以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電池パックを説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態では、フォークリフトに搭載される電池パックに適用する。フォークリフトは、荷役作業を行う産業車両である。本実施形態に係る電池パックは、フォークリフトのバッテリーとして機能する。また、本実施形態に係る電池パックは、フォークリフトのカウンタウエイトとしても機能し、カウンタウエイトとしての重さを調整するために筐体の外側に追加のウエイト部材が固定される。
図1を参照して、本実施形態に係るフォークリフト1について説明する。図1は、フォークリフト1を示す概略側面図である。図1に示すように、フォークリフト1は、車体2、荷役装置3及び運転室4を主な構成として備えている。荷役装置3は、車体2の前部に配置される。運転室4は、車体2の中央の上部に配置される。
車体2には、前下部に駆動輪2aが設けられ、後下部に操舵輪2bが設けられている。また、車体2には、内部に走行用モータ2cと荷役用モータ2dが搭載されている。走行用モータ2cは、駆動輪2aの駆動源となるモータである。荷役用モータ2dは、荷役装置3のフォーク3aの駆動源となるモータである。また、車体2には、電池パック10が搭載されている。電池パック10は、運転室4の下方に配置されている。電池パック10は、走行用モータ2c及び荷役用モータ2dなどの電力源となる。
荷役装置3は、左右一対のフォーク3a及びマスト3bを有している。マスト3bは、車体2の前部に立設されている。フォーク3aは、マスト3bにリフトブラケット3cを介して取り付けられている。フォーク3aは、積荷Aを支持するための部材である。フォーク3aは、マスト3bに結合されたリフトシリンダ3dの駆動力により、リフトブラケット3cと共に上下方向に移動可能である。また、フォーク3aは、マスト3bに結合されたティルトシリンダ3eの駆動力により、ティルトシリンダ3eとの結合点を回転中心として前後方向に回動可能である。
運転室4には、運転者(図示せず)が着座可能な運転シート4aが設けられている。また、運転室4には、運転シート4aの前方にハンドル4bが設けられている。
電池パック10(追加ウエイト部材40を含む)は、フォーク3aにより支持される積荷Aの重量と釣り合いをとるためのカウンタウエイトとして機能する。換言すれば、フォークリフト1は、電池パック10をカウンタウエイトとして備えている。追加ウエイト部材40の重量は、電池モジュール20などを収容した筐体30の重量とフォークリフト1における積荷Aの許容最大荷重に応じて決められる。
図2及び図3を参照して、第1実施形態に係る電池パック10Aについて説明する。図2は、電池パック10Aの外観を示す概略斜視図である。図3は、電池パック10Aの内部を示す概略斜視図である。図2は電池パック10Aを追加ウエイト部材40側から見た斜視図であり、図3は電池パック10Aを追加ウエイト部材40の反対側から見た斜視図である。図3では、電池パック10A(筐体30)の内部の電池モジュール20及びその固定用の部材のみを図示しており、配線用の部材及び制御機器などの他の部材を省略している。
電池パック10Aは、電池モジュール20を筐体30内に収容している。電池パック10Aは、上述したようにフォークリフト1のバッテリーとして機能するとともにカウンタウエイトとして機能する。電池パック10Aは、筐体30を構成する一つの壁部の内側に電池モジュール20が固定され、同じ壁部の外側に追加ウエイト部材40(筐体外部材)が固定される。この筐体30の壁部への固定では、壁部を貫通する貫通孔を電池モジュール20と追加ウエイト部材40とで共通孔として利用する。
なお、図3に示す例では、筐体30内に電池モジュール20を4個収容し、上下方向に2段に配置されるとともに左右方向に2列並べられたものを示している。これは一例であり、電池モジュール20の個数については1個以上の個数が適宜決められ、電池モジュール20の配置についても筐体30の形状などに応じて適宜決められる。但し、電池パックの仕様により、筐体30内に収容可能な個数よりも少ない個数の電池モジュール20が収容される場合がある。従来の電池パックでは、収納可能な個数よりも電池モジュールの個数が少ない場合、筐体内の空いている箇所にダミーモジュールを設けることによりカウンタウエイトとしての重量調整を行っていた。一方、本実施形態に係る電池パック10では、追加ウエイト部材40によってカウンタウエイトとしての重量調整が行われる。
