以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置について説明する。
なお、本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わされた産業記録装置に適用可能である。本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置は、例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷などの用途にも用いることができる。
また、以下に述べる各適用例および各実施形態は、本発明の適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、本実施形態は、本明細書の実施形態やその他の具体的方法に限定されるものではない。
以下に、本発明を適用可能な各適用例について説明する。
(適用例1)
(インクジェット記録装置の説明)
図1は、本発明の液体を吐出する液体吐出装置、特にはインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置(以下、記録装置とも称す)1000の概略構成を示した図である。記録装置1000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、記録媒体2の搬送方向と略直交して配置されるライン型(ページワイド型)の液体吐出ヘッド3とを備え、複数の記録媒体2を連続もしくは間欠に搬送しながら1パスで連続記録を行うライン型記録装置である。液体吐出ヘッド3は循環経路内の圧力(負圧)を制御する負圧制御ユニット230と、負圧制御ユニット230と流体連通した液体供給ユニット220と、液体供給ユニット220へのインクの供給および排出口となる液体接続部111と、筺体80とを備えている。記録媒体2は、カット紙に限らず、連続したロール媒体であってもよい。液体吐出ヘッド3は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクによるフルカラー記録が可能であり、液体を液体吐出ヘッド3へ供給する供給流路である液体供給手段、メインタンクおよびバッファタンク(後述する図2参照)が流体的に接続される。また、液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。液体吐出ヘッド3内における液体経路および電気信号経路については後述する。
記録装置1000は、インク等の液体を後述するタンクと液体吐出ヘッド3との間で循環させる形態のインクジェット記録装置である。その循環の形態は、液体吐出ヘッド3の下流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を可動することで循環させる第1循環形態と、液体吐出ヘッド3の上流側で2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)を可動することで循環させる第2循環形態とがある。以下、この循環の第1循環形態と第2循環形態とについて説明する。
(第1循環形態の説明)
図2は、本適用例の記録装置1000に適用される循環経路の第1循環形態を示す模式図である。液体吐出ヘッド3は、第1循環ポンプ(高圧側)1001、第1循環ポンプ(低圧側)1002およびバッファタンク1003等に流体的に接続されている。なお図2では、説明を簡略化するため、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクの内の1色のインクが流動する経路のみを示しているが、実際には4色分の循環経路が、液体吐出ヘッド3および記録装置本体に設けられる。
第1循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給され、その後、第2循環ポンプ1004によって液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3の液体供給ユニット220に供給される。その後、液体供給ユニット220に接続された負圧制御ユニット230で異なる2つの負圧(高圧、低圧)に調整されたインクは、高圧側と低圧側の2つの流路に分かれて循環する。液体吐出ヘッド3内のインクは、液体吐出ヘッド3の下流の第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環し、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出されてバッファタンク1003に戻る。
サブタンクであるバッファタンク1003は、メインタンク1006と接続され、タンク内部と外部とを連通する不図示の大気連通口を有し、インク中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003とメインタンク1006との間には、補充ポンプ1005が設けられている。補充ポンプ1005は、インクを吐出しての記録や吸引回復等、液体吐出ヘッド3の吐出口からインクを吐出(排出)することによって消費されたインクをメインタンク1006からバッファタンク1003へ移送する。
2つの第1循環ポンプ1001、1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す。第1循環ポンプとしては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態であってもよい。液体吐出ヘッド3の駆動時には、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002を稼働することによって、それぞれ共通供給流路211、共通回収流路212内を所定流量のインクが流れる。このようにインクを流すことで、記録時の液体吐出ヘッド3の温度を最適の温度に維持している。液体吐出ヘッド3駆動時の所定流量は、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が記録画質に影響しない程度に維持可能である流量以上に設定することが好ましい。もっとも、あまりに大きな流量に設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧損の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり画像の濃度ムラが生じてしまう。そのため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら流量を設定することが好ましい。
負圧制御ユニット230は、第2循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられている。この負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の差等によって循環系におけるインクの流量が変動した場合でも、負圧制御ユニット230よりも下流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力を予め設定した一定圧力に維持するように動作する。負圧制御ユニット230を構成する2つの負圧制御機構としては、負圧制御ユニット230よりも下流の圧力を、所望の設定圧を中心として一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構を用いてもよい。一例としては所謂「減圧レギュレータ」と同様の機構を採用することができる。本適用例における循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の上流側を加圧している。このようにすると、バッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。
第2循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用するインク循環流量の範囲において、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用できる。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が適用可能である。また第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクでも適用可能である。図2に示したように負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの負圧調整機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、相対的に高圧設定側(図2でHと記載)、相対的に低圧設定側(図2でLと記載)は、それぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211、共通回収流路212に接続されている。液体吐出ユニット300には、共通供給流路211、共通回収流路212、各記録素子基板と連通する個別流路215(個別供給流路213、個別回収流路214)が設けられている。共通供給流路211には、負圧制御機構Hが、共通回収流路212には負圧制御機構Lが接続されており、2つの共通流路間に差圧が生じている。そして、個別流路215は、共通供給流路211および共通回収流路212と連通しているので、液体の一部が、共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと流れる流れ(図2の矢印)が発生する。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通供給流路211および共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211および共通回収流路212を流れるインクによって記録素子基板10の外部へ排出することができる。またこのような構成により、液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れを生じさせることができる。これによって、吐出口内で増粘したインクの粘度を低下させることで、インクの増粘を抑制することができる。また、増粘したインクやインク中の異物を共通回収流路212へと排出することができる。このため、本適用例の液体吐出ヘッド3は、高速で高画質な記録が可能となる。
(第2循環形態の説明)
図3は、本適用例の記録装置に適用される循環経路のうち、上述した第1循環形態とは異なる循環形態である第2循環形態を示す模式図である。前述の第1循環形態との主な相違点は、負圧制御ユニット230を構成する2つの負圧制御機構が共に、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する点である。また、第1循環形態との相違点として、第2循環ポンプ1004が負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用する点がある。更に、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置され、負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている点も相違する点である。
第2循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給される。その後インクは2つの流路に分けられ、液体吐出ヘッド3に設けられた負圧制御ユニット230の作用で高圧側と低圧側の2つの流路で循環する。高圧側と低圧側の2つの流路に分けられたインクは、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3に供給される。その後、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環したインクは、負圧制御ユニット230を経て、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から排出される。排出されたインクは、第2循環ポンプ1004によってバッファタンク1003に戻される。
第2循環形態で負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の変化等によって生じる流量の変動があっても、負圧制御ユニット230の上流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力変動を予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定させる。本適用例の循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を加圧している。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクであっても適用可能である。第2循環形態は第1循環形態と同様に、負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの負圧制御機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、高圧設定側(図3でHと記載)、低圧設定側(図3でLと記載)はそれぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給流路211または共通回収流路212に接続されている。2つの負圧調整機構により、共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くすることで、共通供給流路211から個別流路215および各記録素子基板10の内部流路を介して共通回収流路212へと流れる液体の流れが発生する。
このような第2循環形態では、液体吐出ユニット300内には第1循環形態と同様の液体の流れ状態が得られるが、第1循環形態の場合とは異なる2つの利点がある。1つ目の利点は、第2循環形態では負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されているので、負圧制御ユニット230から発生するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入する懸念が少ないことである。2つ目の利点は、第2循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第1循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。
記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211および共通回収流路212内の流量の合計を流量Aとする。流量Aの値は、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整にあたり、液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また液体吐出ユニット300の全ての吐出口からインクを吐出する場合(全吐出時)の吐出流量を流量F(1吐出口当りの吐出量×単位時間当たりの吐出周波数×吐出口数)と定義する。
図4は、第1循環形態と第2循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3へのインクの流入量の違いを示した概略図である。図4(a)は、第1循環形態における待機時を示しており、図4(b)は、第1循環形態における全吐出時を示している。図4(c)から図4(f)は、第2循環流路を示しており、図4(c)、(d)が流量F<流量Aの場合で、図4(e)、(f)が流量F>流量Aの場合であり、それぞれ、待機時と全吐出時の流量を示している。
