以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
(実施形態1)
本発明の一実施形態の支持具100は、棒材である吊りボルトBに固定されて、支持対象物である配線・配管材P(具体的にはケーブル)を所定高さに保持するように構成されたものである。しかしながら、本発明の支持具は本実施形態の用途・機能に限定されないことは言うまでもない。以下、図1〜図4を参照して、本実施形態の支持具100の構成を詳細に説明する。
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の支持具100の正面から見た斜視図、背面から見た斜視図である。図2(a),(b)は、該支持具100の正面図及び背面図である。図3(a),(b),(c),(d)は、該支持具100の平面図、左側面図、右側面図及び底面図である。図4(a),(b),(c)は、支持具100の各箇所での断面図である。
図1乃至4に示すとおり、本実施形態の支持具100は、正面視において、上方が開放した略コ字形状を有する。該支持具100は、棒材である吊りボルトBに取着される固定部110、及び、支持対象物である配線・配管材Pを支持するための支持部120を備えてなる。
固定部110は、支持部120が前面(右側面)111aに形成された基部111と、該基部111の後面(左側面)111bから突出して吊りボルトB(図5参照)側部に当接する第1挟持部112と、吊りボルトBの軸方向において第1挟持部112とは異なる位置で基部111から突出し、第1挟持部112と協働して吊りボルトBを挟持する第2挟持部113と、第1挟持部112と相反する側で基部111の後面111bから突出するとともに、前記軸方向に沿って延在する側壁部114と、前記軸方向において基部111から離隔した位置に設けられ、吊りボルトBに対して支持部120と相反する方向から吊りボルトBに当接する当接部115と、を備える。
基部111は、縦長の矩形平板状に形成され、支持部120側の前面111a及び吊りボルトB側の後面111bを有する。該基部111は、その平面が側方を向くように配置され、前面111aに支持部120が一体形成され、後面111bが吊りボルトBに当接するように構成されている。そして、支持部120を吊りボルトBに取着したとき、該基部111の長手方向(長辺方向)が、吊りボルトBの軸方向に合致する。また、該基部111の下端縁には、吊りボルトBの支持部120側の側面に当接して、支持具100の支持部120が吊りボルトBに対して下方に回動することを規制する規制部111cが設けられている。さらに、基部120の後面111bの上端には、テーパー面111dが設けられている。なお、この基部111の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
第1挟持部112は、該基部111の長手方向の下端且つ幅方向の一方の側端(図3(b)の右側)から後面111b側に略垂直に延設された突出片である。この第1挟持部112において、円弧状の挟圧面112aが内面に形成されている。該挟圧面112aには、吊りボルトBの螺旋状のネジ溝に対応したピッチで複数の突条が突設されている。また、第1挟持部112の先端には、幅方向外側(図3(b)の右側)に広がって延びる正面視三角形状のガイド片112bが設けられている。このガイド片112bは、図3(d)に示すように傾斜面を有し、吊りボルトBを第1挟持部112の内面の挟圧面112aにガイドするように機能する。なお、この第1挟持部112の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
第2挟持部113は、該基部111の長手方向の下方で幅方向の他方の側端(図3(b)の左側)から後面111b側に略垂直に延設された突出片である。該第2挟持部113は、基部111の長手方向(軸方向)において第1挟持部112と異なる位置で重複しないように延在している。より詳細には、第1挟持部112の上縁と第2挟持部113の下縁とが軸方向において僅かに離隔して互いに対面しないように、第1挟持部112及び第2挟持部113が段違いに配置されている。この第2挟持部113において、円弧状の挟圧面113aが内面に形成されている。該挟圧面113aには、吊りボルトBの螺旋状のネジ溝に対応したピッチで複数の突条が突設されている。なお、この第2挟持部113の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
これら第1挟持部112及び第2挟持部113の先端は、基部後面111b側(支持部120の反対側)に吊りボルトBを挿通可能に開け放たれ(又は開口し)、幅方向において吊りボルトBを押し込み可能な間隔で離隔している。換言すると、この挟持部先端の開口を介して吊りボルトBを基部111の正面(後面111b)から真っ直ぐ押し込むことで、(第1挟持部112及び第2挟持部113を幅方向の外側に撓ませて)これらの間に吊りボルトBを配置して挟持することが可能であるように、第1及び第2挟持部112,113の位置関係が定められている。そして、第1挟持部112及び第2挟持部113は、吊りボルトBの側面にその軸方向の異なる位置で両側からそれぞれ当接することにより、協働して吊りボルトBを挟持するように構成されている。
側壁部114は、第2挟持部113の上側に連設され、該基部111の幅方向の他方の側端(図3(b)の左側)から後面111b側に略垂直に延在している。つまり、該側壁部114の下端(一端)に第2挟持部113が一体的に形成されている。また、該側壁部114は、基部111の上縁を越えて軸方向の上方にさらに延在している。この側壁部114は、設置時に吊りボルトBの側面に当接可能であるが、第1挟持部112と協働して吊りボルトBを挟持するようには構成されていない。