電池モジュール20について説明する。電池モジュール20は、複数(図3に示す例では7個)の電池セル21を互いに電気的に接続することによって構成されている。電池セル21は、電池ホルダ22によって保持されている。複数の電池セル21は、電池ホルダ22に保持された状態で一方向に並べられている。
電池セル21は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池といった蓄電池、あるいは電気二重層キャパシタなどである。電池セル21は、例えば、ケース内に電解液と電極組立体を収容してなる。電極組立体は、正極、負極及び正極と負極とを絶縁するセパレータを複数有している。この複数の正極、負極及びセパレータは、正極と負極との間にセパレータを挟んだ状態で積層されている。
電池セル21は、正極端子と負極端子を有している。複数の電池セル21は、極性が異なる端子が隣り合うように配列されている。複数の電池セル21は、バスバー23によって電気的に直列に接続されている。電池セル21と電池セル21との間には、伝熱プレート(図示せず)が配置されている。伝熱プレートは、例えば、断面が略L字の平板状の部材であり、一方の平板部が電池セル21と電池セル21との間に配置され、他方の平板部が筐体30の壁部に接するように配置される。電池セル21の並び方向の両端には、エンドプレート24,24が設けられている。複数の電池セル21は、一対のエンドプレート24,24に挟み込まれた状態で拘束され、拘束荷重が付加されている。エンドプレート24の外側面24aには、ブラケット25が取り付けられている。電池モジュール20は、一対のブラケット25(筐体内部材)により筐体30の一つの壁部に固定されている。
筐体30について説明する。筐体30は、箱状であり、例えば、図3に示す略直方体形状である。筐体30は、本体31と、天板32と、蓋部材33とを有する。筐体30を形成する材料としては、例えば、鉄などの金属材料である。筐体30の内部は、電池モジュール20、配線用の部材(図示せず)、制御機器(図示せず)などが収容される収容空間Sとなっている。筐体30は、内部から気体、液体が外部に漏れないように密閉されている。
本体31は、底板34と、側板35,36,37とからなる。底板34は、所定の厚みを有する矩形の平板状である。側板35は、底板34の一方の短辺の縁部に立設されている。側板36は、底板34の他方の短辺の縁部に立設されている。側板35と側板36とは、同じ形状であり、所定の厚みを有する矩形の平板状である。側板37は、底板34の一方の長辺の縁部に立設されている。側板37は、所定の厚みを有する矩形の平板状である。底板34の各縁部と側板35,36,37の縁部とは、溶接などによってそれぞれ接合されている。また、側板37の各縁部と側板35,36の縁部とは、溶接などによってそれぞれ接合されている。
天板32は、本体31の側板35,36,37で形成される上部の開口部分を塞ぐ部材である。天板32は、所定の厚みを有する矩形の平板状である。天板32の各縁部は、ボルトなどの締結部材によって側板35,36,37の縁部にそれぞれ固定されている。蓋部材33は、本体31の底板34と側板35,36及び天板32で形成される開口部分を塞ぐ部材である。蓋部材33は、所定の厚みを有する矩形の平板状である。蓋部材33の各縁部は、ボルトなどの締結部材によって底板34、側板35,36及び天板32の縁部にそれぞれ固定されている。