定量的な送液能力を有する第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている第1循環形態の場合(図4(a)、(b))、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aとなる。この流量Aによって、待機時の液体吐出ユニット300内の温度管理が可能となる。そして、液体吐出ヘッド3で全吐出が行われる場合、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の合計設定流量は流量Aのままである。しかし、液体吐出ヘッド3へ供給される最大流量は、液体吐出ヘッド3で吐出によって生じる負圧が作用して、合計設定流量の流量Aに全吐出による消費分の流量Fが加算される。よって、液体吐出ヘッド3への供給量の最大値は、流量Fが流量Aに加算されるため流量A+流量Fとなる(図4(b))。
一方で、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態の場合(図4(c)から図4(f))は、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への供給量は、第1循環形態と同様に流量Aである。従って、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態では、流量Fよりも流量Aが多い場合(図4(c)、(d))には、全吐出時でも液体吐出ヘッド3への供給量は流量Aで十分である。その際、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、流量A−流量Fとなる(図4(d))。しかし、流量Aよりも流量Fが多い場合(図4(e)、(f))には、全吐出時には液体吐出ヘッド3への供給流量を流量Aとすると流量が足りなくなってしまう。そのため、流量Aよりも流量Fが多い場合には、液体吐出ヘッド3への供給量を流量Fとする必要がある。その際、全吐出が行われると、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど排出されない状態となる(図4(f))。なお、流量Aよりも流量Fが多い場合で、吐出は行うが全吐出ではない場合には、流量Fから吐出で消費された分が引かれた量が液体吐出ヘッド3から排出される。また、流量Aと流量Fとが等しい場合には、液体吐出ヘッド3へは流量A(または流量F)が供給されて、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの排出流量は、ほとんど排出されない状態となる。
このように、第2循環形態の場合、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の設定流量の合計値、即ち必要供給流量の最大値は、流量Aまたは流量Fの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第2循環形態における必要供給量の最大値(流量Aまたは流量F)は、第1循環形態における必要供給流量の最大値(流量A+流量F)よりも小さくなる。
そのため第2循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置のコストを低減できるという利点がある。この利点は、流量Aまたは流量Fの値が比較的大きくなるラインヘッドであるほど大きくなり、ラインヘッドの中でも長手方向の長さが長いラインヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第1循環形態の方が、第2循環形態に対して有利になる点もある。すなわち第2循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、単位面積当たりの吐出量が少ない画像(以下、低Duty画像ともいう)であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。このため、流路幅が狭く高い負圧である場合、ムラの見えやすい低Duty画像で吐出口に高い負圧が印加されるため、インクの主滴に伴って吐出される所謂サテライト滴が多く発生して記録品位が低下する虞がある。
一方、第1循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは単位面積当たりの吐出量が多い画像(以下、高Duty画像ともいう)形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても視認されにくく、画像への影響は小さいという利点がある。これら2つの循環形態の選択は、液体吐出ヘッドおよび記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、およびヘッド内流路抵抗)に照らして好ましい選択を採ることができる。
(第3循環形態の説明)
図41は、本実施形態の記録装置に適用される循環経路の1形態である第3循環形態を示す模式図である。上記第1および第2循環形態と同様な機能、構成については説明を省略し、異なる点について主体的に説明する。
本循環形態では、液体吐出ヘッド3の中央部の2個所と、液体吐出ヘッド3の一端側の計3か所から液体吐出ヘッド3内に液体が供給される。液体は、共通供給流路211から各圧力室23を経た後に共通回収流路212に回収され、液体吐出ヘッド3の他端部にある回収開口から外部へ回収される。個別流路213は共通供給流路211および共通回収流路212と連通しており、各個別流路213の経路中に記録素子基板10およびその記録素子基板内に配される圧力室23が設けられている。よって、第1循環ポンプ1002で流す液体の一部は、供給流路211から記録素子基板10の圧力室23内を通過して、共通回収流路212へと流れる(図41の矢印)。これは、共通供給流路211に接続された圧力調整機構Hと、共通回収流路212に接続された圧力調整機構Lとの間に圧力差が設けられ、第1循環ポンプ1002が共通回収流路212のみに接続されているからである。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通回収流路212内を通過するような液体の流れと、共通供給流路211から各記録素子基板10内の圧力室23を通過し共通回収流路212に流れが発生する。このため、圧力損失の増大を抑制しつつ、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211から共通回収流路212への流れで記録素子基板10の外部へ排出することが出来る。また、本循環経路によれば、上記第1および第2の循環経路に比べて液体の輸送手段であるポンプの数を少なくすることが可能となる。
(液体吐出ヘッド構成の説明)
適用例1に係る液体吐出ヘッド3の構成について説明する。図5(a)および図5(b)は、本適用例に係る液体吐出ヘッド3を示した斜視図である。液体吐出ヘッド3は、1つの記録素子基板10でシアンC/マゼンタM/イエロY/ブラックKの4色のインクを吐出可能な記録素子基板10を直線上に15個配列(インラインに配置)されるライン型の液体吐出ヘッドである。
図5(a)に示すように液体吐出ヘッド3は、各記録素子基板10と、フレキシブル配線基板40および電気配線基板90を介して電気的に接続された信号入力端子91と電力供給端子92を備える。信号入力端子91および電力供給端子92は、記録装置1000の制御部と電気的に接続され、それぞれ吐出駆動信号および吐出に必要な電力を記録素子基板10に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号入力端子91および電力供給端子92の数を記録素子基板10の数に比べて少なくすることができる。これにより、記録装置1000に対して液体吐出ヘッド3を組み付ける時または液体吐出ヘッドの交換時に取り外しが必要な電気接続部数が少なくて済む。
図5(b)に示すように、液体吐出ヘッド3の両端部に設けられた液体接続部111は、記録装置1000の液体供給系と接続される。これによりシアンC/マゼンタM/イエロY/ブラックK4色のインクが記録装置1000の供給系から液体吐出ヘッド3に供給され、また液体吐出ヘッド3内を通ったインクが記録装置1000の供給系へ回収されるようになっている。このように各色のインクは、記録装置1000の経路と液体吐出ヘッド3の経路を介して循環可能である。
図6は、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットを示した分解斜視図である。液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220および電気配線基板90が筺体80に取り付けられている。液体供給ユニット220には液体接続部111(図3参照)が設けられるとともに、液体供給ユニット220の内部には、供給されるインク中の異物を取り除くため、液体接続部111の各開口と連通する各色別のフィルタ221(図2、図3参照)が設けられている。2つの液体供給ユニット220は、それぞれに2色分ずつのフィルタ221が設けられている。フィルタ221を通過した液体は、それぞれの色に対応して液体供給ユニット220上に配置された負圧制御ユニット230へ供給される。負圧制御ユニット230は、各色別の負圧制御弁からなるユニットであり、それぞれの内部に設けられる弁やバネ部材などの働きで液体の流量の変動に伴って生じる記録装置1000の供給系内(液体吐出ヘッド3の上流側の供給系)の圧損変化を大幅に減衰させる。これによって負圧制御ユニット230は、負圧制御ユニットよりも下流側(液体吐出ユニット300側)の負圧変化をある一定範囲内で安定化させることが可能である。各色の負圧制御ユニット230内には、図2で記述したように各色2つの負圧制御弁が内蔵されている。2つの負圧制御弁は、それぞれ異なる制御圧力に設定され、高圧側が液体吐出ユニット300内の共通供給流路211(図2参照)、低圧側が共通回収流路212(図2参照)と液体供給ユニット220を介して連通している。
筐体80は、液体吐出ユニット支持部81および電気配線基板支持部82とから構成され、液体吐出ユニット300および電気配線基板90を支持するとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を確保している。電気配線基板支持部82は、電気配線基板90を支持するためのものであり、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めによって固定されている。液体吐出ユニット支持部81は、液体吐出ユニット300の反りや変形を矯正して、複数の記録素子基板10の相対位置精度を確保する役割を有し、それにより記録物におけるスジやムラを抑制する。そのため液体吐出ユニット支持部81は、十分な剛性を有することが好ましく、材質としてはSUSやアルミなどの金属材料、もしくはアルミナなどのセラミックが好適である。液体吐出ユニット支持部81には、ジョイントゴム100が挿入される開口83、84が設けられている。液体供給ユニット220から供給される液体は、ジョイントゴムを介して液体吐出ユニット300を構成する第3流路部材70へと導かれる。
液体吐出ユニット300は、複数の吐出モジュール200、流路部材210からなり、液体吐出ユニット300の記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。ここで、カバー部材130は、図6に示したように長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131からは吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10および封止部材110(後述する図10参照)が露出している。開口131の周囲の枠部は、記録待機時に液体吐出ヘッド3をキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
次に、液体吐出ユニット300に含まれる流路部材210の構成について説明する。図6に示したように流路部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60および第3流路部材70を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路部材210は、吐出モジュール200から環流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための流路部材である。流路部材210は、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めで固定されており、それにより流路部材210の反りや変形が抑制されている。
図7(a)〜(f)は、第1〜第3流路部材の各流路部材の表面と裏面を示した図である。図7(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される側の面を示し、図7(f)は、第3流路部材70の、液体吐出ユニット支持部81と当接する側の面を示す。第1流路部材50と第2流路部材60とは、夫々の流路部材の当接面である図7(b)と図7(c)が対向するように接合し、第2流路部材と第3流路部材とは、夫々の流路部材の当接面である図7(d)と図7(e)が対向するように接合する。第2流路部材60と第3流路部材70を接合することで、各流路部材に形成される共通流路溝62、71とから、流路部材の長手方向に延在する8本の共通流路(211a、211b、211c、211d、212a、212b、212c、212d)が形成される。これにより色毎に共通供給流路211と共通回収流路212のセットが流路部材210内に形成される。共通供給流路211から液体吐出ヘッド3にインクが供給されて、液体吐出ヘッド3に供給されたインクは共通回収流路212によって回収される。第3流路部材70の連通口72(図7(f)参照)は、ジョイントゴム100の各穴と連通しており、液体供給ユニット220(図6参照)と流体的に流通している。第2流路部材60の共通流路溝62の底面には、連通口61(共通供給流路211と連通する連通口61−1、共通回収流路212と連通する連通口61−2)が複数形成されており、第1流路部材50の個別流路溝52の一端部と連通している。第1流路部材50の個別流路溝52の他端部には連通口51が形成されており、連通口51を介して複数の吐出モジュール200と流体的に連通している。この個別流路溝52により流路部材の中央側へ流路を集約することが可能となる。
第1〜第3流路部材は、液体に対して耐腐食性を有するとともに、線膨張率の低い材質からなることが好ましい。材質としては例えば、アルミナを用いることができる。また、LCP(液晶ポリマ)、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPSF(ポリサルフォン)や変性PPE(ポリフェニレンエーテル)を母材としてシリカ微粒子やファイバなどの無機フィラーを添加した複合材料(樹脂材料)を好適に用いることができる。流路部材210の形成方法としては、3つの流路部材を積層させて互いに接着してもよいし、材質として樹脂複合樹脂材料を選択した場合には、溶着による接合方法を用いてもよい。
図8は、図7(a)のα部を示しており、第1〜第3流路部材を接合して形成される流路部材210内の流路を第1の流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される面側から一部を拡大して示した透視図である。共通供給流路211と共通回収流路212とは、両端部の流路からそれぞれ交互に共通供給流路211と共通回収流路212とが配置されている。ここで、流路部材210内の各流路の接続関係について説明する。
流路部材210には、色毎に液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる共通供給流路211(211a、211b、211c、211d)および共通回収流路212(212a、212b、212c、212d)が設けられている。各色の共通供給流路211には、個別流路溝52によって形成される複数の個別供給流路213(213a、213b、213c、213d)が連通口61を介して接続されている。また、各色の共通回収流路212には、個別流路溝52によって形成される複数の個別回収流路214(214a、214b、214c、214d)が連通口61を介して接続されている。このような流路構成により各共通供給流路211から個別供給流路213を介して、流路部材の中央部に位置する記録素子基板10にインクを集約することができる。また記録素子基板10から個別回収流路214を介して、各共通回収流路212にインクを回収することができる。
