JP6511965B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法および非水系電解質二次電池 - Google Patents
非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法および非水系電解質二次電池 Download PDFInfo
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Description
複数の一次粒子が凝集して形成された中実構造の二次粒子からなり、
前記二次粒子の平均粒径が10.0μm〜14.5μmであり、タップ密度が1.4g/ml以上であり、かつ、比表面積が10m2/g〜25m2/gである、
ことを特徴とする。
不活性雰囲気中、温度を45℃〜55℃、液温25℃基準におけるpH値を11〜12、およびアンモニウムイオン濃度を8g/L〜12g/Lに制御した反応水溶液に、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有する原料水溶液を供給して、連続晶析法により、ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、晶析工程と、
前記ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を含むスラリーとマグネシウムを含む被覆溶液とを混合し、混合溶液を形成することにより、マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、被覆工程と、
を備えることを特徴とする。
複数の一次粒子が凝集して形成された中実構造の二次粒子からなり、
XRD測定によるリートフェルト解析から求められる(003)面結晶子径が1200Å〜1600Åであり、
前記二次粒子の平均粒径が11.5μm〜14.5μmであり、タップ密度が2.6g/ml以上あり、かつ、比表面積が0.2m2/g〜0.5m2/gである、
ことを特徴とする。
前記マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程と、
前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気下、600℃〜800℃で焼成する、焼成工程と、
を備えることを特徴とする。
1−1.マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子
(1)組成比
本発明のマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子(以下、「Mg被覆複合水酸化物粒子」という)は、一般式:Ni1-x-y-zCoxAlyMgz(OH)2(ただし、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表される。なお、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)およびマグネシウム(Mg)の含有量、ならびに、その臨界的意義については、後述する正極活物質の場合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明のMg被覆複合水酸化物粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子により構成される。この二次粒子は、略球状であることが好ましい。ここで、略球状には、二次粒子が球状であるばかりでなく、表面に微細な凹凸を有する球状や楕円球状なども含まれる。
二次粒子を構成する一次粒子は、その形状が直方体状であることが好ましい。また、平均粒径が0.01μm〜0.1μmの範囲にあることが好ましく、0.04μm〜0.07μmの範囲にあることがより好ましい。一次粒子の形状および平均粒径がこのような条件を満たすことにより、二次粒子をより高密度にすることができる。なお、本発明において、直方体状には、断面形状が長方形に形成されたものだけではなく、断面形状が長方形以外の四角形に形成されたものや、直方体の一面が曲面で構成されたものなども含まれるものとする。
二次粒子の平均粒径は、10.0μm〜14.5μm、好ましくは10.5μm〜13.5μmの範囲にあることが必要となる。平均粒径をこのような範囲に制御することにより、このMg被覆複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を適切な範囲に制御することが可能となる。これに対して、平均粒径が10.0μm未満では、このMg被覆複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質のタップ密度が小さくなり、これを用いた二次電池の充放電容量が低下してしまう。また、後述する晶析工程において、晶析したMg被覆複合水酸化物粒子を固液分離するのに長時間を要するばかりでなく、乾燥後のMg被覆複合水酸化物粒子が飛散しやすくなる。一方、平均粒径が14.5μmを超えると、正極活物質の粗大化を招き、比表面積が小さくなるため、出力特性などの電池性能が低下することとなる。なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準平均粒径(MV)を意味し、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
二次粒子のタップ密度は、1.4g/ml以上、好ましくは1.5g/ml以上であることが必要とされる。タップ密度が1.4g/ml未満では、このMg被覆複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の充填性が低くなってしまう。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されることはないが、通常の製造条件では3g/ml以下、好ましくは2.8g/ml以下となる。なお、本発明において、タップ密度とは、JIS Z−2504に基づき、容器に採取した試料粉末を、500回タッピングした後のかさ密度を意味し、振とう比重測定器を用いて測定することができる。
