一実施形態のプリンタ1について図1〜図9を参照しつつ説明する。以下の説明では、図1の紙面右側をプリンタ1の前側Fとし、紙面奥側をプリンタ1の右側Rとし、紙面上側をプリンタ1の上側Uとする。プリンタ1は、例えばブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーを用いてカラー画像を形成可能な直接転写タンデム方式のカラーレーザプリンタである。プリンタ1は、画像形成装置の一例である。以下の説明では、プリンタ1の各構成部品や用語を色毎に区別する場合、その構成部品等の符号の末尾に各色を意味するK(ブラック)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)を付すものとする。図1では、各色間で同一の構成部品については、適宜符号が省略されている。
プリンタ1は、本体ケース1A内に、供給部2、画像形成部3、搬送機構4、定着部5、および、マークセンサ6、温度センサ7、および、カバーセンサ8を備える。本体ケース1Aの上面には、カバー1Bが開閉可能に設けられている。
供給部2は、プリンタ1の最下部に設けられ、複数枚のシートWを収容可能なトレイ11、ピックアップローラ12、搬送ローラ13,および、レジストレーションローラ14を有する。トレイ11に収容されたシートWは、ピックアップローラ12により1枚ずつ取り出され、搬送ローラ13,レジストレーションローラ14を介して搬送機構4に送られる。
搬送機構4は、ベルト23が駆動ローラ21と従動ローラ22との間に架け渡された構成である。ベルト23は像担持体の一例である。駆動ローラ21が回動すると、ベルト2
3は、感光ドラム42と対向する側の表面が、後方向へ移動し、レジストレーションローラ14から送られてきたシートWが、画像形成部3から定着部5へと搬送される。ベルト23内には、後述する4つの転写ローラ24K〜24Cが、シートWの搬送方向、すなわち前後方向に沿って並んでいる。
画像形成部3は、形成部の一例であり、露光部30、および、4個のプロセス部31K〜31Cを有する。
露光部30は、マルチビーム走査部の一例であり、各色につき2つの光源を有し、2つの光源それぞれから出射された2本の光ビームによって2本の走査ラインを同時に各色の感光ドラム42に形成可能である。露光部30は、第1光源32、第2光源33、ポリゴンミラー34、ポリゴンモータ35、レンズ36,および、反射ミラー37を有する。第1光源32および第2光源33は、後述する4色の現像ローラ44それぞれに対応して4組設けられている。また、第1光源32および第2光源33は、例えばレーザダイオードであり、互いに同一パッケージ内に配置されたものでもよいし、互いに異なるパッケージ内に配置されたものでもよい。
図2には、ブラックの感光ドラム42Kを露光するための構成が例示されている。ポリゴンミラー34は、回転多面鏡の一例であり、ポリゴンモータ35によって回転駆動され、第1光源32からの光ビームL1および第2光源33からの光ビームL2を、反射面34Aで反射させて偏向する。偏向された各光ビームL1,L2は、レンズ36および反射ミラー37を介して、感光ドラム42Kに照射される。
第1光源32および第2光源33は、光ビームL1,L2が、感光ドラム42K上において副走査方向、換言すれば感光ドラム42Kの回転方向に間隔を空けて照射されるように配置されている。露光部30は、第1光源32および第2光源33の少なくとも1つを、後述する印刷命令に対応する画像データに応じて発光させることにより、感光ドラム42Kの表面に走査ラインを形成して静電潜像を形成する。なお、同図中のLS1は光ビームL1で形成された第1走査ラインを示し、LS2は光ビームL2で形成された第2走査ラインを示す。
4個のプロセス部31K〜31Cは、上記搬送方向、すなわち前後方向に沿って並んでいる。以下、4個のプロセス部31K〜31Cは、トナーの色以外は、同様の構成であるものとし、ブラックに対応するプロセス部31Kを例に挙げて具体的構成を説明する。
プロセス部31Kは、上記転写ローラ24K、帯電器41、感光ドラム42K、トナーボックス43、および、現像ローラ44Kを有する。感光ドラム42Kは感光体、像担持体の一例であり、現像ローラ44Kは現像部の一例である。ブラックのトナーボックス43および現像ローラ44は無彩色現像部の一例であり、ブラック以外のトナーボックス43および現像ローラ44は有彩色現像部の一例である。