図9は、図8のIX−IXにおける断面を示した図である。それぞれの個別回収流路(214a、214c)は連通口51を介して、吐出モジュール200と連通している。図9では個別回収流路(214a、214c)のみ図示しているが、別の断面においては図8に示すように個別供給流路213と吐出モジュール200とが連通している。各吐出モジュール200に含まれる支持部材30および記録素子基板10には、第1流路部材50からのインクを記録素子基板10に設けられる記録素子15に供給するための流路が形成されている。更に、支持部材30および記録素子基板10には、記録素子15に供給した液体の一部または全部を第1流路部材50に回収(環流)するための流路が形成されている。
ここで、各色の共通供給流路211は、対応する色の負圧制御ユニット230(高圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されており、また共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されている。この負圧制御ユニット230により、共通供給流路211と共通回収流路212間に差圧(圧力差)を生じさせるようになっている。このため、図8および図9に示したように、各流路を接続した本適用例の液体吐出ヘッド内では、各色で共通供給流路211〜個別供給流路213〜記録素子基板10〜個別回収流路214〜共通回収流路212へと順に流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図10(a)は、1つの吐出モジュール200を示した斜視図であり、図10(b)は、その分解図である。吐出モジュール200の製造方法としては、まず記録素子基板10およびフレキシブル配線基板40を、予め液体連通口31が設けられた支持部材30上に接着する。その後、記録素子基板10上の端子16と、フレキシブル配線基板40上の端子41とをワイヤーボンディングによって電気接続し、その後にワイヤーボンディング部(電気接続部)を封止部材110で覆って封止する。フレキシブル配線基板40の記録素子基板10と反対側の端子42は、電気配線基板90の接続端子93(図6参照)と電気接続される。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路部材210とを流体的に連通させる流路部材であるため、平面度が高く、また十分に高い信頼性をもって記録素子基板と接合できるものが好ましい。材質としては例えばアルミナや樹脂材料が好ましい。
(記録素子基板の構造の説明)
図11(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図を示し、図11(b)は、図11(a)のAで示した部分の拡大図を示し、図11(c)は、図11(a)の裏面の平面図を示す。ここで、本適用例における記録素子基板10の構成について説明する。図11(a)に示すように、記録素子基板10の吐出口形成部材12に、各インク色に対応する4列の吐出口列が形成されている。なお、以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列の列方向」と呼称する。図11(b)に示すように、各吐出口13に対応した位置には液体を熱エネルギーにより発泡させるための発熱素子である記録素子15が配置されている。隔壁22により、記録素子15を内部に備える圧力室23が区画されている。記録素子15は、記録素子基板10に設けられる電気配線(不図示)によって、端子16と電気的に接続されている。そして記録素子15は、記録装置1000の制御回路から、電気配線基板90(図6参照)およびフレキシブル配線基板40(図10参照)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱して液体を沸騰させる。この沸騰による発泡の力で液体を吐出口13から吐出する。図11(b)に示すように、各吐出口列に沿って、一方の側には液体供給流路18が、他方の側には液体回収流路19が延在している。液体供給流路18および液体回収流路19は記録素子基板10に設けられた吐出口列の列方向に伸びた流路であり、それぞれ供給口17a、回収口17bを介して吐出口13と連通している。
図11(c)に示すように、記録素子基板10の、吐出口13が形成される面の裏面にはシート状の蓋部材20が積層されており、蓋部材20には、液体供給流路18および液体回収流路19に連通する開口21が複数設けられている。本適用例においては、液体供給流路18の1本に対して3個、液体回収流路19の1本に対して2個の開口21が蓋部材20に設けられている。図11(b)に示すように蓋部材20の夫々の開口21は、図7(a)に示した複数の連通口51と連通している。蓋部材20は、液体に対して十分な耐食性を有している物が好ましく、また、混色防止の観点から、開口21の開口形状および開口位置には高い精度が求められる。このため蓋部材20の材質として、感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソプロセスによって開口21を設けることが好ましい。このように蓋部材20は、開口21により流路のピッチを変換するものであり、圧力損失を考慮すると厚みは薄いことが望ましく、フィルム状の部材で構成されることが望ましい。
図12は、図11(a)におけるXII−XIIにおける記録素子基板10および蓋部材20の断面を示す斜視図である。ここで、記録素子基板10内での液体の流れについて説明する。蓋部材20は、記録素子基板10の基板11に形成される液体供給流路18および液体回収流路19の壁の一部を形成する蓋としての機能を有する。記録素子基板10は、Siにより形成される基板11と感光性の樹脂により形成される吐出口形成部材12とが積層されており、基板11の裏面には蓋部材20が接合されている。基板11の一方の面側には、記録素子15が形成されており(図11参照)、その裏面側には、吐出口列に沿って延在する液体供給流路19および液体回収流路18を構成する溝が形成されている。基板11と蓋部材20とによって形成される液体供給流路18および液体回収流路19は、それぞれ流路部材210内の共通供給流路211と共通回収流路212と接続されており、液体供給流路18と液体回収流路19との間には差圧が生じている。吐出口13から液体を吐出して記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口では、この差圧によって基板11内に設けられた液体供給流路18内の液体が、供給口17a、圧力室23、回収口17bを経由して液体回収流路19へ流れる(図12の矢印C)。この流れによって、記録を休止している吐出口13や圧力室23において、吐出口13からの蒸発によって生じる増粘インク、泡および異物などを液体回収流路19へ回収することができる。また吐出口13や圧力室23のインクが増粘するのを抑制することができる。液体回収流路19へ回収された液体は、蓋部材20の開口21および支持部材30の液体連通口31(図10b)を通じて、流路部材210内の連通口51、個別回収流路214、共通回収流路212の順に回収されて、記録装置1000の回収経路へ回収される。つまり、記録装置本体から液体吐出ヘッド3へ供給される液体は、下記の順に流動し、供給および回収される。
液体は、まず液体供給ユニット220の液体接続部111から液体吐出ヘッド3の内部に流入する。そして液体は、ジョイントゴム100、第3流路部材に設けられた連通口72および共通流路溝71、第2流路部材に設けられた共通流路溝62および連通口61、第1流路部材に設けられた個別流路溝52および連通口51の順に供給される。その後、支持部材30に設けられた液体連通口31、蓋部材20に設けられた開口21、基板11に設けられた液体供給流路18および供給口17aを順に介して圧力室23に供給される。圧力室23に供給された液体のうち、吐出口13から吐出されなかった液体は、基板11に設けられた回収口17bおよび液体回収流路19、蓋部材20に設けられた開口21、支持部材30に設けられた液体連通口31を順に流れる。その後液体は、第1流路部材に設けられた連通口51および個別流路溝52、第2流路部材に設けられた連通口61および共通流路溝62、第3流路部材70に設けられた共通流路溝71および連通口72、ジョイントゴム100を順に流れる。そして液体は、液体供給ユニット220に設けられた液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ流動する。
図2に示す第1循環形態の形態においては、液体接続部111から流入した液体は、負圧制御ユニット230を経由した後にジョイントゴム100に供給される。また図3に示す第2循環形態の形態においては、圧力室23から回収された液体は、ジョイントゴム100を通過した後、負圧制御ユニット230を介して液体接続部111から液体吐出ヘッドの外部へ流動する。また液体吐出ユニット300の共通供給流路211の一端から流入した全ての液体が、個別供給流路213aを経由して圧力室23に供給されるわけではない。つまり、共通供給流路211の一端から流入した液体で、個別供給流路213aに流入することなく、共通供給流路211の他端から液体供給ユニット220に流動する液体もある。このように、記録素子基板10を経由することなく流動する経路を備えることで、本適用例のような微細で流抵抗の大きい流路を備える記録素子基板10を備える場合であっても、液体の循環流の逆流を抑制することができる。このように、本適用例の液体吐出ヘッド3では、圧力室23や吐出口近傍部の液体の増粘を抑制することができるので、吐出のヨレや不吐出を抑制することができ、結果として高画質な記録を行うことができる。
(記録素子基板間の位置関係の説明)
図13は、隣り合う2つの吐出モジュールにおける、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示した平面図である。本適用例では略平行四辺形の記録素子基板を用いている。各記録素子基板10における吐出口13が配列される各吐出口列(14a〜14d)は、液体吐出ヘッド3の長手方向に対し一定角度傾くように配置されている。そして、記録素子基板10同士の隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が記録媒体の搬送方向にオーバーラップするようになっている。図13では、線D上の2つの吐出口が互いにオーバーラップする関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合でも、オーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像の黒スジや白抜けを目立たなくすることができる。複数の記録素子基板10を千鳥配置ではなく、直線上(インライン)に配置した場合も、図13のような構成により液体吐出ヘッド10の記録媒体の搬送方向の長さの増大を抑えつつ記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、本適用例では記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、これに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(液体吐出ヘッド構成の変形例の説明)
図40、図42〜図44を参照して、液体吐出ヘッドの構成の変形例について説明する。上述した例と同様の構成および機能については説明を省略し、異なる点について主に説明する。本変形例では、図40、図42に示すように、液体吐出ヘッド3と外部との液体の接続部である複数の液体接続部111は、液体吐出ヘッドの長手方向の一端側に集約して配置されている。液体吐出ヘッド3の他端側には複数の負圧制御ユニット230が集約して配置されている(図43)。液体吐出ヘッド3に含まれる液体供給ユニット220は、液体吐出ヘッド3の長さに対応した長尺状のユニットとして構成され、供給する4色の液体に対応した流路およびフィルタ221を備える。また、図43に示すように、液体吐出ユニット支持部81に設けられる開口83〜開口86は、上述した液体吐出ヘッド3とは異なる位置に設けられている。
図44に流路部材50,60,70の積層状態を示す。複数の流路部材50,60、70の最上層である流路部材50の上面に複数の記録素子基板10が直線状に配列される。各記録素子基板10の裏面側に形成される開口21(図19)に連通する流路は、液体の色ごとに、個別供給流路213が2つ、個別回収流路214が1つとなっている。これに対応して、記録素子基板10の裏面に設けられる蓋部材20に形成される開口21も、液体の色ごとに供給開口21が2つ、回収開口21が1つとなっている。図44に示すように、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って延在する共通供給流路211と共通回収流路212とが交互に並列されている。
(適用例2)
以下、図面を参照して本発明の適用例2によるインクジェット記録装置2000および液体吐出ヘッド2003の構成を説明する。なお以降の説明においては、主として適用例1と異なる部分のみを説明し、適用例1と同様の部分については説明を省略する。
(インクジェット記録装置の説明)
図21は、本適用例を適用可能な、液体を吐出して記録を行うインクジェット記録装置2000を示した図である。本適用例の記録装置2000は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの各インクごとに対応した単色用の液体吐出ヘッド2003を4つ並列配置させることで記録媒体へフルカラー記録を行う点が適用例1とは異なる。適用例1において1色あたりに使用できる吐出口列数が1列だったのに対し、本適用例においては、1色あたりに使用できる吐出口列数は20列となっている。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。更に、不吐出になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して記録媒体の搬送方向に対応する位置にある、他列の吐出口から補完的に吐出を行うことで信頼性が向上し、商業記録などに好適である。適用例1と同様に、各液体吐出ヘッド2003に対して、記録装置2000の供給系、バッファタンク1003(図2、図3参照)およびメインタンク1006(図2、図3参照)が流体的に接続されている。また、それぞれの液体吐出ヘッド2003には、液体吐出ヘッド2003へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続されている。
(循環経路の説明)
適用例1と同様に、記録装置2000および液体吐出ヘッド2003間の液体の循環形態としては、図2または図3に示した第1および第2循環形態を用いることができる。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
図14(a)、(b)は、本適用例に係る液体吐出ヘッド2003を示した斜視図である。ここで、本適用例に係る液体吐出ヘッド2003の構造について説明する。液体吐出ヘッド2003は、液体吐出ヘッド2003の長手方向に直線上に配列される16個の記録素子基板2010を備え、1種類の液体で記録が可能なインクジェット式のライン型記録ヘッドである。液体吐出ヘッド2003は、適用例1と同様、液体接続部111、信号入力端子91および電力供給端子92を備える。しかしながら本適用例の液体吐出ヘッド2003は、適用例1に比べて吐出口列が多いため、液体吐出ヘッド2003の両側に信号出力端子91および電力供給端子92が配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減するためである。
