JP6489292B1 - 水素脆化特性の評価方法 - Google Patents

水素脆化特性の評価方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6489292B1
JP6489292B1 JP2018554422A JP2018554422A JP6489292B1 JP 6489292 B1 JP6489292 B1 JP 6489292B1 JP 2018554422 A JP2018554422 A JP 2018554422A JP 2018554422 A JP2018554422 A JP 2018554422A JP 6489292 B1 JP6489292 B1 JP 6489292B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen
metal material
relative humidity
salt
wetting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018554422A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019186940A1 (ja
Inventor
幸司 秋岡
幸司 秋岡
大村 朋彦
朋彦 大村
真木 純
純 真木
邦夫 林
邦夫 林
玄紀 虻川
玄紀 虻川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP6489292B1 publication Critical patent/JP6489292B1/ja
Publication of JPWO2019186940A1 publication Critical patent/JPWO2019186940A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N17/00Investigating resistance of materials to the weather, to corrosion, or to light

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biodiversity & Conservation Biology (AREA)
  • Ecology (AREA)
  • Environmental & Geological Engineering (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Testing Resistance To Weather, Investigating Materials By Mechanical Methods (AREA)

Abstract

この水素脆化特性の評価方法は、金属材料の表面に、塩化物を含む金属塩を付着させる塩付着工程と;前記塩付着工程後に行う工程であって、前記金属材料を相対湿度Hの雰囲気中に暴露させる湿潤工程と、前記金属材料を相対湿度Hlo(ただし、Hlo<H)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、前記基本サイクルを含む基本工程と;を有し、前記塩付着工程、前記湿潤工程、および前記乾燥工程を40℃以下の雰囲気中で行い、前記基本工程における少なくとも1回の前記乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上6時間以下の条件で行う。

