JP6537293B2 - X線トールボット干渉計及びx線トールボット干渉計システム - Google Patents

X線トールボット干渉計及びx線トールボット干渉計システム Download PDF

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Description

本発明は、X線トールボット干渉計及びX線トールボット干渉計システムに関する。
X線位相イメージング法は、X線が被検体を透過することで生じる位相変化を利用した撮像方法である。これまでに提案された、いくつかのX線位相イメージング法の一種として、特許文献1などに記載されているトールボット(Talbot)干渉計がある。
トールボット干渉計は一般的には2枚又は3枚の、周期構造を有する格子(グレーティング)により構成される。これらのうち通常被検体の付近に配置される格子をビームスプリッター格子、通常X線検出器の付近に配置される格子をアナライザー格子、そして通常X線源の付近に配置される格子を線源格子とそれぞれ呼ぶことがある。またこれらの格子として1次元状の周期パターンを有する格子を使用する場合と、2次元的なパターンを有する格子を使用する場合とがある。尚、使用されるX線検出器は通常、検出面に入射するX線の2次元的な強度分布を計測できる検出器である。
ビームスプリッター格子は多くの場合、位相変調型の透過型回折格子である。ビームスプリッター格子に入射したX線は格子の持つ周期構造により回折され、所謂トールボット効果により所定の位置に干渉パターン(格子の自己像とも呼ばれる)を形成する。干渉パターンはX線が被検体を透過した際の位相変化等を反映して変形するため、干渉パターンの強度分布を計測・解析することにより被検体の形状や内部構造の情報を得ることができる。尚、本発明及び本明細書では、被検体によるX線の位相変化を利用して被検体の情報を取得する方法であれば、その情報を画像化しない場合であってもX線位相コントラストイメージング法と呼ぶ。
また、アナライザー格子は多くの場合、X線透過部とX線遮蔽部とが周期的に配列することにより周期的な透過率分布を有するような格子である。アナライザー格子は前述の干渉パターンの出現位置に配置されることにより、格子を透過したX線の強度分布にモアレを発生させる目的で使用される。モアレパターンは干渉パターンの変形を反映しており、かつその周期は無制限に大きくすることができる。したがって、使用する検出器の空間分解能が干渉パターンを直接検出できる程度に高くない場合でも、パターン周期の大きいモアレを検出することにより間接的に干渉パターンの情報を得ることが可能となる。このような干渉パターンと格子との間におけるモアレの発生を利用したトールボット干渉計については特許文献1などに記載されている。
またこのように、アナライザー格子はX線検出器の空間分解能の不足を補う目的で使用されるため、空間分解能が十分に高い検出器を使用する場合にはアナライザー格子の使用は必須ではない。しかしながら、干渉パターンの周期は通常数μm程度であり、一般的なX線検出器では直接検出できない程度に微細であることから、一般的にはアナライザー格子を使用することが多い。
また、線源格子も通常のアナライザー格子と同様に、X線透過部とX線遮蔽部とが周期的に配列した構造を有する格子である。線源格子は通常、X線源(X線発生装置)におけるX線発光点の付近に配置されることにより、仮想的に線状発光部(2次元格子の場合は微小発光点)のアレイを形成する目的で使用される。このようにして形成される各々の線状発光部から発したX線が形成する複数の前述の干渉パターンが、X線光路中に被検体等を置かない状態において互いにパターン周期の整数倍だけずれて重畳する。これにより、多数の干渉パターンが重畳してもパターンが消失せず、全体として高いX線強度と縞ビジビリティを有する周期パターンを形成することができる。このような形の重畳を実現するためには、各格子の格子周期と格子間距離とが一定の条件を満たすように設計する必要がある。また、このような線源格子を使用するトールボット干渉計のことを特にトールボット・ロー干渉計と呼ぶことがある。このような線源格子を使用するトールボット干渉計については特許文献2などに記載されている。尚、以下、単にトールボット干渉計というときは、トールボット・ロー干渉計を含むものとする。
線源格子を使用することにより比較的発光点サイズの大きいX線源の使用が可能となるが、発光点サイズがビジビリティの高い干渉パターンを直接形成することが可能な程度に小さい場合には線源格子の使用は必須ではない。ただし、最も一般的なX線源であるX線管においてこのような微小な発光点を形成することは結果として単位時間当たりのX線発生量を減少させ撮像時間が著しく長くなる傾向がある。よって、X線源としてX線管を用いる場合には線源格子が使用されることが多い。
トールボット干渉計では通常のX線撮像(吸収コントラストイメージング)と同様の原理に基づく像である被検体のX線透過率分布の他、干渉パターンの縞位相分布と、干渉パターンのビジビリティ分布との情報を取得することが一般的である。通常、干渉パターンの縞位相とビジビリティはそれぞれ、被検体を透過したX線の位相分布の空間微分と、微粒子や繊維状構造又は物体のエッジ部等に起因するX線の小角散乱の規模とを概ね反映している。
特許登録4445397号 特許登録5162453号
このように、トールボット・ロー干渉計では線源格子を使用することにより、発光点サイズの大きいX線源を用いても、比較的高いビジビリティを持つ周期パターンを形成することができる。しかしながら、発光点サイズの大きいX線源を使用することによって、互いに(周期パターンの一周期分)位置をずらして重畳される干渉パターンの数が増加するため、幾何学的不鋭効果により被検体像の取得に関する空間分解能が低下することがある。これは、線源格子の、異なる透過部からのX線が被検体の同じ位置に入射し、異なる位置に干渉パターンを形成するためである。
一方、トールボット干渉計ではアナライザー格子を使用することにより、X線検出器が干渉パターンを検出できる程度に高い空間分解能を有していない場合においても、モアレ効果を利用して間接的に干渉パターンの情報を得ることができる。しかしながら、被検体情報は通常のX線撮像と同じ形で検出器の変調伝達関数の影響を受けることから、被検体像の取得に関して十分な空間分解能が得られない場合がある。
そこで本発明の目的の1つは、従来のトールボット干渉計と同じ発光点サイズのX線源を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムを提供することである。また、本発明の別の目的の1つは、従来のトールボット干渉計と同じX線検出器を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムを提供することである。
本発明のX線トールボット干渉計の側面は、複数のX線透過部を有し、X線源からのX線の一部を透過する線源格子と、前記X線透過部からのX線を周期構造により回折し、干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記ビームスプリッター格子からのX線を検出するX線検出器と、前記干渉パターンの一部を遮蔽するアナライザー格子と、を備え、
前記線源格子の前記複数のX線透過部のピッチd が下記式で表されることを特徴とする。

但し、d を前記ビームスプリッター格子の格子周期、n 、mを正の整数、L 01 を前記線源格子と前記ビームスプリッター格子との間の距離、L 12 を前記ビームスプリッター格子と前記X線検出器の検出面又はこれらの間に備えたアナライザー格子との間の距離とする。またα を、

の範囲にある定数とする。但しw を前記X線源におけるX線発光点の発光強度分布の半値全幅とする
また、本発明のX線トールボット干渉計の第二の側面は、複数のX線透過部を有し、X線源からのX線の一部を透過する線源格子と、前記X線透過部からのX線を周期構造により回折し、干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記干渉パターンの一部を遮蔽するアナライザー格子と、前記アナライザー格子からのX線を検出するX線検出器と、を備え、前記線源格子の前記複数のX線透過部のピッチd と前記アナライザー格子の格子周期d とが下記式で表されることを特徴とする。


但し、d を前記ビームスプリッター格子の格子周期、n 、mを正の整数、L 01 を前記線源格子と前記ビームスプリッター格子との間の距離、L 12 を前記ビームスプリッター格子と前記アナライザー格子との間の距離とする。またα を、