図15は、液体吐出ヘッド2003を示した斜視分解図であり、液体吐出ヘッド2003を構成する各部品またはユニットをその機能毎に分割して示している。各ユニットおよび部材の役割や液体吐出ヘッド内の液体流通の順は、基本的に適用例1と同様であるが、液体吐出ヘッドの剛性を担保する機能が異なる。適用例1では主として液体吐出ユニット支持部81によって液体吐出ヘッド剛性を担保していたが、適用例2の液体吐出ヘッド2003では、液体吐出ユニット2300に含まれる第2流路部材2060によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。本適用例における液体吐出ユニット支持部81は、第2流路部材2060の両端部に接続されており、この液体吐出ユニット2300は記録装置2000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド2003の位置決めを行う。負圧制御ユニット2230を備える液体供給ユニット2220と、電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット2220内にはそれぞれフィルタ(不図示)が内蔵されている。
2つの負圧制御ユニット2230は、それぞれ異なる、相対的に高低の負圧で圧力を制御するように設定されている。また、液体吐出ヘッド2003の両端部にそれぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット2230を設置した場合、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延在する共通供給流路と共通回収流路における液体の流れが、延在方向に関して互いに対向する。その構成を、図14および図15に例示する。このような構成では、共通供給流路と共通回収流路の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。これによって、共通流路に沿って複数設けられる各記録素子基板2010における温度差が少なくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に、液体吐出ユニット2300の流路部材2210の詳細について説明する。図15に示すように流路部材2210は、第1流路部材2050と第2流路部材2060とを積層したものであり、液体供給ユニット2220から供給された液体を各吐出モジュール2200へと分配する。また流路部材2210は、吐出モジュール2200から環流する液体を液体供給ユニット2220へと戻すための流路部材として機能する。流路部材2210の第2流路部材2060は、内部に共通供給流路および共通回収流路が形成された流路部材であるとともに、液体吐出ヘッド2003の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第2流路部材2060の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましい。具体的にはSUSやTi、アルミナなど用いることができる。
図16(a)は、第1流路部材2050の、吐出モジュール2200がマウントされる面を示した図であり、図16(b)は、その裏面を示しており、第2流路部材2060と当接される面を示した図である。適用例1とは異なり、本適用例における第1流路部材2050は、各吐出モジュール2200毎に対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採ることで、複数のモジュールを配列させて、液体吐出ヘッド2003の長さに対応することができるので、例えばB2サイズおよびそれ以上の長さに対応した比較的ロングスケールの液体吐出ヘッドに特に好適に適用することができる。図16(a)に示すように、第1流路部材2050の連通口51は、吐出モジュール2200と流体的に連通し、図16(b)に示すように、第1流路部材2050の個別連通口53は、第2流路部材2060の連通口61と流体的に連通する。図16(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材2050と当接される面を示し、図16(d)は、第2流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図16(e)は、第2流路部材2060の、液体供給ユニット2220と当接する面を示す図である。第2流路部材2060の流路や連通口の機能は、適用例1の1色分と同様である。第2流路部材2060の共通流路溝71は、その一方が後述する図17に示す共通供給流路2211であり、他方が共通回収流路2212であり、夫々、液体吐出ヘッド2003の長手方向に沿って設けられており、その一端側から他端側に液体が供給される。本適用例は適用例1と異なり、共通供給流路2211と共通回収流路2212の液体の流れは互いに反対方向となっている。
図17は、記録素子基板2010と流路部材2210との液体の接続関係を示した透視図である。流路部材2210内には、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延びる一組の共通供給流路2211および共通回収流路2212が設けられている。第2流路部材2060の連通口61は第1流路部材2050の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第2流路部材2060の共通供給流路2211から連通口61を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給流路が形成されている。同様に、第2流路部材2060の連通口72から共通回収流路2212を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図18は、図17のXVIII−XVIIIにおける断面を示した図である。共通供給流路2211は、連通口61、個別連通口53、連通口51を介して、吐出モジュール2200へ接続されている。図18では不図示であるが、別の断面においては、共通回収流路2212が同様の経路で吐出モジュール2200へ接続されていることは、図17を参照すれば明らかである。適用例1と同様に、各吐出モジュール2200および記録素子基板2010には、各吐出口に連通する流路が形成されており、供給した液体の一部または全部が、吐出動作を休止している吐出口を通過して、環流できるようになっている。また適用例1と同様に、共通供給流路2211は、負圧制御ユニット2230(高圧側)と、共通回収流路2212は負圧制御ユニット2230(低圧側)と液体供給ユニット2220を介して接続されている。従ってその差圧によって、共通供給流路2211から記録素子基板2010の圧力室を通過して共通回収流路2212へと流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図19(a)は、1つの吐出モジュール2200を示した斜視図であり、図19(b)は、その分解図である。適用例1との差異は、記録素子基板2010の複数の吐出口列の列方向に沿った両辺部(記録素子基板2010の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置されている点である。これに伴い記録素子基板2010と電気接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板2010に対して2枚配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる吐出口列数が20列あり、適用例1の8列よりも大幅に増加しているためであり、端子16から記録素子までの最大距離を短くして記録素子基板2010内の配線部で生じる電圧低下や信号遅れを低減するためである。また支持部材2030の液体連通口31は、記録素子基板2010に設けられ全吐出口列を跨るように開口している。その他の点は、適用例1と同様である。
(記録素子基板の構造の説明)
図20(a)は、記録素子基板2010の吐出口13が配される面の模式図であり、図20(c)は、図20(a)の面の裏面を示す模式図である。図20(b)は図20(c)において、記録素子基板2010の裏面側に設けられている蓋部材2020を除去した場合の記録素子基板2010の面を示す模式図である。図20(b)に示すように、記録素子基板2010の裏面には吐出口列の列方向に沿って、液体供給流路18と液体回収流路19とが交互に設けられている。吐出口列数は、適用例1よりも大幅に増加しているものの、適用例1との本質的な差異は、前述のように端子16が記録素子基板の吐出口列の列方向に沿った両辺部に配置されていることである。各吐出口列毎に一組の液体供給流路18と液体回収流路19が設けられていること、蓋部材2020に、支持部材2030の液体連通口31と連通する開口21が設けられていることなど、基本的な構成は適用例1と同様である。
(適用例3)
本発明の適用例3によるインクジェット記録装置1000および液体吐出ヘッド3の構成を説明する。適用例3の液体吐出ヘッドは、B2サイズの被記録媒体に対して1スキャンで記録を行うページワイド型である。適用例3は適用例2と類似している点が多いため、以降の説明においては、主として第2適用例と異なる部分を説明し、第2適用例と同様の部分については説明を省略する。
(インクジェット記録装置の説明)
図45に本適用例のインクジェット記録装置の模式図を示す。記録装置1000は、液体吐出ヘッド3から被記録媒体に直接記録を行わず、一度、中間転写体(中間転写ドラム1007)に液体を吐出し画像を形成した後に、その画像を被記録媒体2に転写する構成である。記録装置1000では、CMYKの4種類のインクに夫々対応した4つの単色用の液体吐出ヘッド3が、中間転写ドラム1007に沿って円弧状に配置されている。これによって中間転写体上にフルカラー記録が行われ、その記録画像は、中間転写体上で適切な乾燥状態にされた後、紙搬送ローラー1009によって搬送される被記録媒体2へ、転写部1008で転写される。適用例2の紙搬送系は主にカット紙を意図した水平搬送であったのに対し、本適用例においては本体ロール(不図示)から供給される連続紙にも対応可能である。このようなドラム搬送系では、紙に一定の張力をかけながら搬送することが容易なため、高速記録時においても搬送ジャムが少ない。このため装置の信頼性が向上し、商業印刷などに好適である。第1および適用例2と同様、各液体吐出ヘッド3に対して、記録装置1000の供給系、バッファタンク1003およびメインタンク1006が流体的に接続される。また、それぞれの液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。
(第4循環形態の説明)
適用例2と同様に、記録装置1000のタンクと液体吐出ヘッド3との間における液体循環経路としては、図2または図3に示した第1および第2の循環経路も適用可能であるが、図46に示す循環経路が好適である。図3の第2の循環経路との主な差異は、第1循環ポンプ1001,1002および第2循環ポンプ1004各々の流路の流路に連通するバイパス弁1010が付加されていることである。このバイパス弁1010は予め設定された圧力を超過すると弁が開くことで、バイパス弁1010上流側の圧力を下げるという機能(第1の機能)を有する。また記録装置本体の制御基板からの信号によって、任意のタイミングで弁を開閉する機能(第2の機能)も有する。
第1の機能により、第1循環ポンプ1001,1002の下流側または第2循環ポンプ1004の上流側の流路に、過剰または過小な圧力が掛かることを抑制することができる。例えば、第1循環ポンプ1001,1002の機能に支障が発生した場合、過剰な流量や圧力が液体吐出ヘッド3に加わる場合がある。それにより液体吐出ヘッド3の吐出口から液体の漏洩が生じたり、液体吐出ヘッド3内の各接合部に破断が生じたりする虞がある。しかし本適用例のように、第1循環ポンプ1001、1002にバイパス弁が追加されている場合、過剰な圧力が発生した場合でも、バイパス弁1010が開くことで各循環ポンプ上流側へと液体経路が開放されるため、上記のようなトラブルを抑制できる。
また第2の機能により、循環駆動停止時には、第1循環ポンプ1001,1002および第2循環ポンプ1004の停止後に、本体側からの制御信号に基づいて、速やかに全てのバイパス弁1010を開放する。これにより、液体吐出ヘッド3の下流部(負圧制御ユニット230〜第2循環ポンプ1004の間)の高負圧(例えば、数〜数十kPa)を短時間に開放することができる。循環ポンプとしてダイヤフラムポンプなど容積型ポンプを使用した場合には、通常、ポンプ内に逆止弁が内蔵されている。しかしながら、バイパス弁を開くことで、下流側のバッファタンク1003側からも液体吐出ヘッド3の下流部の圧力解放を行える。上流側からだけでも液体吐出ヘッド3の下流部の圧力解放は行えるが、液体吐出ヘッドの上流側流路と液体吐出ヘッド内流路には圧力損失がある。そのため、圧力開放に時間が掛かり、過渡的に液体吐出ヘッド3内の共通流路内の圧力が下がり過ぎて、吐出口のメニスカスが破壊される恐れがある。液体吐出ヘッド3の下流側のバイパス弁1010を開くことで、液体吐出ヘッドの下流側の圧力解放が促進されるため、吐出口のメニスカス破壊のリスクが軽減される。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
本発明の適用例3に係る液体吐出ヘッド3の構造について説明する。図47(a)は本適用例に係る液体吐出ヘッド3の斜視図、図47(b)はその分解斜視図である。液体吐出ヘッド3は液体吐出ヘッド3の長手方向に直線状(インライン)に配列される36個の記録素子基板10を備え、1色の液体で記録を行うインクジェット式のページワイド型の記録ヘッドである。液体吐出ヘッド3は、適用例2同様、信号入力端子91および電力供給端子92を備える他、ヘッドの長手側面を保護するシールド板132が設けられている。
図47(b)は液体吐出ヘッド3の斜視分解図であり、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットがその機能毎に分割されて表示されている(シールド板132は不図示)。各ユニットおよび各部材の役割や、液体吐出ヘッド3内の液体流通の順は適用例2と同様である。適用例2との主な相違点は、複数分割されて配置された電気配線基板90、負圧制御ユニット230の位置、および第1流路部材の形状である。本適用例のように、例えばB2サイズの被記録媒体に対応した長さを有する液体吐出ヘッド3の場合、液体吐出ヘッド3の使用電力が大きいため、8枚の電気配線基板90が設けられる。各々の電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に取り付けられた長尺の電気配線基板支持部82の両側面に4枚ずつ取り付けられる。
図48(a)は、液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220および負圧制御ユニット230を備える液体吐出ヘッド3の側面図、図48(b)は液体の流れを示す概略図、図48(c)は図48(a)のG−G線部における断面を示す斜視図である。理解を容易にするために、一部の構成は簡略化している。
液体供給ユニット220内には液体接続部111とフィルタ221が設けられるとともに、負圧制御ユニット230が液体供給ユニット220の下方に一体化して形成されている。これによって負圧制御ユニット230と記録素子基板10との高さ方向の距離が、適用例2に比べて短くなっている。この構成により、液体供給ユニット220内の流路接続部の数が減り、記録液体の漏洩に対する信頼性が向上するだけでなく、部品点数や組み立て工程数も低減できるという利点がある。
また負圧制御ユニット230と吐出口が形成される面とにおける水頭差が相対的に小さくなるので、図45に示すような、液体吐出ヘッド3の傾斜角度が、各液体吐出ヘッドごとに異なるような記録装置へ好適に適応できる。水等差が小さくできるため、複数の液体吐出ヘッド3をことなる傾斜角で用いても、それぞれの記録素子基板の吐出口に加わる負圧差を低減できるためである。また負圧制御ユニット230から記録素子基板10間の距離が小さくなることでその間の流抵抗が小さくなるので、液体の流量変化による圧損差も小さくなり、より安定な負圧制御が行える点でも好ましい。
図48(b)は、液体吐出ヘッド3内部の記録液体の流れを示す模式図である。図46に示した循環経路と比べ、回路的には同じではあるが、図48(b)では、実際の液体吐出ヘッド3の各構成部品内での液体の流れを示している。長尺状の第2流路部材60内には、液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる一組の共通供給流路211および共通回収流路212が設けられている。共通供給流路211および共通回収流路212は互いに対向する方向に液体が流れるように構成されており、夫々の流路の上流側にはフィルタ221が設けられ、接続部111等から侵入する異物をトラップする。このように共通供給流路211および共通回収流路212は互いに対向する方向に液体を流すことで、液体吐出ヘッド3内の長手方向における温度勾配が軽減される点で好ましい。尚、図46においては説明を簡略化するために共通供給流路211と共通回収流路212との流れを同じ方向で示している。