Description

本発明は、水素脆化特性の評価方法に関する。
自動車の構造部材を軽量化するため、構造部材の素材である鋼板を高強度化することによって鋼板の板厚を低減することが検討されている。しかしながら、鋼板を高強度化すると、遅れ破壊が起きやすい傾向になる。遅れ破壊とは、鋼部品が静的な負荷応力を受けた状態で時間が経過したとき、外見的にはほとんど塑性変形を伴うことなしに、突然脆性的に破壊する現象である。広義には、液体金属接触割れや応力腐食割れなども遅れ破壊に含まれる。そして、自動車用部品で問題になるのは、主として腐食に伴い鋼中に侵入する水素によって引き起こされる水素脆化型の遅れ破壊である。
遅れ破壊を引き起こす因子は、材料(強度)、加工(歪および応力)、および水素の3因子であることが知られている。ここで、金属材料への水素の侵入原因としては、金属材料と接触する溶液または溶媒からの侵入や、使用される環境下で金属材料が腐食することに伴って発生する水素の侵入が考えられる。
実際の使用環境下で金属材料に遅れ破壊が発生するか否かを判断するためには、自動車部品の実走行試験や暴露試験を行う必要がある。しかしながら、その評価結果を得るには、年単位の時間を要してしまう。鋼材開発や部品実用化にあたっては、短時間で遅れ破壊特性を評価する必要がある。そのため、これまで種々の加速試験が提案されている。
特許文献1には、金属材料に塩化物を主体とする成分を付着させる工程と、金属材料に対して相対湿度を変えることにより、金属材料表面を乾燥させる乾燥工程、および当該表面を湿潤させる湿潤工程とを付与することを1サイクルとし、このサイクルを少なくとも1回行って金属材料の遅れ破壊特性を評価する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、鋼材中に侵入する水素量が低く、実環境の水素脆化現象(割れの頻度、限界応力)が促進されず、更には、水素脆化現象が正確に再現されない場合があった。
また、特許文献2〜4にも、金属材料に塩化物を主体とする成分を付着させる工程と、金属材料に対して相対湿度を変えることにより金属材料表面を乾燥させる乾燥工程と湿潤させる湿潤工程とを含む金属材料の遅れ破壊特性を評価する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2〜4のいずれに記載された方法でも、鋼材中に侵入する水素量が低く、実環境の水素脆化現象(割れの頻度、限界応力)が促進されず、更には、水素脆化現象が正確に再現されない場合があった。
日本国特開2016−99259号公報 日本国特開2005−181102号公報 日本国特開2007−139483号公報 日本国特開昭58‐24840号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属材料の、実環境の水素脆化現象を促進しかつ、当該現象をより正確に再現することが可能な水素脆性特性の評価方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下を採用する。
(1)本発明の一態様に係る水素脆性特性の評価方法は、金属材料の水素脆化特性を評価する方法であって、前記金属材料の表面に、塩化物を含む金属塩を付着させる塩付着工程と;前記塩付着工程後に行う工程であって、前記金属材料を相対湿度Hの雰囲気中に暴露させる湿潤工程と、前記金属材料を相対湿度Hlo(ただし、Hlo<H)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、前記基本サイクルを1回以上含む基本工程と;を有し、前記塩付着工程、前記湿潤工程、及び前記乾燥工程を40℃以下の雰囲気中で行い、前記基本工程における少なくとも1回の前記乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上6時間以下の条件で行い、前記乾燥工程における温度T (℃)と、前記湿潤工程における温度T (℃)との関係が、T <T −5(℃)である。
本発明の上記各態様によれば、金属材料の、実環境の水素脆化現象を促進しかつ、当該現象をより正確に再現することができる。
基本サイクルにおいて乾燥工程及び湿潤工程を行う場合の各工程における湿度を示す図である。 基本サイクルにおいて、乾燥工程、湿潤工程、及び高湿潤工程を行う場合の各工程における湿度を示す図である。 本発明の一実施形態に係る評価方法の一例において使用する試験片を示す平面模式図である。 図3に示す試験片に対してU曲げ加工を施した状態を示す側面模式図である。
本発明者らが検討したところ、従来のサイクル試験による水素脆化特性の評価方法では、実環境の水素脆化現象(割れの頻度、限界応力)が正確に再現されないことがわかった。この理由を明らかにするため、実環境(融雪塩環境)に薄鋼板のサンプルを設置するとともに、一般的な複合サイクル腐食試験(日本自動車規格JASO M609)によって薄鋼板のサンプルを試験し、一定期間経過後に、実環境に設置したサンプルと複合サイクル腐食試験に供したサンプルのそれぞれについて、鋼中水素濃度を昇温脱離分析で定量化した。その結果、複合サイクル腐食試験を実施した鋼板は、実環境に設置した鋼板よりも鋼中水素濃度が低くなることが判明した。そこで、本発明者らは、複合サイクル腐食試験において、自動車走行環境と同等の水素を鋼中に侵入させ、応力を印加した試験片での割れの有無が印加した応力水準と一致する条件を検討した。
本発明者らは、複合サイクル腐食試験の各工程における腐食反応や水素の発生、および金属材料中の水素の増減について詳細に調査し、以下の知見を得た。
複合サイクル腐食試験において、金属塩を含む液膜を付着させた金属材料を、湿潤環境と、湿潤環境よりも相対湿度が低い乾燥環境とに交互に暴露させると、湿潤環境においては液膜中の塩化物イオンによる腐食反応により水素が発生し、この水素が金属材料中に侵入する。乾燥環境においては、乾燥環境に暴露させた初期段階では、金属材料の表面に付着した液膜の厚みが減少し、これに伴い金属塩の濃度が上昇して腐食反応が促進される。この腐食反応の促進により水素発生量が増加し、金属材料中(例えば鋼中)への水素の侵入量が増大する。その後、乾燥環境での暴露を継続させて乾燥が更に進行し、液膜がほぼなくなると、腐食が進まなくなるため水素発生速度が低下し、水素の侵入量も低下する。そして、更に乾燥を続けると、金属材料からの水素の放出量が侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。
この乾燥の進行により金属材料からの水素放出量が増大する傾向は、温度が高いほど顕著となる。一般的に腐食反応は温度が高い方が進行するため、従来の複合サイクル腐食試験では、乾燥工程の温度は腐食を促進するために比較的高い温度(例えば60℃)に設定される場合が多い。このため、従来の複合サイクル腐食試験においては、湿潤工程および乾燥工程初期に金属材料中に侵入した水素の大部分が乾燥工程で放出されてしまう。本発明者らは、これが、従来の複合サイクル試験における水素放出挙動が実環境での水素放出挙動と大きく異なる原因であると考えた。
さらに、本発明者は、寒冷地における腐食環境を再現すべく検討した。その結果、塩化物を含む金属塩が表面に付着した金属材料を暴露させる湿潤工程と、この湿潤工程よりも相対湿度が低い雰囲気中に当該金属材料を暴露させる乾燥工程と、当該金属材料の表面に金属塩を付着させる塩付着工程とを全て40℃以下の雰囲気中で行う必要があることを見出した。
本発明は、上述した乾燥工程の温度と金属材料の水素放出挙動とに関する新たな知見と、湿潤工程と乾燥工程と塩付着工程とを全て40℃以下の雰囲気中で行うこととを組み合わせることによる新たな知見とに基き、本発明者らが鋭意検討を重ね、完成に至ったものである。
以下、本発明の一実施形態に係る水素脆化特性の評価方法について説明する。