追加ウエイト部材40について説明する。追加ウエイト部材40は、カウンタウエイトとして機能する電池パック10Aの重量調整用の部材である。追加ウエイト部材40は、所定の厚みを有する矩形の平板状である。追加ウエイト部材40は、筐体30を構成する一つの壁部(主に側板37からなる壁部)全面の形状と略同じ矩形状である。追加ウエイト部材40は、この筐体30の一つの壁部に固定されている。この追加ウエイト部材40が固定される壁部は、一対のブラケット25,25を用いて電池モジュール20が固定される壁部と同じ壁部である。追加ウエイト部材40を形成する材料としては、例えば、鉄などの金属材料である。追加ウエイト部材40の厚みは、追加ウエイト部材40を形成する材料の密度と重量調整用として必要な重量に応じて適宜決められる。例えば、筐体30内に収納可能な個数よりも電池モジュールの個数が少ない場合、追加ウエイト部材40の厚みを厚くして、カウンタウエイトとして必要な重量を確保する。
図4を参照して、ブラケット25及び追加ウエイト部材40と筐体30の壁部(側板37)との固定構造について説明する。図4は、電池パック10Aにおけるブラケット25及び追加ウエイト部材40と筐体30の壁部との固定構造を示す要部拡大断面図である。
筐体30の側板37には、ネジ溝付きの貫通孔38が形成されている。貫通孔38は、側板37の内壁面37aから外壁面37bに至るように側板37の厚さ方向に貫通して形成されている。貫通孔38の内壁には、内壁面37a側の端部から外壁面37b側の端部までの全体にわたってネジ溝38aが形成されている。また、追加ウエイト部材40には、貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、追加ウエイト部材40の内壁面40aから外壁面40bに至るように追加ウエイト部材40の厚さ方向に貫通して形成されている。貫通孔41は、側板37のネジ溝38a付きの貫通孔38の内径と略同径又は僅かに大きい内径を有する。また、エンドプレート24には、ネジ孔26が形成されている。
ブラケット25は、エンドプレート24(電池モジュール20)を側板37に固定するための部材である。ブラケット25は、例えば、鉄などの金属材料により断面が略L字の平板状に形成されている。ブラケット25は、第1の平板部27と、第1の平板部27の一縁部において当該第1の平板部27に直交するように形成された第2の平板部28とを有している。第1の平板部27は、エンドプレート24側に固定される部材である。第1の平板部27には、貫通孔27aが形成されている。貫通孔27aは、エンドプレート24のネジ孔26の内径と略同径又は僅かに大きい内径を有する。第2の平板部28は、側板37側に固定される部材である。第2の平板部28には、貫通孔28aが形成されている。貫通孔28aは、側板37のネジ溝38a付きの貫通孔38の内径と略同径又は僅かに大きい内径を有する。
第1の平板部27に形成される貫通孔27aの個数は、1個以上であり、例えば、図3に示す例では2個である。第2の平板部28に形成される貫通孔28aの個数は、1個以上であり、例えば、図3に示す例では2個である。側板37に形成される貫通孔38の個数は、エンドプレート24の個数と第2の平板部28に形成される貫通孔28aの個数によって決まり、例えば、図3に示す例では8(エンドプレート24の個数)×2(第2の平板部28に形成される貫通孔28aの個数)=16個である。側板37に形成される各貫通孔38の位置は、側板37に対して各ブラケット25の第2の平板部28の貫通孔28aが配置される位置に対応した位置である。追加ウエイト部材40に形成される貫通孔41の個数は、側板37に形成される貫通孔38の個数と同じ個数である。追加ウエイト部材40に形成される各貫通孔41の位置は、側板37に形成される各貫通孔38の位置に対応した位置である。
ブラケット25は、貫通孔27aとエンドプレート24のネジ孔26とを位置合わせしかつ貫通孔28aと側板37の貫通孔38とを位置合わせした状態で、第1の平板部27がエンドプレート24の外側面24aに沿うとともに第2の平板部28が側板37の内壁面37aに沿うようにして配置されている。そして、エンドプレート24に形成されているネジ孔26毎に、ネジ部材50が、貫通孔27aに通されて、ネジ孔26に螺合されている。また、側板37に形成されている貫通孔38毎に、ネジ部材51(第1のネジ部材(固定部材))が、貫通孔28aに通されて、貫通孔38のネジ溝38aに螺合されている。これにより、ブラケット25が、エンドプレート24と側板37とに強固に固定される。そして、電池モジュール20が、一対のブラケット25により側板37の内壁面37aに強固に固定される。
