JP6528399B2 - 細胞濃縮液の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中空糸型分離膜が充填された中空糸膜モジュールを用いる細胞濃縮液の製造方法に関する。
細胞医療の分野では、生体から採取した細胞を直接、又は生体外で培養した後、患者に接種する方法が用いられている。これらの治療に用いる細胞は、治療に適した溶液に懸濁され、又は適切な濃度に調整され移植される。しかしながら、生体から細胞を採取した場合、治療に十分な細胞濃度でないことがあり、また、生体から採取した細胞を体外でさらに培養した場合、組織由来の夾雑物や培地成分などを含んでいることが多い。したがって、生体から採取又は培養した細胞を治療に用いるためには、夾雑物や培地成分を取り除き、治療に適した溶液などに懸濁された状態とし(洗浄)、治療に適した細胞濃度に濃縮される必要がある。
前記目的を解決するため、遠心分離を用いた濃縮、洗浄操作が知られている。例えば、ヒト組織から再生細胞を分離して濃縮するために遠心分離を用いる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、このように遠心分離を用いる方法は、装置が大型になること、細胞に負荷がかかること、及びコストが増大することにより利用できる施設が限定されてしまうことが懸念される。さらに遠心分離により細胞を沈殿させた後の細胞懸濁液の上清を、細胞の洗浄のために取り除く際に、細胞が大気に開放される可能性があり、汚染等の問題が挙げられる。
これに対して、コンパクトで簡便な装置である中空糸型分離膜を用いた細胞懸濁液の分離、ろ過方法が提案されている(特許文献2)。中空糸型分離膜を用いて細胞医療用途の細胞懸濁液を濃縮する際には、細胞へのダメージを軽減するために短時間で濃縮処理を行うことが必要であり、さらに夾雑物や培地成分の分子量が大きいことから、中空糸型分離膜の孔径を大きくした方がよいと考えられる。
本件出願人も、中空糸型分離膜を用いる細胞濃縮液の製造方法として、例えば、細胞懸濁液を受け入れるための細胞懸濁液入口と、該細胞成分を実質上含まない液体を排出するための濾液出口と、細胞懸濁液を排出するための細胞懸濁液出口と、前記細胞懸濁液入口と細胞懸濁液出口の間に配置された分画分子量が1000kD以下の中空糸型分離膜を備え、内圧ろ過方式である細胞懸濁液処理器を用いることを特徴とする細胞懸濁液の濃縮方法(特許文献3)、中空糸型分離膜の総断面積、中空糸型分離膜の内側膜面積、中空糸型分離膜の内側を流れる線速度および濾液出口より排出される初期ろ過流量を所定の範囲に調整する細胞濃縮液の製造方法などを提案している(特許文献4)。
特表2007−524396号公報 特許第2928913号公報 特開2012−210187号公報 国際公開第2014/034456号
しかしながら、中空糸膜モジュールを用いて細胞濃縮液を実際に製造する場合、洗浄工程において、細胞懸濁液から洗浄液とともに除去される夾雑物や培地成分が、細胞濃縮における濾液量および導入される洗浄液量から予測される理論値通りに除去できておらず、その結果、夾雑物や培地成分を十分に取り除くには、多量の洗浄液と長い処理時間が必要であったため、効率の点でいまだ改善の余地があった。また、製造した細胞濃縮液中に培地成分が残存していると、そのままでは治療用途などに使用することができず、また、再度精製すると細胞の生存率を損なう可能性があった。
以上の改善点を鑑みて、本発明の目的は、上記中空糸膜モジュールを用いた細胞濃縮液の製造方法における問題点を解決することを課題とする。具体的には、洗浄工程において、細胞懸濁液に含まれる夾雑物および培地成分の除去効率を向上し、不純物の含有量が極めて低い細胞濃縮液を製造する方法を提要することにある。さらに、本発明は、濃縮工程において、線速度を2段階に設定することで、細胞回収率と操作性が向上する細胞濃縮液の製造する方法を提要することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、洗浄工程において中空糸膜の外側に濾過された夾雑物および培地成分を含む濾液が中空糸膜モジュールから排出される際、前記濾液が中空糸膜モジュール内でしばらく滞留している間に、夾雑物や培地成分が拡散によって中空糸膜の内側へ再び戻ってしまう現象が生じていることを初めて突き止めた。そこで、さらに研究を重ねた結果、濃縮工程で用いていた濾液排出口の位置を、洗浄工程の前に所定の位置に切り替えることで、続く洗浄工程において夾雑物および培地成分を含む濾液を速やかに外部に排出させて、夾雑物および培地成分が中空糸膜の内側へ戻ることを防ぐことに成功した。
さらに、濃縮工程における線速度を2段階に設定することで、プライミングの操作を行わずに細胞濃縮液を製造することができ、また濃縮工程に要する処理時間を短縮しつつ細胞回収率の高い細胞濃縮液を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)導入口、導出口及び濾液排出口を備え、中空糸型分離膜が充填された中空糸膜モジュールを用いる細胞濃縮液の製造方法であって、
細胞懸濁液を前記中空糸膜モジュール内に送液し、濾液を前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された濾液排出口から排出しながら細胞懸濁液を濃縮する工程、
前記濾液排出口の位置を前記中空糸膜モジュールの垂直方向下側に切り替える工程、及び
洗浄液を前記中空糸膜モジュール内に送液し、濾液を前記濾液排出口から排出しながら細胞を洗浄した後、細胞濃縮液を回収する工程
を含み、
