JP6523917B2 - 遠心ポンプ - Google Patents
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Description
このような遠心ポンプにおいては、インペラの側板とケーシングの内壁面との間に形成される隙間(漏れ流路)に流れる流体の旋回流の速度が前記の溝や固定羽根によって低減される。これにより遠心ポンプは、前記隙間での圧力を増加させることによって軸スラストを低減し、スラスト軸受に対する負荷を軽減する。
また、従来の遠心ポンプ(例えば、特許文献1、2参照)では放射状の溝の形成や固定羽根の取り付けなどにより製造工程が複雑化する。
本実施形態に係る遠心ポンプは、従来の遠心ポンプの軸スラスト対策(例えば、特許文献1、2参照)とは異なって、前記の放射状の溝や固定羽根を設けることなく、漏れ流路における流体の旋回を抑制する構成とした。すなわち、本実施形態に係る遠心ポンプの軸スラスト対策は、漏れ流路(後記する第1側室)とインペラの流体の吐出口が臨む主流路(以下、単に「主流路」と称する)との間で延びるようにケーシングの内壁面に溝を有していることを主な特徴とする。
図2は、本実施形態に係る遠心ポンプ100のインペラ10近傍を部分的に拡大した部分拡大縦断面図であり、主軸17の中心線を境に上半体側を示している。
なお、以下の説明における前後の方向は、前シュラウドとも称される後記の側板13(図2参照)、及び後シュラウドとも称される後記の主板11(図2参照)に対応させて、図2の矢印で示す前後の方向を基準とする。
図1中、符号11は、インペラ10の主板であり、符号12は、インペラ10の羽根であり、符号23は、遠心ポンプ100における流体の入口であり、符号25は、遠心ポンプ100における流体の出口であり、符号24は、ボリュートであり、符号Rは、インペラ10の回転方向である。
そして、本実施形態の主板11における側板13側の面は、前側の吸込口15から後方に向かうほどインペラ10の遠心方向に沿うように漸近する曲面となっている。
側板13の主板11との対向面は、主板11の前記の曲面と対応するように吸込口15から後方に向かうほどインペラ10の遠心方向に沿うように漸近する曲面となっている。
側板13は、前記のように主板11との間でインペラ10における流体の昇圧流路14を形成している。また、側板13は、前記のようにインペラ10の前側で主軸17及び主板11との間に流体の吸込口15を形成し、インペラ10の外周側で主板11との間に流体の吐出口16を形成している。この側板13は、前記のように前シュラウドとも称され、主板11との間に羽根12を挟持している。
本実施形態でのインペラ10は、長さ方向に湾曲する6枚の羽根12が渦巻状に配設されるものを想定しているが、羽根12の数はこれに限定されるものではなく、5枚以下、7枚以上とすることもできる。ちなみに、羽根12は、図1の符号Rの矢印で示すインペラ10の回転方向に向かって中程が凸となるように湾曲するものを想定しているが、湾曲しない羽根12を用いることもできる。
羽根12は、主板11(図2参照)と側板13との間を周方向に等間隔に仕切って昇圧流路14を形成している。
この対向面20aは、インペラ10の側板13の板面との間に第1側室30を形成している。この第1側室30は、特許請求の範囲にいう「側室」に相当する。
また、ケーシング20は、インペラ10の主板11の板面との間に第2側室31を形成している。
この対向面20bは、インペラ10の側板13における外周端面との間に第1隙間S1を形成している。
第1側室30は、この第1隙間S1を介して主流路22と連通している。また、ケーシング20は、吸込口15を主軸17周りで囲み、側板13の前側外周部を内嵌する筒部36を有している。第1側室30は、側板13の前側外周部と、ケーシング20の筒部36との間に形成される第2隙間S2を介して供給路21と連通している。
