JP6493093B2 - 抵抗スポット溶接用電源装置 - Google Patents
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Description
本実施形態では、磁気エネルギー回生スイッチ(Magnetic Energy Recovery Switch、以降、必要に応じてMERSと称する。)を用いることで、金属板を抵抗スポット溶接する際に金属板に与える溶接電流の周波数を、1回の抵抗スポット溶接を行っている最中に制御する。
図1は、抵抗スポット溶接システムの構成の一例を示す図である。
本実施形態では、抵抗スポット溶接システムは、交流電源100と、整流器200と、抵抗300と、コンデンサ400と、降圧チョッパ500と、直流リアクトル600と、MERS700と、制御部800と、交流インダクタンス900と、変流器1000と、抵抗スポット溶接機1100と、を有する。
整流器200の入力端と、交流電源100とが相互に接続される。整流器200の出力端の一つと、抵抗300の一端およびコンデンサ400の一端とが相互に接続される。整流器200の出力端の他の一つと、抵抗300の一端およびコンデンサ400の他端とが相互に接続される。整流器200の出力端には、さらに降圧チョッパ500が接続される。本実施形態では、降圧チョッパ500は、逆導通型半導体スイッチIと、ダイオードDjとを有する。本実施形態では、逆導通型半導体スイッチIは、半導体スイッチSiとダイオードDiの並列接続によって構成される。具体的には、ダイオードDiのアノードに半導体スイッチSiのエミッタが、ダイオードDiのカソードに半導体スイッチSiのコレクタがそれぞれ接続される。このように、逆導通型半導体スイッチIは、1つの半導体スイッチSiと、当該半導体スイッチSiに並列に接続された1つのダイオードDiとを有する。
また、半導体スイッチSiのゲート端子Giは、制御部800と接続される。半導体スイッチSiのゲート端子Giは、制御部800から降圧チョッパ500への制御信号として、半導体スイッチSiをオンするオン信号(ゲート信号)の入力を受ける。オン信号が入力されている間、半導体スイッチSiはオン状態となり、オン信号が入力されていない間、半導体スイッチSiはオフ状態となる。
MERS700の交流端子dと、交流インダクタンス900の一端が相互に接続される。交流インダクタンス900の他端と、変流器1000の入力端の一つとが相互に接続される。MERS700の交流端子aと、変流器1000の入力端の他の一つとが相互に接続される。変流器1000の出力端の一つと溶接電極E1とが相互に接続され、他の一つと溶接電極E2とが相互に接続される。
交流電源100は、交流電力を出力する。交流電源100は、単相交流電源であっても、三相交流電源であってもよい。
整流器200は、交流電源100から出力される交流電力を整流して直流電力にする。交流電源100が単相交流電源である場合、整流器200は単相整流回路を備えることになる。一方、交流電源100が三相交流電源である場合、整流器200は三相整流回路を備えることになる。
降圧チョッパ500は、整流器200で整流された直流電圧を降圧する。
直流リアクトル600は、降圧チョッパ500を通った直流電力を平滑化する。
MERS700は、磁気エネルギー回生スイッチの一例であり、整流器200から、降圧チョッパ500および直流リアクトル600を介して入力した直流電力を後述するようにして交流電力として出力する。
制御部800は、制御手段の一例であり、MERS700および降圧チョッパ500の動作を制御する。
MERS700の動作の詳細については後述する。
以上のように本実施形態では、MERS700と、制御部800とを用いることにより、抵抗スポット溶接用電源装置を構成することができる。
次に、MERS700の構成の一例を説明する。
MERS700は、特許文献3等に開示されているMERSの一例である。
図1に示すように、MERS700は、ブリッジ回路と、コンデンサCとを含む。
ブリッジ回路は、2つの経路にそれぞれ2つずつ配置された4つの逆導通型半導体スイッチU、V、X、Yによって構成される。コンデンサCは、ブリッジ回路の2つの経路の間に配置される。
また、逆導通型半導体スイッチU、V、X、Yには、様々な構成が考えられるが、本実施形態では、半導体スイッチSU、SV、SX、SYとダイオードDU、DV、DX、DYとの並列接続によって構成されるものとする。すわなち、逆導通型半導体スイッチU、V、X、Yのそれぞれは、1つのダイオードDU、DV、DX、DYと、当該ダイオードに並列に接続された1つの半導体スイッチSU、SV、SX、SYとを有する。