前記細胞懸濁液を濃縮する工程において、2段階の線速度で濃縮し、前記2段階の線速度において、1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)がa<bの関係を満たし、前記1段階目の線速度aが35〜300cm/分であり、2段階目の線速度bが370〜1100cm/分であることを特徴とする細胞濃縮液の製造方法。
(2)前記中空糸膜モジュールにおいて濾液排出口を2箇所設け、洗浄液を含む濾液用の濾液排出口の位置を、中空糸膜モジュールの下側末端から前記濾液排出口のいずれか一方までの距離xが中空糸膜モジュールの垂直方向の長さLと比べてL/2≧xとなる位置に調整する前記(1)に記載の細胞濃縮液の製造方法。
(3)前記中空糸膜モジュールの垂直方向の長さL(cm)、2箇所の濾液排出口間の距離y(cm)との比率がL:y=3:1〜10:9である前記(2)に記載の細胞濃縮液の製造方法。
(4)前記中空糸膜モジュールの向きを変えることで前記濾液排出口の位置を切り替える前記(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞濃縮液の製造方法
(5)前記1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)の比率が、a:b=1:1.2〜1:32である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の細胞濃縮液の製造方法。
)細胞懸濁液を濃縮する工程の前に、前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された前記濾液排出口から排気しながら、プライミング液を前記中空糸膜モジュール内に送液する工程を含む、前記(1)〜()のいずれかに記載の細胞濃縮液の製造方法。
)前記中空糸膜モジュールに充填された中空糸型分離膜の孔径が0.1μm以上である前記(1)〜()のいずれかに記載の細胞濃縮液の製造方法。
)前記中空糸膜モジュールに充填された中空糸型分離膜の内径が300〜1000μmである前記(1)〜()のいずれかに記載の細胞濃縮液の製造方法。
本発明の細胞濃縮液の製造方法によれば、細胞濃縮後に、中空糸膜モジュールの濾液排出口の位置を前記中空糸膜モジュールの垂直方向下側に切り替えてから、洗浄を行うことで、濾液中の夾雑物や培地成分が中空糸膜の内側へ戻ることなく、速やかに中空糸膜モジュールから排出できるため、少ない洗浄液量で、しかも短時間で効率よく細胞の洗浄および濃縮を行うことができる。前記洗浄後に得られる細胞濃縮液は、夾雑物や培地成分などの不純物の含有量が顕著に低減されているため、治療用途として提供することができる。さらに、濃縮工程における線速度を2段階に設定することでプライミングの操作を省略でき、短時間で細胞回収率の高い細胞濃縮液を得ることができる。
本発明で用いる中空糸膜モジュールの実施形態の一例を示す概略図である。 図1(a)に示す中空糸膜モジュール1の概略図である。 図1(a)に示す中空糸膜モジュール1を用いた細胞濃縮方法の実施形態の一例を示す概略図である。 図1(b)に示す中空糸膜モジュール1’を用いた細胞濃縮方法の実施形態の一例を示す概略図である。 図1(b)に示す中空糸膜モジュール1’を用いた細胞濃縮方法において、濾液排出口の位置を切り替えた実施形態の一例を示す概略図である。
以下に、本発明について説明する。
本発明の細胞濃縮方法は、導入口、導出口及び濾液排出口を備え、中空糸型分離膜が充填された中空糸膜モジュールを用いる細胞濃縮液の製造方法である。
本発明で用いる中空糸膜モジュールは、導入口、導出口及び濾液排出口を有する容器に中空糸膜が充填されたタイプのものである。前記中空糸膜モジュールでは、前記導入口または導出口から中空糸膜の内側に細胞懸濁液が導入される。細胞懸濁液は、中空糸膜の内側の空間を満たしながら、中空糸膜壁に設けられた微細孔を通過して中空糸膜の外側に夾雑物や培地成分を含む濾液が排出され、この濾液は濾液排出口を介して中空糸膜モジュールから排出される。一方、中空糸膜の内側にある濃縮された細胞懸濁液は前記導出口または導入口を介して中空糸膜モジュールから排出される。
前記中空糸膜モジュールとしては、前記構成を有するものであればよく特に限定はないが、例えば、図1(a)に示す中空糸膜モジュール1が挙げられる。中空糸膜モジュール1を構成する容器は、胴部2とその両側の頭部3A、3Bからなり、上方側にある頭部3A付近には濾液排出口5a、下方側にある頭部3B付近には濾液排出口5bが備えられている。
頭部3Aには導入口6、頭部3Bには導出口7がそれぞれ設けられている。導入口6および導出口7は、中空糸膜の内側に細胞懸濁液が出入りする出入口のことであり、どちらから導入、導出させても良い。さらに、細胞懸濁液のみならず、洗浄液およびプライミング液についても同様である。なお、図1〜4では、中空糸膜モジュール1、1’の垂直方向上側の口を導入口6、垂直方向下側の口を導出口7として説明する。
前記胴部2の内部には、装填された中空糸膜の束8と、頭部3Aの内部に設けられた中空糸膜の束8を胴部2内部に固定するとともに中空糸膜の開口端9を形成している樹脂層部10、更に頭部3Bの内部に設けられたこれと同等の構造を有している。この樹脂層部10および開口端9は、頭部3A(或いは頭部3B)に被冠された構造となっており、導入口6、導出口7と濾液排出口5a、5bが中空糸膜を構成する壁材により隔てられ、連続しない構造となっている。
また、別の態様の中空糸膜モジュールとしては、図1(b)に示すように、濾液排出口5aのみを有する(濾液排出口5bがない)中空糸膜モジュール1’が挙げられる。