さらに、図2(a),(b)に示すように、側壁部114の基部111よりも上側の部分において、側壁部114の基部111側の端縁(正面視の右端部)が傾斜し、傾斜辺114aが形成されている。この傾斜辺114aにより、側壁部114が正面視において上方ほど幅狭となっている。そして、側壁部114の上部の正面視左端部から当接部115が正面視手前側に向かって(基部111の幅方向に沿って)一体的に延び出ている。なお、この側壁部114の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
当接部115は、図4(a)に示すとおり、軸方向において基部111と離隔して配置されており、側壁部114上部から固定部110上端まで軸方向に沿って延在している。該当接部115は、側壁部114に連結された(左)側面側の壁部と、基部111が延在する平面の対向面に延在する正面側の壁部とから構成される。より詳細には、該当接部115は、その基端で側壁部114上部に一体化され、且つ、吊りボルトBを挟んで基部111と相反する側の面で延在している。さらに、当接部115は、その先端が基部111(支持部120)側に向かうとともに支持部120側に開放したフック状に湾曲しており、側壁部114が延在する平面と対向する平面にまで延びている。そして、当接部115は、当接する吊りボルトBの外径に対応した円弧状の外面及び内面を有している。
さらに、当接部115は、図2(a)に示すとおり、その正面視(幅方向)の右側端縁が傾斜し、傾斜辺(又は傾斜面)115bが形成されている。この傾斜辺115bにより、当接部115が正面視において上方ほど幅広となっている。なお、後述するように、2つの同じ支持具100を吊りボルトBの同じ高さに対で取着したときに、側壁部114の傾斜辺114aと当接部115の傾斜辺115bとが組み合わさり、側壁部114と当接部115とが円筒形状を形成して吊りボルトBを包囲する。さらに、当接部115内面の傾斜面115bは、基部111のテーパー面111dとほぼ平行に対向している。そして、この当接部115の上端且つ(幅方向)先端には、図3(a)に示すように外方(正面視手前)に広がって延びるガイド片115aが設けられている。このガイド片115aは、傾斜面を有し、吊りボルトBを当接部115の内面側にガイドするように機能する。なお、この当接部115の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
そして、基部111と当接部115との間には、吊りボルトBを遊挿可能な遊挿空間116が設けられている。この遊挿空間116は、基部111、側壁部114及び当接部115の間に定められる吊りボルトBを配置可能な空間である。該遊挿空間116において、吊りボルトBを遊挿状態で収容可能であるように、基部111上端と当接部115下端とが吊りボルトBの外径よりも離隔している。さらに、該吊りボルトBを遊挿空間116に支持具100の正面から導入することが可能であるように、当接部115の正面側の壁部が傾斜状に切り欠かれている(すなわち、傾斜辺115bを形成する)。この遊挿空間116に吊りボルトBを導入して基部111を吊りボルトBに押し込むことで、第1挟持部112及び第2挟持部113の間に吊りボルトBを嵌挿して支持具100を吊りボルトBに取着することができる。なお、基部111上端にテーパー面111dが形成されていることにより、該遊挿空間116に吊りボルトBを導入するときに基部111上端に吊りボルトBが引っ掛かることが抑えられる。
他方、支持部120は、支持対象物である配線・配管材Pを支持するための台座121と、固定端及び自由端を有し、配線・配管材Pに回されて該台座121に配線・配管材Pを結束するための長尺のバンド123と、該バンド123を挿通可能に台座121に貫通形成された貫通部125と、貫通部125に挿通したバンド123を長尺方向に脱抜防止に係止するロック部127と、を備える。
台座121は、基部111に一体形成され、該基部111の前面111aから略垂直方向に延びる正面視略L字形状の支持腕である。該台座121は、正面視左右方向に延在し、配線・配管材Pを載置可能な載置部121aと、該載置部121aの先端で垂直に立設した立壁部121bとを備える。該載置部121aと立設部121bは、その内面において連続した緩やかな湾曲面を形成している。これにより、支持対象物が台座121上で滑らかに支持(又は載置)されるとともに、支持対象物が台座121から落下しないように規制される。さらに、台座121の基端側の正面及び背面には、縦方向に延びる凸条部129が設けられている。この凸条部129は、支持具100を治具で操作するときに用いられ(図示せず)、その治具の凹溝に嵌合可能に形成されている。
バンド123は、台座121の基端近傍で基部前面111aに固定され、該固定端から台座121の先端側に延びる長尺体である。バンド123は、少なくとも台座121の載置部121aの正面視左右の幅よりも長く形成され、その先端に自由端を有する。また、バンド123は、扁平な断面形状を有する平板帯体である。つまり、バンド123は幅広な平面と、相対的に幅狭な側端面とからなる。それ故、バンド123は、その長尺方向に撓み変形し易いが、その幅方向に撓み変形し難い。そして、バンド123は、捻れ変形可能であり、その一部又は全体の平面が捻れた傾斜姿勢をとることができる。なお、バンド123は、長尺方向において略L字状に屈曲した初期姿勢を有しており、長尺方向又は捻れ方向に弾性変形した後に初期姿勢に弾性復帰可能に構成されている。
本実施形態では、該バンド123の上下の平面のうち台座121(又は支持対象物)に対向する側の面を裏面と定め、台座121の反対側を向いた面を表面と定める。このバンド123の表面には、その長尺方向に沿って並列する複数の被係合歯123aが設けられている。複数の被係合歯123aは、バンド123表面の中央近傍から先端近傍に亘って突設されており、長手方向に被係合部を形成している。各被係合歯123aは、長尺方向に沿った断面視(図4(a)参照)において鋸歯形状を有し、バンド123基端側が表面から垂直に立設するとともにバンド123先端側が傾斜している。また、各被係合歯123aは、図4(c)に示すように、バンド123の幅方向に沿って略矩形断面を有する。この被係合歯123aの略矩形断面において、被係合歯123a先端で片方の側端面がテーパー状に面取りされている。このテーパー部123bは、支持具100の背面側の側部に形成され、換言すると、後述の貫通部125の受入口125bに先に入る側の側端に形成されている。
