JP6506691B2 - Fab領域結合性ペプチド - Google Patents

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Description

本発明は、IgGのFab領域に対する結合能が極めて優れているFab領域結合性ペプチド、当該ペプチドをリガンドとして有するアフィニティー分離マトリックス、当該アフィニティー分離マトリックスを用いるFab領域含有タンパク質の製造方法、当該ペプチドをコードするDNA、当該DNAを含むベクター、および当該ベクターにより形質転換された形質転換体に関するものである。
タンパク質の重要な機能の一つとして、特定の分子に特異的に結合する機能が挙げられる。この機能は、生体内における免疫反応やシグナル伝達で重要な役割を果たす。この機能を有用物質の分離精製に利用する技術開発も盛んになされている。実際に産業的に利用されている一例として、抗体医薬を動物細胞培養物から一度に高い純度で精製(キャプチャリング)するために利用される、プロテインAアフィニティー分離マトリックス(以下、プロテインAを「SpA」と省略する場合がある)が挙げられる(非特許文献1,2)。
抗体医薬として開発されているのは基本的にモノクローナル抗体であり、組換え培養細胞技術等を用いて大量に生産されている。「モノクローナル抗体」とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体を指す。現在上市されている抗体医薬のほとんどは、分子構造的には免疫グロブリンG(IgG)サブクラスである。また、免疫グロブリンを断片化した分子構造を有する抗体誘導体(断片抗体)からなる抗体医薬も盛んに臨床開発されており、免疫グロブリンのFab断片からなる抗体医薬が複数上市された(非特許文献3)。
抗体医薬製造工程における初期精製工程には、先述のSpAアフィニティー分離マトリックスが利用されている。しかし、SpAは基本的にIgGのFc領域に特異的に結合するタンパク質である。よって、Fc領域を含まない断片抗体は、SpAアフィニティー分離マトリックスを利用したキャプチャリングができない。従って、抗体医薬精製プロセスのプラットフォーム化の観点から、IgGのFc領域を含まない断片抗体をキャプチャリング可能なアフィニティー分離マトリックスに対する産業的なニーズは高い。
IgGのFc領域以外に結合するタンパク質はすでに複数知られている(非特許文献4)。しかし、そのようなタンパク質をリガンドとしたアフィニティー分離マトリックスが、SpAアフィニティー分離マトリックスと同様に、抗体医薬の精製のため標準的に産業利用されているという事実はない。
例えば、グループGの連鎖球菌(Streptococcus sp.)より見出されたプロテインGと呼ばれるタンパク質(以下、プロテインGを「SpG」と略記する場合がある)は、IgGに結合する性質を有し、このSpGをリガンドとして固定化したSpGアフィニティー分離マトリックス製品もある(GEヘルスケア社製,製品名「Protein-G Sepharose 4 Fast Flow」,特許文献1)。SpGはIgGのFc領域に強く結合するが、Fab領域にも弱いながら結合することが分かっている(非特許文献4,5)。しかし、SpGのFab領域への結合力は弱いので、SpGアフィニティー分離マトリックス製品は、Fc領域を含まずFab領域のみを含む断片抗体の保持性能は低いと言える。そこで、SpGに変異を導入することでFab領域への結合力を向上する取組みもなされている(特許文献2)。
特表昭63−503032号公報 特開2009−195184号公報
Hober S.ら,J.Chromatogr.B,2007,848巻,40-47頁 Shukla A.A.ら,Trends Biotechnol.,2010,28巻,253-261頁 Nelson A.N.ら,Nat.Biotechnol.,2009,27巻,331-337頁 Bouvet P.J.,Int.J.Immunopharmac.,1994,16巻,419-424頁 Derrick J.P.,Nature,1992,359巻,752-754頁
上述したように、従来、抗体を吸着して精製するためのアフィニティーリガンドとしてはプロテインA(SpA)が実用化されているが、SpAはIgGのFc領域にのみ特異的な親和性を示す。しかし近年、抗体の断片を医薬として利用する技術が開発されていることから、IgGのFab領域にも親和性を有するリガンドが求められている。Fc領域のみならずFab領域に親和性を示すタンパク質としてプロテインG(SpG)が知られているが、Fc領域に比べてFab領域に対する親和性は低い。そこで、特許文献2に記載の発明のとおり、SpGに変異を導入してFab領域に対する親和性を高めることも検討されている。しかし、特許文献2に記載の変異型SpGに関して、Fab領域に対する親和性が5倍以上高い変異型SpGは得られておらず、野生型SpGのFab領域に対する親和性が決して高いものではないため、例えばFc領域を含まない抗体断片を精製するためのリガンドとして十分なものとは言えない。
そこで本発明は、IgGのFab領域に対する結合能が極めて優れているFab領域結合性ペプチド、当該ペプチドをリガンドとして有するアフィニティー分離マトリックス、および当該アフィニティー分離マトリックスを用いたFab領域含有タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ペプチドをコードするDNA、当該DNAを含むベクター、および当該ベクターにより形質転換された形質転換体を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、遺伝子工学的手法を用いて数多くのプロテインG変異体を得て、Fab型断片抗体に対する結合力を比較検討することにより、当該結合力を高められる変異位置を特定することに成功して、本発明を完成した。
本発明を以下に示す。
[1] 下記(1)〜(3)の何れかのFab領域結合性ペプチド。
(1) プロテインGのβ1ドメイン由来のアミノ酸配列(配列番号1)において、第13位、第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が置換導入前よりも高いFab領域結合性ペプチド;
(2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第13位、第19位、第30位および第33位を除く領域中で1個以上、20個以下のアミノ酸残基が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチド;または
(3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチド(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第13位、第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)。
[2] 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、第13位の位置のアミノ酸残基が置換されている上記[1]に記載のFab領域結合性ペプチド。
[3] 第13位のアミノ酸残基がThrまたはSerに置換されている上記[2]に記載のFab領域結合性ペプチド。
[4] 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、第30位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換されている上記[1]〜[3]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[5] 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、第19位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換されている上記[1]〜[4]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[6] 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、第33位のアミノ酸残基がPheに置換されている上記[1]〜[5]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[7] 上記(2)に規定されるアミノ酸配列において、上記欠損、置換および/または付加されたアミノ酸残基の位置が、第2位、第10位、第15位、第18位、第21位、第22位、第23位、第24位、第25位、第27位、第28位、第31位、第32位、第35位、第36位、第39位、第40位、第42位、第45位、第47位および第48位から選択される1以上である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[8] 上記(2)に規定されるアミノ酸配列において、上記欠損、置換および/または付加されたアミノ酸残基の位置がN末端および/またはC末端である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[9] 上記(3)に規定されるアミノ酸配列において、上記配列同一性が95%以上である上記[1]〜[8]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチドを2個以上連結した複数ドメインを有することを特徴とするFab領域結合性ペプチド多量体。