帯電器41は、感光ドラム42Kの表面を一様に帯電させる。現像ローラ44Kは、トナーボックス43内のトナーを感光ドラム42K上へ供給することによって、露光部30が形成した上記静電潜像を現像して、感光ドラム42K上にブラックのトナー像を形成する。転写ローラ24Kは、ベルト23を介して、感光ドラム42Kに対向するように配置されており、感光ドラム42K上に形成されたトナー像をシートWに転写する。
こうして各色のトナー像が転写されたシートWは、搬送機構4により定着部5へと搬送され、定着部5にてトナー像が熱定着され、プリンタ1の上面に排出される。
マークセンサ6は、センサの一例であり、ベルト23上におけるマークの有無に応じた検出信号を出力する。具体的には、マークセンサ6は、図3に示すように、ベルト23の右側に配置されたセンサ6Rと,ベルト23の左側に配置されたセンサ6Lとによって構成されている。
各センサ6R,6Lは、例えばLED等の発光素子6Aと、例えばフォトトランジスタ等の受光素子6Bとを有する反射型の光学センサである。マークセンサ6は、発光素子6Aにてベルト23の表面上の検出領域Eに対して光を照射し,その光を受光素子6Bが受光する構成になっている。そして、マークセンサ6は、プロセス部31K〜31Cによって形成され、ベルト23上に転写されたマークが検出領域E内に有る場合と無い場合との受光素子6Bでの受光量の違いに応じた検出信号を出力する。以下、マークセンサ6は、受光量が多いほど、信号レベルの高い検出信号を出力するものとする。また、ベルト23は、各トナーよりも光反射率が高く、マークが検出領域E内に無いとき、マークが検出領域E内に有るときに比べて、マークセンサ6の受光量が多くなるものとする。
温度センサ7は、本体ケース1A内の温度に応じた検出信号を出力する。カバーセンサ8は、カバー1Bの開閉状態に応じた検出信号を出力する。
図4に示すように、プリンタ1は、上述した供給部2等に加え、駆動部4A、中央処理装置(以下、CPU)51、ROM52、RAM53、不揮発性メモリ54、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)55、表示部56、受付部57を有する。
駆動部4Aは、感光ドラム42や上記搬送機構4を回転駆動するものであり、CPU51の制御により、感光ドラム42の回転速度や搬送機構4の搬送速度を変更することができる。
ROM52には、各種のプログラムが記憶されており、各種のプログラムには、例えば、後述する制御処理等を実行するためのプログラムや、プリンタ1の各部の動作を制御するためのプログラムが含まれる。RAM53は、CPU51が各種のプログラムを実行する際の作業領域や、データの一時的な記憶領域として利用される。不揮発性メモリ54は、NVRAM、フラッシュメモリ、HDD、EEPROMなどの書き換え可能なメモリであればよい。
CPU51は、制御部の一例である。CPU51は、ROM52から読み出したプログラムに従って、プリンタ1の各部を制御する。ASIC55は、例えば画像処理専用のハード回路である。表示部56は、液晶ディスプレイやランプ等を有し、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。受付部57は、複数のボタンを有し、ユーザによる各種の入力指示を受け付け可能な操作部や、無線通信方式または有線通信方式により、図示しない外部装置と通信を行う通信部などである。
図5から図9を参照して、CPU51が実行する制御内容について説明する。図8,9には、後述する色ずれ取得用マーク61および光源間ずれ取得用マーク71,72が例示されており、同図中のLD1は第1走査ラインLS1が現像された第1トナーラインを示し、LD2は第2走査ラインLS2が現像された第2トナーラインを示す。プリンタ1の電源がオンされると、CPU51は、例えば受付部57が印刷命令を受け付けたか否かを判断し、受付部57が印刷指令を受け付けたと判断したことを条件に、図5に示す制御処理を実行する。なお、印刷命令は、シートWに対して画像を形成する印刷動作をプリンタ1に実行させるための命令である。
図5に示すように、CPU51は、色ずれの発生要因の変化量に基づき、前回の色ずれ
の調整処理の実行時からの色ずれ推定量を取得する(S1)。色ずれは、各色のプロセス部31同士の、シートWに対する画像の転写位置のずれであり、具体的には、基準色の転写位置に対する調整色の転写位置の相対的なずれである。色ずれの調整処理は、その色ずれを軽減するように調整色の転写位置を調整する処理である。以下、基準色はブラック、調整色はイエロー、マゼンタ、シアンであるものとする。また、色ずれには、主走査方向のずれと、副走査方向のずれが含まれる。
