JP6515385B2 - 溶銑予備処理方法及び溶銑予備処理制御装置 - Google Patents

溶銑予備処理方法及び溶銑予備処理制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、転炉を用いた溶銑予備処理において、脱珪処理終了時点を判定する溶銑予備処理方法及び溶銑予備処理制御装置に関する。
近年、転炉を用いた溶銑予備処理の技術の向上により、鋼材の高品質化が実現されてきた。溶銑予備処理の対象となる成分としては、PおよびSiなど、鋼材の品質に関わる成分が挙げられる。そのうち、溶銑からPを除去する脱リン処理は、溶銑予備処理において重要なプロセスである。
下記式(1)に脱リン反応式を示す。なお、下記式(1)において、「[物質X]」は溶銑中の物質Xを示し、「(物質Y)」はスラグ中の物質Yを示す。
Figure 0006515385
上記式(1)に示した脱リン反応を促進させて効率よくPを除去するためには、スラグ中CaO濃度およびスラグ中FeO濃度を高くすることが必要である。また、生成されたPをスラグに固定させるためには、スラグの塩基度((CaO)/(SiO))を適切な範囲内に制御する必要がある。スラグの塩基度の適切な範囲は、例えば、1.0〜3.0であることが知られており、塩基度が大きいほど脱リン反応が促進される。
一方、近年、高炉から出銑される溶銑に含まれるSi濃度が高くなっている。これは、高炉の構造が変化したことや、Si成分を多く含有する鉄鉱石の使用が増加したためと考えられている。吹錬において酸素が転炉内の溶銑に供給されると、熱力学的な観点から、溶銑中のSiは他の成分よりも優先的に酸化される。そのため、溶銑Si濃度が高い場合、生成されるSiOの量も多くなる。その場合、脱リン反応を促進させるために上述したスラグの塩基度を適切な範囲内に制御するには、より多くのCaO含有物質が必要となり、スラグの発生量も増加する。それゆえ、CaO含有物質の調達コストが増加する。また、CaO含有物質の使用量の増加に伴ってスラグの処理コストも増加する。
そこで、脱リン処理を実施する前に、転炉を用いて予め脱珪処理を実施する技術が提案されている。具体的には、脱リン処理を実施する前段階として、転炉において吹錬を用いた脱珪処理を行うことにより、脱リン処理前に予め溶銑Si濃度を低減させる技術が提案されている。これにより、CaO含有物質の投入量を低減することができる。CaO含有物質の投入量を適切に低減させるためには、脱珪処理が終了する時点(以下、「脱珪処理終了時点」と呼称する)を適切に予測することが求められる。つまり、脱珪処理により減少する溶銑Si濃度を高い精度で判定する必要がある。
上記課題に対して、下記特許文献1には、脱珪処理中のスラグ中FeO濃度を推定し、推定したFeO濃度に応じて規定の操作を実施し、脱珪処理開始時から規定の時間を経過する間にFeO濃度を調整することにより、溶銑Si濃度を特定の範囲内に制御する技術が開示されている。また、下記特許文献2には、脱珪処理において溶銑中のSiの酸化に用いられる酸素量の割合が吹錬による送酸量の80%であると仮定して、溶銑中のSiを全て脱珪処理するために必要な送酸量を算出する技術が開示されている。
特開2013−136831号公報 特開2014−141696号公報
しかし、上記特許文献1においては、脱珪処理が実施される時間が固定されているが、転炉や吹錬用設備の構造によっては脱珪速度も異なると考えられるので、上記特許文献1に開示された技術による効果が発揮されないと考えられる。また、スラグ中FeO濃度を調整するための具体的な調整量についてはなんら開示されていない。そのため、上記特許文献1に基づく脱珪処理の実現には疑問が残る。また、上記特許文献2においては、Siの酸化に用いられる酸素量の割合が吹錬による送酸量の80%と固定されている。しかし、脱珪処理における溶銑中のSiの酸化に用いられる酸素量の割合は一定ではなく、チャージによって大きく異なる場合がある。そのため、溶銑中のSiの酸化に用いられる酸素量が固定の値であると仮定すると、脱珪処理後の溶銑Si濃度にばらつきが生じるおそれがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、転炉を用いた溶銑予備処理における脱珪処理の終了時点をより高精度に判定することが可能な、新規かつ改良された溶銑予備処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、転炉を用いた吹錬による溶銑予備処理方法であって、少なくともSi、FeおよびCを含む溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得する溶銑データ取得ステップと、取得された上記初期溶銑データ、並びに、上記転炉から排出された排ガスの成分および流量を含む時系列排ガスデータに基づいて、上吹きランスから溶銑に供給された酸素と上記溶銑との酸化反応である火点反応を表現する数理モデルと、上記火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する上記溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応を表現するために、上記火点反応が考慮された競合反応モデルをベースとした数理モデルとが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度、および上記スラグメタル界面におけるSi平衡濃度を逐次的に推定する推定ステップと、上記推定された上記溶銑Si濃度と上記Si平衡濃度との差が所定の閾値以下となる時点を脱珪処理の終了時点として判定する脱珪処理終了判定ステップと、を含む溶銑予備処理方法が提供される。
上記溶銑予備処理方法において、上記所定の閾値は0.01%であってもよい。
上記溶銑予備処理方法は、上記脱珪処理が終了時点であると判定されたときに、上記吹錬を停止し、上記転炉内において生成された上記スラグの一部又は全部を排出し、その後上記吹錬を再開してもよい。
