本発明は、両極性の溶接用コンデンサを交互に正、負の極性の設定電圧値まで充電し、溶接用コンデンサの充電電荷を溶接トランスの1次巻線に交互の方向に放電して抵抗溶接する際に、放電電流が流れる経路のインダクタンスと溶接用コンデンサのキャパシタンスとによる振動(共振)作用によって、放電された充電電荷の一部分を溶接用コンデンサに逆極性に充電し、次回の抵抗溶接でそのネルギーを再使用する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一の名称の部材を示すものとする。本発明で用いる抵抗溶接という用語は、溶接箇所の発熱により双方の金属が溶融してナゲットが形成される抵抗溶接だけではなく、溶接箇所の発熱により双方の金属が塑性流動化して接合される拡散接合も含む。
[実施形態1]
図1及び図2によって本発明に係る実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るコンデンサ式抵抗溶接機を説明するための図面である。図2は、本発明に係るコンデンサ式抵抗溶接機を説明するための電圧波形図と電流波形図である。本実施形態1の説明においては、図1及び図2を適宜参照することとする。なお、各種検出回路など、本発明を説明するのに特に必要とされない機構や回路などについては図示するのを省略する。他の実施形態でも同様である。
本発明に係る実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機は、入力端子1、2に接続される充電回路3と、充電回路3によって充電される無極性の溶接用コンデンサ4と、溶接用コンデンサ4に充電されたエネルギーを放電させる放電用スイッチ6と、放電用スイッチ6に直列に接続される1次巻線5A及び2次巻線5Bとを有する溶接トランス5と、放電用スイッチ6を少なくともオンさせる制御回路9と、2次巻線5Bの一方の端子に接続される第1の溶接電極7と2次巻線5Bの他方の端子に接続される第2の溶接電極8とを備える。コンデンサ式抵抗溶接機は、充電回路3によって溶接用コンデンサ4が設定電圧V1まで充電された後に放電用スイッチ6を導通させ、溶接用コンデンサ4に充電されたエネルギーを溶接トランス5の1次巻線5Aと2次巻線5Bとを介して放電させることによって、第1の溶接電極7と第2の溶接電極8との間に溶接電流を流して被溶接物W1、W2を抵抗溶接する。
充電回路3は、少なくとも正極性充電用スイッチ3C、3Dと負極性充電用スイッチ3E、3Fとからなる両極性充電回路である。溶接用コンデンサ4は、充電回路3と溶接トランス5の1次巻線5Aとの間に挿入される無極性のコンデンサである。放電用スイッチ6Bと6Aとは、溶接用コンデンサ4と溶接トランス5の1次巻線5Aとを有する経路に放電電流Id又は−Idが双方向、例えば図1の矢印Xと矢印Y方向に流れるように挿入される。
動作の詳細については後述するが、本発明に係る実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機では、制御回路9は、いずれかの極性、充電端子aが充電端子bに対して正となる極性又は充電端子aが充電端子bに対して負となる極性で設定電圧V1又は−V1に充電された溶接用コンデンサ4からの放電電流Id又は−Idが溶接トランス5の1次巻線5Aに交互に双方向、図1の矢印X又は矢印Y方向で流れるように放電用スイッチ6B又は6Aを導通させる。放電電流Id又は−Idが流れる期間の時刻t1〜t2又は時刻t7〜t8に放電電流Id又は−Idが流れる経路に存在するインダクタンス成分10にエネルギーが蓄積され、インダクタンス成分10に蓄積されたエネルギーによって、溶接用コンデンサ4が設定電圧V1又は−V1の極性とは逆極性の電圧−V2又はV2に充電され、正極性充電用スイッチ3C、3D又は前記負極性充電用スイッチ3E、3Fが導通して設定電圧V1又は−V1とは逆極性の前記電圧−V2又はV2から逆極性の前記設定電圧−V1又はV1まで溶接用コンデンサ4を充電させる。
次に、図1に示す具体的な構成等について説明する。入力端子1、2間の先には直流電源又は交流電源が接続され、充電器3に電力を供給する。なお、この直流電源又は交流電源は本発明の必須の構成要素ではない。充電回路3は、特に回路構成に制限されることなく、入力端子1、2から入力される電力が溶接用コンデンサ4を充電するものであるとともに、充電終了後には溶接用コンデンサ4から電気的に切り離せるものであればよい。充電回路3の具体的な構成及び動作については後述する。また、図1では交流入力電力が単相交流の場合について示しているが、三相交流であっても勿論よい。交流入力電力が三相交流電力の場合には広く知られている半導体スイッチと整流ダイオードとを三相ブリッジ構成に接続してなる三相位相制御型整流回路を用い、三相位相制御型整流回路によって三相交流入力電力を所望の値の直流電力に変換すればよい。また、以降に説明する実施形態2〜5に係るコンデンサ式抵抗溶接機の場合についても同様である。
先ず、両極性充電回路3について説明する。電源トランス3Aの1次巻線3A1は、例えば単相の商用交流入力電力を受電する入力端子1と2に接続される。後述する理由から、電源トランス3Aは、従来の電源トランスの1次巻線と2次巻線との巻数比(2次巻線の巻数/1次巻線の巻数)に比べて大きな巻数比となる巻数を有する2次巻線3A2を備える。電源トランス3Aの2次巻線3A2に接続される位相制御型全波整流器3Bは、制御端子を有するサイリスタのような半導体スイッチ3B1と3B2及び整流ダイオード3B3と3B4をブリッジ構成に接続してなる。
2次巻線3A2の一端は互いに直列接続された半導体スイッチ3B1と整流ダイオード3B3との接続部に接続され、2次巻線3A2の他端は互いに直列接続された半導体スイッチ3B2と整流ダイオード3B4との接続部に接続される。半導体スイッチ3B1と3B2のカソード同士が接続され、それらカソードは位相制御型全波整流器3Bの正の直流出力側となる。また、整流ダイオード3B3と3B4のアノード同士が接続され、それらアノードが位相制御型全波整流器3Bの負の直流出力側となる。なお、整流ダイオード3B4、3B4は半導体スイッチ3B1、3B2と同様な半導体スイッチであっても構わない。また、半導体スイッチ3B1と整流ダイオード3B3との上下の位置が入れ替わってもよい。半導体スイッチ3B2と整流ダイオード3B4とについても同様である。
制御端子を有するSCRと称されるサイリスタのような第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fが位相制御型全波整流器3Bの直流出力側に接続される。第1の充電用スイッチ3Cは、そのアノードが位相制御型全波整流器3Bの前記正の直流出力側に接続され、そのカソードが充電端子aに接続される。第2の充電用スイッチ3Dは、そのアノードが充電端子bに接続され、そのカソードが位相制御型全波整流器3Bの前記負の直流出力側に接続される。第3の充電用スイッチ3Eは、そのアノードが位相制御型全波整流器3Bの前記正の直流出力側に接続され、そのカソードが充電端子bに接続される。第4の充電用スイッチ3Fは、そのアノードが充電端子aに接続され、そのカソードが位相制御型全波整流器3Bの前記負の直流出力側に接続される。