CPU51は、S1において、前回の色ずれの調整処理の実行時からの発生要因の変化量を取得し、その変化量を、予め実験等によって定められた単位変化量に対する色ずれ量のテーブルに基づき換算して、当該発生要因に起因する色ずれ推定量を取得する。なお、CPU51は、テーブルを利用せずに、変化量から、演算式によって、色ずれ推定量を取得してもよい。複数の発生要因を考慮する場合には、CPU51は、発生要因ごとに推定量を求めて、それらの合算量を、色ずれ推定量とする。なお、CPU51は、発生要因ごとの推定量の合算量に限らず、発生要因ごとの推定量の平均値を色ずれ推定量としてもよいし、また、発生要因ごとに異なる重み係数を推定量に乗算し、乗算後の推定量の合計量を、色ずれ推定量としてもよい。
色ずれの発生要因は様々であり、例えばカバー1Bの開閉回数、本体ケース1Aの温度変化や湿度変化などが挙げられる。以下、色ずれの発生要因として、カバー1Bの開閉回数および本体ケース1Aの温度変化を考慮するものとする。CPU51は、温度センサ7からの検出信号に基づき、前回の色ずれの調整処理の実行時からの温度変化量を取得し、カバーセンサ8からの検出信号に基づき、前回の色ずれの調整処理の実行時からのカバー1Bの開閉回数を取得する。
CPU51は、色ずれ推定量を取得すると、色ずれ取得の実行条件を満たすか否かを判断する(S2)。CPU51は、上記色ずれ推定量が第1基準量に達した場合、色ずれ取得の実行条件を満たすと判断し(S2:YES)、これに応じて、図6に示す色ずれ取得処理を実行する(S3)。
図6に示すように、CPU51は、色ずれ取得用のパターン60のデータを不揮発性メモリ54から読み出して(S11)、駆動部4Aに、搬送機構4および感光ドラム42等を回転駆動する動作を開始させ、画像形成部3に、色ずれ取得用のパターン60をベルト23上に形成する動作を開始させる(S12)。S12の処理は位置マーク形成処理、位置ずれマーク形成処理の一例である。
具体的には、画像形成部3は、図3に示すように、色ずれ取得用のパターン60を、ベルト23の両端の位置、即ち、センサ6R、6Lの各検出領域Eを通過する位置に形成する。以下、検出領域Eは、複数本のトナーライン分の幅を有するものとする。この色ずれ取得用のパターン60は、ブラックのマーク61K、イエローのマーク61Y、マゼンタのマーク61M、シアンのマーク61Cが副走査方向に沿って並べられたマーク群である。各マーク61は、一の方向に長く延びた一対の棒状マークからなり、その少なくとも一方が主走査方向に対して所定の角度だけ傾いた形状をなす。図3等には、一対の棒状マークが、いずれも主走査方向に対して同じ角度だけ傾いた形状のマーク61が例示されている。
CPU51は、回転される各色の感光ドラム42K〜42Cに対し、第1光源32および第2光源33がそれぞれ出射する2本の光ビームL1,L2の走査ラインLS1,LS2で、色ずれ取得用マーク61の静電潜像を形成する動作を、露光部30に行わせる。具体的には、露光部30は、図2に示すように、第1光源32および第2光源33がそれぞれ出射した2本の光ビームL1,L2を、ポリゴンミラー34の同じ反射面34Aで同時に反射させて、各感光ドラム42に対して、2本の走査ラインを同時に形成させる。これにより、1個の光源からの光ビームで露光する場合に比べて、露光速度を速くすることができる。
S12の処理では、露光部30は、シートWへの印刷動作時と同様、常に、ポリゴンミラー34の1回の走査によって第1走査ラインLS1および第2走査ラインLS2をセットで形成する。このため、各色ずれ取得用マーク61は、副走査方向の両端には、互いに異なる光源によって形成されたトナーラインが位置する。つまり、副走査方向において、各色ずれ取得用マーク61の一端は、第1トナーラインLD1であり、他端は、第2トナーラインLD2である。色ずれ取得用マーク61は位置ずれ取得用マーク及び位置取得用マークの一例である。