追加ウエイト部材40は、貫通孔41と側板37の貫通孔38とをそれぞれ位置合わせした状態で、内壁面40aが側板37の外壁面37bに沿うようにして配置されている。そして、追加ウエイト部材40に形成されている貫通孔41毎に、ネジ部材52(第2のネジ部材(固定部材))が、貫通孔41に通されて、貫通孔38のネジ溝38aに螺合されている。これにより、追加ウエイト部材40が、側板37の外壁面37bに強固に固定される。
ネジ部材50,51,52は、例えば、六角ボルトである。ネジ部材50,51,52は、軸部にシールための処理が施されたシールボルトでもよい。ネジ部材51とネジ部材52とは同じ貫通孔38のネジ溝38aに螺合されるので、ネジ部材51の軸部51aの外径とネジ部材52の軸部52aの外径とは、略同径(貫通孔38の内径と略同径)である。
ネジ部材51の軸部51aは、貫通孔28aを通って貫通孔38の一端側(内壁面37a側)でネジ溝38aに螺合されている。その軸部51aの先端面51bは、貫通孔38の中間部分に位置している。一方、ネジ部材52の軸部52aは、貫通孔41を通って貫通孔38の他端側(外壁面37b側)でネジ溝38aに螺合されている。その軸部52aの先端面52bは、貫通孔38の中間部分に位置している。軸部51aの先端面51bと軸部52aの先端面52bとの間には、少し隙間でできる程度が望ましい。軸部51aの貫通孔38への挿入量と軸部52aの貫通孔38への挿入量とは、略同じ量である。ネジ部材51の軸部51aの長さは、貫通孔38の全長の二分の一の長さより僅かに短い長さに貫通孔28aの全長を加算した長さとなっている。また、ネジ部材52の軸部52aの長さは、貫通孔38の全長の二分の一の長さより僅かに短い長さに貫通孔41の全長を加算した長さとなっている。このように軸部51a,52aの各長さを先端面51bと先端面52bとの間に少し隙間ができる程度の長さとしておくことにより、軸部51aと軸部52aの少なくとも一方の長さが誤差で長くなった場合でも対処できる。
軸部51aの貫通孔38への挿入量と軸部52aの貫通孔38への挿入量とは、上記のように略同じ挿入量とせずに、異なる挿入量としてもよい。例えば、側板37の内壁面37a側の重量(電池モジュール20などの重量)と外壁面37b側の重量(追加ウエイト部材40の重量)との重量比に応じて、各挿入量を設定してもよい。また、側板37における貫通孔38の位置(すなわち、ブラケット25と追加ウエイト部材40が固定される位置)に応じて、各挿入量を設定してもよい。例えば、電池モジュール20(ブラケット25)が側板37の上方側に少し片寄って配置される場合、軸部51aの挿入量を軸部52aの挿入量よりも多くする。また、一つのブラケット25で用いられる上下2本のネジ部材51で異なる挿入量としてもよく、例えば、上方のネジ部材51の挿入量を下方のネジ部材51の挿入量よりも多くする。また、電池モジュール20の2つのブラケット25毎に異なる挿入量としてもよく、例えば、上段の電池モジュール20の2つのブラケット25で用いられるネジ部材51の挿入量を下段の電池モジュール20の2つのブラケット25で用いられるネジ部材51の挿入量よりも多くする。また、ネジ部材51,52の軸部51a,52aの外径(貫通孔38の内径)についても、側板37の内壁面37a側の重量及び外壁面37b側の重量、側板37における貫通孔38の位置などに応じて適宜設定してもよい。
追加ウエイト部材40を固定するために、側板37に形成される全ての貫通孔38を用いてもよいしあるいは一部の貫通孔38だけを用いてもよい。一部の貫通孔38だけ用いる場合、追加ウエイト部材40の固定に用いられない貫通孔38については他端側(外壁面37b側)を封止しておくとよい。例えば、貫通孔38の他端側には、封止蓋を設けるとよい。封止蓋としては、例えば、六角孔付き止めネジといった軸部のみで構成されるネジ部材である。また、封止蓋を設けずに、ネジ部材51で封止してもよい。この場合、ネジ部材51の軸部51aの長さを貫通孔38の全長に貫通孔28aの全長を加算した長さとし、軸部51aの先端面51bが外壁面37bと面一になるようにするとよい。この場合、追加ウエイト部材40には、固定に用いられる箇所にのみ貫通孔41が形成される。
