以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。即ち、本発明に係る画像処理装置及び画像処理方法、並びに、プログラムの実施形態について説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態では、撮影対象の被検査物として被検眼を適用した例について説明を行うが、本発明においては、被検眼以外の物を被検査物として適用することも可能である。また、以下に示す本発明の実施形態では、本発明に係る画像処理装置として光干渉断層撮影装置を適用した例について説明を行うが、本発明に係る画像処理装置は、以下に示す光干渉断層撮影装置の全ての構成については必ずしも備えていなくてもよい。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
<光干渉断層撮影装置の概略構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の概略構成の一例を示す図である。本実施形態においては、この光干渉断層撮影装置100は、本発明に係る画像処理装置に相当するものである。
光干渉断層撮影装置100は、図1に示すように、撮像部110と、画像処理・制御部120と、表示部130を有して構成されている。
撮像部110は、画像処理・制御部120の制御に基づいて、被検査物である被検眼の撮像(撮影)を行う撮像手段である。画像処理・制御部120は、光干渉断層撮影装置100の動作を統括的に制御するとともに、撮像部110による撮像により得られた画像を画像処理する。表示部130は、画像処理・制御部120の制御に基づいて、画像処理・制御部120で処理された画像等を表示する表示手段である。
次に、撮像部110の内部構成について説明する。
図2は、図1に示す撮像部110の内部構成の一例を示す図である。
図2において、対物レンズ201は、被検眼Erに対向して設置されている。また、第1ダイクロイックミラー202及び第2ダイクロイックミラー203は、対物レンズ201の光軸上に配置されている。これらのダイクロイックミラー202及び203によって、OCT光学系の光路OP1、被検眼Erの観察を行うためのSLO光学系と固視灯用の光路OP2、及び、前眼部観察用の光路OP3に、光の波長帯域毎に分岐される。
SLO光学系と固視灯用の光路OP2には、SLO走査部204、レンズ205及び206、ミラー207、第3ダイクロイックミラー208、フォトダイオード209、SLO光源210、及び、固視灯211が配置されている。
ミラー207は、穴あきミラーや中空のミラーが蒸着されたプリズムであり、SLO光源210による照明光と、被検眼Erからの戻り光とを分離する。第3ダイクロイックミラー208は、SLO光源210からの光路と固視灯211からの光路とを波長帯域毎に分離する。
SLO走査部204は、SLO光源210と固視灯211から発せられた光を被検眼Er上で走査するものであり、X方向に走査するXスキャナ及びY方向に走査するYスキャナから構成されている。本実施形態では、SLO走査部204は、Xスキャナが高速走査を行う必要があるためにポリゴンミラーによって構成され、Yスキャナがガルバノミラーによって構成されている。
レンズ205は、SLO光源210及び固視灯211からの光の焦点合わせのため、不図示のモータによって駆動される。SLO光源210は、780nm付近の波長の光を発生する。フォトダイオード209は、被検眼Erからの戻り光を電気信号として検出する。固視灯211は、可視光を発生して被検者の被検眼Erの固視を促すための光を発生する。
SLO光源210から発せられた光は、第3ダイクロイックミラー208で反射され、ミラー207を通過し、レンズ206及び205を通り、SLO走査部204によって被検眼Er上で走査される。そして、被検眼Erからの戻り光は、投影光と同じ経路を戻った後、ミラー207によって反射され、フォトダイオード209へと導かれる。
固視灯211から発せられた光は、第3ダイクロイックミラー208及びミラー207を透過し、レンズ206及び205を通り、SLO走査部204によって被検眼Er上で走査される。このとき、SLO走査部204の動きに合わせて固視灯211を点滅させることによって、被検眼Er上の任意の位置に任意の形状の光を与え、被検者の固視を促す。
前眼部観察用の光路OP3には、レンズ212、スプリットプリズム213、レンズ214、及び、前眼部観察用のCCD215が配置されている。
CCD215は、不図示の前眼部観察用光源の光の波長、具体的には970nm付近の光の波長に感度を持つものである。
スプリットプリズム213は、被検眼Erの瞳孔と共役な位置に配置されており、被検眼Erと撮像部110のZ方向(前後方向)との距離を、前眼部のスプリット像として検出することができる。
被検眼Erの断層画像を撮像するためのOCT光学系の光路OP1には、XYスキャナ216、レンズ217及び18が配置されている。
XYスキャナ216は、OCT光源220からの光を被検眼Er上で走査するためのものである。XYスキャナ216は、1枚のミラーとして図示してあるが、X方向及びY方向の2軸方向の走査を行うガルバノミラーである。
レンズ217は、光ファイバー221から出射するOCT光源220からの光を、被検眼Erに焦点合わせするためのものであり、不図示のモータによって駆動される。この焦点合わせによって、被検眼Erからの戻り光は、同時に光ファイバー221の先端に、スポット状に結像されて入射されることとなる。
さらに、光カプラー219、OCT光源220、光カプラー219に接続され一体化している光ファイバー221〜224、レンズ225、分散補償用ガラス226、参照ミラー227、及び、分光器230が配置されている。
光ファイバー222を介してOCT光源220から出射された光は、光カプラー219において、測定光と参照光に分割される。ここで、光カプラー219は、測定光源であるOCT光源220から発せられた光を測定光と参照光とに分割する分割手段を構成する。そして、測定光は、光ファイバー221、OCT光学系の光路OP1から対物レンズ201までを通じて被検眼Erに向けて出射される。この被検眼Erに向けて出射された測定光は、被検眼Erにおいて反射散乱し、同じ行路を通じて反射光として光カプラー219に達する。一方、参照光は、光ファイバー223、レンズ225及び分散補償用ガラス226を通じて、参照ミラー227に向けて出射される。そして、参照ミラー227から反射した参照光は、同じ光路を通じて光カプラー219に達する。
このようにして、光カプラー219に達した測定光と参照光は、光カプラー219において、合波されて干渉光となる。ここで、光カプラー219は、測定光の被検眼Erからの反射光と参照光とを合成する合成手段を構成する。そして、測定光の光路長と参照光の光路長とがほぼ同一となったときに(光路長が等しくなったときに)、干渉を生じる。参照ミラー227は、不図示のモータ及び駆動機構によって光軸方向に調整可能に保持され、被検眼Erによって変わる測定光の光路長に参照光の光路長を合わせることが可能である。干渉光は、光ファイバー224を介して分光器230に導かれる。
分光器230は、レンズ231及び233、回折格子232、及び、ラインセンサ234を有して構成されている。光ファイバー224から出射された干渉光は、レンズ231を介して平行光となった後、回折格子232で分光され、レンズ233によってラインセンサ234に結像される。
本実施形態では、干渉系としてマイケルソン干渉系を想定しているが、マッハツェンダー干渉系を用いてもよい。例えば、測定光と参照光との光量差に応じて、光量差が大きい場合にはマッハツェンダー干渉系を用い、光量差が比較的小さい場合にはマイケルソン干渉系を用いることが望ましい。
次に、画像処理・制御部120の内部構成について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態を示し、図1に示す画像処理・制御部120の内部構成の一例を示す図である。ここで、図3に示す第1の実施形態における画像処理・制御部120を、「画像処理・制御部120−1」と称する。また、図3には、図1に示す表示部130も図示している。
画像処理・制御部120−1は、画像取得部301、撮影モード設定部302、ゲート位置検出部303、層認識部304、第1の領域設定部305、第2の領域設定部306、位置合わせ部307、加算平均画像生成部308、及び、制御部310を有する。
画像取得部301は、撮像部110のフォトダイオード209とラインセンサ234、画像処理・制御部120−1の制御部310に接続されている。画像取得部301は、SLO走査部204を用いて被検眼ErをX方向及びY方向に走査した際にフォトダイオード209から得られる複数のデータからSLO画像を生成して取得する。