さらに、バンド123の先端には、その幅方向に沿ってバンド123の両縁からT字状に突出する把持部123cが設けられている。この把持部123cは、バンド123先端を手で把持し易いように構成されている。あるいは、竿状の治具等に掛合することにより、バンド123を遠隔操作することも可能である。
貫通部125は、台座121先端近傍において、正面視において上下に台座121を貫通するように形成されている。図4(b)に示すとおり、貫通部125は、平面視において屈折した貫通路を形成する。つまり、貫通部125は、台座121の幅方向(平面視において台座121の延設方向と直交する方向)に沿って延びる直状のスリットと、該スリットに対して平面視左側に傾斜した傾斜路とを組み合わせてなる貫通路である。
該貫通部125は、バンド123が係止状態で貫通配置される収容部125aと、該収容部125aに連通するとともにバンド123の幅方向の側端を受け入れ可能に開口した受入口125bと、該受入口125bを介してバンド123を収容部125aに対して傾斜させた姿勢で収容部125a内にガイドするガイド部125cと、収容部125aに収容されたバンド123の幅方向の側端面に対向し、バンド123が幅方向に移動して収容部125aから抜け出ることを規制する離脱防止部125dとを備える。次に貫通部125の各構成要素についてより詳細に説明する。
収容部125aは、台座121の幅方向(正面視における前後方向)に沿って延びる直状のスリット(空隙)である。該収容部125aは、バンド123を収容可能な大きさで構成されている。該収容部125aの面積は、収容したバンド123のがたつきを抑えるべく、バンド123の横断面積とほぼ等しいことが好ましい。本実施形態では、収容部125aの横幅がバンド123の幅よりも僅かに大きく、その縦幅がバンド123の厚みよりも僅かに大きい。該収容部125aの正面視手前側が傾斜方向に開放され、正面視奥側が台座121の肉部によって閉塞されている。
受入口125bは、傾斜路を介して収容部125aに連通するように、台座121正面に開口する縦方向に延びるスリットである。つまり、受入口125bは、台座121の長手方向(延設方向)に直交するように開口している。該受入口125bは、台座121の基端側の第1傾斜面125c1(ガイド部125c)と先端側の第2傾斜面125c2(ガイド部125c)との間に定められている。そして、該受入口125bは、バンド123の側端を正面からスライドさせて導入可能に構成されている。つまり、受入口125bは、台座121の肉部を縦方向に貫通(又は切断)し、バンド123の厚みよりも広く開口している。
ガイド部125cは、台座121の基端側で受入口125bの外側(正面視前方)から内側(正面視後方)へと傾斜する第1傾斜面125c1と、台座121の先端側で該第1傾斜面125c1に対向して傾斜する第2傾斜面125c2とを有する。このガイド部125の傾斜面125c1,125c2の間に、平面視左下から右上へと延びる傾斜路が定められる。換言すると、ガイド部125cは、受入口125bの外側から収容部125aの側端に延びる傾斜路であり、バンド123を傾斜姿勢に変形させるとともに、バンド123の側端を受入口125b、収容部125a内へと導入するように機能する。すなわち、ガイド部125cは、バンド123表面が正面視手前を向くようにバンド123を捻り変形させ、バンド123を傾斜姿勢のままで支持部120正面から受入口125bを介して収容部125aへとガイドする。
離脱防止部125dは、正面視手前側で受入口125bよりも台座121の先端側に形成され、正面視左右に延在する壁体である。図3(d)及び図4(b)に示すとおり、該離脱防止部125dは、収容部125aにロック状態で収容されたバンド123の幅方向の側端面に対向するように延在し、収容部125aを支持具100の正面から遮蔽する。該離脱防止部125dの側端面は、傾斜面に切り欠かれており、そこにガイド部125cの第2傾斜面125c2が定められている。すなわち、離脱防止部125dは、収容部125aに平行な姿勢で収容されたバンド123の側端面を係止して貫通部125から離脱することを規制し、他方、バンド123が捻られて傾斜姿勢をとるとバンド123を規制せずに離脱させるように機能する。
ロック部127は、図4(a)に示すように、台座121先端の立壁部121bに連設されており、受入口125b(収容部125a)よりも台座121の先端側に位置する。該ロック部127は、収容部125a側に延びるロック爪127aと、該ロック爪127aが設けられた長板状の弾性片127bとを備える。これらロック爪127a及び弾性片127bは、収容部125aに配置されたバンド123の表面に対向するように配置されている。
ロック爪127aは、バンド123の被係合歯123aを係止可能な形状を有する。より具体的には、ロック爪127aは、その先端ほど下方に傾斜する上面と、弾性片127bに対して垂直な下面とを有する。つまり、このロック爪127aの傾斜面が鋸歯状の被係合歯123aの傾斜面に摺動可能であり、ロック爪127aの垂直面が被係合歯123aの垂直面に係合するように配置されている。これにより、ロック部127は、バンド123が貫通部125内をその長尺方向の先端側に移動することを許容し、該バンド123が貫通部125内をその長尺方向の基端側に移動することを規制する。
