JP6510296B2 - 金属成形体の粗面化方法 - Google Patents
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Description
また金属成形体の表面を粗面化する他の方法として、例えば、特許文献1の請求項2、特許文献4の請求項3には、レーザーエッチングが記載されている。
特許文献1、4には、レーザーエッチングの詳細についての記載はないが、特許文献5の段落番号0052、特許文献6の段落番号0100には、レーザーエッチングがパルスレーザーを使用したものであることが記載されている。
パルスレーザーを使用したレーザーエッチングでは、金属成形体の単位面積当たりの加工時間が長くなり、工業的規模の実施では生産性が低下する。
前記粗面化対象部の表層部に形成された多孔構造が、厚さ方向に形成された、表面側に開口部を有する幹孔と、幹孔の内壁面から幹孔とは異なる方向に形成された枝孔からなる開放孔を有しているものであり、
前記粗面化対象部の表層部が、金属成形体の表面からの開放孔の深さまでの50〜500μmの深さ範囲のものである、金属成形体の粗面化方法を提供する。
このように粗面化対象部に対して高い照射速度でレーザー光を連続照射することで、ごく短時間で粗面化対象部を粗面にすることができる。
本発明の粗面化方法を適用する金属成形体の粗面化対象部は特に制限されず、例えば、平面、曲面、2つの平面の境界部分の角部、3つ以上の平面からなる尖端部、平面と曲面が組み合わされた面、前記各面が凹凸を有している面、これらの一部分などである。
図1は、面111に3つの凹部112、113、114と凹部間の凸部115、116を有している平板100である。平板100では、各平面のほか、凹凸部分も粗面化対象部となる。
図2は、大径の円柱121と小径の円柱122が一体化された円柱120である。円柱120では、大径の円柱121の周面122、端面123、周面122と端面123の境界部、小径の円柱122の周面124、端面125、周面134と端面125の境界部、大径の円柱121と小径の円柱122の段差面126などが粗面化対象部となる。
図3は、三角錐130である。三角錐130では、面131、面132などの平面、面131と面132の境界部133、3つの面の境界部である尖端部134などが粗面化対象部となる。
また、リング、筒、半球、球、立体格子や木の枝のような複雑な形状のもの、針、ワイヤのような細いものの全ての面を粗面化対象部とすることができる。
例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものに適用できる。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができるため、加工時間を短縮することができる。
(A)レーザー光の照射速度が2000〜15000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm2
要件(A)、(B)であるときの加工時間を上記範囲内にするとき、粗面化対象部の全面を粗面化することができる。
(I)図4、図5に示すように、粗面化対象部(例えば長方形の面とする)の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)前記粗面化対象部の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法。
(III)前記粗面化対象部の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)前記粗面化対象部に対してランダムに連続照射する方法。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほど粗面化対象部に対する粗面化の程度が大きくなる。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする、また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体の粗面化対象部の面積に応じて調整することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(図5に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、図4、図5に示す連続照射方法に代えて、図6に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度E1(W/μm2)より選択することができる。
エネルギー密度E1(W/μm2)は、0.1W/μm2以上が好ましく、0.2〜10W/μm2がより好ましく、0.2〜6.0W/μm2がさらに好ましい。
エネルギー密度E1(W/μm2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
このときの金属成形体の粗面化対象部の状態の一実施形態を図7〜図9により説明する。
図7に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで粗面化することができる。1本の直線への照射回数は1〜10回が好ましい。
1本の直線への照射の繰り返し回数(パス回数)が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは20〜35回である。
1本の直線に繰り返し照射するときは、双方向照射と一方向照射を選択することができる。
双方向放射は、1本のライン(溝)を形成するとき、ライン(溝)の第1端部から第2端部に連続波レーザーを照射した後、第2端部から第1端部に連続波レーザーを照射して、その後は、第1端部から第2端部、第2端部から第1端部というように繰り返し連続波レーザーを照射する方法である。
一方向照射は、第1端部から第2端部への一方向の連続波レーザー照射を繰り返す方法である。
開放孔30は、厚さ方向に形成された開口部31を有する幹孔32と、幹孔32の内壁面から幹孔32とは異なる方向に形成された枝孔33からなる。枝孔33は、1本または複数本形成されていてもよい。
内部空間40は、トンネル接続路50により開放孔30と接続されている。
なお、多数の開放孔30が一つになって溝状の開放空間45が形成されていてもよい。