また、画像取得部301は、ラインセンサ234から得られるデータをフーリエ変換し、得られるデータを輝度情報或いは濃度情報に変換することによって、被検眼Erの深さ方向(Z方向)の断層画像を取得する。このようなスキャン方式をAスキャン、得られる断層画像をAスキャン画像と呼ぶ。このAスキャンを被検眼Erの所定の横断方向にXYスキャナ216を用いて行うことによって、複数のAスキャン画像を取得することができる。例えば、XYスキャナ216をX方向に走査すればXZ面における断層画像が得られ、XYスキャナ216をY方向に走査すればYZ面における断層画像が得られる。このように被検眼Erを所定の横断方向に走査する方式をBスキャン、得られる断層画像をBスキャン画像と呼ぶ。
本実施形態においては、画像取得部301は、例えば、被検眼ErのBスキャン画像として、基準とする基準断層画像(第1の断層画像)と、それ以外の断層画像である検出対象断層画像(第2の断層画像)を取得する。
画像取得部301で取得された各種の画像は、記憶制御部311により記憶部311aに記憶されたり、表示制御部312により表示部130に表示されたりする。
撮影モード設定部302は、制御部310に接続されている。撮影モード設定部302は、後述する図4の撮影画面400を介して検者が複数の撮影モードの中から選択した1つの撮影モードを設定する。本実施形態では、撮影モード設定部302で設定され得る撮影モードには、被検眼Erの黄斑疾患用の撮影モードや緑内障用の撮影モード等が含まれる。撮影モード設定部302で設定された撮影モードに係る撮影モード情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
ゲート位置検出部303は、上述した測定光の光路長と上述した参照光の光路長とが等しくなる位置であるゲート位置を検出する。ゲート位置検出部303で検出されたゲート位置に係るゲート位置情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
層認識部304は、制御部310に接続されている。層認識部304は、記憶制御部311を介して記憶部311aから複数の断層画像を取得し、その輝度情報から被検査物である被検眼Erの層構造を認識する。例えば、層認識部304は、基準断層画像(第1の断層画像)に基づいて被検眼Erの層構造を認識する。層認識部304で認識された被検眼Erの層構造に係る層構造情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
第1の領域設定部305は、制御部310に接続されている。第1の領域設定部305は、撮影モード設定部302により設定された撮影モード(或いは、当該撮影モードに加えて層認識部304により認識された被検眼Erの層構造)に基づいて、基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する。或いは、第1の領域設定部305は、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置(或いは、当該ゲート位置に加えて層認識部304により認識された被検眼Erの層構造)に基づいて、基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する。第1の領域設定部305で設定された基準領域に係る基準領域情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
第2の領域設定部306は、制御部310に接続されている。第2の領域設定部306は、検出対象断層画像内(第2の断層画像内)の領域であって第1の領域設定部305で設定された基準領域との評価尺度の比較において所定の条件を満たす該当領域を設定する。ここで、本実施形態では、評価尺度としては、例えば、基準領域との類似度や基準領域との相違度を用いることができる。第2の領域設定部306で設定された該当領域に係る該当領域情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
位置合わせ部307は、制御部310に接続されている。位置合わせ部307は、第1の領域設定部305で設定された基準領域と検出対象断層画像(第2の断層画像)との類似度(または相違度)を示す情報に基づいて、基準断層画像(第1の断層画像)と検出対象断層画像(第2の断層画像)との位置合わせを行う。具体的に、位置合わせ部307は、第1の領域設定部305で設定された基準領域と第2の領域設定部306で設定された該当領域との位置が合うように、基準断層画像(第1の断層画像)と検出対象断層画像(第2の断層画像)との位置合わせを行う。位置合わせ部307による位置合わせに係る位置合わせ情報は、必要に応じて、記憶制御部311により記憶部311aに記憶される。
加算平均画像生成部308は、制御部310に接続されている。加算平均画像生成部308は、位置合わせ部307により位置合わせが行われた基準断層画像(第1の断層画像)と検出対象断層画像(第2の断層画像)とを加算平均処理して、加算平均画像を生成する。加算平均画像生成部308により生成された加算平均画像は、記憶制御部311により記憶部311aに記憶されたり、表示制御部312により表示部130に表示されたりする。
制御部310は、撮像部110と、表示部130と、画像処理・制御部120の各構成部(301〜308)に接続されている。制御部310は、光干渉断層撮影装置100における動作を統括的に制御する。また、制御部310は、記憶部311aを含む記憶制御部311と、表示制御部312を有して構成されている。
記憶制御部311は、画像処理・制御部120の各構成部(301〜308)で得られた各種の画像や各種の情報を記憶部311aに記憶する制御を行う。
表示制御部312は、画像処理・制御部120の各構成部(301〜308)で得られた各種の画像や各種の情報を表示部130に表示する制御を行う。例えば、表示制御部312は、加算平均画像生成部308により生成された加算平均画像を表示部130に表示させる。
<断層画像の撮像方法>
撮像部110は、XYスキャナ216を制御することで、被検眼Erの所定部位の断層画像を撮像することができる。ここで、断層画像を撮像するための測定光を被検眼Er中で走査する軌跡のことをスキャンパターン(走査パターン)と呼ぶ。このスキャンパターンには、例えば、1点を中心として縦横十字にスキャンを行うクロススキャンや、エリア全体を塗りつぶすようにスキャンして結果として3次元画像(ボリューム画像)を得る3Dスキャン等がある。被検眼Erの特定の部位について詳細な観察を行いたい場合にはクロススキャンが適しており、被検眼Erの網膜全体の層構造や層厚を観察したい場合には3Dスキャンが適している。
ここでは、3Dスキャンを実行した場合の撮像方法を説明する。まず、図2に示すX方向に測定光のスキャン(走査)を行い、被検眼ErにおけるX方向の撮像範囲から所定の撮像本数の情報をラインセンサ234で撮像する。X方向のある位置で得られるラインセンサ234上の輝度分布を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)し、FFTで得られた線状の輝度分布を、表示部130に示すために濃度情報に変換して、画像を得る。これをAスキャン画像と呼ぶ。また、この複数のAスキャン画像を並べた2次元の画像をBスキャン画像と呼ぶ。1つのBスキャン画像を構成するための複数のAスキャン画像を撮像した後、Y方向のスキャン位置を移動させて、再びX方向のスキャンを行うことにより、複数のBスキャン画像を得る。
複数のBスキャン画像、或いは、複数のBスキャン画像から構築した3次元画像(ボリューム画像)を表示部130に表示することで、検者が被検眼Erの診断を行うことができる。ここでは、X方向のBスキャン画像を複数得ることで3次元画像を構築する例を示したが、Y方向のBスキャン画像を複数得ることで3次元画像を構築するようにしてもよい。このとき、フーリエ変換の原理上の特性から、特定の位置、具体的には測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる位置であるゲート位置を基準とした対象形となる断層画像が形成される。また、ゲート位置を基準とした周期的な断層画像が形成される。そのため、検者に観察しやすい断層画像とするために、特定の領域(画像領域)を切り出して表示することが必要である。また、ゲート位置から遠ざかるほど信号強度が弱まるため、着目したい被対象物の位置によって、ゲート位置を変更することが必要である。
<撮影画面の構成>
図4は、図1に示す表示部130に表示される撮影画面400の一例を示す図である。
この撮影画面400は、所望の被検眼像を得るために、各種の設定及び調整を行う画面であり、撮像前(撮影前)に表示部130に表示される画面である。