なお、図1(a)、1(b)に示す中空糸膜モジュール1、1’は、各部分を容器の胴部2、頭部3A、頭部3Bというように区別しているが、これは便宜的なものである。設計上、容器の胴部2と頭部3Aおよび頭部3Bが別々のパーツから形成されている場合でも、導入口6と導出口7が中空糸膜を構成する壁材で隔てられることなく連続しており、更に導入口6および導出口7と濾液排出口5a、5bとが中空糸膜を構成する壁材により隔てられている構造を備えていれば、各種構造をとることが可能である。
前記中空糸膜モジュールにおいて濾液排出口の数としては単数でも、2個でもよく、特に限定はないが、濾液排出口を2箇所設ける場合には、洗浄液を含む濾液用の濾液排出口の位置を、中空糸膜モジュールの下側末端から前記濾液排出口のいずれか一方までの距離xが中空糸膜モジュールの垂直方向の長さLと比べてL/2≧xとなる位置に調整することで、濾液中の夾雑物や培地成分が排出されるまでの滞留可能な容積を小さくすることができる。
例えば、図2に示す中空糸膜モジュール1においては、濾液排出口5a、5bが設けられており、洗浄液を含む濾液用の濾液排出口として、垂直方向下側の前記濾液排出口5bを用いる。この場合、「中空糸膜モジュールの下側末端から濾液排出口までの距離x」とは、前記中空糸膜モジュール1内の導出口7の下方末端から濾液排出口5bの中心までの距離をいう。
xは中空糸膜モジュールの垂直方向の長さLと比べてL/2≧xとなる位置に調整されていれば特に限定されないが、具体的なxの値として、4〜25cmが好ましく、4〜20cmがより好ましく、4〜10cmがさらに好ましい。
「中空糸膜モジュールの垂直方向の長さL」とは、前記中空糸膜モジュール1内の導出口7の下方末端から導入口6の上方末端までの距離をいう。
Lの値は特に限定はないが、具体的には15〜50cmであることが好ましく、20〜40cmであることがより好ましい。
また、前記中空糸膜モジュールの垂直方向の長さL(cm)、2箇所の濾液排出口間の距離y(cm)との比率をL:y=3:1〜10:9の範囲に調整することで、濾液排出口を切り替えることによる洗浄効果が発揮しやすくすることができる。前記比率は、L:y=3:1〜3:2の範囲に調整することがより好ましい。
前記2箇所の濾液排出口間の距離yとは、例えば、図2に示す中空糸膜モジュール1において、垂直方向上側の濾液排出口5aの中心から下側の濾液排出口5bの中心までの距離をいう。
前記yの値は5〜45cmであることが好ましく、15〜45cmであることがより好ましい。
前記中空糸膜モジュールは、細胞への細菌の混入を防ぐ観点から、滅菌したものでもよい。滅菌方法は、特に限定されず、γ線滅菌、電子線滅菌、EOG滅菌、高圧蒸気滅菌などの医療用具の滅菌に汎用されている滅菌方法を好適に用いることができる。
中空糸膜モジュールの容器の素材として、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、アクリロニトリル、ブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等を使用できる。特に耐滅菌性を有する素材、具体的にはポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン等が好ましい。
中空糸膜を固定する樹脂層部の素材としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびシリコン樹脂など一般的な接着材料が好ましく用いることができる。
前記中空糸膜モジュールには、中空糸膜を10〜1000本程度束ねたものを容器内に充填していることが好ましい。なお、本発明において、中空糸膜の配置は、直線状になっていても、撓んでいても、らせん状になっていてもよく、導入口と導出口の間に中空糸膜の両端が保持されていれば特に形状は限定されない。
なお、細胞濃縮を行う際の中空糸膜は鉛直方向に配置されていても、水平方向に配置されていても、斜め方向に配置されていてもよいが、濾液排出口の切り替えることによる洗浄効果が発揮しやすい観点から、中空糸膜が鉛直方向に配置している方がより好ましい。
本発明に用いられる中空糸膜の樹脂材料は、材料の安全性、安定性などの点から合成高分子材料が好ましく用いることができる。この中でも、ポリスルホン系又はセルロース系の親水性の高分子材料がより好ましく用いることができる。さらに、ポリエーテルスルホン、セルロースエステルが材料の安全性、安定性、入手のしやすさから最も好適に用いることができる。
また、中空糸膜の壁に設けられた孔の孔径は0.1μm以上1.5μm以下が好ましい。前記孔径が0.1μm未満であると、細胞懸濁液の濃縮時に不要な蛋白質などの夾雑物を効率的に除去できないため好ましくない。一方、前記孔径が1.5μmを超えると細胞の大きさに近い孔径の孔が中空糸膜に存在するため、細胞懸濁液を濃縮する工程において孔への詰まりが生じ、細胞回収率が大きく低下する可能性があるため好ましくない。
前記孔径は、1.5μm以下が好ましく、1.2μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。
前記孔径は、中空糸膜の平均孔径を指し、一般的にパームポロメーターにより測定、算出される。
本発明でいう細胞としては、例えば人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、脂肪由来間質幹細胞、多能性成体幹細胞、骨髄ストローマ細胞、造血幹細胞等の多分化能を有する生体幹細胞、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞などのリンパ球系の細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、顆粒球、赤血球、血小板、神経細胞、筋細胞、線維芽細胞、肝細胞、心筋細胞などの体細胞、遺伝子の導入や分化などの処理を行った細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、胎児細胞などの希少細胞が例示される。