CPU51は、色ずれ取得用のパターン60の形成開始後、マークセンサ6から出力され、各色のマーク61の副走査方向の両端に応じた検出信号のレベルに基づき、色ずれ量を取得する(S13,S14)。具体的には、図8に示すように、マークセンサ6からの検出信号のレベルは、棒状マークの副走査方向の一端が検出領域Eを通過する際に第1閾値TH1を下回り、棒状マークの副走査方向の他端が検出領域Eを通過する際に第1閾値TH1を上回る。CPU51は、マークセンサ6からの検出信号のレベルが、第1閾値TH1を下回るタイミングに対応した位置XD1と上回るタイミングに対応した位置XU1との中心の位置XC1を、棒状マークの位置として検出する(S13)。
CPU51は、各色のマーク61について、一方の棒状マークの位置XC1と他方の棒状マークの位置XC1との中心の位置XZ1を、当該マーク61の副走査方向の位置とし、基準色のマーク61Kに対する各調整色のマーク61Y、61M、61Cの副走査方向における間隔D1をそれぞれ算出する。基準色と調整色のマーク間の間隔D1は、基準色に対する調整色の副走査方向の色ずれ量に応じて変化する。このため、CPU51は、調整色ごとに、副走査方向における色ずれ量を取得することができ(S14)、この色ずれ量を不揮発性メモリ54に記憶する。
また、CPU51は、各マーク61の一方の棒状マークの位置XC1と他方の棒状マークの位置XC1との間隔D2を算出し、基準色のマーク61Kに対する各調整色のマーク61Y、61M、61Cの棒状マーク同士の間隔D2の差をそれぞれ算出する。この棒状マーク同士の間隔D2の差は、基準色に対する調整色の主走査方向の色ずれ量に応じて変化する。このため、CPU51は、調整色ごとに、主走査方向における色ずれ量を取得することができ(S14)、この色ずれ量を不揮発性メモリ54に記憶する。
CPU51は、色ずれ量を取得すると、図5のS7に進み、その色ずれ量を相殺するように各調整色の転写位置を調整しつつ、印刷命令に対応する画像データに基づき、シートWへの印刷動作を画像形成部3に行わせる。図6のS13〜図5のS7まで処理は位置調整処理の一例である。CPU51は、印刷動作の終了後に制御処理を終了する。
S2で、CPU51は、色ずれ取得の実行条件を満たさないと判断したことに応じて(S2:NO)、光源間ずれの発生要因の変化量に基づき、前回の光源間ずれの調整処理の実行時からの光源間ずれ推定量を取得する(S4)。S4の処理は推定処理の一例である。光源間ずれは、第1光源32からの光ビームL1が感光ドラム42に形成する静電潜像と、第2光源33からの光ビームL2が感光ドラム42に形成する静電潜像との相対的なずれ、即ち、光源間の静電潜像の形成間隔のずれである。この光源間ずれは、各色に対応する第1光源32および第2光源33の組ごとに生じ得る。また、光源間ずれには、主走査方向のずれと、副走査方向のずれが含まれる。
具体的には、CPU51は、前回の光源間ずれの調整処理の実行時からの発生要因の変化量を取得し、その変化量を、予め実験等によって定められた単位変化量に対する光源間ずれ量のテーブルに基づき換算して、当該発生要因に起因する光源間ずれ推定量を求める。なお、CPU51は、テーブルを利用せずに、変化量から、演算式によって、光源間ずれ推定量を取得してもよい。複数の発生要因を考慮する場合には、CPU51は、発生要因ごとに推定量を求めて、それらの合算量を、光源間ずれ推定量とする。なお、CPU51は、発生要因ごとの推定量の合算量に限らず、発生要因ごとの推定量の平均値を光源間ずれ推定量としてもよいし、また、発生要因ごとに異なる重み係数を推定量に乗算し、乗算後の推定量の合計量を、光源間ずれ推定量としてもよい。
光源間ずれの発生要因は様々であり、例えば光学的誤差、機械的誤差、温度上昇による光学系の変動や、光ビームの波長の変動などが挙げられる。以下、光源間ずれの発生要因として、本体ケース1Aの温度変化を考慮するものとする。これらの発生要因は光源間の静電潜像の形成間隔の変動要素の一例である。
CPU51は、光源間ずれ推定量を取得すると、光源間ずれ取得の実行条件を満たすか否かを判断する(S5)。CPU51は、上記光源間ずれ推定量が第2基準量に達した場合、光源間ずれ取得の実行条件を満たすと判断し(S5:YES)、これに応じて、図7に示す光源間ずれ取得処理を実行する(S6)。
図7に示すように、CPU51は、光源間ずれ取得用のパターン70のデータを不揮発性メモリ54から読み出す(S21)。この光源間ずれ取得用のパターン70は、ブラックの第1マーク71Kおよび第2マーク72K、イエローの第1マーク71Yおよび第2マーク72Y、マゼンタの第1マーク71Mおよび第2マーク72M、シアンの第1マーク71Cおよび第2マーク72Cが副走査方向に沿って並べられたマーク群である。各マーク71,72は、マークの一例であり、一対の棒状マークからなり、その少なくとも一方が主走査方向に対して所定の角度だけ傾いた形状をなす。図9には、一対の棒状マークが、いずれも主走査方向に対して同じ角度だけ傾いた形状のマーク71,72が例示されている。