[11] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド、または上記[10]に記載のFab領域結合性ペプチド多量体がリガンドとして水不溶性担体に固定化されたものであることを特徴とするアフィニティー分離マトリックス。
[12] Fab領域を含むタンパク質を製造する方法であって、
上記[11]に記載のアフィニティー分離マトリックスと、Fab領域を含むタンパク質を含む液体試料とを接触させる工程と、
アフィニティー分離マトリックスに結合したFab領域を含むタンパク質を、アフィニティー分離マトリックスから分離する工程を含むことを特徴とする方法。
[13] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチドをコードすることを特徴とするDNA。
[14] 上記[13]に記載のDNAを含むことを特徴とするベクター。
[15] 上記[14]に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする形質転換体。
本発明に係るFab領域結合性ペプチドは、IgGのFab領域に対して十分に高い親和性を示すので、通常の抗体のみならず、Fab領域を有するがFc領域を有さない抗体断片にも親和性を示す。よって、本発明に係るFab領域結合性ペプチドを不溶性担体に固定化したアフィニティー分離マトリックスにより、抗体断片医薬の効率的な精製も可能になる。このように、近年、低コストで製造できるなどの理由から抗体断片医薬の開発が盛んであり、本発明は、抗体断片医薬の実用化に寄与し得るものとして、産業上非常に有用である。
より具体的には、本発明では、驚くべきことに、Fab領域に対する親和性が10倍程度高くなった変異型SpGが複数得られ、さらに驚くべきことに50倍以上高くなった変異型SpGも得られた。このように、本発明は、Fc領域を含まない抗体断片を精製するためのリガンドとして、実用に耐え得る親和性の獲得に成功しただけでなく、様々なレベルの親和性を実現する多様な変異手法を示した。また、本発明で得られた変異型SpGは、解離速度定数が野生型に比べて有意に小さくなっており、1/2以下になった変異型SpGが複数得られ、驚くべきことに、1/10になった変異体も得られた。リガンドの解離速度定数が向上すると、当該リガンドが固定化されたアフィニティー分離マトリックスのFab領域を含むタンパク質の保持性能の向上が期待できる。それらの点で、本発明は、特許文献2に記載の発明よりも優れた効果を示していると言える。
図1は、野生型SpG−β1の発現プラスミドの作製方法を示す図である。 図2は、W:野生型SpG−β1と、V:本発明で得られた変異型SpG−β1の、抗TNFαモノクローナル抗体のIgG−Fabに対する結合反応曲線チャートである。 図3は、W:野生型SpG−β1の二量体と、V:本発明で得られた変異型SpG−β1の二量体の、抗TNFαモノクローナル抗体のIgG−Fabに対する結合反応曲線チャートである。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(1)は、プロテインG(SpG)のβ1ドメイン由来のアミノ酸配列(配列番号1)において、第13位、第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基が置換されているアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が置換導入前よりも高いFab領域結合性ペプチドである。
「免疫グロブリン」は、リンパ球のB細胞が産生する糖タンパク質であり、特定のタンパク質などの分子を認識して結合する働きを持つ。免疫グロブリンは、この特定の分子(抗原)に特異的に結合する機能と、他の生体分子や細胞と協同して抗原を有する因子を無毒化・除去する機能を有する。免疫グロブリンは、一般的に「抗体」と呼ばれるが、それはこのような機能に着目した名称である。全ての免疫グロブリンは、基本的には同じ分子構造からなり、“Y”字型の4本鎖構造(軽鎖・重鎖の2本のポリペプチド鎖が2本ずつ)を基本構造としている。軽鎖(L鎖)には、λ鎖とκ鎖の2種類があり、すべての免疫グロブリンはこのどちらかを持つ。重鎖(H鎖)には、γ鎖、μ鎖、α鎖、δ鎖、ε鎖という構造の異なる5種類があり、この重鎖の違いによって免疫グロブリンの種類(アイソタイプ)が変わる。免疫グロブリンG(以下、「IgG」と略記する場合がある)は、単量体型の免疫グロブリンで、2本の重鎖(γ鎖)と2本の軽鎖から構成され、2箇所の抗原結合部位を持っている。
免疫グロブリンの“Y”字の下半分の縦棒部分にあたる場所をFc領域と呼び、上半分の“V”字の部分をFab領域と呼ぶ。Fc領域は抗体が抗原に結合した後の反応を惹起するエフェクター機能を有し、Fab領域は抗原と結合する機能を有する。重鎖のFab領域とFc領域はヒンジ部でつながっており、パパイヤに含まれるタンパク質分解酵素パパインは、このヒンジ部を分解して2つのFab領域(断片)と1つのFc領域に切断する。Fab領域のうち“Y”字の先端に近い部分(ドメイン)は、多様な抗原に結合できるように、アミノ酸配列に多彩な変化が見られるため、可変領域(V領域)と呼ばれている。軽鎖の可変領域をVL領域、重鎖の可変領域をVH領域と呼ぶ。V領域以外のFab領域とFc領域は、比較的変化の少ない領域であり、定常領域(C領域)と呼ばれる。軽鎖の定常領域をCL領域と呼び、重鎖の定常領域をCH領域と呼ぶが、CH領域はさらにCH1〜CH3の3つに分けられる。重鎖のFab領域はVH領域とCH1からなり、重鎖のFc領域はCH2とCH3からなる。ヒンジ部はCH1とCH2の間に位置する。SpG−βのIgGへの結合は、より詳細には、IgGのCH1領域(CH1γ)とCL領域への結合であり、特にCH1への結合が主要である(非特許文献5)。
本発明に係るFab領域結合性ペプチドは、IgGのFab領域に結合する。本発明ペプチドが結合すべきFab領域含有タンパク質は、Fab領域を含むものであればよく、Fab領域とFc領域を不足なく含有するIgG分子であってもよいし、IgG分子の誘導体であってもよい。本発明に係るFab領域結合性ペプチドが結合するIgG分子誘導体は、Fab領域を有する誘導体であれば特に制限されない。例えば、IgGのFab領域のみに断片化されたFabフラグメント、ヒトIgGの一部のドメインを他生物種のIgGのドメインに置き換えて融合させたキメラ型IgG、Fc領域の糖鎖に分子改変を加えたIgG、薬剤を共有結合したFab断片などを挙げることができる。
本発明において「ペプチド」とは、ポリペプチド構造を有するあらゆる分子を含むものであって、いわゆるタンパク質のみならず、断片化されたものや、ペプチド結合などによって他のペプチドが連結されたものも包含されるものとする。
「プロテインG(SpG)」は、グループGの連鎖球菌(Streptococcus sp.)の細胞壁に由来するタンパク質である。SpGは、ほとんどの哺乳類のIgGと結合する能力を有しており、IgGのFc領域に強く結合し、IgGのFab領域にも弱く結合する。
SpGのIgG結合性を示す機能ドメインは、βドメイン(SpG−β)と呼ばれる。なお、β(B)ドメインと呼ぶ場合と、Cドメインと呼ぶ場合の2通りがあり(Akerstrom et al.,J.Biol.Chem.,1987,28,13388-,Fig.5参照)、本明細書では、Fahnestockらの定義に従ってβドメインと呼ぶ(Fahnestock et al.,J.Bacteriol.,1986,167,870-)。
SpG−βのアミノ酸配列は、由来する細菌種や細菌株によって細部が異なっている。代表的なアミノ酸配列として、グループGの連鎖球菌のGX7809株由来の2つのβドメイン(β1とβ2)について、β1ドメイン(SpG−β1)の第1位のAspをThrに置換したアミノ酸配列を配列番号1に、β2ドメイン(SpG−β2)のアミノ酸配列を配列番号2に示す。SpGの各βドメインのアミノ酸配列は互いに配列相同性が高く、これらを一括りとしてプロテインG−βドメイン(SpG−β)と呼ぶ。なお、GX7809株由来のSpG−β2の第1位はThrである。また、文献によっては配列番号1および配列番号2の第2位以降をSpGの各ドメインのアミノ酸配列としているものもあり、上記の置換は配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドのFab領域への親和性には影響を与えない。
なお、pH5.4における変性中点温度が、SpG−β1が87.5℃で、SpG−β2が79.4℃であることが、Alexanderらによって示されている(Alexander et al.,Biochemistry,1992,31,3597-)。したがって、本発明における好適な形態の1つとして、ペプチドの熱安定性の観点から、SpG−β1(配列番号1)を変異導入対象にすることが挙げられる。しかし、アミノ酸配列に変異を加えることにより最終的に得られるアミノ酸配列が本発明の範囲に含まれるのであれば、変異導入対象はSpG−β1(配列番号1)に限定されない。例えば、SpG−β2(配列番号2)、グループGの連鎖球菌であるG148株やGX7805株由来のSpGに含まれる3個のIgG結合性ドメインのN末端側から2番目のドメイン(SpG−C2)、熱安定性に優れた公知のSpG変異体(国際公開第1997−026930号公報、特開2003−88381号公報を参照)などを変異導入対象としてもよい。