の範囲にある定数とする。但しw を前記X線源におけるX線発光点の発光強度分布の半値全幅、w を前記X線検出器に固有の点拡がり関数の半値全幅とする。
本発明のその他の側面は発明を実施するための形態において説明をする。
本発明の一側面によれば、従来のトールボット干渉計と同じ発光点サイズのX線源を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムを提供することができる。
また、本発明の別の一側面によれば、従来のトールボット干渉計と同じX線検出器を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムを提供することができる。
実施形態1のX線トールボット干渉計の模式図。 実施形態1及び2における格子のパターンを示した図。 実施形態1によって得られる干渉パターンのスペクトルの例。 実施形態1における各被検体情報の例。 実施形態1における各被検体情報の例。 比較例1のX線トールボット干渉計の模式図。 比較例1によって得られる干渉パターンのスペクトルの例。 比較例1における被検体情報の例。 実施形態1における各被検体情報の例。 実施形態1によって得られる干渉パターンのスペクトルの例。 実施形態1によって復元される被検体情報のスペクトルの例。 実施形態1において復元される被検体情報の例。 比較例1によって得られる干渉パターンのスペクトルの例。 比較例1によって復元される被検体情報のスペクトルの例。 比較例1において復元される被検体情報の例。 実施形態2のX線トールボット干渉計の模式図。 実施形態2によって復元される被検体情報のスペクトルの例。 実施形態2によって復元される被検体情報の例。 比較例2のX線トールボット干渉計の模式図。 比較例2によって復元される被検体情報のスペクトルの例。 比較例2によって復元される被検体情報の例。
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
実施形態1では、従来のトールボット干渉計と同じ発光点サイズのX線源を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムについて説明をする。また、実施形態2では、従来のトールボット干渉計と同じX線検出器を用いた場合であっても、従来よりも空間分解能の高いトールボット干渉計及びトールボット干渉計システムについて説明をする。
〔実施形態1〕
本実施形態は、線源格子が干渉パターンの搬送波からずれた特定の周波数成分を強調するX線トールボット・ロー干渉計(以下、単に干渉計と呼ぶことがある)に係る。
従来のトールボット・ロー干渉計においては、線源格子は、干渉パターンの搬送波を強調するように構成されている。言い換えると、従来の干渉計は、線源格子が仮想的に形成するX線源アレイの微小X線源のそれぞれが形成する干渉パターン同士が、明部同士と暗部同士が重畳してコントラストを高めるように重畳するように構成されている。一方、本実施形態の干渉計は、干渉パターン同士の明部の一部と暗部の一部とが重畳するように構成されている。以下、詳細に説明をする。
図6は、従来のX線トールボット・ロー干渉計である、比較例1のX線トールボット・ロー干渉計1100の模式図である。X線トールボット干渉計1100は、X線源10と、線源格子12と、ビームスプリッター格子3と、アナライザー格子4と、X線検出器5とを備える。尚、図中には示していないが、撮像時に被検体はビームスプリッター格子3の付近に配置される。被検体はビームスプリッター格子の上流(線源格子12とビームスプリッター格子3との間)に配置されても良いし、下流(ビームスプリッター格子3とアナライザー格子4との間)に配置されても良い。
前述のように、従来のX線トールボット・ロー干渉計では、X線光路中に被検体等を置かない状態において、線源格子の各々のX線透過部から発したX線の作る干渉パターン18a、18b、18c同士が正確にパターン周期dIPc分だけずれて重畳する。すなわち、複数の干渉パターンを重畳する際の相対ずれ量d0C´はdIPcに等しい。これにより、各々の透過部からのX線が形成する干渉パターンの明部同士と暗部同士とが正確に整合する形で重畳する。よって、1つの透過部からのX線が形成する干渉パターンと同様のビジビリティを有しつつ、強度の高い周期パターン(干渉パターンが複数重畳して形成される周期的なパターン)をアナライザー格子上に形成することができる。尚、各々の透過部からのX線が形成する干渉パターン同士がパターン周期の整数倍だけずれて重畳しても干渉パターンの明部同士と暗部同士が整合する形で重畳するため、干渉パターン同士のずれ量はパターン周期の整数倍でも良い。
線源格子の各々の透過部からのX線が形成する干渉パターン同士が正確にパターン周期もしくはその整数倍ずれて重畳するためには、線源格子の格子周期d0C

とすれば良い。但し、nは正の整数、L01Cは線源格子とビームスプリッター格子との距離、L12Cはビームスプリッター格子とアナライザー格子との距離である。各構成間の距離は、各構成の中心間の距離とする。nは、干渉パターン同士がパターン周期の何周期分ずれて重畳するかを示す値であり、n=1で、図6の干渉パターン18a、18b、18cのように、干渉パターン同士がパターン周期分だけずれて重畳する。
一方、本実施形態のX線トールボット干渉計100は、図1に示すように、線源格子の各々の透過部からのX線が形成する干渉パターン8a、8b、8c同士が被検体の無い状態におけるパターン周期dIPとは異なる距離だけずれて重畳する。つまり、本実施形態のトールボット干渉計100は、各々の透過部からのX線が形成する干渉パターン同士のずれ量d´≠干渉パターン周期dIPである。よって、各々の開口から発したX線の作る干渉パターンの明部同士と暗部同士とが正確に整合せずに、ずれて重なり合う。この時、線源格子の格子周期dは干渉パターン同士が整合する条件からのずれ率αを用いて、

と表せる。ここで、L01は線源格子とビームスプリッター格子との距離、L12はビームスプリッター格子とアナライザー格子との距離である。またここで、αは負値も取り得るものとするが、α≠0とする。尚、αが0の時は、線源格子の設計条件は比較例1と等しくなる。また、通常のトールボット・ロー干渉計において干渉パターン同士のずれ量がパターン周期の2以上の整数倍であっても良い。これと同様に、本実施形態のトールボット・ロー干渉計においても干渉パターン同士のずれ量をパターン周期の2以上の整数倍に対して一定のずれ率を与える形で設計しても良い。しかしながら、このような設計(つまり、nが2以上の整数であること)には線源格子全体のX線透過率が低下するという欠点があり、一般には好ましくないことから、以下、n=1の場合を中心に説明する。尚、X線トールボット干渉計がビームスプリッター格子とX線検出器との間にアナライザー格子を備えない場合は、L12C及びL12はビームスプリッター格子とX線検出器の検出面との距離とすることができる。
尚、図1及び図6では、説明のために、各々の透過部からのX線が形成する干渉パターンが図面の横方向にも異なる位置に記載されている。しかしながら、実際には干渉パターン8a〜8c、18a〜18cはアナライザー格子(備えない場合は、X線検出器の検出面)上に形成されている。つまり、線源格子2と干渉パターン8aとの距離と、線源格子2と干渉パターン8bとの距離と、は等しい。
以下、本実施形態についてより詳細に説明をする。
図1は、本実施形態のX線トールボット干渉計(以下、単に干渉計と呼ぶことがある)100の模式図である。干渉計100は、X線透過部を有し、X線源からのX線の一部を透過する線源格子2、線源格子の複数のX線透過部の夫々からのX線を周期構造により回折し、夫々のX線透過部に対応する干渉パターン8a〜8cを形成するビームスプリッター格子3を備える。また、干渉計100は、干渉パターンを形成するX線の一部を遮蔽するアナライザー格子4と、ビームスプリッター格子からのX線の強度を検出するX線検出器5を備える。干渉計100は、X線検出器5の検出結果の情報を用いて被検体の情報を取得する被検体情報取得部や画像表示手段と共に、X線トールボット干渉計システムを構成することができる。被検体情報取得部は、プロセッサーと記憶部を有する演算装置で構成することができ、取得された被検体情報を記録したり、画像表示手段に出力したりすることができる。画像表示手段は、ディスプレイまたはプリンターで構成することができる。
前述のように、アナライザー格子はX線検出器の空間分解能が干渉パターンを検出できる程度に高い場合には必須ではない。また、本発明及び本明細書において、ビームスプリッター格子からのX線を検出するとは、ビームスプリッター格子に入射した後で光学素子や被検体などに入射したX線を検出することを含む。つまり、アナライザー格子からのX線を検出する場合も、そのX線がビームスプリッター格子を透過したX線であれば、ビームスプリッター格子からのX線の強度を検出するという。また、図1には、線源格子にX線を照射するX線源10が、前述の3つの格子及び検出器と共にX線トールボット干渉計100を構成している例を示した。しかし、X線源10は、前述のトールボット干渉計と別に構成され、X線源10とトールボット干渉計とを組み合わせて用いても良い。本発明及び本明細書において、単にトールボット干渉計というときは、X線源を備えるものとX線源を備えないもの(X線源の配置場所を備えていても良い)とを含む。
図2は、各格子のパターン例を表している。図2(A)(B)(C)はそれぞれ、線源格子のパターン、ビームスプリッター格子のパターン、アナライザー格子のパターンを表している。線源格子2は、X線透過率の高いX線透過部(開口部と呼ぶことがある)21とX線透過率の低いX線遮蔽部22とが1方向に配列した1次元周期構造を有している。ビームスプリッター格子3は位相変調型の回折格子であり、位相進行部31と位相遅延部32とが1方向に配列した1次元周期構造を有している。尚、ビームスプリッター格子3の具体的なパターンや位相変調量については一般に知られているようなトールボット干渉計に適した様々なパターンの中から選べば良く、ここでは特に限定しない。アナライザー格子4はX線透過率の高いX線透過部41とX線透過率の低いX線遮蔽部42とが1方向に配列した1次元周期構造を有している。
尚、これらの格子パターンは例であり、これら以外にも例えば、各格子が2次元周期構造を有していても良い。また、位相進行部を透過したX線と位相遅延部を透過したX線との位相差は特に限定されない。位相差がπrad又はπ/2radのビームスプリッター格子が一般的には多く使用されるが、位相差がそれ以外の値をとるビームスプリッター格子を用いることもできる。
また、L01及びL12の値は従来のトールボット・ロー干渉計と同様に、干渉パターンのビジビリティがアナライザー格子上において特に高くなるような条件を満たすことが好ましい。このとき、線源格子2が形成するそれぞれの仮想線状発光部からのX線がビームスプリッター格子3により回折されることにより生ずるトールボット効果を考慮するものとする。
以下では、本実施形態において、各々の仮想線状発光部からのX線が形成する干渉パターン同士がパターン周期に一致しないずれ量をもって重畳することによる効果(つまり、αが0以外の場合にもたらされる効果)を簡単なモデルを用いて説明する。
まず、アナライザー格子上に座標系(x,y)を取り、干渉パターンの周期方向はx軸方向に一致するとする。この時、線源格子上のある1点から発するX線の作るアナライザー格子上の干渉パターンの強度分布gIPo(x,y)は、

と書ける。ここで、a(x,y)は被検体のX線透過率分布を反映した干渉パターンの平均的強度の分布、b(x,y)は被検体のX線透過率分布と干渉パターンの周期方向に関するX線小角散乱能分布を反映した干渉パターンの振幅分布、をそれぞれ表している。また、φ(x,y)は被検体を透過したX線の位相分布(波面形状)を干渉パターンの周期方向に関して微分した分布を反映した干渉パターンの位相分布を表している。またこの時、本実施形態における干渉パターンに固有の空間周波数成分は、周期方向がx軸方向であり空間周波数が1/dIPである空間周波数成分である。さらにこの干渉パターン固有の空間周波数成分は、被検体情報であるb(x,y)及びφ(x,y)により振幅変調及び位相変調されているとみなすことができる。本明細書では、この被検体情報により変調される干渉パターンに固有の空間周波数成分のことを搬送波と呼ぶことがある。尚、干渉パターンの基本波成分の代わりに高調波成分を搬送波として用いることも可能であるが、一般には干渉パターンの高調波成分は基本波成分に比べて非常に小さいため搬送波として用いられることは稀である。またここで、