上記複合反応モデルにおいて、上記溶銑成分の濃度変化は、上記溶銑から上記スラグメタル界面への上記溶銑成分の物質移動、および、上記火点領域から上記火点領域とは異なる領域への上記溶銑成分の物質移動に基づいて算出されてもよい。
上記複合反応モデルにおいて、スラグ成分の濃度変化は、上記スラグメタル界面反応により進行する上記スラグから上記スラグメタル界面への上記スラグ成分の物質移動、および、上記火点領域において上記酸化反応により生成された酸化物に含まれる上記スラグ成分の物質移動に基づいて算出されてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、転炉を用いた吹錬による溶銑予備処理を制御する溶銑予備処理制御装置であって、少なくともSiを含む溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得する溶銑データ取得部と、取得された上記初期溶銑データ、並びに、上記転炉から排出された排ガスの成分および流量を含む時系列排ガスデータに基づいて、上吹きランスから溶銑に供給された酸素と上記溶銑との酸化反応である火点反応を表現する数理モデルと、上記火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する上記溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応を表現するために、上記火点反応が考慮された競合反応モデルをベースとした数理モデルとが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度、および上記スラグメタル界面におけるSi平衡濃度を逐次的に推定する推定部と、上記推定部により推定された上記溶銑Si濃度と上記Si平衡濃度との差が所定の閾値以下となる時点を脱珪処理の終了時点として判定する脱珪処理終了判定部と、を備える、溶銑予備処理制御装置が提供される。
上記溶銑予備処理方法は、火点反応を表現する数理モデルとスラグメタル界面反応を表現する数理モデルとを複合させたモデルである複合反応モデルを用いて溶銑Si濃度を逐次的に推定する。これにより、転炉を用いた吹錬により生じる火点反応およびスラグメタル界面反応により変化する溶銑成分の変化を高精度で推定することができる。
以上説明したように本発明によれば、転炉を用いた溶銑予備処理における脱珪処理の終了時点をより高精度に判定することが可能である。
本発明の一実施形態に係るシステムの一構成例を示す図である。 同実施形態に係る複合反応モデルの概要を示す図である。 同実施形態に係るシステムによる溶銑予備処理方法のフローチャートを示す図である。 各実施例における各溶銑成分の火点反応による酸素分配率の変化を成分ごとに示すグラフである。 各実施例における溶銑中のSiの推定濃度の変化を示すグラフである。 各実施例における溶銑中のPの推定濃度の変化、および吹錬された溶銑中のPの測定濃度を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る溶銑予備処理システム1の一構成例を示す図である。図1を参照すると、本実施形態に係る溶銑予備処理システム1は、溶銑予備処理設備10、溶銑予備処理制御装置20、サーバ30、および出力部40を備える。
(溶銑予備処理設備10)
溶銑予備処理設備10は、転炉11、煙道12、上吹きランス13、排ガス成分分析計101、および排ガス流量計102を備える。溶銑予備処理設備10は、溶銑予備処理制御装置20より出力された制御信号に基づいて、上吹きランス13による溶銑への酸素の供給の開始および停止、並びに、転炉11による排滓に関する制御を行う。なお、図示は省略するが、溶銑予備処理設備10には、上吹きランス13に対して酸素を供給するための送酸装置、転炉11に対して冷材を投入するための駆動系を有する冷材投入装置、または転炉11に対して副原料を投入するための駆動系を有する副原料投入装置等、一般的な転炉による吹錬に用いられる各種装置が設けられ得る。
転炉11の炉口からは吹錬に用いられる上吹きランス13が挿入されており、送酸装置から送られた酸素14が上吹きランス13を通じて炉内の溶銑に供給される。また、溶銑の撹拌のために、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス等が底吹きガス15として転炉11の底部から導入される。転炉11の炉内には、高炉から出銑された溶銑、少量の鉄スクラップ、および生石灰等のスラグ形成のための副原料16が投入される。副原料16が粉体である場合は、上吹きランス13を通じて酸素14とともに転炉11内に供給されてもよい。
溶銑中のSi等は供給された酸素と酸化反応し、酸化物が生成される。ここで生じた酸化物は、スラグとして安定化する。また、溶銑中のCは供給された酸素と酸化反応し、COまたはCOが生成され、排ガスとして転炉11から煙道12へ排出される。吹錬による酸化反応によって不純物の成分が除去され、溶銑中のCの量が制御されることにより、低炭素で不純物の少ない鋼が生成される。
吹錬により発生した排ガスは、転炉11の炉外に設けられる煙道12へと導かれる。煙道12には、排ガス成分分析計101、および排ガス流量計102が設けられる。排ガス成分分析計101は、排ガスに含まれる成分を分析する。排ガス成分分析計101は、例えば、排ガスに含まれるCOおよびCOの濃度を分析する。排ガス流量計102は、排ガスの流量を測定する。排ガス成分分析計101および排ガス流量計102は、逐次的に排ガスの分析および測定を行う。
排ガス成分分析計101によって分析された排ガス成分に係るデータ、および排ガス流量計102によって測定された排ガス流量に係るデータ(以下、これらのデータを「排ガスデータ」と呼称する)は、後述する溶銑予備処理制御装置20のSi濃度推定部202に、時系列データとして逐次出力される。その際、排ガス成分分析計101および排ガス流量計102より出力される排ガスデータの出力周期は、Si濃度推定部202による各成分の濃度の推定周期Tと同期する。
(溶銑予備処理制御装置20)