「ドメイン」とは、タンパク質の高次構造上の単位であり、数十から数百のアミノ酸残基配列から構成され、なんらかの物理化学的または生物化学的な機能を発現するに十分なタンパク質の単位をいう。
タンパク質やペプチドの「変異体」は、野生型のタンパク質やペプチドの配列に対し、アミノ酸レベルで、少なくとも1つ以上の置換、付加または欠損が導入されたタンパク質またはペプチドをいう。
本発明は野生型SpG−βに変異を導入した配列を有するペプチドに関するが、その変異導入前のアミノ酸配列は、配列番号1で示されるSpG−β1のアミノ酸配列である。但し、本発明に係るFab領域結合性ペプチド(1)〜(3)の何れかの範囲に含まれれば、配列番号2のアミノ酸配列を変異させた結果得られたペプチドであっても、本発明範囲に含まれるものとする。
アミノ酸を置換する変異の表記について、置換位置の番号の前に、野生型または非変異型のアミノ酸残基を付し、置換位置の番号の後に、変異したアミノ酸残基を付して表記する。例えば、第29位のGlyをAlaに置換する変異は、G29Aと記載する。
本発明は、野生型のSpGのβ1ドメインに対し、アミノ酸置換変異を導入することによって、免疫グロブリンGのFab領域への結合力が、アミノ酸変異導入前よりも高い変異体を創製する技術である。本発明に係るアミノ酸残基の置換部位は、配列番号1のアミノ酸配列において、第13位(Lys)、第19位(Glu)、第30位(Phe)または第33位(Tyr)のいずれかの部位である。変異導入前のアミノ酸配列のアミノ酸数が異なる場合においても、配列同一性が80%以上である場合に、配列番号1の第13位、第19位、第30位または第33位に相当する位置を同定することは、当業者であれば容易に可能である。具体的には、アミノ酸配列多重アラインメント用プログラムであるClustal(http://www.clustal.org/omega/)で、アラインメントをとって確かめることが可能である。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(1)は、プロテインGのβ1ドメインのアミノ酸配列(配列番号1)において、第13位、第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列を有する。変異するアミノ酸の種類は、非タンパク質構成アミノ酸や非天然アミノ酸への置換を含め、特に限定されるものではないが、遺伝子工学的生産の観点から、天然型アミノ酸を好適に用いることができる。さらに、天然型アミノ酸は、中性アミノ酸;AspとGluの酸性アミノ酸;Lys、Arg、Hisの塩基性アミノ酸に分類される。中性アミノ酸は、脂肪族アミノ酸;Proのイミノ酸;Phe、Tyr、Trpの芳香族アミノ酸に分類される。脂肪族アミノ酸は、さらに、Gly;Ala;Val、Leu、Ileの分枝アミノ酸;Ser、Thrのヒドロキシアミノ酸;Cys、Metの含硫アミノ酸;Asn、Glnの酸アミドアミノ酸に分類される。また、Tyrはフェノール性水酸基を有することから、芳香族アミノ酸のみでなくヒドロキシアミノ酸に分類してもよい。さらに、別の観点からは、天然アミノ酸を、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Cys、Met、Pro、Pheの疎水性の高い非極性アミノ酸類;Asn、Gln、Ser、Thr、Tyrの中性の極性アミノ酸類;Asp、Gluの酸性の極性アミノ酸類;Lys、Arg、Hisの塩基性の極性アミノ酸類に分類することもできる。上記位置のアミノ酸残基が置換されたペプチドでFab領域結合力の向上が見られれば、置換アミノ酸をさらに上記分類と同類のアミノ酸に変異させたペプチドでも、同様にFab領域結合力の向上が見られる可能性が高い。
本発明における置換変異に関し、第13位のアミノ酸残基がThrまたはSerに置換された変異、第30位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換された変異、および/または、第19位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換された変異を含むことが好ましい。さらに、第13位のアミノ酸残基がThrまたはSerに置換された変異を含み、かつ、第30位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換された変異、および/または、第19位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換された変異を含むことがより好ましい。さらに、第13位のアミノ酸残基がThrまたはSerに置換された変異を含み、かつ、第30位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換された変異、および/または、第19位のアミノ酸残基がIleまたはValに置換された変異を含み、かつ、第33位のアミノ酸残基がPheに置換された変異を含むことがより好ましい。第30位のアミノ酸残基はLeuに置換されることがより好ましく、第19位のアミノ酸残基はValまたはIleに置換されることがより好ましい。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(1)は、IgGのFab領域への結合力が、アミノ酸置換導入前よりも高いという特徴を示す。IgGのFab領域に対する親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴原理を用いたBiacoreシステム(GEヘルスケア社)などのバイオセンサーによって試験することができるが、これに限定されるものではない。
Fab領域に対する結合性の測定条件としては、IgGのFab領域に結合した時の結合シグナルが検出できればよく、20〜40℃の一定温度にて、pH6〜8の中性条件にて測定することで簡単に評価することができる。
結合相手のIgG分子は、Fab領域への結合が検出できれば特に限定はされないが、Fc領域を含むIgG分子を用いるとFc領域への結合も検出されるので、Fc領域を除くようにFab領域を断片化し、分離精製したFabフラグメントを用いることが好ましい。親和性の違いは、同じ測定条件にて、同じIgG分子に対する結合反応曲線を得て、解析した時に得られる結合パラメータにて、変異を導入する前のペプチドと変異を導入した後のペプチドとを比較することで当業者が容易に検証することができる。
結合パラメータとしては、例えば、親和定数(KA)や解離定数(KD)を用いることができる(永田ら著,「生体物質相互作用のリアルタイム解析実験法」,シュプリンガー・フェアラーク東京,1998年,41頁)。親和定数は、結合速度定数(kon)を解離速度定数(koff)で割った値である(KA=kon/koff)。したがって、結合速度定数がより大きな値となった場合や解離速度定数がより小さな値になった場合に、親和定数は大きくなる。特に解離速度定数は、相互作用している2つの分子の離れやすさを示す指標であるので、解離速度定数が小さい場合には、本発明ペプチドが固定化されたアフィニティー分離マトリックスのFab断片の保持性能が高いといえる。よって、本発明に係る変異を導入した配列を有するペプチドについて、変異を導入する前の配列を有するペプチドに比べて、解離速度定数(koff)が1/2以下になったペプチドを好適に用いることができ、より好ましくは1/3以下、さらにより好ましくは1/4以下、さらにより好ましくは1/5以下、特に好ましくは1/10以下になったペプチドを好適に用いることができる。
本発明に係る変異体とFab断片の親和定数は、Biacoreシステムを利用して、センサーチップにFab断片を固定化して、温度25℃、pH7.4の条件下にて、本発明変異体を流路添加する実験系で求めることができる。本発明に係る変異を導入した配列を有するペプチドについて、親和定数(KA)が、該変異を導入する前の配列を有するペプチドに比べて2倍以上向上したペプチドを好適に用いることができ、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上、さらに好ましくは6倍以上、さらに好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは50倍以上向上したペプチドを好適に用いることができる。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(2)は、上記Fab領域結合性ペプチド(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第13位、第19位、第30位および第33位を除く領域中で1または数個のアミノ酸残基が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチドである。