図9に示すように、第1マーク71は、第1光源32からの光ビームL1が形成する静電潜像の位置を取得するためのマークであり、各棒状マークは、少なくとも副走査方向の両端に第1トナーラインLD1が位置している。具体的には、第1マーク71の各棒状マークは、複数本の第1トナーラインLD1が副走査方向に間隔を空けて形成され、且つ、各第1トナーラインLD1同士の間に第2トナーラインLD2が形成された形状である。
このように、第1マーク71は、各第1トナーラインLD1同士の間に第2トナーラインLD2が形成された形状である。このため、各第1トナーラインLD1同士の間に第2トナーラインLD2が形成されていない形状である場合に比べて、ベルト23上における第1マーク71の有無によるマークセンサ6の検出信号のレベルの変化量が大きくなる。従って、検出信号のレベルの変化量が小さいことに起因して光源間の静電潜像の形成間隔の調整精度が低下することを抑制することができる。
また、第1マーク71の各棒状マークでは、各第2トナーラインLD2は、ベルト23の搬送方向前において最も近くに位置する第1トナーラインLD1及び搬送方向後において最も近くに位置する第1トナーラインLD1の、2本の第1トナーラインLD1同士の主走査方向における共通範囲以内に収まっている。具体的には、各第2トナーラインLD2は、その主走査方向の両端が、最も近くに位置する2本の第1トナーラインLD1よりも内側に位置している。これにより、各第2トナーラインLD2の主走査方向の両端が、最も近くに位置する2本の第1トナーラインLD1よりも外側にはみ出る場合に比べて、第2トナーラインLD2に起因して光ビームL1が形成する静電潜像の位置の取得精度が低下することを抑制し、ひいては光源間の静電潜像の形成間隔の調整精度が低下することを抑制することができる。
更に、第1マーク71の各棒状マークでは、全ての第1トナーラインLD1は長さが同じであり、且つ、主走査方向に同量Z2ずつずれている。そして、そのずれ量Z2は、上記色ずれ取得用マーク61におけるトナーラインLD1同士のずれ量Z1(図8参照)よりも小さい。これにより、第1マーク71の第1トナーラインLD1同士のずれ量が色ずれ取得用マーク61と同じ場合に比べて、光源間ずれ量の取得における分解能の低下を抑制することができる。
第2マーク72は、第2光源33からの光ビームL2が形成する静電潜像の位置を取得するためのマークであり、各棒状マークは、少なくとも副走査方向の両端に第2トナーラインLD2が位置している。具体的には、第2マーク72の各棒状マークは、複数本の第2トナーラインLD2が副走査方向に間隔を空けて形成され、且つ、各第2トナーラインLD2同士の間に第1トナーラインLD1が形成された形状である。
要するに、第2マーク72は、第1マーク71に対して、第1トナーラインLD1と第2トナーラインDL2とが入れ替わった形状であり、これ以外の点は共通するため、説明を省略する。以下、各マーク71,72について、第1トナーラインLD1および第2トナーラインLD2のうち、両端に位置するトナーラインを形成した光源31または32と同じ光源によって形成されたトナーラインを対象ラインといい、両端に位置するトナーラインを形成した光源31または32と異なる光源によって形成されたトナーラインを非対象ラインという。
ここで、光源間ずれが大きいと、実際に形成された第1マーク71や第2マーク72では、各非対象ラインの主走査方向の少なくとも一端が、最も近くに位置する2本の対象ラインよりも外側、すなわち副走査方向にはみ出る可能性が高くなる。そこで、CPU51は、光源間ずれ取得用のパターン70を読み出した後、上述した光源間ずれ推定量が大きいほど、その読み出した光源間ずれ取得用のパターン70の各マーク71,72の非対象ラインを短くし(S22,S23)、S24に進む。
具体的には、CPU51は、光源間ずれ推定量が規定量を超えるか否かを判断し(S22)、規定量を超えると判断したことに応じて(S22:YES)、各マーク71,72の非対象ラインの主走査方向の両端が、より内側に位置するように短くする(S23)。即ち、第1マーク71については第2トナーラインLD2を短くし、第2マーク72については第1トナーラインLD1を短くする。これにより、主走査方向における光源間ずれに起因して光源間の静電潜像の形成間隔の調整精度が低下することを抑制することができる。