溶銑予備処理制御装置20は、溶銑データ取得部201、Si濃度推定部202、および脱珪処理終了判定部203を備える。溶銑予備処理制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および通信装置等のハードウェア構成を備え、これらのハードウェア構成によって、溶銑データ取得部201、Si濃度推定部202、および脱珪処理終了判定部203の各機能が実現される。なお、図1においては、溶銑予備処理制御装置20の有する機能のうち、本発明において特徴的な機能のみを主に図示している。溶銑予備処理制御装置20は、図示する機能以外にも、溶銑予備処理に係る制御を行う際に必要となる一般的な機能を有し得る。例えば、溶銑予備処理制御装置20は、転炉11への冷材の投入を制御する機能や、または転炉11への副原料の投入を制御する機能等を有し得る。他の一般的な機能については、各種の公知の技術が適用され得るため、ここでは詳細な説明を省略する。
溶銑予備処理制御装置20は、サーバ30に格納されている各種データ、および排ガスデータを入力値として、溶銑Si濃度を含む溶銑中またはスラグ中の各成分の濃度を推定する。そして、溶銑予備処理制御装置20は、推定したSi濃度等の比較結果に基づいて、脱珪処理の終了判定を行う。溶銑予備処理制御装置20は、脱珪処理が終了したと判定した場合、溶銑予備処理設備10に対して、吹錬の停止または中間排滓の開始等の制御信号を出力する。例えば、溶銑予備処理制御装置20は、脱珪処理終了時点において吹錬を一度停止し、転炉11内に滞留するスラグの全部または一部を排出し、その後吹錬を再開する制御信号を、溶銑予備処理設備10に対して出力してもよい。これにより、転炉11内のSiOが排出されるので、転炉11内のスラグの塩基度が高くなる。よって、脱リン処理の効率を向上させることができる。以下、溶銑予備処理制御装置20の有する各機能について説明する。
溶銑データ取得部201は、サーバ30に格納されている溶銑データ301、パラメータ302、および目標データ303を取得し、取得した各種データを、Si濃度推定部202に出力する。溶銑データ301は、転炉11の炉内の溶銑に関する各種のデータである。例えば、溶銑データ301には、溶銑についての情報(チャージごとの初期の溶銑重量、溶銑成分(C、Si、Fe、Mn、P等)の濃度、溶銑温度、溶銑率等)が含まれる。パラメータ302は、Si濃度推定部202において用いられる各種のパラメータである。パラメータ302には、脱珪速度定数や物質移動係数などの各種係数やパラメータが含まれる。目標データ303には、吹錬後のチャージ毎の目標成分や目標温度などのデータが含まれる。また、目標データ303には、脱珪処理の終了判定に用いられる閾値Thが含まれる。閾値Thについては、後述する。
Si濃度推定部202は、溶銑データ取得部201により取得された各種データ、および排ガス成分分析計101および排ガス流量計102から取得した排ガスデータに基づいて、溶銑成分の濃度およびスラグ成分の濃度等を推定する。なお、スラグ成分とは、スラグに含まれる酸化物の成分である。例えば、Si濃度推定部202は、溶銑Si濃度およびスラグメタル界面におけるSi平衡濃度等を推定する。より具体的には、Si濃度推定部202は、後述する複合反応モデルを構成する式(3)〜(17)を連立して解くことにより、溶銑Si濃度およびSi平衡濃度等を推定周期Tごとに逐次的に推定する。
上記溶銑データ301は、チャージごとの初期の溶銑データである。そのため、Si濃度推定部202は、初回の推定処理においては溶銑データ301を入力値として用いるが、初回以降の推定処理においては、一周期前の推定結果を入力値として用いる。推定結果には、例えば、Si濃度推定部202により一周期前に推定された、Si濃度を含む溶銑成分の濃度およびスラグ成分の濃度、または各領域における温度等の溶銑データが含まれる。これにより、Si濃度推定部202は、推定周期Tごとに変化する溶銑Si濃度を、逐次的に推定することができる。
なお、推定周期Tは、上述したように、排ガス成分分析計101および排ガス流量計102により分析および測定された排ガスデータの出力周期と同期する。これにより、最新の排ガスデータに基づいて、溶銑Si濃度の推定を実施することが可能となる。Si濃度推定部202は、推定した溶銑Si濃度およびSi平衡濃度を、脱珪処理終了判定部203に出力する。また、Si濃度推定部202は、推定結果を出力部40に出力してもよい。
このように、Si濃度推定部202は、複合反応モデルを用いることにより、溶銑Si濃度等を推定する。上記複合反応モデルについて、詳しくは後述する。
脱珪処理終了判定部203は、Si濃度推定部202により推定された溶銑Si濃度とスラグメタル界面におけるSi平衡濃度とを比較し、その比較結果に基づいて脱珪処理を終了するか否かを判定する。具体的には、脱珪処理終了判定部203は、溶銑Si濃度とSi平衡濃度との差(以下、「Si濃度差」と呼称する)が閾値Thを下回るか否かを判定する。Si濃度差が閾値Thを下回ると判定された場合、脱珪処理終了判定部203は、脱珪処理の終了に係る制御信号を溶銑予備処理設備10に出力する。脱珪処理の終了に係る制御は、例えば、上吹きランス13による吹錬の停止制御や、転炉11による中間排滓処理の開始制御である。一方、Si濃度差が閾値Thを下回らないと判定された場合、再度Si濃度推定部202において濃度の推定が実施される。
(サーバ30)
サーバ30は、CPU、ROM、RAM、および通信装置等のハードウェア構成を備える。サーバ30は、溶銑予備処理制御装置20において用いられる各種データを記憶する。サーバ30は、例えば、図1に示したように、溶銑データ301、パラメータ302、および目標データ303等を記憶する。これらのデータは、不図示の入力装置や通信装置を介して追加、更新、変更、または削除されてもよい。サーバ30に記憶されている各種データは、溶銑データ取得部201により呼び出される。また、サーバ30は、Si濃度推定部202による推定結果を逐次的に記憶してもよい。なお、本実施形態に係るサーバ30は、溶銑予備処理制御装置20とは分離して構成されているが、他の実施形態においては、サーバ30は、溶銑予備処理制御装置20と一体となって構成されてもよい。