MERS700では、ブリッジ回路の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチのうち、一方の逆導通型半導体スイッチがオンすると他方の逆導通型半導体スイッチもオンする。同様に、ブリッジ回路の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチの一方の逆導通型半導体スイッチがオフすると他方の逆導通型半導体スイッチもオフする。例えば、逆導通型半導体スイッチUがオンすると逆導通型半導体スイッチYもオンし、逆導通型半導体スイッチUがオフすると逆導通型半導体スイッチYもオフする。これらのことは、逆導通型半導体スイッチV、Xについても同じである。
<図2に示す動作>
図2に示す例におけるスイッチングパターンは、ブリッジ回路における対角線のうち、一方の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチ(U・Y又はV・X)のオン・オフを1回行った後、他方の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチ(V・X又はU・Y)のオン・オフを1回行うことを交互に行うパターンである。
また、同一の周期T1、T2、T3における、一方の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチ(U・YまたはV・X)のオン時間およびオフ時間と、他方の対角線上に配置された2つの逆導通型半導体スイッチ(V・XまたはU・Y)のオン時間およびオフ時間は、同じである。
(1a)U−Yゲート:オン、V−Xゲート:オフ
V−Xゲートがオフし、U−Yゲートがオンすると、MERS700の出力電流ILは、変流器1000→逆導通型半導体スイッチU→コンデンサC→逆導通型半導体スイッチYの経路を流れ、コンデンサCが充電される。したがって、MERS700の出力電流ILは減少し(0(ゼロ)に近づき)、コンデンサCの両端の電圧VCは上昇する。そして、コンデンサCの充電が完了すると、MERS700の出力電流ILは0(ゼロ)になると共に、コンデンサCの両端の電圧VCは最大値を示す。
制御部800は、周波数f1の2倍の逆数の時間(周期T1の1/2倍の時間)が経過すると、U−Yゲートをオフすると共にV−Xゲートをオンする。このとき、コンデンサCの両端の電圧VCは0(ゼロ)であるから、ソフトスイッチングが実現される。
U−Yゲートがオフされると共にV−Xゲートがオンされると、MERS700の出力電流ILは、変流器1000→逆導通型半導体スイッチV→コンデンサC→逆導通型半導体スイッチXの経路を流れ、コンデンサCが充電される。したがって、MERS700の出力電流ILは減少し(0(ゼロ)に近づき)、コンデンサCの両端の電圧VCは上昇する。そして、コンデンサCの充電が完了すると、MERS700の出力電流ILは0(ゼロ)になると共に、コンデンサCの両端の電圧VCは最大値を示す。
以上の前記(1a)及び前記(2a)の動作で、周期T1(1周期)の動作が終了する。以上のようにして前記(1a)の動作、前記(2a)の動作が交互に2回行われると、期間t1の動作が終了する。
期間t2では、MERS700の出力電流ILが還流する時間が、期間t1よりも短くなる。この他のMERS700の動作は、期間t1の動作と同じであるので、期間t2におけるMERS700の動作の詳細な説明を省略する。
(1b)U−Yゲート:オン、V−Xゲート:オフ
V−Xゲートがオフし、U−Yゲートがオンすると、MERS700の出力電流ILは、変流器1000→逆導通型半導体スイッチU→コンデンサC→逆導通型半導体スイッチYの経路を流れ、コンデンサCが充電される。したがって、MERS700の出力電流ILは減少し(0(ゼロ)に近づき)、コンデンサCの両端の電圧VCは上昇する。そして、コンデンサCの充電が完了すると、MERS700の出力電流ILは0(ゼロ)になると共に、コンデンサCの両端の電圧VCは最大値を示す。
周波数f3は前記共振周波数である。したがって、制御部800は、以上のようにコンデンサCの両端の電圧VCが0(ゼロ)になった時点で、U−Yゲートをオフすると共にV−Xゲートをオンする。そうすると、MERS700の出力電流ILは、変流器1000→逆導通型半導体スイッチV→コンデンサC→逆導通型半導体スイッチXの経路を流れ、コンデンサCが充電される。したがって、MERS700の出力電流ILは減少し(0(ゼロ)に近づき)、コンデンサCの両端の電圧VCは上昇する。そして、コンデンサCの充電が完了すると、MERS700の出力電流ILは0(ゼロ)になると共に、コンデンサCの両端の電圧VCは最大値を示す。