図4において、患者情報表示領域401は、当該撮影画面で撮影を行う患者の情報、例えば、患者ID、患者名、年齢、性別等を表示する領域である。切り替えボタン402は、被検眼Erの左右を切り替える際に操作されるボタンであり、LボタンまたはRボタンを選択することにより、左右眼の初期位置に撮像部110を移動させることができる。撮影モード設定領域403は、現在設定されている撮影モードを表示する領域である。撮影モードを変更する際には、検者は、メニュー404をクリックすることで不図示のプルダウンメニューを表示させ、予め決められた撮影モードの中から所望の撮影モードを選択する。走査パターン表示領域405は、現在設定されている撮影モードで行う走査パターンの概要、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、クロススキャン等を表示する領域である。
前眼部観察画面410は、前眼部観察用のCCD215によって得られた画像を表示する画面である。検者が、この前眼部観察画面410上の任意の点をマウスでクリックすることで、その点が前眼部観察画面410の中心になるように撮像部110を移動させることができ、撮像部110と被検眼Erとの位置合わせが行えるようになっている。
2次元画像表示画面420は、フォトダイオード209によって得られた被検眼Erの2次元画像を表示する画面である。
断層画像表示画面430及び断層画像表示画面440は、取得された断層画像を確認するための表示画面である。
開始ボタン461は、このボタンが操作されると、2次元画像並びに断層画像の取得が開始され、2次元画像表示画面420並びに断層画像表示画面430及び440に取得した被検眼Erの画像がリアルタイムで表示される。このとき、2次元画像表示画面420内に表示される横向きの矢印線421は、断層画像表示画面430に表示されている断層画像を取得している被検眼Er上の位置及びスキャン方向を示している。また、2次元画像表示画面420内に表示される縦向きの矢印線422は、断層画像表示画面440に表示されている断層画像を取得している被検眼Er上の位置及びスキャン方向を示している。ここで、断層画像表示画面430の外枠431及び断層画像表示画面440の外枠441は、画像領域を示している。断層画像表示画面430の外枠431及び断層画像表示画面440の外枠441の上辺は、測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる位置であるゲート位置であり、下辺は、上辺から所定の長さだけ離れた位置である。
また、それぞれの画面の近傍に配置されているスライダは、調整を行うためのものである。具体的に、スライダ451は、被検眼Erに対する撮像部110のZ方向の位置を調整するためのものであり、スライダ452は、フォーカス調整を行うためのものであり、スライダ453は、コヒーレンスゲートの位置を調整するためのものである。ここで、フォーカス調整は、被検眼Erの眼底に対する合焦調整を行うために、レンズ205及び217を図2に示す方向に移動する調整である。また、コヒーレンスゲート調整は、断層画像を断層画像表示画面430及び440の所望の位置で観察するために、参照ミラー227を図2に示す方向に移動する調整である。これにより、OCT光学系における測定光の光路長と参照光の光路長との光路長差が変更されるため、断層画像表示画面430及び440中の断層画像は上下方向に移動し、検者は断層画像表示画面430及び440の所望の位置に断層画像を配置することができる。これらの調整操作により、検者は、最適な撮影が行える状態を創出することができる。また、撮影ボタン462は、各種の調整が終了したときに、このボタンが操作されることで所望の撮影が行われるものである。
次に、撮影モードについて説明する。撮影モードは、測定光を被検査物上で走査する際の様々な走査パターン(更にはゲート位置の情報も含めてもよい)で構成されている。走査パターンには多種の軌跡、例えば、ラインスキャンやクロスラインスキャン、複数ラインスキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン等がある。様々な病変に対して適切な検査を行うためには、これらの中から適切な走査パターンを決定する必要がある。また、病変によっては、複数の走査パターンを用いて検査することが必要である。本実施形態においては、記憶部311aに、予め検査したい病変に適した撮影モードが記憶されている。例えば、黄斑部の疾患であれば、横方向のBスキャンを縦方向に順次走査する3Dスキャンや水平及び垂直方向のクロススキャン等の撮影モードが記憶されている。また、緑内障疾患であれば、縦方向のBスキャンを横方向に順次走査する3Dスキャンや水平及び垂直方向のクロススキャン等の撮影モードが記憶されている。このように、予め各病変に適した撮影モードを予め用意しておくことで、様々な病変に対してもそれぞれに適した検査を行うことができる。
<反射散乱光>
次に、OCT光源220による測定光の被検眼Erでの反射散乱光について図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、或る被検眼Erの網膜におけるBスキャン画像の一例を示す図である。図5の上方は被検眼Erの硝子体側であり、図5の下方は被検眼Erの脈絡膜側であり、図5の上方からOCT光源220の測定光が入射される。
図5には、神経線維層L1、網膜色素上皮L2、血管部P1、網膜色素上皮L2が局所的に凸凹している病変部P2、正常な神経線維層L1の部分P3、神経線維層L1が局所的に薄くなっている部分P4が示されている。
まず、血管部P1について説明すると、この血管部P1は、血管の収縮・拡張の拍動によって画像輝度の変化が起こるため、同一箇所の断層画像を複数枚取得する場合には各断層画像で血管部P1の描写が異なるものとなる。したがって、血管部P1が広範囲に存在するテンプレートを用いて位置ずれ検出する場合には、位置ずれが無くとも計算される上述した類似度は、低い値(逆に相違度を計算する場合は高い値)となる。
次いで、病変部P2に着目すると、図5中の病変部P2は、画像輝度が低くなっている。その理由は、病変部P2をAスキャンするためのOCT光源220の測定光をE2で示すと、測定光E2の病変部P2における反射散乱光は正反射方向R2が一番強く、一方、図5の上方に位置する撮像部110の方向への反射散乱光は少ないからである。なお、正反射方向R2は、病変部P2の法線と測定光E2とのなす角である入射角A2によって決まる。
このように、Aスキャン時の測定光の対象物への入射角が大きい場合、そのAスキャンによって描写される対象物の画像輝度は低くなってしまう。画像輝度が低いということは、レーザースペックルやラインセンサ234から発生するノイズの影響を受けやすいということである。したがって、病変部P2のようにAスキャン時の測定光の入射角が大きい状態で描写された対象物が広範囲に存在するテンプレートを用いて位置ずれ検出する場合、位置ずれが無くとも計算される上述した類似度は、低い値(逆に相違度を計算する場合は高い値)となる。
一方、病変部P2とは対照的に病変部P2以外の網膜部、例えば正常な神経線維層L1の部分P3は、Aスキャン時の測定光と対象物との入射角が小さくなる。図5中のE3は正常な神経線維層L1の部分P3を測定するためのOCT光源220の測定光、R3は測定光E3の正常な神経線維層L1の部分P3における正反射方向の反射散乱光を示している。測定光E3の正常な神経線維層L1の部分P3における正反射方向の反射散乱光R3は、図5の上方に位置する撮像部110の方向へ向かうので、取得される断層画像も画像輝度が高く、網膜部の断層が鮮明に描写される。したがって、正常な神経線維層L1の部分P3のようにAスキャン時の測定光の入射角が小さい状態で描写された対象物が広範囲に存在するテンプレートを用いて位置ずれ検出する場合、位置ずれ有りの時に上述した類似度は低い値を取り、位置ずれ無しの時に上述した類似度は高い値を取る。
また、神経線維層L1が局所的に薄くなっている部分P4のような部位は、そもそも測定光に対して反射散乱を生じる物質が少ないため、Aスキャンによって描写される対象物の画像輝度は低くなってしまう。したがって、上述のようにノイズの影響を受けやすくなり、位置ずれが無くとも計算される上述した類似度は、低い値となる可能性がある。
血管部P1のような画像の輝度変化が起こる対象物や、病変部P2のようなAスキャン時の測定光の入射角が大きい状態で描写された対象物、神経線維層L1が局所的に薄くなっている部分P4のようなそもそも反射散乱光が生じにくい対象物について、これらがテンプレート内に広範囲に存在する場合には、位置ずれが無くとも計算される上述した類似度は、低い値(逆に相違度を計算する場合は高い値)を取り、位置ずれが有る場合との区別がつかずに位置ずれ検出精度が悪くなる。なお、ここでは、該当対象物がテンプレート内に広範囲する場合に類似度が低くなると述べたが、広範囲に存在しなくともテンプレート内に存在する割合に応じて、上述した類似度は影響を受けて低い値になる。