「1または数個のアミノ酸残基が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列」における「1または数個」の範囲は、欠損等を有するFab領域結合性ペプチドがIgGのFab領域への高い結合力を有する限り特に限定されるものではない。前記「1または数個」の範囲は、例えば、1個以上、20個以下とすることができ、好ましくは1個以上、15個以下、より好ましくは1個以上、10個以下、さらに好ましくは1個以上、7個以下、一層好ましくは1個以上、5個以下、特に好ましくは1個以上、3個以下、1個以上、2個以下、または1個程度であることができる。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(2)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の欠損、置換および/または付加の位置は、Fab領域結合性ペプチド(1)で規定された第13位、第19位、第30位および第33位以外であれば、特に制限されない。例えば、第2位、第10位、第15位、第18位、第21位、第22位、第23位、第24位、第25位、第27位、第28位、第31位、第32位、第35位、第36位、第39位、第40位、第42位、第45位、第47位および第48位から選択される1以上の部位が好ましく、これら部位は特に置換される位置として好ましい。
上記部位のアミノ酸残基を置換するアミノ酸の種類は特に限定はされないが、例えば、第2位はArgが好ましく、第10位はArgが好ましく、第15位はGlnおよびThrなどの中性の極性アミノ酸類が好ましく、第18位はAlaが好ましく、第21位はIle、AlaまたはAspが好ましく、第22位はAsnまたはGluが好ましく、第23位はThrまたはAspが好ましく、第24位はThrが好ましく、第25位はSerまたはMetが好ましく、第27位はAspまたはGlyが好ましく、第28位はArg、AsnまたはIleが好ましく、第31位はArgが好ましく、第32位はArgが好ましく、第35位はPhe、Tyrなどの芳香族アミノ酸類が好ましく、第36位はGlyが好ましく、第39位はLeuまたはIleが好ましく、第40位はValまたはGluが好ましく、第42位はLeu、ValまたはGlnが好ましく、第45位はPheが好ましく、第47位はHis、Asn、Ala、GlyまたはTyrが好ましく、第48位はThrが置換するアミノ酸として好ましい。特に、第2位はArgが好ましく、第10位はArgが好ましく、第15位は中性極性アミノ酸類が好ましく、第18位はAlaが好ましく、第21位はAlaまたはAspが好ましく、第39位はLeuまたはIleが好ましく、第47位はAlaが好ましい。
それ以外にも、野生型SpG−βや公知のSpG−β変異体の間でアミノ酸の種類が異なる部位である、第6位、第7位、第24位、第28位、第29位、第31位、第35位、第40位、第42位および第47位から選択される1以上の部位も、置換される部位として挙げられる。
また、本発明に係るFab領域結合性ペプチド(2)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の欠損、置換および/または付加の位置としては、N末端および/またはC末端を挙げることができる。これら部位は、特に欠損および/または付加の部位として好ましい。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(2)のIgGのFab領域への結合力は、上記Fab領域結合性ペプチド(1)と同様に測定することができる。
本発明に係るFab領域結合性ペプチド(3)は、上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチド(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第13位、第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)である。
上記配列同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上がさらに好ましく、99.5%以上が特に好ましい。
上記配列同一性は、Fab領域結合性ペプチド(1)で説明したとおり、アミノ酸配列多重アラインメント用プログラムであるClustal(http://www.clustal.org/omega/)などを使って測定することができる。また、本発明に係るFab領域結合性ペプチド(3)のIgGのFab領域への結合力も、上記Fab領域結合性ペプチド(1)と同様に測定することができる。
SpGは、免疫グロブリン結合性ドメインが2個または3個タンデムに並んだ形で含んだタンパク質である。本発明に係るFab領域結合性ペプチドも、実施形態の1つとして、単量体または単ドメインである当該Fab領域結合性ペプチドが2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上連結された複数ドメインの多量体であってもよい。連結されるドメイン数の上限としては、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは6個以下である。これらの多量体は、単一のFab領域結合性ペプチドの連結体であるホモダイマー、ホモトリマー等のホモポリマーであってもよいし、複数種類のFab領域結合性ペプチドの連結体であるヘテロダイマー、ヘテロトリマー等のヘテロポリマーであってもよい。
本発明によって得られる単量体ペプチドの連結のされ方としては、1または複数のアミノ酸残基で連結する方法や、アミノ酸残基を挟まず直接連結する方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。連結するアミノ酸残基数に特に制限は無いが、好ましくは20残基以下であり、より好ましくは15残基以下であり、さらにより好ましくは10残基以下であり、さらにより好ましくは5残基以下であり、さらにより好ましくは2残基以下である。好ましくは、野生型SpGのβ1とβ2の間を連結している配列を利用するのがよい。また、別の観点からは、単量体ペプチドの3次元立体構造を不安定化しないものが好ましい。
また、実施形態の1つとして、本発明により得られるFab領域結合性ペプチド、または、当該ペプチドが2個以上連結されたペプチド多量体が、1つの構成成分として、機能の異なる他のペプチドと融合されていることを特徴とする融合ペプチドが挙げられる。融合ペプチドの例としては、アルブミンやGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)が融合したペプチドを例として挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、DNAアプタマーなどの核酸、抗生物質などの薬物、PEG(ポリエチレングリコール)などの高分子が融合されている場合も、本発明で得られたペプチドの有用性を利用するものであれば、本発明に包含される。
本発明は、上記の本発明ペプチドを、IgGやその断片、特にFab領域に親和性を有することを特徴とするアフィニティーリガンドとして利用することも、実施形態の1つとして包含する。同様に、当該リガンドを水不溶性担体に固定化したことを特徴とするアフィニティー分離マトリックスも、実施形態の1つとして包含する。ここで、「アフィニティーリガンド」とは、抗原と抗体の結合に代表される、特異的な分子間の親和力に基づいて、ある分子の集合から目的の分子を選択的に捕集(結合)する物質や官能基を指す用語であり、本発明においては、IgGに対して特異的に結合するペプチドを指す。本発明においては、単に「リガンド」と表記した場合も、「アフィニティーリガンド」と同義である。
本発明に用いる水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体;架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や;結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体;さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが挙げられる。市販品としては、多孔質セルロースゲルであるGCL2000、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S−1000、アクリレート系の担体であるToyopearl、アガロース系の架橋担体であるSepharose CL4B、および、セルロース系の架橋担体であるCellufineなどを例示することができる。但し、本発明における水不溶性担体は、例示したこれらの担体のみに限定されるものではない。
また、本発明に用いる水不溶性担体は、本アフィニティー分離マトリックスの使用目的および方法からみて、表面積が大きいことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する多孔質であることが好ましい。担体の形態としては、ビーズ状、モノリス状、繊維状、膜状(中空糸を含む)などいずれも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。
リガンドの固定化方法については、例えば、リガンドに存在するアミノ基、カルボキシル基またはチオール基を利用した、従来のカップリング法で担体に結合してもよい。カップリング法としては、臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、ヒドラジンまたは過ヨウ素酸ナトリウムなどと担体とを反応させて担体を活性化するか、或いは担体表面に反応性官能基を導入し、リガンドとして固定化する化合物とカップリング反応を行い固定化する方法、また、担体とリガンドとして固定化する化合物が存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、または、グルタルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる固定化方法が挙げられる。