以上のように、U−YゲートおよびV−Xゲートをオン・オフするタイミングでコンデンサCの両端の電圧VCは0(ゼロ)になるので、ソフトスイッチングが実現される。
尚、通電パターンは、図2に示す例に限定されない。例えば、通電パターンの少なくとも一部の期間に、2つの逆導通型半導体スイッチ(V・XまたはU・Y)のみをオン・オフする期間があってもよい。また、例えば、一周期において、2つの逆導通型半導体スイッチV・Xをオンする時間と、2つの逆導通型半導体スイッチU・Yをオンする時間とを異ならせてもよい。また、例えば、一周期において、2つの逆導通型半導体スイッチU・Yをオフしたまま2つの逆導通型半導体スイッチV・Xを複数回オンした後に、2つの逆導通型半導体スイッチV・Xをオフしたまま2つの逆導通型半導体スイッチU・Yを複数回オンしてもよい。
図3は、溶接電流IWの周波数を変更した場合の、溶接電流IWと時間との関係の一例と、MERS700のコンデンサCの電圧VCと時間との関係の一例を示す図である。図3(a)は、溶接電流IWの周波数を0.1kHzから1.0kHzに変更した場合の関係を示し、図3(b)は、溶接電流IWの周波数を1.0kHzから0.1kHzに変更した場合の関係を示す。図3では、抵抗スポット溶接機1100の金属板M1、M2を含む等価回路が、RL直列回路(R=1.08mΩ、L=0.299μH)であるものとしてコンピュータシミュレーションを行った結果を示す。
ここでは、厚みが1.6mm、大きさが20mm角の矩形の普通鋼を2枚重ね合わせたものを抵抗スポット溶接機1100にセットした状態(溶接電極E1、E2に挟んだ状態)で、それぞれの周波数における溶接電極E1、E2の直流抵抗RとインダクタンスLをLCRメータで測定した。その結果を表1に示す。
(A)第1の周波数から第2の周波数に溶接電流IWの周波数を上げる過程において設定される中間周波数の数が2以上(溶接電流IWの周波数の変更回数が3回以上)である。
(B)中間周波数の増加率Δf/Δtが50kHz/s以上である。
(C)中間周波数のサイクルの数が5未満である。
図9は、オーバーシュートβを説明する図である。
図9において、周波数を変更した直後の溶接電流IWのピーク値をAとし、周波数を変更した後の定常時の溶接電流IWのピーク値をBとすると、オーバーシュートβは、以下の(1)式で定義される。
β={(A−B)/B}×100 ・・・(1)
Δf/Δtは、中間周波数の増加率である。前述したように、中間周波数の増加率Δf/Δtは、当該中間周波数における周波数の増加量Δfを、当該中間周波数の継続時間Δtで割った値である。例えば、表2において、ケース(図6)の0.9kHzの継続時間Δtは0.005sであるので、Δf/Δtは、80.0(=(0.9−0.5)/0.005)になる。尚、前述したように図4〜図8では、溶接電流IWの周波数を0.1kHzから1.0kHzに変更するので、中間周波数は、0.1kHzを上回り、1.0kHzを下回る周波数である。したがって、表2に示すように、0.1kHz、1.0kHzにおいては、中間周波数の増加率Δf/Δtは算出されない。
抵抗スポット溶接を行うことにより形成される溶接継手の品質に影響を与える所定の1つまたは複数の因子により定まる溶接条件に応じた適切な通電パターンを、例えば模擬実験を行って特定し、特定した通電パターンを制御部800に記憶する。この通電パターンには、当該通電パターンの継続時間(すなわち、1回の抵抗スポット溶接の全期間)の1%〜2%の時間内において、前述した(A)〜(C)の条件を全て満たすように、第1の周波数から第2の周波数に溶接電流IWの周波数を上げることが少なくとも1つ含まれる。制御部800は、この通電パターンに基づいて、半導体スイッチSU、SV、SX、SYのオン・オフを制御する。
以上のように、本実施形態では、MERS700を用いて、1回の抵抗スポット溶接において、溶接電流IWの周波数を第1の周波数から第2の周波数に上げる際に、当該第1の周波数を上回り且つ当該第2の周波数を下回る少なくとも1つの中間周波数での通電を所定の期間行ってから当該第2の周波数に溶接電流IWの周波数を変更する。したがって、溶接電流IWの周波数を1つの電源装置で制御するに際し、溶接電流IWの周波数の変更時に生じる溶接電流IWの大きさの急激な変動を抑制することができる。