<光干渉断層撮影装置の処理手順>
図6−1は、本発明の第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
被検眼Erの撮影を開始する前に、検者が図4に示す撮影画面400のメニュー404等から撮影モードを選択すると、ステップS101において、撮影モード設定部302は、検者が複数の撮影モードの中から選択した1つの撮影モードを設定する。ここでは、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合について説明する。
続いて、ステップS102において、撮像部110は、制御部310の制御に基づいて、被検眼Erに対して測定光を照射して同一の走査位置を複数回走査する、被検眼Erの撮影を行う。そして、画像取得部301は、撮像部110から、被検眼Erの同一箇所の断層画像を複数枚取得する。ここで取得される断層画像は、Bスキャン画像であるものとする。
続いて、ステップS103において、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像の中から1枚の断層画像を選択し、選択した1枚の断層画像を基準断層画像(第1の断層画像)として設定する。また、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像のうち、基準断層画像以外の断層画像を検出対象断層画像(第2の断層画像)として設定する。
続いて、ステップS104において、層認識部304は、ステップS103で設定された基準断層画像に基づいて被検眼Erの層構造を解析して認識を行う。ここで、被検眼Erの層構造の解析は、各層の反射率の違いにより信号強度が異なることを利用することで各層を識別する。
続いて、ステップS105において、第1の領域設定部305は、ステップS101で設定された撮影モードに基づいて、ステップS103で設定された基準断層画像内から基準領域を設定する。具体的に、第1の領域設定部305は、ステップS101で設定された撮影モードと、ステップS104で認識された被検眼Erの層構造とに応じて、ステップS103で設定された基準断層画像内から基準領域を設定する。このステップS105の処理について図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態を示し、基準断層画像内から基準領域を設定する処理、及び、検出対象断層画像内から該当領域を設定する処理の一例を示す図である。この図7は、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の例を示している。
図7(a)は、基準断層画像内から基準領域を設定する処理の一例を示す図である。図7(a)には、基準断層画像710、及び、基準領域R10が示されている。ここで、基準領域R10の設定方法について詳述する。
第1の領域設定部305は、まず、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、ステップS101で設定された撮影モードである黄斑疾患用の撮影モードの情報に基づいて、特定の層である網膜色素上皮L2を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、選択した網膜色素上皮L2から第1の距離Y11だけ硝子体側の位置である第1の位置R11と、当該第1の位置R11から第1の距離Y11よりも長い第2の距離Y12だけ脈絡膜側の位置である第2の位置R12を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C1から距離X13だけ左側の位置R13、及び、画像中心部C1から距離X14だけ右側の位置R14を設定する。そして、第1の領域設定部305は、第1の位置R11、第2の位置R12、左側の位置R13及び右側の位置R14で囲まれた領域を基準領域R10として設定する。
ここで、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から選択する特定の層は、撮影モードによって予め決められているものであり、その情報は記憶部311aに予め記憶されている。また、基準領域R10の上下方向の位置を決めている第1の距離Y11及び第2の距離Y12の向き及び大きさも、撮影モードによって予め決められているものであり、その情報は記憶部311aに予め記憶されている。さらに、画像中心部C1の位置並びに距離X13及びX14も、撮影モードによって予め決められているものであり、その情報は記憶部311aに予め記憶されている。なお、ここでは、C1を画像中心部とし、距離X13及びX14は同じ大きさで反対の向きとしたが、本実施形態では、これに限定されるものではない。C1の位置は基準断層画像中のどこでも良いし、また、距離X13及びX14の向き及び大きさも任意のもので良い。ここで設定された基準領域R10は、後述のパターンマッチング時の位置ずれ検出に用いられる。
また、ここでは、撮影モードとして黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の例について説明したが、他の撮影モードが設定された場合には、その撮影モードに応じて基準領域を変更する。これについては後述する。
ステップS106〜S109は、全ての検出対象断層画像に対してステップS107及びステップS108が処理されるまで繰り返される。
ステップS107において、第2の領域設定部306は、検出対象断層画像内の領域であってステップS105で設定された基準領域との評価尺度の比較において所定の条件を満たす該当領域を設定するためのパターンマッチング処理を行う。ここでは、評価尺度として、類似度を適用した例について説明を行うが、例えば相違度を適用することも可能である。なお、評価尺度として相違度を適用した場合には、以下に説明する評価尺度として類似度を適用した場合の概念を反対にすることで適用可能となる。このステップS107の詳細について、図6−2を用いて説明する。
図6−2は、図6−1のステップS107におけるパターンマッチング処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS201において、第2の領域設定部306は、図7(b)に示す検出対象断層画像720内の所定位置に基準領域R10と同じ大きさのターゲット領域T10を設定する。このターゲット領域T10は、後述するステップS202〜S204の処理がなされると、検出対象断層画像720内で順次移動していくものである。
続いて、ステップS202において、第2の領域設定部306は、ステップS105で設定された基準領域R10に対する、ステップS201で設定したターゲット領域T10の類似度を算出する。
続いて、ステップS203において、第2の領域設定部306は、ステップS202で算出された類似度が最大であるか否かを判断する。この判断の結果、ステップS202で算出された類似度が最大である場合には、ステップS204に進む。
ステップS204に進むと、第2の領域設定部306は、類似度が最大であるターゲット領域T10と基準領域R10とに基づいて、当該検出対象断層画像720における基準断層画像710との位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に係る情報を例えば記憶部311aに保存する。
ステップS204の処理が終了した場合、或いは、ステップS203で類似度が最大でないと判断された場合には、ステップS205に進む。
ステップS205に進むと、第2の領域設定部306は、ターゲット領域T10の移動が当該検出対象断層画像720内で終了したか否かを判断する。この判断の結果、ターゲット領域T10の移動が当該検出対象断層画像720内で終了していない場合には、ステップS201に戻り、新たなターゲット領域T10を当該検出対象断層画像720内に設定し、ステップS202以降の処理を行う。
一方、ステップS205の判断の結果、ターゲット領域T10の移動が当該検出対象断層画像720内で終了している場合には、図6−2のフローチャートの処理が終了する。
この図6−2のフローチャートの処理を行うことによって、ターゲット領域T10の位置を検出対象断層画像720内で順次移動させながら類似度が最大となるターゲット領域T10を検索し、第2の領域設定部306は、当該類似度が最大となるターゲット領域T10を該当領域として設定する(即ち、基準領域R10との類似度(評価尺度)の比較において所定の条件を満たす該当領域を設定する)。そして、第2の領域設定部306は、設定した該当領域と基準領域R10とに基づいて、当該検出対象断層画像720における基準断層画像710との位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に係る情報を取得することができる。