共通供給流路211および共通回収流路212の下流側には、それぞれ負圧制御ユニット230が接続される。また、共通供給流路211の途中には複数の個別供給流路213aへの分岐部があり、共通回収流路212の途中には複数の個別回収流路213bへの分岐部がある。個別供給流路213aおよび個別回収流路213bは複数の第1流路部材50内に形成されており、夫々の個別流路は、記録素子基板10の裏面に設けられた蓋部材20の開口21(図19(c)参照)と連通している。
図48(b)にHとLで示した負圧制御ユニット230は、高圧側(H)と、低圧側(L)とをユニットである。それぞれの負圧制御ユニット230は、相対的に高(H)、低(L)の負圧で、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を制御するように設定された背圧型圧力調整機構である。共通供給流路211は負圧制御ユニット230(高圧側)と接続され、共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と接続されており、それにより共通供給流路211と共通回収流路212の間には差圧が発生する。その差圧によって、液体が、共通供給流路211から個別供給流路213a、記録素子基板10内の吐出口13(圧力室23)、個別回収流路213bを順に通過して共通回収流路212へと流れる。
図48(c)は図48(a)のG−G線部における断面を示す斜視図である。本適用例において個々の吐出モジュール200は、第1流路部材50、記録素子基板10、フレキシブル配線基板40から構成されている。本実施形形態においては適用例2で説明した支持部材30(図18)がなく、蓋部材20を備える記録素子基板10が直接第1流路部材50に接合される。第2流路部材に設けられる共通供給流路211は、その上面に形成される連通口61から、第1流路部材50の下面に形成される個別連通口53を介して、個別供給流路213aに供給される。その後液体は、圧力室23を経由して個別回収流路213b、個別連通口53、連通口61を順に経由して共通回収流路212へと回収される。
ここで、図15に示した適用例2とは異なり、第1流路部材50の下面(第2流路部材60側の面)にある個別連通口53は、第2流路部材60の上面に形成される連通口61に対して十分大きな開口となっている。この構成により、吐出モジュール200を第2流路部材60上にマウントする際に位置がズレた場合でも、第1流路部材と第2流部材間で確実に流体連通が行わるようになっているので、ヘッド製造時の歩留まりが向上しコストダウンが図れるようになっている。
なお、上記適用例の記載は本発明の範囲を限定するものではない。1例として、本適用例では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式について説明したが、ピエゾ方式およびその他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。
本適用例は、インク等の液体をタンクと液体吐出ヘッドとの間で循環させる形態のインクジェット記録装置(記録装置)について説明したが、その他の形態であってもよい。その他の形態は、例えばインクを循環せずに、液体吐出ヘッド上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへインクを流すことで、圧力室内のインクを流動させる形態であってもよい。
また本適用例は、記録媒体の幅に対応した長さを有する、所謂ライン型ヘッドを用いる例を説明したが、記録媒体に対してスキャンを行いながら記録を行う、所謂シリアル型の液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。シリアル型の液体吐出ヘッドとしては、例えばブラックインクを吐出する記録素子基板およびカラーインクを吐出する記録素子基板を各1つずつ搭載する構成が挙げられるが、これに限るのもではない。つまり、複数個の記録素子基板を吐出口列の列方向に吐出口がオーバーラップするよう配置した、記録媒体の幅よりも短い短尺の液体吐出ヘッドを作成し、それを記録媒体に対してスキャンさせる形態であってもよい。
以下に本発明の特徴を示す各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図22から図28を用いて、本発明の第1の実施形態における液体吐出ヘッドを説明する。なお、前述した適用例における液体供給流路は、実施形態における第1共通供給流路にあたる。同様に、液体回収流路は第1共通回収流路、第1連通口は開口、共通供給流路は第3共通供給流路、共通回収流路は第3共通回収流路にあたる。
図22は、本発明の実施形態における液体吐出ヘッドの要部の分解図である。図22(a)から(g)は、分解された構成要素の斜視図であり、図22(h)から(m)は、分解された構成要素である図22(b)から(g)に対応する平面図である。図23は、図22(a)に示される複数の吐出口列3024のうちの1つの吐出口列3024に着目して、その構造を模式的に示す図である。図23(a)から(d)は、図22(a)から(d)に対応する斜視図であり、図23(e)から(g)は、図22(h)から(j)に対応する平面図である。また、図24(a)は、図23(e)から(g)のXXIVa−XXIVa線に沿う断面図であり、図24(b)は、XXIVb−XXIVb線に沿う断面図である。図25は、本実施形態の液体吐出ヘッドの一部を切り出した等価回路図である。図26は、本実施形態の液体吐出ヘッドの一部を切り出した等価回路図と流路内の圧力分布とを説明する図である。図27は、本実施形態の記録素子基板の形状を説明する上面図である。図28は、吐出口列の端部を説明する模式的透過図である。
図22から図24に示すように本実施形態の液体吐出ヘッドは吐出口形成部材3012、第1流路層3011、第2流路層3050、第3流路層3060、第4流路層3070、第5流路層3080、および第6流路層3090からなる6つの積層流路構成を有する。
吐出口形成部材3012には、複数の吐出口3013が一列状に並ぶ吐出口列3024が複数設けられている。第1流路層3011には、吐出口3013に対応する位置に、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生する記録素子3015が設けられている。吐出口形成部材3012と第1流路層3011とは、圧力室3023および流路3310(図24)となる空間が間に形成されるように積層されている。液体吐出ヘッドは、記録素子3015が発生するエネルギーにより、圧力室3023内(流路3310内)にあるインク等の液体を、吐出口3013から吐出することが可能になっている。流路3310および圧力室3023の静的な状態での圧力は、吐出口3013において液体(インク)のメニスカスが張るように、負圧に保たれている。このような圧力室の圧力にばらつきが生じると、液体の吐出速度や吐出される液滴の体積などの吐出特性に影響が出てしまう。
図22に示すように、本実施形態では、複数の吐出口列3024は、600dpiの高密度に配置されている。第2流路層3050には、その主面に沿って第1共通供給流路3313、および第1共通回収流路3314が形成されている。第3流路層3060には第1連通口3315a(供給側連通口)、および第1連通口3315b(回収側連通口)が形成されている。第1流路層3011には、記録素子3015が配列される記録素子列と、液体を供給/回収するための貫通孔3017が配列される貫通孔列と、が形成されている。図24に示すように、これらの貫通孔3017は、供給口3017aと回収口3017bとを含んでいる。複数の供給口3017aは、記録素子3015が配される面に対して交差する方向(第2の方向)に延在して供給流路を成すと共に、吐出口列の列方向となる記録素子3015の配列方向(第1の方向)に沿うように配列されて、供給口列を形成している。同様に、複数の回収口3017bは、記録素子3015が配される面に対して交差する方向(第2の方向)に延在して供給流路を成すと共に、吐出口列の列方向となる記録素子3015の配列方向(第1の方向)に沿うように配列されて、回収口列を形成している。
図24に示すように、第1共通供給流路3313は、供給口3017aを介して流路3310および圧力室3023と連通している。同様に、第1共通回収流路3314は、回収口3017bを介して流路3310および圧力室3023と連通している。また、第1共通供給流路3313は、第3流路層3060に形成される第1連通口3315a(供給側連通口)から液体の供給を受ける。同様に、第1共通回収流路3314は、第3流路層3060に形成される第1連通口3315b(回収側連通口)と連通している。図22(d)および(j)に示すように、複数の第1連通口3315aは、吐出口列の列方向と交差する方向に配置されて、第1連通口列を形成している。複数の第1連通口3315bも、同方向に配列されて、第1連通口列を形成している。
第4流路層3070には、第2共通供給流路3331、および第2共通回収流路3332が形成されている。第5流路層3080には、第2連通口3333a(供給側連通口)、および第2連通口3333b(回収側連通口)が形成されている。第6流路層3090には、第3共通供給流路3335、および第3共通回収流路3336が形成されている。
第2流路層3050の第1共通供給流路3313は、一方の面側で複数の供給口3017aと連通し、他方の面側で第1連通口3315aと連通している。同様に、第2流路層3050の第1共通回収流路3314は、一方の面側で複数の回収口3017bと連通し、他方の面側で第1連通口3315bと連通している。また、第4流路層3070の第2共通供給流路3331は、一方の面側で第1連通口3315aと連通し、他方の面側で複数の第2連通口3333aと連通している。同様に、第4流路層3070の第2共通回収流路3332は、一方の面側で第1連通口3315bと連通し、他方の面側で第2連通口3333bと連通している。ここで、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの少なくとも一方は複数となっている。また、第6流路層3090の第3共通供給流路3336は、複数の第2連通口3333aと連通している。同様に、第6流路層3090の第3共通回収流路3336は、複数の第2連通口3333bと連通している。
複数の第1連通口3315a(供給側第1連通口)は、吐出口列の列方向(第1の方向)と交差する方向(第3の方向)に沿って配列して、供給側第1連通口列を形成している。複数の第1連通口3315b(回収側第1連通口)は、吐出口列の列方向(第1の方向)と交差する方向(第3の方向)に沿って配列して、回収側第1連通口列を形成している。
複数の第2連通口3333a(供給側第2連通口)は、吐出口列の列方向(第1の方向)に沿って配列して、供給側第2連通口列を形成している。複数の第2連通口3333b(回収側第2連通口)は、吐出口列の列方向(第1の方向)に沿って配列して、回収側第2連通口列を形成している。
複数の第2連通口3333aの配列密度、および複数の第2連通口3333bの配列密度は、複数の第1連通口3315aの配列密度、および複数の第1連通口3315bの配列密度より小さい。また、複数の第1連通口3315aの配列密度、および複数の第1連通口3315bの配列密度は、複数の供給口3017aの配列密度、および複数の回収口3017bの配列密度より小さい。第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314の夫々は、第1の方向に延在しており、第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314とは、第1の方向と交差する第3の方向に交互に並列している。第2共通供給流路3331と第2共通回収流路3332は、第1の方向と交差する第3の方向に沿って延在しており、第2共通供給流路3331と第2共通回収流路3332は第1の方向に交互に並列している。第3共通供給流路3335と第3共通回収流路3336は、前記第1の方向に沿って延在している。
本実施形の液体吐出ヘッドは、このように複数の流路層を積層することで、第6流路層3090から第1流路層3011に向かって流路の密度が徐々に高くなる構成とすることができる。これにより、記録素子基板および各流路部材の大型化を抑制しつつ、密度の高い複数の吐出口列を備える液体吐出ヘッドが提供可能である。
本実施形態の液体吐出ヘッドにおける液体(以下、インクであるものとする)の流れを説明する。外部から供給されるインクは、流入開口としての第3共通供給流路3336から液体流出ヘッドに流入する。流入したインクは、次いで、第2連通口3333a、第2共通供給流路3331、第1連通口3315a、第1共通供給流路3313、供給口3017aをこの順に経て、流路3310(圧力室3023)まで供給される。インクは、その後、回収口3017b、第1共通回収流路3314、第1連通口3315b、第2共通回収流路3332、第2連通口3333b、第3共通回収流路3336をこの順に経て、流出開口としての第3共通回収流路3336から外部へ流出される。
インクをこのように強制的に流れさせることにより、吐出ヘッド内でのインクの増粘を抑制することができ、その結果、インク吐出速度の低下や、記録されるドットの色材濃度の変調を抑制することができる。以下、本明細書において、このようなインクの強制的な流れを「インク循環流」と呼ぶ。
本実施形態は、各圧力室に流れるインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきを抑制するように、以下の構成となっている。つまり、図23に示すように、1つの第1共通供給流路3313に対して、第1連通口3315aが連通している。同様に、1つの第1共通回収流路3314に対して、第1連通口3315bが連通している。ここで、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの少なくとも一方は複数となっている。これらの第1連通口3315aおよび第1連通口3315bは、各圧力室3023に流れるインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきが、吐出特性に大きな影響が無い範囲に収まるように配置されている。特に、1つの吐出口列3024に関して、第1連通口3315aと第1連通口3315bとが吐出口列の列方向に関して交互に配置されている。交互に配置することで、第1連通口3315aと第1連通口3315bの間隔をより狭くすることができる。つまり、第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の流路幅が比較的狭い場合でも、各圧力室3023(各流路3310)に流れるインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきを抑制することが可能となる。
さらに、第1連通口3315aと第1連通口3315bとの配置の関係は以下のようになっている。まず、複数の圧力室3023(流路3310)のそれぞれに関して、圧力室3023(流路3310)を含む第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314との間の流路の流路抵抗をrとする。また、第1共通供給流路3313において、隣接する供給口3017a間(すなわち、供給流路間)の部分の流路の流路抵抗をRとする。同様に、第1共通回収流路3314において、隣接する回収口3017b間(すなわち、回収流路間)の部分の流路の流路抵抗をRとする。また、各流路3310(圧力室3023)を流れるインクの流量に関して、それらの平均流量をqとし、吐出特性に影響を与えない、つまり画像として着弾位置ズレや色ムラが影響無い範囲の最大流量と最小流量との流量差をΔqとして、両者の比をXとする。すなわち、流量比X=Δq/qとする。このとき、第1連通口3315は、第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の吐出口の数Nが以下の式を満たすように配置されている。