(出力部40)
出力部40は、ディスプレイやプリンタ、通信装置等の出力装置により実現される。出力部40は、例えば、Si濃度推定部202から出力された推定結果を出力する。また、出力部40は、サーバ30に逐次的に記憶された推定結果を出力してもよい。これにより、Si濃度推定部202による推定結果について、事後的に解析することができる。また、脱珪処理の終了時点において、出力部40は、脱珪処理の終了を示す表示等の出力を行ってもよい。これにより、出力部40により出力された情報を閲覧したオペレータ等が、脱珪処理の終了を認知できる。
<2.複合反応モデル>
以上、本実施形態に係る溶銑予備処理システム1の構成について説明した。次に、本実施形態に係るSi濃度推定部202において溶銑Si濃度等の推定に用いられる複合反応モデルについて説明する。Si濃度推定部202は、以下の式(3)〜式(17)からなる連立方程式を逐次的に推定することにより、Si濃度を含む溶銑成分の濃度およびスラグ成分の濃度を推定する。
(複合反応モデルの概要)
式(1)で示した脱リン反応は、スラグメタル界面において生じる。スラグメタル界面とは、転炉11内における溶銑とスラグとの界面である。スラグメタル界面における反応(以下、「スラグメタル界面反応」と呼称する)を表現するモデル(いわゆる「競合反応モデル」)については、S.Ohguchi et. Al: ‘Simultaneous dephosphorisation and desulphurization of molten pig iron’、Ironmaking and Steelmaking、11、(1984)、p.41に記載されている(以下、当該文献を「非特許文献」と呼称する)。この競合反応モデルは、スラグメタル界面における溶銑およびスラグに含まれる各成分の物質移動に適用することが可能である。つまり、上記の競合反応モデルを用いることにより、溶銑およびスラグ中の各成分の濃度を推定することが可能である。
しかし、従来の競合反応モデルはあくまでもスラグメタル界面反応にのみ適用可能なモデルであり、吹錬により供給される酸素と溶銑との間で生じる酸化反応(いわゆる「火点反応」)は、競合反応モデルに反映されていない。そのため、例えば、火点反応により生じたSiO等の酸化物のスラグへの移動等が、従来の競合反応モデルには反映されていない。したがって、従来の競合反応モデルをそのまま、火点反応が伴う溶銑予備処理における溶銑およびスラグ中の各成分の濃度の推定に用いることは困難であった。
そこで、本発明者らは、火点反応を表現する数理モデルと、火点反応が進行する領域とは異なる領域において進行する競合反応モデルをベースとしたスラグメタル界面反応を表現する数理モデルとを複合させた「複合反応モデル」を提案するに至った。
図2は、本実施形態に係る火点反応およびスラグメタル界面反応の複合反応モデルの概要を示す図である。図2に示すように、火点反応が起こる火点領域と、スラグメタル界面との間においては、溶銑に含まれる物質の移動が生じ得る。また、火点反応により生成されるSiOおよびFeO等の酸化物は、スラグへと移動する。これらの酸化物の物質移動量は、脱炭反応により生成される排ガスデータに基づいて算出される。この(a)複数領域間における溶銑中の各成分の物質移動、および(b)火点反応により生じた酸化物のスラグへの物質移動の2点を考慮した反応モデルが、複合反応モデルである。
複合反応モデルは、火点反応における物質収支および熱収支、並びに、スラグメタル界面反応における物質収支および熱収支を複合させたモデルである。物質収支および熱収支とは、火点領域と、スラグ領域と、当該火点領域および当該スラグ領域のいずれでもない溶銑領域の3つの領域間における、各成分の物質移動および熱移動の収支である。複合反応モデルにおいては、火点反応により生成されるSiO等を含む酸化物のスラグメタル界面への物質移動が、競合反応モデルに組み込まれる。これにより、Siを含む溶銑およびスラグ中の各成分の濃度を高精度で推定することが可能であることを本発明者らは見出した。また、火点反応において排ガスデータを利用することにより、火点反応により生成されるSiO等の酸化物の生成速度を高精度で推定することが可能であることを本発明者らは見出した。以下、火点反応を表現する数理モデルとスラグメタル界面反応を表現する数理モデルとを複合させたモデルである複合反応モデルについて具体的に説明する。
なお、以下の説明においては、特に説明がない限り、[X]は溶銑に含まれる元素Xの濃度を表現し、(XO)はスラグに含まれる元素Xの酸化物XOの濃度を表現する。(XO)は下記式(2)の反応式によって表され、nは元素Xに応じて定まる値である。
Figure 0006515385
また、以下の説明においては、特に説明がない限り、各成分の濃度の単位である[質量%]は、[%]と記載する。
(火点反応)
まず、火点反応を表現する数理モデルについて説明する。火点領域においては、上吹きランス13等から溶銑に酸素が供給されることにより、溶銑に含まれるSi、CおよびFeの酸化反応が発生する。Si、CおよびFeの火点反応による物質収支は、以下の式(3)〜(5)に表現される。式(3)は、脱珪反応による火点領域におけるSiの物質収支を示す。式(4)は、脱炭反応による火点領域におけるCの物質収支を示す。式(5)は、火点領域におけるFeの物質収支を示す。
Figure 0006515385
Figure 0006515385
Figure 0006515385
ここで、[Si]、[C]、および[Fe]は、火点領域における溶銑含有成分[%]である。[Si]、[C]、および[Fe]は、火点領域以外における溶銑含有成分[%]である。kSiは、脱珪反応速度定数[%/s]である。ΔCは、排ガスデータから求めた脱炭速度[%/s]である。ΔFeは、排ガスデータから求めたFeの酸化速度[%/s]である。Vは、火点領域の溶銑堆積[m]である。また、Qは、転炉11内の溶銑の還流量[m/s]である。