とおけば、式(2)は、

と書き直せる。ここでは複素共役を表している。両辺を2次元フーリエ変換すると、

となる。ここで、大文字はそれぞれの関数のフーリエ変換を表している(以下も同様とする)。また、ξはx軸方向の空間周波数、ηはy軸方向の空間周波数をそれぞれ表している。
次に、空間的広がりを持つX線発光点と線源格子の存在とを考慮に入れた際のアナライザー格子上のX線強度分布について考える。尚、被検体とビームスプリッター格子とは同位置にあると近似する。また、X線発光点と線源格子とも同位置にあると近似する。
X線発光点及び線源格子の位置におけるx,y軸方向の位置座標(x,y)に対してX線発光点の発光強度分布の形状を表す関数をg(x,y)とする。また、線源格子の透過率分布をt(x,y)とする。この時、X線発光点の実効的な発光強度分布gS0(x,y)は、

と書ける。さらにこの時、アナライザー格子上のX線強度分布gIP(x,y)は近似的にgIPo(x,y)とX線発光点の実効的な発光強度分布に起因するボケを表す点拡がり関数hS0(x,y)とのコンボリューションとして、

と表せる。ここで*はコンボリューションを表している。尚、gIP(x,y)は、実際にアナライザー格子上に形成される干渉パターン(つまり、線源格子を透過したX線全体が作る干渉パターン)の強度分布を示す点がgIPo(x,y)と異なる。
さらにここでhS0(x,y)は、

と書ける。ここでh(x,y)を、

と表せる関数とする。ただしh(x,y)は、線源格子が存在しない場合における上述の点拡がり関数である。
さらに線源格子が単純な正弦波状の透過率分布を有する場合、t(x,y)を、

と書ける。さらに、干渉パターン同士の相対ずれ量d´は線源格子のピッチd及び干渉計のジオメトリ(L12,L01)を用いて、

と書ける。この時式(8)は、

と書き直せる。尚、gIP(x,y)は線源格子の複数のX線透過部からのX線の作る、複数の干渉パターンを重畳した結果として生ずる強度分布とみなすこともできる。この時、hS0(x,y)のフーリエ変換であるHS0(ξ,η)は、

となる。従って、式(5)、(7)、(13)と畳み込み定理によりgIP(x,y)のフーリエ変換であるGIP(ξ,η)は、

と書ける。但しここではa(x,y)、b(x,y)、φ(x,y)、h(x,y)の空間的変化の速さはdIP、d´に比べて十分に遅いと仮定している。
式(14)から分かるように、被検体情報c(x,y)は空間的広がりを持つX線発光点と線源格子の効果により情報伝送の過程で周波数フィルターHによるフィルタリングを受ける。さらに、フィルターHの形状はX線発光点の発光強度分布と、L01及びL12により決定され、フィルターHのC(ξ,η)に対する相対的位置は干渉縞の周期dIPと、線源格子の格子周期dと、L01及びL12により決定されることが分かる。
次に、X線がアナライザー格子を透過しX線検出器に入射することで最終的に計測されるX線強度分布について考える。アナライザー格子の透過率分布t(x,y)を、

とする。ここでdはアナライザー格子の格子周期、φはアナライザー格子の位相(格子のx方向に関する位置に相当する)を表している。尚、線源格子の場合と同様に、アナライザー格子の格子周期dがdIPの2以上の整数倍もしくはそれに近い値をとることも可能であるが、こちらについてもX線透過率が低下するという点から一般に好ましくない。従って、以下ではdがdIPに近い値を有している場合について述べる。また通常、アナライザー格子はX線検出器の検出面のごく近傍に配置されることから、ここではアナライザー格子と検出面とが同位置にあると近似する。また、使用するX線検出器による強度分布計測に固有の点拡がり関数(PSF)をh(x,y)と表すとする。すると、最終的に計測されるX線強度分布g(x,y)は、アナライザー格子を透過したX線の強度分布(gIP(x,y)t(x,y))と検出器の点広がり関数から、

と書ける。従って、g(x,y)のフーリエ変換であるG(ξ,η)は、

と書ける。但しここでは関数の中心が(ξ,η)空間において原点から大きく離れた領域に位置する項はH(ξ,η)によるフィルタリングの際に値が十分に小さくなると考えて無視している。また、ここで|H(ξ,η)|は検出器の変調伝達関数(MTF)に相当する関数である。
ところで、干渉計の一つの使用形態として、アナライザー格子をx軸に沿って移動させることでφを変化させながら複数回の強度分布計測を行い、被検体の情報を取得する形態がある。この形態では、干渉パターンとアナライザー格子との相対移動の前後にX線検出器が検出を行うことにより、強度分布計測を複数回行う。そして、複数回の強度分布計測により得られる情報に対して所謂位相シフト法の原理に基づく所定の演算を行うことにより、式(17)の角括弧([ ])内の3つの項に関するスペクトルを分離して算出することが可能である。例えば、強度分布の計測を3回行い、強度分布g(x,y,k)及びそのフーリエ変換であるG(ξ,η,k)(但しk=1,2,3)の情報を得たとし、この時にφを、

のように変化させたとすれば、周波数領域で表現した被検体情報であるA(ξ,η)及びC(ξ,η)の復元値(計測結果から実際に取得される値のことを指す)A(ξ,η)及びC(ξ,η)はそれぞれ、

のように算出できる。ここでξ、ξはそれぞれ、

である。
式(19)、(20)から分かるように、本手法により復元される被検体情報は最終的にX線源とX線検出器とに関する点拡がり関数をフーリエ変換したHとHの2つの周波数フィルターの影響を受ける。また式(19)から分かるように、A(ξ,η)(及びその(x,y)空間における表現であるa(x,y))については、被検体情報のスペクトルであるA(ξ,η)と、これに対して掛けられる2つの周波数フィルターの中心位置は常に一致する。よって、線源格子やアナライザー格子の格子周期の影響等は受けない。
一方、式(20)から分かるように、C(ξ,η)(及びその(x,y)空間における表現であるc(x,y))は、被検体情報のスペクトルであるC(ξ,η)と、これに対して掛けられる2つの周波数フィルターの中心位置は必ずしも一致しない。これらの相対的ずれ量は線源格子とアナライザー格子の格子周期と格子間の位置関係により決定される。具体的には、C(ξ,η)に対するフィルターHのずれ量ξは1/d´と1/dIPの差により決定され、C(ξ,η)に対するフィルターHのずれ量ξは1/dと1/dIPの差により決定される。従って、dIP、d´、dの値を調整することによりこれらの周波数フィルターの影響を制御することができる。
尚、比較例1である従来のトールボット干渉計では一般にd´=d=dIPとなるように設計されるためξ=ξ=0である。ここで、被検体情報のスペクトルC(ξ,η)に対して掛けられるHとHによる合成フィルターをHとし、

と定義すれば、式(20)は、

と書き直せる。尚、ここではアナライザー格子を移動させながら強度分布計測を行う手法を例にとって説明したが、干渉パターンとアナライザー格子とのx軸における相対位置を移動させながら強度分布計測を行えばよい。例えば、ビームスプリッター格子や線源格子を移動させることでも同様の情報取得が可能である。また、このようなスペクトルの分離は位相シフト法以外の方法により行っても良い。例えば、比較的周期の短いモアレパターンを発生させ、X線検出器で検出した強度分布をフーリエ変換し、周波数空間においてスペクトルをフィルタリングすることでスペクトルを分離することもできる。これらの演算は、被検体情報取得部で行われる。
次に、X線発光点が2次元ガウシアン状の発光強度分布を有するものと仮定すると、g(x,y)は、