また、細胞懸濁液は、前記細胞を含む懸濁液であれば特に限定されないが、例えば、脂肪、皮膚、血管、角膜、口腔、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、神経、筋肉、前立腺、腸、羊膜、胎盤、臍帯などの生体組織を酵素処理や破砕処理や抽出処理や分解処理や超音波処理などをした後の懸濁液、血液や骨髄液を密度勾配遠心処理や濾過処理や酵素処理や分解処理や超音波処理などの前処理をして調製された細胞懸濁液等が例示される。
また、前記に例示した細胞を生体外で培養した後の細胞懸濁液を使用することができる。細胞を生体外で培養するときの培養液の例としては、DMEM、α−MEM、MEM、IMEM、RPMI−1640等が挙げられる。また、サイトカイン、抗体やペプチドなどの刺激因子を添加した培養液も使用できる。
以下に、本発明の各工程を詳しく説明する。
(濃縮工程)
本発明の細胞濃縮液の製造方法は、まず、細胞懸濁液を前記中空糸膜モジュールの導入口または導出口から送液し、濾液を前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された濾液排出口から排出しながら細胞懸濁液を濃縮する。
本工程では、前記中空糸膜モジュールを、細胞懸濁液から濾過される濾液用の濾液排出口が垂直方向上側にあるように配置する。このように濾液排出口を垂直方向上側に配置することで、前記濾液排出口にかかる濾液の圧力が、垂直方向下側に配置した場合に比べて低減されるために、濃縮時に中空糸膜の内腔を流れる細胞による中空糸膜の目詰まりを抑えて効率のよい細胞濃縮を行うことができる。
例えば、図1(a)、1(b)に示す中空糸膜モジュール1、1’では、垂直方向上側にある濾液排出口5aが本工程で用いる濾液排出口になる。
また、本工程の実施形態としては、例えば、図3に示すように、中空糸膜モジュール1の導入口6と、貯留容器12を含む回路11を介して導出口7とを接続し、中空糸膜モジュール1の導出口7から排出された細胞懸濁液を、再び中空糸膜モジュール1内の中空糸膜の内側に流入させ、細胞懸濁液中の液体を中空糸膜の孔から排出させることで、細胞懸濁液中の細胞成分がさらに濃縮されるように構成することが挙げられる。このように細胞懸濁液を循環させて濃縮を繰り返すことにより、所望の細胞濃度にまで濃縮された細胞懸濁液が生成されることになる。
細胞懸濁液については、前記回路11に接続された貯留容器12に貯留する。濃縮開始時には、細胞懸濁液が充填された貯留容器12を回路11に接続し、次いで、前記貯留容器12と中空糸膜モジュール1との間の回路11にあるポンプ14aを駆動させて、中空糸膜モジュール1の導入口6または導出口7から所定量の細胞懸濁液を導入する。前記ポンプ14aの位置としては、図3に示すように、中空糸膜モジュール1の頭部3にある導入口6と貯留容器12との間の回路11または図示しないが、ヘッダー部4の導出口7と貯留容器12との間の回路11のいずれかに設置されていればよい。
前記中空糸膜モジュール1の垂直方向上側にある濾液排出口5aおよび垂直方向下側にある濾液排出口5bにはチューブが接続され、それぞれのチューブどうしが合流して廃液容器15に接続される。濾液排出口5aの出口側にはバルブ13a、濾液排出口5bの出口側にはバルブ13bが設置されて濾液の流れの調整ができるようになっている。また、前記合流後のチューブにはポンプ14bが設けられていてもよい。
前記中空糸膜モジュール1の中空糸膜8から排出された濾液については、垂直方向上側にある濾液排出口5aからポンプ14bを駆動して廃液容器15に排出する。
この場合、下側にある濾液排出口5bから濾液が排出されないように、前記濾液排出口5bの出口付近にあるバルブ13bを閉じておく。
本工程の細胞懸濁液の濃縮率は、前記中空糸膜モジュール1の導出口7または導入口6から回路11を介して貯留容器12に戻った細胞懸濁液の容量を測定したり、貯留容器12内の細胞懸濁液をサンプリングして細胞濃度を測定したりすればよい。
前記中空糸膜モジュール1の導出口7と貯留容器12との間の回路11には分岐部16が設けられており、前記分岐部16にはチューブを介して回収容器17が接続されている。また、前記分岐部16と前記貯留容器12との間の回路11にはバルブ13c、前記分岐部16と回収容器17との間のチューブにはバルブ13dが設けて回路11での細胞懸濁液などの流れを調整することを可能にしている。
また、本工程の別の実施形態としては、図4に示すように、中空糸膜モジュール1’を用いた形態が挙げられる。図4に示す態様では、垂直方向下側の濾液排出口5bを備えていないため、図3に示す中空糸膜モジュール1のように前記バルブ13bを閉じる操作が不要であるが、この操作以外は、図3に示す中空糸膜モジュール1と基本的に同じ操作を行えばよい。
また、本工程において、前記中空糸膜モジュールに導入するときの細胞懸濁液の線速度は、一定であってもよいが、前記線速度を2段階に変えて濃縮を行うことで、プライミング操作を省略でき、操作時間を短縮しつつ細胞回収率を向上させることができる。
前記2段階の線速度としては、1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)をa<bの関係を満たすように調整することで、1段階目をプライミングの目的で実施し、中空糸膜内を細胞懸濁液で満たすことができるため全ての中空糸膜を有効に使用できる。その後2段階目で線速度を速くすることにより、濃縮時間を短縮しながら、効率よく細胞懸濁液を濃縮できるため好ましい。