また、リガンドと担体の間に複数の原子からなるスペーサー分子を導入してもよいし、担体にリガンドを直接固定化してもよい。従って、固定化のために、本発明に係るFab領域結合性ペプチドを化学修飾してもよいし、固定化に有用なアミノ酸残基を加えてもよい。固定化に有用なアミノ酸としては、側鎖に固定化の化学反応に有用な官能基を有しているアミノ酸が挙げられ、例えば、側鎖にアミノ基を含むLysや、側鎖にチオール基を含むCysが挙げられる。本発明の本質は、本発明においてペプチドに付与したFab領域結合性が、当該ペプチドをリガンドとして固定化したマトリックスにおいても同様に付与されることにあり、固定化のためにいかように修飾・改変しても、本発明の範囲に含まれる。
本発明のアフィニティー分離マトリックスを利用して、IgGのFab領域を含むペプチドをアフィニティーカラム・クロマトグラフィ精製法により分離精製することが可能となる。これらのIgGのFab領域を含むペプチドの精製法は、IgGのアフィニティーカラム・クロマトグラフィ精製法、例えばSpAアフィニティー分離マトリックスを利用した精製法に準じる手順により達成することができる(非特許文献1)。即ち、IgGのFab領域を含むペプチドを含有する緩衝液を調製(pHは中性付近)した後、当該溶液を本発明のアフィニティー分離マトリックスを充填したアフィニティーカラムに通過させ、IgGのFab領域を含むペプチドを吸着させる。次いで、アフィニティーカラムに純粋な緩衝液を適量通過させ、カラム内部を洗浄する。この時点では所望のIgGのFab領域を含むペプチドはカラム内の本発明のアフィニティー分離マトリックスに吸着されている。そして、本発明で得られたペプチドをリガンドとして固定化したアフィニティー分離マトリックスは、このサンプル添加の工程からマトリックス洗浄の工程において、目的とするIgGのFab領域を含むペプチドを吸着保持する性能に優れる。次いで、適切なpHに調整した酸性緩衝液(該マトリックスからの解離を促進する物質を含む場合もある)をカラムに通液し、所望のIgGのFab領域を含むペプチドを溶出することにより、高純度な精製が達成される。
本発明のアフィニティー分離マトリックスは、リガンド化合物や担体の基材が完全に機能を損なわない程度の、適当な強酸性、または、強アルカリ性の純粋な緩衝液(適当な変性剤、または、有機溶剤を含む溶液の場合もある)を通過させて洗浄することにより、再利用が可能である。
本発明は、本発明に係るペプチドをコードするDNAにも関する。本発明ペプチドをコードするDNAは、その塩基配列を翻訳したアミノ酸配列が、当該ペプチドを構成するものであればいずれでもよい。そのような塩基配列は、通常用いられる公知の方法、例えば、ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(以下、「PCR」と略記する)法を利用して取得できる。また、公知の化学合成法で合成することも可能であり、さらに、DNAライブラリーから得ることもできる。当該塩基配列は、コドンが縮重コドンで置換されていてもよく、翻訳されたときに同一のアミノ酸をコードしている限り、本来の塩基配列と同一である必要性は無い。当該塩基配列を一つ又はそれ以上有する組換えDNA、または、当該組換えDNAを含む、プラスミドおよびファージなどのベクター、さらには、当該DNAを有するベクターにより形質転換された形質転換微生物/細胞、または、当該DNAを導入した遺伝子改変生物、または、当該DNAを転写の鋳型DNAとする無細胞タンパク質合成系を得ることができる。
また、本発明に係るFab領域結合性ペプチドは、タンパク質発現を補助する作用または精製を容易にするという利点がある公知のタンパク質との融合ペプチドとして取得することができる。即ち、本発明に係るFab領域結合性ペプチドを含む融合ペプチドをコードする組換えDNAを少なくとも一つ含有する微生物、または、細胞を得ることができる。上記タンパク質の例としては、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)等が挙げられるが、それらのタンパク質に限定されるものではない。
本発明のペプチドをコードするDNAを改変するための部位特異的な変異の導入は、以下のように、組換えDNA技術、PCR法等を用いて行うことができる。
即ち、組換えDNA技術による変異の導入は、例えば、本発明ペプチドをコードする遺伝子中において、変異導入を希望する目的の部位の両側に適当な制限酵素認識配列が存在する場合に、それら制限酵素認識配列部分を制限酵素で切断し、変異導入を希望する部位を含む領域を除去した後、化学合成等によって目的の部位のみに変異導入したDNA断片を挿入するカセット変異法によって行うことができる。
また、PCRによる部位特異的変異の導入は、例えば、本発明ペプチドをコードする二本鎖プラスミドを鋳型として、+鎖および−鎖に相補的な変異を含む2種の合成オリゴプライマーを用いてPCRを行うダブルプライマー法により行うことができる。
また、本発明の単量体ペプチド(1つのドメイン)をコードするDNAを、意図する数だけ直列に連結することにより、多量体ペプチドをコードするDNAを作製することもできる。例えば、多量体ペプチドをコードするDNAの連結方法は、DNA配列に適当な制限酵素部位を導入し、制限酵素で断片化した2本鎖DNAをDNAリガーゼで連結することができる。制限酵素部位は1種類でもよいが、複数の異なる種類の制限酵素部位を導入することもできる。また、多量体ペプチドをコードするDNAにおいて、各々の単量体ペプチドをコードする塩基配列が同一の場合には、宿主にて相同組み換えを誘発する可能性があるので、連結されている単量体ペプチドをコードするDNAの塩基配列間の配列同一性が90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、さらにより好ましくは75%以下であることが好ましい。なお、塩基配列の同一性も、アミノ酸配列と同様に、常法により決定することが可能である。
本発明の「発現ベクター」は、前述した本発明ペプチドまたはその部分アミノ酸配列をコードする塩基配列、およびその塩基配列に作動可能に連結された宿主で機能しうるプロモーターを含む。通常は、本発明ペプチドをコードする遺伝子を、適当なベクターに連結もしくは挿入することにより得ることができ、遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で自律複製可能なものであれば特に限定されず、プラスミドDNAやファージDNAをベクターとして用いることができる。例えば、大腸菌を宿主として用いる場合には、pQE系ベクター(キアゲン社)、pET系ベクター(メルク社)およびpGEX系ベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社)のベクターなどが挙げられる。
本発明の形質転換体は、宿主となる細胞へ本発明の組換えベクターを導入することにより得ることができる。宿主への組換え体DNAの導入方法としては、例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、アグロバクテリウム感染法、パーティクルガン法およびポリエチレングリコール法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、得られた遺伝子の機能を宿主で発現する方法としては、本発明で得られた遺伝子をゲノム(染色体)に組み込む方法なども挙げられる。宿主となる細胞については、特に限定されるものではないが、安価に大量生産する上では、大腸菌、枯草菌、ブレビバチルス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)等のバクテリア(真正細菌)を好適に使用しうる。
本発明に係るFab領域結合性ペプチドは、前記した形質転換体を培地で培養し、培養菌体中(菌体ぺリプラズム領域中も含む)、または、培養液中(菌体外)に本発明ペプチドを生成蓄積させ、該培養物から所望のペプチドを採取することにより製造することができる。また、本発明ペプチドは、前記した形質転換体を培地で培養し、培養菌体中(菌体ぺリプラズム領域中も含む)、または、培養液中(菌体外)に、本発明ペプチドを含む融合タンパク質を生成蓄積させ、当該培養物から当該融合ペプチドを採取し、当該融合ペプチドを適切なプロテアーゼによって切断し、所望のペプチドを採取することにより製造することができる。
本発明の形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。得られた形質転換体の培養に用いる培地は、本発明ペプチドを高効率、高収量で生産できるものであれば特に制限は無い。具体的には、グルコース、蔗糖、グリセロール、ポリペプトン、肉エキス、酵母エキス、カザミノ酸などの炭素源や窒素源を使用することが出来る。その他、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マグネシウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩等の無機塩類が必要に応じて添加される。栄養要求性の宿主細胞を用いる場合は、生育に要求される栄養物質を添加すればよい。また、必要であればペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、ネオマイシンなどの抗生物質が添加されてもよい。