本実施形態に係る水素脆化特性の評価方法では、塩化物を含む金属塩が表面に付着した金属材料を相対湿度Hの雰囲気中に暴露させる湿潤工程と、前記金属材料を相対湿度Hlo(ただし、Hlo<H)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、前記基本サイクルを1回以上含む基本工程を行う。また、基本サイクルを1〜7回繰り返す毎に、前記金属材料の表面に前記金属塩を付着させる塩付着工程を1回以上行う。また、湿潤工程、乾燥工程及び塩付着工程を40℃以下の雰囲気中(以下、単に「40℃以下の条件」とも称する)で行う。
なお、基本工程における少なくとも1回の乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上6時間以下の条件で行う。この条件により、金属材料からの水素の放出量を抑制してかつ、実環境よりも金属材料中の水素濃度が低くなることを抑制でき、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬することが可能になる。
また、乾燥工程、湿潤工程、及び塩付着工程を40℃以下の条件で行うことで、金属材料からの水素の放出が抑制され、金属材料中の水素濃度の低下を抑制できる。なお、本実施形態では、湿潤工程、乾燥工程、および塩付着工程を少なくとも含む評価方法の全工程を、40℃以下の条件で行うことが好ましい。すなわち、これら工程に加えて、後述する高湿潤工程および冷凍工程を行う場合、全ての工程を40℃以下の条件で行うことが好ましい。この場合、寒冷地における腐食環境をより精緻に再現することができ、実環境での水素脆化特性を正確に模擬できる。
(金属材料)
本実施形態の評価方法に供される金属材料は、例えば鉄鋼材料である。金属材料の形態は特に限定されるものではなく、例えば板材、棒材、または管材である。ただし、本実施形態の評価方法は板厚が比較的薄い板材または管材への評価に好適であるため、板材または管材を評価対象とすることが好ましい。
また、水素脆化特性を評価するため、試験中の金属材料には、引張、曲げ、および/またはねじり等の応力を付与することが必要となる。金属材料に応力を付与する方法としては、小型の冶具を作成し、金属材料からなる試験片に引張応力を付与する方法を例示できる。なお、上記方法に限られず、例えば、金属板をU字状に曲げることで自動車用部品を模擬した塑性変形を付与した後、ボルト等での締め付けにより曲げ応力を付与することで、U字状に曲げられた金属板の外周面側に引張応力を付与してもよい。
試験片の形状や端面の処理は、実際の評価対象に合わせて設定すればよい。例えば、切断端面の影響を考慮する場合は、実際の自動車部品製造工程に類似した端面状況を達成するため、金型での打ち抜きや、シャーでのせん断を行ってもよい。
本実施形態では、金属材料の水素脆化特性を評価するため、湿潤工程、乾燥工程、および塩付着工程の各工程を少なくとも含む全工程を、金属材料に引張応力を付与した状態で行う。そして、これらの各工程を1回以上行った後、金属材料の表面における割れの有無を確認することで、水素脆化特性の評価を行う。
以下、各工程について説明する。
(塩付着工程)
塩付着工程は、金属材料の表面に金属塩を付着させる工程である。塩付着工程により、金属材料の表面に金属塩を含む液膜を形成させる。
金属材料に付着させる金属塩としては、塩化物を含むものが好ましい。具体的には、金属塩は、NaCl、MgCl、CaCl、KClの何れか1種または2種以上を含むものがよい。塩化物以外の成分としては、硫化物や硝酸化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、MgSOやNaHCOなどであってもよい。
実際の腐食環境を考慮すると、例えば海岸近くの地域における水素脆化特性を模擬する場合、金属塩としてNaClを主体とする成分(NaClが全成分の50質量%超である成分)であることが好ましい。また、冬期に融雪剤を頻繁に散布する地域における水素脆化特性を模擬する場合、金属塩の組成を、その地域に散布される融雪剤の成分に近い組成にすることが好ましい。融雪剤に近い成分としては、金属塩としてCaClを主体とする成分(CaClが全成分の50質量%超である成分)、MgClを主体とする成分(MgClが全成分の50質量%超である成分)、NaClを主体とする成分(NaClが全成分の50質量%超である成分)などを例示できる。
複数の金属塩を組み合わせて用いる例として、例えば、米国自動車技術会規格(SAE J2334)(0.5%NaCl−0.1%CaCl−0.075%NaHCO)、人工海水(2.5%NaCl−0.5%MgCl−0.12%CaCl−0.07%KCl他(例えば、八洲薬品株式会社製アクアマリン(登録商標)の水溶液))などを例示できる。
金属材料の表面に金属塩を付着させる手段としては、金属塩を含む溶液を金属材料の表面に噴霧してもよいし、金属塩を含む溶液中に金属材料を浸漬させてもよい。金属塩を含む溶液における溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属塩を含む溶液中の金属塩の濃度が0.1質量%以上であると、十分に腐食が促進されるため、好ましい。また、金属塩を含む溶液中の金属塩の濃度が10質量%以下であると、腐食挙動や水素侵入挙動が実環境と乖離することがなく、好ましい。すなわち、金属塩を含む溶液中の金属塩の濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
塩付着工程では、腐食が顕著に進行するため、液膜中での水素発生量が増加し、金属材料に対する水素侵入量が金属材料からの水素放出量よりも大きくなる(すなわち、金属材料に対し、水素侵入量>水素放出量の関係となる)。なお、塩付着工程は、金属材料から放出される水素量を低減するため、温度が40℃以下の雰囲気中で行う。
噴霧によって金属材料に金属塩の液膜を形成させる場合、金属材料に十分に金属塩を付着させるため、金属塩の溶液の噴霧時間は1秒以上とすることが好ましい。また、噴霧時間が10時間以下であると、腐食挙動や水素侵入挙動が実環境と乖離することがなく、好ましい。噴霧時間は4時間以下がより好ましい。噴霧の際の噴霧量は、80cmの漏斗に1〜3g/時間が望ましい。
また、噴霧によって金属材料に金属塩の液膜を形成させる場合、金属材料の表面の傾斜角度を水平面に対して例えば0°にする。なお、この場合、金属塩の液膜が金属材料の表面にたまってしまうため、当該表面を水平面に対して傾斜させてもよい。
本実施形態の評価方法では、上記の塩付着工程および後述の基本工程を順次に複数回行う。なお、後述の基本工程は、湿潤工程と乾燥工程とを1回ずつ行う基本サイクルを1〜7回含むことが好ましい。この場合、基本サイクルの実施中に金属材料に付着させた金属塩が流れ落ちることを抑制でき、腐食と水素発生をより促進できるためである。
(基本サイクル)
本実施形態の水素脆化特性の評価方法では、湿潤工程と乾燥工程とを交互に1回ずつ行う操作を基本サイクルとする。そして、この基本サイクルは、金属塩が付着した、評価対象とする金属材料に対して行われる。
基本サイクルは、湿潤工程後に乾燥工程を行うものであってもよいし、乾燥工程後に湿潤工程を行うものであってもよい。すなわち、基本サイクルは、湿潤工程および乾燥工程をこの順で行うものであってもよいし、逆順で行うものであってもよい。図1に、基本サイクルの一例を示す。図1は、相対湿度30%で乾燥工程を行い、その後、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度80%で湿潤工程を行う例を示している。なお、図1では、横方向が時間の経過を表しており、縦方向が湿度の高低を表している。
また、基本サイクルにおいては、塩付着工程と同様に、金属材料の表面の傾斜角度を水平面に対して例えば0°にしてもよいし、当該表面を水平面に対して傾斜させてもよい。
(基本工程)