弾性片127bは、その基端が台座121の立壁部121bに一体的に固定された固定端、及び、支持部120の下端から延び出る自由端を有する。該弾性片127bは、板状の弾性片であり、固定端を支点として台座121の長手方向(正面視左右)に弾性変形可能である。弾性片127bの初期位置では、ロック爪127aが収容部125aに入り込み、バンド123の被係合歯123aに係合し、ロック部127でバンド123がロックされる。他方、弾性片127bの弾性変形位置では、ロック爪127aが収容部125aから離脱する方向に弾性変形し、バンド123の被係合歯123aに係合せずに、ロック部127によるバンド123のロックが解除される。後述するとおり、ロック爪127aが傾斜したバンド123の側端面に押圧されることにより、弾性片127bが弾性変形位置に変形し、バンド123が収容部125aに収容されたとき、あるいは、バンド123が受入口125bから離脱したとき、初期位置に弾性復帰する。なお、任意に弾性片127bの支持部120の下端から延び出る自由端を操作することによっても、弾性片127bを弾性変形可能である。
なお、本実施形態の支持具100は、合成樹脂を一体成形することで製造可能である。しかしながら、本発明の支持具は、これに限定されず、当業者であれば、その材質、製法等を適宜選択可能であり、例えば、金属材料等を採用してもよい
図5は、本実施形態の支持具100を固定部110を介して吊りボルトBに取着したときの(a)概略正面図、(b)概略背面図である。図5に示すとおり、固定部110の基部110が吊りボルトBに右側方から当接し、第1挟持部112が吊りボルトBに正面から当接し、第2挟持部113及び側壁部114がボルトBに背面から当接し、当接部115が吊りボルトBに左側方及び正面から当接している。このとき、第1挟持部112及び第2挟持部113が弾性的に吊りボルトBを(軸方向に異なる位置で)段違いに挟持するとともに、各挟圧面112a、113aの複数の突条が吊りボルトBのネジ溝に嵌合することにより、支持具100が吊りボルトBにしっかりと固定されている。また、図5の取着構造では、支持部120に荷重がかかったときに、支持具110上端で当接部115が吊りボルトBの支持部120と反対側の側面に当接するとともに、支持具110の下端で規制部111aが吊りボルトBの支持部120側の側面に当接する。これにより、支持部1220への荷重により支持具110が下方に回動して吊りボルトBから外れることが効果的に規制されている。さらに、本実施形態では、支持具100の基部110、側壁部114及び当接部115と、吊りボルトB外面との間に有意な隙間が形成されることがない。このため、1つの支持具100を吊りボルトBに取着した場合においても、支持具100が吊りボルトBに対してがたつくことを抑えることができる。
次に、本実施形態の支持具100を吊りボルトBの同じ高さに対で固定し、該一対の支持具100で支持対象物である配線・配管材Pを支持した支持構造10について、図6乃至図9を参照して説明する。
図6は、支持構造10の概略正面図である。図7は、その縦断面図である。図8は、吊りボルトBの軸方向の各部分における端面図である。図9は、貫通部125内でロックされたバンド123を示す部分断面図である。以下、説明の便宜上、他方の支持具及びその構成要素の符番の末尾に「’」を付す。例えば、一方の支持具を支持具100と示し、他方の支持具を支持具100’と示す。
図6及び図7に示すとおり、該支持構造10では、同一の2つの支持具100,100’が吊りボルトBの軸方向の同じ位置に、それぞれ固定部110,110’を介して取着されている。そして、これら一対の支持具100,100’は、吊りボルトBを中心に対称に配置されている。また、該支持構造10では、各支持具100,100’の支持部120,120’で複数の配線・配管材Pを保持している。これら複数の配線・配管材Pは、その長尺方向が台座121,121’の幅方向に沿うように配設されている。
本実施形態の支持構造10において、支持具100,100’を吊りボルトBの軸方向の同位置に取着したときに、少なくとも基部111,111’、第1挟持部112,112’、第2挟持部113,113’及び当接部115,115’が互いに干渉することなく吊りボルトBを挟んで対向配置されている。
より具体的には、図8(a)に示すとおり、一方の支持具100の第1挟持部112の挟圧面112aが吊りボルトBに正面側から圧接し、その反対側において、他方の支持具100’の第1挟持部112’の挟圧面112a’が吊りボルトBに背面側から圧接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
図8(b)に示すとおり、一方の支持具100の第2挟持部113の挟圧面113aが吊りボルトBに背面側から圧接し、その反対側において、他方の支持具100’の第2挟持部113’の挟圧面113a’が吊りボルトBに正面側から圧接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
図8(c)に示すとおり、一方の支持具100の側壁部114が吊りボルトBに背面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’の側壁部114’が吊りボルトBに正面側から当接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
図8(d)に示すとおり、一方の支持具100の当接部115が吊りボルトBに正面視左側方及び正面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’の当接部115’が吊りボルトBに正面視右側方及び背面側から当接している。また、一方の側壁部114が吊りボルトBに背面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’の側壁部114’が吊りボルトBに正面側から圧接している。そして、図6の正面視において、一方の当接部115の傾斜片115bと他方の側壁部114’の傾斜片114a’が合致しており、逆もまた同様である。このように支持具100,100’が組み合わされている。
図8(a)〜(d)に示したように、各部位が対向配置される位置における吊りボルトBの軸方向に水平な断面(端面)において、一方(又は他方)の支持具100の肉部が存在しない空間を他方(又は一方)の支持具100’の肉部が補完し、吊りボルトBの周囲を実質的(隙間を考慮せず)に包囲している。これにより、一対の支持具100、100’が協働して互いの吊りボルトBの固定強度を高め、堅牢な支持構造10が構築されている。
