JP6502427B2 - 車両用電装部品の保護装置 - Google Patents

Description

本発明は、車両のエンジンルームに、バッテリー及び所定の電装部品が互いに間隔を隔てて対向するように配置された車両において、前記電装部品を保護するための車両用電装部品の保護装置に関する。

一般に、車両のエンジンルームには、エンジン及びトランスミッションが配置され、これらは、車体フレームに固定されたマウントに、ブラケットを介して支持されている。これらのエンジン及びトランスミッションと車体フレームとの間にマウントが介在することにより、エンジンの運転及びトランスミッションの作動による騒音や振動が、マウントで吸収され、車体への伝達が大幅に低減される。

また、エンジンルームには、各種の電装部品、具体的には、エンジンを始動させるためのスタータや、電気を供給・充電するバッテリーなどが設置されており、トランスミッションの上方にスタータが設けられたものとして、例えば特許文献１に記載されたものが知られている。

この特許文献１では、スタータは、エンジンとトランスミッションの間の筐体として設けられたトランスミッションハウジングに取り付けられるのに加えて、金属製の長板及びＬ字金具を介して、トランスミッションの筐体であるトランスミッションケースに連結されている。具体的には、長板の一方の半部がスタータの筐体であるスタータケースに溶接されるとともに、Ｌ字金具の一方の片がトランスミッションケースの所定部位にボルトで固定されている。そして、長板の他方の半部とＬ字金具の他方の片が、ボルトで固定されている。

特開２０１５−６３９０４号公報

上記のようなエンジンルームにおいて、バッテリーがスタータの前方に配置されている場合、例えば車両の衝突時に、バッテリーが後方に押し下げられると、そのバッテリーがスタータに当たり、スタータを損傷してしまうおそれがある。また、車両では一般に、エンジンの運転及びトランスミッションの作動によって生じる騒音・振動の低減が常に求められている。

本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、バッテリーが当たることによる所定の電装部品の損傷を防止することができ、また、騒音・振動の低減を図ることもできる車両用電装部品の保護装置を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するために、請求項１に係る発明は、パワープラント又はパワートレインを構成する部品（本実施形態における（以下、本項において同じ）エンジン１及びトランスミッション２）がマウント５及びブラケット６を介して車体に支持された車両のエンジンルームＥＲに、バッテリー４及び所定の電装部品（スタータ３）が互いに間隔を隔てて対向するように配置された車両において、電装部品を保護するための車両用電装部品の保護装置であって、ブラケットは、車体に固定されたマウントに取り付けられたマウント取付部６ａと、このマウント取付部から下方に延びるブラケット延設部６ｂと、このブラケット延設部の下端部に設けられ、パワープラント又はパワートレインを構成する部品に取り付けられた構成部品取付部（トランスミッション取付部６ｃ）と、を有しており、ブラケットに取り付けられ、電装部品を保護するための保護ブロック（スキッドブロック８）を備えており、保護ブロックは、構成部品取付部に取り付けられたブラケット取付部（取付部８ａ、８ｂ）と、このブラケット取付部から上方にかつブラケット延設部から次第に離れるように延び、先端部９が、バッテリーと電装部品の間に位置し、バッテリーに対向する保護ブロック本体（スキッドブロック本体８ｃ）と、を有していることを特徴とする。

この構成によれば、車両のエンジンルームにおいて、パワープラント又はパワートレインを構成する部品が、車体に固定されたマウント及びこれに取り付けられたブラケットを介して、車体に支持されている。また、エンジンルームには、バッテリー及び所定の電装部品が互いに間隔を隔てて対向するように配置されている。ブラケットは、上記のマウント取付部、ブラケット延設部及び構成部品取付部を有しており、このブラケットに、電装部品を保護するための保護ブロックが取り付けられている。具体的には、保護ブロックは、そのブラケット取付部を介して、ブラケットの構成部品取付部に取り付けられており、保護ブロック本体が、ブラケット取付部から上方にかつブラケット延設部から次第に離れるように延びていて、先端部が、バッテリーと電装部品の間に位置し、バッテリーに対向している。このように構成された保護ブロックにより、例えば車両の衝突時などに、外力の作用によってバッテリーが電装部品側に移動する場合でも、バッテリーが保護ブロック本体の先端部に当接し、電装部品に当たるのを阻止することが可能である。したがって、保護ブロックにより、車両の衝突時にバッテリーが電装部品に当たるのを回避し、それにより、電装部品の損傷を防止することができる。加えて、上記のように構成された保護ブロックがブラケットに取り付けられることにより、後述するように、エンジンの運転時における騒音・振動が低減されることが確認された。