側板37に形成される貫通孔38を用いた固定構造の場合、筐体30内の密閉性(水密性、気密性)を十分に確保しておく必要がある。そこで、シール部材60が、側板37の外壁面37bと追加ウエイト部材40の内壁面40aとの間に設けられる。シール部材60は、貫通孔38の周りにだけ配置されるシール部材である。シール部材60は、貫通孔38を囲む環状の薄い部材であり、例えば、Oリングである。シール部材60を形成する材料は、弾性変形可能な材料であり、例えば、ゴムである。
シール部材60は、追加ウエイト部材40が側板37に沿うようにして配置される際に、側板37と追加ウエイト部材40との間に貫通孔38を囲むように配置される。そして、シール部材60を側板37と追加ウエイト部材40との間に挟んだ状態で、ネジ部材52が貫通孔38のネジ溝38aに螺合される。筐体30の内側からのネジ部材51による締め付けと筐体30の外側からのネジ部材52による締め付けにより、シール部材60は側板37と追加ウエイト部材40との間で弾性変形して薄くなる。なお、シール部材60を配置させる箇所には、側板37の外壁面37bと追加ウエイト部材40の内壁面40aの少なくとも一方にシール部材60の形状に沿った溝を設けてもよい。
以上説明したように、電池パック10Aは、筐体30の側板37にネジ溝38a付きの貫通孔38が形成されている。従来の電池パックのように、筐体の壁部に非貫通のネジ孔(袋ネジ)が形成される構成では、筐体を製造する際に壁部を構成する部材の一つ一つにそれぞれ孔開け加工及びネジ切り加工を行う必要があった。さらに、同じ壁部に筐体内部材及び筐体外部材が固定される構成では、壁部の内側と外側とにそれぞれ孔開け加工及びネジ切り加工を行う必要があった。
これに対し、電池パック10Aでは、ネジ溝38a付きの貫通孔38を筐体30の内側のブラケット25及び筐体30の外側の追加ウエイト部材40を側板37に固定するための共通孔として利用することにより、側板37の内側と外側にネジ孔を別々に形成する必要がない。そのため、電池パック10Aは、筐体30の側板37に形成する孔の個数を低減できる。また、電池パック10Aでは、側板37を構成する部材を複数重ねて孔開け加工及びネジ切り加工を行うことにより、一度に複数の側板37にネジ溝38a付きの貫通孔38を形成できる。したがって、従来の電池パックのように、筐体の壁部の内側と外側とに非貫通のネジ孔を形成する場合と比べて、電池パック10Aの製造工程を簡単化でき、製造コストを低減できる。
また、電池パック10Aでは、貫通孔38の内壁にはネジ溝38aが形成されているので、ネジ部材51,52による締め付けによりブラケット25及び追加ウエイト部材40を側板37に強固に固定できる。また、電池パック10Aでは、側板37に貫通孔38を形成しているが、貫通孔38のネジ溝38aとネジ部材51,52とが螺合されているので、筐体30の密閉性(水密性、気密性)を向上できる。さらに、電池パック10Aでは、側板37と追加ウエイト部材40との間における貫通孔38の周りにシール部材60が設けられているので、筐体30の密閉性を更に向上できる。このシール部材60は、貫通孔38の周りにだけ配置させる環状の部材なので、コストを低減できる。
また、電池パック10Aでは、側板37の内壁面37aに電池モジュール20が設けられ、同じ側板37の外壁面37bに追加ウエイト部材40が設けられる構成としているので、追加ウエイト部材40を熱マスとして機能させることができる。そのため、電池パック10Aでは、電池モジュール20(電池セル21)で発生した熱の放熱性を向上できる。特に、電池パック10Aでは、貫通孔38(共通孔)を用いて電池モジュール20及び追加ウエイト部材40が同じ箇所で固定されるので、電池モジュール20が配置される箇所で追加ウエイト部材40と側板37との密着性が高くなり、放熱性を更に向上できる。
