微細繊維の含有量は、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
ゴム配合剤としては、補強材、オイル、加工助剤、加硫促進助剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して50〜90質量部であることが好ましい。
オイルとしては、例えば、石油系軟化剤、パラフィンワックスなどの鉱物油系オイル、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落下生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系オイル等が挙げられる。オイルは、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。オイルの含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば20〜40質量部である。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加工助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜2質量部である。
加硫促進助剤としては、例えば、酸化マグネシウムや酸化亜鉛(亜鉛華)などの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加硫促進助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
架橋剤としては、硫黄及び有機過酸化物が挙げられる。架橋剤として、硫黄が配合されていてもよく、また、有機過酸化物が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤の配合量は、硫黄の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部であり、有機過酸化物の場合、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部である。
加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系(例えばMBT、MBTSなど)、チウラム系(例えばTT、TRAなど)、スルフェンアミド系(例えばCZなど)、ジチオカルバミン酸塩系(例えばBZ−Pなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうち1種又は2種以上であることが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば2〜5質量部である。
なお、ゴム糊接着層17bを形成するゴム組成物には、繊維径が10μm以上の短繊維が含まれていないことが好ましいが、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への接着性を阻害しない範囲でかかる短繊維が含まれていてもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態2に係るVリブドベルトBによれば、リブ補強布15とベルト本体10との間に設けられた接着層17が有するゴム糊接着層17bがセルロース系微細繊維を含むことにより、リブ補強布15のVリブドベルト本体10への高い接着力を得ることができる。その結果、Vリブ16へのクラックの発生が効果的に抑制されることとなり、優れた耐久性を得ることができる。加えて、乾燥時と湿潤時とでリブ補強布15の表面の摩擦係数の差が小さい性状が得られることから、被水時における異音の発生を抑制することができる。
(VリブドベルトBの製造方法)
実施形態2に係るVリブドベルトBの製造方法では、材料準備工程において、リブ補強布15’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理に加えて、ゴム糊に浸漬して乾燥させるソーキングゴム糊接着処理、及びVリブドベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させるコーティングゴム糊接着処理のうち1種又は2種のゴム糊接着処理を施す。なお、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。
下地接着処理は、実施形態1と同一である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスを混合した水溶液である。なお、RFL接着層17aにセルロース系微細繊維を含める場合には、実施形態1と同様、RFL水溶液にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を含めればよい。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは30質量%以下である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば100〜180℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜5分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。リブ補強布15’にはRFL接着層17aが付着するが、その付着量(目付量)は、リブ補強布15’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
《ゴム糊接着処理》
ゴム糊は、ゴム糊接着層17bを形成するセルロース系微細繊維を含むゴム組成物の架橋前の未架橋ゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液である。ゴム糊の作製は以下のようにして行う。
まず、素練りしているゴム成分にセルロース系微細繊維を投入して混練することにより分散させる。
ここで、ゴム成分へのセルロース系微細繊維の分散方法としては、例えば、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を、オープンロールで素練りしているゴム成分に投入し、それらを混練しながら水分を気化させる方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)とゴムラテックスとを混合して水分を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を溶剤に分散させた分散体とゴム成分を溶剤に溶解させた溶液を混合して溶剤を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を凍結乾燥させて粉砕したものを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を素練りしているゴム成分に投入する方法等が挙げられる。