基本工程は、上記の基本サイクルを1回以上含む。なお、1回の基本工程で行う基本サイクルの回数の上限は、特に限定されるものではないが、7回以下であることが好ましい。7回以下の基本サイクルを行うごとに上記の塩付着工程を実施することで、腐食と水素発生をより促進させることができるためである。
(乾燥工程)
乾燥工程は、金属塩が付着した金属材料を、相対湿度Hloの雰囲気中に暴露させる工程である。乾燥工程では、相対湿度Hloを、湿潤工程における相対湿度Hよりも低くし(Hlo<H)、金属塩を含む液膜の厚みを徐々に減少させる。これにより、乾燥工程では、乾燥工程の初期に水素を金属材料に侵入させることができる。換言すれば、乾燥工程は、腐食をある程度進める工程である。
上述のように、本発明者らは、乾燥工程を行うことにより、液膜が減少して液膜中の金属塩が濃縮される際に、水素発生量が増加することを見出している。本実施形態の評価方法を実環境により近づけるためには、乾燥工程においてできるだけ多くの水素を発生させるとともに、発生した水素を金属材料中に侵入させる必要がある。そのため、乾燥工程を上記のように規定している。
乾燥工程においては、保持温度を40℃以下とし、好ましくは30℃以下とする。保持温度を40℃以下とすることで、金属材料から放出される水素量を低減し、金属材料中の水素濃度を顕著に増大させることができる。この理由は次の通りである。
乾燥工程において液膜がほぼ消失すると、水素発生速度が低下する。その後、更に乾燥工程を進めると、金属材料からの水素の放出量が侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。この傾向は温度が高いほど顕著となる。そこで、金属材料からの水素の放出を抑制するため、保持温度を40℃以下とする。なお、保持温度を30℃以下とすると、実環境との乖離がより小さくなり、好ましい。
乾燥工程においては、相対湿度を0%〜60%の範囲とすることが好ましい。乾燥工程において発生した水素を十分に金属材料に侵入させることができるためである。
乾燥工程における相対湿度は、0%〜50%の範囲であればより好ましく、0%〜45%の範囲であればさらに好ましい。また、上記相対湿度は、金属材料からの水素の放出を抑制するために、金属塩の潮解湿度よりも低い湿度であることが好ましい。なお、全ての乾燥工程における相対湿度を0%〜60%の範囲としてもよい。
また、相対湿度の下限は、例えば10%であってもよい。
乾燥工程においては、液膜の減少による腐食と水素発生の促進効果を得るため、乾燥工程の保持時間を1分以上にすることが好ましい。上記条件における保持時間は、望ましくは10分以上、より望ましくは20分以上、更に望ましくは30分以上、最も望ましくは60分以上である。液膜が十分に減少してからの乾燥工程の時間が長いと、金属材料からの水素の放出量が増加し、実環境と合わなくなる。このため、乾燥工程は6時間以下であることが望ましい。上記の保持時間は、より望ましくは4時間以下、更に望ましくは2時間以下である。なお、全ての乾燥工程における保持時間を1分以上6時間以下にしてもよい。
本実施形態では、基本工程における少なくとも1回の乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上、好ましくは10分以上6時間以下の条件で行う。この条件で乾燥工程を行うことにより、乾燥工程における金属材料からの水素の放出が抑制され、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる。本実施形態では、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬するため、全ての乾燥工程を上記条件で行うことがより好ましい。すなわち、全ての乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上、好ましくは10分以上6時間以下の条件で行ってもよい。
(湿潤工程)
湿潤工程は、金属塩が付着した金属材料を、相対湿度Hの雰囲気中に暴露させる工程である。湿潤工程により、金属材料の表面に付着した金属塩を潮解させて、液膜を成長させる。
湿潤工程における液膜中では、金属材料が腐食されることに伴って水素が発生する。発生した水素は金属材料中に侵入する。ここで、従来は、湿潤工程における相対湿度が高いほど、金属材料中に侵入する水素量が多くなると考えられていた。しかしながら、本発明者らが検討したところ、金属材料に侵入する水素量は、試験に用いる金属塩の潮解湿度の影響が大きいことが分かった。具体的には、用いる金属塩の潮解湿度に近い湿度で金属材料の暴露を行ったときに、水素の発生量が増加し、金属材料への水素侵入量が増大することがわかった。
本実施形態では、湿潤工程のうち少なくとも1回の湿潤工程を、H−10(%)≦H≦H+10(%)の条件で行うことが好ましい。なお、Hは湿潤工程における相対湿度(%)であり、Hは前記金属塩の潮解湿度(%)である。
全ての湿潤工程を、H−10(%)≦H≦H+10(%)の条件で行ってもよい。
本発明者らは、上述のように、金属塩の潮解湿度に近い湿度に、金属材料である鋼材を暴露することで、水素の発生量が増加することを知見している。これは、鋼材の腐食速度が湿度の変化に伴って単調に増加することとは異なる傾向であった。
湿潤工程における相対湿度Hを金属塩の潮解湿度Hの±10(%)の範囲に保持することで、相対湿度Hが上記範囲外である場合と比較して、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる理由を、以下のように推定している。すなわち、上記条件で塩付着工程および湿潤工程を行った場合、金属材料の表面における液膜量が適度に減少して塩濃度が増加する。その結果、下記式で示されるように、濃厚塩化物溶液中の加水分解反応が生じ、水素の発生が促進されるものと推定している。
Fe2+→Fe3++e
Cl+Fe3+ →hydrolysis
(Fe3++3HO→Fe(OH)+3H
なお、従来、金属塩の潮解湿度Hよりも低い相対湿度中に金属材料を暴露すると、表面の液膜がなくなり、水素発生が促進されないと考えられていた。しかし、本発明者らが検討したところ、金属塩の潮解湿度Hよりも10%低い湿度でも水素侵入促進の効果が得られることが判明した。これは、金属塩に製造由来または大気由来の不純物が含まれているため、実際の金属塩の潮解湿度が、理論上の潮解湿度Hsよりも低くなったことによるものと推測される。
また、湿潤工程における相対湿度Hが金属塩の潮解湿度Hと同じか僅かに高い場合には、金属材料の表面の液膜が減少するのに長時間を要する。その結果、金属材料の表面に薄い液膜が存在している時間が長く維持され、水素侵入が促進されたと考えられる。
実環境では、H−10≦H≦H+10の環境になることは頻繁に起こり得る。しかしながら、腐食の促進を目的とした既存の複合サイクル腐食条件では、通常、湿潤工程における相対湿度が高く設定されている(例えば、SAEの規格では100%に設定されている)。このことから、従来の水素脆化特性の評価方法での評価結果が、実環境と乖離していた要因として、湿潤工程における水素侵入挙動の乖離が挙げられる。
本実施形態において、湿潤工程のうち少なくとも1回の湿潤工程における相対湿度Hを、金属塩の潮解湿度と同程度(H±10(%))にした場合、湿潤工程における水素の侵入量が増加し、実環境よりも金属材料中の水素濃度が低くなることが抑制される。したがって、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる。
湿潤工程の相対湿度HがH−10(%)以上であると、液膜量が減少しすぎることがなく、上記の反応式が進みやすくなるため、水素侵入促進の効果が顕著になると推測される。また、湿潤工程の相対湿度HがH+10(%)以下であると、液膜量の減少により容易に濃厚塩化物溶液が生成され、上記加水分解反応が生じやすくなるため、水素侵入促進の効果が顕著になると推測される。