第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは、充電端子aが充電端子bに対して正極性の電圧になるように溶接用コンデンサ4を充電する。第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fは、充電端子bが充電端子aに対して正極性の電圧になるように溶接用コンデンサ4を充電する。両極性充電回路3は、前述した電源トランス3Aと位相制御型全波整流器3Bと第1充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fとからなり、溶接用コンデンサ4を両極性に、つまり交互に異なる極性に充電するところに特徴がある。ここで、半導体スイッチ3B1と3B2及び第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは、正極性充電用スイッチを構成し、半導体スイッチ3B1と3B2及び第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fは負極性充電用スイッチを構成する。
なお、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fはサイリスタのような半導体スイッチではなく、不図示の磁気回路によって開閉制御されるリレー接点のような機械的な開閉素子であってもよい。溶接用コンデンサ4の正、負極性の充電時間はその放電時間よりもかなり長く、例えば50Hzの周波数の交流入力の数十サイクルである。溶接用コンデンサ4を正の極性の電圧に充電する充電時間中、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dとがオンであり、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fはオフである。溶接用コンデンサ4を負の極性の電圧に充電する充電時間中、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fとがオンであり、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dとオフである。このように、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fの動作サイクルは、商用交流入力周波数50Hzの内の1サイクルに比べて十分に長いので、機械的な開閉素子でも容易に制御可能である。なお、後述するように、溶接用コンデンサ4に充電された充電電荷の放電時にはこれら開閉素子すべてが開いているのが好ましい。
充電用コンデンサ4は複数の無極性(両極性)のコンデンサを並列に接続したコンデンサバンクからなり、充電回路3と溶接トランス5の1次巻線5Aとの間に挿入される。具体的には充電端子aと充電端子bとの間に接続される。ここで、無極性のコンデンサとは、コンデンサの2つの端子の極性が無い、つまり、正又は負の両方の極性を取ることができるコンデンサのことをいう。本発明に用いるコンデンサは、現在用いられている電解コンデンサの最大の充電電圧に比べて高い電圧値に充電可能で、比較的大きな充電容量を得ることができる無極性のコンデンサ、例えばポリプロピレンフィルムコンデンサ又は油浸された電気絶縁紙を誘電体として用いているオイルコンデンサなどからなる。
例えば、ポリプロピレンフィルムコンデンサ又は油浸された電気絶縁紙などを誘電体に用いてなるオイルコンデンサの場合、電解コンデンサの耐圧よりも高いものがあるのは勿論のこと、例えば、電解コンデンサの耐圧450Vの2倍以上である900V以上の耐圧のものもある。このような耐圧の高い両極性のコンデンサを複数個並列接続してなるコンデンサバンクを溶接用コンデンサ4とする場合、容易に溶接用コンデンサ4を有極性の電解コンデンサの最大充電電圧よりも高い所望の電圧まで充電することができる。このことは、基本的に電流が電圧を抵抗で除算した値であることから、溶接電流を容易に増大せることが可能である。
溶接トランス5は、1次巻線5Aと2次巻線5Bとの巻数比N(1次巻線の巻数/2次巻線の巻数)が十分に大きく、2次巻線5Bの巻数は1ターン程度の場合が多い。溶接トランス5には、1次巻線5Aと2次巻線5Bとの磁気結合率に起因する漏れインダクタンスが存在するが、漏れインダクタンスについては後述する。
放電用スイッチ6は、溶接用コンデンサ4と溶接トランス5の1次巻線5Aとを有する経路に放電電流が双方向に流れるように挿入され、この経路上であればどこに挿入されてもよい。図1では、放電用スイッチ6として放電用スイッチ6A、6Bは、サイリスタなどの2つの半導体スイッチを一対として互いに逆向きに並列接続された双方向放電用スイッチであり、溶接トランス5の1次巻線5Aの一端と充電端子bとの間に挿入される。溶接トランス5の1次巻線5Aの他端と充電端子aとの間に接続しても勿論よい。放電用スイッチ6はトライアックと称されている双方向のスイッチング特性を選択的に働かせることができる双方向半導体スイッチでもよい。また、放電電流の大きさに対応した個数の半導体スイッチを並列に接続したものであってもよい。
第1の溶接電極7は、溶接トランス5の2次巻線5Bの一端に接続され、溶接電極8は、2次巻線5Bの他端に接続される。記号W1、W2はそれぞれ任意の金属材料からなる第1の被溶接物、第2の被溶接物を示す。なお、W1、W2は、同じ金属材料又は異種の金属材料でもよい。なお、第1の溶接電極7、第2の溶接電極8は、図1では上下に配置されているが、横方向に並べて配置し、被溶接物W1、W2の2点を同時に抵抗溶接することが可能なシリーズ抵抗溶接に適した電極構造としてもよい。
制御回路9は、放電用スイッチ6Aと6Bの他に、位相制御型全波整流器3Bの半導体スイッチ3B1と半導体スイッチ3B2とに位相制御信号を与えると共に、第1充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fにオン駆動信号を与える制御機能を有するものである。
記号10は、溶接用コンデンサ4のエネルギーによって溶接トランス5と放電スイッチ6とを介して放電電流が流れる経路上のインダクタンス成分を等価的に示したものである。具体的には上述の溶接トランス5の1次巻線5Aと2次巻線5Bとの磁気結合の悪さに起因する漏れインダクタンスの他に、溶接用コンデンサ4からの放電電流が流れる溶接トランス5の1次側配線のインダクタンスや、更には2次側の配線インダクタンスなどを1次側に等価的に換算したものも含めた合成インダクタンスである。記号11は、1次巻線5Aと2次巻線5Bとの抵抗、溶接トランス5の1次側配線の抵抗、2次側配線、及び第1の溶接電極7と第1の溶接電極8と間の抵抗のすべてを1次側に換算した等価抵抗を示す。したがって、合成インダクタンス10、等価抵抗11はそれぞれ個別のインダクタ、抵抗器が接続されたものではない。本発明では、後述するように、その漏れインダクタンスを主とする合成インダクタンス10と溶接用コンデンサのキャパシタンスとの直列共振(振動)を利用して、逆極性に充電される充電電荷(エネルギー)を次に行われる溶接に利用する。
次に、図2を用いて、実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機の動作説明を行う。本発明を理解し易いように各部材の具体的な数値の一例を以下に挙げる。溶接用コンデンサ4はポリプロピレンフィルムを誘電体として用いるフィルムコンデンサで構成するものとして、溶接用コンデンサ4のキャパシタンスを0.14F(140000μF)、溶接用コンデンサ4の充電電圧の設定電圧V1を900V、合成インダクタンスを40μH、前述した等価抵抗12を10mΩ、及び溶接トランス5の巻数比N(1次巻線の巻数/2次巻線の巻数)を20としてシミュレーションを行った。