一方、CPU51は、光源間ずれ推定量が規定量を超えないと判断したことに応じて(S22:NO)、S23の処理をせずに、S24に進む。S24では、CPU51は、駆動部4Aに、搬送機構4および感光ドラム42等を回転駆動し、画像形成部3に、光源間ずれ取得用のパターン70をベルト23上に形成する動作を開始させる。S24の処理はマーク形成処理、マーク形成工程の一例である。S24では、搬送機構4の搬送速度および感光ドラム42の回転速度等は、シートWへの印刷動作時(上記図3のS7)や色ずれ取得用のパターン60の形成時(上記図6のS12)の2分の1より速く、以下では、シートWへの印刷時等と同じであるものとする。これにより、感光体の回転速度をシートへの印刷時の2分の1にしつつ、副走査方向において同一光源の光ビームの走査ライン同士が間隔をあけずに配列されたマークを形成する従来の構成に比べて、マークを高速で形成
することができる。
具体的には、画像形成部3は、色ずれ取得用のパターン60と同様、光源間ずれ取得用のパターン70をベルト23の両端の位置、即ち、センサ6R、6Lの各検出領域Eを通過する位置に形成する。具体的には、CPU51は、回転される各色の感光ドラム42K〜42Cに対し、第1光源32および第2光源33がそれぞれ出射する2本の光ビームL1,L2の走査ラインLS1,LS2で、第1マーク71および第2マーク71の静電潜像を形成する動作を、露光部30に行わせる。
具体的には、露光部30は、図2に示すように、第1光源32および第2光源33がそれぞれ出射した2本の光ビームL1,L2を、ポリゴンミラー34の同じ反射面34Aで同時に反射させて、各感光ドラム42に対して、2本の走査ラインを同時に形成させ、最初の走査あるいは最後の走査だけ、第1光源32および第2光源33のいずれか一方をオフさせる。これにより、各マーク71,72のトナーライン数は奇数になる。これにより、同一の光源からの光ビームと、他の光源からの光ビームとを、ポリゴンミラー34の互いに異なる反射面34Aで反射させる場合に比べて、マーク71,72を高速で形成することができる。
CPU51は、光源間ずれ取得用パターン70の形成開始後、マークセンサ6から出力され、各色のマーク71,72の副走査方向の両端に応じた検出信号のレベルに基づき、光源間ずれ量を取得する(S25,S26)。具体的には、図9に示すように、マークセンサ6からの検出信号のレベルは、マーク71,72の棒状マークの副走査方向の一端が検出領域Eを通過する際に第2閾値TH2を下回り、棒状マークの副走査方向の他端が検出領域Eを通過する際に第2閾値TH2を上回る。CPU51は、マークセンサ6からの検出信号のレベルが、第2閾値TH2を下回るタイミングに対応した位置XD2と上回るタイミングに対応した位置XU2との中心の位置XC2を、棒状マークの位置と検出する(S25)。
ここで、マーク71,72は、非対象ラインが短い分だけ、色ずれ取得用マーク61に比べて、マークセンサ6からの検出信号のレベル変化が小さい。そこで、第2閾値TH2は、上記第1閾値TH1よりも、検出領域E内にマークが無いときにマークセンサ6から出力される検出信号の信号レベルに近い値になっている。これにより、第2閾値TH2が第1閾値TH1と同じレベルである場合に比べて、各マーク71,72の位置を正確に検出し、光源間の静電潜像の形成間隔を正確に調整することができる。
CPU51は、色毎に、マーク71,72それぞれについて、一方の棒状マークの位置XC2と他方の棒状マークの位置XC2との中心の位置XZ2を、当該マーク71,72の副走査方向の位置とし、両マーク71,72の副走査方向における間隔D3を算出する。この間隔D3は、副走査方向の光源間ずれ量に応じて変化する。このため、CPU51は、色ごとに、副走査方向における光源間ずれ量を取得することができ(S26)、この光源間ずれ量を不揮発性メモリ54に記憶する。
また、CPU51は、マーク71,72それぞれについて、一方の棒状マークの位置XC2と他方の棒状マークの位置XC2との間隔D4を算出し、両マーク71,72間における棒状マーク同士の間隔D4の差を算出する。この棒状マーク同士の間隔D4の差は、主走査方向の光源間ずれ量に応じて変化する。このため、CPU51は、色ごとに、主走査方向における光源間ずれ量を取得することができ(S26)、この光源間ずれ量を不揮発性メモリ54に記憶する。