このような条件で第1連通口3315aと第1連通口3315bとを配置することにより、各圧力室3023(各流路3310)に流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきを、吐出特性に影響を与えない流量差に抑制することが可能となる。
図25を用いて、各圧力室3023に流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきを抑制する条件式(1)について、詳細に説明する。図25は、第1の方向に関して隣接する第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の部分を一部切り出した等価回路である。隣接する第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間に圧力室3023(流路3310)がN個含まれる場合を示している。
この場合、N個の圧力室3023のうちの第1連通口3315aに最も近い圧力室3023(図25の圧力室1)、および第1連通口3315bに最も近い圧力室3023に、最も多量のインクが流れる。また、N個の圧力室3023のうちの第1連通口3315aと第1連通口3315bとの中間の位置にある圧力室3023に流れるインクの流量が最小になることが分かっている。これらの最大流量および最小流量を、各々q1、q2とし、各圧力室3023を流れるインクの流量の平均値をqとすると、供給される全インク量Qは、Q=Nqとなる。
第1連通口3315aから、第1連通口3315aに一番近い圧力室3023(図25の圧力室1)を経由し、第1共通回収流路3314を通って第1連通口3315bへと到達するまでの圧力損失p1を以下に示す。
第1連通口3315aから第1共通供給流路3313を通り第1連通口3315aと第1連通口3315bの中間の位置にある圧力室(図25圧力室2)を経由し第1共通回収流路3314を通って第1連通口3315bへ到達するまでの圧力損失p2を以下に示す。
圧力損失p1と圧力損失p2とは等しいので、式(2)と式(3)とから、各圧力室を流れるインクの最大流量q1と最小流量q2との流量差Δq’について、下式が成り立つ。
ここで、吐出特性に影響を与えないようにするためには、各圧力室を流れるインクの最大流量と最小流量との流量差Δq’=q1−q2と各圧力室を流れるインクの平均流量qとの比が所定の流量比X以下に設定されることが必要である。そのためには、少なくとも下式で示す条件が必要となる。
式(5)を、第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の圧力室の数Nに着目して変形すると、式(1)になる。
本発明の実施形態では、インク循環流の流量をある割合以上に増減させると、吐出口の下部を流れるインク循環流によるインクの回収効果が変わり、吐出速度や吐出液滴体積が変化してしまったり、色材濃度の差異が大きくなってしまったりすることが分かっている。特に、本実施形態の非限定的な1例では、インク循環流のある流量に対して流量を1割程度増減させた場合に、吐出速度や吐出液滴体積が変化し、色材濃度の差異が大きくなった。また、この例では、最大流量と最小流量との流量差と平均流量との比Δq/qを、所定の流量比X0.2以下に設定した場合に、吐出特性や色材濃度に大きな影響が生じなくなった。
次に、図37を参照して、インク循環流の流量のばらつきの影響の1例を説明する。
図37は、各吐出口の下部を流れるインク循環流の流量(循環流量)と、各循環流量でインクを循環させつつインクの吐出を一定時間休止した後で1発目に吐出するインクの吐出速度との関係の非限定的な1例を示すグラフである。本例では、循環流量7000pl/s付近を境目として、循環流量が7000pl/s程度以上であるときは、定常時の吐出速度の9割以上の吐出速度で1発目からインクを吐出することができた。これに対して、循環流量が7000pl/s程度未満であるときは、1発目のインクの吐出速度が定常時の吐出速度の9割未満程度となった。インクの吐出速度が低減すると、吐出されたインクが記録媒体に到着する際(着弾時)の位置にズレが生じ、その結果、画質の低下が生じることとなる。
したがって、着弾時の位置ズレによる画質低下を防止するためには、一定時間休止後のインクの吐出速度の減少を抑制するように、循環流量をある程度大きくすることが有効である。
ここで、図36に、本発明の液体吐出ヘッドに適用可能なインク供給系の1例を示す。図36において、液体吐出ヘッド3003は、上流側の第1液体タンク3044および下流側の第2液体タンク3045とそれぞれ流体連通している。第1液体タンク3044は、第3共通供給流路3335へインクを供給する。供給されたインクは、各連通口を経由しながら第2共通供給流路3331および第1共通供給流路3313を通って圧力室3023(流路3310)に供給される。また、圧力室3023(流路3310)から、各連通口を経由しながら第1共通回収流路3314、および第2共通回収流路3332を通って、第3共通回収流路3336から第2液体タンク3045へと回収される。このような構造において、インク循環流を生じさせる手段としては、第1液体タンク3044と第2液体タンク3045の水頭差を用いる方法がある。また、第1液体タンク3044と第2液体タンク3045の圧力を制御し、第1液体タンク3044と第2液体タンク3045の圧力差を用いる方法もある。また、ポンプ等で流れを生じさせる方法もある。
しかしながら、循環流量を大きくするために第1液体タンク3044と第2液体タンク3045の圧力差を大きくしたりポンプ等で大きな流量を流したりする場合、吐出口の下部の圧力制御が困難になる傾向がある。よって、循環流量は、着弾時のインクの位置ズレによる画質低下および圧力制御の困難性の両方を考慮して、吐出速度が低下しすぎない程度になるべく小さくするとよい。
上述のように、本実施形態では、式(1)を満たすように、第1連通口3315aと第1連通口3315bとを少なくとも一方が複数となるように、第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314とにそれぞれ配置する。これによって、流体抵抗の比率r/Rを固定したまま、最大流量と最小流量との流量差と平均流量との比(流量比)Xの値を小さくすることができる。すなわち、第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の流路の幅を広げることをせずに、各圧力室3023を流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきを抑制することができる。よって、吐出口3013からの水分蒸発による液滴の吐出速度低下や色材濃度の変調を抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
同様に、本実施形態では、各圧力室3023の圧力の圧力室間でのばらつきを抑制することができる。第1共通供給流路3313や第1共通回収流路3314で生じる圧力損失は、吐出口列の列方向における各圧力室の圧力の圧力室間でのばらつきとなる。つまり、圧力のばらつきをΔPとすると、下式が成り立つ。
ここで、吐出特性に影響が出ない範囲で許容できる最大の圧力ばらつきをΔPmとすると、第1連通口3315aと第1連通口3315bとは、両者間の吐出口数Nが以下の式を満たすように配置されている。
このように、本実施形態では、式(7)を満たすように、複数の第1連通口3315aと複数の第1連通口3315bを、第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314にそれぞれ配置する。それにより、第1共通供給流路3313や第1共通回収流路3314の流路の幅を広げることをせずに、各圧力室の圧力の圧力室間でのばらつきを抑制することができる。よって、インクの吐出速度や吐出されるインクの液滴の体積のばらつきを抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
さらに、本実施形態は、高密度に配置された吐出口3013に対応する各圧力室に流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきや各圧力室の圧力の圧力室間でのばらつきを抑制するように、以下のようになっているとよい。つまり、図22に示すように、第2共通供給流路3331は、吐出口列3024の列方向(第1の方向)と交差する方向(第3の方向)に伸びていて、第3の方向に配列される複数の第1連通口3315aと連通している。同様に、第2共通回収流路3332は、吐出口列3024の列方向(第1の方向)と交差する第3の方向に伸びていて、第3の方向に配列される複数の第1連通口3315bと連通している。さらに、複数の第2共通供給流路3331は、第2連通口3333aを介して、第3共通供給流路3336として1つの流路にまとめられている。同様に、複数の第2共通第3共通回収流路3332は、第2連通口3333bを介して、第3共通回収流路3336として1つの流路にまとめられている。
このように、本実施形態では、吐出口形成部材3012に対して、第1流路層3011、第2流路層3050、第3流路層3060、第4流路層3070、第5流路層3080、および第6流路層3090の6層構造で、流路を連結している。これにより、高密度に配置された複数の吐出口列3024に対して狭いピッチで配置された複数の第1共通供給流路3313を、式(1)を満たすように第1連通口3315aを配置しながら、1つに取りまとめることができる。同様に、高密度に配置された複数の吐出口列3024に対して狭いピッチで配置された複数の第1共通回収流路3314を、式(1)を満たすように第1連通口3315bを配置しながら1つに取りまとめることができる。つまり、第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の流路幅を広げることなく、高密度な吐出口列を形成できる。また高密度に配置された複数の吐出口列3024の吐出口3013に対応する各圧力室23(流路3310)に流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきや各圧力室の圧力の圧力室間でのばらつきを抑制することができる。また、高密度に配置された吐出口3013に対して、各圧力室3023(流路3310)のインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきを抑制しながら、液体タンクからのインクの供給および液体タンクへのインクの回収を簡便に行うことができる。これにより、液体吐出ヘッドのコンパクト化だけでなく、この液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置のシステム全体がコンパクトになるという利点がある。
本実施形態は、各吐出口列3024に配置された圧力室3023の数が多く(例えば100個以上)、複数の吐出口列3024の配列密度(吐出口列と交差する方向の吐出口列の配置密度)が高密度である(例えば50dpi以上)場合に有効である。このような場合、圧力室と流路との流路抵抗の比率(r/R)が小さかったとしても(例えば1/1000程度)、インク循環流の流量のばらつきが大きくなってしまう傾向がある。つまり、それ以上に吐出口列を構成する吐出口の数を増加させたり吐出口列同士の間隔を狭くしたりする場合には、各圧力室のインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきを抑制するために、本発明の構成が有効となる。よって、特には、記録媒体の幅に対応した長さを有する液体吐出ヘッドであるラインヘッド、また、吐出口の配列密度が600dpi以上の液体吐出ヘッドに有効である。
次に、本実施形態において、多数の吐出口3013からインクを吐出する場合を説明する。本実施形態は、多数の吐出口3013からインクを吐出する場合において、休止している圧力室3023に流れるインク循環流の流量のばらつきを抑制するように、以下のようになっているとよい。吐出により各吐出口3013から吐出されるインクの流量をIとする。このとき、第1連通口3315aと第1連通口3315bとは、両者間の吐出口3013の数Nが以下の式を満たすように配置されている。
本実施形態では、このような条件で第1連通口3315aと第1連通口3315bを配置する。これにより、多数の吐出口3013からインクを吐出する場合において、休止している各圧力室3023に流れるインク循環流の圧力室間の流量のばらつきを、吐出特性に影響を与えない流量差に抑制することが可能となる。
図26を用いて、多数の吐出口3013からインクを吐出する場合において、休止している圧力室3023に流れるインク循環流の流量のばらつきを抑制する条件式(8)について、詳細に説明する。
吐出口3013からの水分蒸発による影響を抑制するのに十分な流量でインク循環流を流す場合において、多数の吐出口3013からインクを吐出する際の吐出量の方が、インク循環流の流量より多くなる場合がある。このような場合には、図26(a)に示すように、第1共通回収流路3314のインクが逆流することとなる。つまり、図26(a)では、第1共通供給流路3313においては、インクは、矢印で示されるように、第1連通口3315aから第1連通口3315bに向かう方向に流れている。また、多数の圧力室3023において、インクは、それぞれ流量Iで吐出口から吐出されている。それに伴い、第1共通回収流路3314においては、インクは、第1連通口3315bから第1連通口3315aに向かう方向に流れている。
このときの第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314の圧力分布の関係をグラフにしたのが、図26(b)である。グラフの横軸は、隣接する第1連通口3315aから第1連通口3315bに向かう相対的な位置Lを示し、縦軸は圧力Pを示す。図26(a)に示すような状態で圧力室3023からのインクの吐出を休止したときに、各圧力室に対して第1共通供給流路3313側と第1共通回収流路3314側とから供給されるインク量の比をt:1−tとする。このとき、第1共通供給流路3313で生じる圧力損失をΔPin1とし、第1共通回収流路3314で生じる圧力損失をΔPout1とすると、以下の2つの式が成り立つ。
また、各圧力室に対して第1共通供給流路3313側で生じる圧力をPinとし、第1共通回収流路3314側で生じる圧力をPoutとし、各圧力室の圧力のばらつきの最大値をΔPmaxとし、最小値をΔPminとする。このとき、ΔPmax=Pin−Pout+ΔPout1、およびΔPmin=Pin−Pout−ΔPin1であるから、インク循環流の流量のばらつきΔq’は、以下の式で示される。
インク循環流の流量のばらつきΔq’を所定の流量比X以下に設定するためには、以下の式で示される条件が必要となる。
式(12)を、第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の圧力室の数Nに着目して変形すると、式(8)になる。
ここで、本実施形態では、本発明の非限定的な実例として、液体吐出ヘッドの第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の流路幅を200μm、流路高さを500μmとした。また、吐出口列3024における吐出口3013を600dpiの密度で並ぶように配置し、吐出口3013下の流路3310の形状については、流路幅を30μm、流路高さを14μm、流路長さを100μmとした。この液体吐出ヘッドにおいて、吐出口の下部におけるインク循環流の流速を0.01m/sとし、吐出量5plおよび駆動周波数10kHzでインクを吐出する場合を検討した。この場合、第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の吐出口の数Nを約65個以下にすることで、流量のばらつきの影響を抑制することができた。