中でも、1段階目で中空糸膜内の空気を膜外に十分に押し出し、2段階目で効率よく濃縮するという観点から、前記1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)の比率をa:b=1:1.2〜1:32の範囲に調整することが好ましく、a:b=1:10〜1:20の範囲に調整することがより好ましい。
このように2段階の線速度で濃縮を行う場合、1段階目については効率よく中空糸膜内の空気を膜外に押し出すことができ、2段階目については細胞へのダメージを極力低減させ、かつ短時間で細胞回収率の高い細胞濃縮液を製造する観点から、前記1段階目の線速度aが35〜300cm/分の範囲、2段階目の線速度bが370〜1100cm/分の範囲で調整すればよく、線速度bについては390〜590cm/分の範囲に調整することがより好ましい。
前記線速度とは中空糸膜モジュール内の中空糸内腔断面を単位時間あたりに通過する細胞懸濁液量で、細胞懸濁液の中空糸膜モジュールへの流入速度(流速)を細胞懸濁液処理器内の中空糸内腔の全断面積で除して算出することができる。
また、本工程における濾過速度、中空糸膜面積などの他の濃縮条件については特に限定はない。
本工程の終了は、例えば、細胞懸濁液から排出された濾液の量が所定の量に到達したことを確認すること、貯留容器12内の細胞懸濁液をサンプリングして細胞濃度を測定することなどで判断すればよい。具体的には、濃縮された細胞懸濁液の中空糸膜モジュールへの流入を停止することで本工程を終了すればよい。
(切り替え工程)
本発明では、前記濃縮工程後に、前記濾液排出口の位置を前記中空糸膜モジュールの垂直方向下側に切り替える。このように濾液排出口の位置を切り替えることで、後述の洗浄工程を行った際に、中空糸膜モジュール内に残っている夾雑物や培地成分を含む濾液を速やかに中空糸膜モジュールの外部に排出することができる。
前記のように濾液排出口を切り替える実施形態としては、例えば、図3に示す形態が挙げられる。図3に示す形態では、中空糸膜モジュール1の垂直方向上側に設けた濾液排出口5aと垂直方向下側に設けた濾液排出口5bのそれぞれ出口側にあるバルブ13a、13bを開閉することで切り替えを行う。すなわち、濃縮工程時には前記バルブ13bを閉じて、垂直方向上側の濾液排出口5aから濾液を排出し、続く切り替え工程時に前記バルブ13aを閉じて、かわりに前記バルブ13bを開き、垂直方向下側の濾液排出口5bから濾液を排出することで、濾液排出口を切り替える。なお、前記濾液排出口5a、5bの開閉は、バルブ以外の公知の手法で行ってもよい。
また、濾液排出口を切り替える他の実施形態としては、例えば、図5に示す形態が挙げられる。図5に示す形態は、図4に示す形態で濃縮を行った後の形態であり、図4に示す中空糸膜モジュール1’を回路11から外して、上下の向きを変えて、再度回路11に接続している。このため、濾液排出口5aの位置が図4では垂直方向上側から、図5では垂直方向下側に切り替えられている。同時に、導入口6と導出口7の位置も上下で反転している。
また、他の実施形態としては、一つの濾液排出口をスライドさせることで位置を切り替えてもよい。このような中空糸膜モジュールとしては、図示しないが、例えば、濾液排出口の位置を中空糸膜モジュールの長軸方向にスライドして変動できるように構成した中空糸膜モジュールが挙げられる。この態様の中空糸膜モジュールでは、図4、5に示すように、中空糸膜モジュール1’を回路11から取り外すことなく切り替えを行うことができる。前記スライドの機構としては、中空糸膜モジュールから濾液が排出できるのであればよく、特に限定はない。
(洗浄・回収工程)
本発明では、前記切り替え工程後に、洗浄液を前記導入口または導出口から送液し、濾液を前記濾液排出口から排出しながら細胞を洗浄した後、細胞濃縮液を前記導出口から回収する。
本工程では、洗浄液を中空糸膜モジュールに導入することで、中空糸膜モジュールおよび前記導入口と導出口とを接続する回路内にある濃縮された細胞懸濁液に含まれる夾雑物および培地成分を濾液として中空糸膜の外側に排出する。そして、前記切り替え工程によって、中空糸膜モジュールの垂直方向下側に切り替えられた濾液排出口から、前記濾液が速やかに排出されることで、前記濾液中の夾雑物および培地成分が再度中空糸膜の内側へ移動することを防ぐことができるために、洗浄・濃縮を効率よく行うことができ、不純物の含有量が極めて低い細胞濃縮液を得ることができる。
例えば、図3に示す実施形態では、貯留容器12に、洗浄液を充填した溶液バッグを接続し(図示せず)、洗浄液を貯留容器12に導入する。次いで、ポンプ14aを駆動して、洗浄液を導入口6または導出口7から中空糸膜モジュール1に導入する。中空糸膜の外側に排出された濾液についてはポンプ14bを駆動して垂直方向下側にある濾液排出口5bから廃液容器15に排出する。また、生成された細胞濃縮液は、回路11を介して貯留容器12に戻す。
前記洗浄・濃縮を続けながら、貯留容器12内にある細胞濃縮液をサンプリングして夾雑物および培養成分の濃度が所定量以下になったことを確認して、前記の洗浄を終了する。
次に、前記分岐部16と貯留容器12との間のバルブ13cを閉じ、分岐部16と回収容器17との間のバルブ13dを開き、再度、ポンプ14aを駆動して、細胞濃縮液を回収容器17に導入して回収する。
また、図5に示す実施形態でも、図3に示す実施形態と同様に洗浄・回収操作を行う。すなわち、貯留容器12に、洗浄液を充填した溶液バッグを接続し(図示せず)、洗浄液を貯留容器12に導入した後、ポンプ14aを駆動して洗浄液を、導入口6または導出口7から中空糸膜モジュール1に導入する。中空糸膜の外側に排出された濾液については垂直方向下側にある濾液排出口5aからポンプ14bを駆動して廃液容器15に排出する。また、生成された細胞濃縮液は、回路11を介して貯留容器12に戻す。