図2(A)は、横軸を時間としたときの溶接用コンデンサ4の充電電圧波形Vcである。V1は溶接用コンデンサ4の充電電圧の設定電圧を示し、V2は設定電圧V1のエネルギーを放電したときに溶接用コンデンサ4に逆極性に充電される電圧である。図1に示す充電端子aが充電端子bに対して正のときを正極性とし、充電端子aが充電端子bに対して負のときを負極性とする。図2(B)は横軸を時間としたときの溶接用コンデンサ4の充放電電流の波形である。波形Idが正極性の放電電流波形、波形−Idが負極性の放電電流波形、波形Icが正極性の充電電流波形、波形−Icが負極性の充電電流波形を示す。
図2の時刻t0では、正極性の充電期間が完了し、溶接用コンデンサ4は充電端子aが充電端子bに対して正の設定電圧値V1(ほぼ+900V)に充電されている。この状態では、半導体スイッチ3B1と3B2は導通せず、また、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fは導通していないので、充電電流も放電電流も流れない。少なくとも半導体スイッチ3B1と3B2とがオフ状態、あるいは第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fがオフの状態にあれば、後述するように、溶接用コンデンサ4の充電電荷の放電時に、位相制御型全波整流器3B及び第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fからなるバイパス回路が形成されることが無いので、溶接用コンデンサ4の充電電荷の放電時に、その充電電荷の一部分が溶接用コンデンサ4に逆極性に充電される。
時刻t1で、制御回路9が駆動信号を双方向放電スイッチ6の半導体スイッチ6Bの制御端子に与え、半導体スイッチ6Bを導通させる。これに伴い、溶接用コンデンサ4に充電されている充電電荷は充電端子a側から溶接トランス5の1次巻線5A及び放電用スイッチ6Bを通して急激に放電され、パルス状の正極性の放電電流Id(例えば、ピーク値がほぼ30kA)が1次巻線5Aを矢印X方向に流れる。この放電電流Idにより、2次巻線5Bにはそのほぼ20倍のパルス状の正極性の溶接電流(例えば、ピーク値がほぼ600kA)が流れ、この電流は第1の溶接電極7から被溶接物W1、W2を通って第2の溶接電極8を流れ、抵抗溶接が行われる。
正極性の放電電流Idが1次巻線5Aを矢印X方向に流れるとき、溶接用コンデンサのキャパシタンスと合成インダクタンス10とで振動(共振)することにより、合成インダクタンス10に一旦蓄えられたエネルギーが溶接用コンデンサ4に移行されて溶接用コンデンサ4を負の極性に充電する。これに伴い、溶接用コンデンサ4の正の電圧は時刻t1から時刻t2の間で負の電圧に反転され、時刻t2では、負極性の電圧−V2(例えば、−200V)まで充電される。
この動作についてもう少し詳しく説明すると、溶接用コンデンサ4から溶接トランス5と放電スイッチ6とを介して放電電流Idが流れる経路には、合成インダクタンス10と等価抵抗11とが存在する。このため、時刻t1〜t2の間で溶接用コンデンサ4の電圧がほぼゼロとなった後も、合成インダクタンス10に蓄積されたエネルギーによって今まで流れていたX方向と同方向に放電電流Idが流れ続ける。合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとの振動(共振)動作によって、溶接用コンデンサ4は、正極性とは逆の負極性、すなわち、充電端子aが充電端子bに対して負極性の電圧に反転される。この動作によって、インダクタンス成分10に蓄積されていたエネルギーは、溶接用コンデンサ4に移される。この電圧−V2の絶対値V2は、溶接用コンデンサ4の充電電荷が放電されるときに等価抵抗11によって電力消費されるので、設定電圧V1の絶対値よりも小さくなる。放電用スイッチ6Bは、充電端子bが充電端子aに対して正となる極性で溶接用コンデンサ4が充電されるのに伴い、逆バイアスされてオフする。
時刻t2〜時刻t3では、半導体スイッチ3B1と3B2とがオフであり、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fもオフである。したがって、溶接用コンデンサ4の電圧−V2はほぼその状態で維持される。
次に、時刻t3で負極性の充電期間が開始され、時刻t4で終了する。時刻t3で、制御回路9は位相制御型全波整流器3Bの半導体スイッチ3B1と3B2の位相制御を開始すると共に、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fとにオン駆動信号を与える。時刻t3から時刻t4までの負極性の充電期間の間、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fには、交流入力の1サイクルよりも長い負極性の充電期間中、その負極性の充電期間にほぼ等しいパルス幅のオン駆動信号が与えられる。なお、この負極性の充電期間では、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは当然にオフ状態にある。例えば、負極性の充電期間は交流入力の数十サイクル、又はそれ以上である。
時刻t3から時刻t4までの負極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルで、充電電流が位相制御型全波整流器3Bの正の直流出力端子から、第3の充電用スイッチ3E、充電端子b、溶接用コンデンサ4、充電端子a、第4の充電用スイッチ3Fを通して位相制御型全波整流器3Bの負の直流出力端子に流れる。この負極性の充電期間では、充電電流−Icは矢印Kの方向に流れ、充電端子aが充電端子bに対して負極性になるように、溶接用コンデンサ4を設定電圧−V1まで充電する。負極性の充電期間が開始する時刻t3で、溶接用コンデンサ4は前述したように既に電圧−V2まで充電されているので、その充電期間では電圧差(V1−V2)にほぼ相当する充電電荷を充電するだけでよい。よって、前述したように、設定電圧V1が−900Vで、逆極性充電電圧V2が−200Vであるとすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷(エネルギー)は電圧値の2乗に比例するので、ほぼ5%の電力を節減することができる。また、溶接用コンデンサ4に負極性で充電されるエネルギーを次の溶接時に使用することができるので、溶接用コンデンサ4の充電時間を短縮することが可能になる。
時刻t4から時刻t5の間では、制御回路9は位相制御型全波整流器3Bの半導体スイッチ3B1と3B2の制御端子に位相制御信号を与えず、かつ第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fにオン駆動信号を与えない。したがって、位相制御型全波整流器3Bはオフ状態にあり、また、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fもオフの状態にあるので、溶接用コンデンサ4の充電電荷は実質的に放電されず、設定電圧−V1はそのまま維持される。