さらに、支持構造10は、複数の配線・配管材Pを支持部120,120’の台座121,121’に保持している。より具体的には、配線・配管材Pが台座121,121’の載置部121a,121a’に配置された状態でバンド123,123’によって支持部120,120’に結束固定されている。つまり、一方の支持部120において、バンド123が台座121先端側で貫通部125を貫通することで、バンド123と台座121と基部111とで閉塞した輪を形成し、その輪の中に配線・配管材Pが保持されている。そして、バンド123がピンと張るまでバンド123先端が貫通部125の下端から延び出ており、バンド123裏面が配線・配管材P表面に圧接している。この状態でバンド123がロック部127でロックされることにより、配線・配管材Pが台座121に括り付けられている。
図9(a)、(b)に示すとおり、バンド123が貫通部125の収容部125aを上下に貫通した状態でロック部127により脱抜不能な状態でロックされている。このロック部127は、バンド123が貫通部125内をその長尺方向の先端側に移動することを許容し、該バンド123が貫通部125内をその長尺方向の基端側に移動することを規制している。
より詳細には、図9(a)に示すように、ロック状態では、ロック部127の弾性片127bが初期位置(又は僅かに弾性変形した状態)にあり、ロック爪127aがバンド123の被係合歯123aの間に配置されている。このとき、ロック爪127aの垂直面と被係合歯123aの垂直面とが係合して、バンド123が上方に抜け出ることが規制されている。
図9(b)に示すように、バンド123は、収容部125aに配置され、ロック爪127a先端及び収容部125aの内壁125a1に当接している。該収容部125aの内壁125a1は、台座121の幅方向(正面視前後方向)に延在している。そして、該収容部125aに収容されたバンド123は、内壁125a1に当接して、該バンド123の幅方向が台座121の幅方向を向くように、その姿勢が矯正されている。つまり、図9(b)のロック状態では、バンド123が長尺方向に屈曲しているだけであり、その幅方向に捻れていない。この姿勢は、バンド123の初期姿勢と合致する。
そして、バンド123の正面側の側端面が、離脱防止部125dの壁面に対向している。これにより、ロック(捻れていない)状態のバンド123が内壁125a1に沿って受入口125b側にスライドしたとしても、バンド123の側端面が離脱防止部125dの壁面に係止される。また、バンド123が捻れていない姿勢では、バンド123の貫通部125内での移動方向が(内壁125a1及びロック爪127aによって)幅方向に限定されるため、バンド123側端が傾斜路に進入することはない。すなわち、このロック状態において、バンド123は、貫通部125の受入口125bから不意に抜け出ることなく安定的に収容部125aに保持される。
したがって、本実施形態の支持構造10では、一対の支持具100,100’が吊りボルトBに強固に固定されているとともに、複数の配線・配管材Pが支持部120,120’によって安定的に保持されている。
次に、図10乃至図14を参照して、支持構造10を構築するまでの一連の工程を詳細に説明する。
まず、吊りボルトBの配線・配管材P(支持対象物)を支持する位置を決定し、その位置に基づいて吊りボルトBに支持具100を取着する位置を定める。この吊りボルトBの取着位置に対して支持具100を把持して近づける。そして、図10(a)に示すとおり、支持具100の側壁部114を吊りボルトBの背面側に配置し、基部111の長手方向と吊りボルトBの軸方向とを傾斜(交差)させた状態で該吊りボルトBを遊挿空間116に支持具100の正面から導入する。このとき、側壁部114の内面に吊りボルトBを当接させ、支持具100を吊りボルトBの軸方向に沿って摺動させて取着位置(高さ)の調整を行ってもよい。
次に、遊挿空間116内で固定部110を傾動させることで、第1挟持部112及び第2挟持部113の先端を吊りボルトBに(正面視右側の)側方から当接させるとともに、フック状の当接部115を吊りボルトBに引っ掛けるように当接部115の内面を吊りボルトBにその反対側の(正面視左側の)側方から当接させる。このとき、第1挟持部112のガイド片112bと、当接部115のガイド片115aとが吊りボルトBを当該位置にガイドする。図10(b)に示すとおり、支持具100に吊りボルトB側へ直線的な力を加えて、基部111を吊りボルトBに対して側方から押し付ける。これにより、支持具100上端に位置する当接部115を支点として、該支持具100下端近傍の第1挟持部112及び第2挟持部113が吊りボルトB側に回動する。そして、第1挟持部112及び第2挟持部113が弾性変形して吊りボルトBをその間に受け入れる。こうして、支持具100を吊りボルトBの所定高さに取着することができる。
次いで、一方の支持具100が取着された吊りボルトBに対して、該吊りボルトBの軸方向の同じ位置に他方の支持具100’を取着する。図11(a)に示すとおり、支持具100’の基部111’を吊りボルトBの正面側に配置し、基部111’の長手方向と吊りボルトBの軸方向とを傾斜させた状態で該吊りボルトBを遊挿空間116’に支持具100’の正面(図11(a)では背面側)から導入する。このとき、吊りボルトBは、既に取着された一方の支持具100の固定部110ごと遊挿空間116’に挿入される。