二次粒子の比表面積は、10m2/g〜25m2/gであることが好ましく、10m2/g〜15m2/gであることがより好ましい。比表面積をこのような範囲に制御することにより、このMg被覆複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の比表面積を適切な範囲(0.2m2/g〜0.5m2/g)に制御することができる。なお、本発明において、比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。
本発明のMg被覆複合水酸化物粒子の製造方法は、上述したMg被覆複合水酸化物粒子の製造方法であって、
不活性雰囲気中、温度を45℃〜55℃、液温25℃基準におけるpH値を11〜12およびアンモニウムイオン濃度を8g/L〜12g/Lに制御した反応水溶液に、少なくともニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有する原料水溶液を供給して、連続晶析法により、ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、晶析工程と、
このニッケルコバルト複合水酸化物粒子を含むスラリーとマグネシウムを含む被覆溶液を混合し、混合溶液を形成することにより、マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、被覆工程と、
を備えることを特徴とする。なお、必要に応じて、以下で説明する洗浄工程や乾燥工程などを追加してもよい。
晶析工程は、不活性雰囲気中、温度を45℃〜55℃、液温25℃基準におけるpH値を11〜12に、アンモニウムイオン濃度を8g/L〜12g/Lに制御した反応水溶液に、少なくともニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有する原料水溶液を供給して、ニッケルコバルト複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)を得る工程である。
[原料水溶液]
原料水溶液としては、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有するものを使用することが必要となる。なお、これらの金属元素の比率は、通常、目的とする正極活物質におけるニッケル、コバルト、アルミニウムの組成比となるように調整される。
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%〜50質量%程度することが好ましい。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液は、反応水溶液中の金属イオンの溶解度を調整するために添加されるものである。このようなアンモニウムイオン供給体を含む水溶液についても、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
[反応温度]
反応水溶液の温度(反応温度)は、45℃〜55℃、好ましくは47℃〜53℃の範囲に制御することが必要となる。上述のように、本発明の複合水酸化物粒子を構成する一次粒子は、その形状が直方体状であることが好ましいが、反応温度が45℃未満では、頂点、稜および面の数が増加し、一次粒子が7面以上の平面から構成される多面体状となるため、タップ密度が低下してしまう。一方、反応温度が55℃を超えると、一次粒子が薄片状となり、所望の結晶構造および形状を有する二次粒子が得られなくなる。
反応水溶液のpH値は、液温25℃基準で、11〜12、好ましくは11.3〜11.8の範囲に制御することが必要となる。pH値が11未満では、晶析した複合水酸化物粒子の一部が溶解してしまい、所望の組成比を有する複合水酸化物粒子を得ることができない。一方、pH値が12を超えると、複合水酸化物粒子が微細化してしまう。
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、8g/L〜12g/L、好ましくは9g/L〜11g/Lの範囲内に制御することが必要となる。反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が8g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、また、反応水溶液がゲル化しやすくなり、形状や粒径の整った複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が12g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。
晶析工程中の雰囲気(反応雰囲気)は、不活性雰囲気、好ましくは酸素濃度が2容量%以下、より好ましくは1容量%以下の不活性雰囲気とすることが必要となる。すなわち、酸素をほとんど含まない、窒素やアルゴンなどの不活性ガスからなる雰囲気とすることが好ましく、反応水溶液の表面に、これらの不活性ガスを吹き付けて、反応水溶液と酸素との接触を完全に遮断することがより好ましい。晶析工程中の反応雰囲気を、このような不活性雰囲気に制御することにより、高密度で適度な粒径を有する二次粒子を得ることができる。これに対して、酸化性雰囲気、特に、酸素濃度が2容量%を超えるような雰囲気では、複合水酸化物の一次粒子が酸化によって微細化し、得られる二次電池の充放電容量を改善することができなくなる。
反応水溶液は、晶析工程中、好ましくは100rpm〜130rpm、より好ましくは110rpm〜120rpmで撹拌することが必要となる。これにより、略球状の二次粒子が得られる。これに対して、撹拌速度が100rpm未満では、一次粒子が過剰に凝集することによって、略球状の二次粒子を得ることができないおそれがある。一方、撹拌速度が130rpmを超えると、一次粒子の凝集が抑制され、複合水酸化物粒子(二次粒子)が微細化するおそれがある。