次に、時刻t5で、制御回路9は放電用スイッチ6Aにオン信号を供給する。半導体スイッチ6Aがオンすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷は放電され、放電電流−Idが溶接トランス5の1次巻線5Aを矢印Xとは逆方向の矢印Y方向に流れる。放電電流−Idが溶接トランス5の1次巻線5Aを矢印Yに流れるとき、前述したように、放電電流−Idが流れる経路上のインダクタンスである合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとが振動(共振)する。この振動(共振)によって放電電流−Idが流れる経路上に存在する合成インダクタンス10にエネルギーが一時的に蓄えられる。合成インダクタンス10に蓄えられたエネルギーは、今まで電流が流れている矢印Y方向と同じ方向に電流を流し続けようとし、充電端子aが充電端子bに対して正極性の電圧に溶接用コンデンサ4を充電し始める。時刻t5から時刻t6の間で、合成インダクタンス10に蓄えられたエネルギーが溶接用コンデンサ4に移行され、溶接用コンデンサ4の極性が反転する。
時刻t6では、放電電流−Idがゼロとなり、溶接用コンデンサ4は充電端子aが充電端子bに対して正極性の電圧V2となる。この電圧V2は、前述したように、溶接用コンデンサ4からの放電エネルギーが等価抵抗11によって電力消費されるので、設定電圧V1の値よりも小さくなる。放電用スイッチ6Aは、充電端子aが充電端子bに対して正となる極性で溶接用コンデンサ4が充電されるのに伴い、逆バイアスされてオフする。したがって、溶接用コンデンサ4の電圧V2はほぼその状態で維持される。
ここで、正、負極性の充電期間それぞれで溶接用コンデンサ4に充電される充電電荷量は、同様な回路を通して正、負の極性で同じ大きさの設定電圧V1、−V1に充電されるので互いにほぼ等しい。したがって、1次巻線5Aを流れる負極性の放電電流−Idは、正極性の放電電流Idと極性が異なるだけで、その電流は正極性の放電電流Idの電流とほぼ同じである。また、2次巻線5Bを流れる溶接電流は1次巻線5Aを流れる放電電流に比べて溶接トランス5の巻数比NのN倍で大きくなり、互いに方向が異なるだけで電流はほぼ同じになる。溶接トランス5の鉄心は正、負方向の励磁量がほぼ同じであるので、溶接トランス5は実質的に偏励磁せず、また、正、負極性のいずれでもほぼ同じ大きさの溶接電流で被溶接物W1、W2を抵抗溶接することができる。
次に、時刻t7〜時刻t8で示される正極性の充電期間では、時刻t7で、制御回路9は位相制御型全波整流器3Bの半導体スイッチ3B1と3B2の位相制御を開始すると共に、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dとにオン駆動信号を与える。時刻t7から時刻t8までの正極性の充電期間の間、制御回路9は正極性の充電期間にほぼ等しいパルス幅のオン駆動信号を第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dに与え続ける。したがって、正極性の充電期間中、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dはオン状態、あるいはオンと同様な状態にある。正極性の充電期間では第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fはオフ状態である。
時刻t7から時刻t8までの正極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルでは、充電電流Icが位相制御型全波整流器3Bの正の直流出力端子から、第1の充電用スイッチ3C、充電端子a、溶接用コンデンサ4、充電端子b、第2の充電用スイッチ3Dを通して位相制御型全波整流器3Bの負の直流出力端子に流れる。この正極性の充電期間では、充電電流Icは矢印Jの方向に流れ、充電端子aが充電端子bに対して正極性になるように、溶接用コンデンサ4を設定電圧V1まで充電する。正極性の充電期間が開始する時刻t7で、溶接用コンデンサ4は前述したように既に電圧V2まで充電されているので、その充電期間では電圧差(V1−V2)にほぼ相当する充電電荷を充電するだけでよい。前述したように、設定電圧V1が900Vで、電圧V2が200Vであるとすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷(エネルギー)は電圧値の2乗に比例するので、ほぼ5%の電力を節減することができる。また、溶接用コンデンサ4に正極性で充電されるエネルギーを次の溶接時に使用することができるので、溶接用コンデンサ4の充電時間を短縮することが可能になる。
時刻t8から時刻t0に相当する時刻t9までの間では、位相制御型全波整流器3Bはオフ状態にあり、また、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fがオフ状態にあるので、溶接用コンデンサ4の充電電荷は実質的に放電されず、設定電圧V1はそのまま維持される。実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機は前述のような動作を繰り返す。前述から明らかなように、実施形態1のコンデンサ式抵抗溶接機によれば、溶接用コンデンサとして有極性の電解コンデンサを用いずに両極性のコンデンサを用い、交互に異なる正、負の極性にほぼ同じ電流による充電を行っている。また、従来のように転極回路を備えることなく、溶接トランスの1次巻線にほぼ同じ電流の正、負の放電電流量を流すことができる、換言すればほぼ同じ電圧・時間積を印加することができるので、溶接トランスの偏励磁を抑制できる。
さらに、両極性の溶接用コンデンサの充電電圧を有極性の電解コンデンサを用いた場合よりも高くでき、溶接電流をより大電流化できる。また、両極性の溶接用コンデンサからの放電電流の一部分を逆極性に溶接用コンデンサに充電し、次の溶接時にそのエネルギーを利用するので、電力の節減、つまり電力効率を向上させることができ、不要な発熱を低減できる。なお、前述した正又は負の極性の充電期間はプログラミング又はタイマなどで決められた長さの時間であってもよいし、あるいは、溶接用コンデンサ4の充電電圧を検出し、その充電電圧がV1又は−V1になるときに終了する時間であってもよい。このことは、以下に述べる実施形態2〜5でも同じである。
[実施形態2]
図3によって本発明の実施形態2に係るコンデンサ式抵抗溶接機について説明する。実施形態1では両極性充電回路3において、位相制御型全波整流器3Bを用いたが、この実施形態2では一般的な回路構成の全波整流器3Rを用いている。全波整流器3Rを用いたことにより、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dの少なくとも一方、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fの少なくとも一方を位相制御する構成としている。このように両極性充電回路3が実施形態1と異なるので、主に両極性充電回路3及びその動作について説明し、実施形態1と重複する説明については省略する。
全波整流器3Rは、ほぼ特性の等しい2個の整流ダイオード3r、3rを直列接続した2組のアームを並列に接続してブリッジ構成とする回路構成である。一方の前記アームの2個の整流ダイオード3r、3rを直列に接続した部分に、電源トランス3Aの2次巻線3A2の一端が接続される。他方の前記アームの2個の整流ダイオード3r、3rを直列に接続した部分に、電源トランス3Aの2次巻線3A2の他端が接続される。