そして、遊挿空間116’内で固定部110’を傾動させることで、他方の第1挟持部112’及び第2挟持部113’の先端を吊りボルトBに(正面視左側の)側方から当接させるとともに、フック状の当接部115’を吊りボルトBに引っ掛けるように他方の当接部115’の内面を吊りボルトBにその反対側の(正面視右側の)側方から当接させる。図11(b)に示すとおり、他方の支持具100’に吊りボルトB側へ直線的な力を加えて、基部111’を吊りボルトBに対して側方から押し付ける。これにより、支持具100’上端に位置する当接部115’を支点として、該支持具100’下端近傍の第1挟持部112’及び第2挟持部113’が吊りボルトB側に回動する。そして、第1挟持部112’及び第2挟持部113’が弾性変形して吊りボルトBをその間に受け入れる。こうして、他方の支持具100’を吊りボルトBの所定高さに取着することができる。なお、固定部110、110’の各構成要素の対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。そのため、一方の支持具100と他方の支持具100’を組み合わせて吊りボルトBに取着したときに、各構成要素を互いに干渉させずに吊りボルトBを挟んで対向配置させることが可能である。
このように一対の支持具100,100’を吊りボルトBに取着した後、支持対象物である配線・配管材Pを支持部120,120’に配置して結束することにより、支持構造10を構築することができる。図12及び図13を参照して、この配線・配管材Pを支持部120に結束する工程を説明する。なお、説明の便宜上、図12は、一方の支持具100のみを吊りボルトBに取着したものである。
まず、図12(a)に示すとおり、複数の配線・配管材Pを束ねて支持部120の台座121上の載置面121aに載置する。そして、バンド123の把持部123cを把持して、支持具100の正面視手前側に屈曲させ、受入口125bの手前付近にバンド123を配置する。
そして、図12(b)に示すとおり、バンド123の側端を正面視手前から受入口125bを介して傾斜姿勢で収容部125aに進入させ、貫通部125にバンド123を貫通配置する。この工程について、図13(a)〜(d)を参照して、より詳細に説明する。
まず、図13(a)に示すように、支持具100の正面視手前側に屈曲させたバンド123を受入口125bの手前付近に配置する。そして、バンド123を台座121先端の正面側壁(離脱防止部125dの外壁面)に対して台座121基端側に摺動させるように操作すると、バンド123側端を受入口125bの端縁まで簡単に導くことができる(図13(b)参照)。このとき、バンド123に設けられたテーパー部123bにより、バンド123側端が受入口125bの端縁に引っ掛かることがないため、バンド123が滑らかに受入口125bに進入する。すなわち、バンド123を受入口125bの手前側に捻って変形させ、バンド123側端を台座121の側面に対して摺動させることで、受入口125bの位置を容易に探ってバンド123側端を受入口125bに簡単に進入させることができる。
そして、バンド123裏面をガイド部125cの(正面側に臨む)第1傾斜面125c1に当接させた状態で、バンド123を受入口125b内に進入させる。このとき、バンド123裏面がガイド部125cの第1傾斜面125c1に当接するか、又は、バンド123表面がガイド部125cの第2傾斜面125c2に当接することにより、バンド123の表面(被係合歯123a)が正面を向く方向に捻られて傾斜姿勢をとる。この傾斜姿勢のまま、バンド123側端をガイド部125cに沿って収容部125aに進入させると、バンド123の側端面(又はテーパー部123b)がロック爪127aの先端に当接する。さらに、ガイド部125cに沿って傾斜方向に力を加えてバンド123を操作すると、図13(c)に示すように、弾性片127bが弾性変形することでロック爪127aが後退して、バンド123が収容部125aに通過可能となる。そのまま、バンド123をガイド部125cに沿って傾斜姿勢で押し込むことで、ロック爪127aを後退させつつ、バンド123を収容部125aに配置することができる。そして、図13(d)に示すとおり、収容部125aに配置されたバンド123が傾斜姿勢から元の姿勢に復帰するとともに弾性片127bが初期位置に弾性復帰することで、ロック爪127aと被係合歯123aとが係合する。その結果、バンド123は、貫通部125を貫通した状態でロック部127によって脱抜防止にロックされる。
続いて、図12(c)に示すとおり、貫通部125を貫通するバンド123を長尺方向の先端側に強く引っ張ることにより、バンド123が貫通部125内を下方に進行し、配線・配管材Pを包囲する輪を縮めて、配線・配管材Pを支持部120に強く結束することができる。より詳細には、ロック状態でバンド123を下方(長尺方向の先端側)に移動させると、被係合歯123aの傾斜面がロック爪127aの傾斜面に対して摺動すると同時に弾性片127bが後方に弾性変形して、ロック爪127aが被係合歯123aを乗り越え、バンド123先端を長尺方向に進行させることができる。
以上の工程を経て、支持構造10を構築することができる。しかしながら、支持構造10を構築する工程は、上記工程に限定されることはない。
例えば、図14に示すように、支持具100,100’の支持部120,120’に配線・配管材Pを予め結束した上で、支持具100,100’を吊りボルトBに取着してもよい。このような長尺の配線・配管材Pを保持したままでも上記工程と同様の操作で支持具100を吊りボルトBに簡単に取着することができる。すなわち、配線・配管材Pを支持部120に括り付けた状態の支持具100を吊りボルトBに取着する際、支持具100を配線・配管材Pの長手方向に傾斜させることなく、支持具100を吊りボルトBに直線的に押圧すればよい。そのため、配線・配管材Pを局所的にほとんど屈曲又は捻転させずに、配線・配管材Pを保持したまま、取着操作を行うことができる。さらに、側壁部114の内面に吊りボルトBを当接させ、支持具100を吊りボルトBの軸方向に沿って摺動させて取着位置(高さ)の調整を行うとき、吊りボルトBに支持具100の鉛直移動がガイドされる。すなわち、支持具100が直線的に移動可能であるので、配線・配管材Pを保持したまま位置変更(高さ調整)も容易である。