また、電池パック10Aでは、筐体30の外側に追加ウエイト部材40が設けられる構成としているので、カウンタウエイト用のウエイト部材を取り付け際の作業性を向上できる。また、電池パック10Aでは、追加ウエイト部材40が平板状なので、追加ウエイト部材40の取扱いが容易であり、カウンタウエイト用のウエイト部材のコストを低減できる。
また、電池パック10Aでは、ネジ部材51とネジ部材52を用いて貫通孔38の内側と外側の両側から固定するので、ブラケット25と追加ウエイト部材40とを別々に取り付け/取り外しが可能である。例えば、電池パック10Aの電池モジュール20を交換する場合、追加ウエイト部材40を取り外すことなく、電池モジュール20の取り付け/取り外し作業を行うことができる。
図5及び図6を参照して、第2実施形態に係る電池パック10Bについて説明する。図5は、電池パック10Bの外観を示す概略斜視図である。図6は、電池パック10Bにおけるブラケット25及び追加ウエイト部材40と筐体30の壁部との固定構造を示す要部拡大断面図である。電池パック10Bは、第1実施形態に係る電池パック10Aと比較すると、シール部材の構成が異なる。電池パック10Bでは、シール部材61が筐体30の壁部と追加ウエイト部材40との間に設けられている。
シール部材61は、追加ウエイト部材40の全面に配置されるシール部材である。シール部材61は、追加ウエイト部材40の形状と略同じ矩形状の薄い部材である。シール部材61を形成する材料は、熱伝導性を有しかつ弾性変形可能な材料であり、例えば、シリコン系材料である。シール部材61には、貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、シール部材61の内壁面61aから外壁面61bに至るようにシール部材61の厚さ方向に貫通して形成されている。貫通孔62は、側板37のネジ溝38a付きの貫通孔38の内径と略同径又は僅かに大きい内径を有する。シール部材61に形成される貫通孔62の個数は、追加ウエイト部材40に形成される貫通孔41の個数と同じ個数である。シール部材61に形成される各貫通孔62の位置は、追加ウエイト部材40に形成される貫通孔41の位置にそれぞれ対応した位置である。なお、シール部材61を形成する材料は、熱伝導性を有する接着剤でもよい。
シール部材61は、貫通孔62と側板37の貫通孔38とを位置合わせした状態で、内壁面61aが側板37の外壁面37bに沿うようにして配置されている。さらに、追加ウエイト部材40は、貫通孔41とシール部材61の貫通孔62とを位置合わせした状態で、内壁面40aがシール部材61の外壁面61bに沿うようにして配置されている。そして、追加ウエイト部材40に形成されている貫通孔41毎に、ネジ部材53(第2のネジ部材(固定部材))が、貫通孔41と貫通孔62に通され、貫通孔38のネジ溝38aに螺合されている。これにより、追加ウエイト部材40が、シール部材61を挟んだ状態で側板37に強固に固定される。軸部51aの先端面51bと軸部53aの先端面53bとの間には、少し隙間でできる程度が望ましい。
ネジ部材53の軸部53aの長さは、第1実施形態のネジ部材52の軸部52aの長さと略同じ長さかあるいは僅かに長い長さである。シール部材61は、薄い部材であり、側板37と追加ウエイト部材40との間に挟み込まれると弾性変形して更に薄くなる。この薄くなった場合のシール部材61の厚みを考慮して、軸部53aの長さを適宜設定するとよい。
電池パック10Bは、第1実施形態に係る電池パック10Aと同様の効果(但し、シール部材60に関する効果は除く)を奏する上に、以下の効果も奏する。電池パック10Bでは、側板37と追加ウエイト部材40との間の全面にシール部材61が設けられることにより、筐体30の密閉性を向上できる。また、電池パック10Bでは、シール部材61が熱伝導性を有するので、電池モジュール20から側板37に伝わった熱をシール部材61により追加ウエイト部材40に効率良く伝えることができる。そのため、電池パック10Bでは、電池モジュール20(電池セル21)で発生した熱の放熱性を更に向上できる。