次いで、ゴム成分とセルロース系微細繊維とを混練しながら、各種のゴム配合剤を投入して混練を継続することにより未架橋ゴム組成物を作製する。
そして、その未架橋ゴム組成物を溶剤に投入し、均一な溶液となるまで攪拌することによりゴム糊を作製する。ゴム糊の液温は例えば20〜30℃である。
ゴム糊の固形分濃度は、ソーキングゴム糊接着処理用では、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。コーティングゴム糊接着処理用では、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
ソーキングゴム糊接着処理の場合、ゴム糊への浸漬時間は例えば1〜3秒である。ゴム糊への浸漬後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。ソーキングゴム糊接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。リブ補強布15’にはゴム糊接着層17bが付着するが、その付着量(目付量)は、リブ補強布15’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
コーティングゴム糊接着処理の場合、コーティング後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。コーティングゴム糊接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。リブ補強布15’にはゴム糊接着層17bが付着するが、その付着量(目付量)は、リブ補強布15’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
その他の方法は実施形態1と同一である。
[実施形態3]
(VリブドベルトB)
実施形態3に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)は、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1及び2に基づいて説明する。
実施形態3に係るVリブドベルトBでは、心線14には、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理が施されている。これにより、心線14は、図12に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層18aを介してVリブドベルト本体10の接着ゴム層11に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層18aの下に下地接着層が設けられていることが好ましい。また、RFL接着処理の後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理が施され、RFL接着層の上にゴム糊接着層が設けられていてもよい。
RFL接着層18aは、RFL水溶液に含まれる固形分により形成されており、RF樹脂とゴムラテックス由来のゴム成分とを含む。また、RFL接着層18aはセルロース系微細繊維を含む。RFL接着層18aがセルロース系微細繊維を含むことにより、心線14のVリブドベルト本体10の接着ゴム層12への高い接着力を得ることができる。RFL接着層18aは、実施形態1におけるリブ補強布15とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層17aと同一の構成であり、従って、セルロース系微細繊維も、実施形態1におけるRFL接着層17aに含まれるのと同一の構成である。
RFL接着層18aでは、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。RFL接着層18aにおけるセルロース系微細繊維の含有量は、心線14のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。RFL接着層18aにおけるゴム成分100質量部に対するセルロース系微細繊維の含有量は、心線14のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
なお、リブ補強布15とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層は、実施形態1と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。また、リブ補強布15とVリブドベルト本体10との間にゴム糊接着層が設けられている場合、ゴム糊接着層は、実施形態2と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態3に係るVリブドベルトBによれば、心線14とベルト本体10との間に設けられたRFL接着層18aがセルロース系微細繊維を含むことにより、心線14のVリブドベルト本体10への高い接着力を得ることができる。その結果、ベルト走行時における層間のセパレーションの発生が抑制されることとなり、優れた耐久性を得ることができる。
(VリブドベルトBの製造方法)
実施形態3に係るVリブドベルトBの製造方法では、材料準備工程において、心線14’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理を施す。また、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。なお、RFL接着処理後に、ゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理を施してもよい。
《下地接着処理》
下地接着処理液は、例えば、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液である。下地接着処理液の液温は例えば20〜30℃である。下地接着処理液の固形分濃度は、好ましくは20質量%以下である。