上記脱炭速度ΔCは、排ガスデータに含まれる排ガスの成分および流量を用いることにより算出される。具体的には、下記式(6)に示すように、脱炭速度ΔCは、転炉11より排出される排ガスに含まれるCOまたはCOの少なくともいずれかを含むガス成分の流量等を用いることにより算出される。
Figure 0006515385
ここで、Qoffgasは、転炉11より排出される排ガスの流量[Nm/hr]であり、排ガス流量計102により測定された値が用いられる。上記式(6)内のCO、およびCOは、転炉11より排出されるCOの濃度、およびCOの濃度[%]であり、排ガス成分分析計101により分析された値が用いられる。Wは、火点領域における溶銑の重量[ton]である。
次に、Feの酸化速度ΔFeの算出方法について説明する。本発明においては、溶銑に供給された酸素は溶銑中のSi、C、およびFeにより全て酸化反応に用いられると仮定されている。一般的に、溶銑中のSiおよびCの酸化反応が、溶銑中のFeとの酸化反応と比較して、優先的に進行することが知られている。そのため、本発明は、溶銑中のSiまたはCと反応しなかった残留酸素のみが溶銑中のFeと反応すると仮定した。以上の仮定に基づき、本発明においてFeの酸化速度ΔFeは、下記式(7)に示すように、転炉11内の溶銑に供給された酸素の供給量(FO[Nm/hr])から、脱珪反応および脱炭反応により消費された酸素量を差し引くことにより算出された酸素量から求められる。
Figure 0006515385
ただし、上記式(7)の右辺第1項の括弧内の値が0を下回る場合、つまり、下記式(8)を満たす場合、ΔFe=0とみなされる。
Figure 0006515385
このように、火点領域における溶銑中のSi、C、およびFeの物質収支の算出に排ガスデータを用いることにより、実際に火点反応において各溶銑成分と反応する酸素の量を推定することができる。これにより、火点領域における酸化反応のモデルをより忠実に表現することができ、各溶銑成分の濃度をより高精度に推定することが可能となる。
火点領域において酸化されるSiおよびFeの濃度変化(d[Si]/dt、およびd[Fe]/dt[%/s])は、火点反応を起因とするスラグ中のSiOおよびFeOの濃度変化に対応する。これは、火点領域において酸化反応により減少したSiおよびFeがSiOおよびFeOに変化し、スラグへと取り込まれるためである。よって、火点反応を起因とするスラグ中のSiOおよびFeOの、スラグの重量Wに対する濃度変化を、d(SiO2f)/dt、およびd(FeO)/dt[%/s]とすると、上記濃度変化は下記式(9)および式(10)により表現される。
Figure 0006515385
Figure 0006515385
以上説明したように、火点反応による火点領域における各成分の物質収支は、式(3)〜式(5)、式(9)、および式(10)により表現される。また、火点領域における熱収支は、火点反応により生じる酸化反応等の反応熱を考慮して、下記式(11)のように表現される。
Figure 0006515385
ここで、cpは、火点領域における溶銑の比熱[kcal/(kg・℃)]である。Tは、火点領域における溶銑の温度[℃]である。Hreac,fは、火点領域における反応熱[kcal/s]であり、例えば、[Si]、[C]、および[Fe]を用いて算出される。RQは、転炉内の還流による火点領域への流入熱量[kcal/s]であり、火点領域以外の領域における溶銑の温度Tの値を用いて算出される。RQは、転炉内の還流による火点領域からの流出熱量[kcal/s]であり、例えば、Tの値を用いて算出される。
以上より、火点領域における溶銑成分の挙動、および火点反応により生成されてスラグに流入する酸化物の挙動は、上記式(3)〜式(11)により表現される。
(スラグメタル界面反応)
続いて、スラグメタル界面反応を表現する数理モデルについて説明する。まず、スラグメタル界面における溶銑成分に関する反応は、スラグメタル界面における溶銑成分の平衡濃度と火点領域以外における溶銑の濃度との差を推進力とする物質移動により表現される。スラグメタル界面における溶銑に含まれる元素X(Si、C、Fe、Mn、P)の物質収支は、下記式(12)のように表現される。
Figure 0006515385
ここで、[X]は、火点領域以外の領域における溶銑に含まれる元素Xの濃度[%]である。Vは、火点領域以外の溶銑の体積[m]である。Aは、スラグメタル界面の界面積[m]である。Kは、溶銑成分である元素Xの物質移動係数[m/s]である。[X*]は、スラグメタル界面における溶銑に含まれる元素Xの平衡濃度[%]である。[X]は、火点領域における溶銑に含まれる元素Xの濃度[%]である。WX,SUBは、副原料の投入による溶銑成分である元素Xの濃度の増加を考慮するための項[%/s]である。
上記式(12)は、従来の競合反応モデルに加えて、火点領域から火点領域以外の領域に流動する溶銑成分の物質移動(Q×([X]−[X])に相当する)による物質収支を表現する。つまり、上記式(12)は、スラグメタル界面反応により進行する溶銑からスラグメタル界面への物質移動(A×K×([X]−[X*])に相当する)のみならず、火点領域から火点領域以外の領域への物質移動に基づいて溶銑中のSi、C、およびFeの成分の濃度変化を算出する。これにより、火点反応による溶銑中のSi、C、およびFeの成分の濃度変化の影響を、スラグメタル界面反応に反映させることができる。
なお、本実施形態に係る複合反応モデルにおいて、Si、C、およびFe以外の元素X(例えば、Mn、P)の酸化物は火点反応により生成されないと仮定されている。したがって、当該元素Xの物質収支について、上記式(12)における[X]−[X]の値は0となる。
また、非特許文献に記載されているように、スラグメタル界面における溶銑に含まれる元素Xの平衡濃度[X*]は、界面酸素濃度aoを用いることにより表現される。当該界面酸素濃度aoは、スラグメタル界面における酸素収支式により算出される。
次に、スラグメタル界面におけるスラグ成分に関する反応は、溶銑成分に関する反応と同様に、スラグメタル界面におけるスラグ成分の平衡濃度とスラグのバルク内の成分の濃度との差を推進力とする物質移動により表現される。スラグメタル界面におけるスラグ成分XO(SiO、FeO、MnO、PO2.5、AlO1.5、CaO等)の物質収支は、下記式(13)のように表現される。