さらに、菌体内外に存在する宿主由来のプロテアーゼによる当該目的ペプチドの分解を抑えるために、公知の各種プロテアーゼ阻害剤、すなわち、Phenylmethane sulfonyl fluoride(PMSF)、Benzamidine、4−(2−aminoethyl)−benzenesulfonyl fluoride(AEBSF)、Antipain、Chymostatin、Leupeptin、Pepstatin A、Phosphoramidon、Aprotinin、Ethylenediaminetetra acetic acid(EDTA)および/またはその他市販されているプロテアーゼ阻害剤を適当な濃度で添加してもよい。
さらに、本発明に係るFab領域結合性ペプチドを正しくフォールディングさせるために、例えば、GroEL/ES、Hsp70/DnaK、Hsp90、Hsp104/ClpBなどの分子シャペロンを利用してもよい(例えば、共発現、または、融合タンパク質化などの手法で、本発明のペプチドと共存させる)。なお、本発明ペプチドの正しいフォールディングを目的とする場合には、正しいフォールディングを助長する添加剤を培地中に加える、および、低温にて培養するなどの手法もあるが、これらに限定されるものではない。
大腸菌を宿主として得られた形質転換細胞を培養する培地としては、LB培地(トリプトン1%,酵母エキス0.5%,NaCl1%)、または、2×YT培地(トリプトン0.6%,酵母エキス1.0%,NaCl0.5%)等が挙げられる。
また、培養温度は、例えば15〜42℃、好ましくは20〜37℃で、通気攪拌条件で好気的に数時間〜数日培養することにより、本発明ペプチドを培養細胞内(ぺリプラズム領域内を含む)または培養溶液(細胞外)に蓄積させて回収する。場合によっては、通気を遮断し嫌気的に培養してもよい。組換えペプチドが分泌生産される場合には、培養終了後に、遠心分離、ろ過などの一般的な分離方法で、培養細胞と分泌生産されたペプチドを含む上清を分離することにより生産された組換えペプチドを回収することができる。また、培養細胞内(ぺリプラズム領域内を含む)に蓄積される場合にも、例えば、培養液から遠心分離、ろ過などの方法により菌体を採取し、次いで、この菌体を超音波破砕法、フレンチプレス法などにより破砕し、および/または、界面活性剤等を添加して可溶化することにより、細胞内に蓄積生産されたペプチドを回収することができる。
本発明に係るペプチドの精製はアフィニティークロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等を単独でまたは適宜組み合わせることによって行うことができる。得られた精製物質が目的のペプチドであることの確認は、通常の方法、例えばSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、N末端アミノ酸配列分析、ウエスタンブロッティング等により行うことができる。
本願は、2013年8月30日に出願された日本国特許出願第2013−180249号に基づく優先権の利益を主張するものである。2013年8月30日に出願された日本国特許出願第2013−180249号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で取得した変異ペプチドは「ドメイン−導入した変異」の形で表記し、変位を導入しない野生型は「ドメイン−Wild」の形で表記する。例えば、配列番号1で示される野生型SpGのβ1ドメインは「β1−Wild」、変異K13Tを導入したSpG−β1ドメイン変異体は「β1−K13T」と表記する。
2種類の変異を同時に導入した変異体の表記については、スラッシュを用いて併記する。例えば、変異K13TおよびE19Iを導入したSpG−β1ドメイン変異体は、「β1−K13T/E19I」と表記する。
また、単ドメインを複数連結したタンパク質については、ピリオドに続けて連結した数に「d」をつけて併記する。例えば、変異K13TおよびE19Iを導入したSpGβ1ドメイン変異体を2連結したタンパク質は、「β1−K13T/E19I.2d」と表記する。
さらに、例えば、水不溶性基材にタンパク質を固定化するために、C末端に固定化用官能基を有するCys残基(C)を導入した場合、「d」の後ろに導入したアミノ酸の1文字表記を付与する。例えば、変異K13TおよびE19Iを導入したSpGβ1ドメイン変異体を2連結してC末端にCysを付与したタンパク質は、「β1−K13T/E19I.2dC」と表記する。
実施例1:各種SpG−β1変異体の調製
(1) 各種SpG−β1変異体の発現プラスミド調製
発現プラスミドの調製方法に関し、野生型SpG−β1を例に示す。野生型SpG−β1(配列番号1)のアミノ酸配列から逆翻訳を行い、当該ペプチドをコードする塩基配列(配列番号3)を設計した。次に、発現プラスミドの作製方法を図1に示す。野生型SpG−β1をコードするDNAは、同じ制限酵素サイトを有する2種の二本鎖DNA(f1とf2)を連結する形で調製し、発現ベクターのマルチクローニングサイトに組み込む。実際には、2種の二本鎖DNAと発現ベクターの3種の二本鎖DNAを連結する3断片ライゲーションによって、コードDNA調製とベクター組込みを同時に実施した。2種の二本鎖DNAの調製方法は、互いに30塩基程度の相補領域を含む2種の一本鎖オリゴDNA(f1−1/f1−2、または、f2−1/f2−2)を、オーバーラップPCRによって伸長し、目的の二本鎖DNAを調製した。具体的な実験操作については、次の通りとなる。一本鎖オリゴDNAf1−1(配列番号4)/f1−2(配列番号5)を外注によって合成し(シグマジェノシス社)、ポリメラーゼとしてPyrobest(タカラバイオ社)を用い、オーバーラップPCR反応を行った。PCR反応生成物をアガロース電気泳動にかけ、目的のバンドを切り出すことで抽出した二本鎖DNAを、制限酵素BamHIとEco52I(いずれもタカラバイオ社)により切断した。同様に、一本鎖オリゴDNAf2−1(配列番号6)/f2−2(配列番号7)を外注によって合成し、オーバーラップPCR反応を経て、合成・抽出した二本鎖DNAを、制限酵素Eco52IとEcoRI(いずれもタカラバイオ社)により切断した。次に、プラスミドベクターpGEX−6P−1(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)のマルチクローニングサイト中のBamHI/EcoRIサイトに上記2種の二本鎖DNAをサブクローニングした。サブクローニングにおけるライゲーション反応は、Ligation high(TOYOBO社)を用いて、製品に添付のプロトコルに準ずる形で実施した。
上記プラスミドベクターpGEX−6P−1を用いて、コンピテント細胞(タカラバイオ社,「大腸菌HB101」)の形質転換を、本コンピテント細胞製品に付属のプロトコルに従って行った。上記プラスミドベクターpGEX−6P−1を用いれば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(以下、「GST」と略記する)が融合したSpG−β1を産生することができる。次いで、プラスミド精製キット(プロメガ社製,「Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification System」)を用い、キット付属の標準プロトコルに従って、プラスミドDNAを増幅し、抽出した。発現プラスミドのコードDNAの塩基配列確認は、DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製,「3130xl Genetic Analyzer」)を用いて行った。遺伝子解析キット(Applied Biosystems社製,「BigDye Terminator v.1.1 Cycle Sequencing Kit」)と、プラスミドベクターpGEX−6P−1のシークエンシング用DNAプライマー(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を用いて、添付のプロトコルに従いシークエンシングPCR反応を行った。そのシークエンシング産物を、プラスミド精製キット(Applied Biosystems社製,「BigDye XTerminator Purification Kit」)を用いて、添付のプロトコルに従い精製し、塩基配列解析に用いた。
各種SpG−β1変異体をコードするDNAに関しても、所望のアミノ酸配列から逆翻訳を行って当該ペプチドをコードする塩基配列を設計し、上記と同様の方法でコードDNAを含む発現プラスミドと形質転換細胞を調製した。現在は、外注によって200塩基程度のDNA(60残基程度のタンパク質をコード可能)を外注で全合成することが可能である(例えば、Eurogentec社)。従って、コードする変異体のアミノ酸配列に対応付ける形で後述の表に配列番号を付した上で、得られた最終的なコードDNA配列のみを配列表に記載する。
2ドメイン型発現プラスミドに関しても、野生型SpG−β1を例に調製方法を示す。調製した単ドメイン型SpG−β1の発現プラスミドのコードDNA部分を鋳型とし、5’側にBamH I認識サイトが付与されたプライマー(配列番号8)と、3’側にHind III認識サイトが付与されたプライマー(配列番号9)を用いてPCR反応を行い、二本鎖DNA(f−N)を合成した。同様に、5’側にHindIII認識サイトが付与されたプライマー(配列番号10)と、3’側にEcoRI認識サイトを付与するプライマー(配列番号11)を用いてPCR反応を行い、二本鎖DNA(f−C)を合成した。なお、10位に変異を導入したSpG−β1変異体については、5’側にHindIII認識サイトが付与された別のプライマー(配列番号12)を使用した。PCR反応のポリメラーゼにはKOD−plus−(TOYOBO社)を用い、反応生成物はアガロース電気泳動にかけて、目的の二本鎖DNAを抽出した。f−Nは制限酵素BamHI/HindIIIで、f−CはHindIII/EcoRIで、プラスミドベクターpGEX−6P−1は制限酵素BamHI/EcoRIで切断し、先述と同様の手法の三断片ライゲーションによって、発現プラスミドを調製した。その後の形質転換と塩基配列確認は、先述と同様の手法にて実施した。各種2ドメイン型のSpG−β1変異体の発現プラスミドは、同様の手法にて調製した。