下地接着処理液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。下地接着処理液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。下地接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。心線14’には下地接着処理剤が付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば0.5〜8質量%である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスと共にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を混合した水溶液である。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは6質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。心線14’にはRFL接着層18aが付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
[実施形態4]
(VリブドベルトB)
実施形態4に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)は、外観構成が実施形態1と同一であるので、以下では図1及び2に基づいて説明する。
実施形態4に係るVリブドベルトBでは、心線14には、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理、並びにゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理が施されている。これにより、心線14は、図13に示すように、RFL接着処理により形成されたRFL接着層18a及びゴム糊接着処理により形成されたゴム糊接着層18bを有する接着層18を介してVリブドベルト本体10の接着ゴム層11に接着されている。なお、RFL接着処理の前には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂(ブロックイソシアネート)等の下地接着処理剤をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液、或いは、水に分散させた分散液からなる下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理が施され、RFL接着層18aの下に下地接着層が設けられていることが好ましい。
RFL接着層18aは、実施形態3と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
ゴム糊接着層18bは、ゴム糊に含まれる固形分のゴム組成物により形成されており、そして、ゴム糊接着層18bを形成するゴム組成物は、ゴム成分にセルロース系微細繊維に加えて各種のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したものである。ゴム糊接着層18bがセルロース系微細繊維を含むことにより、心線14のVリブドベルト本体10の接着ゴム層12への高い接着力を得ることができる。ゴム糊接着層18bは、実施形態2におけるリブ補強布15とVリブドベルト本体10との間に設けられたゴム糊接着層17bと同一の構成であり、従って、セルロース系微細繊維は、実施形態1におけるRFL接着層17aに含まれるのと同一の構成である。
ゴム糊接着層18bでは、セルロース系微細繊維は特定の方向に配向しておらず、無配向である。ゴム糊接着層18bにおけるセルロース系微細繊維の含有量は、心線14のVリブドベルト本体10への高い接着性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
なお、リブ補強布15とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層は、実施形態1と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。また、リブ補強布15とVリブドベルト本体10との間にゴム糊接着層が設けられている場合、ゴム糊接着層は、実施形態2と同様にセルロース系微細繊維を含んでいても、また、セルロース系微細繊維を含んでいなくても、どちらでもよい。
その他の構成は実施形態1と同一である。
以上の構成の実施形態4に係るVリブドベルトBによれば、心線14とベルト本体10との間に設けられた接着層18が有するゴム糊接着層18bがセルロース系微細繊維を含むことにより、心線14のVリブドベルト本体10への高い接着力を得ることができる。その結果、ベルト走行時における層間のセパレーションの発生が抑制されることとなり、優れた耐久性を得ることができる。
(VリブドベルトBの製造方法)
実施形態4に係るVリブドベルトBの製造方法では、材料準備工程において、心線14’に対して、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL接着処理、及びゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊接着処理を施す。なお、RFL接着処理前に下地接着処理液に浸漬して加熱する下地接着処理を施すことが好ましい。
下地接着処理は、実施形態3と同一である。
《RFL接着処理》
RFL水溶液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物にゴムラテックスを混合した水溶液である。なお、RFL接着層にセルロース系微細繊維を含める場合には、実施形態3と同様、RFL水溶液にセルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を含めればよい。RFL水溶液の液温は例えば20〜30℃である。RFL水溶液の固形分濃度は、好ましくは30質量%以下である。
レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は例えばR/F=1/1〜1/2である。ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(Vp・St・SBR)、クロロプレンゴムラテックス(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス(CSM)等が挙げられる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比は例えばRF/L=1/5〜1/20である。
RFL水溶液への浸漬時間は例えば1〜3秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(炉温度)は例えば200〜250℃である。加熱時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。RFL接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。心線14’にはRFL接着層18aが付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
《ゴム糊接着処理》