ここで、再び、図6−1の説明に戻る。
ステップS107の処理が終了すると、ステップS108に進む。
ステップS108に進むと、位置合わせ部307は、ステップS204で得られた検出対象断層画像720の基準断層画像710との位置ずれ量に係る情報に基づいて、検出対象断層画像720の位置ずれ補正を行って、画像の位置合わせを行う。即ち、位置合わせ部307は、ステップS105で設定された基準領域R10と図6−2の処理で得られた該当領域との位置が合うように、基準断層画像710と検出対象断層画像720との位置合わせを行う。例えば、位置合わせ部307は、位置ずれ量に基づいて検出対象断層画像720の全体を並進するといった変位を行うことで、基準断層画像710との位置ずれを無くし、画像の位置合わせを行う。
続いて、ステップS109において、例えば制御部310は、全ての検出対象断層画像の処理を行ったか否かを判断する。この判断の結果、全ての検出対象断層画像については未だ処理を行っていない場合には、ステップS106に戻って、未処理の検出対象断層画像についてステップS107以降の処理を行う。
一方、ステップS109の判断の結果、全ての検出対象断層画像の処理を行った場合には、ステップS110に進む。
ステップS110に進むと、加算平均画像生成部308は、位置合わせ部307により位置合わせが行われた基準断層画像と検出対象断層画像とを画素毎に加算した後、これを画像枚数等で除算して平均処理を行って、加算平均画像を生成する。
なお、被検眼Erの固視微動の影響により完全に同一領域を撮影することはできないことから、ステップS202で得られる類似度が所定値以下である場合には、ステップS110で行われる加算平均処理から除外するようにしてもよい。また、ステップS201〜S205において得られた検出対象断層画像の基準断層画像との位置ずれ量が所定値以上である場合には、ステップS110で行われる加算平均処理から除外するようにしてもよい。
その後、記憶制御部311は、ステップS110の処理で得られた加算平均画像を記憶部311aに記憶し、表示制御部312は、当該加算平均画像を表示部130に表示させる。これらの処理が終了すると、図6−1のフローチャートの処理が終了する。
以上の図6−1及び図6−2に示す処理によって、本例の黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合には、被検眼Erが黄斑疾患時に検者が着目したい網膜色素上皮L2の近辺のみで上述した類似度を算出することになる。これにより、位置ずれが無くとも類似度の低下を起こし、位置ずれがある場合との判別を困難にする被検眼Erの対象物を選択的に除外することができる。そして、得られる類似度は、例えば、基準領域R10とターゲット領域T10との位置ずれのみを表現したものになり、高精度な位置ずれ検出が可能となる。
さらに、位置ずれが無くとも類似度の低下を起こす被検眼Erの対象物、例えば血管部P1等を、選択的に除外することによって得られる類似度は、高い値をとるので、類似度が所定値以下である場合に加算平均処理から除外されることが少なくなる。したがって、加算平均処理が行われる断層画像の枚数を増加させることができ、ノイズの低減された断層画像を提供することができる。なお、上述した例では、ターゲット領域T10は、検出対象断層画像内で順次移動していくとして説明を行ったが、移動に加えて回転処理を行ってもよい。
上述した例では、図6−1のステップS101における撮影モードの設定処理において、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の動作ついて説明した。次いで、図6−1のステップS101における撮影モードの設定処理において、緑内障用の撮影モードが設定された場合の動作ついて説明する。なお、緑内障用の撮影モードが設定された場合の動作の説明において、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の動作の説明と共通する部分については省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。具体的には、図6−1のステップS105の処理内容のみが異なるため、以下にその説明を行う。
図8は、本発明の第1の実施形態を示し、基準断層画像内から基準領域を設定する処理、及び、検出対象断層画像内から該当領域を設定する処理の一例を示す図である。この図8は、緑内障用の撮影モードが設定された場合の例を示している。
図8(a)は、基準断層画像内から基準領域を設定する処理の一例を示す図である。図8(a)には、基準断層画像810、及び、基準領域R20が示されている。ここで、基準領域R20の設定方法について詳述する。
図6−1のステップS105において、第1の領域設定部305は、まず、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、ステップS101で設定された撮影モードである緑内障用の撮影モードの情報に基づいて、特定の層である網膜色素上皮L2を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、選択した網膜色素上皮L2から第1の距離Y21だけ硝子体側の位置である第1の位置R21と、当該第1の位置R21から第2の距離Y22だけ硝子体側の位置である第2の位置R22を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C2から距離X23だけ左側の位置R23、及び、画像中心部C2から距離X24だけ右側の位置R24を設定する。そして、第1の領域設定部305は、第1の位置R21、第2の位置R22、左側の位置R23及び右側の位置R24で囲まれた領域を基準領域R20として設定する。
なお、ここでは、C2を画像中心部とし、距離X23及びX24は同じ大きさで反対の向きとしたが、本実施形態では、これに限定されるものではない。例えば、C2の位置は基準断層画像中のどこでも良いし、また、距離X23及びX24の向き及び大きさも任意のもので良い。
その後、図6−2のステップS201において、第2の領域設定部306は、図8(b)に示す検出対象断層画像820内の所定位置に基準領域R20と同じ大きさのターゲット領域T20を設定する。そして、上述した黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の動作と同様に、基準領域R20に対するターゲット領域T20の類似度を算出する等の処理を行う。
このように、緑内障用の撮影モードが設定された場合には、基準領域R20から網膜色素上皮L2を除外するようにしている。これにより、位置ずれが無くとも類似度の低下を起こし、位置ずれがある場合との判別を困難にするような被検眼Erの黄斑部の疾患(図5の病変部P2)がある場合でも、検者が着目したい神経線維層L1の周辺の高精度な位置ずれ検出が可能となる。また、神経線維層L1が薄くなっているような場合(図5のP4)、網膜色素上皮L2の信号強度が相対的に高くなるため、網膜色素上皮L2が含まれる基準領域で類似度を算出すると、網膜色素上皮L2の類似度の比重が相対的に高くなる。そうすると、神経線維層L1の近辺の類似度が低い場合でも、当該基準領域全体の類似度は高いままである場合があり、着目したい部分の位置ずれがあった場合でも加算平均処理がなされてしまう場合がある。このような場合に、上述した処理により、着目したい部分以外を基準領域R20から除外することで、着目したい部分のみの位置ずれを適切に認識できるようになり、結果として明瞭な加算平均画像を得ることができる。
上述した例では、第1の領域設定部305は、撮影モード設定部302により設定された撮影モードに基づいて基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定するものであった。本実施形態においては、この態様に限定されるものではなく、例えば、第1の領域設定部305は、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置に基づいて基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する態様を適用することも可能である。より具体的に、本態様の場合、第1の領域設定部305は、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置と、層認識部304で認識された被検眼Erの層構造とに応じて、基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する。以下、この態様について説明する。