なお、図2中、符号34aで示す矢印は、供給路21から吸込口15への流体の流れを表し、符号34bで示す矢印は、昇圧流路14から主流路22への流体の流れを表し、符号34cで示す矢印は、第1側室30を流れる後記の「漏れ流れ」を表している。
図3に示すように、本実施形態での溝部33は、断面視で矩形を呈しており、溝部33の深さよりも溝幅の方が長く設定されている。
溝部33は、側板13の外周部の端面に対して第1隙間S1を介して離れるケーシング20の対向面20b(第2対向面)の周方向に沿って、等間隔に複数形成されている。本実施形態では、ケーシング20に9つの溝部33を有するものを想定しているが、本発明は、8つ以下又は10以上の溝部33を有する構成とすることもできる。
遠心ポンプ100は、原動機(図示省略)によって主軸17を介してインペラ10が回転駆動されると、昇圧流路14内の流体はエネルギが付与されて昇圧する。主流路22は、静止流路でありインペラ10により与えられた流体の速度を減速し圧力を回復させる。
この検証では、図2に示す第1隙間S1の軸方向において、漏れ流れ34cの入口AINから出口AOUTまでの漏れ流れ34cの旋回速度を、流体解析を行って求めた。その結果を図4に示す。
図4は、図2に示す遠心ポンプ100の第1隙間S1の入口AIN(図4中、隙間入口AINと記す)から出口AOUT(図4中、隙間出口AOUTと記す)までの軸方向の位置と、第1隙間S1における漏れ流れ34cの旋回速度(図4中、旋回速度と記す)との関係を示すグラフである。
図5は、図2に示す遠心ポンプ100の第1側室30の入口BIN(図5中、側室入口BINと記す)から第1側室30の出口BOUT(図5中、側室出口BOUTと記す)までの径方向の位置と、第1側室30の圧力(図5中、側室の圧力と記す)との関係を示すグラフである。
これに対して、実線で示す実施例1(溝あり)では、比較例1(溝なし)と比べて漏れ流れ34cの旋回速度が遅くなっている。具体的には、第1側室30付近(出口AOUT付近)での実施例1の旋回速度は比較例1の65%以下となっている。
つまり、本実施形態の遠心ポンプ100は、第1隙間S1を形成するケーシング20の内壁面に溝部33を有することで第1側室30の圧力を増加させ、インペラ10が吸込口15側(前側)に付勢される軸スラストを低減する。
このような本実施形態の遠心ポンプ100によれば、スラスト軸受に対する負荷を低減することができる。
前記実施形態では、渦巻型のボリュート(渦巻ケーシング)を有する渦巻ポンプについて説明したが、次に案内羽根を有するディフューザポンプについて説明する。ここでは、多段遠心ディフューザポンプを例にとって説明する。なお、以下の他の実施形態において、前記実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図6に示すように、遠心ポンプ100は、流体の入口及び出口が設けられる図示しない外部ケーシングと、この外部ケーシングの内部に配置されている内部ケーシング20とを有している。この内部ケーシング20は、特許請求の範囲にいう「ケーシング」に相当する。以下では、内部ケーシング20は、単に「ケーシング20」と称する。
また、ケーシング20には、隣り合うインペラ10の吐出口16と吸込口15とを繋ぐ連通路40が形成されている。ちなみに、複数段あるインペラ10のうち、最も上流側に位置するインペラ10の吸込口15は、遠心ポンプ100における流体の前記入口(図示省略)に連通し、最も下流側に位置するインペラ10の吐出口16は、遠心ポンプ100における流体の前記出口(図示省略)に連通している。
ディフューザ流路41は、径方向内側が昇圧流路14に連通しており、インペラ10によって昇圧された流体を径方向外側に向かって流通させる。このディフューザ流路41には主軸17を中心とした周方向に複数の案内羽根43が等間隔に配置されている。この案内羽根43は、いわゆるディフューザベーンであり、ディフューザを構成している。ちなみに、案内羽根43は、周方向に向かって配置される傾きが、後記するようにインペラ10の羽根12の傾きとは逆になっている(図7参照)。