ゴム糊は、ゴム糊接着層18bを形成するセルロース系微細繊維を含むゴム組成物の架橋前の未架橋ゴム組成物をトルエン等の溶剤に溶解させた溶液である。ゴム糊の作製は以下のようにして行う。
まず、素練りしているゴム成分にセルロース系微細繊維を投入して混練することにより分散させる。
ここで、ゴム成分へのセルロース系微細繊維の分散方法としては、例えば、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を、オープンロールで素練りしているゴム成分に投入し、それらを混練しながら水分を気化させる方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)とゴムラテックスとを混合して水分を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を溶剤に分散させた分散体とゴム成分を溶剤に溶解させた溶液を混合して溶剤を気化させて得られたセルロース系微細繊維/ゴムのマスターバッチを、素練りしているゴム成分に投入する方法、セルロース系微細繊維を水に分散させた分散体(ゲル)を凍結乾燥させて粉砕したものを、素練りしているゴム成分に投入する方法、疎水化したセルロース系微細繊維を素練りしているゴム成分に投入する方法等が挙げられる。
次いで、ゴム成分とセルロース系微細繊維とを混練しながら、各種のゴム配合剤を投入して混練を継続することにより未架橋ゴム組成物を作製する。
そして、その未架橋ゴム組成物を溶剤に投入し、均一な溶液となるまで攪拌することによりゴム糊を作製する。ゴム糊の液温は例えば20〜30℃である。
ゴム糊の固形分濃度は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは14質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。
ゴム糊への浸漬時間は例えば1〜3秒である。ゴム糊への浸漬後の乾燥温度(炉温度)は例えば50〜100℃である。乾燥時間(炉内滞在時間)は例えば1〜3分である。ゴム糊接着処理の回数は、1回のみであっても、また、2回以上であっても、どちらでもよい。心線13’にはゴム糊接着層18bが付着するが、その付着量(目付量)は、心線14’を形成する繊維材料の質量を基準として例えば2〜5質量%である。
その他の方法は実施形態1と同一である。
[その他の実施形態]
実施形態1及び2では、繊維部材としてのリブ補強布15とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層17a又はゴム糊接着層17bがセルロース系微細繊維を含む構成とし、また、実施形態3及び4では、繊維部材としての心線14とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層18a又はゴム糊接着層18bがセルロース系微細繊維を含む構成としたが、特にこれらに限定されるものではなく、背面ゴム層13の代わりに設けられた背面補強布とVリブドベルト本体10との間に設けられたRFL接着層及び/又はゴム糊接着層がセルロース系微細繊維を含む構成であってもよい。
実施形態1〜4では、VリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、それ以外の摩擦伝動ベルトである図14(a)に示すローエッジVベルトB、図14(b)に示すラップドVベルトB、図14(c)に示す平ベルトBであって、それらの表面の補強布15及び/又は心線14とベルト本体10との間に設けられたRFL接着層及び/又はゴム糊接着層がセルロース系微細繊維を含む構成であってもよい。また、噛み合い伝動ベルトである図14(d)に示す歯付ベルトBであって、その表面の補強布15及び/又は心線14とベルト本体10との間に設けられたRFL接着層及び/又はゴム糊接着層がセルロース系微細繊維を含む構成であってもよい。特に歯付ベルトBの場合には、補強布15のベルト本体10への高い接着力を得ることができ、その結果、ベルト走行時における歯欠けの発生が抑制されることとなり、優れた耐久性を得ることができる。
(RFL水溶液)
以下のRFL水溶液1〜7を調製した。それぞれの構成を表1にも示す。
<RFL水溶液1>
水1192.4gに、NaOH4.8g、レゾルシン47.7g、及びホルマリン(37%)47.7gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社製 商品名:ニッポール2518FS 固形分(ゴム成分)濃度:40質量%)953.9gに水715.4gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、機械的解繊手段によって製造され、また、疎水化処理されていない木材を原料とするセルロース微細繊維を水に分散させた分散体(スギノマシン社製 商品名:ビンフィス 固形分濃度:10質量%)38.2gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液1を作製した。RFL水溶液1の固形分濃度は15.2質量%である。RFL水溶液1におけるセルロース微細繊維の含有量は0.13質量%である。RFL水溶液1の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は0.84質量%である。RFL水溶液1の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は1質量部である。
<RFL水溶液2>
水1162.8gに、NaOH4.7g、レゾルシン46.5g、及びホルマリン(37%)46.5gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス930.2gに水697.7gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、セルロース微細繊維の水分散体111.6gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液2を作製した。RFL水溶液2の固形分濃度は15.1質量%である。RFL水溶液2におけるセルロース微細繊維の含有量は0.37質量%である。RFL水溶液2の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は2.47質量%である。RFL水溶液2の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は3質量部である。
<RFL水溶液3>