前記洗浄・濃縮を続けながら、貯留容器12内にある細胞濃縮液をサンプリングして夾雑物および培養成分の濃度が所定量以下になったことを確認して、前記の洗浄を終了する。
次に、前記分岐部16と貯留容器12との間のバルブ13cを閉じ、分岐部16と回収容器17との間のバルブ13dを開き、再度、ポンプ14aを駆動して、細胞濃縮液を回収容器17に導入して回収する。
本工程では、前記中空糸膜モジュールに導入するときの洗浄液の線速度は、前記濃縮工程における細胞懸濁液の線速度と同じであればよく、特に限定はない。
また、本工程の洗浄条件としては、前記線速度に調整できればよく、例えば、濾過速度、中空糸膜面積などの他の条件については特に限定はない。
前記洗浄液としては、回収目的の細胞を損傷したりしなければ特に限定はないが、生理食塩水、リンゲル液、細胞培養に用いる培地、リン酸緩衝液等の一般的な緩衝液が好ましい。
(プライミング工程)
また、本発明では、前記濃縮工程の前に、前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された前記濾液排出口から排気しながら、プライミング液を前記導入口または導出口から送液してもよい。
本工程では、プライミング液が中空糸膜の内側に導入されることで押し出された空気が、前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置した濾液排出口から速やかに排出されるため、プライミングを効率よく行うことができる。
前記プライミング液としては、生理食塩液、蒸留水、リンゲル液に代表される輸液や、無機塩、糖類、血清、タンパク質を含む液体、緩衝液、血漿、培地等が挙げられる。特に安全性の観点から生理食塩液や輸液を好適に用いることができる。また、血清、血漿、タンパク質を含む液体は、中空糸膜の表面をタンパク質でコーティングすることによって、細胞の中空糸膜への接着が抑制され、細胞回収率の向上が期待できることから、プライミング液として好適に用いることができる。プライミング液は1種類の液体である必要はなく、これらの群から2つ以上の液体を混合して使用することもできる。2つの液体を混合して使用する例としては、アルブミンを添加した生理食塩液や、血清を添加した培地といった組み合わせが挙げられる。
例えば、図3に示す実施形態では、貯留容器12にプライミング液を導入し、ポンプ14aを駆動して、回路11を介して導入口6または導出口7からプライミング液を中空糸膜モジュール1に導入する。中空糸膜モジュール1では垂直方向上側の濾液排出口5aの出口側にあるバルブ13aを開けて、ここから排気を行えばよい。
また、図4に示す実施形態では、貯留容器12にプライミング液を導入し、ポンプ14aを駆動して、回路11を介して導入口6または導出口7からプライミング液を中空糸膜モジュール1に導入する。中空糸膜モジュール1では垂直方向上側の濾液排出口5aの出口にあるバルブ13aを開けて、ここから排気を行えばよい。
以上のようにして得られる細胞濃縮液における細胞は、純度が99%以上と非常に高くなっていることから、そのまま各種疾患の治療用途に提供することができる。
したがって、本発明は、前記製造方法で得られる細胞濃縮液をヒトや非ヒト動物に投与する各種疾患の治療方法に関する。
前記治療方法としては、細胞障害性T細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞などの免疫細胞を使用したがんに対する免疫細胞療法、間葉系幹細胞などの多分化能を有する生体幹細胞を使用した、骨、関節、血管、臓器などの組織再生に対する細胞移植治療法、間葉系幹細胞を使用した移植片対宿主病(GVHD)治療法が挙げられる。これらの治療に用いられる細胞は、iPS細胞、ES細胞より誘導した細胞や、各種遺伝子を導入した細胞を使用することもできる。さらに、前記製造方法で得られる細胞濃縮液は、細胞濃縮液に新鮮な培地を加え、再び培養を行う培地交換の用途としても好適に使用することができる。
なお、本発明は、図1(a)、1(b)、2に示す中空糸膜モジュールや図3、4、5に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨に反しない範囲で各種変更することができる。
以下、実験結果を用いて本発明を説明する。
本実施例においては、細胞濃縮液中に含まれる蛋白質またはアルブミンまたはIgGの総量を細胞懸濁液中に含まれる蛋白質またはアルブミンまたはIgGの総量で除した値をパーセントで表示したもの、すなわち総蛋白除去率とアルブミン除去率とIgG除去率が99%以上を維持できることを特徴とするが、これらの値が高いほど洗浄効率が優れていることを示す。細胞濃縮液中の総蛋白量は、蛋白濃度(mg/mL)を測定し、細胞懸濁液量(mL)との値の積で算出することができる。また、アルブミンおよびIgGについても同様である。
ここでいう「細胞回収率」とは、回収容器に回収した細胞濃縮液中の細胞数を、処理をする前の細胞懸濁液中の細胞数で除した値をパーセントで表示したものであり、値が高いほど回収効率が優れていることを示す。細胞数は、細胞懸濁液を血球カウンター(シスメックス、K−4500)により測定し、白血球分画の細胞濃度(個/mL)を本実施例での細胞濃度として算出し、細胞懸濁液量(mL)と細胞濃度(個/mL)の値の積で算出することができる。
また、ここでいう「細胞生存比率」とは、回収容器に回収した細胞濃縮液中の細胞の生存率を、処理をする前の細胞懸濁液中の細胞の生存率で除した値をパーセントで表示したものであり、値が高いほど細胞に与えるダメージが少ないことを示す。細胞生存率は{細胞生存率(%)=100−死細胞率(%)}により算出される。