Figure 0006515385
ここで、(XO)はスラグに含まれる元素Xの酸化物の濃度[%]である。Vは、スラグの体積[m]である。KXOnは、スラグ成分である酸化物XOの物質移動係数[m/s]である。(XO *)は、スラグメタル界面におけるスラグに含まれる元素Xの酸化物の平衡濃度[%]である。WXOn,SUBは、生石灰やスケール等の副原料の投入によるスラグ成分である酸化物XOの濃度の増加を考慮するための項[%/s]である。
また、スラグに含まれるSiOおよびFeOの濃度は、図2に示したように、火点反応により生じた酸化物のスラグへの流入によっても変化する。そのため、SiOとFeOの濃度変化については、スラグメタル界面反応による濃度変化のみならず、火点反応により生成された酸化物の生成速度を考慮する必要がある。そのため、SiOおよびFeOのスラグ中の濃度変化は、従来の競合反応モデルに、火点反応により生成された酸化物によるスラグ中の濃度変化の項を加えた下記式(14)および式(15)を用いて算出される。これにより、火点反応により生成された酸化物のスラグへの流入によるスラグ成分の濃度の変化を表現することができる。
Figure 0006515385
ここで、(SiO)はスラグ中のSiO濃度を表し、(SiO )はスラグメタル界面におけるSiOの平衡濃度を表す。
Figure 0006515385
ここで、(FeO)はスラグ中のFeO濃度を表し、(FeO)はスラグメタル界面におけるFeOの平衡濃度を表す。
以上説明したように、スラグメタル界面反応によるスラグメタル界面における各成分の物質収支は、式(12)〜式(15)により表現される。また、スラグメタル界面反応を構成する溶銑部分の熱収支、およびスラグ部分の熱収支は、スラグメタル界面反応により生じる反応等の反応熱を考慮して、下記式(16)、および式(17)のようにそれぞれ表現される。
Figure 0006515385
ここで、Wは火点領域以外の領域における溶銑の重量[ton]である。cpは、火点領域以外の領域における溶銑の比熱[kcal/(kg・℃)]である。Tは、火点領域以外の領域における溶銑の温度[℃]である。Hreacは、スラグメタル界面反応で生じた反応熱のうち溶銑に分配される反応熱[kcal/s]であり、スラグメタル界面反応に伴う各成分の物質移動に基づいて算出される。また、QSUBは、溶銑への副原料の溶解により生じる抜熱量[kcal/s]である。
Figure 0006515385
ここで、cpは、スラグの比熱[kcal/(kg・℃)]である。Tは、スラグの温度[℃]である。Hreac,Sは、スラグメタル界面反応で生じた反応熱のうちスラグに分配される反応熱[kcal/s]であり、スラグメタル界面反応に伴う各成分の物質移動に基づいて算出される。また、RQは、スラグ表面からの抜熱量[kcal/s]である。
以上より、火点反応による溶銑成分の挙動を含めたスラグメタル界面における溶銑成分およびスラグ成分の挙動は、上記式(12)〜式(17)により表現される。
以上説明したように、複合反応モデルは、火点反応を表現する式(3)〜式(11)と、火点反応を考慮した競合反応モデルにより構成されるスラグメタル界面反応を表現する式(12)〜式(17)とを複合させた数理モデルである。本実施形態に係るSi濃度推定部202は、複合反応モデルを構成する式(3)〜式(17)からなる連立方程式を逐次的に解くことにより、Si濃度を含む溶銑成分の濃度およびスラグ成分の濃度を推定する。例えば、Si濃度推定部202は、上記複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度[Si]、およびスラグメタル界面におけるSi平衡濃度[Si]を推定することが可能である。
<3.溶銑予備処理方法>
図3は、本実施形態に係る溶銑予備処理システム1による溶銑予備処理方法のフローチャートを示す図である。図3を参照しながら、本実施形態に係る溶銑予備処理システム1による溶銑予備処理方法のフローについて説明する
まず、溶銑予備処理制御装置20の溶銑データ取得部201が、サーバ30に格納されている溶銑データ301、パラメータ302、および目標データ303を取得する(S101)。次に、Si濃度推定部202は、排ガス成分分析計101および排ガス流量計102から排ガスデータを取得する(S103)。また、一周期前にステップS105において溶銑Si濃度等の推定が実施されている場合は、Si濃度推定部202は、一周期前の各成分の濃度の推定結果を取得する。
次に、Si濃度推定部202は、ステップS101およびステップS103において取得した各種データまたは一周期前の推定結果に基づき、複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度等を推定する(S105)。
続いて、脱珪処理終了判定部203は、Si濃度推定部202により推定された溶銑Si濃度とスラグメタル界面におけるSi平衡濃度との差、つまりSi濃度差が閾値Thを下回るか否かを判定する(S107)。ここで、Si濃度差とは、上記式(12)または式(13)の右辺に含まれる[X]−[X](つまり、[Si]−[Si])に相当する。吹錬による転炉11内での反応が進むにつれて溶銑Si濃度は低下するため、Si濃度差も徐々に小さくなる。Si濃度差が小さくなることは、溶銑からスラグへのSi成分の物質移動が小さくなることを示し、つまり、脱珪反応が鈍化していることを示す。厳密には、Si濃度差が漸減してゼロになったときに脱珪処理が終了するが、実用上は、前記Si濃度差が十分小さな値になったときに、脱珪処理が終了したとみなされる。したがって、脱珪処理終了判定部203は、適切な閾値を設定することにより、脱珪処理の終了時を適切に判定することができる。