本実施形態では、湿潤工程のうち少なくとも1回の湿潤工程を、H−10(%)≦H≦70(%)(H:湿潤工程における相対湿度(%)、H:前記金属塩の潮解湿度(%))の条件で行ってもよい。この場合にも湿潤工程において、液膜の厚さが適度に減少して塩濃度が増加するため、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる。全ての湿潤工程を、H−10(%)≦H≦70(%)の条件で行ってもよい。
湿潤工程における相対湿度Hは、高くなるほど液膜の厚さが増加するため、水素侵入促進の効果が低下する。本実施形態では、液膜の厚さを減少させて、湿潤工程における水素侵入促進を図るために、湿度Hは70%以下としてもよい。特に、金属塩がNaCl以外の金属塩を主体とするものである場合、湿度Hを70%以下にすることが好ましい。それは、NaClの潮解湿度が75%であるため、金属塩がNaClからなるものである場合、湿潤工程の湿度を70%以下にすると潮解が起こらず、水素発生が起きにくくなるためである。
なお、本実施形態において、金属塩が複数の塩を含有する場合には、それぞれの塩の潮解湿度と重量濃度により、当該塩の潮解湿度を推定するものとする。例えば、潮解湿度75%のNaClを3%、潮解湿度33℃のMgClを0.6%含有する水溶液を使用する場合には、重量比(NaCl:MgCl)が5:1であるため、潮解湿度は33%と75%の間の5:1でNaCl寄りとなる。この場合の潮解湿度は、33+(5/6)×(75−33)=68%である。
また、各金属塩の潮解湿度は、NaCl:75%、CaCl:50%、MgCl:33%、MgSO:93%、KCl:34%として計算してもよい。
湿潤工程の保持時間は、特に限定されるものではないが、10分未満の場合、金属材料表面が十分に湿潤せず、水素の侵入が十分に促進されないおそれがあるし、評価結果がばらつくおそれもある。また、保持時間が12時間を超える場合、腐食形態の実環境との乖離が大きくなるおそれがある。これらの観点から、湿潤工程の保持時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜8時間がより好ましい。
湿潤工程における保持温度Tは、40℃以下とする。湿潤工程における温度が高すぎると、金属材料からの水素の放出量が多くなり、金属材料への水素の侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。金属材料からの水素の放出は、湿潤工程における温度が高いほど顕著となる。湿潤工程における保持温度Tが40℃以下であると、金属材料からの水素の放出を抑制できる。
乾燥工程における温度T(℃)と、湿潤工程における温度T(℃)との関係は、T<T−5(℃)であることが好ましい。このように、乾燥工程における保持温度Tを、湿潤工程における保持温度T−5℃未満とすることで、乾燥工程における水素の放出を更に抑制できる。
(高湿潤工程)
本実施形態の評価方法では、基本サイクルのうち、少なくとも1回の基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程を1回ずつ行うものであることが好ましい。そして、この場合、湿潤工程は、乾燥工程と高湿潤工程との間で行うことが好ましい。
なお、基本サイクルのうち、1回のみの基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程をそれぞれ1回ずつ行うものであってもよいし、全ての基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程をそれぞれ1回ずつ行うものであってもよい。
具体的には、少なくとも1回の基本サイクルが、高湿潤工程を行い、その後、湿潤工程を行い、次いで、乾燥工程を行うものであればよい。また、少なくとも1回の基本サイクルが、乾燥工程を行い、その後、湿潤工程を行い、次いで、高湿潤工程を行うものであってもよい。図2に、高湿潤工程を加えた場合の基本サイクルの一例を示す。図2には、相対湿度30%で乾燥工程を行い、その後、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度80%前後で湿潤工程を行い、次いで、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度95%で高湿潤工程を行う例を示している。図1と同様に、図2では横方向が時間の経過を表しており、縦方向が湿度の高低を表している。また、図2では、湿潤工程内で相対湿度を80%前後まで緩やかに高くする例を示している。
高湿潤工程は、湿潤工程よりも相対湿度が高い雰囲気で行う。具体的には、高湿潤工程は、85(%)≦H≦100(%)(H:高湿潤工程における相対湿度(%))の条件で行うことが好ましい。
本実施形態における高湿潤工程は、実環境における腐食挙動を再現させる工程と位置づけられる。本実施形態では、基本サイクルにおいて湿潤工程を行うが、この湿潤工程は、金属材料に水素を侵入させる工程と位置づけられており、実環境における水素侵入挙動を促進し、模擬している。そのため、湿潤工程及び乾燥工程のみを含む基本サイクルよりも、湿潤工程、乾燥工程および高湿潤工程を含む基本サイクルの方が、実環境の腐食挙動を正確に模擬できるためより好ましい。
水素脆化は、基本的には初期に試験片に負荷した応力と水素の侵入量とに依存して生じる。このため、水素の侵入挙動を模擬することで、水素脆化の促進試験が可能である。しかし、鋼種によっては、腐食によって生じた腐食ピットが応力集中部となり、水素脆化が促進される要因になるものがある。そのような鋼種からなる金属材料を評価する場合、水素の侵入挙動のみでなく、腐食ピットの生成挙動も同時に模擬する必要がある。
そこで、本発明者らは、腐食挙動が比較的よく再現される、乾燥工程(湿度60%以下)と高湿潤工程(湿度85%以上)との繰り返しサイクルに、水素の侵入を促進する工程である湿潤工程を組み込んだ。このことにより、腐食挙動を模擬しながら水素侵入挙動を模擬できることを知見するに至った。そして、乾燥工程から高湿潤工程への遷移期間中、または、高湿潤工程から乾燥工程への遷移期間中に、水素の侵入を促進する湿潤工程を段階的に組み込むことで、最も実環境の腐食挙動の再現性がよい評価方法となることを知見した。
高湿潤工程の相対湿度Hが85%以上であると、腐食挙動が再現されやすくなり、腐食挙動を模擬しながら水素侵入挙動を模擬できる。高湿潤工程の相対湿度Hの上限は100%である。腐食促進の面から、高湿潤工程の相対湿度Hは、液膜が増加しすぎない95%未満がより望ましい。
高湿潤工程の保持時間は、10分以上12時間以下であることが好ましく、10分以上6時間以下がより好ましい。高湿潤工程の保持時間が10分以上であると、高湿度工程を行うことによる効果が十分に得られる。一方、保持時間が12時間以下であると、腐食生成物および腐食ピットの形状などが実環境から乖離することがなく、好ましい。
高湿潤工程における保持温度は、湿潤工程と同様に、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。高湿潤工程における保持温度が40℃以下であると、金属材料からの水素の放出を抑制でき、好ましい。
また、乾燥工程における温度は、高湿潤工程における温度よりも低いことが好ましい。乾燥工程における保持温度を、高湿潤工程における保持温度未満とすることで、乾燥工程における水素の放出を更に抑制できる。
高湿潤工程を実施する場合の湿潤工程は、湿潤工程中で相対湿度を一定に保っても良いし、図2に示すように、湿潤工程の相対湿度の範囲内で、相対湿度を緩やかに変化させてもよい。湿潤工程における相対湿度を変化させる場合、湿潤工程内での相対湿度の変化速度は、乾燥工程から高湿潤工程に至る遷移期間全体、または高湿潤工程から乾燥工程に至る遷移期間全体における相対湿度の平均変化速度の3/4以下とするとよく、より望ましくは1/2以下がよい。湿潤工程内で相対湿度を緩やかに変化させることで、金属材料に対する水素の侵入をより促進させることができる。
