JP6507510B2 - 太陽電池モジュール用の封止材シート - Google Patents
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Description
図1に示す通り、本発明の封止材シート1は、中間層11と、中間層11の少なくともいずれか一方、好ましくは両方の最外面に形成される最外層12と、を含む複数の層によって構成される太陽電池モジュール用の封止材シートである。中間層11は、低密度ポリエチレンと、極性基を有する樹脂との混合樹脂をベース樹脂とする中間層用封止材組成物からなる。そして最外層12は、低密度ポリエチレンをベース樹脂とする最外層用封止材組成物からなる。尚、本発明の封止材シートは、上記の極性基を有する樹脂が、中間層用封止材組成物には含有されるが、最外層用封止材組成物には含有されない組成であることを特徴とする。
中間層11は、封止材シート1において、主として十分な耐熱性を封止材シートに付与することに寄与するとともに、同時に架橋反応ガスの発生を抑制することにも寄与する層である。
中間層用封止材組成物のベース樹脂とする混合樹脂を構成する低密度ポリエチレンとしては、密度0.870g/cm3以上0.910g/cm3以下の好ましくは0.870g/cm3以上0.890g/cm3以下、より好ましくは0.870g/cm3以上0.885g/cm3以下の低密度ポリエチレンを用いることができる。低密度ポリエチレンの密度を上記範囲内とすることで、封止材シートのシート加工性を維持しつつ、封止材シートに良好な柔軟性と透明性を付与することができる。
上記の低密度ポリエチレンとともに、中間層用封止材組成物のベース樹脂とする混合樹脂を構成する「極性基を有する樹脂」としては、極性基を有する極性モノマーと極性基を有しないモノマーとの共重合体樹脂を広く用いることができる。このような共重合体樹脂のうち、エチレン系樹脂と、極性基を有する極性モノマーとの共重合体であるエチレン共重合体樹脂を特に好ましく用いることができる。極性基を有するエチレン共重合体樹脂として、具体的には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸無水物共重合体、エチレン・エポキシ基含有モノマー共重合体、エチレン・不飽和アルコール共重合体、エチレン・不飽和アミン共重合体等を挙げることができる。
中間層用封止材組成物は、耐熱性を付与するための架橋処理を行うために必要な量の架橋剤が含有する。架橋剤としては公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。そのようなラジカル重合開始剤の例としては、以下のものを挙げることができる。例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等である。
中間層用封止材組成物は、耐熱性を付与するための架橋処理を行うために架橋助剤を更に添加することができる。架橋助剤も、架橋剤同様に公知のものが使用でき特に限定されず必要に応じて適量を添加することができる。架橋助剤を添加する場合は、2官能モノマー及び/又は3官能モノマーからなる架橋助剤を添加することが好ましい。
又、中間層用封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、封止材シート1に耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。
最外層12は、封止材シート1において、主として、十分な絶縁性や水蒸気バリア性を封止材シートに付与することに寄与する層である。
最外層12に用いられる最外層用封止材組成物は、低密度ポリエチレンをベース樹脂とする。この最外層用のベース樹脂には、中間層用の場合とは異なり、極性基を有する樹脂は含有されない。最外層の樹脂組成をこのように限定することにより、中間層で架橋反応ガスの発生を抑制しつつ、封止材シートに十分な絶縁性と水蒸気バリア性とを付与することができる。尚、最外層用封止材組成物のベース樹脂として用いる低密度ポリエチレンとしては、上記において説明した中間層用の混合樹脂に添加する低密度ポリエチレンと同じものを用いることができる。又、特に、封止材シートの密着性を向上させるために、上記のシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂をより好ましく用いることができる。
最外層用封止材組成物は、中間層用組成物と同様の架橋剤を同様の含有量比で含有する。又、同様の架橋助剤を同様の含有量比で含有させることができる。更に、最外層用封止材組成物には、中間層用組成物と同様にその他の成分を含有させることができる。
本発明の封止材シートの製造方法による封止材シート1の製造方法の実施態様について、説明する。封止材シート1は、上記の各封止材組成物を、その融点を超える温度で溶融成形するシート化工程によって未架橋封止材シートを得て、その後、太陽電池モジュールとしての一体化までのいずれかの段階で、架橋処理が施され、最終的に架橋済みのシート状又はフィルム状の封止材シートとなる。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
上記においてそれぞれその詳細を説明した中間層用及び最外層用の各封止材組成物の溶融成形は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。多層シートとしての成形方法としては、一例として、二種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。
上記のシート化工程後の未架橋の封止材シートに対して、架橋処理を施す架橋工程を、シート化工程の終了後、且つ、封止材シートを他の部材と一体化する太陽電池モジュール一体化工程の開始前、或いは、太陽電池モジュールとしての一体化のための熱ラミネート処理中に行う。この架橋処理によってゲル分率が2%以上80%以下となる封止材シートとする。架橋処理はシート化工程に続いて連続的にインラインで行われてもよく、オフラインで行われてもよい。又、この架橋処理は、電離放射線による架橋処理であってもよい。
本発明の封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて説明する。図2は、本発明の封止材シート1を用いた太陽電池モジュール10の層構成を示す断面図である。本発明の太陽電池モジュール10は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール10は、前面封止材層3及び背面封止材層5の少なくとも一方の封止材層に本発明の封止材シート1を使用する。特に透明前面基板2と対向する前面封止材層3として、封止材シート1の最外層12が透明前面基板2のガラス面と密着する態様で配置されることが好ましい。