なお、側板37及び追加ウエイト部材40は、金属材料などで形成されるので、表面には細かな凹凸がある。そのため、側板37と追加ウエイト部材40とが接するように配置されると、その細かな凹凸により側板37と追加ウエイト部材40との間に小さい空気層ができる場合がある。このような空気層があると、熱は伝わり難くなる。電池パック10Bでは、側板37と追加ウエイト部材40との間に設けられるシール部材61が弾性変形可能なので、シール部材61が側板37の表面及び追加ウエイト部材40の表面の細かな凹凸に沿って変形し、空気層ができるのを抑制できる。そのため、電池パック10Bでは、シール部材61を介して側板37から追加ウエイト部材40に熱を効率良く伝えることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、上記実施形態では側板の貫通孔の内壁にネジ溝が形成される構成としたが、貫通孔にネジ溝が形成されない構成としてもよい。図7を参照して、ネジ溝が無い貫通孔の固定構造の一例を説明する。側板37には、貫通孔39が形成されている。この貫通孔39には、ネジ溝が形成されていない。追加ウエイト部材40は、貫通孔41と貫通孔39とを位置合わせした状態で、内壁面40aが側板37の外壁面37bに沿うようにして配置されている。そして、追加ウエイト部材40に形成されている貫通孔41毎に、ネジ部材54(固定部材)が、貫通孔41に通され、さらに貫通孔39及び貫通孔28aに通される。このネジ部材54の軸部54aの長さは、貫通孔41の全長と貫通孔39の全長と貫通孔28aの全長とを積算した長さよりも所定量長い長さである。したがって、ネジ部材54の軸部54aの先端部が、貫通孔28aを通過して筐体30の内部にまで出ている。そして、ナット55が、その軸部54aの先端部に螺合されている。これにより、追加ウエイト部材40が、側板37の外壁面37bに強固に固定されている。この構成の場合、貫通孔39へのネジ切り加工を省略できるので、電池パックの製造工程を更に簡単化できる。
また、上記実施形態では電池モジュールを筐体の壁部に固定するためのブラケットを筐体内部材をとしたが、筐体内部材としては電池モジュールの配線用の部材(例えば、バスバー)を壁部に取り付けに用いる端子台などの他の部材でもよい。また、上記実施形態では追加ウエイト部材を筐体外部材としたが、筐体外部材としては電池パックを外部の装置と接続するためのコネクタ、CAN[Controller Area Network]通信を行う通信機器のカバーなどの他の部材でもよい。これらの他の筐体内部材、筐体外部材を筐体の壁部に固定する場合でも共通の貫通孔を用いて固定することにより、電池パックの製造工程を簡単化できる。
また、上記実施形態ではシール部材を筐体の壁部と筐体外部材との間に設ける構成としたが、筐体の密閉性を確保できるのであればシール部材を設けない構成としてもよい。例えば、貫通孔のネジ溝とネジ部材との螺合により貫通孔の封止を十分にできれば、シール部材を設けなくてもよい。この場合、シール部材を設けないので、電池パックの部品点数を削減でき、シール部材の組み付け工程を省略できる。
また、上記実施形態では筐体の壁部の全面に配置される追加ウエイト部材としたが、壁部の一部分に配置される追加ウエイト部材としてもよい。壁部の一部分にだけ配置される追加ウエイト部材の場合、壁部において追加ウエイト部材が配置されない部分についてはブラケット(筐体内部材)を固定するための孔を貫通孔としてもよいしあるいは非貫通のネジ孔としてもよい。貫通孔とする場合、筐体の密閉性を向上させるために、貫通孔の他端側(壁部の外壁面側)には封止用のネジ部材などを設けるとよい。
また、上記実施形態ではエンドプレートとブラケットとを別体とし、一対のエンドプレートによって複数の電池セルが拘束され、各ブラケットがエンドプレートにネジ部材で固定されるとともに筐体の壁部にネジ部材で固定される構成としたが、エンドプレートとブラケットとを一体化したブラケット部材(例えば、金属材料からなる板状部材が折り曲げられて形成され、折曲部を挟んで挟持部(複数の電池セルを挟み込む部分)と固定部(筐体の壁部に固定される部分)とからなる部材)とし、一対のブラケット部材によって複数の電池セルが拘束され、各ブラケット部材が筐体の壁部にネジ部材で固定される構成としてもよい。さらに、このブラケット部材あるいは単体のエンドプレートと電池セルとの間に絶縁用などのプレートが設けられてもよい。