(冷凍工程)
本実施形態では、基本サイクルを1〜7回繰り返す毎に、金属材料を0〜−50℃の雰囲気に暴露させる冷凍工程を1回以上行うことが好ましい。この冷凍工程を実施することで、特に融雪剤が散布されるような寒冷地における腐食環境を再現でき、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬することが可能になる。これに加え、冷凍工程は、金属材料に塗膜を設けた場合、塗膜にダメージを与え、その後の腐食をより有効に進める。
冷凍工程における雰囲気温度は、0〜−50℃とし、より好ましくは−20〜−40℃である。冷凍工程での温度が0℃を超えると、寒冷地の実環境を模擬できなくなる。また、冷凍工程での温度が−50℃以上であると、実環境での水素脆化特性を正確に模擬することが可能になる。
また、冷凍工程の保持時間は、30分〜6時間とすることが好ましく、より好ましくは40分〜2時間とする。冷凍工程の保持時間が30分以上であると、寒冷地の実環境をより正確に模擬でき、好ましい。また、冷凍工程の保持時間が6時間以下であると、実環境からの乖離が大きくなることがなく、好ましい。
なお、冷凍工程は、塗膜を塗布した場合に塗膜にダメージを与える意図で行うものである。冷凍工程では、金属材料からの水素の放出速度がかなり低下するので、冷凍工程における湿度は、積極的に制御する必要はない。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
板厚1.4mmの、22MnB5鋼の鋼板に、ラボにて溶融亜鉛めっきを施し(付着量片面45g/m)、更に合金化処理することで合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。また、めっきしない鋼板も用意した。自動車用鋼板に特有なプレス成形による塑性ひずみを模擬するため、これら鋼板(合金化溶融亜鉛めっき有の鋼板と無しの鋼板)を用いて、下記の方法により水素脆化評価用の試験片を作製し、曲げ応力を付与してサイクル試験機に配置した。
めっきした鋼板とめっきしていない鋼板のそれぞれにせん断および穴開け加工を施し、穴部を有する鋼板(図3参照)を複数作製した。そして、これら鋼板を900℃まで加熱した後、曲率半径10mmでかつ曲げ角度160°のU曲げ加工を施すと同時に、金型で冷却して焼き入れを行い、1470MPa級の、マルテンサイト単相組織を有するU字状の試験片とした。
続いて、上記2種の試験片(めっき材、非めっき材)のそれぞれに、化成処理(日本パーカライジング(株)社製化成処理液(PB−SX35))を施した後、電着塗装(日本ペイント(株)社製電着塗料(パワーニックス110)15μm狙い)し、170℃で焼き付けた。なお、穴部は腐食しないようシール塗装した。
その後、図4に示す様に、これら試験片の穴部にSUS304で作成したボルト及びナットを通し、ボルト締め付け量を変えることでU曲げ頂点部に曲げ応力を付与した。
なお、ボルトおよびナットと、評価対象とする鋼板とが直接接触すると、それぞれの腐食電位の差から局部電池を形成し、局所的な腐食を誘発する虞がある。このため、試験片の穴部に、テフロン(登録商標)製の絶縁材を配設した。これにより、ボルトおよびナットと、評価対象としているU曲げ加工された鋼板との直接的な接触を回避した。頭頂部の塗膜にはカッターナイフで疵を付与した。
なお、試験における金属材料の形状はU字状に限られない。対象となる金属材料に応力が付加されていればよく、金属材料の材質等に応じて、形状や応力の付加方法は適宜変更可能である。
付与した応力の絶対値を推定するためには、U曲げ熱間加工後の残留応力影響を加味しなければならない。したがって、正確な負荷応力を議論する事は容易では無い。実際の評価の場合には、対象としている自動車部品での塑性歪量や負荷応力による変形量を基準にして試験片を作成すれば良い。しかしながら、本実施例での目的は、一定負荷応力下における実使用環境とサイクル試験での割れ頻度を調査することである。このことから、絶対値の測定が困難な応力では無く、測定が比較的容易な歪量を用いた。すなわち、U曲げ加工の頂点にゲージレングス3mmの歪ゲージを貼り、ボルト締め付け力で応力付加した場合の歪ゲージから読み取られる歪量を設定した。設定した負荷歪量は10000μεとし、この負荷歪量における割れ個数を整理した。
このようにして作製した水素脆化評価用の各試験片に対し、塩付着工程(E)、乾燥工程(A)、湿潤工程(B)、高湿潤工程(C)、及び冷凍工程(D)を繰り返し行う腐食サイクル試験を行ない、金属材料の水素脆化特性を評価した。
(腐食サイクル試験)
腐食サイクル試験の条件を表1および表2に示す。具体的には、各試験片に対し、表1に示すサイクル順序およびサイクル数で腐食サイクル試験を実施した。例えば表1の試験No.1は、「塩付着工程(E)」、「乾燥工程(A)」、そして「湿潤工程(B)」をこの順で1回ずつ行うサイクル順序とし、このサイクルを80回繰り返した場合を示す。試験No.2〜24についても同様である。各試験における各工程の条件は表1の通りである。なお、No.1〜24の腐食サイクル試験では、いずれも合計試験時間を960時間とした。
ここで、塩付着工程(E)では、試験片の表面に、表2に示す種類および濃度の金属塩を表2に示す手法で付着させた。塩を付着させる際は、金属塩を純水に混合し、表1および表2に示す金属塩の濃度に調整した水溶液を用いた。付着手法としては、金属塩の水溶液に試験片を浸漬させる方法(表2に示す浸漬)または、金属塩の水溶液を霧状に発生させて試験片より高い位置から噴霧する方法(表2に示す噴霧)を用いた。
Figure 0006489292
Figure 0006489292
(暴露試験)
水素脆化評価用の試験片に対して、自動車の融雪塩環境での暴露試験(北海道室蘭市)を1年間行った。この際、実際の自動車の使用環境では走行中に融雪塩が飛散するため、この環境を模擬することを目的として、休日を除き1日に1回スプレーにより5分間の金属塩溶液噴霧を行った。金属塩溶液は、金属塩としてNaClを用い、濃度を3%(質量%)とした。
上記の腐食サイクル試験および暴露試験では、試験片のn数を各条件に対し3個とした。また、腐食サイクル試験および暴露試験における試験片の割れの有無は、休日を除き1日1回目視によって確認した。
暴露試験の結果、非めっき材およびめっき材ともに試験に供した3個(n=3)全ての試験片で割れが発生した。また、非めっき材における塗膜膨れがめっき材の塗膜膨れの0.8倍超であった。
腐食サイクル試験による水素脆化特性を、以下の基準により評価した。なお、水素脆化を評価する目的のため、割れが再現出来る場合を○とした。その結果を表3に示す。
(水素脆化評価)
×:割れ無し
△:1個割れた
○:2個以上割れた
また、腐食サイクル試験の結果と暴露試験との対応を、以下の基準により評価した。その結果を表3に示す。
(暴露試験との対応)
○:腐食サイクル試験において、n=3の試験片のうちいずれかで割れが発生しかつ、非めっき材における塗膜膨れがめっき材の塗膜膨れの0.8倍未満であった。
×:腐食サイクル試験において、一個も試験片に割れが生じなかった。
△:腐食サイクル試験において、n=3の試験片のうちいずれかで割れが発生しかつ、非めっき材における塗膜膨れがめっき材の塗膜膨れの0.8倍超であった。
Figure 0006489292
表3に示すように、腐食サイクル試験の条件が本発明の範囲にある試験例No.1〜4、およびNo.9〜24では、腐食サイクル試験と実環境における暴露試験との間に大きな差がなく、実環境における腐食を十分に再現できた。また、試験期間も大幅に短縮できた。
一方、試験例No.5〜8は、腐食サイクル試験の条件が本発明の範囲外であるため、腐食サイクル試験と実環境における暴露試験との差が大きく、実環境における腐食を十分に再現できなかった。