請求項２に係る発明は、請求項１に記載の車両用電装部品の保護装置において、保護ブロック本体の先端部には、バッテリーの電装部品側の面に対してほぼ平行に配置された平坦な対向面（前面９ｂ）が設けられていることを特徴とする。

この構成によれば、保護ブロック本体の先端部に設けられた平坦な対向面が、バッテリーの電装部品側の面に対してほぼ平行に配置されているので、例えば、保護ブロック本体の先端部が尖っている場合などに比べて、バッテリーが対向面に当たる場合の衝撃や損傷を低減することができる。

請求項３に係る発明は、請求項２に記載の車両用電装部品の保護装置において、バッテリーは、バッテリー本体４ａと、このバッテリー本体を下方から支持する支持ケース４ｂとを有しており、支持ケースは、保護ブロック本体の対向面に対向する壁部（背壁４ｃ）を有していることを特徴とする。

この構成によれば、バッテリー本体は、支持ケースで下方から支持されており、この支持ケースの壁部が、保護ブロック本体の対向面に対向している。このため、車両の衝突時に、バッテリーが保護ブロックに当たる際に、まず支持ケースの壁部が保護ブロックに当たる。これにより、バッテリー本体が保護ブロックに直接、当たる場合に比べて、バッテリー本体における損傷を低減することができる。

請求項４に係る発明は、請求項１ないし３のいずれかに記載の車両用電装部品の保護装置において、電装部品は、エンジンを始動させるためのスタータ３であることを特徴とする。

この構成によれば、保護ブロックによって保護される電装部品が、スタータであるので、車両の衝突時にバッテリーがスタータに当たるのを回避できることで、スタータの損傷を防止でき、その結果、衝突後のスタータによるエンジンの始動を確保することができる。

本発明の一実施形態による車両用電装部品の保護装置を適用した車両のエンジンルーム内を示す平面図である。 スキッドブロック及びその周囲を示す正面図である。 スキッドブロックを示す図であり、（ａ）はブラケット側から見たときの斜視図、（ｂ）は正面図、（ｃ）は右側面図である。 スキッドブロック及びその周囲を示す図であり、（ａ）は右側方から見たときの状態、（ｂ）は背面側から見たときの状態でかつ一部を垂直面で裁断した状態を示す。 騒音・振動試験の結果を示しており、（ａ）は回転数と音圧の関係を示し、（ｂ）は周波数と音圧の関係を示す。

以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図１は、本発明の一実施形態による車両用電装部品の保護装置を適用した車両前部のエンジンルーム内を示している。同図に示すように、この車両のエンジンルームＥＲには、パワープラント又はパワートレインを構成する部品として、車両の動力源であるエンジン１と、その右側に接続されたトランスミッション２が設置されている。また、エンジン１を始動させるためのスタータ３が、トランスミッション２の上方において、エンジン１に接続されている。

さらに、エンジンルームＥＲには、エンジン１の右方にかつスタータ３の前方に、バッテリー４が設置されている。このバッテリー４は、ボックス状に形成され、内部に電解液及び電極を備えたバッテリー本体４ａと、このバッテリー本体４ａを下方から支持する支持ケース４ｂとを有している。支持ケース４ｂは、上方に開放しかつバッテリー本体４ａの下部を収容可能に構成されており、また、背面側に、後述するスキッドブロック８の先端部９に対向する背壁４ｃ（壁部）を有している。

上記のエンジン１及びトランスミッション２は、複数（図１では右側の１つのみ図示）のマウント５及びブラケット６を介して、車体フレーム７に支持されている。マウント５は、ゴムなどを用いて円柱状に形成されており、振動及び騒音を吸収することによってそれらを伝えにくくする所定の構成を有している。また、このマウント５は、取付金具５ａを介して、車体フレーム７にボルトで固定されている。