本発明では、充填性に優れる正極活物質を得る観点から、晶析方法として、連続晶析法を採用することが必要となる。すなわち、連続晶析方法によれば、粒径の大きな複合水酸化物粒子(二次粒子)を効率的に得ることができるため、これを前駆体とする正極活物質の充填性を向上させることが可能となる。これに対して、バッチ式晶析法を採用した場合には、複合水酸化物粒子の大粒径化が難しく、正極活物質の充填性を向上させることができない。
晶析工程で得られた複合水酸化物粒子の回収は、公知の方法で行うことができる。たとえば、晶析工程で得られた複合水酸化物粒子を含む反応水溶液を、フィルタープレスなどに投入し、ろ過することにより回収することができる。
洗浄工程は、晶析工程で得られた複合水酸化物粒子を洗浄し、残留する不純物を除去する工程である。これにより、正極活物質の結晶構造をより安定化させることができる。
被覆工程は、晶析工程で得られた複合水酸物粒子を含むスラリーとマグネシウムを含む被覆溶液を混合し、混合溶液を形成することにより、Mg被覆複合水酸化物粒子を得る工程である。
乾燥工程は、被覆工程で得られたMg被覆複合水酸化物粒子を加熱し、残留水分を除去する工程である。これにより、後述する熱処理工程や混合工程における各操作容易に行うことができる。
2−1.非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式:LiuNi1-x-y-zCoxAlyMgzO2(ただし、1.00≦u≦1.04、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表され、層状構造のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子からなる。この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された中実構造の二次粒子からなり、XRD測定によるリートフェルト解析から求められる(003)面結晶子径が1200Å〜1600Åであることを特徴とする。また、二次粒子の平均粒径が11.5μm〜14.5μmであり、タップ密度が2.6g/ml以上あり、かつ、比表面積が0.2m2/g〜0.5m2/gであることを特徴とする。
本発明の正極活物質は、一般式:LiuNi1-x-y-zCoxAlyMgzO2(ただし、1.00≦u≦1.04、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表される。なお、正極活物質の組成は、ICP発光分光分析法などによって求めることができる。
本発明の正極活物質は、XRD測定によるリートフェルト解析から求められる(003)面結晶子径が1200Å〜1600Å、好ましくは1300Å〜1600Å、より好ましくは1400Å〜1600Åの範囲にある。(003)面結晶子径がこのような範囲にある正極活物質は、結晶性が高く、充放電容量やサイクル特性に優れた二次電池を実現することができる。これに対して、(003)面結晶子径が1200Å未満では、正極活物質の結晶性が低く、これを用いた二次電池の充放電容量が低下してしまう。一方、(003)面結晶子径が1600Åを超えると、比表面積が低下するため、二次電池の出力特性などの電池性能が低下する。
本発明の正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子により構成される。また、この正極活物質は、層状構造のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子から構成され、XRD測定では、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)と同様の回折パターンを示す。すなわち、本発明の正極活物質は、LiNiO2によって構成されたマトリックス中に、コバルト、アルミニウムおよびマグネシウムが一様に固溶した結晶構造を有する。このため、本発明の正極活物質では、マグネシウムおよびアルミニウムの添加をごく微量とした場合であっても、結晶構造の安定性を改善することができ、二次電池を構成した場合に、充放電容量、サイクル特性および高温安定性を同時に改善することが可能となる。
正極活物質(二次粒子)の平均粒径は、11.5μm〜14.5μm、好ましくは12μm〜13.5μmであることが必要とされる。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、タップ密度も大きくなり、得られる二次電池の充放電容量を増加させることができる。これに対して、平均粒径が11.5μm未満では正極活物質のタップ密度が低下するため、充放電容量を増加させることができない。一方、平均粒径が14.5μmを超えると、正極活物質の比表面積が大幅に低下してしまう。なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準平均粒径(MV)を意味し、レーザ光散乱式粒径分布測定機により求めることができる。
正極活物質のタップ密度は、2.5g/ml以上、好ましくは2.6g/ml以上であることが必要とされる。タップ密度が2.5g/ml未満では、充填性が低く、二次電池全体の充放電容量を改善することができない。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されることはないが、通常の製造条件では4g/ml以下、好ましくは3.8g/ml以下となる。なお、本発明において、タップ密度とは、JIS Z−2504に基づき、容器に採取した試料粉末を、100回タッピングした後のかさ密度を意味し、振とう比重測定器を用いて測定することができる。