ここで、閾値Thを高く設定した場合、脱珪処理の時間を短縮することができる。しかし、溶銑中に残存するSiの濃度が高い値のままなので、後処理である脱リン処理において用いられる生石灰等の副原料の投入コストが大きくなってしまう。一方、上記閾値Thを低く設定した場合、溶銑Si濃度をより低く制御することができる。しかし、脱珪反応が鈍化した後においても脱珪処理を継続することは、脱珪処理時間の延長を招く。それにより、例えば、火点反応により生成される(FeO)の増加に伴う歩留まり低下が生じ得る。そのため、上記閾値Thを適切に設定する必要がある。例えば、本実施形態においては、適切な閾値Thの値を0.01%としている。
ステップS107において、Si濃度差が閾値Thを下回らないと判定された場合(NO)、再度ステップS103においてSi濃度推定部202によるSi濃度等の推定が実施される。溶銑予備処理システム1は、Si濃度差が閾値Thを下回らない場合において、推定周期Tごとに上記ステップS103〜S107を繰り返し実施する。
一方、ステップS107においてSi濃度差が閾値Thを下回る場合(YES)、脱珪処理終了判定部203は、Si濃度差が閾値Thを下回った時点を脱珪処理終了時点と判定し、脱珪処理の終了に係る制御信号を溶銑予備処理設備10に出力する。例えば、脱珪処理終了判定部203は、脱珪処理の終了に係る制御信号として、中間排滓処理開始に係る制御信号を溶銑予備処理設備10に出力してもよい(S109)。また、脱珪処理終了判定部203は、上吹きランス13による転炉11内への送酸の停止に係る制御信号を溶銑予備処理設備10に出力してもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る溶銑予備処理方法によれば、転炉11を用いた脱珪処理において複合反応モデルを用いた数理モデルを用いることにより、溶銑Si濃度等を高精度で推定することができる。したがって、当該推定結果に基づいて、脱珪処理の終了時点の判定を適切に行うことができる。これにより、脱珪処理による生産効率や溶銑品質の低下を招くことなく、脱リン処理に用いられる生石灰等の副原料の投入コストを抑制することが可能である。
なお、本実施形態に係る溶銑予備処理システム1によれば、溶銑予備処理制御装置20により判定された脱珪処理終了時点において吹錬を一度停止し、転炉11内に滞留するスラグの中間排滓を行い、その後吹錬を再開する制御を行うとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、溶銑予備処理システム1は判定された脱珪処理終了時点後に中間排滓を実施しなくてもよい。その代わりに、溶銑予備処理システム1は判定された脱珪処理終了時点後に脱リン処理を促進させるための制御を行ってもよい。これにより、溶銑内の脱リン処理をより効率的に行うことが可能である。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は本発明の効果を検証するために行ったものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、本発明によるSi濃度の推定精度について検証した。具体的には、まず、排ガスデータに基づいて推定される酸素分配率について評価した。酸素分配率については後述する。次に、本実施形態に係る溶銑予備処理方法により推定された溶銑Siの推定濃度の変化(脱珪速度)について評価した。さらに、本実施形態に係る溶銑予備処理方法により推定された溶銑P濃度と、吹錬後において実測されたP濃度とを比較し、溶銑Si濃度の推定精度について評価した。溶銑Si濃度ではなく溶銑P濃度の実測値を用いて比較するのは、脱珪処理終了時点におけるSi濃度を直接評価することが技術的に困難であるためである。その代わりに、溶銑P濃度の実測値と本実施形態に係る溶銑予備処理方法により推定されたP濃度とを比較することにより、溶銑Si濃度の推定精度について評価した。
(試験条件)
初期の溶銑成分の濃度[%]、溶銑温度[℃]、および副原料(生石灰、およびスケール)の溶銑重量に対する原単位[kg/ton]を含む初期溶銑データ、並びに、実際の溶銑予備処理時間[sec]を、実施例ごとに以下の表1に示す。
Figure 0006515385
上記表1で示した各実施例における溶銑データは、転炉11に投入される1チャージごとの溶銑データである。各実施例における溶銑予備処理中に、本実施形態に係る溶銑予備処理方法を用いて、溶銑Si濃度および溶銑P濃度を推定した。なお、溶銑予備処理中において、酸素分配率についても推定を行った。そして、実際の吹錬時間が経過した時における推定P濃度と、溶銑予備処理がなされた溶銑P濃度の実測値とを比較した。
(試験結果)
まず、溶銑中のSiの火点反応による酸素分配率について評価した。図4は、各実施例における各溶銑成分の火点反応による酸素分配率の変化を成分ごとに示すグラフである。図4(a)は実施例1に、図4(b)は実施例2に対応するグラフである。酸素分配率とは、溶銑中のSi、C、またはFeに対する、上吹きランス13から供給される酸素の反応比率を意味する。酸素分配率は、上記式(3)〜式(8)を用いて算出される。
図4(a)に示したグラフによれば、実施例1において溶銑中のSiに対する酸素分配率はおよそ60%〜80%の間において推移していることが分かる。一方、図4(b)に示したグラフによれば、実施例2において溶銑中のSiに対する酸素分配率はおよそ40%〜60%の間において推移していることが分かる。以上の結果より、酸素分配率は、転炉11の溶銑のチャージごとに必ずしも一定の値を取らず変動しうることが分かった。
次に、溶銑中のSiの脱珪速度について評価した。図5は、各実施例における溶銑中のSiの推定濃度の変化を示すグラフである。図5(a)は実施例1に、図5(b)は実施例2に対応するグラフである。図5(a)に示したグラフの傾きは、図5(b)に示したグラフの傾きよりも大きいことが分かった。つまり、Siの脱珪速度について、実施例1の脱珪速度が実施例2の脱珪速度よりも大きいことが分かった。図4に示したように、実施例1におけるSiの酸素分配率が、実施例2におけるSiの酸素分配率よりも大きいことがその理由であると考えられる。