また、同様に開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔32の内壁面が溶融して枝孔33が形成され、さらに枝孔33が延ばされてトンネル接続路50が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体の粗面化対象部には開放孔や溝が形成されるが、開口部を有していない内部空間と、前記開放孔と前記内部空間を接続する接続通路は形成されない。
また本発明の金属成形体の粗面化方法は、下記式から求められる、1回以上のスキャンで単位面積あたりの金属に与えるエネルギー積算量であるエネルギー密度E3(J/μm2)が5×10-7≦E3≦8×10-4の範囲になるようにレーザー照射することにより1本の線(溝)の長さ方向に直交する方向の断面形状を制御することができる。
E2=(出力〔W〕)/(スポット径〔μm〕×照射速度〔mm/sec〕×1000)
E3=E2×パス回数
(式中、
出力(W)が20〜950Wであり、
スポット径(μm)が5〜100μmであり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
パス回数が5〜20回である。)
前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝と(b)独立穴の合計数は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。
また、前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝の数は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
このようにして(a)〜(d)の断面形状の割合を調整することで、用途に応じた粗面化状態になるように制御することができるようになる。
(a)〜(d)の断面形状のそれぞれの割合は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
図10(a)、図11(a)は、粗面化対象面12に形成された断面形状が鍵穴に類似した形状の溝(鍵穴溝)201である。開口部幅D1、第1内部幅D2、第2内部幅D3の大小関係は、図10(a)に示すD1=D2<D3の関係に限定されない。第1内部幅D2は、中間付近の深さ位置の幅であり、溝幅が最小または最大になる部分の幅である。
第2内部幅D3は、第1内部幅D2から底面までの間の幅であり、第1内部幅D2が溝幅の最大値であるときはD2>D3の関係となり、第1内部幅D2が最小径であるときは、D3>D2の関係となる。
開口部幅D1、第1内部幅D2および第2内部幅D3の大小関係は、D1=D2<D3のほか、図12(a)に示すD1>D3>D2、図12(b)に示すD2>D3>D1および図12(c)に示すD3>D1>D2から選ばれるいずれかを満たしているものでもよい。但し、D1=D2=D3は含まれない。
図10(b)は、粗面化対象面12に形成された見かけ上は独立した穴(独立穴)202である。
独立穴202は、図11(b)に示すように、粗面化対象面12に形成された溝の側壁部の一端側または両端側が熱溶融して幅方向に突き出された結果、橋が架けられたような構造(蓋がされたような構造)になっているものである。
図10(b)は、図11(b)において実線で示す位置の矢印方向からの断面図である。
図10(c)は、粗面化対象面12に形成された見かけ上はW字形状の溝(W字溝)203である。
W字溝は、図11(b)、図12(d)に示すように、底部または底部と側壁部が熱溶融して形成された突起211が、溝の長さ方向に突き出された構造になっているものであり、前記突起を含む断面形状がW字形状になっているものである。
図10(c)は、図11(c)および図12(d)において実線で示す位置の矢印方向からの断面図である。
図10(d)、図11(d)は、粗面化対象面12に形成された断面形状がV字形状の溝(V字溝)204である。開口部径(D11)が最大で、内部径D12は開口部径D11よりも小さくなっている。
本発明の金属成形体の粗面化方法は、サンドブラストでは充分に粗面化できないような形状の金属成形体面またはその部分に対しても使用することができるほか、粗面化するときにはマスキングも不要になる。
本発明の金属成形体の粗面化方法は、金属成形体の滑り止め加工、艶消し加工(反射防止加工)のほか、触り心地を改善するための加工などにも適用することができる。
本発明の金属成形体の粗面化方法は、所望の文字、数字、図形、模様、商標、氏名、名称またはこれらの組み合わせなどを分散させて形成することで粗面化することもできるため、上記加工による各効果に加えて、さらに見た目の美しさも付与することができる。
本発明の金属成形体の粗面化方法を適用して表層部に上記したような(図8、図9に示すような)多孔構造を形成させたとき、粘度の小さい粘着剤を塗布して多孔構造部分内に侵入保持させることで、長期間粘着力を有する粘着面にすることができる上、表面が微細な凹凸を有しているため、貼り付けたものは剥がし易くなる。
本発明の金属成形体の粗面化方法を適用して表層部に上記したような(図8、図9に示すような)多孔構造を形成させたとき、前記多孔構造部分に水、各種有機溶媒、各種薬剤を含む水溶液または有機溶媒溶液、各種香料を含む水溶液または有機溶媒溶液などを保持させた状態にして、水、各種有機溶媒を少しずつ蒸発させるようにすることができ、さらに前記薬剤中の薬効成分(例えば、室温で揮発性の薬効成分)、香料(例えば、室温で揮発性の香料)を少しずつ放出させるようにすることができる。
実施例および比較例は、図13に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の粗面化対象部12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表1に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例1〜5、比較例1〜3は図4に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例6は図5に示すようにレーザー光を連続照射した。