と書ける。ここで、σはX線発光点の空間的広がりの規模を決める定数である。この時h(x,y)は式(9)より、

と書ける。ただしここでσ´は、

である。またこの時h(x,y)のフーリエ変換であるH(ξ,η)は係数を無視すれば、

と書け、こちらもガウシアン形状となる。ただしここでσSFはH(ξ,η)の幅を決める定数であり、

となる。
また同様に、X線検出器の固有の点拡がり関数も2次元ガウシアン状の形状を持つと仮定すると、h(x,y)は、

と書ける。ここで、σはh(x,y)の幅を決める定数である。この時h(x,y)のフーリエ変換であるH(ξ,η)はやはり係数を無視すれば、

となり、σDFは、

となる。
このとき、被検体情報のスペクトルC(ξ,η)に対して掛けられる、式(23)により定義される合成フィルターH(ξ,η)は、

と書ける。ただしここでξとσCFはそれぞれ、

となる。
式(33)から分かるように、被検体情報のスペクトルであるC(ξ,η)に対して掛けられる合成フィルターH(ξ,η)はここではガウシアン形状であり、式(35)から分かるようにその幅を表すσCFはξとξに依存しない。よって、|H(ξ,η)|の積分値を最大化することでC(ξ,η)の成分をより多く伝送するためにはξ=ξの条件を満たすことがより好ましい。またこの時式(34)から分かるようにξ=ξ=ξとなる。
次に、本実施形態のトールボット干渉計と比較例1のトールボット干渉計の差異についてシミュレーションを用いて説明する。尚、比較例のトールボット干渉計は本実施形態のトールボット干渉計における格子周期のずれ率αをゼロとした場合に相当するため、本実施形態と同様の計算式を用いてシミュレーションを行い、性能を比較できる。すなわち、ここで想定している比較例1のトールボット干渉計とはd´=d=dIPとなるような干渉計のことである。また、ここで想定している実施形態のトールボット干渉計はd´=d≠dIPとなるような干渉計である。また、ここで想定されているh及びhは共にガウシアン形状の関数である。
図3と図7は、以上の説明に基づくシミュレーションにより得られた、各スペクトル形状の例を示している。ただしここでは各スペクトルのξ軸上のプロファイルを示している。
図3と図7とにおいて、GIPo(ξ,η)は、線源格子上のある1点から発するX線が形成する干渉パターンの強度分布をフーリエ変換したスペクトル(HS0´(ξ,η)によるフィルタリングを受ける前のスペクトル)を示す。また、HS0´(ξ,η)は、X線発光点の空間的広がりと線源格子の効果を表す周波数フィルターを示す。GIP(ξ,η)は、X線発光点の空間的広がりと線源格子による影響を受けた干渉パターンの強度分布をフーリエ変換したスペクトルを示す。
図4(A−1)、(B−1)のそれぞれは、本シミュレーションにおけるb(x,y)(=|c(x,y)|)の設定値を示した像(A−1)及びφ(x,y)(=arg[c(x,y)])の設定値を示した像(B−1)を表している。また、図4(A−2)、(B−2)のそれぞれは、(A−1)と(B−1)との、x軸上のプロファイルを表している。図4に示すように、ここでは領域毎に異なる3つの周期を有する、x方向に周期パターンを持つ分布をφ(x,y)として設定している。一方、b(x,y)=1としている。尚、a(x,y)=1としている。
図7は、d´=dIPの場合、つまり、従来のX線トールボット・ロー干渉計(比較例1)における各スペクトルを示している。この条件は、図6に示した従来のトールボット・ロー干渉計の条件であり、線源格子が複数の干渉パターンを重畳させることにより強調する干渉パターン中の空間周波数成分が被検体情報の搬送波に一致する。
図7をみると、比較例1の場合において、理想的な干渉縞強度分布のスペクトルであるGIPo(ξ,η)がHS0(ξ,η)によるフィルタリングによりGIP(ξ,η)へと変わる様子がわかる。スペクトル変形前の干渉パターンのスペクトルであるGIPo(ξ,η)は、非常に高い搬送波のピークと、搬送波の変調によりその近傍の周波数領域に発生する側波帯を有している。またここで、被検体情報は主として側波帯に含まれており、搬送波に近い周波数成分ほどc(x,y)における低周波成分、遠い周波数成分ほどc(x,y)における高周波成分に相当する。また、一般にc(x,y)は位相項を含むので、上下の側波帯が完全に対称な形状を有するとは限らないが、多くの場合、これらは比較的対称性の高い形状を有する。比較例1のトールボット・ロー干渉計では線源格子の効果により搬送波(ξ=±1/dIP)が強調される。言い換えると、ξ軸の正側におけるGIPo(ξ,η)からGIP(ξ,η)へのスペクトル変化に注目した時、HS0(ξ,η)における(1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当する部分はバンドパスフィルターとして機能する。加えて、(1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当するガウシアン形状の部分の中心が搬送波周波数に一致する。これにより、被検体情報C(ξ−1/dIP,η)に相当する側波帯において搬送波にごく近い成分は比較的多く伝送されるが、一方で搬送波から遠く離れた成分の伝送量は著しく低下する。これは言い換えると、被検体情報c(x,y)における高周波成分が大きく減衰することを意味している。尚、線源格子が強調する周波数とは、HS0(ξ,η)のうち、搬送波に影響を与える領域((1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当する部分)が極大値をとる周波数のことを指す。言い換えると、線源格子が強調する周波数とは、1/d´のことを指す。d´は線源格子とビームスプリッター格子の構成と、それらの格子とアナライザー格子(備えない場合はX線検出器)、とのジオメトリが決まれば、算出することができる。
さらに図8は、フィルターHS0(ξ,η)によるスペクトル変形後の被検体情報c(x,y)(c´(x,y)とする)とそのx軸上プロファイルを図示している。図8(A−1)、(B−1)はそれぞれ|c´(x,y)|/2とarg[c´(x,y)]の像を示し、(A−2)、(B−2)はそれぞれの像のx軸上プロファイルを示している。尚、本シミュレーションでは一定量のノイズを付加している。前述のスペクトルの変化から予想される通り、図8を図4と比較すると、画像中の高周波の成分が明らかに減衰し、シグナルノイズ比が低下することにより検出が困難になっていることが分かる。
一方、図3は、本実施形態のX線トールボット干渉計における各スペクトル形状の例を表している。ここではd´がdIPよりもやや大きい場合を表している。
図3をみると、本実施形態のトールボット干渉計におけるGIPo(ξ,η)からGIP(ξ,η)へのスペクトル変化が分かる。d´がdIPよりもやや大きいため、線源格子が複数の干渉パターンを重畳させることにより強調する空間周波数成分は、被検体による搬送波の変調により発生する下側波帯の中心付近に位置する。言い換えると、ξ軸の正側におけるGIPo(ξ,η)からGIP(ξ,η)へのスペクトル変化に注目した時、バンドパスフィルタの中心((1/2)H(ξ−1/d´,η)の極大値)は搬送波には一致しない。バンドパスフィルタの中心は、被検体による変調により生じる側波帯のうち、下側波帯の中心付近に位置する。尚、ここでいうバンドパスフィルタとは、図7と同様に、HS0(ξ,η)における(1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当する部分であり、ガウシアン形状を有する。これにより、上側波帯はほとんど失われている。その反面、搬送波から遠く離れた下側波帯成分が図7と比較して多く残存していることが分かる。つまり、被検体情報C(ξ−1/dIP,η)に相当する側波帯において実質的に伝送される成分は主として片側側波帯の成分となる。これにより、図7に示した比較例1における伝送スペクトルGIP(ξ,η)と比較すると、c(x,y)における高周波成分が比較的多く残存する傾向がある。尚、強調する空間周波数成分は、被検体による搬送波の変調により発生する上側波帯の中心付近であっても良い。また、側波帯の中心付近でなくても、側波帯中の一成分を強調すればよい。そのためには、HS0(ξ,η)における(1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当する部分の極大値が、被検体による変調により発生する側波帯中の一成分に一致すればよい。
さらに図5は、フィルターHS0(ξ,η)によるスペクトル変形後の被検体情報c(x,y)であるc´(x,y)とそのx軸上プロファイルを図示している。図5(A−1)(B−1)はそれぞれ|c´(x,y)|/2とarg[c´(x,y)]の像を示し、(A−2)、(B−2)はそれぞれの像のx軸上プロファイルを示している。尚、本シミュレーションでも比較例1の場合と同規模のノイズを付加している。前述のスペクトルの変化から予想される通り、図5を図8及び図4と比較すると、画像中の高周波成分が比較例1に比べより多く残存し、検出力が向上していることが分かる。尚、図5(A−1)において図4(A−1)には見られない被検体像が出現しているのは、周波数フィルターの搬送波に対する非対称化の効果によりφ(x,y)の情報がc´(x,y)の絶対値側にも現れるためである。つまり、|c´(x,y)|とb(x,y)、及びarg(c´(x,y))とφ(x,y)の相関関係が弱まる。同じように、本シミュレーションでは示されていないが、本実施形態ではb(x,y)の情報がc´(x,y)の偏角側にも現れるという副次的効果がある。
次に、アナライザー格子の存在を想定し、前述のような位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する全過程をシミュレートした結果について説明する。
図9(A)(B)のそれぞれは、本シミュレーションにおける|c(x,y)|とarg[c(x,y)]の設定値を示した像とx軸上のプロファイルを表している。尚、a(x,y)=1としている。
図13(A)(B)(C)はそれぞれ、比較例1における|GIPo(ξ,η)|、|HS0(ξ,η)|、|GIP(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを分離して表している。前述の比較例1とは細部の条件が異なるが、図7と同様に、|GIP(ξ,η)|は、|HS0(ξ,η)|の影響によって、|GIPo(ξ,η)|の搬送波を強調し、搬送波からの距離が遠い程伝送量が低下していることが分かる。
また図14は、アナライザー格子の存在を想定し、位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する全過程をシミュレートした結果である。ここでは、アナライザー格子のピッチdは、搬送波と一致するものとしている。尚、図14(A)(C)では、原点に近い程被検体情報の低周波成分を表し、原点から遠い程被検体の高周波成分を表す。図14(A)(B)(C)はそれぞれ、|C(ξ,η)|、|H(ξ,η)|、|C(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを表している。H(ξ,η)はH(ξ−ξ,η)とH(ξ−ξ,η)との合成物であるためH単独よりもさらに幅が狭く、伝送できる周波数帯域がより狭いフィルターである。図14から分かるように、従来のトールボット干渉計では周波数フィルターH(ξ,η)の極大点は周波数座標の原点に位置し、ξ軸上のプロファイルは原点に関して対称な形を有する(2次元的には原点に対して点対称な形を有する)。従って、C(ξ,η)における原点から離れた領域の成分ほど伝送の過程で大きく失われることになる。言い換えれば、c(x,y)における高周波成分は大きく失われることになる。このことは、対応するc(x,y)を図示した図15により確認することができる。
一方、図10(A)(B)(C)はそれぞれ、本実施形態における|GIPo(ξ,η)|、|HS0(ξ,η)|、|GIP(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを分離して表している。ここでは前述の例とは異なり、d´がdIPよりもやや小さい場合を想定しているため、上側波帯の中心付近の成分の強調が行われている。
また図11は、アナライザー格子を使用し、位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する全過程をシミュレートした結果を示している。アナライザー格子のピッチdは、d´と一致するものとした。図11(A)(B)(C)はそれぞれ、|C(ξ,η)|、|H(ξ,η)|、|C(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを表している。図11から分かるように、本実施形態のトールボット干渉計では周波数フィルターH(ξ,η)の極大点は周波数座標の原点から離れた場所に位置する。これにより、ここではC(ξ,η)におけるξ>0の領域の成分のみが実質的に伝送される。この結果を図14(C)に示した比較例1における|C(ξ,η)|の形状と比較すると、C(ξ,η)における原点から離れた領域の成分がより多く伝送されていることが分かる。言い換えると、c(x,y)における高周波成分がより多く残存することになる。このことは、対応するc(x,y)を図示した図12により確認することができる。
次に、本実施形態におけるd及びdの値の好適な範囲について考える。
まず、理想的な干渉縞強度分布のスペクトルであるGIPo(ξ,η)がHS0(ξ,η)によるフィルタリングによりGIP(ξ,η)へと変わる段階について考える。この段階において、HS0(ξ,η)における(1/2)H(ξ−1/d´,η)の項に相当する部分の中心と搬送波との間の周波数差であるξは、n=1の時、