水1134.6gに、NaOH4.5g、レゾルシン45.4g、及びホルマリン(37%)45.4gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス907.7gに水680.8gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、セルロース微細繊維の水分散体181.5gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液3を作製した。RFL水溶液3の固形分濃度は14.9質量%である。RFL水溶液3におけるセルロース微細繊維の含有量は0.61質量%である。RFL水溶液3の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は4.1質量%である。RFL水溶液3の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は5質量部である。
<RFL水溶液4>
水700.3gに、NaOH2.8g、レゾルシン28.0g、及びホルマリン(37%)28.0gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス560.2gに水1456.6gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、セルロース微細繊維の水分散体224.1gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液4を作製した。RFL水溶液4の固形分濃度は9.6質量%である。RFL水溶液4におけるセルロース微細繊維の含有量は0.75質量%である。RFL水溶液4の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は7.8質量%である。RFL水溶液4の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は10質量部である。
<RFL水溶液5>
水471.4gに、NaOH1.9g、レゾルシン18.9g、及びホルマリン(37%)18.9gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス377.1gに水1885.6gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、セルロース微細繊維の水分散体226.3gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液5を作製した。RFL水溶液5の固形分濃度は6.7質量%である。RFL水溶液5におけるセルロース微細繊維の含有量は0.75質量%である。RFL水溶液5の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は11.2質量%である。RFL水溶液5の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は15質量部である。
<RFL水溶液6>
水561.4gに、NaOH2.2g、レゾルシン22.5g、及びホルマリン(37%)22.5gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス449.1gに水1672.9gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液を得た。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
得られたRFL水溶液に、セルロース微細繊維の水分散体269.5gを混合して12時間攪拌することによりRFL水溶液6を作製した。RFL水溶液6の固形分濃度は8.0質量%である。RFL水溶液6におけるセルロース微細繊維の含有量は0.90質量%である。RFL水溶液6の固形分におけるセルロース微細繊維の含有量は11.3質量%である。RFL水溶液6の固形分のゴム成分100質量部に対するセルロース微細繊維の含有量は15質量部である。
<RFL水溶液7>
水1207.7gに、NaOH4.8g、レゾルシン48.3g、及びホルマリン(37%)48.3gを混合して3時間攪拌することによりRF水溶液を得た。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比(R/F)は0.74である。
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス966.2gに水724.6gを混合し、そこに上記RF水溶液を滴下して混合して5時間攪拌することによりRFL水溶液7を作製した。レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の固形分質量比(RF/L)は0.17である。
(Vリブドベルト)
RFL水溶液1〜7のそれぞれを用い、ナイロン製の編物に対して約2秒浸漬し、ニップロールで脱水して風乾した後に160℃で5分加熱するRFL接着処理を施した。
そして、RFL水溶液1〜6を用いて接着処理した編物をリブ補強布とし、上記実施形態1と同様にして、Vリブの数が3個及び6個の実施例1〜6のVリブドベルトを作製した。また、RFL水溶液7を用いて接着処理した編物をリブ補強布とし、同様にVリブの数が3個及び6個の比較例のVリブドベルトを作製した。
なお、圧縮ゴム層、接着ゴム層、及び背面ゴム層をEPDMゴム組成物で形成し、また、接着処理を施したポリエステル繊維製の撚り糸で心線を形成した。
(試験評価方法)
<外観>
実施例1〜6及び比較例のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物の外観を目視観察した。
<剥離接着力>
実施例1〜6及び比較例のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物を、EPDMゴム組成物で形成された幅25.4mm及び厚さ6mmのゴム平板の表面に加硫接着させた接着試験用試験片を作製し、25℃の雰囲気温度下でゴム平板から90°の方向に編物を剥離するときの剥離接着力を測定した。
<平均繊維径・繊維径分布>
実施例1〜6のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物から採取したRFL接着層の試料を凍結粉砕した後、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると共に、50本の繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その数平均を求めて平均繊維径とした。また、50本のセルロース微細繊維のうち繊維径の最大値及び最小値を求めた。
<摩擦係数>
実施例1〜6及び比較例のそれぞれのVリブドベルトの内周側の表面部分から平面視5mm角の試験片を切り出した。そして、試験片のリブ補強布側表面を回転する鉄板に圧接させると共に、その際に発生する摩擦力を測定し、それに基づいて乾燥時の摩擦係数を算出した。また、鉄板上に水を滴下しながら同様の試験を実施して湿潤時の摩擦係数を算出し、乾燥時の摩擦係数との差も算出した。