このように、本実施形態では、式(8)を満たすように第1連通口3315aと第1連通口3315bを少なくとも一方が複数として、第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314にそれぞれ配置する。これにより、流路抵抗の比率r/Rを固定したまま流量比Xの値を小さくすることができる。すなわち、第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の流路幅を広げることをせずに、多数の吐出口からインクを吐出する場合において、休止している圧力室3023(流路3310)を流れるインク循環流の流量のばらつきを抑制できる。よって、吐出口3013からの水分蒸発によるインクの液滴の吐出速度の低下や色材濃度の変調を抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
さらに本実施形態は、各圧力室に流れるインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきを抑制するように、以下の構成をとることが好ましい。つまり、吐出口列3024の列方向における両端部側に配置された第1連通口3315aまたは第1連通口3315bは、両端部側以外に配置された第1連通口3315aまたは第1連通口3315bよりも小さな形状(開口面積)を有する。
両端部側に配置された第1連通口3315aまたは第1連通口3315bからみると、吐出口列の列方向において片側のみに吐出口3013が配置されている。そのため、その第1連通口3315aまたは第1連通口3315bを通る全インク量Qは、吐出口列の列方向において両端部側とは異なる箇所に配置された第1連通口3315aまたは第1連通口3315bを通る全インク量よりも少なくなる。よって両端部側の第1連通口3315aまたは第1連通口3315bを中央部側に比べて小さな形状にし流路抵抗を大きくすることで、端部側とは異なる箇所に配置された第1連通口3315aまたは第1連通口3315bで生じる圧力損失に近づけることができる。よって、両端部側の第1連通口3315aまたは第1連通口3315bと連通する圧力室を通るインク循環流の流れと、それとは異なる第1連通口3315aまたは第1連通口3315bと連通する圧力室を通るインク循環流の流れの差を小さくすることができる。それにより各圧力室に流れるインク循環流の流量ばらつきをさらに抑制することが可能となる。
図27および図28を用いて、本実施形態のさらなる態様を説明する。本実施形態は、各圧力室3023に流れるインク循環流の流量ばらつきを抑制するように、以下のようになっている。
図27は、本実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板の上面図である。図27に示すように、本実施形態の記録素子基板3010では、吐出口列3024の端部と記録素子基板3010の端部との間の領域が大きい。例えばこの領域には、電気信号を記録素子基板3010と送受信するためのパットや駆動のための回路が配置されている。
図28は、本実施形態の液体吐出ヘッドの1つの吐出口列3024の一部を切り取った概略的な上面透過図である。図28中、矢印は、インク循環流の流れの向きを示す。図27に示すような記録素子基板3010の場合は、図28(a)および(b)に示すように、第1連通口3315bが、吐出口列3024の端部の吐出口3013に重なるように配置されている。これに対し、図28(c)は、第1連通口3315bが吐出口3013の端部に重ならない配置の例を示す。図28(a)および(b)の構成によれば、図28(c)の構成と比べて、吐出口列3024の端部の第1連通口3315aから圧力室3023を通って第1連通口3315bまでインクが流れる長さを短くすることができる。つまり図28(a)や図28(b)のように配置することにより、吐出口列3024の端部近傍における第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314で生じる最大圧力損失を小さくすることができる。そのため、各圧力室3023に流れるインク循環流の流量ばらつきを抑制することができる。なお、第1連通口3315bではなく、第1連通口3315aが吐出口列24の端部の吐出口に重なるように配置されている構成も同様に適用可能である。
図22を用いて、本実施形態のさらなる態様を説明する。本実施形態は、チップ(記録素子基板3010)内の温度分布を抑制するために以下のようになっている。つまり、図22(d)および(j)に示すように、吐出口列3024の列方向における両端部側の第1連通口3315は、共に第1連通口3315bになっている。
本実施形態の構成のように各圧力室のインクを強制対流させた場合、通常は、記録素子3015等から発せられた熱を液体(インク)が回収することにより、圧力室から流出する回収側のインクの温度が高くなってしまう。また、吐出口3013からの水分蒸発による影響を抑制するのに十分な流量でインク循環流を流していても、多数の吐出口3013からインクを吐出する際の吐出量の方が多くなる場合がある。その際には、第3共通回収流路3336を通って第1連通口3315bからもインクが供給されることとなる。つまり、多数の吐出口3013からインクを吐出する際に、第1連通口3315bから高温のインクが供給されることがある。このことにより、第1連通口3315a近辺よりも第1連通口3315b近辺の温度が高くなり、第1連通口3315a近辺の吐出口3013と第1連通口3315b近辺の吐出口3013との間に吐出速度の差が生じる。よって、吐出口列3024の両端部側の第1連通口3315のうち一端側が第1連通口3315a、他端側が第1連通口3315bといったように異なる種類が配置されている場合には、吐出口列3024全体で見るときに列方向に熱分布の傾きが生じる。そのため、チップ全体としての熱分布幅が大きくなってしまい、その結果、チップ全体として吐出特性にばらつきが生じてしまう。つまり、吐出口列3024の列方向の両端部側を同じ種類の流路である第1連通口3315bとすることにより、このような熱分布の傾きを抑制することができるため、吐出特性のばらつきを抑えることができる。
図22(d)および(j)においては、両端部側を共に第1連通口3315bとしたが、両端部側を共に第1連通口3315aとしても、同様に、熱分布の傾きを抑制する効果がある。しかしながら、図22(d)および(j)に示すように、吐出口列3024の列方向における両端部が共に第1連通口3315bになっていると好ましい。本実施形態の記録素子基板3010は、吐出口列3024の両端部と記録素子基板3010の端部との間の吐出口3013が配置されていない領域が大きく、インク吐出時に発生する熱はこの領域から放熱される。そのため、多数の吐出口3013からインクを吐出した際に、吐出口列3024の列方向の両端部では、他の箇所よりも温度が低くなる傾向がある。これに対して、両端部を共に第1連通口3315bとすることにより、温度の高いインクを両端部に供給することができ、両端部の温度をより高くすることができ、他の箇所との温度差を小さくすることができる。つまり、チップ全体としての熱分布幅を小さくできるため、吐出特性のばらつきを抑えることが可能となる。
なお、本実施形態では、第1連通口3315aと第1連通口3315を共に複数備える形態で説明したが、本発明は第1連通口3315aと第1連通口3315の少なくとも一方について複数備える形態であれば良い。つまり第1連通口3315aと第1連通口3315bの少なくとも一方を複数備えて、吐出特性のばらつきを抑える構成も本発明に含むものである。例えば、第1連通口3315aを2つ、第1連通口3315bを1つ備える構成も本発明に含まれる。また別の一例として、第1連通口3315aを1つ、第1連通口3315bを2つ備える構成も本発明に含まれる。
また、本発明の各実施形態における各流路層と部材構成の関係は本発明を制限するものではない。吐出口形成部材および第1流路層から第6流路層の各層構成において、夫々、別の部材を積層して液体吐出ヘッドを構成しても良く、また、複数の層を一体的に成形した部材として液体吐出ヘッドを構成しても良い。一例として次のような2つの構成例を挙げることができる。1つの構成例は、第1流路層3011と第2流路層3050は、前述した適用例における記録素子基板10として一体的に形成されている。具体的には記録素子3015が設けられたSi基板に、供給口3017a、回収口2017b、第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314が形成されている。第3流路層3060は蓋部材20または2020に形成し、第4流路層3070の一部を図10の支持部材30に形成する。第4流路層3070の他の一部は、図7における第1流路部材50に形成し、第5流路層3080と第6流路層3090の一部は、第2流路部材60に形成する。第6流路層3090の他の一部は、第3流路部材70に形成する。第2の構成例においては、第1流路層3011と第2流路層3050は、前述した適用例における記録素子基板10に形成されている。第3流路層3060は蓋部材20または2020に形成し、第4流路層3070の一部を支持部材2030に形成する。第4流路層3070の他の一部と第5流路層3080は、第1流路部材2050に形成し、第6流路層3090は第2流路部材2060に形成する。また、第1流路層3011は記録素子基板10に形成され、第2流路層3050は第2基板に形成されていてもよい。
(液体吐出ヘッドの作製工程)
図38に、本実施形態の液体吐出ヘッドの作製工程の1例を示す。図38に示すように、本例では、まず、ステップS91において、記録素子3015や必要な回路等が既に形成された記録素子基板3010上に、吐出口形成部材3012を配設して、吐出口を形成する(吐出口形成工程)。次いで、ステップS92において、記録素子基板3010の吐出口形成面とは反対側の面である裏面に、供給口3017aと回収口3017bとを形成する(裏面供給/回収流路形成工程)。次いで、ステップS93において、記録素子基板10の裏面に、供給口3017aと回収口3017bとを覆うように、蓋部材20を形成する(蓋部材形成工程)。次いで、ステップS94において、ステップS93により得られた積層構成を有する記録素子基板10を、ウエハ形態からチップ形態へと外形の加工をする(切断工程)。さらに、ステップS95において、ステップS94により得られたチップ形態の記録素子基板10を、支持部材30に接合する(接合工程)。
このように、本例では、接合工程(S95)の前に、蓋部材形成工程(S93)によって、記録素子基板3010(記録素子基板10)の裏面に第3流路層3060(蓋部材20)を形成する。これにより、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bを、基板をウエハ形態で加工するウエハ工程にて、形成することができる。ウエハ工程で蓋部材20を形成することにより、部材を機械加工や成形加工で作製する場合よりも部材の形状精度が良くなる。そのため、より微細な穴をより高密度に形成することが可能となる。また、蓋部材20をより薄くすることが可能となる。よって、吐出口を高密度に配置することができる。また、第1連通口3315aや第1連通口3315bの流路抵抗を低減させると共に、そのばらつきを低減することができる。よって、インク循環流を発生させる差圧を安定化することが可能となり、循環流量のばらつきを低減することが可能となる。
ここで、作製工程の観点から、蓋部材20はシリコン基板から成るとよい。つまり、ウエハ形態の記録素子基板10にウエハ形態のシリコン基板からなる蓋部材20を接合することができるため、ウエハを切断して得られるチップ毎に蓋部材20を接合するよりも工程の削減が可能となる。
あるいはまた、蓋部材20は樹脂フィルムから成るとよい。シリコン基板から成る場合と同様に、ウエハ形態の記録素子基板10にフィルム状の形態の樹脂をラミネートすることで蓋部材20を接合することができるため、チップ毎に蓋部材を接合するよりも工程の削減が可能となる。
ここで、本実施形で示した工程順や、工程の内容は本発明の1例であり、本発明を制限するものではない。つまり、吐出口の形成工程と、裏面供給/回収流路の形成工程と、蓋部材の形成工程と、切断工程と、の順序は本発明を制限するものではなく、接合工程(S95)の前に蓋部材形成工程(S93)があればよい。
(第2の実施形態)
図29から図32を参照して、本発明の第2の実施形態における液体吐出ヘッドを説明する。前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。
図29は、本発明の実施形態における液体吐出ヘッドの要部の分解図である。図29(a)から(g)は、分解された構成要素の斜視図であり、図29(h)から(m)は分解された構成要素の平面図である。
図30は、本実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板の形状を説明する上面図である。図31は、吐出口列の端部を説明するための液体吐出ヘッドの模式的透過図である。図32は、本実施形態の循環流量のばらつきを説明するための図である。図32(a)および(b)は、記録素子基板の上面透過図を示し、図32(c)および(d)は、第1共通供給流路と第1共通回収流路内における圧力分布のイメージ図である。
図30に示すように、本実施形態における記録素子基板4010は平行四辺形となっており、図27に示す第1の実施形態の記録素子基板3010の構成と比べて、吐出口列3024の端部と記録素子基板4010端部との間の領域が小さい。このような場合には、外部との電気信号の送受信を行うための記録素子基板4010に形成されるパットや駆動のための回路は、記録素子基板4010の長辺側に配置されている。本実施形態では、このような記録素子基板4010を用いる。これにより、複数の記録素子基板4010が千鳥状ではなく実質的に1列状に配置されたラインヘッドにおいても、記録素子基板4010同士の隣接部で、隣接する記録素子基板4010の吐出口列同士を容易に走査方向に対して重ね合わせることができる。ここで、走査方向とは、液体吐出ヘッドにより媒体に記録を行う際の、液体吐出ヘッドの媒体に対する相対的な移動方向をいう。また、実質的に1列状とは、液体吐出ヘッドの長尺方向(記録素子基板の配列方向)と走査方向との双方において、隣接する記録素子基板4010がいずれも部分的に重なり合って配置されているということである。
図30に示すように、第2の実施形態では、記録素子基板4010の端部近傍まで吐出口3013が配される。図28(a)および(b)で説明したように、第1の実施形態では、記録素子基板3010の吐出口列の端部と重なる位置に、第1連通口3315aや第1連通口3315bを配置していた。しかしながら、第2の実施形態の形態においては、第1の実施形態とは異なり、記録素子基板4010の吐出口列の端部と重なる位置に第1連通口3315aや第1連通口3315bを配置することは、部材形成上困難である。よって、図31に示すように、吐出口列3024の端部よりも吐出口列の列方向における中央側に離れた位置に第1連通口3315aおよび第1連通口3315bが配置されている。
本実施形態は、各圧力室間(流路間)に流れるインク循環流の流量のばらつき、各圧力室(流路)の圧力のばらつき、記録素子基板4010内の温度分布を抑制するために、以下のようになっている。つまり、図29に示すように、吐出口列3024の列方向の両端部側に第1連通口3315aを配置している。
図32は、多数の吐出口から液体を吐出した際の様子の1例を示した図である。図32(a)および(b)において、矢印はインクの流れの向きを示し、ΔPin2、ΔPout2、ΔPin3、ΔPout3はそれぞれの流路で生じる圧力損失を示している。図32(c)は、図32(a)の状態に対応する圧力分布を示し、図32(d)は、図32(b)の状態に対応する圧力分布を示す。図32(c)および(d)において、実線は第1共通供給流路3313内の圧力を示し、2点鎖線は第1共通回収流路3314内の圧力を示す。
図32(a)に示すように、吐出口列の列方向の端部の第1連通口3315が第1連通口3315aとなっているときの、吐出口列3024の端部での第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314との差圧をΔP2とする。同様に、図32(b)に示すように、吐出口列の列方向の端部の第1連通口3315が連通口3315bとなっているときの、吐出口列3024の端部での第1共通供給流路3313と第1共通回収流路3314との差圧をΔP3とする。このとき、それぞれ下記式のようになっている。