死細胞率(%)は、細胞濃度が1mLあたり10の6乗個になるよう調製した各細胞懸濁液100μLに対し、via−probe(日本BD社製、商品名:BD Via−Probe Cell Viability Solution)を10μL加え10分間室温暗所で静置させた後、フローサイトメーター(日本BD社製、商品名:FACSCanto)に取り込み、via−probeの陽性率(%)として測定することができる。
実施例に使用する細胞懸濁液には、培養したJurkat細胞を含有する細胞懸濁液(10%FBS入りRPMI1640培地)1500mL、洗浄液には生理食塩液1000mLを使用した。
以下に実施例を示す。
(実施例1)
図3に示す態様の製造装置を用いた。すなわち、中空糸膜モジュール1の導入口6と導出口7に塩化ビニル製チューブをつなげ、導出口7側のチューブには流路の切り替えが可能な二股の分岐部16を設けた。分岐部16の一方の端部は回収容器17と接続し、もう一方の端部は貯留容器12に接続した。導入口6側のチューブも貯留容器12に接続し、溶液が中空糸膜モジュール1およびチューブ内を循環できるように回路11を形成した。前記回路11のチューブにはポンプ14aを設置し、細胞懸濁液の流れが適当な流速に設定できるようにした。
また、前記分岐部16と貯留容器12との間には二方活栓13c、前記分岐部16と回収容器17との間には二方活栓13dを設置して貯留容器12または回収容器17に細胞懸濁液の流路を切り替えられるようにした。
さらに、中空糸膜モジュール1の垂直方向上側の濾液排出口5a、垂直方向下側の濾液排出口5bにもそれぞれ二方活栓13a、13bを備えたチューブを取り付け、両方のチューブを合流させてポンプ14bを取り付け、こちらは廃液容器15に注ぐように設置した。なお、予め二方活栓13aを開き、二方活栓13bを閉じて、濾液が垂直方向上側の濾液排出口5aから排出されるようにしておいた。
ポンプ14aにより流速を450mL/分(線速度580cm/分)に調整しながら、貯留容器12内の細胞懸濁液を導入口6から中空糸膜モジュール1内に通液した。細胞懸濁液を循環させながら、細胞懸濁液を貯留している貯留容器12から全ての細胞懸濁液がなくなるまで濾過を行った(濃縮)。濾液は、前記濾液排出口5aからポンプ14bを駆動させて廃液容器15に導入した。
前記濃縮工程終了後、二方活栓13aを閉じ、二方活栓13bを開いて、中空糸膜モジュールの垂直方向下側の濾液排出口5bから濾液を排出できるように切り替えた。
次に、貯留容器12内に生理食塩液を1000mL入れ、同様に450mL/分(線速度580cm/分)の流速で導入口6から中空糸膜モジュール1内に通液し、希釈された細胞懸濁液を循環させながら濾過を行うことで細胞懸濁液の洗浄を行った。
貯留容器12内の生理食塩液がなくなるまで濾過を行った後、回収容器17に連結したチューブに流路を切り替えて、中空糸膜モジュール1および回路11内の細胞濃縮液を75mL/分の速さで押し出して回収容器17に回収した。
中空糸膜モジュール1については,ポリエーテルスルホン製の中空糸型分離膜〔品名:MF020 TYPE−1、中空糸内径570μm、孔径0.2μm、東洋紡社製〕を300本用いて作製した。
また、全長Lは27cm、中空糸膜モジュール1端部からの濾液排出口5bの位置xは4cm、濾液排出口5a、5b間の距離yは18cmであった。
作製した中空糸膜モジュール1の濾過面積は0.12m、中空糸型分離膜の総断面積は0.77cmであった。
得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.89%、アルブミン除去率は99.83%、IgG除去率は99.96%であった。また、細胞回収率は88%、生存比率は97%であった。
(実施例2)
実験系、送液速度および中空糸膜モジュールについては実施例1と同様とした。上記濃縮工程終了後、濾液排出口5aを濾液排出口5bに切り替える工程を実施し、洗浄を行った。このとき、中空糸膜モジュール1の全長Lは27cmであり、濾液排出口5bの位置xは13cm、濾液排出口5a、5b間の距離yは9cmであった。
その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.88%、アルブミン除去率は99.57%、IgG除去率は99.43%であった。また、細胞回収率は84%、生存比率は93%であった。
(実施例3)
実験系、送液速度および中空糸膜モジュールについては実施例1と同様とした。上記濃縮工程終了後、濾液排出口5aを濾液排出口5bに切り替える工程を実施し、洗浄を行った。このとき、中空糸膜モジュール1の全長Lは27cm、濾液排出口5bの位置xは4cmであり、L:y=3:2であった。その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.88%、アルブミン除去率は99.82%、IgG除去率は99.96%であった。また、細胞回収率は86%、生存比率は93%であった。
(実施例4)
実験系および中空糸膜モジュールについては実施例3と同様とし、上記濃縮工程において、中空糸膜モジュール1の垂直方向上側の濾液排出口5aの位置まで細胞懸濁液が満たされるまでの線速度をa、細胞懸濁液を貯留している貯留容器12から全ての細胞懸濁液がなくなるまでの線速度をbとして、濃縮時の線速度を2段階に切り替えた。このときのa:b=1:26であった。その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.89%、アルブミン除去率は99.92%、IgG除去率は99.97%であった。また、細胞回収率は84%、生存比率は98%であり、処理時間は10分であった。