と書ける(但しα<<1とする)。また、ガウシアン形状を有するHの幅を表すσSFは式(29)のように表される。一方、被検体情報のスペクトルであるC(ξ−1/dIP,η)は、搬送波を中心として搬送波の周囲に2次元的に分布する。但し、φ(x,y)が前述のように被検体を透過したX線の位相分布を搬送波の方向に沿って微分した分布を反映していることから、C(ξ−1/dIP,η)の成分はこの場合、搬送波方向であるξ軸方向に関して特に強く現れる。よって、フィルターHはξ軸に沿ってシフトさせる(ξ≠0とする)ことが好ましい。ここで、|ξ|を大きくとればc(x、y)におけるより高い周波数成分を多く伝送することが可能となるが、同時に低周波成分が欠落することにより得られる画像が不自然なものとなるという欠点がある。このような低周波成分の欠落を防ぎつつ高周波成分の伝送量を増大させる効果を得るためにはξを、

となる程度に選べばよい。|ξ|の値が0.5σSF付近の時は、得られる高周波成分の増強効果は比較的小さい。しかしながら低周波成分が大きく低減しないため、比較的サイズの大きい物体や構造の特徴を、従来通り効率良く伝送することができる。一方|ξ|の値が3.0σSF付近の時は、高周波数成分の伝送量を大幅に増大させることができるため、特にサイズの小さい物体や構造の特徴を効率良く伝送することができる。しかしながら低周波成分が大きく低減するため、サイズの大きい物体や構造の特徴は取得が難しくなる。ここで、g(x,y)の半値全幅をwとすると、g(x,y)がガウシアン形状を持つ時にはw=2σ(2ln2)0.5の関係があることから式(37)は、

と書き直せる。係数部分を計算しαを用いて書き直せば、

と書ける。式(39)は、本実施形態において、X線発光点の発光強度分布(gS0(x,y))の幅のみを考慮した場合の、dの値を決めるためのずれ率αの好適な範囲を与える式である。本説明ではX線発光点の発光強度分布g(x、y)がガウシアン形状を有する場合を想定した。しかしながら、それ以外の一般的な、例えば矩形関数状の形状を有する場合等についても、Hの形状がより複雑になるものの、αの値の好適な範囲は式(39)により与えられる範囲と一致する。
次に、アナライザー格子を使用し、位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する全過程を考えた場合のdの好適な範囲について考える。
X線検出器に関する点拡がり関数がX線発光点に関する点拡がり関数に比べて十分に小さい時などはd=dIP≠d´などとしても良いが、一般には前述のように、d=d´とすることが好ましい。また、位相シフト法を用いた計測の全過程を考えた場合の合成周波数フィルターHの幅σCFは前述のように式(35)により与えられる。この時、ξ(=ξ=ξ)の好適な範囲は式(37)の場合と同様の考え方に基づき、

と書ける。ここで、検出器の固有の点拡がり関数であるh(x,y)の半値全幅をwとすれば、h(x,y)がガウシアン形状を持つ時にはw=2σ(2ln2)0.5の関係があることから、式(40)は、

と書き直せる。係数部分を計算しαを用いて書き直せば、

と書ける。式(42)は、X線発光点の発光強度分布と検出器の点拡がり関数とを考慮した場合の、dの値を決めるためのずれ率αの好適な範囲を与える式である。
ここで、ビームスプリッター格子の格子周期をdとするとdIPとdの関係は一般に、

と書ける。ここでmは正の整数である。mの好適な値は、ビームスプリッター格子のパターンと干渉パターンとの関係により決まるが、一般にはm=1又は2とすることが好ましい。m=1とすることが好ましい場合の代表的な例は、ビームスプリッター格子として所謂π/2変調型の位相格子の位相格子を用いる場合である。一方、m=2とすることが好ましい場合の代表的な例は、ビームスプリッター格子として所謂π変調型の位相格子を用いる場合である。またこのほか、干渉パターンにおける高調波成分を搬送波として用いる場合も、mが1以外の値を持つことに相当する。式(43)を用いると式(39)と式(42)はdを用いてそれぞれ、

と書き直せる。式(44)と式(45)はそれぞれ、検出器の点拡がり関数を考慮に入れる場合と入れない場合に関するαの値の好適な範囲を与える式である。また、この時のdの値はdを用いて、