CPU51は、光源間ずれ量を取得すると、図5のS7に進み、主走査方向の光源間ずれ量を相殺するように各色の露光開始タイミングを調整しつつ、印刷命令に対応する画像データに基づき、シートWへの印刷動作を画像形成部3に行わせる。なお、副走査方向の光源間ずれ量は、例えばシートWに対する転写位置の調整等に利用される。図7のS25〜図5のS7まで処理は光源間調整処理、光源間調整工程の一例である。
なお、S5で、CPU51は、光源間ずれ取得の実行条件を満たさないと判断したことに応じて(S5:NO)、S3,S6の処理をせずに、S7に進む。
本実施形態によれば、2個の光源32,33それぞれについて、少なくとも副走査方向における両端が同一光源からの光ビームの走査ラインで形成され、且つ、副走査方向において同一光源からの光ビームの走査ライン同士の間隔が空いているマーク71,72の静電潜像が形成される。そして、これらのマーク71,72を用いて、光源間の静電潜像の形成間隔が調整される。これにより、従来とは異なる構成により、光源間の静電潜像の形成間隔を調整することができる。
図10,11は別の実施形態を示す。上記実施形態との相違は、光源間ずれ取得処理にあり、その他の点は上記実施形態と同様である。従って、上記実施形態と共通するところは同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
図5のS5で、CPU51は、光源間ずれ取得の実行条件を満たすと判断したことに応じて(S5:YES)、図10に示す光源間ずれ取得処理を実行する(S6)。CPU51は、光源間ずれ取得用のパターン80のデータを不揮発性メモリ54から読み出す(S31)。この光源間ずれ取得用のパターン80は、ブラックの第1マーク81Kおよび第2マーク82K、イエローの第1マーク81Yおよび第2マーク82Y、マゼンタの第1マーク81Mおよび第2マーク82M、シアンの第1マーク81Cおよび第2マーク82Cが副走査方向に沿って並べられたマーク群である。各マーク81,82は、マークの一例であり、一対の棒状マークからなり、その少なくとも一方が主走査方向に対して所定の角度だけ傾いた形状をなす。図11には、一対の棒状マークが、いずれも主走査方向に対して同じ角度だけ傾いた形状のマーク81,82が例示されている。
図11に示すように、第1マーク81は、第1光源32からの光ビームL1が形成する静電潜像の位置を取得するためのマークであり、各棒状マークは、第1トナーラインLD1のみで形成されている。具体的には、第1マーク81の各棒状マークは、複数本の第1トナーラインLD1が副走査方向に間隔を空けて形成され、且つ、各第1トナーラインLD1同士の間に第2トナーラインLD2が形成されていない形状である。これにより、上記マーク71,72に比べて、マークの形成負担を軽減することができ、また、トナーの使用量を節約することができる。
更に、第1マーク8の各棒状マークでは、全ての第1トナーラインLD1は長さが同じであり、且つ、主走査方向にずれている。そして、そのずれ量は、上記色ずれ取得用マーク61よりも小さい。これにより、第1マーク81の第1トナーラインLD1同士のずれ量が色ずれ取得用マーク61と同じ場合に比べて、光源間ずれ量の取得における分解能の低下を抑制することができる。
第2マーク82は、第2光源33からの光ビームL2が形成する静電潜像の位置を取得するためのマークであり、各棒状マークは、第2トナーラインLD2のみで形成されている。具体的には、第2マーク82の各棒状マークは、複数本の第2トナーラインLD2が副走査方向に間隔を空けて形成され、且つ、各第2トナーラインLD2同士の間に第1トナーラインLD1が形成されていない形状である。要するに、第2マーク82は、第1マーク81に対して、第1トナーラインLD1と第2トナーラインLD2とが入れ替わった
形状であり、これ以外の点は共通するため、説明を省略する。
ここで、感光ドラム42の劣化度合いが高くなると、トナーの付着量が減少し、マークセンサ6からの検出信号のレベル変化が小さくなり得る。そこで、CPU51は、光源間ずれ取得用のパターン80を読み出した後、感光ドラム42の劣化度合いが高いほど、その読み出した光源間ずれ取得用のパターン80の各マーク81,82の対象ラインの本数を増やし、且つ、間隔を狭くし(S32,S33)、S24に進む。