(2) 各種SpG−β1変異体の調製
上記(1)で得られた、各種SpG−β1変異体遺伝子を導入した各形質転換細胞を、アンピシリン含有2×YT培地にて、37℃で終夜培養した。これらの培養液を、100倍量程度のアンピシリン含有2×YT培地に接種し、37℃で約2時間培養した後で、終濃度0.1mMになるようIPTG(イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクシド)を添加し、さらに、37℃にて18時間培養した。
培養終了後、遠心にて集菌し、PBS緩衝液5mLに再懸濁した。超音波破砕にて細胞を破砕し、遠心分離して上清画分(無細胞抽出液)と不溶性画分に分画した。pGEX−6P−1ベクターのマルチクローニングサイトに目的の遺伝子を導入すると、GSTがN末端に付与した融合ペプチドとして発現される。それぞれの画分をSDS電気泳動により分析したところ、各々の形質転換細胞培養液から調製した各種無細胞抽出液のすべてについて、分子量約25,000以上の位置にIPTGにより誘導されたと考えられるペプチドのバンドを確認した。なお、分子量はほぼ同様であるが、変異体の種類によってバンドの位置は違った。
GST融合ペプチドを含む各々の無細胞抽出液から、GSTに対して親和性のあるGSTrap FFカラム(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにて、GST融合ペプチドを粗精製した。各々の無細胞抽出液をGSTrap FFカラムに添加し、標準緩衝液(20mM NaH2PO4−Na2HPO4,150mM NaCl,pH7.4)にてカラムを洗浄し、続いて溶出用緩衝液(50mM Tris−HCl,20mMグルタチオン,pH8.0)にて目的のGST融合ペプチドを溶出した。後の実施例で、GSTを融合したままでアッセイに利用したサンプルは、この溶出液を遠心式フィルターユニットであるアミコン(メルクミリポア社)を用いて、濃縮した形で標準緩衝液に置換したペプチド溶液を用いた。
pGEX−6P−1ベクターのマルチクローニングサイトに遺伝子を導入すると、配列特異的プロテアーゼPreScission Protease(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)でGSTを切断することが可能なアミノ酸配列が、GSTと目的タンパク質の間に導入される。PreScission Proteaseを用いて、添付プロトコルに従いGST切断反応を行った。このようにGSTを切断した形でアッセイに利用したサンプルから、Superdex 75 10/300 GLカラム(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにて、目的のペプチドの精製を行った。標準緩衝液にて平衡化したSuperdex 75 10/300 GLカラムに、各々の反応溶液を添加し、目的のタンパク質を、切断したGSTやPreScission Proteaseから分離精製した。GSTと分子量が近い2ドメイン型のSpG−β1変異体については、溶出画分を同様の方法でリクロマトすることで分離精製した。なお、以上のカラムを用いたクロマトグラフィーによるペプチド精製は、全てAKTAprime plusシステム(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を利用して実施した。また、本実施例で得られるGST切断後の各々のタンパク質に関して、N末端側にベクターpGEX−6P−1由来のGly−Pro−Leu−Gly−SerがN末端側に付加された配列となる。
実施例2
(1) IgG由来Fabフラグメント(IgG−Fab)の調製
ヒト化モノクローナルIgG製剤を原料として、これをパパインによって、FabフラグメントとFcフラグメントに断片化し、Fabフラグメントのみを分離精製することで調製した。ここでは、抗Her2モノクローナル抗体(一般名「トラスツズマブ」)由来のIgG−Fabの調製方法を示すが、基本的には他のIgG−Fab、例えば、抗TNFαモノクローナル抗体(一般名「アダリムマブ」)由来のIgG−Fabも同様の方法で調製した。
具体的には、ヒト化モノクローナルIgG製剤(抗Her2モノクローナル抗体の場合には、中外製薬社製の「ハーセプチン」)を、パパイン消化用緩衝液(0.1M AcOH−AcONa,2mM EDTA,1mMシステイン,pH5.5)に溶解し、Papain Agarose from papaya latexパパイン固定化アガロース(SIGMA社)を添加し、ローテーターで混和させながら、37℃で約8時間インキュベートした。パパイン固定化アガロースから分離した反応溶液(FabフラグメントとFcフラグメントが混在)から、KanCapAカラム(カネカ社)を利用したアフィニティークロマトグラフィーにより、素通り画分でIgG−Fabを回収することで分離精製した。分取したIgG−Fab溶液を、Superdex 75 10/300 GLカラム(平衡化および分離には標準緩衝液を使用)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにて精製し、IgG−Fab溶液を得た。なお、実施例1(1)と同様に、クロマトグラフィーによるタンパク質精製は、AKTAprime plusシステムを利用して実施した。
(2) 各種SpG−β1変異体のIgG−Fabに対する親和性の解析
表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーBiacore3000(GEヘルスケア・バイオサイエンス社)を用いて、実施例1(2)で取得した各種SpG−β1変異体のIgG−Fabとの親和性を解析した。本実施例では、実施例2(1)で取得したIgG−Fabをセンサーチップに固定化し、各種ペプチドをチップ上に流して、両者の相互作用を検出した。IgG−FabのセンサーチップCM5への固定化は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いたアミンカップリング法にて行い、ブロッキングにはエタノールアミンを用いた(センサーチップや固定化用試薬は、全てGEヘルスケアバイオサイエンス社製)。IgG−Fab溶液は、固定化用緩衝液(10mM CH3COOH−CH3COONa,pH4.5)を用いて10倍程度に希釈し、Biacore 3000付属のプロトコルに従い、センサーチップへ固定した。また、チップ上の別のフローセルに対して、EDC/NHSにより活性化した後にエタノールアミンを固定化する処理を行うことで、ネガティブ・コントロールとなるリファレンスセルも用意した。各種SpG−β1変異体は、ランニング緩衝液(20mM NaH2PO4−Na2HPO4,150mM NaCl,0.005% P−20,pH7.4)を用いて、0.1〜100μMの範囲で適宜調製し、各々のペプチド溶液を、流速40μL/minで60秒間センサーチップに添加した。測定温度25℃にて、添加時(結合相,60秒間)、および、添加終了後(解離相,60秒間)の結合反応曲線を順次観測した。各々の観測終了後に、20mM NaOH(30秒間)を添加してセンサーチップを再生した。この操作は、センサーチップ上に残った添加ペプチドの除去が目的であり、固定化したヒトIgGの結合活性がほぼ完全に戻ることを確認した。得られた結合反応曲線(リファレンスセルの結合反応曲線を差し引いた結合反応曲線)に対して、システム付属ソフトBIA evaluationを用いた1:1の結合モデルによるフィッティング解析を行い、ヒトIgGに対する親和定数(KA=kon/koff)を算出した。結果を表1に示す。
表1に示した結果の通り、本発明で得られた変異体は、野生型と比較して、IgG−Fabへの結合定数が向上していること、すなわちIgG−Fabへの結合力が強くなっていることを確認した。また、2種類のIgG−Fabに対する結合力が向上する傾向が似ていることより、本発明で得られた変異体は、IgG−Fabの抗原結合領域(抗体の種類によって配列が大きく異なる部分)ではなく、定常領域など様々な抗体で共通の領域に対して結合していると考えることができる。従って、本発明で得られた変異体の、アフィニティーリガンドとしての汎用性の高さを裏付ける結果と捉えることができる。
GST−SpGβ1−Wild.1dに対して、GST−SpGβ1−K13T.1dが2倍以上のIgG−Fab結合力を示していることから、変異K13Tは、単独でIgG−Fab結合力向上に寄与する変異であるといえる。その他、変異F30Lが複数の変異体で見られるので、今回の変異体に導入された変異の中で、K13T以外では、変異F30LがIgG−Fab結合力向上に特に寄与が大きい可能性がある。
実施例3
上記実施例2の実験と同様にして、SpG−β1変異体のIgG−Fabに対する親和性を測定した。IgG−Fabについては、上記実施例2の実験において、1種類のIgG−Fabで見た結果について、他の種類のIgG−Fabでも概ね同様の傾向が見られることを確認したので、1種類のみについて実験を行った。結果を表2に示す。