ΔP2=(Pin−ΔPin2)−(Pout−ΔPout2)=(Pin−Pout)+(ΔPout2−ΔPin2) ・・・式(13)
ΔP3=(Pin−ΔPin3)−(Pout−ΔPout3)=(Pin−Pout)−(ΔPin3−ΔPout3) ・・・式(14)
ここで、吐出口列の端部と第1連通口3315(第1連通口3315aおよび第1連通口3315b)との位置的な関係から、圧力損失は、ΔPout2>ΔPin2、およびΔPin3>ΔPout3となる。これにより、差圧ΔP2は初期の吐出していない際の初期差圧(Pin−Pout)よりも大きくなり、差圧ΔP3は初期差圧よりも小さくなる。差圧が小さくなるとインク循環流が小さくなり、吐出口からの水分蒸発による液滴の吐出速度の低下や色材濃度の変調を抑制する効果が小さくなるため、差圧が大きくなる場合よりも影響が大きい。よって、吐出口列3024の列方向の両端部に第1連通口3315aを配することで、流量ばらつきの影響を低減することができる。
また、第1連通口3315aは、インク循環流を生じさせるために第1連通口3315bよりも圧力が高くなるようにされており、それにより、インクの吐出時にインクを供給し易くなっている。インクを供給し易い第1連通口3315aを、吐出口列3024端部の近くに配置する。それにより、多数の吐出口からインクを吐出した際に第1共通供給流路3313や第1共通回収流路3314で生じる圧力損失を、インク連通口3315bを吐出口列24の端部の近くに配置した際と比較して小さくできる。
また、図30に示すように、本実施形態では、第1の実施形態とは異なり、記録素子基板4010において、吐出口列3024の列方向の両端部と記録素子基板4010の端部との間の、吐出口が無い(記録素子が無い)領域が小さい。
このような構造の場合、吐出時に発生する熱のこの領域からの放熱が制限される。逆に、第1連通口3315aや第1連通口3315bから吐出口列3024の列方向端部までの第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314の長さが長くなる。長い流路を流れるインクは記録素子基板4010から熱を受け取り易く、多数の吐出口3013からインクを吐出した際に、吐出口列3024の列方向の両端部では他の箇所よりも温度が高くなる傾向がある。また、流路の長さに起因して、吐出時に各流路に生じる圧力損失も大きくなり、吐出口列3024端部での圧力のばらつきが大きくなる傾向がある。
これに対して、本実施形態では、吐出口列3024の両端部側に共に第1連通口3315aを配置する。これにより、吐出口列3024の列方向の端部近傍の吐出口3013には、より近くに配置されている第1連通口3315である第1連通口3315aから、第1連通口3315bからよりも多くのインクが供給されることとなる。よって、多数の吐出口3013からインクを吐出する際に、第1連通口3315bからの高温のインクが供給される量が少なくなるため吐出口列3024の端部の昇温を低減することができる。
このように、本実施形態においては、吐出口列3024の列方向の両端部側を共に第1連通口3315aとすることで、流量のばらつきの影響や圧力のばらつきやチップ内温度分布を小さくすることができる。よって、吐出口からの水分蒸発による液滴の吐出速度低下や色材濃度の変調を抑制したり、吐出特性のばらつきを抑制したりすることができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
次に、図39を用いて、本実施形態における記録素子基板4010全体の温度分布について説明する。図39は、吐出口列3024の列方向における全吐出口から吐出した際の温度分布を示したグラフである。記録素子基板4010は、摂氏50度で温調制御されている状態である。
インク循環流の流量よりも吐出によって吐出口から吐出されるインクの流量の方が大きい場合について説明する。第1連通口3315aおよび第1連通口3315bにおけるインク循環流の流れの向きは、吐出口3013に向けた流れとなっている。また、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bにおけるインクの流量は、第1連通口3315aの方が多い傾向となっている。
図39(a)および(b)は、1つの吐出口列3024における、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの位置と温度との関係について示したグラフである。
図39(a)は、比較例として、1つの吐出口列3024に対して第1連通口3315aおよび第1連通口3315bがそれぞれ1つ配置されている場合の温度分布を示す。第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314を流れるインクは、記録素子基板4010から熱を受け取るため、連通口から離れた流路の中央部の温度が高くなっている。また、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの温度を比較すると、第1連通口3315aの方が、インク循環流の流量が大きいため、温度が低くなっている。
なお、第1連通口3315bにおいて吐出口3013に向かってインクが逆流することがない条件の場合でも、第1連通口3315bには、流路を流れて記録素子基板から熱を受け取ったインクが流れるため、第1連通口3315aの方の温度が低くなる傾向がある。
図39(b)は、本実施形態における、1つの吐出口列に対して第1連通口3315aと第1連通口3315bとがそれぞれ複数個、交互に配置されている場合の温度分布を示す。
本実施形態では、第1連通口3315aおよび第1連通口3315bがそれぞれ複数個配置されている。そのため、図39(a)の比較例と比べて、隣接する第1連通口3315aと第1連通口3315bとの間の距離が短い。よって、インクが第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314を流れる長さが短くなり、流路を流れている間に記録素子基板から熱を受け取ることによるインクの昇温が小さくなっている。本例では、特に、第1連通口3315bの温度は、第1連通口3315aの温度と同じような温度となっている。
本実施形態では、さらに、第1連通口3315aと第1連通口3315bとが吐出口列の列方向関して交互に並んでいるため、インクが第1共通供給流路3313および第1共通回収流路3314を流れる最大長さが短くなっている。このことからも、流路を流れている間に記録素子基板から熱を受け取ることによるインクの昇温が小さくなっている。
このように、本実施形態においては、1つの吐出口列に対して第1連通口3315aと第1連通口3315bとがそれぞれ複数個交互に配置されていることにより、図39(a)に示す比較例と比べて、記録素子基板4010内での温度差を小さくすることができる。よって、吐出特性のばらつきを抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
図39(c)は、複数の吐出口列3024に対する第1連通口3315aと第1連通口3315bとが記録素子基板4010の平行四辺形の輪郭に合わせてずれて配置されている場合の、それぞれの吐出口列3024での連通口の温度の分布を示す。図中、吐出口形成部材および吐出口は記載が省略されている。
吐出口列の位置による各吐出口列自体の温度の絶対値の違いはあるが、複数の吐出口列間での吐出口列の列方向における第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの位置ズレに合わせて、温度が高い位置と低い位置とがずれていることが分かる。
図39(d)は、図39(c)の温度分布を複数の吐出口列3024の列が並ぶ方向に関して平均したグラフである。各吐出口列における温度が高い位置と低い位置がずれているため、平均化すると記録素子基板4010内の温度差は、図39(c)の全ての吐出口列を個別に考えた際の温度差よりも小さくなっている。よって、記録媒体の走査方向(液体吐出ヘッドと記録媒体との相対的な走査方向)が吐出口列3024の列方向の向きと交差する方向(特に、垂直方向)だとすると、温度差による吐出特性のばらつきの影響を平均化することができる。
このように、本実施形態では、複数の吐出口列に対する第1連通口3315aおよび第1連通口3315bの吐出口列の列方向における位置が、吐出口列間でずれて配置されている。これにより、第1連通口3315aと第1連通口3315bの配置位置に起因する温度差を平均化することができる。よって、吐出特性のばらつきを抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
(第3の実施形態)
図33は、本発明の第3の実施形態における液体吐出ヘッドを説明する図であり、前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。図33は、本発明の実施形態における液体吐出ヘッドの要部の分解図である。図33(a)から(f)は斜視図であり、図33(g)から(l)は平面図である。
本実施形態では、図33に示すように、1つの第1共通供給流路5313が2つの吐出口列3024に配置された圧力室3023に連通している。同様に1つの第1共通回収流路5314が2つの吐出口列3024に配置された圧力室3023に連通している。つまり、図33(g)および(h)に示すように、隣接する2つの吐出口列3024の間には、1つの第1共通供給流路5313または1つの第1共通回収流路5314が位置付けられている。
本実施形態は第1の実施形態の効果に加えて以下の点で好ましい。つまり、隣接する2つの吐出口列の第1共通供給流路5313および第1共通回収流路5314を共有化することにより、流路間の隔壁の数を減らすことができる。また、流路抵抗は流路幅の2乗に比例するので、同じ吐出口数Nの場合に、第1の実施形態における第1共通供給流路3313または第1共通回収流路3314の2本分の流路幅より小さい流路幅で2つの吐出口列に対して式(1)を成り立たせることができる。また、同じ吐出口列間隔の場合に、1つの吐出口列に対する式(1)の第1共通供給流路5313または第1共通回収流路5314の流路抵抗Rを小さくすることができ、吐出口数Nを大きくすることができる。
これらのことにより、各圧力室に流れるインク循環流の流量のばらつきや各圧力室の圧力のばらつきをさらに抑制しながら、上述した実施形に比べて吐出口列3024をさらに高密度に配置することができる。そのため、記録素子基板の大きさ(チップサイズ)を低減することが可能となる。また、吐出口列3024の密度を同じとした場合には、各圧力室に流れるインク循環流の流量の圧力室間でのばらつきや各圧力室の圧力の圧力室間でのばらつきをさらに抑制しながら、第1連通口3315aや第1連通口3315bの数を低減することができる。したがって、液体吐出ヘッドの流路構造をより簡便にすることが可能となる。
(第4の実施形態)
図34は、本発明の第4の実施形態における液体吐出ヘッドを説明する図であり、前述した実施形態と同様の部分については、同一符号を付して説明を省略する。図34は、本発明の実施形態における液体吐出ヘッドの要部の分解図である。図34(a)から(g)は斜視図であり、図34(h)から(m)は平面図である。
図34に示すように、本実施形態では、1つの液体吐出ヘッド内に異なる色または異なる種類のインクを吐出するためのインク1用の吐出口6051とインク2用の吐出口6061が配置されている。第1流路部材3050には、インク1用の第1共通供給流路6052、インク2用の第1共通供給流路6062、インク1用の第1共通回収流路6053、インク2用の第1共通回収流路6063が形成されている。また、第2流路部材3060には、インク1用の第1連通口6054a、インク2用の第1連通口6064a、インク1用の第1連通口6054b、インク2用の第1連通口6064bが形成されている。さらに、第3流路部材3070には、インク1用の第2共通供給流路6056、インク2用の第2共通供給流路6066、インク1用の第2共通回収流路6057、インク2用の第2共通回収流路6067が形成されている。また、第4の流路部材3080には、インク1用の第2連通口6058a、インク2用の第2連通口6068a、インク1用の第2連通口6058b、インク2用の第2連通口6068bが形成されている。そして、第5の流路部材3090には、インク1用の第3共通供給流路6070、インク2用の第3共通供給流路6080、インク2用の第3共通回収流路6071、インク2用の第3共通回収流路6081が形成されている。それぞれのインク1,2に関して、第3の実施形態と同様に、第3共通供給流路6070,6080から供給されたインクが圧力室3024(流路3310)を通って第3共通回収流路6071,6081から流出されるように連通している。
なお、第3の実施形態のように、1つの第1共通供給流路が2つの吐出口列に配置された圧力室に連通している形態も取り得る。同様に1つの第1共通回収流路が2つの吐出口列に配置された圧力室に連通している形態も取り得る。
また、インク1用の第3共通供給流路6070および第3共通回収流路6071と、インク2用の第3共通供給流路6080および第3共通回収流路6081とを、第6流路層3090が記録素子基板3010よりも大きくなるような大きさに設けてもよい。つまり、第6流路層3090は、例えば、吐出口列3024列方向と交差する方向(例えば垂直の方向)に幅広くなる形態も取り得る。
また本実施形態のように、1つの液体吐出ヘッドで異なる色の液体を吐出するような場合、以下の構成とすることで混色を抑制しつつ、液体吐出ヘッドの小型化が可能となる。詳細には図34(c)、(i)において同色の液体を供給する第1共通供給流路6052と第1共通回収流路6053との間の間隔(両流路を仕切る壁の厚み)を異なる色の液体を供給する流路間の間隔(両流路を仕切る壁の厚み)よりも小さくすることが好適である。より詳細には、同色間の流路間の間隔を、インク1用の液体を供給する第1共通供給流路6052と、それに隣接する、インク2用の液体を回収する第1共通回収流路6053との間隔より小さくする。
このように、多色インク用または多種類インク用の液体吐出ヘッドにおいても、第1共通供給流路および第1共通回収流路の幅を広げることをせずに、各圧力室間を流れるインク循環量のばらつきや各圧力室の圧力ばらつきを抑制することができる。よって、吐出口からの水分蒸発による液滴の吐出速度低下や色材濃度の変調を抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。
(第5の実施形態)
図35は、本発明を適用可能な各種の液体吐出ヘッドの例を示した外観斜視図である。
図35(a)は、本発明を適用可能な1枚の記録素子基板の形態の液体吐出ヘッドの例を示す。この液体吐出ヘッドは、記録媒体に対して往復移動を繰り返しながら記録を行う。第6流路層7090上に第5流路層7080が配置され、その上に第4流路層7070が配置されている。さらに第3流路層7060および第2流路層7050を含む記録素子基板7010が、支持部材7030上に配置されている。
図35(b)および(c)は、複数の記録素子基板7010が千鳥状に配置されたラインヘッドの形態の液体吐出ヘッドの例を示す。図35(b)では、各記録素子基板7010は、共通の支持部材7032に配置されている。また、図35(c)では、各記録素子基板7010は、それぞれ個別の支持部材7034に配置されている。
図35(d)および(e)は、複数の記録素子基板7010が一列状に配置されたラインヘッドの形態の液体吐出ヘッドの例を示す。図35(d)では、各記録素子基板7010は、共通の支持部材7032に配置されている。また、図35(e)では、各記録素子基板7010は、それぞれ個別の支持部材7034に配置されている。この場合の記録素子基板7010は、第4の実施形態における記録素子基板4010のような形状であるとよい。
このような本実施形態の各種の液体吐出ヘッドは、前述したインク循環流を生じさせることができる。それにより、各圧力室間を流れるインク循環量のばらつきや各圧力室の圧力ばらつきを抑制することができる。よって、吐出口からの水分蒸発による液滴の吐出速度低下や色材濃度の変調を抑制することができるため、より高精細で高品位な画像形成が可能となる。