と書き直せる。
尚、前述のようにξ=ξの時に|H|の積分値が最大化されることから、dはdに関するずれ率として定義したものと同じαを用いて、

と書ける値であることが好ましい。尚、nは正の整数であり、上述のように透過率の観点から、n=1であることが好ましい。この式は、式(43)を用いて

と書き直せる。
前述のように、X線検出器が十分に高い空間分解能を有している場合にはアナライザー格子は必須ではなく、干渉パターンの強度分布gIP(x,y)を直接検出しても良い。このような場合にはX線検出器に関する点拡がり関数はX線源に関する点拡がり関数に比べて十分小さいと考えられるため後者のみを考慮し、ξが式(37)の範囲に収まるように決定すればよく、αの値は式(44)の範囲に収まるように決定すれば良い。一方、アナライザー格子を用いて計測を行う場合には、αの値はより正確な好適範囲を示す式(45)を用いて決定することがより好ましい。特に、hの幅を示すwが、hの幅を示すw×(L12/L01)に対して少なくとも同程度に大きい値を持つような場合には、式(45)と式(44)のそれぞれの示すαの範囲の差が大きくなることから、式(45)を用いることが特に好ましい。但し、αが式(45)を満たさないような値であっても、式(44)を満たすような値であれば、従来(α=0)よりも高周波数成分を伝送できるため、空間分解能を向上させることができる。
また、X線発光点の発光強度分布と検出器の点拡がり関数の計測方法についてはいずれも良く知られており、X線発光点の発光強度分布の半値全幅であるwと、検出器の点拡がり関数の半値全幅であるwとは容易に計測可能である。簡単な方法の例としては、撮像系におけるX線光路中の所定の位置にピンホールを置いて撮像した結果などを元に両者を計測することができる。従って、干渉計が式(44)〜(48)の条件を満たすか否かの検証は容易である。
ところで、|α|の値を比較的大きく設定した際、搬送波成分が非常に小さくなることによりc(x,y)を画像として表示した際の画質が低下することがあり得る。この問題を解決するために、算出したc(x,y)に対して搬送波に相当する成分を数値的に復元し、加算する処理を行っても良い。また、複素数分布であるc(x,y)の画像化に関しては例として示したような絶対値、偏角のマッピングによる画像化の他、実部や虚部による画像化等を行っても良い。搬送波に相当する成分の復元は、例えば、C(ξ,η)における搬送波ピークの成分のみを定数倍することにより行うことができる。
また、GIPo(ξ,η)に見られる側波帯のうち、α<0とすることにより上側波帯の成分を伝送しても良いし、α>0とすることにより下側波帯を伝送しても良い。但し、前述のように被検体の情報は干渉パターンの振幅変調だけでなく位相変調としても現れるため、一般に上側波帯の振幅スペクトルと下側波帯の振幅スペクトルとは完全な対称形にはならない。さらに、被検体の種類によっては上下の側波帯のどちらを伝送するかにより、その構造の視認性や検出力に大きな違いが生ずる場合もあり得る。従って、このような関係を踏まえ、あらかじめ予測される側波帯のうち、伝送(強調)したい領域が周波数フィルターHのうち搬送波に掛けられる領域の極大値近くに配置されるように、αの値を設定しておくことがより好ましい。また、ユーザが特に観察したい(強調したい)被検体のサイズを設定できるような構成をとることもできる。その場合、ユーザがサイズを設定する設定手段と、演算装置と、複数備える線源格子のうち、決定された線源格子を光路中に配置する手段とを備えればよい。演算装置は、設定されたサイズに基づいて強調する周波数を決定する手段と、決定された周波数と搬送波との距離(ξ)に応じてαを決定する手段と、決定されたαに基づいて用いる線源格子を決定する手段とを備える。設定手段は、例えば、ダイヤルや数値を入力するボタンと設定された数値を表示する表示部などを用いることができる。また、決定された線源格子を光路中に配置する手段は、演算装置からの指令を受けて線源格子を移動させる移動部(アクチュエータやギア等を用いることができる)を用いることができる。尚、複数の線源格子のうち、用いる線源格子を変更する代わりに、ピッチの変更が可能な線源格子(例えば、特開2011−153869に記載されている線源格子)を用いても良い。
また、空間分解能を効果的に向上させるためには、検出器の空間分解能が十分に高くない場合は特に、検出器による検出空間周波数帯域幅を最大限に利用するために、モアレ画像の複数回取得を利用した位相シフト法のような計測手法を用いることが好ましい。
さらに、本実施形態で示したようにd≠dIPとすることによりξ≠0の条件を実現した場合、検出器により取得されるX線強度分布のスペクトルG(ξ,η,k)と被検体情報のスペクトルCの中心間にはξのずれが発生する。このスペクトルの中心間のずれはCの算出後等の段階において計算機内で周波数シフトすることにより補正しても良いし、被検体を設置せずに計測した結果である参照データにより除算することにより補正しても良い。但しこの時、Cの中心が周波数座標においてシフトすることにより、一般には検出器の本来有している検出空間周波数帯域にはCの全体が収まらなくなる。従ってこのような場合には、検出器本来の検出空間周波数帯域よりも広い周波数帯域を計算機内に用意し、その内部にCをその中心が周波数座標の原点に一致するような形で格納することが好ましい。言い換えると、干渉計システムが表示又は記録するc(x,y)に相当する画像データのデータ間隔は、X線強度分布取得時のピクセルピッチ(サンプリング間隔。一般的には、検出器本来のピクセルピッチに等しい)に相当する間隔よりも細かく設定することが好ましい。
〔実施形態2〕
本実施形態では、線源格子を備えないトールボット干渉計において、被検体による変調により発生する側波帯中の一成分をアナライザー格子によって強調する形態について説明をする。従来のX線トールボット干渉計(X線トールボット・ロー干渉計を含む)においては、アナライザー格子はアナライザー格子上に形成される干渉パターンの搬送波を中心とした帯域を周波数シフトさせ、X線検出器で検出可能にしていた。本実施形態は、アナライザー格子により周波数シフトさせ、X線検出器で検出可能にする帯域の中心を搬送波からずらすことで空間分解能を向上させる。詳細は以下で説明をする。
本実施形態は、線源格子を備えず、複数の干渉パターンを重ね合わせないこと(つまり、トールボット・ロー干渉計でないこと)及びアナライザー格子のピッチdがアナライザー格子上に形成される干渉パターンのピッチと異なることが実施形態1と異なる。しかしながら、その他は実施形態1と同様であるため、重複する部分の説明は省略する。
図19は、比較例2のX線トールボット干渉計1300の模式図である。X線トールボット干渉計1300は、X線源131と、ビームスプリッター格子3と、アナライザー格子4と、X線検出器5とを備える。
前述のように、従来のトールボット干渉計1300では干渉パターン16の発生する位置にアナライザー格子4を置くことにより、格子を透過したX線の強度分布にモアレを発生させることでX線検出器5による強度分布計測を補助している。アナライザー格子4の格子周期d2Cは一般には、X線源からアナライザー格子までのX線光路中に被検体等を置かない状態における干渉パターン16の周期dIPCと等しい値に設計される。この時、干渉パターンとアナライザー格子のそれぞれの周期方向が互いに一致していればモアレの周期は無限大となるため、干渉パターン自身の周期を解像できない検出器を使用している場合、縞模様は検出されない。また、それぞれの周期方向がアナライザー格子の面内においてわずかにずれていれば、格子の周期方向とほぼ垂直な方向に周期方向を持つモアレ縞が発生する。一般にトールボット干渉計においてモアレ周期の調節を行うような場合には、このような干渉パターンとアナライザー格子の相対回転角を調整することによる調節が行われる。
一方、本実施形態のX線トールボット干渉計300は、図16に示すように、アナライザー格子24の格子周期dは、X線源からアナライザー格子までのX線光路中に被検体等を置かない状態における干渉パターン6の周期dIPとは異なる値に設計される。この時、検出領域内にはモアレ縞が形成される。但し、前述のような干渉パターンとアナライザー格子の相対回転に起因するモアレとは異なり、モアレ縞の周期方向は格子の周期方向と同方向となる。
以下、本実施形態についてより詳細に説明をする。
本実施形態のX線トールボット干渉計300は、干渉パターン6を形成するビームスプリッター格子3と、干渉パターンを形成するX線の一部を遮蔽するアナライザー格子24と、アナライザー格子からのX線の強度分布を検出するX線検出器5を備える。本実施形態のX線トールボット干渉計300は、X線源31を備えていても良いし、X線源31と前述のトールボット干渉計とが別に構成されていても良い。ビームスプリッター格子3のパターンとアナライザー格子24のパターンは、実施形態1と同様に図2(B)、(C)に示したパターンであるため、説明を省略する。LS1及びL12の値も実施形態1及び従来のトールボット干渉計と同様である。
以下では、本実施形態においてアナライザー格子の格子周期dが干渉パターンの周期dIPと異なる値を持つことによる効果を簡単なモデルを用いて説明する。
まず、本実施形態におけるアナライザー格子の格子周期dをdIPに対するずれ率αを用いて、

と表す。ここで、αは負値も取り得るものとするが、α≠0とする。尚、α=0の時は、アナライザー格子の設計条件は比較例2と等しくなる。また、通常のトールボット・ロー干渉計及び実施形態1においてd2CがdIPCの整数倍であっても良いのと同様に、本実施形態においてもdをdIPの2以上の整数倍に対して一定のずれ率を与えることで装置を構成しても良い。このとき、nは2以上の整数をとる。しかしながら、このような構成ではアナライザー格子全体のX線透過率が低下するという欠点があり一般には好ましくないことから、nは1であることが好ましい。以下ではdがdIPに対してわずかなずれ率αを有している場合(つまり、n=1)を例に説明する。
次に、アナライザー格子上に座標系(x,y)を取り、干渉パターンの周期方向はx軸方向に一致するとする。尚、この座標系(x、y)は必ずしも実施形態1の座標系(x、y)と一致する必要はない。
ここで、X線源は微小であり、1点とみなすことができるとすれば、アナライザー格子上の干渉パターンの強度分布gIP(x,y)は、式(2)のgIPoと同様に、

と書ける。式(3)を用いると、式(50)は、

と書き直せる。両辺を2次元フーリエ変換すると、

となる。ξはx軸方向の空間周波数、ηはy軸方向の空間周波数をそれぞれ表している。
次に、X線がアナライザー格子を透過しX線検出器に入射することで最終的に計測されるX線強度分布について考える。実施形態1で説明したように、アナライザー格子の透過率分布t(x,y)を、

とする。ここで、φはアナライザー格子の位相(格子のx方向に関する位置に相当する)を表している。尚、アナライザー格子は通常X線検出器の検出面のごく近傍に配置されることから、ここではアナライザー格子と検出面とが同位置にあると近似する。実施形態1と同様に、使用するX線検出器による強度分布計測に固有の点拡がり関数(PSF)をh(x,y)と表せば最終的に計測されるX線強度分布g(x,y)は、

である。従って、g(x,y)のフーリエ変換であるG(ξ,η)は、式(52)〜(54)より

と書ける。但しここでは関数の中心が(ξ,η)空間において原点から大きく離れた領域に位置する項はH(ξ,η)によるフィルタリングの際に値が十分に小さくなると考えて無視している。また、ここで|H(ξ,η)|は検出器の変調伝達関数(MTF)に相当する関数である。このように、アナライザー格子の機能は、干渉パターンの情報を空間周波数シフトすることで、干渉パターンの一部の空間周波数帯域の情報をH(ξ,η)がゼロよりも有意に大きい値を持つ範囲に移動させることにより検出可能にすることであると理解できる。
また、この時検出可能となる空間周波数帯域の中心周波数はξ軸の正側では(ξ,η)=(1/d,0)である。
φを変化させながら3回の強度分布計測を行って、所謂位相シフト法の原理に基づく所定の演算を行うことにより、強度分布g(x,y,k)及びそのフーリエ変換であるG(ξ,η,k)(但しk=1,2,3)の情報を取得する場合を例に説明する。φを、