リターン流路42は、一端側がディフューザ流路41に連通し、他端側が水返し羽根50を介して供給路21に連通している。
第1側室30は、インペラ10の側板13における外周端面と、ケーシング20との間に形成される第1隙間S1を介して主流路22と連通している。また、第1側室30は、側板13の前側外周部と、ケーシング20の筒部36との間に形成される第2隙間S2を介して供給路21と連通している。
そして、この遠心ポンプ100は、前記のように、第1側室30と主流路22との間で延びるようにケーシング20の対向面20b(第2対向面)に溝部33を有している。
この溝部33は、主軸17の延在方向に沿うようにケーシング20の対向面20bに形成されている。
なお、図6中、符号34aで示す矢印は、供給路21から吸込口15への流体の流れを表し、符号34cで示す矢印は、主流路22から第1側室30へと流れる後記の「漏れ流れ」を表している。
図7に示すように、本実施形態での溝部33は、断面視で矩形を呈しており、溝部33の深さよりも溝幅の方が長く設定されている。
溝部33は、側板13の外周部の端面に対して第1隙間S1を介して離れるケーシング20の内周面の周方向に沿って、等間隔に複数形成されている。本実施形態では、ケーシング20に9つの溝部33を有するものを想定しているが、本発明は、8つ以下又は10以上の溝部33を有する構成とすることもできる。
特に、溝部33の周方向の両端部のうち、インペラ10の回転方向Rの前側の端部33aを案内羽根43の内側先端43aに近接するように形成したものが望ましい。
また、周方向に隣り合う案内羽根43,43の位置と溝部33の周方向の幅Wとの関係においては、溝部33の幅Wは、角度θの半分以下(W≦θ/2)が望ましい。
そして、旋回速度の遅いこの逆流は、主流路22から第1隙間S1に向かう流れと一緒になって漏れ流れ34cを形成する。このような遠心ポンプ100によれば、案内羽根43によって生じた旋回速度の遅い逆流を溝部33に流入させることによって、第1側室30での流体(漏れ流れ34c)の旋回速度を効率よく低減することができる。
この検証では、図6に示す第1隙間S1の軸方向において、漏れ流れ34cの入口CINから出口COUTまでの漏れ流れ34cの旋回速度を測定した。その結果を図8に示す。
図8は、図6に示す遠心ポンプ100の第1隙間S1の入口CIN(図8中、隙間入口CINと記す)から第1隙間S1の出口COUT(図8中、隙間出口COUTと記す)までの軸方向の位置と、第1隙間S1における漏れ流れ34cの旋回速度(図8中、旋回速度と記す)との関係を示すグラフである。
これに対して、実線で示す実施例2(溝あり)では、比較例2(溝なし)と比べて漏れ流れ34cの旋回速度が遅いまま、出口COUTに到達することが検証された。
図9中、符号20はケーシングであり、符号33は溝であり、符号Rはインペラ10の回転方向である。
図9に示すように、この遠心ポンプ100は、溝部33の延在方向が遠心ポンプ100の軸方向(図示省略)に対して傾斜することで、インペラ10の回転方向Rに対して溝部33の延在方向が傾斜している。さらに詳しく説明すると、この溝部33は、インペラ10の回転方向Rに対して溝部33の延在方向が鋭角をなすように形成されている。
このような鈍角をなして傾斜する溝部33によれば、漏れ流れのベクトル方向と、溝部33の延在方向とのなす角度が、鋭角をなすものと比べてより直角に近づくため、漏れ流れの持つ旋回速度をより低減することができる。これにより遠心ポンプ100は、軸スラストをさらに低減することができる。
図10及び図11中、符号20はケーシングであり、符号33は溝であり、符号12はインペラ10の羽根であり、符号13はインペラ10の側板であり、符号43は案内羽根である。
このような溝部33を有する遠心ポンプ100によれば、ケーシングベース(図示省略)に対して簡単な切削工具で切削加工を行うことによって、簡単に溝部33を形成することができる。ちなみに、切削工具としては、例えばヤスリ、ドリルなどが挙げられる。
