JP6506986B2 - プレキャストコンクリート部材の接合構造および接合方法 - Google Patents
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Description
この工法では、プレキャストコンクリート部材同士を接合する場合、これらプレキャストコンクリート部材同士の隙間にモルタルを設けることで、プレキャストコンクリート部材の高さを調整するとともに、プレキャストコンクリート部材同士の荷重の伝達を接合面全体で行う(特許文献1参照)。さらに、このモルタルの屋外側の端面にシール材を充填して、雨水の浸入を防止している。
この問題を解決するためには、シール材を打ち直す改修工事が定期的に必要となるが、コストがかかる、という問題があった。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の接合構造1が適用された壁式プレキャストコンクリート構造の建物の一部の斜視図である。図2は、図1の破線で囲まれた部分の拡大断面図である。これら図1および図2は、ここでは、1階壁部材10、2階床部材20、および2階壁部材30の接合部を示している。
1階壁部材10の上端面は、傾斜面10Aとなっている。また、この1階壁部材10の上端面の内端側には、底面12および壁面13からなる切欠き部11が形成されている。
これにより、1階壁部材10の傾斜面10Aと2階床部材20の傾斜面20Aとが一体化して、傾斜面4となっている。
また、2階床面2の傾斜面4と2階壁部材30の下面との間には、モルタルが充填されてモルタル層42が形成されている。
ステップS1では、1階壁部材10を建込んで、この1階壁部材10の切欠き部11に床部材20を係止し、2階床部材20と1階壁部材10との隙間にモルタル40を充填する。これにより、2階床部材20を1階壁部材10に接合して2階床面2とし、この2階床面2の外端部3に傾斜面4を形成する。
ステップS3では、2階床面2の外端部3の上にモルタル43を盛り付ける。
ステップS4では、図4中白抜き矢印で示すように、2階壁部材30を上方から吊り下ろして2階床面2の外端部3に載置する。すると、盛り付けたモルタル43が2階床面2の外端部3と2階壁部材30との間に充填されて、モルタル層42となり、2階壁部材30が2階床面2の外端部3に接合される。
(1)2階床面2の外端部3および1階壁部材10の下面にケイ酸塩41を塗布した。ケイ酸塩は、水分と反応してゲル化することで、この水分の通り道であるクラック(ひび割れ)や空隙を閉塞して、防水性能を発揮するものである。よって、モルタル層42内の水分やモルタル層42に浸透した雨水がケイ酸塩41に触れると、このケイ酸塩41により水分の通り道が閉塞されるから、雨水が屋内に浸入するのを低コストで防止できる。
図5は、本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の接合構造1Aの拡大断面図である。
本実施形態では、モルタル層42Aの構成が第1実施形態と異なり、その他の点は、第1実施形態と同様の構成である。
すなわち、モルタル層42Aは、モルタルからなる第1モルタル層50と、この第1モルタル層50の屋外側に設けられたモルタルからなる第2モルタル層51と、を備える。また、第1モルタル層50の内側には、シール材52が打設されている。
(4)第1モルタル層50の屋外側に第2モルタル層51を設けたので、雨水が第2モルタル層51に浸透して、第1モルタル層50と第2モルタル層51との境界面53に到達しても、図5中矢印で示すように、この雨水はこの境界面53に沿って下方に移動して傾斜面4に到達し、この傾斜面4を流れて屋外に排水される。したがって、雨水が屋内に浸入するのをより確実に防止できる。
図6は、本発明の第3実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の接合構造1Bの拡大断面図である。
本実施形態では、モルタル層42の屋外側にシール材60が打設される点が第1実施形態と異なり、その他の点は、第1実施形態と同様の構成である。
傾斜面4のうちバックアップ材61の直下には、外周に沿って延びる溝62が形成されている。
(5)モルタル層42の屋外側にバックアップ材61を設け、このバックアップ材61のさらに屋外側にシール材60を打設した。また、バックアップ材61の直下に、外周に沿って延びる溝62を形成した。よって、雨水がシール材60に浸透して、バックアップ材61に到達すると、図6中矢印で示すように、この雨水は下方に移動して傾斜面4の溝62に到達し、この溝62を流れて屋外に排水される。したがって、雨水が屋内に浸入するのをより確実に防止できる。
図7は、本発明の第4実施形態に係るプレキャストコンクリート部材の接合構造1Cの拡大断面図である。
本参考例では、2階床面2の外端部3に傾斜面4ではなく、段差5が形成される点が第1実施形態と異なり、その他の点は、第1実施形態と同様の構成である。
すなわち、段差5は、床部材20と面一となる段差上面70と、この段差上面70の屋外側に設けられて段差上面70よりも低い段差下面71と、段差上面70と段差下面71との間の壁面である段差壁面72と、で構成される。
また、2階床面2の段差5と2階壁部材30の下面との間には、モルタルからなるモルタル層42が形成されている。
(6)2階床面2の外端部3および1階壁部材10の下面にケイ酸塩41を塗布した。ケイ酸塩は、水分と反応してゲル化することで、この水分の通り道であるクラック(ひび割れ)や空隙を閉塞して、防水性能を発揮するものである。よって、モルタル層42内の水分やモルタル層42に浸透した雨水がケイ酸塩41に触れると、このケイ酸塩41により水分の通り道が閉塞されるから、雨水が屋内に浸入するのを低コストで防止できる。