Claims (1)

  1. 金属材料の水素脆化特性を評価する方法であって、
    前記金属材料の表面に、塩化物を含む金属塩を付着させる塩付着工程と;
    前記塩付着工程後に行う工程であって、前記金属材料を相対湿度Hの雰囲気中に暴露させる湿潤工程と、前記金属材料を相対湿度Hlo(ただし、Hlo<H)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、前記基本サイクルを1回以上含む基本工程と;
    を有し、
    前記塩付着工程、前記湿潤工程、及び前記乾燥工程を40℃以下の雰囲気中で行い、
    前記基本工程における少なくとも1回の前記乾燥工程を、温度30℃以下の雰囲気中、相対湿度0%〜60%、1分以上6時間以下の条件で行い、
    前記乾燥工程における温度T (℃)と、前記湿潤工程における温度T (℃)との関係が、T <T −5(℃)である
    ことを特徴とする水素脆化特性の評価方法。
JP2018554422A 2018-03-29 2018-03-29 水素脆化特性の評価方法 Active JP6489292B1 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2018/013404 WO2019186940A1 (ja) 2018-03-29 2018-03-29 水素脆化特性の評価方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6489292B1 true JP6489292B1 (ja) 2019-03-27
JPWO2019186940A1 JPWO2019186940A1 (ja) 2020-04-30