のように変化させたとすれば、周波数領域で表現した被検体情報であるA(ξ,η)及びC(ξ,η)の復元値A(ξ,η)及びC(ξ,η)はそれぞれ、

のように算出できる。尚、ξは、式(22)と同様に、

である。
式(57)、(58)から分かるように、本手法により復元される被検体情報は最終的に周波数フィルターHの影響を受ける。また式(57)から分かるように、取得されるA(ξ,η)(及びその(x,y)空間における表現であるa(x,y))については、被検体情報のスペクトルであるA(ξ,η)と、これに対して掛けられるHの中心位置は常に一致する。よって、アナライザー格子の格子周期の影響は受けない。
一方、式(58)から分かるように、C(ξ,η)(及びその(x,y)空間における表現であるc(x,y))については、被検体情報のスペクトルであるC(ξ,η)と、これに対して掛けられる周波数フィルターHの中心位置は必ずしも一致しない。これらの相対的ずれ量はアナライザー格子の格子周期dと干渉パターンの周期dIPとの関係により決定される。具体的には、C(ξ,η)に対するフィルターHのずれ量ξは1/dと1/dIPの差により決定される。従って、dの値を調整することにより周波数フィルターHの影響を制御することができる。尚、比較例である従来のトールボット干渉計では一般にd=dIPとなるように設計されるためξ=0である。
次に、本実施形態のトールボット干渉計と比較例2のトールボット干渉計の差異についてシミュレーションを用いて説明する。尚、比較例のトールボット干渉計は本実施形態のトールボット干渉計における格子周期のずれ率αをゼロとした場合に相当するため、本実施形態と同様の計算式を用いてシミュレーションを行い、性能を比較できる。すなわち、比較例2のトールボット干渉計とはd=dIPとなるような干渉計のことである。また、ここではh(x,y)として2次元ガウシアン形状の関数を想定している。
本実施形態のトールボット干渉計と比較例2のトールボット干渉計とを比較するシミュレーションにおいても、実施形態1のシミュレーションと同様に、図9に示した像を用いた。
図20は、比較例2である従来のトールボット・ロー干渉計の場合において、前述のような位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する過程をシミュレートした結果である。図20(A)(B)(C)はそれぞれ、|C(ξ,η)|、|H(ξ−ξ,η)|、|C(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを表している。前述のように、アナライザー格子の効果により検出可能となる空間周波数帯域の中心周波数はξ軸の正側では(ξ,η)=(1/d,0)である。従って、d=dIPである比較例のトールボット干渉計では検出される帯域の中心周波数は(ξ,η)=(1/dIP,0)の成分であり、搬送波に一致する。また、被検体情報のスペクトルであるC(ξ−1/dIP,η)は搬送波を中心に側波帯として分布している。従ってこの時、図20に示されるように、周波数フィルターH(ξ−ξ,η)の極大点とC(ξ,η)の中心とは一致する。よって、C(ξ,η)における原点から離れた領域の成分ほど伝送の過程で大きく失われることになる。言い換えれば、c(x,y)における高周波成分は大きく失われることになる。
さらに図21は、シミュレーションの結果得られたc(x,y)とそのx軸上プロファイルを図示している。図21(A)(B)はそれぞれ|c(x,y)|とarg[c(x,y)]を示している。尚、本シミュレーションでは一定量のノイズを付加している。前述のスペクトルの変化から予想される通り、図21を図9と比較すると、画像中の高周波の成分(図中の右側に表れる成分)が明らかに減衰し、シグナルノイズ比が低下することにより検出が困難になっていることが分かる。
一方、図17は本実施形態のトールボット干渉計において位相シフト法により被検体情報の復元値C(ξ,η)を算出する過程をシミュレートした結果を示している。図17(A)(B)(C)はそれぞれ、|C(ξ,η)|、|H(ξ−ξ,η)|、|C(ξ,η)|のξ軸上のプロファイルを表している。本実施形態のトールボット干渉計ではd≠dIPであるため、検出器により検出される帯域の中心周波数は搬送波とは一致せず、被検体情報を含む側波帯中の一周波数成分となる。従ってこの時、図17に示されるように、周波数フィルターH(ξ−ξ,η)の極大点とC(ξ,η)の中心とは一致せず、ξのずれが生ずる。これにより、ここではC(ξ,η)におけるξ>0の領域の成分のみが実質的に伝送される(図17(C))。この結果を図20(C)に示した比較例における|C(ξ,η)|の形状と比較すると、C(ξ,η)における中心から離れた領域の成分がより多く伝送されていることが分かる。言い換えると、c(x,y)における高周波成分がより多く残存することになる。
さらに図18は、シミュレーションの結果得られたc(x,y)とそのx軸上プロファイルを図示している。図18(A)(B)はそれぞれ|c(x,y)|とarg[c(x,y)]を示している。尚、本シミュレーションでも比較例2の場合と同規模のノイズを付加している。前述のスペクトルの変化から予想される通り、図18を図21及び図9と比較すると、画像中の高周波成分が比較例2に比べより多く残存し、高周波成分を検出する能力が向上していることが分かる。尚、図18(A)において図9(A)には見られない被検体像が出現しているのは、周波数フィルターH(ξ−ξ,η)のC(ξ,η)の中心に対する非対称化の効果により、φ(x,y)の情報がc(x,y)の絶対値側にも現れるためである。同じように、本シミュレーションでは示されていないが、本実施形態ではb(x,y)の情報がc(x,y)の偏角側にも現れるという副次的効果がある。
次に、本実施形態におけるdの値の好適な範囲について考える。
まず、X線検出器の固有の点拡がり関数であるh(x,y)はシミュレーションと同様に2次元ガウシアン状の形状を持つと仮定する。この時h(x,y)は、式(30)に示した通り、

と書ける。ここで、σはh(x,y)の幅を決める定数である。この時h(x,y)のフーリエ変換であるH(ξ,η)は係数を無視すれば、

と書ける。ここでσDFはH(ξ,η)の幅を決める定数であり

となる。
また、被検体情報のスペクトルC(ξ,η)の中心と周波数フィルターH(ξ−ξ,η)の極大点との間のずれ量ξは、

と書ける(但し|α|<<1とする)。
一方、被検体情報のスペクトルであるC(ξ,η)は、原点を中心として2次元的に分布する。但し、φ(x,y)が前述のように被検体を透過したX線の位相分布を搬送波の方向に沿って微分した分布を反映していることから、C(ξ,η)の成分はこの場合、搬送波方向であるξ軸方向に関して特に強く現れる。よって、フィルターHの極大点はξ軸に沿ってシフトさせることが好ましい。言い換えると、干渉パターンの周期方向とアナライザー格子の周期方向は一致していることが好ましい。ここで、|ξ|を大きくとればc(x、y)におけるより高い周波数成分を多く伝送することが可能となるが、同時に低周波成分が欠落することにより得られる画像が不自然なものとなるという欠点がある。このような低周波成分の欠落を防ぎつつ高周波成分の伝送量を増大させる効果を得るためには、式(40)と同様にξを、

となる程度に選べばよい。ここで、h(x,y)の半値全幅をwとすると、h(x,y)がガウシアン形状を持つ時にはw=2σ(2ln2)0.5の関係があることから式(64)は、

と書き直せる。係数部分を計算しαを用いて書き直せば、

と書ける。
ここで、ビームスプリッター格子の格子周期をdとするとdIPとdの関係は一般に、

と書ける。ここでmは正の整数である。mの好適な値は、ビームスプリッター格子のパターンと干渉パターンとの関係により決まるが、一般にはm=1又は2とすることが好ましい。m=1とすることが好ましい場合の代表的な例は、ビームスプリッター格子として所謂π/2変調型の位相格子を用いる場合である。一方、m=2とすることが好ましい場合の代表的な例は、ビームスプリッター格子として所謂π変調型の位相格子を用いる場合である。またこのほか、干渉パターンにおける高調波成分を搬送波として用いる場合も、mが1以外の値を持つことに相当する。式(67)を用いると式(66)はdを用いて、