まず、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が、被検眼Erの硝子体よりも脈絡膜に近い脈絡膜側の位置(以下、単に「脈絡膜側の位置」と称する)である場合について説明する。
ゲート位置が脈絡膜側の位置である場合は、主として、被検眼Erの網膜の深い位置、つまり網膜色素上皮L2の近辺かそれよりも脈絡膜側の情報を得たい場合である。このような場合には、図7に示したような、黄斑疾患用の撮影モードと同様の基準領域R10を設定することが望ましい。
即ち、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が脈絡膜側の位置である場合、第1の領域設定部305は、まず、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、図7に示す、特定の層である網膜色素上皮L2を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、図7に示すように、選択した網膜色素上皮L2から第1の距離Y11だけ硝子体側の位置である第1の位置R11と、当該第1の位置R11から第1の距離Y11よりも長い第2の距離Y12だけ脈絡膜側の位置である第2の位置R12を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C1から距離X13だけ左側の位置R13、及び、画像中心部C1から距離X14だけ右側の位置R14を設定する。そして、第1の領域設定部305は、第1の位置R11、第2の位置R12、左側の位置R13及び右側の位置R14で囲まれた領域を基準領域R10として設定する。
ただし、基準領域R10を決める際のパラメータである第1の距離Y11、第2の距離Y12、距離X13及びX14、並びにC1は、上述した黄斑疾患用の撮影モードの場合と異なる値としてもよい。例えば、より被検眼Erの脈絡膜側を明瞭に観察できるように、第2の距離Y12を大きくすると、より被検眼Erの脈絡膜側が明瞭となる加算平均画像を得ることができる。
続いて、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が、被検眼Erの脈絡膜よりも硝子体に近い硝子体側の位置(以下、単に「硝子体側の位置」と称する)である場合について説明する。
ゲート位置が硝子体側の位置である場合は、主として、被検眼Erの網膜の浅い位置、つまり神経線維層L1の近辺かそれより硝子体側の情報を得たい場合である。このような場合には、図8に示したような、緑内障用の撮影モードと同様の基準領域R20を設定することが望ましい。
即ち、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が硝子体側の位置である場合、第1の領域設定部305は、まず、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、図8に示す、特定の層である網膜色素上皮L2を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、図8に示すように、選択した網膜色素上皮L2から第1の距離Y21だけ硝子体側の位置である第1の位置R21と、当該第1の位置R21から第2の距離Y22だけ硝子体側の位置である第2の位置R22を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C2から距離X23だけ左側の位置R23、及び、画像中心部C2から距離X24だけ右側の位置R24を設定する。そして、第1の領域設定部305は、第1の位置R21、第2の位置R22、左側の位置R23及び右側の位置R24で囲まれた領域を基準領域R20として設定する。
ただし、基準領域R20を決める際のパラメータである第1の距離Y21、第2の距離Y22、距離X23及びX24、並びにC2は、上述した緑内障用の撮影モードの場合と異なる値としてもよい。例えば、より被検眼Erの硝子体側を明瞭に観察できるように、第2の距離Y22を大きくすると、より被検眼Erの硝子体側が明瞭となる加算平均画像を得ることができる。
次に、層認識部304で解析により認識された層構造そのものを基準領域として設定する場合について、図9を用いて説明する。この態様の場合、上述した図6−1のフローチャートの説明のうち、処理内容が異なるのはステップS105のみであるため、以下の説明では、共通する部分の説明は省略し、処理内容が異なる部分のみの説明を行う。
図9は、本発明の第1の実施形態を示し、基準断層画像内から基準領域を設定する処理、及び、検出対象断層画像内から該当領域を設定する処理の一例を示す図である。この図9は、緑内障用の撮影モードが設定された場合の例を示している。
図9(a)は、基準断層画像内から基準領域を設定する処理の一例を示す図である。図9(a)には、基準断層画像910、及び、基準領域R30が示されている。ここで、基準領域R30の設定方法について詳述する。
緑内障の診断は、図9(a)の神経線維層L1、神経節細胞層L3、内網状層L4が重要であることが知られている。そこで、図6−1のステップS105において、第1の領域設定部305は、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、ステップS101で設定された撮影モードである緑内障用の撮影モードの情報に基づいて、特定の層である神経線維層L1、神経節細胞層L3及び内網状層L4を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、内網状層L4における脈絡膜側の境界位置R31、及び、神経線維層L1における硝子体側の境界位置R32を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C3から距離X33だけ左側の位置R33、及び、画像中心部C3から距離X34だけ右側の位置R34を設定する。そして、第1の領域設定部305は、境界位置R31、境界位置R32、左側の位置R33及び右側の位置R34で囲まれた領域を基準領域R30として設定する。
なお、ここでは、C3は画像中心部とし、距離X33及びX34は同じ大きさで反対の向きとしたが、本実施形態では、これに限定されるものではない。例えば、C3の位置は基準断層画像中のどこでも良いし、また、距離X33及びX34の向き及び大きさも任意のもので良い。
その後、図6−2のステップS201において、第2の領域設定部306は、図9(b)に示す検出対象断層画像920内の所定位置に基準領域R30と同じ大きさのターゲット領域T30を設定しながら、図6−1に示すパターンマッチングの処理を繰り返す。
なお、本実施形態においては、図9を用いた上述した処理を、上述したゲート位置が脈絡膜側の位置である場合の処理においても適用することが可能である。即ち、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が脈絡膜側の位置である場合、第1の領域設定部305は、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、図9に示す、特定の層である神経線維層L1、神経節細胞層L3及び内網状層L4を選択する。次いで、第1の領域設定部305は、内網状層L4における脈絡膜側の境界位置R31、及び、神経線維層L1における硝子体側の境界位置R32を設定する。また、第1の領域設定部305は、画像中心部C3から距離X33だけ左側の位置R33、及び、画像中心部C3から距離X34だけ右側の位置R34を設定する。そして、第1の領域設定部305は、境界位置R31、境界位置R32、左側の位置R33及び右側の位置R34で囲まれた領域を基準領域R30として設定する。
なお、図9では、層認識部304により認識された被検眼Erの複数の層の中から、複数の特定の層(L1、L3、L4)を選択する例を示したが、本実施形態においてはこれに限らず、少なくとも1つの特定の層を選択するものであれば良い。
この図9に示す例のように、着目したい部位のみを基準領域R30として設定し、その後、ターゲット領域T30の類似度を算出することで、検者が着目したい部分の高精度な位置ずれ検出が可能となる。これにより、検者が着目したい部分に特化した明瞭な加算平均画像を得ることができる。
本実施形態によれば、撮影モードやゲート位置等に応じて基準領域を設定することで、検者が着目したい部分以外の部分を基準領域から除外することができる。これにより、位置ずれが無くとも類似度の低下を起こし、位置ずれがある場合との判別を困難にするような場合でも、検者が着目したい部分の高精度な位置ずれ検出が可能となり、検者が着目したい部分に特化した明瞭な加算平均画像を得ることができる。即ち、本実施形態によれば、検者が着目したい被検査物(被検眼Er)の部分の断層画像を明瞭なものとすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