第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fの接続構成は、実施形態1を示す図1と同じであるので、接続構成については説明しないが、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3FはSCRと称されるサイリスタのような制御可能な半導体スイッチからなる。制御回路9は、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dのいずれか一方又は双方を位相制御し、また、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fのいずれか一方を位相制御する。ここで、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは正極性充電用スイッチを構成し、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fは負極性充電用スイッチを構成する。
第1の充電用スイッチ3Cと第3の充電用スイッチ3Eとが位相制御され、第2の充電用スイッチ3Dと第4の充電用スイッチ3Fは位相制御されない例について、図2を適宜参照しながら説明する。位相制御されない第2の充電用スイッチ3Dと第4の充電用スイッチ3Fは機械的な開閉素子であってもよい。前述したように、時刻t3では、溶接用コンデンサ4の電圧は、図3の充電端子aが充電端子bに対して負の極性の電圧−V2に充電されている。時刻t3から時刻t4までの負極性の充電期間では、制御回路9は第3の充電用スイッチ3Eの制御端子に位相制御信号を与えると共に、第4の充電用スイッチ3Fの制御端子に前述したオン駆動信号を与える。したがって、負極性の充電期間では交流入力の正、負半サイクル毎に第3の充電用スイッチ3Eが制御された位相でオンオフ動作を繰り返し、第4の充電用スイッチ3Fには負極性の充電期間にほぼ等しいパルス幅のオン駆動信号が与えられる。負極性の充電期間では、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dはオフ状態のままにある。
負極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルでは、充電電流−Icが第3の充電用スイッチ3E、充電端子b、溶接用コンデンサ4、充電端子a、第4の充電用スイッチ3Fを通して流れる。この負極性の充電期間では、充電電流−Icは矢印Kの方向に流れ、溶接用コンデンサ4を電圧−V2から設定電圧−V1まで充電する。時刻t4から時刻t5の間では、制御回路9は第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fのいずれにも、位相制御信号及びオン駆動信号を与えない。したがって、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fはすべてオフ状態にあるので、溶接用コンデンサ4の充電電荷は実質的に放電されず、設定電圧−V1はそのまま維持される。
次に、時刻t5で、制御回路9は放電用スイッチ6Aにオン信号を供給する。半導体スイッチ6Aがオンすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷は溶接トランス5の1次巻線5Aを通して放電されるが、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fはすべてオフ状態にあるので、放電電流がこれら充電用スイッチを通してバイパスされることは無い。前述した動作と同様に、放電電流−Idが溶接トランス5の1次巻線5Aを矢印Yに流れるとき、放電電流−Idが流れる経路上に存在する合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとが振動(共振)する。この振動(共振)によって放電電流−Idが流れる期間に合成インダクタンス10にエネルギーが一時的に蓄えられ、合成インダクタンス10に蓄えられたエネルギーによって、電流は今まで流れていた方向矢印Yと同じ方向に流れ続けようとし、充電端子aが充電端子bに対して正極性の電圧に溶接用コンデンサ4を充電し始める。合成インダクタンス10に蓄えられたエネルギーは、溶接用コンデンサ4に移行される。
時刻t6で放電電流がほぼゼロになり、溶接用コンデンサ4は電圧V2に充電される。時刻t7〜時刻t8で示される正極性の充電期間に入る。正極性の充電期間が開始する時刻t7で、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cの制御端子に位相制御信号を与えると共に、第2の充電用スイッチ3Dの制御端子にオン駆動信号を与える。したがって、交流入力の半サイクル毎に第1の充電用スイッチ3Cは制御された位相でオンオフし、第2の充電用スイッチ3Dには正極性の充電期間にほぼ等しいパルス幅のオン駆動信号が与えられる。この正極性の充電期間では、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fはオフである。
時刻t7から時刻t8までの正極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルでは、充電電流Icが第1の充電用スイッチ3C、充電端子a、溶接用コンデンサ4、充電端子b、第2の充電用スイッチ3Dを通して流れる。正極性の充電期間では、充電電流Icは矢印Kとは逆方向の矢印Jの方向に流れ、溶接用コンデンサ4を設定電圧V1まで充電する。
なお、正、負極性の充電期間が開始するときには、溶接用コンデンサ4は前述したように既に電圧V2まで充電されているので、その充電期間では電圧差(V1−V2)にほぼ相当する充電電荷を充電するだけでよい。前述したように、設定電圧V1又は−V1が900V又は−900Vで、電圧V2又は−V2が200V又は−200Vであるとすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷(エネルギー)は電圧値の2乗に比例するので、ほぼ5%の電力を節減することができる。また、合成インダクタンス10に蓄積されたエネルギーによって溶接用コンデンサ4に充電されるエネルギーを次の溶接時に使用することができるので、溶接用コンデンサ4の充電時間を短縮することが可能になる。
この実施形態2のコンデンサ式抵抗溶接機においても、前述したように、正、負極性の充電期間それぞれで溶接用コンデンサ4に充電される充電電荷量はほぼ等しい。したがって、正、負極性の放電電流もほぼ等しいので、溶接トランス5の鉄心は正、負方向の励磁量がほぼ同じであり、溶接トランス5は実質的に偏励磁を生じない。また、有極性の電解コンデンサに比べて充電電圧の高い両極性のコンデンサを溶接用コンデンサ4として用いているので、溶接電流をより大電流化できる。更に、溶接用コンデンサとして両極性のコンデンサを用いているので、溶接用コンデンサからの放電電流の一部分を逆極性に溶接用コンデンサに充電し、次の溶接時にそのエネルギーを利用するので、電力の節減、つまり電力効率を向上させることができるなど実施形態1と同様な効果が得られる。