図12及び図13に示すように、ケーシング20(図12参照)は、溝部33が形成された溝部形成部材38を有している。この溝部形成部材38は、ケーシング20に嵌め込まれている。なお、図12中、符号30は第1側室である。図12及び図13中、符号12はインペラ10の羽根であり、符号13はインペラ10の側板であり、符号43は案内羽根である。
図14に示すように、溝33は溝部形成部材39に形成されている。この溝部形成部材39は、図13に示す複数の溝33ごとに別体に形成される溝部形成部材38と異なって、ケーシング20の内周側で周方向に沿って一体のリング状を呈している。そして、各溝33は、溝部形成部材39の内周側の所定の位置に形成されている。ちなみに、この溝部形成部材39は、図示しないが、図12に示す溝部形成部材38と同様にリング部材20dの内周側に嵌め込まれて配置されている。また、この溝部形成部材39は、リング部材20dに対して抜け止めとなるように、断面視でL字状に形成されている。
11 主板
11a 段差部
12 羽根
13 側板
14 昇圧流路
15 吸込口
16 吐出口(流体吐出口)
17 主軸
20 内部ケーシング(ケーシング)
20a 第1対向面
20b 第2対向面
21 供給路
22 主流路
24 ボリュート
30 第1側室(側室)
31 第2側室
33 溝部
33a 端部
38 溝部形成部材
39 溝部形成部材
40 連通路
41 ディフューザ流路
42 リターン流路
43 案内羽根
43a 内側先端
50 水返し羽根
100 遠心ポンプ
S1 第1隙間
S2 第2隙間
S3 第3隙間
Claims (4)
- 主板と側板との間に流体の昇圧流路を有するインペラと、
前記インペラを内側に収納するケーシングと、
前記インペラの外周側で前記昇圧流路の流体吐出口が臨むように前記ケーシング内に形成されている流体の主流路と、
を有する遠心ポンプであって、
前記側板の板面とこの板面に対向する前記ケーシングの第1対向面との間に形成される側室と、
前記側板の外周端面とこの外周端面を全周にわたって囲むように対向する前記ケーシングの第2対向面との間に形成されており、前記側室と前記主流路とを連通させる隙間と、
を備え、
前記隙間を形成する前記ケーシングの前記第2対向面には、前記側室と前記主流路との間で延びるように溝部が形成され、
前記溝部は、前記第2対向面の周方向に沿って等間隔に複数形成され、
前記インペラの半径方向の外側には、複数の案内羽根を有するディフューザを備え、前記溝部は、前記案内羽根の半径方向の内側先端に近接するように形成されていることを特徴とする遠心ポンプ。 - 主板と側板との間に流体の昇圧流路を有するインペラと、
前記インペラを内側に収納するケーシングと、
前記インペラの外周側で前記昇圧流路の流体吐出口が臨むように前記ケーシング内に形成されている流体の主流路と、
を有する遠心ポンプであって、
前記側板の板面とこの板面に対向する前記ケーシングの第1対向面との間に形成される側室と、
前記側板の外周端面とこの外周端面を全周にわたって囲むように対向する前記ケーシングの第2対向面との間に形成されており、前記側室と前記主流路とを連通させる隙間と、
を備え、
前記隙間を形成する前記ケーシングの前記第2対向面には、前記側室と前記主流路との間で延びるように溝部が形成され、
前記溝部は、径方向外側から径方向内側に見た平面視で、前記インペラの回転方向に対して傾斜するように形成されていることを特徴とする遠心ポンプ。 - 請求項1又は請求項2に記載の遠心ポンプにおいて、
前記溝部の断面形状は、多角形状又は円弧形状であることを特徴とする遠心ポンプ。 - 請求項1又は請求項2に記載の遠心ポンプにおいて、
前記溝部は、前記ケーシングとは別体の溝部形成部材が前記ケーシングに嵌め込まれて形成されていることを特徴とする遠心ポンプ。
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