正極活物質の比表面積は、0.2m2/g〜0.5m2/gであることが好ましく、0.30m2/g〜0.40m2/gであることがより好ましい。比表面積をこのような範囲に制御することにより、この正極活物質を用いた二次電池の出力特性を確保しつつ、サイクル特性を改善することが可能となる。これに対して、正極活物質の比表面積が0.2m2/g未満では、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することができず、出力特性が大幅に低下する。一方、正極活物質の比表面積が0.5m2/gを超えると、電解液との反応性が高くなりすぎるため、サイクル特性を十分に改善することができない。なお、本発明において、比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、上述したMg被覆複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程と、このリチウム混合物を、酸化性雰囲気下、600℃〜800℃で焼成する、焼成工程とを備えることを特徴とする。なお、必要に応じて、以下で説明する熱処理工程、第2洗浄工程および分級工程などを追加してもよい。
熱処理工程は、被覆工程または乾燥工程後のMg被覆複合水酸化物粒子をコージェライト製の匣鉢などに入れて、酸化性雰囲気中で加熱することにより酸化し、熱処理粒子を得る工程である。熱処理工程を行うことで、焼成工程において、正極活物質の合成反応を円滑に進行させることが可能となるため、結晶性がより優れた正極活物質を得ることができる。なお、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去されたMg被覆複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換されたMg被覆複合酸化物粒子、または、これらの混合物も含まれる。
混合工程は、Mg被覆複合水酸化物粒子または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を、酸化性雰囲気下、600℃〜800℃で焼成し、正極活物質を合成する工程である。なお、焼成工程で用いる炉は、酸化性雰囲気下でリチウム混合物を焼成することができる限り、特に制限されることはなく、バッチ式または連続式の炉のいずれも用いることができる。
本発明の正極活物質の製造方法では、焼成工程後に、得られた正極活物質を分級してもよい。これにより、粒度分布の狭い正極活物質を得ることができ、二次電池のサイクル特性をさらに改善することが可能となる。なお、分級方法は、特に制限されることなく、公知技術を利用することができる。たとえば、目的とする平均粒径に対応する目開きの篩いを用いて分級する方法を利用することができる。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極、セパレータ、非水系電解液などの、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素を備える。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用することも可能である。
a)正極
本発明により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして非水系電解質二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に制限されることはない。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
以上の正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
本発明の非水系電解質二次電池は、上述したように、本発明の正極活物質を正極材料として用いているため、充放電容量、サイクル特性および高温安定性に優れていると評価することができる。
本発明の非水系電解質二次電池は、上述のように、充放電容量およびサイクル特性に優れるため、小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、このような本発明の非水系電解質二次電池は、小型化が可能であり、かつ、高価な保護回路を簡略化することもできるため、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器、特に電気自動車の電源としても好適に用いることができる。
a)Mg被覆複合水酸化物粒子の作製
複合水酸化物粒子を連続晶析法により晶析させた後、この複合水酸化物粒子をマグネシウムで被覆することにより、Mg被覆複合水酸化物粒子を製造した。
[組成]
ICP発光分光分析の結果、このMg被覆複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.80Co0.15Al0.04Mg0.01(OH)2で表されるものであることが確認された。
SEM(株式会社日立製作所製、S−4700)を用いた観察の結果、このMg被覆複合水酸化物粒子は、直方体状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなることが確認された。続いて、このMg被覆複合水酸化物粒子を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工により断面観察可能な状態とした上で、同様にSEM観察した結果、中実構造を備えていることが確認された。また、このMg被覆複合水酸化物粒子を構成する一次粒子の平均粒径は0.08μmであることが確認された。
レーザ光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラック)、振とう比重測定器(蔵持科学器械製作所製、KRS−409)および窒素吸着式BET法測定機(マウンテック製、マックソーブ)を用いた測定の結果、このMg被覆複合水酸化物粒子は、平均粒径が11μm、タップ密度が1.6g/ml、比表面積が12m2/gであることが確認された。