以上では、第1の充電用スイッチ3Cと第3の充電用スイッチ3Eとが位相制御され、第2の充電用スイッチ3Dと第4の充電用スイッチ3Fは位相制御されない例について説明したが、それらが逆であってもよい。また、正極性の充電期間で第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dの双方が同一の位相で制御され、負極性の充電期間で第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fの双方が同一の位相で制御されてもよい。この場合には、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fのすべてが半導体スイッチであることが好ましい。
[実施形態3]
図4によって本発明に係る実施形態3に係るコンデンサ式抵抗溶接機について説明する。この実施例3では、両極性充電回路3が実施形態1、2と異なるので、主に両極性充電回路3及びその動作について説明し、その他の実施形態1〜2と重複する説明については省略する。この実施例3では、両極性充電回路3として、電源トランス3Aに接続された倍電圧整流回路3Sを採用している。倍電圧整流回路3Sは、4個のサイリスタのような第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fと倍電圧用コンデンサ3Gと倍電圧用コンデンサ3Hとからなる。第1の充電用スイッチ3Cと第3の充電用スイッチ3Eは互いに逆向きに並列接続されて、第1の双方向充電スイッチ3CEを構成する。第2の充電用スイッチ3Dと第4の充電用スイッチ3Fは互いに逆向きに並列接続されて、第2の双方向充電スイッチ3DFを構成する。
第1の双方向充電スイッチ3CEと第2の双方向充電スイッチ3DFとは直列に接続され、倍電圧用コンデンサ3Gと3Hとは直列に接続される。充電端子aとbとの間には、直列に接続される第1の双方向充電スイッチ3CEと第2の双方向充電スイッチ3DFと、直列に接続される倍電圧用コンデンサ3Gと3Hとがそれぞれ接続される。また、トランス3Aの2次巻線3A2の一端が第1の双方向充電スイッチ3CEと第2の双方向充電スイッチ3DFとの接続部に接続され、2次巻線3A2の他端が倍電圧用コンデンサ3Gと3Hとの接続部にそれぞれ接続される。ここで、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは、正極性充電用スイッチを構成し、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fは負極性充電用スイッチを構成する。
次に、図2を適宜参照しながら、この倍電圧型の両極性充電回路3の動作について説明する。溶接トランス4の充電電圧の設定電圧値をV1とするとき、電源トランス3Aの2次巻線3A2の交流電圧のピーク値がほぼV1/2であるものとして説明する。先ず、前述した正極性の充電期間(図2の時刻t7〜t8)の開始時刻t7では、前述したように溶接用コンデンサ4が電圧V2に充電されている。正極性の充電期間では、制御回路9が第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dに位相制御信号を与える。2次巻線3A2の極性を示す黒点側が交流入力の正の半サイクルでは、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cだけに位相制御信号を与え、第1の充電用スイッチ3Cを導通させて倍電圧用コンデンサ3Gを充電端子a側の端子の方が高い電圧となる図示極性に充電する。倍電圧用コンデンサ3Gは電源トランス3Aの2次巻線3A2の電圧V1/2のほぼ等しい電圧に充電される。
次に、2次巻線3A2の極性を示す黒点側が交流入力の負の半サイクルでは、制御回路9は第2の充電用スイッチ3Dだけに位相制御信号を与え、第2の充電用スイッチ3Dを導通させて倍電圧用コンデンサ3Hを充電端子b側の端子の方が低い電圧となる図示極性に充電する。倍電圧用コンデンサ3Hは電源トランス3Aの2次巻線3A2の電圧V1/2のほぼ等しい電圧に充電される。正極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは前述のような動作が繰り返し行われ、正極性の充電期間の最後には、溶接用コンデンサ4が倍電圧用コンデンサ3Gと3Hの両端の電圧である充電端子aと充電端子bとの間の電圧、つまり設定電圧値V1まで充電される。
溶接用コンデンサ4が設定電圧V1まで充電されると、制御回路9は第1の充電用スイッチ3C及び第2の充電用スイッチ3Dに位相制御信号を与えるのを止める。正極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルでは、矢印Jで示すように、充電電流は充電端子aから溶接用コンデンサ4を通して充電端子bの方向に流れる。したがって、正極性の充電期間の溶接用コンデンサ4の設定電圧V1は、充電端子a側が充電端子側bに対して正となる極性の電圧である。
次に、前述した負極性の充電期間(図2の時刻t3〜t4)の開始時刻t3では、前述したように、溶接用コンデンサ4の電圧は、図3の充電端子aが充電端子bに対して負の極性の電圧−V2に充電されている。制御回路9は第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fに位相制御信号を与える。2次巻線3A2の極性を示す黒点側が交流入力の負の半サイクルでは、制御回路9は第3の充電用スイッチ3Eに位相制御信号を与え、第3の充電用スイッチ3Eを導通させて倍電圧用コンデンサ3Gを充電端子a側の端子の方が低い電圧となる図示極性とは逆の極性に充電する。倍電圧用コンデンサ3Gは、電源トランス3Aの2次巻線3A2の電圧V1/2のほぼ等しい大きさの負極性の電圧に充電される。
次に、2次巻線3A2の極性を示す黒点側が交流入力の正の半サイクルでは、制御回路9が第4の充電用スイッチ3Fに位相制御信号を与え、第4の充電用スイッチ3Fを導通させて倍電圧用コンデンサ3Hを充電端子b側の端子の方が高い電圧となる図示極性とは逆の極性に充電する。倍電圧用コンデンサ3Hは電源トランス3Aの2次巻線3A2の電圧V1/2にほぼ等しい大きさの負極性の電圧に充電される。負極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは前述のような動作が繰り返し行われ、負極性の充電期間の最後(例えば、時刻t4)には、溶接用コンデンサ4が倍電圧用コンデンサ3Gと3Hの両端の電圧である充電端子aと充電端子bとの間の電圧、つまり設定電圧−V1まで充電される。負極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルでは、矢印Kで示すように、充電電流は充電端子bから溶接用コンデンサ4、充電端子aの方向に流れる。したがって、負極性の充電期間の溶接用コンデンサ4の充電電圧は、充電端子a側が充電端子側bに対して負となる極性の電圧となる。
前述のようにして、溶接用コンデンサ4は交互に正、負の極性の設定電圧V1まで充電され、実施形態1、2で述べたのと同様に放電されて、抵抗溶接が行われる。この実施形態3のコンデンサ式抵抗溶接機においても、前述したように、正、負の極性の充電期間それぞれで溶接用コンデンサ4に充電される充電電荷量はほぼ等しい。したがって、正、負極性の放電電流もほぼ等しい。溶接トランス5の鉄心は正、負方向の励磁量がほぼ同じであり、溶接トランス5の偏励磁を抑制できる。また、有極性の電解コンデンサに比べて充電電圧の高い両極性のコンデンサを溶接用コンデンサ4として用いているので、溶接電流をより大電流化できる。