他方、吊りボルトBから支持具100を取り外すには、台座121を把持して、吊りボルトBから離隔する方向に直線的な力を加えることにより、第1挟持部112及び第2挟持部113の間から吊りボルトBを引き抜いて、簡単に離脱させることができる。また、配線・配管材Pのバンド123による結束を解くには、図13(a)〜(c)で説明した工程を逆に行えばよい。すなわち、ロック状態のバンド123をその表面が正面視手前を向くように捻って、バンド123側端でロック爪127aを押圧して後退させる。この傾斜姿勢のまま、ガイド部125に沿ってバンド123側端を受入口125b側にスライドさせることにより、バンド123を貫通部125から引き出して、配線・配管材Pの結束を解除することができる。
以下、本発明に係る一実施形態の支持具100における作用効果について説明する。
本実施形態の支持具100によれば、当接部115と基部111との間に吊りボルトB(棒材)を遊挿可能な遊挿空間116が設けられ、第1挟持部112及び第2挟持部113の先端が支持部120の反対側に開放しているとともに吊りボルトBを押し込み可能な間隔で離隔している。これにより、当接部115と基部111との間に吊りボルトBを遊挿させた上で、当接部115を支点として当該支持具100を吊りボルトB側に回動させて押圧することにより、吊りボルトBを第1挟持部112と第2挟持部113の間に配置して、当該支持具100を吊りボルトBに取着することができる。すなわち、本実施形態の支持具100では、吊りボルトBを遊挿空間116に配置した状態で吊りボルトBに対して支持具100の基部111を直線的に押し付けるという簡単且つ直感的な操作で支持具100を吊りボルトBに取り付けることが可能である。よって、本実施形態の支持具100は、その取着作業を容易化するものである。さらに、本支持具100では、支持具100を吊りボルトBに取着した状態で他の支持具100’を吊りボルトBの軸方向の同位置に取着したときに、基部111、第1挟持部112、第2挟持部113及び当接部115が他の支持具100’の基部111’、第1挟持部112’、第2挟持部113’及び当接部115’と干渉せずに、吊りボルトBを挟んで対向配置される。すなわち、本支持具100は、取着における作業・操作性を改善するとともに、一対の支持具100、100’を組み合わせて吊りボルトBに対で取着可能とするものである。
本実施形態の支持具100は、その棒材への取着が困難な状況において特に有効に作用する。例えば、図14に示すような、長尺の配線・配管材Pを支持部120に保持したままでも支持具100を吊りボルトBに簡単に取着することができる。すなわち、特許文献1の従来の支持具は、前後に捻ることで吊りボルトBに取着されるように構成されている。そのため、取着操作において、長尺の配線・配管材Pをどうしても局所的に大きく屈曲させる必要がある。特に、配線・配管材が太く長い場合、配線・配管材を屈曲させることが難しく、配線・配管材を保持した状態の支持具の取着操作はほとんど不可能であった。これに対し、本実施形態の支持具100は吊りボルトBに直線的に押圧することで取着可能であるため、支持具100の取着操作の際、長尺の配線・配管材Pを屈曲させずに直状に維持しながら取着作業を行うことができる。
また、支持具100を治具を介して操作して吊りボルトBの高い位置に取り付けるときにおいても、従来と比べて、簡単に取着することができる。つまり、特許文献1の支持具では、取着工程において支持具の捻り操作が伴うため、支持具を直接的に把持できないような状況では力を入れずらく、その操作が困難となる。本実施形態の支持具100では、取着工程において、捻り操作を排除し、支持具を棒材に対して直線的に押圧すればよいため、従来と比べて、力を加え易く、その操作性に優れている。
また、本実施形態の支持具100は、簡易且つコンパクトな構造で吊りボルトBに対して強固に取り付け可能である。例えば、特許文献1の従来の支持具では、一対の支持具を棒材の軸方向の同位置に配置すべく、棒材と支持具本体との間に他方の支持具の挟持部を配置するための「挟持部用空間」を設けなければならない。このような「挟持部用空間」の存在は、支持具の構造上の複雑化や大型化につながる。さらに、この「挟持部用空間」の存在により、1つの支持具のみを棒材に取着した場合において、棒材と支持具本体とが当接せずに、支持具が棒材に対してがたついてしまうため、取着安定性の面で不安があった。
これに対して、本実施形態の支持具100では、第1挟持部112、第2挟持部113及び当接部115が縦方向(基部111の長手方向又は取着時の吊りボルトBの軸方向)において、重複せずに異なる位置に形成されている。そして、該支持具100において、固定部110の各構成要素の吊りボルトBを挟んで対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。当該構成により、一方の支持具100と他方の支持具100’を組み合わせて吊りボルトBに取着したときに、各構成要素を互いに干渉させずに吊りボルトBを挟んで対向配置させることが可能である。すなわち、一対の支持具100,100’の各構成要素(肉部)が互いに重複することなく、相補的に棒材の側面を四方から包囲可能であるので、本支持具100には、従来のような所謂「挟持部用空間」を設ける必要がない。よって、支持具100は、従来よりも簡素且つ小型の構造をとり得る。また、本実施形態では、特許文献1のような従来技術と異なり、支持具100の基部110、側壁部114及び当接部115と、吊りボルトB外面との間に有意な隙間が形成されることがない。このため、1つの支持具100を吊りボルトBに取着した場合においても、支持具100が吊りボルトBに対してがたつくことを抑えることができる。