と書き直せる。式(68)は、検出器に固有の点拡がり関数を考慮した場合のαの値の好適な範囲を与える式である。また、この時のdの値はdを用いて、

と書き直せる。
尚、検出器に固有の点拡がり関数の計測方法については良く知られており、検出器に固有の点拡がり関数の半値全幅であるwの値は容易に計測可能である。簡単な方法の例としては、検出器の検出面にごく近い位置にピンホールを置いて撮像することなどにより計測することができる。従って、干渉計が式(68)、(69)の条件を満たすか否かの検証は容易である。
また、本説明では線源格子を備えない干渉計を例にとって説明したが、本実施形態のトールボット干渉計は線源格子を備えていても良い。但しこの時、式(68)(69)中のLS1は線源格子とビームスプリッター格子の間の距離とする。線源格子は、実施形態1のように干渉パターンの明部同士暗部同士がずれて重なるように(つまり、α≠0)構成されていても良いし、従来のトールボット・ロー干渉計に用いられる線源格子(つまり、α=0)でも良い。
ところで、|α|の値を比較的大きく設定した際、搬送波成分が非常に小さくなることによりc(x,y)を画像として表示した際の画質が低下することがあり得る。この問題を解決するために、実施形態1と同様に、算出したc(x,y)に対して搬送波に相当する成分を数値的に復元し、加算する処理を行っても良い。また、複素数分布であるc(x,y)の画像化に関しては例として示したような絶対値、偏角のマッピングによる画像化の他、実部や虚部による画像化等を行っても良い。
また、本説明に用いたシミュレーションではα<0とすることにより、GIP(ξ,η)に見られる側波帯のうち、上側波帯の成分を伝送する場合を想定したが、α>0とすることにより下側波帯の成分を伝送しても良い。但し、前述のように、被検体の種類によっては上下の側波帯のどちらを伝送するかにより、その構造の視認性や検出力に大きな違いが生ずる場合もあり得る。従って、このような関係を踏まえ、あらかじめ被検体の影響により現れる側波帯を予測しておき、この側波帯の特徴をαの値の設定に反映させることがより好ましい。また、実施形態1と同様に、ユーザーが特に観察したい周波数を設定できる構成をとっても良い。
また、実施形態1と同様に、空間分解能を効果的に向上させるためには、モアレ画像の複数回取得を利用した位相シフト法のような計測手法を用いることが好ましい。
さらに、実施形態1と同様に、検出器により取得されるX線強度分布のスペクトルG(ξ,η,k)と被検体情報のスペクトルCの中心間にはξのずれが発生する。このスペクトルの中心間のずれは、計算機内で周波数シフトすることにより補正しても良いし、参照データにより除算することにより補正しても良い。また、Cの中心が周波数座標においてシフトすることにより、検出器の本来有している検出空間周波数帯域にはCの全体が収まらなくなる。このような場合には、検出器本来の検出空間周波数帯域よりも広い周波数帯域を計算機内に用意し、その内部にCをその中心が周波数座標の原点に一致するような形で格納することが好ましい。言い換えると、干渉計システムが表示又は記録するc(x,y)に相当する画像データのデータ間隔は、検出器本来のピクセルピッチに相当する間隔よりも細かく設定することが好ましい。
以下、実施形態1及び2のより具体的な実施例について記述する。
(実施例1)
実施例1は実施形態1の具体的な実施例である。X線源として、X線管を用いる。陽極材料はタングステンであり、管電圧やフィルターによる調整により、放射されるX線のエネルギースペクトルは22keVの位置に概ねの極大値が位置するものとする。また、X線管の焦点の実効的な発光強度分布は半値全幅300μmの2次元ガウシアン形状である。線源格子、ビームスプリッター格子、アナライザー格子のパターンは図2と同様である。ビームスプリッター格子はシリコン製の位相格子であり、格子周期dはd=12.00μmである。ビームスプリッター格子の位相進行部と位相遅延部の違いはシリコン基板の厚さの違いにより実現されており、22keVの透過X線に対してπradの位相差を与えるように設計されている。また、線源格子とアナライザー格子は共に、シリコン基板上に厚さ100μmの金めっき膜をX線遮蔽部として形成することにより作製されている。
実施例1におけるL01、L12はそれぞれL01=1000.0mm、L12=469.3mmである。この時、線源格子上の1点から発した22keVのX線はビームスプリッター格子の持つ周期構造により回折されることで、トールボット効果によりアナライザー格子と同じ位置に高ビジビリティの干渉パターンを形成する。また、X線発光点と線源格子との間の距離LS0はLS0=100.0mmとする。
この時、式(46)により計算される線源格子の格子周期dは、n=1、m=2の条件を選べば、d=18.785(1+α)μmとなる。これに対し、好ましい|α|の値の範囲は式(44)により0.010<|α|<0.152と計算される(但しLS0の存在を考慮してwの補正を行った場合)。また、本実施例では|ξ|≒2σSFとなる条件を選ぶとすれば、|α|=0.052とすれば良い。よって、本実施例ではαが正の場合を選び、d=19.755μmとする。
また、アナライザー格子の格子周期dは式(47)に従い、d=9.271μmとする(但し、n=1、α=0.052)。X線検出器はピクセルピッチ50μmのフラットパネル検出器であり、アナライザー格子のごく近くに配置する。撮像の際はビームスプリッター格子の走査による位相シフト法を行うことで、被検体情報の復元値であるc(x,y)の取得を行う。
(実施例2)
実施例2は実施形態1の具体的な実施例である。干渉計はX線源として、タングステン陽極を備えたX線管を備える。X線管は管電圧やフィルターの調整により25keV付近の光子エネルギーを中心に一定のエネルギーバンド幅を持つX線を出射口より放射する。尚、本干渉計は波長0.05nm付近のX線(光子エネルギー約25keV)に対して特に効果的に機能するように設計されている。X線発光点の実効的な発光強度分布は半値全幅500μmの2次元ガウシアン形状を有している。線源格子、ビームスプリッター格子、アナライザー格子のパターンは図2に示した通りである。ビームスプリッター格子はシリコン製の位相格子であり、格子周期dは8.0μmである。位相進行部と位相遅延部では格子基板の厚さが32μm異なることにより、波長0.05nm付近の入射X線に対して約πradの位相変調を与える。尚、位相進行部と位相遅延部の幅は等しい。線源格子とアナライザー格子は共に、シリコン基板上にX線遮蔽部として厚さ100μmの金めっき膜を形成したような構造を有している。また、X線検出器はピクセルピッチ50μmのフラットパネル検出器である。検出器の固有の点拡がり関数は半値全幅100μmの2次元ガウシアン形状を有している。
01、L12はそれぞれ800mm、200mmである。線源格子とX線発光点、及びアナライザー格子とX線検出器の検出面とはそれぞれほぼ同一位置に配置される。この時、dとdとは式(46)(47)に基づきそれぞれ20.0(1+α)μm、5.0(1+α)μmと計算される。但しここではビームスプリッター格子が所謂π変調格子であることを考慮しm=2、n=n=1としている。ここで、本実施例ではずれ率αを−0.020と設定する。すなわちdは19.6μm、dは4.9μmである。尚、この時のαの値の好適な範囲は式(44)及び式(45)に基づけばそれぞれ0.008<|α|<0.044、0.006<|α|<0.034となる。被検体像の撮像の際には、アナライザー格子の走査を利用した位相シフト法により被検体情報の復元値であるc(x,y)を算出する。
(実施例3)
実施例3は実施形態2の具体的な実施例である。干渉計は線源格子を備えず、X線発光点の実効的サイズが10μmのX線源を用いる点が実施例2と異なる。
本干渉計も実施例2と同様に波長0.05nm付近のX線(光子エネルギー約25keV)に対して特に効果的に機能するように設計されている。ビームスプリッター格子、アナライザー格子の構造は実施例2と同様であるため説明を省略する。また、X線検出器はピクセルピッチ80μmのフラットパネル検出器である。検出器の固有の点拡がり関数は半値全幅160μmの2次元ガウシアン形状を有している。
S1、L12はそれぞれ800mm、200mmである。アナライザー格子とX線検出器の検出面とはほぼ同一位置に配置される。この時、dは式(49)に基づき5.0(1+α)μmと計算される。但しここではビームスプリッター格子が所謂π変調格子であることを考慮しm=2とし、n=1としている。ここで、本実施例ではずれ率αを−0.020と設定する。すなわちdは4.9μmである。尚、この時のαの値の好適な範囲は式(68)に基づけば0.006<|α|<0.034となる。被検体像の撮像の際には、アナライザー格子の走査を利用した位相シフト法により被検体情報の復元値であるc(x,y)を算出する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
1 X線発光点
2 線源格子
3 ビームスプリッター格子
4 アナライザー格子
5 X線検出器
21 X線透過部

Claims (12)

  1. 複数のX線透過部を有し、X線源からのX線の一部を透過する線源格子と、前記X線透過部からのX線を周期構造により回折し、干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記ビームスプリッター格子からのX線を検出するX線検出器と、前記干渉パターンの一部を遮蔽するアナライザー格子と、を備え、
    前記線源格子の前記複数のX線透過部のピッチdが下記式で表されることを特徴とするX線トールボット干渉計。

    但し、dを前記ビームスプリッター格子の格子周期、n、mを正の整数、L01を前記線源格子と前記ビームスプリッター格子との間の距離、L12を前記ビームスプリッター格子と前記X線検出器の検出面又はこれらの間に備えたアナライザー格子との間の距離とする。またαを、

    の範囲にある定数とする。但しwを前記X線源におけるX線発光点の発光強度分布の半値全幅とする。
  2. 記X線検出器は前記アナライザー格子からのX線を検出することを特徴とする請求項1に記載のX線トールボット干渉計。
  3. 複数のX線透過部を有し、X線源からのX線の一部を透過する線源格子と、前記X線透過部からのX線を周期構造により回折し、干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記干渉パターンの一部を遮蔽するアナライザー格子と、前記アナライザー格子からのX線を検出するX線検出器と、を備え、前記線源格子の前記複数のX線透過部のピッチdと前記アナライザー格子の格子周期dとが下記式で表されることを特徴とするX線トールボット干渉計。


    但し、dを前記ビームスプリッター格子の格子周期、n、mを正の整数、L01を前記線源格子と前記ビームスプリッター格子との間の距離、L12を前記ビームスプリッター格子と前記アナライザー格子との間の距離とする。またαを、

    の範囲にある定数とする。但しwを前記X線源におけるX線発光点の発光強度分布の半値全幅、wを前記X線検出器に固有の点拡がり関数の半値全幅とする。
  4. 前記mが1又は2であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線トールボット干渉計。
  5. 前記X線源を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のX線トールボット干渉計。
  6. 前記干渉パターンと前記アナライザー格子との相対位置を動かす移動手段を有し、
    前記検出器は、移動手段による前記干渉パターンと前記アナライザー格子との移動の前後に検出を行うことで、前記干渉パターンと前記アナライザー格子との相対位置が異なる複数の検出結果を取得することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のX線トールボット干渉計。
  7. 前記移動手段は、前記ビームスプリッター格子、前記アナライザー格子のうち少なくともいずれか一つの格子の位置を移動させることを特徴とする請求項に記載のX線トールボット干渉計。
  8. 記移動手段は、前記線源格子の位置を移動させることを特徴とする請求項に記載のX線トールボット干渉計。
  9. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のX線トールボット干渉計と、
    前記X線検出器による検出結果の情報を用いて被検体の情報を取得する被検体情報取得部を備えることを特徴とするX線トールボット干渉計システム。
  10. 記被検体情報取得部は、前記複数の検出結果の情報を用いて被検体の情報を取得することを特徴とする請求項9に記載のX線トールボット干渉計システム。
  11. 前記被検体情報取得部は、前記X線検出器によるX線強度分布を取得する際のピクセルピッチよりも細かいデータ間隔により画像データを記録することを特徴とする請求項9又は10に記載のX線トールボット干渉計システム。
  12. 前記被検体情報取得部が取得した被検体の情報に基づいた画像を表示する表示手段を備え、前記表示手段は前記X線検出器によるX線強度分布取得時のピクセルピッチよりも細かいデータ間隔で画像を表示することを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載のX線トールボット干渉計システム。
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