更に、溶接用コンデンサとして両極性のコンデンサを用い、放電電流が流れる経路上に存在する合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとを振動(共振)させることにより、放電電流が流れる経路上の合成インダクタンス10にエネルギーを一旦蓄え、その蓄えたエネルギーを溶接用コンデンサ4に移行させる。次の溶接時にそのエネルギーを利用するので、電力の節減、つまり電力効率を向上させることができ、溶接用コンデンサ4の充電時間を短縮することが可能になるなど、実施形態1と同様な効果を得ることができる。
また、この倍電圧型の両極性充電回路3によれば、第1の充電用スイッチ3C〜第4の充電用スイッチ3Fが倍電圧用コンデンサ3Gと3Hと協働して倍電圧整流回路を構成するので、別途に整流素子を用いる必要は無く、また、溶接用コンデンサ4の設定電圧値V1が有極性の電解コンデンサの最大充電電圧値よりも高い場合にも、容易に高い両極性の設定電圧値V1を充電端子aと充電端子bとの間に供給することができる。なお、第1の双方向充電スイッチ3CE及び第2の双方向充電スイッチDFは、それぞれトライアックのような双方向性半導体スイッチであってもよい。この場合には、充電用スイッチの個数を減らすことができ、第1の双方向充電スイッチ3CE及び第2の双方向充電スイッチDFの双方が前記正極性充電用スイッチ、前記負極性充電用スイッチとして働く。
[実施形態4]
図5によって本発明の実施形態4に係るコンデンサ式抵抗溶接機について説明する。この実施例4では、両極性充電回路3が実施形態1〜3と異なるので、主に両極性充電回路3及びその動作について説明し、その他の実施形態1〜3と重複する説明については省略する。この実施例4では、両極性の充電回路3として、1次巻線3A1と第1の2次巻線3A2、第2の2次巻線3A3を有する電源トランス3Aと、双方向充電用スイッチ3CEと3DFとからなる。
電源トランス3Aの第1の2次巻線3A2と第2の2次巻線3A3の巻数はほぼ同じであり、第1の2次巻線3A2と第2の2次巻線3A3は互いに直列に接続され、その接続点Pは充電端子bに接続される。溶接トランス4の充電電圧の設定電圧をV1とするとき、電源トランス3Aの第1の2次巻線3A2、第2の2次巻線3A3それぞれの交流電圧のピーク値は設定電圧V1以上であるものとする。
前述したサイリスタのような第1の充電用スイッチ3Cと第3の充電用スイッチ3Eは互いに逆向きに並列接続され、第1の双方向充電用スイッチ3CEを構成する。前述したサイリスタのような第2の充電用スイッチ3Dと第4の充電用スイッチ3Fは互いに逆向きに並列接続され、第2の双方向充電用スイッチ3DFを構成する。第1の双方向充電用スイッチ3CEの一端は第1の2次巻線3A2の極性を示す黒点側に接続され、他端は充電端子aに接続される。第2の双方向充電用スイッチ3DFの一端は第2の2次巻線3A3の極性を示す黒点側とは逆極性の非黒点側に接続され、その他端は充電端子aに接続される。ここで、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dは、正極性充電用スイッチを構成し、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fは負極性充電用スイッチを構成する。なお、第1の双方向充電用スイッチ3CE及び第2の双方向充電用スイッチ3DFはトライアックのような双方向性半導体スイッチからなってもよい。
次に、両極性充電回路3の動作について説明する。適宜図2を参照するものとする。先ず、前述した正極性の充電期間、例えば図2の時刻t7〜t8では、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dに位相制御信号を与え、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fには位相制御信号を与えない。第1の2次巻線3A2及び第2の2次巻線3A3の極性を示す黒点側が交流入力の正の半サイクルでは、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cだけに位相制御信号を与え、第1の充電用スイッチ3Cを導通させる。これに伴い、矢印Jで示すように、充電電流が充電端子aから溶接用コンデンサ4を通して充電端子bに流れて溶接用コンデンサ4を充電する。
次に、第1の2次巻線3A2及び第2の2次巻線3A3の極性を示す黒点側が交流入力の負の半サイクルでは、制御回路9は第2の充電用スイッチ3Dだけに位相制御信号を与え、第2の充電用スイッチ3Dを導通させる。これに伴い、矢印Jで示すように、充電電流が充電端子aから溶接用コンデンサ4を通して充電端子bに流れて溶接用コンデンサ4を充電する。正極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは、前述のような動作が繰り返し行われ、正極性の充電期間の最後には、溶接用コンデンサ4が設定電圧V1まで充電される。正極性の充電期間の溶接用コンデンサ4の充電電圧は、充電端子a側が充電端子側bに対して正となる極性の電圧である。
次に、前述した負極性の充電期間、例えば図2の時刻t3〜t4では、制御回路9は第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fに位相制御信号を与える。負極性の充電期間において、第1の2次巻線3A2及び第2の2次巻線3A3の極性を示す黒点側が負極性であるとき、制御回路9は第3の充電用スイッチ3Eだけに位相制御信号を与え、第3の充電用スイッチ3Eを導通させる。これに伴い、矢印Kで示すように、充電電流が充電端子bから溶接用コンデンサ4を通して充電端子aに流れて溶接用コンデンサ4を充電する。
次に、第1の2次巻線3A2及び第2の2次巻線3A3の極性を示す黒点側が正極性であるとき、制御回路9は第4の充電用スイッチ3Fだけに位相制御信号を与え、第4の充電用スイッチ3Fを導通させる。これに伴い、矢印Kで示すように、充電電流が充電端子bから溶接用コンデンサ4を通して充電端子aに流れて溶接用コンデンサ4を充電する。負極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは前述のような動作が繰り返し行われ、負極性の充電期間の最後(例えば、時刻t4)には、溶接用コンデンサ4が充電端子aと充電端子bとの間の電圧、つまり設定電圧−V1まで充電される。負極性の充電期間の溶接用コンデンサ4の充電電圧は、充電端子a側が充電端子側bに対して負となる極性の電圧である。
この実施形態4のコンデンサ式抵抗溶接機においても、前述したように、正、負極性の充電期間それぞれで溶接用コンデンサ4に充電される充電電荷量はほぼ等しい。したがって、正、負極性の放電電流量もほぼ等しいので、溶接トランス5の鉄心は正、負方向の励磁量がほぼ同じであり、溶接トランス5の偏励磁を抑制できる。また、有極性の電解コンデンサに比べて充電電圧の高い両極性のコンデンサを溶接用コンデンサ4として用いているので、溶接電流をより大電流化できる。更に、溶接用コンデンサとして両極性のコンデンサを用いているので、前述と同様に、溶接用コンデンサからの放電電流の一部分を逆極性に溶接用コンデンサに充電し、次の溶接時にそのエネルギーを利用するので、電力の節減、つまり電力効率を向上させることができ、溶接用コンデンサの充電時間を短縮することも可能となるなどの効果を得ることができる。更に、第1の双方向充電用スイッチ3CEと第2の双方向充電用スイッチ3DFとが整流ダイオードの働きも兼ねているので、別途、整流回路を備える必要が無い。