具体的には、CPU51は、感光ドラム42の劣化度合いを取得する。CPU51は、例えば感光ドラム42の新品時からの回転回数やシートWの印刷枚数等に基づき、劣化度合いを取得する。CPU51は、感光ドラム42の劣化度合いが規定度合いを超えるか否かを判断し(S32)、規定度合いを超えると判断したことに応じて(S32:YES)、各マーク81,82を構成する対象ラインの本数を増加させ、且つ、対象ラインの副走査方向の間隔を狭くする(S33)。
CPU51は、例えば、各マーク81,82をベルト23に形成する際の感光ドラム42の回転速度や搬送機構4の搬送速度を、上記シートWへの印刷時等に比べて遅くすることで、対象ラインの本数を増加させ、且つ、対象ラインの副走査方向の間隔を狭くすることができる。これにより、マーク81,82の有無によるマークセンサ6の検出信号の信号レベルの変化量が小さくなることが抑制される。このため、感光ドラム42の劣化に起因して光源間の静電潜像の形成間隔の調整精度が低下することを抑制することができる。
一方、CPU51は、感光ドラム42の劣化度合いが規定度合いを超えないと判断したことに応じて(S32:NO)、S33の処理をせずに、S24に進む。なお、S32の処理は、劣化判定処理の一例である。なお、感光ドラム42に限らず、ベルト23の劣化度合いに基づき、劣化判定処理を実行してもよい。
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
「画像形成装置」は、直接転写タンデム方式のカラーレーザプリンタに限らず、例えば中間転写方式や、4サイクル方式など他の方式の画像形成装置でもよい。また、画像形成装置は、カラーの画像形成装置のみならず、モノクロ専用の画像形成装置でもよい。更に、画像形成装置は、プリンタ単体、コピー機、ファクシミリ装置、複合機でもよい。
「マルチビーム走査部」は、3個以上の光源を有し、感光体に対して、3個以上の光源それぞれから出射された光ビームによって同時に3本以上の走査ラインを形成可能な構成でもよい。また、上記実施形態では、露光部30は、4色に対して1つのポリゴンミラー34を利用する構成であったが、色毎にポリゴンミラー34を備える構成でもよい。
「センサ」は、上記マークセンサ6に限らず、例えば、感光ドラム42上に形成されたマークの静電潜像またはトナー像に応じた検出信号を出力するセンサでもよい。
図6のS13,図7,10のS25において、CPU51は、例えばヒステリシスコンパレータを利用して、2つの閾値と信号レベルとの比較に基づき、各マーク61,71,72,81,82を検出してもよい。
「制御部」は、1つのCPU51により図5〜7、10の各処理を実行する構成であった。しかし、これに限らず、制御部は、複数のCPUにより図5等の各処理を実行する構成、ASIC55などの専用のハード回路のみにより図5等の各処理を実行する構成や、CPUおよびハード回路により図5等の各処理を実行する構成でもよい。
色ずれ取得や光源間ずれ取得の実行条件は、ずれ推定量を利用せずに、例えば、前回のずれ取得処理の実行時からのシートWの印刷枚数が規定枚数に達したこと、プリンタ1の通電時間が規定時間に達したことや、受付部57がずれ取得の実行指示を受け付けたことなどでもよい。
マーク61,71,72,81,82は、副走査方向に沿った棒状マークでもよい。
第1マーク71および第2マーク72は、非対象ラインの主走査方向のおける少なくとも一端が、最も近くに位置する2本の対象ラインからはみ出る形状でもよい。
マーク71,72,81,82の対象ライン同士がずれ量が、色ずれ取得用マーク61のずれ量以上でもよい。
例えばポリゴンミラー34の回転に対する対象ラインの形成タイミングを変更することによって、対象ライン同士の間隔を変更することができる。そこで、
S33において、ポリゴンミラー34が複数回転するごとに対象ラインを1本形成する動作から、1回回転するごとに対象ラインを1本形成する動作に変えることによって、対象ライン同士の間隔を変更してもよい。
無彩色のトナーと有彩色のトナーとでは、色特性の相違により、それらのトナーによって現像されたマークの有無によるマークセンサ6の検出信号レベルの変化量が互いに異なり得る。そこで、有彩色トナーで現像するマーク71,72,81,82を、無彩色トナーで現像するマーク71,72,81,82に比べて、対象ラインの数が多く、かつ、対象ライン同士の間隔が狭くなるように形成してもよい。これにより、トナーの色特性の相違に起因して光源間の静電潜像の形成間隔の調整精度が低下することを抑制することができる。