次に、溶銑中のPの推定濃度と、実際の溶銑予備処理がなされた溶銑中のPの測定濃度とを比較した。図6は、各実施例における溶銑中のPの推定濃度の変化、および吹錬された溶銑中のPの測定濃度を示すグラフである。図6(a)は実施例1に、図6(b)は実施例2にそれぞれ対応するグラフである。なお、Pの測定濃度は、各実施例において吹錬が終了した直後に測定された値である。
図6(a)および図6(b)を参照すると、実施例1および実施例2の各々において、吹錬終了時におけるPの推定濃度と測定濃度とがほぼ一致した。これにより、本実施形態に係る溶銑予備処理方法により推定される溶銑P濃度の推定精度が高いことが示された。
また、各実施例における溶銑中のPの初期濃度は同濃度(0.096%)であったにも関わらず、溶銑予備処理終了時における実施例1の溶銑中のPの推定濃度は、実施例2の溶銑中のPの推定濃度より低い値を示した。これは、図5に示したとおり、本実施形態に係る溶銑予備処理方法により推定された脱珪速度について、実施例1の脱珪速度が実施例2の脱珪速度よりも大きいからと考えられる。
一方で、溶銑予備処理終了時における実施例1の溶銑中のPの測定濃度も、実施例2の溶銑中のPの測定濃度より低い値を示した。これは、実際の溶銑予備処理における脱珪速度について、実施例1の脱珪速度が、実施例2の脱珪速度よりも大きいことを裏付けている。つまり、本実施形態に係る溶銑予備処理方法による脱珪速度の推定精度は高いことが示された。本実施形態に係る溶銑予備処理方法による脱珪速度の推定速度が高いことから、溶銑Si濃度の推定濃度も高いといえる。
以上示したように、本実施形態に係る溶銑予備処理方法の実施例によれば、溶銑Si濃度を高精度に推定することができることが分かった。したがって、本発明によれば、溶銑Si濃度を高精度に推定することにより、脱珪処理の終了時点を精度高く判定することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 溶銑予備処理システム
10 溶銑予備処理設備
11 転炉
12 煙道
13 上吹きランス
20 溶銑予備処理制御装置
30 サーバ
40 出力部
101 排ガス成分分析計
102 排ガス流量計
201 溶銑データ取得部
202 Si濃度推定部
203 脱珪処理終了判定部

Claims (6)

  1. 転炉を用いた吹錬による溶銑予備処理方法であって、
    少なくともSi、Fe、およびCを含む溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得する溶銑データ取得ステップと、
    取得された上記初期溶銑データ、並びに、前記転炉から排出された排ガスの成分および流量を含む時系列排ガスデータに基づいて、上吹きランスから溶銑に供給された酸素と前記溶銑との酸化反応である火点反応を表現する数理モデルと、前記火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する前記溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応を表現するために、前記火点反応が考慮された競合反応モデルをベースとした数理モデルとが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度、および前記スラグメタル界面におけるSi平衡濃度を逐次的に推定する推定ステップと、
    前記推定された前記溶銑Si濃度と前記Si平衡濃度との差が所定の閾値以下となる時点を脱珪処理の終了時点として判定する脱珪処理終了判定ステップと、
    を含む溶銑予備処理方法。
  2. 前記所定の閾値は0.01%である、請求項1に記載の溶銑予備処理方法。
  3. 前記脱珪処理が終了時点であると判定されたときに、前記吹錬を停止し、前記転炉内において生成された前記スラグの一部又は全部を排出し、その後前記吹錬を再開する、請求項1または2に記載の溶銑予備処理方法。
  4. 前記複合反応モデルにおいて、前記溶銑成分の濃度変化は、前記溶銑から前記スラグメタル界面への前記溶銑成分の物質移動、および、前記火点領域から前記火点領域とは異なる領域への前記溶銑成分の物質移動に基づいて算出される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶銑予備処理方法。
  5. 前記複合反応モデルにおいて、スラグ成分の濃度変化は、前記スラグメタル界面反応により進行する前記スラグから前記スラグメタル界面への前記スラグ成分の物質移動、および、前記火点領域において前記酸化反応により生成された酸化物に含まれる前記スラグ成分の物質移動に基づいて算出される、請求項4に記載の溶銑予備処理方法。
  6. 転炉を用いた吹錬による溶銑予備処理を制御する溶銑予備処理制御装置であって、
    少なくともSi、Fe、およびCを含む溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得する溶銑データ取得部と、
    取得された前記初期溶銑データ、並びに、前記転炉から排出された排ガスの成分および流量を含む時系列排ガスデータに基づいて、上吹きランスから溶銑に供給された酸素と前記溶銑との酸化反応である火点反応を表現する数理モデルと、前記火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する前記溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応を表現するために、前記火点反応が考慮された競合反応モデルをベースとした数理モデルとが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度、および前記スラグメタル界面におけるSi平衡濃度を逐次的に推定する推定部と、
    前記推定部により推定された前記溶銑Si濃度と前記Si平衡濃度との差が所定の閾値以下となる時点を脱珪処理の終了時点として判定する脱珪処理終了判定部と、
    を備える、溶銑予備処理制御装置。
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