図15は、実施例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図16は、実施例3の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図17は、実施例4の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図18は、実施例5の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図19は、実施例6の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図20は、比較例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。照射速度が1000mm/secであることから、粗面化対象部の粗面化が十分になされていなかった。
工業的規模で大量生産することを考慮すれば、加工時間の短縮ができること、即ち、製造に要するエネルギーも低減できることによる工業的価値は非常に大きなものである。
実施例および比較例は、図21に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の粗面化対象部12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表2に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例および比較例は、図22に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の粗面化対象部12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表3に示す条件でレーザーを連続照射した。
実施例10〜14、比較例8、9は図4に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例15は図5に示すようにレーザー光を連続照射し、比較例7は図6に示すようにレーザー光を照射した。
実施例10〜15と比較例7との対比から確認できるとおり、連続波レーザーを使用することで、パルス波レーザーを使用した場合と比べて、加工時間を大きく短縮できた。
<圧縮成形>
金属成形体10を粗面化対象部12が上になるように型枠内(テフロン製)に配置し、粗面化対象部12上に樹脂ペレットを加えた。その後、型枠を鉄板で挟みこみ、下記条件で圧縮して、図23に示す複合成形体を得た。
樹脂ペレット:PA66樹脂(2015B,宇部興産(株)製)
温度:285℃
圧力:1MPa(予熱時)、10MPa
時間:2分間(予熱時)、3分間
成形機:東洋精機製作所製圧縮機(mini test press-10)
開口部を有していない内部空間の有無を確認した。以下にその方法を示す。
複合成形体の粗面化対象部12を含む接合部において、レーザー照射方向に対して垂直方向(図7のA-A、B-B、C-C方向)にランダムに3箇所切断し、それぞれの表層部の断面部を走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に3点観察した。
SEM観察写真(500倍)において内部空間の有無を確認できた場合、その個数を数えた。なお、内部空間の最大径が10μm以下のものは除外した。
内部空間の個数(9箇所での平均値)を示した(表3)。
また、内部空間を微小部X線分析(EDX)で分析し、樹脂が内部空間まで侵入していることを確認した。
SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N
EDX分析装置:アメテック(旧エダックス・ジャパン)社製 Apollo XP
なお、顕微レーザラマン分光測定装置を用いても樹脂が内部空間まで侵入していることを確認できる。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図24からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図25からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
図26からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
金属成形体10には、多数の開放孔30が形成されていることが確認できる。
図22に示す金属成形体(表4に示す金属)の粗面化対象部12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザーを連続照射した。レーザー光は図4に示すように連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、実施例10〜15と同様に圧縮成形して複合成形体を得た。複合成形体にすることで、粗面化された面の厚さ方向の断面構造(多孔構造)が確認し易くなる。
引張試験と内部空間の観察方法は、実施例10〜15と同様に実施した。
図29は、実施例16の複合成形体の厚さ方向への断面のSEM写真である(図7のA〜Cの断面図)。
図30は、実施例17の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図31は、実施例21の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の粗面化対象部のSEM写真(100倍、500倍である)。粗面化対象部が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
実施例1と同様にして、アルミニウム板表面にレーザー照射したときのエネルギー密度と溝の深さの関係(図32)、エネルギー密度と溝の幅の関係(図33)を試験した。
その結果、エネルギー密度が0.2W/μm2付近において、明確な違いが認められた。
実施例7〜9(表2)と同様にして、図21に示す金属成形体(表5に示す金属)の粗面化対象部12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表5に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例7〜9(表2)と同様にして、図21に示す金属成形体(表6に示す金属)の粗面化対象部12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表6に示す条件でレーザー光を連続照射した。