太陽電池モジュール10は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
以下において説明する封止材組成物原料を下記表1の割合(質量部)で混合し、それぞれ実施例、比較例の封止材シートの中間層用封止材組成物及び最外層用封止材組成物とした。それぞれの封止材組成物をφ30mm押出し機、200mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度210℃、引き取り速度1.1m/minで中間層用及び最外層用とするための各樹脂シートを作製し、これらの各樹脂シートを積層して、中間層と両最外層を備える実施例及び比較例の3層構造の封止材シートを製造し、これらを以下の試験例の評価用試料とした。実施例、比較例の各封止材シートの厚さ及び、各層の厚さについては、表1に記載の通りとした。
低密度ポリエチレン樹脂1(表1中にて「PE」と表記、以下同様):密度0.880g/cm3、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。融点60℃
低密度ポリエチレン樹脂2(「PE−S」):密度0.880g/cm3、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練して得たシラン変性ポリエチレン系樹脂。密度0.880g/cm3、MFR13.0g/10分。融点60℃
極性基を有する樹脂1(「EVA1」):酢酸ビニル含量33%、三井デュポンポリケミカル製、商品名「EVAFLEX/EV150」。融点61℃
極性基を有する樹脂2(「EVA2」):酢酸ビニル含量19%、三井デュポンポリケミカル製、商品名「EVAFLEX/EV450」。融点84℃
架橋剤:t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスTBEC」)を、内層用と外層用のそれぞれの封止材組成物にいずれも含有量比0.7質量%となるように添加。
架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(Statomer社製、商品名「SR533」)を、内層用と外層用のそれぞれの封止材組成物にいずれも含有量比0.5質量%となるように添加。
耐候安定剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名「Tinuvin770」)を、内層用と外層用のそれぞれの封止材組成物にいずれも含有量比0.2質量部添加。
実施例及び比較例の評価用試料を用いて絶縁性を評価した。その結果を表1に示す。尚、絶縁性の評価のための試験条件は以下の通りとした。
絶縁性試験:絶縁性についての試験は、JIS K6911により、各評価用試料の体積抵抗値を測定することにより行った。各評価用試料をアルミ箔下70mm、上30mmで挟み込みの上下に導電体を付着させる。測定機器としては、超絶縁計(Agilent製:型番C4156)を用いた。又、これらの体積抵抗値については、常温と、現実的且つ過酷な実施条件を想定した80℃とにおいて、それぞれ測定した。
実施例1及び比較例4、6の評価用試料を用いて水蒸気バリア性を評価した。その結果を表1に示す。尚、水蒸気バリア性の評価のための試験条件は以下の通りとした。
水蒸気バリア性試験:水蒸気バリア性についての試験は、JIS K7129 Bにより水蒸気バリア性を測定することにより行った。測定機器としては、MOCON社製「PERMATRAN−W 3/31」を用いた。
実施例及び比較例の評価用試料を用いて架橋反応ガス発生の抑制効果を評価した。その結果を表1に示す。尚、同評価のための試験条件は以下の通りとした。
架橋反応ガス発生の抑制効果試験:実施例及び比較例の各評価用試料について、約200mgを、架橋反応ガス発生の抑制効果試験用の試料として量りとり、サンプル瓶に封入する。そのサンプル瓶を、以下の測定条件で、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(HS−GC)にて測定する。
(測定条件)
装置名:ヘッドスペースガスクロマトグラフ
サンプル加熱条件:150℃、20min
注入口温度(=気化室温度):250℃
検出器:水素炎検出器(FID)
カラム:HP−5MS
膜厚:0.25μm、内径:0.25mmID、長さ:30m
カラム温度:40℃×3min(保持)−15℃/min(昇温)−320℃×5min(保持)
スプリット比10:1
11 中間層
12 最外層
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
10 太陽電池モジュール
Claims (8)
- 太陽電池モジュール用の封止材シートであって、
前記封止材シートは、中間層と最外層とを有する多層シートであり、
前記中間層は、密度0.870g/cm3以上0.910g/cm3以下の低密度ポリエチレンと、極性基を有する樹脂との混合樹脂をベース樹脂とし、該混合樹脂の極性基比率が、3%以上15%以下であって、
前記最外層は、前記低密度ポリエチレンをベース樹脂とし、前記極性基を有する樹脂を含有せず、
前記多層シートの総厚さが200μm以上800μm以下であり、
前記最外層の厚さが30μm以上150μm以下であって、且つ、前記中間層の厚さの1/8以下であり、
前記最外層を構成する樹脂の水蒸気透過率が、12g/m 2 ・day以下であり、
前記中間層を構成する樹脂の水蒸気透過率が、8g/m 2 ・day以上である、封止材シート。 - 前記多層シートが中間層の両面に最外層が積層された3層構造の樹脂シートであって、両最外層の厚さの合計が、70μm以上150μm以下である、請求項1に記載の封止材シート。
- 前記極性基を有する樹脂が、エチレン共重合体樹脂である請求項1又は2に記載の封止材シート。
- 前記エチレン共重合体樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項3に記載の封止材シート。
- 前記混合樹脂に含まれる低密度ポリエチレン樹脂が、該混合樹脂に含まれる極性基を有する樹脂よりも、融点が低い樹脂である請求項1から4のいずれかに記載の封止材シート。
- 前記混合樹脂に含まれる低密度ポリエチレン樹脂の融点が60℃以下である請求項5に記載の封止材シート。
- 前記中間層及び前記最外層が架橋助剤を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の封止材シート。
- 請求項1から7のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材シートを備える太陽電池モジュール。
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