[実施形態5]
図6によって本発明に係る実施形態5に係るコンデンサ式抵抗溶接機について説明する。この実施例5では、両極性充電回路3は図3に示した実施形態2の両極性充電回路の構成と同じであり、溶接用コンデンサ4と放電用スイッチ6との配置位置が互いに入れ替わっている。主に実施形態2に係るコンデンサ式抵抗溶接機と異なる部分について説明し、その他の実施形態1〜4と重複する説明については省略する。
溶接用コンデンサ4は溶接トランス5の1次巻線5Aと直列に接続され、溶接用コンデンサ4が充電されるとき、1次巻線5Aに充電電流が流れ、また、溶接用コンデンサ4の充電電荷が放電されるとき、充電電流とは逆向きに放電電流が流れる接続構成になっている。放電用スイッチ6は、直列接続された溶接トランス5の1次巻線5Aと溶接用コンデンサ4とに並列に接続されている。放電用スイッチ6は上述したものと同じであるので、説明を省略する。
前述した正極性の充電期間では、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dとが導通し、充電電流は第1の充電用スイッチ3Cから溶接トランス5の1次巻線5A、充電端子a、溶接用コンデンサ4、充電端子b、第2の充電用スイッチ3Dを通して矢印Jの方向に流れる。正極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルで、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cを位相制御し、正極性の充電期間とほぼパルス幅の等しいオン駆動信号を第2の充電用スイッチ3Dに与える。なお、正極性の充電期間において、第1の充電用スイッチ3Cと第2の充電用スイッチ3Dとが同一の位相で位相制御されても構わない。
正極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは、前述のような動作が繰り返し行われ、矢印Jの方向に充電電流が流れて、正極性の充電期間の最後には、溶接用コンデンサ4が設定電圧値V1まで充電される。正極性の充電期間における溶接用コンデンサ4の充電電圧は、充電端子a側が充電端子側bに対して正となる極性の電圧である。この正極性の充電期間で、溶接トランス5の1次巻線5Aには溶接用コンデンサ4に流れた充電電流の電流量に等しい電流が流れる。
次に、放電用スイッチ6Aがオンすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷は一気に放電され、放電電流が溶接用コンデンサ4から充電端子a、1次巻線5A、実施形態1で述べた合成インダクタンス10と等価抵抗11、放電用スイッチ6A、充電端子bを通して流れる。放電電流の向きは矢印Kの方向であり、充電電流の向きJとは逆の方向である。ここで、放電電流が溶接トランス5の1次巻線5Aを矢印Kの方向に流れるとき、前述したように、放電電流が流れる経路上のインダクタンスである合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとが振動(共振)する。この振動(共振)によって放電電流が流れる経路上の合成インダクタンス10にエネルギーが一旦蓄えられ、その蓄えられたエネルギーは溶接用コンデンサ4に移行され、溶接用コンデンサ4の電圧は、充電端子aが充電端子bに対して負の極性となる電圧−V2に充電される。
溶接用コンデンサ4の充電電荷が放電された後、前述した次の負極性の充電期間では、第3の充電用スイッチ3Eと第4の充電用スイッチ3Fとが導通し、充電電流は第3の充電用スイッチ3Eから充電端子b、溶接用コンデンサ4、充電端子a、溶接トランス5の1次巻線5A、前述した等価抵抗11、合成インダクタンス10、第4の充電用スイッチ3Fを通して矢印Kの方向に流れる。負極性の充電期間における交流入力の各正、負半サイクルで、制御回路9は第1の充電用スイッチ3Cを位相制御し、負極性の充電期間とほぼパルス幅の等しいオン駆動信号を第2の充電用スイッチ3Dに与える。なお、負極性の充電期間において、第3の充電用スイッチ3Eと第2の充電用スイッチ3Fとが同一の位相で位相制御されても構わない。
負極性の充電期間における交流入力の正、負の各半サイクルでは、前述のような動作が繰り返し行われ、矢印Kの方向に充電電流が流れて、負極性の充電期間の最後には、溶接用コンデンサ4が設定電圧−V1まで充電される。負極性の充電期間における溶接用コンデンサ4の充電電圧は、充電端子a側が充電端子側bに対して負となる極性の電圧である。この負極性の充電期間で、溶接トランス5の1次巻線5Aには溶接用コンデンサ4に流れた充電電流の時間積分値に等しい電流量の電流が流れる。
次に、放電用スイッチ6Bがオンすると、溶接用コンデンサ4の充電電荷は一気に放電され、放電電流が溶接用コンデンサ4から充電端子b、放電用スイッチ6B、前述した合成インダクタンス10、等価抵抗11、1次巻線5A、充電端子aを通して矢印Jの方向に流れる。放電電流の向きは矢印Jの方向であり、充電電流の向きKとは逆の方向である。負極性の充電期間においても、溶接用コンデンサ4の充電電荷はすべて放電され、前述したように、放電電流が流れる経路上の合成インダクタンス10と溶接用コンデンサ4のキャパシタンスとが振動(共振)する。この振動(共振)によって放電電流が流れる経路上の合成インダクタンス10にエネルギーが一旦蓄えられ、その蓄えられたエネルギーは溶接用コンデンサ4に移行し、充電端子aが充電端子bに対して正極性の電圧V2に溶接用コンデンサ4を充電する。
この実施形態5に係るコンデンサ式抵抗溶接機においても、有極性の電解コンデンサに比べて充電電圧の高い両極性のコンデンサを溶接用コンデンサ4として用いているので、溶接電流をより大電流化できる。更に、溶接用コンデンサとして両極性のコンデンサを用い、溶接用コンデンサからの放電電流の一部分を逆極性に溶接用コンデンサに充電し、次の溶接時にそのエネルギーを利用するので、電力の節減、つまり電力効率を向上させることができるなど実施形態1と同様な効果を得ることができる。なお、実施形態5では、充電回路3の全波整流回路3Rに替えて、図1に示される位相制御型全波整流回路3Bであってもよい。
また、上述した本発明に係る実施形態1から実施形態5では、正、負極性の放電電流量はほぼ等しく、言い換えればトランス5の鉄心に印加される電圧・時間積はほぼ等しく、溶接トランス5の鉄心は正、負方向の励磁量がほぼ同じであり、溶接トランス5の偏励磁を抑制できる。なお、放電前の充電時には溶接電極7と溶接電極8との間は一般的に開いており、充電時に1次巻線5Aに発生する電圧により溶接トランス5の鉄心は励磁される。この充電時の鉄心の励磁の向きは直後の放電の励磁の向きに対して逆極性であるため、鉄心の偏励磁極性が不明な電源投入後の初回の放電においても鉄心が偏励磁することなく、1次巻線5Aに流れる放電電流に見合った大きさの溶接電流を2次巻線5Bに流すことができる。
なお、上述した実施形態においては、インダクタンス成分は、溶接トランス5の1次巻線5Aと2次巻線5Bとの磁気結合の悪さに起因する漏れインダクタンスの他に、溶接用コンデンサ4からの放電電流が流れる溶接トランス5の1次側配線のインダクタンスや、更には2次側の配線インダクタンスなどを1次側に等価的に換算したものも含めた合成インダクタンスとしたが、溶接トランス4に含まれる励磁インダクタンス、漏れインダクタンス又は溶接トランス4とは別個のインダクタ手段のインダクタンスを有するとしてもよい。