また、本実施形態では、1回の抵抗スポット溶接の全溶接期間の1%〜2%の時間内において、溶接電流IWの周波数を第1の周波数から第2の周波数に上げる。したがって、可及的に速やかに所望の周波数(第2の周波数)に変更することができる。
また、本実施形態では、第2の周波数が第1の周波数の3倍以上、10倍以下である場合に、前述した(A)〜(C)の条件を全て満たすようにする。したがって、オーバーシュートβを10%以下にすることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (4)
- 金属板の板面同士の重ね合わせ部の表側および裏側に対して溶接電極を加圧しながら通電することにより当該金属板の重ね合わせ部に発生するジュール熱によって、当該金属板の重ね合わせ部を抵抗スポット溶接するために、当該溶接電極に電力を供給する抵抗スポット溶接用電源装置であって、
4個の逆導通型半導体スイッチにて構成されるブリッジ回路と、当該ブリッジ回路の直流端子間に接続され、磁気エネルギーを蓄積するコンデンサと、を有する磁気エネルギー回生スイッチと、
前記磁気エネルギー回生スイッチのスイッチ動作を制御することにより、前記溶接電極に流れる溶接電流の周波数を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記磁気エネルギー回生スイッチのスイッチ動作を制御することにより、1回の前記抵抗スポット溶接の期間内において、前記溶接電流の周波数を第1の周波数から第2の周波数に上げる際に、当該第1の周波数を上回り且つ当該第2の周波数を下回る少なくとも1つの中間周波数に前記溶接電流の周波数を変更してから、当該第2の周波数に前記溶接電流の周波数を変更することを特徴とする抵抗スポット溶接用電源装置。 - 前記制御手段は、1回の前記抵抗スポット溶接の全溶接期間の1%から2%の時間内に、前記溶接電流の周波数を、前記第1の周波数から前記第2の周波数に上げることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接用電源装置。
- 前記第2の周波数は、前記第1の周波数の3倍以上、10倍以下であり、
前記第1の周波数から前記第2の周波数に前記溶接電流の周波数を上げる過程において設定される前記中間周波数の数は、2以上であり、
前記中間周波数の増加率は、50kHz/s以上であり、
前記中間周波数のサイクルの数は、5未満であり、
前記中間周波数の増加率は、当該中間周波数から、当該中間周波数に変更する直前の周波数を減算した値を、当該中間周波数の継続時間で割った値であり、
前記中間周波数のサイクルの数は、当該中間周波数と当該中間周波数の継続時間との積であることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接用電源装置。 - 前記ブリッジ回路は、第1の逆導通型半導体スイッチ、第2の逆導通型半導体スイッチ、第3の逆導通型半導体スイッチ、および第4の逆導通型半導体スイッチを有し、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチは、スイッチオフ時の導通方向を相互に逆向きにして第1の経路に直列に配置され、
前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチは、スイッチオフ時の導通方向を相互に逆向きにして第2の経路に直列に配置され、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチのスイッチオフ時の導通方向は同じであり、
前記コンデンサは、前記第1の経路の領域のうち、前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとの間の領域と、前記第2の経路の領域のうち、前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとの間の領域との間に接続され、
前記制御手段は、前記第1の逆導通型半導体スイッチおよび前記第3の逆導通型半導体スイッチと、前記第2の逆導通型半導体スイッチおよび前記第4の逆導通型半導体スイッチと、の少なくとも何れか一方のオン時間とオフ時間とを制御することにより、前記溶接電極に流れる溶接電流の周波数を制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の抵抗スポット溶接用電源装置。
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