さらに、本実施形態の支持具100によれば、バンド123の側端を貫通部125の貫通方向と異なる側方(つまり、台座121正面)から受入口125bに挿入することにより、収容部125aにバンド123を簡単に収容することが可能である。すなわち、扁平なバンド123を受入口125bの手前側に捻って変形させ、バンド123の側端を台座121の壁面に対して摺動させることで、受入口125bの位置を容易に探ってバンド123の側端を受入口125bに簡単に進入させることができる。このとき、被係合歯123aの側端面のうちの受入口125bに先に入る側がテーパー状に面取りされていることにより、バンド123側端を受入口125bに進入させるときに、被係合歯123aの側端が受入口125bの端縁に当接して引っ掛かることを抑える。すなわち、本支持具100は、バンド123を貫通部125内により滑らかに配置することが可能であり、良好な操作感を提供する。
そして、受入口125bに進入させたバンド123を収容部125a側に移動させると、貫通部125内に傾斜路を形成するガイド部125cがバンド123を傾斜姿勢で収容部125a内にガイドする。つまり、捻られて受入口125bに進入したバンド123が収容部125aに対して傾斜した姿勢のままでガイド部125cを通過して収容部125a内へ収容される。当該収容部125aに収容されたバンド123は、元の姿勢に復帰し、ロック部127によってバンド123の貫通部125の貫通方向の移動が規制されるとともに、その幅方向への移動が離脱防止部125dによって規制される。すなわち、ロック状態では、バンド123が長尺方向に移動して貫通部125から抜け出ないよう保持され、尚且つ、バンド123の側端が貫通部125の収容部125aから側方に抜け出ないよう保持される。なお、バンド123が扁平な断面を有するため、収容部125a内で元の姿勢に復帰したバンド123を人為的に捻らない限り、貫通部125から側方に簡単に抜け出ることがない。これにより、支持対象物である配線・配管材Pがバンド123で安定的に台座121に保持及び/又は結束される。したがって、本実施形態の支持具100は、バンド123で支持対象物を簡単且つ迅速に括り付けることが可能であり、支持対象物の保持における作業性と安定性とを両立するものである。
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の実施形態2及び変形例を説明する。なお、各実施例の説明において、実施形態1と共通する構成要素の説明を省略するが、3桁で示した要素のうち下二桁の符号が共通する部材は、一般的に同様又は類似する部材を意味する。
(実施形態2)
図15乃至図17は、本発明の別実施形態の支持具200を示す。該支持具200は、実施形態1の支持具100の側壁部114及び当接部115を省略したものである。
該支持具200は、棒材である吊りボルトBに取着される固定部210、及び、支持対象物である配線・配管材Pを支持するための支持部220を備えてなる。固定部210は、支持部220が前面211aに形成された基部211と、該基部211の後面211bから突出して吊りボルトB側部に当接する第1挟持部212と、吊りボルトBの軸方向において第1挟持部212とは異なる位置で基部211から突出し、第1挟持部212と協働して吊りボルトBを挟持する第2挟持部213と、を備える。そして、該固定部210は、吊りボルトBを第1挟持部212及び第2挟持部213で挟持したときに基部211が吊りボルトBに当接するように構成されている。
本実施形態の支持具200によれば、第1挟持部212及び第2挟持部213の先端が支持部220の反対側に開放しているとともに吊りボルトBを押し込み可能な間隔で離隔している。これにより、当該支持具200を吊りボルトB側に押圧することにより、吊りボルトBを第1挟持部212と第2挟持部213の間に配置して、当該支持具200を吊りボルトBに取着することができる。すなわち、本実施形態の支持具200では、吊りボルトBに対して支持具200の基部211を直線的に押し付けるという簡単且つ直感的な操作で支持具200を吊りボルトBに取り付けることが可能である。よって、本実施形態の支持具200は、その取着作業を容易化するものである。さらに、本支持具200では、支持具200を吊りボルトBに取着した状態で他の支持具200’を吊りボルトBの軸方向の同位置に取着したときに、基部211、第1挟持部212及び第2挟持部213が他の支持具200’の基部211’、第1挟持部212’ 及び第2挟持部213’と干渉せずに、吊りボルトBを挟んで対向配置される。すなわち、本支持具200は、取着における作業・操作性を改善するとともに、一対の支持具200、200’を組み合わせて吊りボルトBに対で取着可能とするものである。
(変形例)
本発明の支持具は、上記実施形態に限定されずに、例えば、以下のように変形可能である。
(1)上記実施形態では、棒材が吊りボルトであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、棒材は、表面にねじ切り加工がされていない長尺体であってもよい。
(2)上記実施形態では、支持対象物が配線・配管材Pのような長尺材であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の支持対象物は、棒材に対して支持具で支持される用途があれば如何なるものであってもよく、例えば、継ぎ手などであってもよい。
(3)本発明の支持具の支持部は、上記実施形態に限定されない。例えば、図18(a)に示す支持具300は、ケーブルクリップの形態を有する支持部320を備える。すなわち、本発明において、バンド、貫通部、ロック部等の構成が省略されてもよい。また、図18(b)に示す支持具400は、バンド状の支持部420を備える。該支持具400では、バンド状の支持部420で支持対象物を一部又は全体を包囲することにより、支持対象物を吊り下げて支持又は保持することができる。つまり、支持部は、任意の支持対象物を支持するように機能すればよく、その形態を支持対象物に応じて任意に変更可能である。
(4)本発明の支持具のバンド及びロック部の形態は上記実施形態に限定されない。例えば、被係合歯をバンド裏面(台座に対向する面)に表裏入れ替えて形成してもよく、その場合、ロック爪は貫通部の台座基端側に反転して形成される。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。