(実施例5)
実験系および中空糸膜モジュールについては実施例4と同様とし、a=40cm/分、b=580cm/分とした。その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.92%、アルブミン除去率は99.91%、IgG除去率は99.98%であった。また、細胞回収率は87%、生存比率は93%であり、処理時間は13分であった。
(実施例6)
実験系および中空糸膜モジュールについては実施例4と同様とし、a:b=1:3.5、a=40cm/分、b=140cm/分とした。その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.94%、アルブミン除去率は99.92%、IgG除去率は99.96%であった。また、細胞回収率は73%、生存比率は95%であり、処理時間は31分であった。
(比較例1)
実験系、送液速度および中空糸膜モジュールについては実施例1と同様とした。上記濃縮工程終了後、濾液排出口の位置を切り替えずに洗浄工程でも垂直方向上側の濾液排出口5aから濾液を排出した。このとき、中空糸膜モジュール1の全長Lは27cmであり、濾液排出口の位置xは22cmであった。また、L:y=27:0であった。その結果、得られた細胞濃縮液での総蛋白除去率は99.84%、アルブミン除去率は99.14%、IgG除去率は98.81%であった。また、細胞回収率は
87%、生存比率は94%であった。処理時間は13分であった。
実施例1〜6では、濃縮後に濾液排出口を垂直方向上側から下側に切り替えているため、切り替えを行っていない比較例1と比べて、得られる細胞濃縮液の総蛋白除去率、アルブミン除去率、IgG除去率がより優れていること、特に、実施例1〜6では、アルブミン除去率が99.57%以上、およびIgG除去率が99.43%以上となっており、不純物の含有量が顕著に低減された、非常に純度の高い細胞濃縮液が製造されていることがわかる。
また、実施例5では、濃縮工程における1段目の線速度を40cm/分、2段目の線速度を580cm/分とすることで、実施例6のように2段目の線速度140cm/分とすることに比べて、短時間で細胞回収率を有意に高くできることがわかる。
1.中空糸膜モジュール
2.胴部
3A、3B.頭部
5a、5b.濾液排出口
6.導入口
7.導出口
8.中空糸膜の束
9.開口端
10.樹脂層部
11.回路
12.貯留容器
13a、13b、13c、13d.バルブ
14a、14b.ポンプ
15.廃液容器
16.分岐部
17.回収容器

Claims (8)

  1. 導入口、導出口及び濾液排出口を備え、中空糸型分離膜が充填された中空糸膜モジュールを用いる細胞濃縮液の製造方法であって、
    細胞懸濁液を前記中空糸膜モジュール内に送液し、濾液を前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された濾液排出口から排出しながら細胞懸濁液を濃縮する工程、
    前記濾液排出口の位置を前記中空糸膜モジュールの垂直方向下側に切り替える工程、及び
    洗浄液を前記中空糸膜モジュール内に送液し、濾液を前記濾液排出口から排出しながら細胞を洗浄した後、細胞濃縮液を回収する工程
    を含み、
    前記細胞懸濁液を濃縮する工程において、2段階の線速度で濃縮し、前記2段階の線速度において、1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)がa<bの関係を満たし、前記1段階目の線速度aが35〜300cm/分であり、2段階目の線速度bが370〜1100cm/分であることを特徴とする細胞濃縮液の製造方法。
  2. 前記中空糸膜モジュールにおいて濾液排出口を2箇所設け、洗浄液を含む濾液用の濾液排出口の位置を、中空糸膜モジュールの下側末端から前記濾液排出口のいずれか一方までの距離xが中空糸膜モジュールの垂直方向の長さLと比べてL/2≧xとなる位置に調整する請求項1に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  3. 前記中空糸膜モジュールの垂直方向の長さL(cm)、2箇所の濾液排出口間の距離y(cm)との比率がL:y=3:1〜10:9である請求項2に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  4. 前記中空糸膜モジュールの向きを変えることで前記濾液排出口の位置を切り替える請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  5. 前記1段階目の線速度a(cm/分)と2段階目の線速度b(cm/分)の比率が、a:b=1:1.2〜1:32である請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  6. 細胞懸濁液を濃縮する工程の前に、前記中空糸膜モジュールの垂直方向上側に配置された前記濾液排出口から排気しながら、プライミング液を前記中空糸膜モジュール内に送液する工程を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  7. 前記中空糸膜モジュールに充填された中空糸型分離膜の孔径が0.1μm以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の細胞濃縮液の製造方法。
  8. 前記中空糸膜モジュールに充填された中空糸型分離膜の内径が300〜1000μmである請求項1〜のいずれか1項に記載の細胞濃縮液の製造方法。
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