<光干渉断層撮影装置の概略構成>
第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置の概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の概略構成と同様である。なお、以下の第2の実施形態の説明においては、上述した第1の実施形態と異なる部分について説明を行う。
図10は、本発明の第2の実施形態を示し、図1に示す画像処理・制御部120の内部構成の一例を示す図である。ここで、図10に示す第2の実施形態における画像処理・制御部120を、「画像処理・制御部120−2」と称する。また、図10には、図1に示す表示部130も図示している。
画像処理・制御部120−2は、画像取得部301、撮影モード設定部302、ゲート位置検出部303、輝度情報解析部1001、第1の領域設定部305、第2の領域設定部306、位置合わせ部307、加算平均画像生成部308、及び、制御部310を有する。即ち、図10に示す画像処理・制御部120−2は、図3に示す画像処理・制御部120−1と比較して、層認識部304に替えて、輝度情報解析部1001を設けたものである。
この輝度情報解析部1001は、Bスキャン画像である基準断層画像(第1の断層画像)における各Aスキャン信号中の輝度情報を解析する。具体的に、輝度情報解析部1001は、基準断層画像のAスキャン毎に所定の輝度条件を満たす画素を探索する処理を行う。
<光干渉断層撮影装置の処理手順>
図11は、本発明の第2の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
被検眼Erの撮影を開始する前に、検者が図4に示す撮影画面400のメニュー404等から撮影モードを選択すると、ステップS301において、撮影モード設定部302は、検者が複数の撮影モードの中から選択した1つの撮影モードを設定する。ここでは、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合について説明する。
続いて、ステップS302において、撮像部110は、制御部310の制御に基づいて、被検眼Erに対して測定光を照射して同一の走査位置を複数回走査する、被検眼Erの撮影を行う。そして、画像取得部301は、撮像部110から、被検眼Erの同一箇所の断層画像を複数枚取得する。ここで取得される断層画像は、Bスキャン画像であるものとする。
続いて、ステップS303において、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像の中から1枚の断層画像を選択し、選択した1枚の断層画像を基準断層画像(第1の断層画像)として設定する。また、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像のうち、基準断層画像以外の断層画像を検出対象断層画像(第2の断層画像)として設定する。
続いて、ステップS304において、輝度情報解析部1001は、Bスキャン画像である基準断層画像における各Aスキャン信号中の輝度情報を解析する。
続いて、ステップS305において、第1の領域設定部305は、ステップS301で設定された撮影モードと、ステップS304の解析により得られたBスキャン画像である基準断層画像における各Aスキャン信号の輝度情報とに応じて、ステップS103で設定された基準断層画像内から基準領域を設定する。
ここで、ステップS304及びS305の具体的な処理の例について、図12を用いて説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態を示し、基準断層画像内から基準領域を設定する処理の一例を示す図である。この図12は、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合の例を示している。図12には、基準断層画像1200、及び、基準領域R40が示されている。ここで、基準領域R40の設定方法について詳述する。
図12において、直線A1,A2,…,Am,…,Anは、基準断層画像1200中の各Aスキャンを示している。ステップS304において、輝度情報解析部1001は、ステップS303で設定された基準断層画像1200に対して、そのAスキャン毎に所定の輝度条件を満たす画素を検索する。ここでは、所定の輝度条件を各Aスキャンにおける各Aスキャン信号中の最も輝度の高い画素とすると、網膜色素上皮L2上の点群A10,A20,…,Am0,…,An0がこの所定の輝度条件を満たす画素として選択される。これは、被検眼Erの網膜の断層画像中で最も信号強度が強くなるのは、網膜色素上皮L2であるためである。
その後、ステップS305において、第1の領域設定部305は、ステップS304の解析により得られた所定の輝度条件に該当する点群(A10,…,An0)から、第1の距離Y41だけ硝子体側の位置である第1の位置を設定する。具体的に、第1の領域設定部305は、第1の位置として、点群A11,A21,…,Am1,…,An1を設定する。また、第1の領域設定部305は、第1の位置(点群A11,…,An1)から、第1の距離Y41よりも長い第2の距離Y42だけ脈絡膜側の位置である第2の位置を設定する。具体的に、第1の領域設定部305は、第2の位置として、点群A12,A22,…,Am2,…,An2を設定する。さらに、第1の領域設定部305は、上述した第1の実施形態と同様に、画像中心部C4から距離X43だけ左側の位置R43、及び、画像中心部C4から距離X44だけ右側の位置R44を設定する。そして、第1の領域設定部305は、第1の位置である点群A11,…,An1を繋ぐ線、第2の位置である点群A12,…,An2を繋ぐ線、左側の位置R43及び右側の位置R44で囲まれた領域を基準領域R40として設定する。
ここで、各Aスキャン信号中の最も輝度の高い画素を選択するための所定の輝度条件は、黄斑疾患用の撮影モードによって予め決められているものであり、その情報は記憶部311aに予め記憶されている。また、基準領域R40の上下方向の位置を決めている第1の距離Y41及び第2の距離Y42の向き及び大きさも、撮影モードによって予め決められているものであり、その情報は記憶部311aに記憶されている。なお、ここでは、C4は画像中心部とし、距離X43及びX44は同じ大きさで反対の向きとしたが、本実施形態では、これに限定されるものではない。C4の位置は基準断層画像中のどこでも良いし、また、距離X43及びX44の向き及び大きさも任意のもので良い。
なお、上述した例は、黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合であるが、本実施形態は、緑内障用の撮影モードが設定された場合にも適用可能である。この場合には、以下の態様を採る。具体的に、第1の領域設定部305は、図8(a)に示すように、ステップS304の解析により得られた所定の輝度条件に該当する点群(この場合、図8(a)のL2)から、第1の距離Y21だけ硝子体側の位置である第1の位置R21を設定する。また、第1の領域設定部305は、図8(a)に示す場合、第1の位置R21から、第2の距離Y22だけ硝子体側の位置である第2の位置R22を設定する。また、第1の領域設定部305は、図8(a)に示す場合、画像中心部C2から距離X23だけ左側の位置R23、及び、画像中心部C2から距離X24だけ右側の位置R24を設定する。そして、第1の領域設定部305は、図8(a)に示す場合、第1の位置R21、第2の位置R22、左側の位置R23及び右側の位置R24で囲まれた領域を基準領域R20として設定する。
また、上述した例では、第1の領域設定部305は、撮影モード設定部302により設定された撮影モードに基づいて基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定するものであった。本実施形態においては、この態様に限定されるものではなく、例えば、第1の領域設定部305は、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置に基づいて基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する態様を適用することも可能である。より具体的に、本態様の場合、第1の領域設定部305は、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置と、輝度情報解析部1001の解析により得られた基準断層画像における各Aスキャン信号の輝度情報とに応じて、基準領域を設定する。そして、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が脈絡膜側の位置である場合には、第1の領域設定部305は、図12を用いて上述した黄斑疾患用の撮影モードが設定された場合と同様の処理を行って、基準領域を設定する。また、ゲート位置検出部303により検出されたゲート位置が硝子体側の位置である場合には、第1の領域設定部305は、図8(a)を用いて上述した緑内障用の撮影モードが設定された場合と同様の処理を行って、基準領域を設定する。