ブラケット６は、金属から成り、所定形状に形成されている。具体的には、マウント５の上部に取り付けられたマウント取付部６ａと、このマウント取付部６ａの左端部において屈曲し、下方に所定長さ延びるブラケット延設部６ｂと、このブラケット延設部６ｂの下端部に設けられ、下方のトランスミッション２に取り付けられたトランスミッション取付部６ｃ（構成部品取付部）とを有している。

ブラケット６のマウント取付部６ａは、マウント５の上面中央部にボルトで固定されている。また、ブラケット延設部６ｂは、下方に向かって前後方向（図１の上下方向）に広がるように形成されており、複数のリブが、マウント取付部６ａとトランスミッション取付部６ｃとの間にわたって上下方向に延びるように設けられている。そして、トランスミッション取付部６ｃの前端部、中央部及び後端部の３カ所において、トランスミッション２のケース上部にボルトで固定されている。

また、ブラケット６のトランスミッション取付部６ｃには、金属から成り、所定形状に形成されたスキッドブロック８（保護ブロック）が取り付けられている。このスキッドブロック８は、車両の衝突時に、バッテリー４がスタータ３に当たるのを阻止するためのものである。

図３に示すように、スキッドブロック８は、前後方向に所定間隔を隔てて設けられ、ブラケット６のトランスミッション取付部６ｃに取り付けられる前後２つの取付部８ａ、８ｂ（ブラケット取付部）と、これらの取付部８ａ、８ｂから左前上方に所定長さ延びるように形成されたスキッドブロック本体８ｃ（保護ブロック本体）とを有している。また、スキッドブロック本体８ｃの先端部９は、その上面９ａ及び前面９ｂ（対向面）が平坦に構成され、両面９ａ及び９ｂが直角を為している。

このように構成されたスキッドブロック８は、図１及び図２に示すように、前後の取付部８ａ、８ｂが、ブラケット６のトランスミッション取付部６ｃにボルトでそれぞれ固定されており、スキッドブロック本体８ｃが、ブラケット６のトランスミッション取付部６ｃからスタータ３の前方に回り込み、前方のバッテリー４とスタータ３との間に右方から挿入されるように延びている。

図４は、スキッドブロック８及びその周囲を示しており、（ａ）は右側方から見たときの状態、（ｂ）は背面側から見たときの状態でかつ一部を垂直面で裁断した状態である。同図（ａ）に示すように、スキッドブロック本体８ｃの先端部９が、バッテリー４とスタータ３の間に位置し、加えて、先端部９の前面９ｂが、バッテリー本体４ａを支持する支持ケース４ｂの背壁４ｃに対してほぼ平行で、これに対向している。また、同図（ｂ）に示すように、ブラケット６に取り付けられたスキッドブロック８では、そのスキッドブロック本体８ｃは、下端部の取付部８ａ、８ｂから上方にかつブラケット６のブラケット延設部６ｂから次第に離れるように延びている。

なお、スキッドブロック８の先端部９には、ハーネスやホースなどを、その途中で支持するためのクリップ１０が、ボルト止めされたステー１１に取り付けられている。このクリップ１０には、例えばトランスミッション２の内部のエア抜き用のホース１１が支持される。

上記のように構成され、ブラケット６に取り付けられたスキッドブロック８により、車両の衝突時に、スタータ３が保護される。例えば、車両が前方の他の車両や壁などに衝突した際に、バッテリー４が後方へ移動すると、そのバッテリー４がスキッドブロック８の先端部９に当たり、それ以上の後方への移動が阻止される。その結果、バッテリー４がスタータ３に当たるのを回避でき、その損傷を防止することができる。またこの場合、バッテリー４がスキッドブロック８に当たる際には、支持ケース４ｂの背壁４ｃがスキッドブロック８の先端部９に当たる。これにより、スキッドブロック８がバッテリー本体４ａに直接、当たることを回避し、バッテリー本体４ａの損傷を防止することができる。

また、上記のように、スキッドブロック８をブラケット６に取り付けることにより、騒音・振動を低減できることが確認された。図５は、所定の騒音・振動試験を、スキッドブロック８を取り付けた状態（太線）と、スキッドブロック８を省略した状態（細線）で行ったときの試験結果を示している。具体的には、同図（ａ）は、エンジン１の回転数と音圧の関係を示し、同図（ｂ）は、周波数と音圧の関係を示している。