<耐久性評価ベルト走行試験>
図15は、耐久性評価用ベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
耐久性評価用ベルト走行試験機40は、最上位置に設けられたプーリ径φ120mmの第1従動リブプーリ41と、それと上下方向に並ぶように設けられたプーリ径φ120mmの駆動リブプーリ42と、それらの上下方向中間に設けられたプーリ径φ70mmのアイドラプーリ43と、アイドラプーリ43の右方に設けられたプーリ径φ55mmの第2従動リブプーリ44とを有する。耐久性評価用ベルト走行試験機40には、VリブドベルトBは、Vリブ側が第1従動リブプーリ41、駆動リブプーリ42、及び第2従動リブプーリ44に、並びに、ベルト背面がアイドラプーリ43にそれぞれ接触し、且つ第2従動リブプーリ44及びアイドラプーリ43への巻き掛け角度がそれぞれ90°となるように巻き掛けられる。また、第2従動リブプーリ44は、VリブドベルトBにベルト張力を負荷できるように左右方向に可動に構成されている。
実施例1〜6及び比較例のそれぞれのVリブの数が3個のVリブドベルトBについて、耐久性評価用ベルト走行試験機40の第1従動リブプーリ41、駆動リブプーリ42、アイドラプーリ43、及び第2従動リブプーリ44に巻き掛け、第2従動リブプーリ44を側方に引っ張るように686Nの荷重(デッドウェイトDW)を負荷すると共に第1従動リブプーリ41に11.8kWの回転動力負荷を与え、120℃の雰囲気温度下で駆動リブプーリ42を反時計回りに回転数4900rpmで回転させてベルト走行させた。そして、定期的にベルト走行を停止すると共に、VリブドベルトBにクラックが発生しているか否かを目視確認し、クラックの発生が確認されるまでのベルト走行時間をベルト耐久寿命とした。
<音評価ベルト走行試験>
図16は、音評価用ベルト試験走行機50のプーリレイアウトを示す。
音評価用ベルト試験走行機50は、左下位置に設けられたプーリ径φ80mmの駆動リブプーリ51と、その右側方に設けられたプーリ径φ130mmのフェノール樹脂製の第1従動リブプーリ52と、それらの間に設けられたプーリ径φ80mmの第2従動平プーリ53と、その上方に設けられたプーリ径φ60mmの第3従動リブプーリ54とを有する。音評価用ベルト試験走行機50には、VリブドベルトBは、Vリブ側が駆動リブプーリ51、第1従動リブプーリ52、及び第3従動リブプーリ54に、並びに、背面側が第2従動平プーリ53にそれぞれ接触するように巻き掛けられる。また、第3従動リブプーリ54は、VリブドベルトBにベルト張力を負荷できるように上下方向に可動に構成されている。更に、第1従動リブプーリ52と第2従動リブプーリ53との間には3°のミスアライメントが設けられている。
実施例1〜6及び比較例のそれぞれのVリブの数が6個のVリブドベルトBについて、音評価用ベルト試験走行機50の駆動リブプーリ51、第1従動リブプーリ52、第2従動平プーリ53、及び第3従動リブプーリ54に巻き掛け、第3従動リブプーリ54を上方に引っ張るように380Nの荷重(デッドウェイトDW)を負荷し、5℃の雰囲気温度下で駆動リブプーリ52を750rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。そして、特定の異音が発生するまでのベルト走行時間を音発生走行時間とした。なお、試験は最長500時間で打ち切った。
(試験評価結果)
試験評価結果を表2に示す。
実施例1〜5及び比較例のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物では、均一な外観が認められたが、実施例6のVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物では、不均一な斑状の外観が認められた。これは、RFL水溶液6の粘度が高かったため、編物に付着したRFL水溶液6に泡立ちや空気の混入があったためであると考えられる。
実施例1〜6のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物では、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれている一方、比較例のVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物では、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれていない。そして、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれている前者の方が、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれていない後者よりも剥離接着力が高いことが分かる。これは、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれることにより強度が高められ、ゴムとの接着力が向上するためであると考えられる。
実施例1〜6のそれぞれのVリブドベルトにおいてリブ補強布として用いたRFL接着処理を施した編物では、RFL接着層に含まれるセルロース微細繊維の繊維径の分布が広いことが分かる。
実施例1〜6及び比較例のVリブドベルトのリブ補強布の表面の乾燥時の摩擦係数には大きな差は認められないが、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれている実施例1〜6のVリブドベルトのリブ補強布の表面の湿潤時の摩擦係数は、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれていない比較例のVリブドベルトのリブ補強布の表面の湿潤時の摩擦係数よりも高く、従って、乾燥時と湿潤時とで摩擦係数の差が小さいことが分かる。これは、親水性のセルロース微細繊維が水分を吸収することにより、摩擦係数の低下が抑制されるためであると考えられる。
実施例1〜6のVリブドベルトは、比較例のVリブドベルトよりもベルト耐久寿命が長いことが分かる。これは、実施例1〜6のVリブドベルトでは、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれ、リブ補強布のVリブドベルト本体への接着力が高められることにより、破壊開始点となるクラックの発生が抑制されるためであると考えられる。
実施例1〜6のVリブドベルトは、比較例のVリブドベルトよりも音発生走行時間が大幅に長いことが分かる。これは、実施例1〜6のVリブドベルトでは、RFL接着層にセルロース微細繊維が含まれることにより、リブ補強布の表面の摩擦係数が安定化されるためであると考えられる。