ここで、再び、図11の説明に戻る。
ステップS305の処理が終了すると、ステップS306に進む。ここで、ステップS306〜S310の処理は、それぞれ、図6−1に示すステップS106〜S110の処理と同様であるため、その説明は省略する。
本実施形態によれば、被検眼Erの層構造を解析しなくても、検者が着目したい部分以外の部分を基準領域から除外することができる。これにより、位置ずれが無くとも類似度の低下を起こし、位置ずれがある場合との判別を困難にするような場合でも、検者が着目したい部分の高精度な位置ずれ検出がより簡単な構成で可能となる。このため、検者が着目したい部分に特化した明瞭な加算平均画像をより速く得ることができる。即ち、本実施形態によれば、検者が着目したい被検査物(被検眼Er)の部分の断層画像を明瞭なものとすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態は、基準領域を設定するための被検眼Erの層を自動で設定するものであった。第3の実施形態は、基準領域を設定するための被検眼Erの層を検者が手動で設定するものである。
<光干渉断層撮影装置の概略構成>
第3の実施形態に係る光干渉断層撮影装置の概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の概略構成と同様である。なお、以下の第3の実施形態の説明においては、上述した第1の実施形態または第2の実施形態と異なる部分について説明を行う。
図13は、本発明の第3の実施形態を示し、図1に示す画像処理・制御部120の内部構成の一例を示す図である。ここで、図13に示す第3の実施形態における画像処理・制御部120を、「画像処理・制御部120−3」と称する。また、図13には、図1に示す表示部130も図示している。
画像処理・制御部120−3は、層入力部1301、画像取得部301、撮影モード設定部302、ゲート位置検出部303、層認識部304、第1の領域設定部305、第2の領域設定部306、位置合わせ部307、加算平均画像生成部308、及び、制御部310を有する。即ち、図13に示す画像処理・制御部120−3は、図3に示す画像処理・制御部120−1と比較して、層入力部1301を追加したものである。
この層入力部1301は、検者の入力操作に応じて、基準断層画像内(第1の断層画像内)から基準領域を設定する際に使用する特定の層を入力する処理を行う。即ち、層入力部1301は、検者が被検眼Erの層構造の中から選択した少なくとも1つの層を特定の層として入力する。
<光干渉断層撮影装置の処理手順>
図14は、本発明の第3の実施形態に係る光干渉断層撮影装置100の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
被検眼Erの撮影を開始する前に、検者が図4に示す撮影画面400のメニュー404等から撮影モードを選択すると、ステップS401において、撮影モード設定部302は、検者が複数の撮影モードの中から選択した1つの撮影モードを設定する。ここでは、緑内障用の撮影モードが設定された場合について説明する。
その後、検者が、図4に示す撮影画面400の不図示の操作入力手段を介して被検眼Erの網膜を構成する複数の層の中から特に着目したい層を選択すると、続いて、ステップS402において、層入力部1301は、検者が選択した層を特定の層として入力する。この際、上述した操作入力手段は、チェックボックスのような構成であってもプルダウンのような構成であっても良く、また、その他の構成であっても良い。層入力部1301により入力された特定の層に係る情報は、記憶部311aに記憶される。また、ここでは、被検眼Erの複数の層のうち、神経線維層と神経節細胞層が特定の層として選択され入力された例について説明する。
続いて、ステップS403において、撮像部110は、制御部310の制御に基づいて、被検眼Erに対して測定光を照射して同一の走査位置を複数回走査する、被検眼Erの撮影を行う。そして、画像取得部301は、撮像部110から、被検眼Erの同一箇所の断層画像を複数枚取得する。ここで取得される断層画像は、Bスキャン画像であるものとする。このとき、ステップS401で設定された撮影モードに応じて、走査方向や範囲、ゲート位置等が設定される。
続いて、ステップS404において、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像の中から1枚の断層画像を選択し、選択した1枚の断層画像を基準断層画像(第1の断層画像)として設定する。また、画像取得部301は、取得した複数枚の断層画像のうち、基準断層画像以外の断層画像を検出対象断層画像(第2の断層画像)として設定する。
続いて、ステップS405において、層認識部304は、ステップS404で設定された基準断層画像に基づいて被検眼Erの層構造を解析して認識を行う。ここで、被検眼Erの層構造の解析は、各層の反射率の違いにより信号強度が異なることを利用することで各層を識別する。
続いて、ステップS406において、第1の領域設定部305は、ステップS402で入力された特定の層と、ステップS405で認識された被検眼Erの層構造とに基づいて、ステップS404で設定された基準断層画像内から基準領域を設定する。このステップS406の処理について図15を用いて説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態を示し、基準断層画像内から基準領域を設定する処理の一例を示す図である。この図15は、緑内障用の撮影モードが設定された場合の例を示している。図15には、基準断層画像1500、及び、基準領域R50が示されている。ここで、基準領域R50の設定方法について詳述する。
基準断層画像1500には、被検眼Erの神経線維層L1、神経節細胞層L3、内網状層L4が示されている。このうち、神経線維層L1及び神経節細胞層L3が、ステップS402において特定の層として入力されたものである。
第1の領域設定部305は、ステップS402で入力された特定の層に係る情報をもとにして、神経節細胞層L3における脈絡膜側の境界位置R51、及び、神経線維層L1における硝子体側の境界位置R52を設定する。さらに、第1の領域設定部305は、第1の実施形態と同様に、画像中心部C5から距離X53だけ左側の位置R53、及び、画像中心部C5から距離X54だけ右側の位置R54を設定する。そして、第1の領域設定部305は、境界位置R51、境界位置R52、左側の位置R53及び右側の位置R54で囲まれた領域を基準領域R50として設定する。
なお、ここでは、C5は画像中心部とし、距離X53及びX54は同じ大きさで反対の向きとしたが、本実施形態では、これに限定されるものではない。例えば、C5の位置は基準断層画像中のどこでも良いし、また、距離X53及びX54の向き及び大きさも任意のもので良い。
なお、上述した例では、ステップS402において神経線維層L1及び神経節細胞層L3が特定の層として入力された例を説明したが、本実施形態では、これに限定されるものではない。被検眼Erの網膜は、神経線維層L1や神経節細胞層L3、内網状層L4、内顆粒層、外網状層、外顆粒層等、様々な層から構成されている。本実施形態においては、これらの層の中から、検者が任意で着目したい層を選択し、これを特定の層として入力することが可能である。
ここで、再び、図14の説明に戻る。
ステップS406の処理が終了すると、ステップS407に進む。ここで、ステップS407〜S411の処理は、それぞれ、図6−1に示すステップS106〜S110の処理と同様であるため、その説明は省略する。
本実施形態によれば、検者が任意の層を選択し、その選択された層を基準領域を設定する際に使用する特定の層として入力することで、検者が着目したい部位が明瞭な加算平均画像を得ることができる。即ち、本実施形態によれば、検者が着目したい被検査物(被検眼Er)の部分の断層画像を明瞭なものとすることができる。
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。
即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。