粉末状のMg被覆複合水酸化物粒子をコージェライト製の匣鉢に入れ、700℃で10時間加熱することにより熱処理粒子とした(熱処理工程)。室温まで放冷した後、この熱処理粒子と水酸化リチウムを、Li/Me=1.02となるように混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。このリチウム混合物をコージェライト製の匣鉢に入れ、酸素雰囲気下、730℃で12時間加熱することにより、正極活物質を合成した(焼成工程)。最後に、この正極活物質を目開き38μmの篩で分級した(分級工程)。
[組成]
ICP発光分光分析の結果、この正極活物質は、一般式:Li1.02Ni0.80Co0.15Al0.04Mg0.01O2で表されるものであることが確認された。
SEM観察の結果、この正極活物質は、直方体状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなることが確認された。続いて、この正極活物質を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工により断面観察可能な状態とした上で、同様にSEM観察した結果、中実構造を備えていることが確認された。
X線回折装置(パナリティカル製、X’Pert3 powder)を用いたXRD測定によるリーフェルト解析の結果、この正極活物質の(003)面結晶子径は1439Åであることが確認された。
レーザ光回折散乱式粒度分析計、振とう比重測定器および窒素吸着式BET法測定機による測定の結果、この正極活物質の平均粒径は12.8μmであり、タップ密度は2.63g/ml、比表面積は0.31m2/gであることが確認された。
[初期放電容量の評価]
この正極活物質を用いて、図1に示すような2032型コイン電池1を作製した。はじめに、上述の正極活物質を85質量%、アセチレンブラックを10質量%、PVDFを5質量%ずつ秤量し、これらを混合した後、これにNMP(n−メチルピロリドン)を適量加えてペースト状にした。この正極合材ペーストを、アルミニウム箔上に、乾燥後の正極活物質の面密度が7mg/cm2となるように塗布し、120℃で真空乾燥した後、直径が13mmの円板状に打ち抜くことで、正極3aを作製した。なお、負極3bにはカーボンを、電解液には、1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液を使用し、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で、2032型コイン電池1を組み立てた。
負極にリチウム金属を用いたこと以外は同様にして、2032型コイン電池1を組み立てた。作製後、同様にして初期放電容量を測定した。続いて、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電するサイクルを200回繰り返した後の放電容量を測定した。この結果、初期放電容量に対する200サイクル目の放電容量(200サイクル容量維持率)は、95%であることが確認された。
ラミネート型の電池を組み立て後、同様にして、初期放電容量C0を測定した。また、を60℃に維持した保温器内に3週間保管した後、同様にして、放電容量C3を測定した。この結果、C3/C0が89.3%であることが確認された。
晶析工程において、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を11.9に調整し、維持したこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
晶析工程において、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を11.3に調整し、維持したこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
晶析工程において、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を11.9とし、撹拌速度を114rpm(実施例1の95%)としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
被覆工程において、スラリーに、0.6mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液を、100ml/分で10分間かけて供給したこと、すなわち、マグネシウムの添加量を3倍としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
焼成工程において、焼成温度を700℃としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4示す。
焼成工程において、焼成温度を710℃としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
焼成工程において、焼成温度を760℃としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
焼成工程において、焼成温度を770℃としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
被覆工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を作製し、その評価を行った。これらの結果を表2〜4に示す。
被覆工程において、スラリーに、1mol/Lの硫酸マグネシウム水溶液を、100ml/分で10分間かけて供給したこと、すなわち、マグネシウムの添加量を5倍としたこと以外は実施例1と同様にして、Mg被覆複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を得て、その評価を行った。この結果を表2〜4に示す。
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ
Claims (12)
- 一般式:Ni1-x-y-zCoxAlyMgz(OH)2(ただし、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表され、マグネシウムまたはマグネシウム化合物からなる被膜によって被覆されたマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子であって、
複数の一次粒子が凝集して形成された中実構造の二次粒子からなり、
前記二次粒子の平均粒径が10.0μm〜14.5μmであり、タップ密度が1.4g/ml以上であり、かつ、比表面積が10m2/g〜25m2/gである、
マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子。 - 前記被膜の厚さが0.001μm〜0.01μmである、請求項1に記載のマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子。
- 前記一次粒子は、直方体状であり、平均粒径が0.01μm〜0.1μmの範囲にある、請求項1または2に記載のアルミニウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子。
- 一般式:Ni1-x-y-zCoxAlyMgz(OH)2(ただし、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表され、マグネシウムまたはマグネシウム化合物からなる被膜によって被覆されたマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子の製造方法であって、
不活性雰囲気中、温度を45℃〜55℃、液温25℃基準におけるpH値を11〜12およびアンモニウムイオン濃度を8g/L〜12g/Lに制御した反応水溶液に、少なくともニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含有する原料水溶液を供給して、連続晶析法により、ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、晶析工程と、
前記ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を含むスラリーとマグネシウムを含む被覆溶液を混合し、混合溶液を形成することにより、マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を得る、被覆工程と、
を備える、マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子の製造方法。 - 前記混合溶液の液温25℃基準におけるpH値を10〜11の範囲に調整する、請求項4に記載のマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子の製造方法。
- 前記被覆工程前に、前記晶析工程で得られたニッケルコバルト複合水酸化物粒子を洗浄する洗浄工程をさらに備える、請求項4または5に記載のマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子の製造方法。
- 前記アルミニウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を100℃〜150℃に加熱して乾燥する、乾燥工程をさらに備える、請求項4〜6のいずれかに記載のアルミニウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子の製造方法。
- 一般式:LiuNi1-x-y-zCoxAlyMgzO2(ただし、1.00≦u≦1.04、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表され、層状構造のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、
複数の一次粒子が凝集して形成された中実構造の二次粒子からなり、
XRD測定によるリートフェルト解析から求められる(003)面結晶子径が1200Å〜1600Åであり、
LiNiO 2 によって構成されたマトリックス中に、コバルト、アルミニウムおよびマグネシウムが一様に固溶した結晶構造を有し、および、
前記二次粒子の平均粒径が11.5μm〜14.5μmであり、タップ密度が2.6g/ml以上あり、かつ、比表面積が0.2m2/g〜0.5m2/gである、
非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 一般式:LiuNi1-x-y-zCoxAlyMgzO2(ただし、1.00≦u≦1.04、0.05≦x≦0.20、0.01≦y≦0.06、0.01≦z≦0.03)で表され、層状構造のリチウムニッケルコバルト複合酸化物粒子からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程と、
前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気下、600℃〜800℃で焼成する、焼成工程と、
を備える、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記焼成工程における焼成温度を700℃〜770℃とする、請求項9に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記混合工程の前に、前記マグネシウム被覆ニッケルコバルト複合水酸化物粒子を酸化性雰囲気中、600℃〜800℃で加熱する、熱処理工程をさらに備える、請求項9または10に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水系電解質二次電池。
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