表2に示した結果の通り、GST−SpGβ1−K13T/F30L/D36G.1dは、GST−SpGβ1−Wild.1dと比較して、IgG−Fabへの結合力が6倍程度であった。この結果は、上記実施例2の実験では5倍程度であったことに矛盾しないといえる。なお、センサーチップ上のIgG−Fabの繰り返し再生に伴う劣化や、濃度調整等のマニュアル操作に伴う誤差によって、実験間でこの程度の結合パラメータの数値上のズレが生じるのは自然なことといえる。
また、変異K13Tについては、先と同様にIgG−Fab結合力向上への高い寄与が見られ、変異K13Sも近い効果があると考えられる。また、変異F30L、変異E19IおよびE19Vも、IgG−Fab結合力が5倍以上を示す変異体に概ね共通して見られる変異であり、IgG−Fab結合力向上への寄与が高いといえる。特に、変異K13TおよびK13Sと協奏的に、IgG−Fab結合力向上に寄与しているともいえる。
それら以外では、Y33Fも比較的多くの変異体に見られる変異であり、IgG−Fab結合力向上に寄与していると考えられる。他の変異も総じてIgG−Fab結合力向上に寄与している可能性がある。また、第13位、第19位、第30位および第33位における変異は、SpG−β1と配列同一性が80%以上であれば、基本的には同様の機能を発揮できると考えられる。
実施例4
上記実施例3の実験と同様にして、SpG−β1変異体のIgG−Fabに対する親和性を測定した。この実験では、GSTを切断したGST切断型(Pep−)で測定を実施した。また、1ドメイン型(Pep.1d)だけでなく、C末端にCysが結合した1ドメイン型(Pep.1dC)とC末端にCysが結合した2ドメイン型(Pep.2dC)を用いて実験を行った。その結果を表3に示す。
表3に示した結果の通り、これまでと同様に、本発明によって得られた変異体は、野生型に比べて優位に高いIgG−Fab親和性を示した。なお、GSTを切断したPep−SpGβ1−Wild.1dは、GST−SpGβ1−Wild.1dと比較して、解離速度定数が大きいために結合定数が小さくなっている。アフィニティーリガンドとして工業的に生産することを意識した場合、GSTを融合する必要性は特にないので、このGSTを切断した条件での比較の方が実使用条件に近い条件での比較であると言える。
Pep−SpGβ1−K13T/E19I/V21D/T25M/F30L/Y33F/N35F/D47A.1dは、実施例3のときと同様に、Pep−SpGβ1−Wild.1dに比べて有意に高いIgG−Fab親和性を示した。その親和性の向上は、GSTを切断したPep型の場合、結合定数にして30倍近い値となった。
また、本発明で得られた別の変異体であるPep−SpGβ1−K13T/T18A/E19I/V21A/K28I/F30L/Y33F/V39I.1d、および、Pep−SpGβ1−K10R/K13T/T18A/E19I/V21D/T25M/F30L/Y33F/N35F/D47A.1dも、Pep−SpGβ1−Wild.1dに比べて有意に高いIgG−Fab親和性を示した。
さらに、Pep−SpGβ1−K10R/K13T/T18A/E19I/V21D/T25M/F30L/Y33F/N35F/D47A.1dは、Pep−SpGβ1−Wild.1dに比べて、80倍以上高い結合定数を示しており、KAにして107-1オーダーを示した。
1ドメイン型でC末端にCysを結合させたコンストラクトで比較した際も同様の結果となった。2ドメイン型でC末端にCysを結合させたコンストラクトで比較した際も同様の結果となったが、Pep−SpGβ1−K10R/K13T/T18A/E19I/V21D/T25M/F30L/Y33F/N35F/D47A.2dCは、Pep−SpGβ1−Wild.2dCに比較して、200倍以上高い結合定数を示した。
参考までに、同じタイプのコンストラクト(Pep.1dまたはPep.2dC)を用いて、同じタンパク質濃度(2μM)における、野生型SpG−β1と、K10R/K13T/T18A/E19I/V21D/T25M/F30L/Y33F/N35F/D47Aの、抗TNFαモノクローナル抗体のIgG−Fabに対するビアコア結合反応曲線を重ねて比較したチャートを図2として示す。また、これらの二量体の、抗TNFαモノクローナル抗体のIgG−Fabに対するビアコア結合反応曲線を重ねて比較したチャートを図3として示す。図2および図3のとおり、ドメイン単量体型ペプチドでもドメイン二量体型ペプチドでも、本発明に係る変異型ペプチドは、野生型SpG−β1に比べ、Fab領域に対して高い結合能を有することが分かる。
また、図2の野生型SpG−β1の結合反応曲線は、結合速度定数が大きい(相互作用の解離が速い)ときに見られる典型的な“箱型”の形状を示している。“箱型”とは、サンプル添加時(結合相)のシグナルの立ち上がりが速く、すぐに結合が平衡状態(シグナルがベースラインに平行)となり、サンプル添加停止時(解離相)のシグナル低下も早いときに見られる形状を指す。それに比較して、本発明で得られた変異型SpG−β1は、解離速度定数が小さいために、サンプル添加停止時のシグナル低下が緩やかな形状を示している。したがって、本発明に係る変異型SpG−β1が固定化されたアフィニティー分離マトリックスは、Fab領域を含むタンパク質の保持性能が極めて高いと期待できる。

Claims (10)

  1. 下記(1)〜(3)の何れかのFab領域結合性ペプチド。
    (1) プロテインGのβ1ドメイン由来のアミノ酸配列(配列番号1)において、第13位位置のアミノ酸残基がThrまたはSerに置換されているアミノ酸配列を有し、
    前記アミノ酸配列の第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基が更に置換されていても良く、
    且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が置換導入前よりも高いFab領域結合性ペプチドであって
    記第19位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換されており、
    前記第30位のアミノ酸残基がVal、LeuまたはIleに置換されており、
    前記第33位のアミノ酸残基がPheに置換されているFab領域結合性ペプチド;
    (2) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列において、上記第13位、第19位、第30位および第33位を除く領域中で1個以上、個以下のアミノ酸残基が欠損、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチド;または
    (3) 上記(1)に規定されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ、免疫グロブリンのFab領域への結合力が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドよりも高いFab領域結合性ペプチド(但し、上記(1)に規定されるアミノ酸配列における第13位、並びに第19位、第30位および第33位から選択される1以上の位置のアミノ酸残基の置換は、(3)においてさらに変異しないものとする)。
  2. 上記(2)に規定されるアミノ酸配列において、上記欠損、置換および/または付加されたアミノ酸残基の位置が、第2位、第10位、第15位、第18位、第21位、第22位、第23位、第24位、第25位、第27位、第28位、第31位、第32位、第35位、第36位、第39位、第40位、第42位、第45位、第47位および第48位から選択される1以上である請求項1記載のFab領域結合性ペプチド。
  3. 上記(2)に規定されるアミノ酸配列において、上記欠損、置換および/または付加されたアミノ酸残基の位置がN末端および/またはC末端である請求項1または2に記載のFab領域結合性ペプチド。
  4. 上記(3)に規定されるアミノ酸配列において、上記配列同一性が95%以上である請求項1〜のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチドを2個以上連結した複数ドメインを有することを特徴とするFab領域結合性ペプチド多量体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチド、または請求項5に記載のFab領域結合性ペプチド多量体がリガンドとして水不溶性担体に固定化されたものであることを特徴とするアフィニティー分離マトリックス。
  7. Fab領域を含むタンパク質を製造する方法であって、
    請求項に記載のアフィニティー分離マトリックスと、Fab領域を含むタンパク質を含む液体試料とを接触させる工程と、
    アフィニティー分離マトリックスに結合したFab領域を含むタンパク質を、アフィニティー分離マトリックスから分離する工程を含むことを特徴とする方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のFab領域結合性ペプチドをコードすることを特徴とするDNA。
  9. 請求項に記載のDNAを含むことを特徴とするベクター。
  10. 請求項に記載のベクターにより形質転換されたものであることを特徴とする形質転換体。
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