図8は、本発明の第2の参考例に係るプレキャストコンクリート部材の接合構造1Dの拡大断面図である。具体的には、図8は、床部材80同士の接合部を示す。
床部材80は、屋上階床となるプレキャストコンクリート造の部材であり、この床部材80の側面同士が接合されている。床部材80の側面には、ケイ酸塩81が塗布されており、床部材80の側面同士の間には、モルタル層82が形成されている。
(7)床部材80の側面にケイ酸塩81を塗布した。ケイ酸塩は、水分と反応してゲル化することで、この水分の通り道であるクラック(ひび割れ)や空隙を閉塞して、防水性能を発揮するものである。よって、モルタル層82内の水分やモルタル層82に浸透した雨水がケイ酸塩81に触れると、このケイ酸塩81により水分の通り道が閉塞されるから、雨水が屋内に浸入するのを低コストで防止できる。
また、モルタル層42Aにケイ酸塩を混入する場合、モルタル層42Aの全体にケイ酸塩を混入してもよいし、モルタル層42Aを構成する第1モルタル層50のみにケイ酸塩を混入してもよいし、モルタル層42Aを構成する第2モルタル層51のみにケイ酸塩を混入してもよい。
ステップS11、S12、S14は、第1実施形態のステップS1、S2、S4と同様である。また、ステップS13では、2階床面2の外端部3の上にケイ酸塩を混入したモルタル43を盛り付ける。
ステップS21、S13は、第1実施形態のステップS1、S4と同様である。また、ステップS22では、2階床面2の外端部3の上にケイ酸塩を混入したモルタル43を盛り付ける。
図11は、実験装置の構成を示す模式図である。プレキャストコンクリート部材である床版の上に、プレキャストコンクリート部材である壁版を配置し、これら床版と壁版との間にモルタル層を設けた。この状態で、床版の一端側にライナーを挟み込んで、床版および壁版を1/20の傾斜となるように傾けて、モルタル層の傾斜方向の下側(つまり屋外側)の面を水に浸した。
実施例1は、床版および壁版とモルタル層との接合面に防止剤を塗布したものであり、実施例2は、実施例1の構成に加えて、さらにモルタル層に防水剤を混入したものである。
また、モルタルに混入した防水剤は、太平洋NN(太平洋マテリアル(株)製)であり、使用量は、セメント量の2%とした。
2…2階床面
3…外端部
4…傾斜面
5…段差
10…1階壁部材
10A…傾斜面
11…切欠き部
12…底面
13…壁面
20…2階床部材
20A…傾斜面
30…2階壁部材
40…モルタル
41…ケイ酸塩
42、42A…モルタル層
43…モルタル
50…第1モルタル層
51…第2モルタル層
52…シール材
53…境界面
60…シール材
61…バックアップ材
62…溝
70…段差上面
71…段差下面
72…段差壁面
80…床部材
81…ケイ酸塩
82…モルタル層
Claims (6)
- コンクリート造の床面の外端部にプレキャストコンクリート造の壁部材を接合するプレキャストコンクリート部材の接合構造であって、
前記床面の外端部には、屋外側に向かうに従って下がる傾斜面が形成され、
前記床面の傾斜面と前記壁部材の下面との間には、モルタル層が形成され、
当該モルタル層は、前記傾斜面の上にのみ設けられ、
前記床面の傾斜面および前記壁部材の下面にケイ酸塩が塗布される、および/または、前記モルタル層にケイ酸塩が混入されることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合構造。 - 前記傾斜面の勾配は、略1/50以上であることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材の接合構造。
- 前記モルタル層は、第1モルタル層と、当該第1モルタル層の屋外側に設けられた第2モルタル層と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート部材の接合構造。
- 前記床面の傾斜面と前記壁部材の下面との間には、前記モルタル層に加えて、当該モルタル層の屋外側に設けられたバックアップ材と、当該バックアップ材の屋外側に打設されたシール材と、が設けられ、
前記床面の傾斜面のうち前記バックアップ材の直下には、外周に沿って延びる溝が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート部材の接合構造。 - コンクリート造の床面の外端部に、プレキャストコンクリート造の壁部材を接合するプレキャストコンクリート部材の接合方法であって、
前記床面の外端部には、屋外側に向かうに従って下がる傾斜面が形成されており、
前記床面の傾斜面および前記壁部材の下面に、ケイ酸塩を塗布する工程と、
前記床面の傾斜面の上にのみ、モルタルを盛り付ける工程と、
前記壁部材を前記モルタルの上に載置する工程と、を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合方法。 - コンクリート造の床面の外端部に、プレキャストコンクリート造の壁部材を接合するプレキャストコンクリート部材の接合方法であって、
前記床面の外端部には、屋外側に向かうに従って下がる傾斜面が形成されており、
前記床面の傾斜面の上にのみ、ケイ酸塩が混入されたモルタルを盛り付ける工程と、
前記壁部材を前記モルタルの上に載置する工程と、を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート部材の接合方法。
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