Family

ID=65895168

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018554422A Active JP6489292B1 (ja) 2018-03-29 2018-03-29 水素脆化特性の評価方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6489292B1 (ja)
WO (1) WO2019186940A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021033397A1 (ja) * 2019-08-16 2021-02-25 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊評価方法
CN115023600A (zh) * 2020-02-14 2022-09-06 杰富意钢铁株式会社 金属材料的延迟断裂评价方法

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7100282B2 (ja) * 2020-02-14 2022-07-13 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊評価方法
WO2024080193A1 (ja) * 2022-10-13 2024-04-18 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法、金属材料の選択方法および部材の製造方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008180658A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Ajinomoto Co Inc 加齢度の評価方法
JP2016180658A (ja) * 2015-03-24 2016-10-13 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法及び金属材料

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4746583B2 (ja) * 2007-04-13 2011-08-10 新日本製鐵株式会社 被覆鋼材の耐食性評価方法及び被覆鋼材の複合耐食性評価方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008180658A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Ajinomoto Co Inc 加齢度の評価方法
JP2016180658A (ja) * 2015-03-24 2016-10-13 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法及び金属材料

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
衣笠 潤一郎 他: "複合サイクル試験による高強度鋼板の遅れ破壊評価", 神戸製鋼技報, vol. 61, no. 2, JPN6018023457, August 2011 (2011-08-01), pages 65 - 68 *

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021033397A1 (ja) * 2019-08-16 2021-02-25 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊評価方法
JPWO2021033397A1 (ja) * 2019-08-16 2021-09-13 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊評価方法
JP7031756B2 (ja) 2019-08-16 2022-03-08 Jfeスチール株式会社 金属材料の遅れ破壊評価方法
CN114222908A (zh) * 2019-08-16 2022-03-22 杰富意钢铁株式会社 金属材料的延迟断裂评价方法
CN115023600A (zh) * 2020-02-14 2022-09-06 杰富意钢铁株式会社 金属材料的延迟断裂评价方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019186940A1 (ja) 2019-10-03
JPWO2019186940A1 (ja) 2020-04-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6489292B1 (ja) 水素脆化特性の評価方法
JP6287917B2 (ja) 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法及び金属材料
WO2019130534A1 (ja) 塗装後耐食性に優れた溶融Zn系めっき鋼板
BR112017016132B1 (pt) Folha de aço, método para preparar uma folha de aço, método para preparar uma parte endurecida por prensagem, parte endurecida e uso de uma parte endurecida por prensagem
US9758853B2 (en) Hot-dip Al—Zn alloy coated steel sheet and method for producing same
US9187814B2 (en) Hot-dip aluminum alloy plated steel having excellent shear cut edge corrosion resistance and processed part corrosion resistance, and method of manufacturing the same
JP2002332555A (ja) 耐食性に優れた溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼材
Kim et al. Diffusible hydrogen behavior and delayed fracture of cold rolled martensitic steel in consideration of automotive manufacturing process and vehicle service environment
JP2008070298A (ja) 鋼材の耐食性試験方法及び評価方法
JP6128102B2 (ja) 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法及び金属材料
JP4746583B2 (ja) 被覆鋼材の耐食性評価方法及び被覆鋼材の複合耐食性評価方法
Rai et al. Corrosion behaviour of hot-dip Zn-Al-Mg coatings with different Al content
JP7056313B2 (ja) 水素脆化特性の評価方法
JP5321481B2 (ja) 表面処理鋼板の穴あき腐食性評価方法
JP6573058B1 (ja) 水素脆化特性の評価方法
JP4148132B2 (ja) 鋼材の耐食性評価方法
Kainuma et al. Long-term deterioration mechanism of hot-dip aluminum coating exposed to a coastal-atmospheric environment
JP6922857B2 (ja) 溶融Al−Si系めっき鋼板及びその製造方法
Chalaftris Evaluation of aluminium–based coatings for cadmium replacement
WO2024080193A1 (ja) 金属材料の遅れ破壊特性の評価方法、金属材料の選択方法および部材の製造方法
Zhiruhin et al. Method of treating OT4-1 titanium alloy used in severe climatic conditions before applying chemical coatings
Daniel et al. Performance Evaluation of Nano Additives and Surfactants on the properties of Electroless Nickel Phosphorous Coating on Aluminium–Magnesium Alloy
Ashida Phenomenal Pitting Corrosion on Coating Damaged Surface of Automotive Suspension Coil Springs
Davidson et al. Perforation corrosion performance of autobody steel sheet in on-vehicle and accelerated tests
Liu et al. Corrosion Acceleration Test on Weathering Steel and Paint-coated Steel for Bridge Structural Members

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181015

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20181015

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20181108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181113

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190109

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190129

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190211

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6489292

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350