鋼板(330×400×12mm)の上に30mm×30mm×3mmのアルミニウム(A5052)板を置き、アルミニウム板の露出面の20×6mmの範囲に対して、表3に示すレーザー照射条件にて連続照射した。
表3に示すレーザー照射条件のとき、E2は2.5×10-6(J/μm2)である。
E3の範囲は、
下限値が(274W×1回)/(11μm×10000mm/sec×1000)=2.5×10-6(J/μm2)、
上限値が(274W)×20回)/(11μm×10000mm/sec×1000)=5.0×10-5(J/μm2)
の範囲となる。
図34に、実施例43の異なるパス数(繰り返し回数)のレーザー照射後の金属成形体(アルミニウム板)の表面のSEM写真を示した。
図35に図34の20パスの表面状態を画像処理して示した図を示す。図34と図35からも、溝の長さ方向に直交する方向の断面形状が異なっていることが確認できる。
図37〜図39に5パスの計10枚のX線静止画を示し、図40〜図42に10パスの計10枚のX線静止画を示し、図43〜図45に20パスの計10枚のX線静止画を示した。
パスごとの10枚のX線静止画から、それぞれの鍵穴溝201、独立穴202、W字溝203、V字溝204の数を全て計測し、合計数中のそれぞれの割合(%)を求めた。結果を表7に示す。
なお、開口率は、2.1mm×2.1mmの面積における各孔の開口部の面積の割合(%)である。
X線CT:MicroXCT−400(Xradia社製)
測定倍率:10倍(分解能2.5μm)
測定エリア:2.1×2.1×2.1mm
金属成形体の表層部において、(a)の鍵穴溝と(b)の独立穴の合計割合が高くなっていると、例えば、国際公開2014/156989号の特許請求の範囲に記載されている発明のように、金属成形体と樹脂成形体の複合成形体を製造したとき、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができる。
Claims (6)
- 金属成形体の粗面化対象部に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで、前記粗面化対象部の表層部を多孔構造にする工程を有しており、
前記粗面化対象部の表層部に形成された多孔構造が、厚さ方向に形成された、表面側に開口部を有する幹孔と、幹孔の内壁面から幹孔とは異なる方向に形成された枝孔からなる開放孔を有しているものであり、
前記粗面化対象部の表層部が、金属成形体の表面からの開放孔の深さまでの50〜500μmの深さ範囲のものである、金属成形体の粗面化方法。 - 金属成形体の粗面化対象部に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで、前記粗面化対象部の表層部を多孔構造にする工程を有しており、
前記粗面化対象部の表層部に形成された多孔構造が、厚さ方向に形成された、表面側に開口部を有する幹孔と、幹孔の内壁面から幹孔とは異なる方向に形成された枝孔からなる開放孔と、厚さ方向に形成された、表面側に開口部を有していない内部空間を有しており、さらに前記開放孔と前記内部空間を接続するトンネル接続路を有しているものであり、
前記粗面化対象部の表層部が、金属成形体の表面からの開放孔の深さまでの50〜500μmの深さ範囲のものである、金属成形体の粗面化方法。 - 前記レーザー光を連続照射する工程が、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、
前記レーザー出力とスポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度E1(W/μm2)が0.2〜10W/μm2の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程である、請求項1または2記載の金属成形体の粗面化方法。 - 前記レーザー光を連続照射する工程が、
出力(W)が20〜950Wであり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであるとき、
下記式からもとめられる、1回のスキャンで単位面積あたりの金属に与えるエネルギー量であるエネルギー密度E2(J/μm2)が1×10-7≦E2≦4×10-5の範囲になるようにレーザー照射する工程である、請求項1または2記載の金属成形体の粗面化方法。
E2=(出力〔W〕)/(スポット径〔μm〕×照射速度〔mm/sec〕×1000) - 前記レーザー光を連続照射する工程が、
出力(W)が20〜950Wであり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
パス回数が5〜20回であるとき、
下記式から求められる、1回以上のスキャンで単位面積あたりの金属に与えるエネルギー積算量であるエネルギー密度E3(J/μm2)が5×10-7≦E3≦8×10-4の範囲になるようにレーザー照射することにより1本の線(溝)の長さ方向に直交する方向の断面形状を制御する、請求項1または2項記載の金属成形体の粗面化方法。
E3=E2×パス回数
[式中、E2=(出力〔W〕)/(スポット径〔μm〕×照射速度〔mm/sec〕×1000)] - 前記の積算エネルギー密度E3を所定範囲にすることによって、1本の線(溝)の長さ方向に直交する方法の断面形状が次の(a)〜(d)の断面形状を含み、前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝と(b)独立穴の合計数が50%以上になるように制御する、請求項5記載の金属成形体の粗面化方法。
(a)鍵穴溝
開口部幅D1、第1内部幅D2、および第2内部幅D3の大小関係が、D1=D2<D3、D1>D3>D2、D2>D3>D1およびD3>D1>D2から選ばれるいずれかを満たす断面形状部分(但し、D1=D2=D3は含まれない)
(b)独立穴
見かけ上は独立した穴であるが、溝の側壁部の一端側または両端側が熱溶融して幅方向に突き出され、開口部に橋が架けられて蓋がされたような構造になっているもの。
(c)W字溝
溝の底部または底部と側壁部が熱溶融して形成された突起が、溝の長さ方向に突き出された構造になっているものであり、前記突起を含む断面形状がW字形状になっているもの。
(d)V字溝
断面形状がV字形状の溝。
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