図５（ａ）に示すように、スキッドブロック８を取り付けた状態では、低回転から高回転のほぼ全体にわたって騒音・振動を低減でき、特にエンジン１の中回転から高回転にわたり、騒音・振動をより一層低減できることがわかる。また、同図（ｂ）に示すように、スキッドブロック８を取り付けた状態では、低周波数から高周波数のほぼ全体にわたって騒音・振動を低減でき、特に中周波数帯域における騒音・振動をより一層低減できることがわかる。

以上のように、本実施形態によれば、スキッドブロック８がブラケット６に取り付けられることにより、車両の衝突時にバッテリー４がスタータ３に当たるのを回避し、それにより、スタータ３の損傷を防止することができる。加えて、スキッドブロック８が省略される場合に比べて、全体的に、騒音・振動を低減することができる。また、バッテリー４の支持ケース４ｂの背壁４ｃが、スキッドブロック８の先端部９に対向しているので、車両の衝突時に、バッテリー本体４ａがスキッドブロック８に直接、当たる場合に比べて、バッテリー本体４ａにおける損傷を低減することができる。

なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、スキッドブロック８により、電装部品としてのスタータ３を保護するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、エンジンルームＥＲに設置される他の電装部品を保護するようにしてもよい。また、実施形態では、エンジン１及びトランスミッション２が設置されたエンジンルームＥＲが、車両の前部に設けられた場合について説明したが、本発明が適用可能な車両はこれに限定されるものではなく、エンジンルームを中央部や後部に有する車両にも適用可能である。

さらに、実施形態では、パワープラント又はパワートレインを構成する部品として、エンジン１及びトランスミッション２を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パワープラント又はパワートレインの構成部品として、例えば、電動車両用のモータやバッテリー、燃料電池スタック、パワーコントロールユニット、インバーターなどを備えた車両に、本発明を適用することも可能である。また、実施形態で示したスキッドブロック８の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。

１ エンジン
２ トランスミッション
３ スタータ（電装部品）
４ バッテリー
４ａ バッテリー本体
４ｂ 支持ケース
４ｃ 支持ケースの背壁（壁部）
５ マウント
６ ブラケット
６ａ マウント取付部
６ｂ ブラケット延設部
６ｃ トランスミッション取付部（構成部品取付部）
７ 車体フレーム
８ スキッドブロック（保護ブロック）
８ａ スキッドブロックの前側の取付部（ブラケット取付部）
８ｂ スキッドブロックの後ろ側の取付部（ブラケット取付部）
８ｃ スキッドブロック本体（保護ブロック本体）
９ スキッドブロック本体の先端部
ＥＲ エンジンルーム

Claims (4)

1. パワープラント又はパワートレインを構成する部品がマウント及びブラケットを介して車体に支持された車両のエンジンルームに、バッテリー及び所定の電装部品が互いに間隔を隔てて対向するように配置された車両において、前記電装部品を保護するための車両用電装部品の保護装置であって、
   前記ブラケットは、前記車体に固定された前記マウントに取り付けられたマウント取付部と、このマウント取付部から下方に延びるブラケット延設部と、このブラケット延設部の下端部に設けられ、前記パワープラント又は前記パワートレインを構成する部品に取り付けられた構成部品取付部と、を有しており、
   前記ブラケットに取り付けられ、前記電装部品を保護するための保護ブロックを備えており、
   当該保護ブロックは、
   前記構成部品取付部に取り付けられたブラケット取付部と、
   このブラケット取付部から上方にかつ前記ブラケット延設部から次第に離れるように延び、先端部が、前記バッテリーと前記電装部品の間に位置し、当該バッテリーに対向する保護ブロック本体と、
   を有していることを特徴とする車両用電装部品の保護装置。
2. 前記保護ブロック本体の前記先端部には、前記バッテリーの前記電装部品側の面に対してほぼ平行に配置された平坦な対向面が設けられていることを特徴とする請求項１に記載の車両用電装部品の保護装置。
3. 前記バッテリーは、バッテリー本体と、このバッテリー本体を下方から支持する支持ケースとを有しており、
   前記支持ケースは、前記保護ブロック本体の前記対向面に対向する壁部を有していることを特徴とする請求項２に記載の車両用電装部品の保護装置。
4. 前記電装部品は、前記エンジンを始動させるためのスタータであることを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに記載の車両用電装部品の保護装置。

Images