JP6488774B2 - 破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品用の熱間圧延鋼材および鋼部品 - Google Patents
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Description
以上の知見をもとに、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
C:0.35〜0.45mass%、
Si:1.0〜1.9mass%、
Mn:0.10〜0.20mass%、
P:0.010〜0.035mass%、
S:0.06〜0.10mass%、
Cr:0.25mass%以下、
V:0.20〜0.40mass%、
N:0.0060〜0.0150mass%、
B:0.0050mass%以下を含有し、
残部が鉄及び不純物からなる
ことを特徴とする、破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品用の熱間圧延鋼材。
(2) 前記化学成分にさらに、
Ti:0.050mass%以下、
Nb:0.030mass%以下
のうちの1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)記載の破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品用の熱間圧延鋼材。
(3) 上記(1)または(2)に記載された熱間圧延鋼材からなるとともに、破断面を有する鋼部品であり、
前記破断面が、引張応力方向に向けて80μmの高さで突出する凹凸が前記破断面上の任意の方向長さ10mmあたり2箇所以上の比率で形成され、かつ、前記破断面における脆性破壊破面が面積率にして98%以上であり、更に、破断面方向に沿って長さ80μm以上に渡って形成されたき裂または凹部の数が、前記破断面の任意の方向長さ10mmあたり3箇所未満であることを特徴とする破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品。
いることにより、欠けを振るい落とす工程を省略することができ、製造コストを低減でき、これにより、産業上の経済効率性の向上に大きな効果がある。
C:0.35〜0.45mass%
Cは本実施形態の熱間圧延鋼材及び鋼部品の引張り強さを確保する効果、および、破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし良好な破断分離性を実現する効果を有する。Cの増加に伴いパーライト組織の体積分率が上昇することにより、引張強さが上昇し延性および靭性が低下する。これらの効果を最大限に発揮させるため鋼中のC濃度の適正な範囲を0.35〜0.45mass%に設定した。この範囲の上限濃度を超えるとパーライト分率が過大となり破断時の欠けの発生頻度が高くなる。また、下限濃度に満たない場合は破断面近傍の塑性変形量が増加し嵌合性が低下する。なお、C濃度に関しては0.35〜0.38mass%であればより好ましい。
Siは固溶強化によってフェライトを強化させ延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる。この効果を得るためにはSi含有量の下限を1.0mass%にする必要がある。他方、Siが過剰に含有すると破断面の欠けが発生する頻度が上昇するので、上限は1.9mass%とする。なお、Si濃度に関しては1.0〜1.4mass%がより好ましい。
MnはSと結合してMn硫化物を形成する。Mn濃度が0.10〜0.20mass%の範囲であれば、Mn硫化物の大半が固相域で生成されるので、微細かつ高密度で分布する。他方、一部のMn硫化物は鋼を鋳造で凝固させる際に固相と液相の界面で生成し、比較的大きなサイズとなる。このMn硫化物は後続の熱間圧延で圧延方向に伸長化して鋼中に分布する。本実施形態の熱間圧延鋼材からなる鋼部品を破断させた場合にこれらの微細二分したMn硫化物と伸長化したMn硫化物に沿ってき裂が進展することになり、良好な破断分離性と顕著な破断面の凹凸形状の形成が実現する。本発明は、Zr、Ca、Mg等のMn硫化物の形態を制御する合金元素を添加することなく、上記に示すMn硫化物の形態を制御するものである。Mn濃度が0.10mass%未満の場合は伸長化されたMn硫化物の個数が減少し、破断面の凹凸形状を顕著にすることができない。また、Mn濃度が0.20mass%を超えると微細なMn硫化物の個数が足らず、破断分離性が低下するとともに、破断面方向に欠け、ひびの発生が顕著となり、嵌合性が低下する。なお、より好ましいMn濃度の範囲は0.15〜0.20mass%である。
Pはフェライト及びパーライトの延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる効果を有する。ただし、Pは同時に結晶粒界の脆化を引き起こし破断面の欠けを発生しやすくする効果が顕著である。従って、Pの添加を利用して延性及び靭性を低下させる方法は欠け防止の観点から積極的に活用すべきではない。以上を考慮すればP濃度の好適な範囲は0.010〜0.035mass%であり、さらに、0.010〜0.025mass%がより好ましい。
SはMnと結合してMn硫化物を形成する。本実施形態の熱間圧延鋼材からなる鋼部品を破断分割させる際に圧延方向に伸長したMn硫化物に沿ってき裂が伝播するので、Sの含有は破断面の凹凸を大きくし破断面を嵌合する際に位置ずれを防止する効果がある。その効果を得るためにはS含有量の下限を0.06mass%にする必要がある。他方、Sが過剰に含有すると破断分割時の破断面近傍の塑性変形量が増大し破断分離性が低下する場合が発生することに加えて破断面の欠けを助長することがある。以上から、Sの好適な範囲を0.06〜0.10mass%とする。さらにより好ましい範囲として0.07〜0.09mass%の濃度に限定する。
CrはMnと同様に固溶強化によってフェライトを強化し延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる。しかし、Crを過剰に含有するとパーライトのラメラー間隔が小さくなり、かえってパーライトの延性及び靭性が高くなる。そのため、破断時の破断面近傍の塑性変形量が大きくなり破断分離性が低下する。さらに、Crを過剰に含有するとベイナイト組織が生成しやすくなり破断分離性が大幅に低下する場合がある。従って、Crを含有させる場合、その濃度を0.25mass%以下とする。上述の効果を鑑みた場合、より好ましくは0.12mass%以下である。
Vは熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成してフェライトを強化し延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくして熱間圧延鋼材からなる鋼部品の破断分離性を良好にする。また、Vは炭化物又は炭窒化物の析出強化により熱間圧延鋼材の降伏比を高めるという効果がある、これら効果を得るためにはV含有量の下限を0.20mass%にする必要がある。V含有量の下限は好ましくは0.23mass%である。一方、Vを過剰に含有してもその効果は飽和するのでV含有量の上限は0.40mass%である。好ましくはV含有量の上限は0.35mass%である。
Nは熱間鍛造後の冷却時に主にV窒化物又はV炭窒化物を形成してフェライトの変態核として働くことによってフェライト変態を促進する。これにより熱間圧延鋼材からなる鋼部品の破断分離性を大幅に損なうベイナイト組織の生成を抑制する効果がある。この効果を得るにはN含有量の下限を0.0060mass%とする。Nを過剰に含有すると熱間延性が低下し熱間加工時に割れ又は疵が発生しやすくなる場合があるため、N含有量の上限を0.0150mass%とする。なお、N濃度に関しては0.0080〜0.0120mass%がより好ましい。
Bは焼入れ性を向上させる元素として代表的な化学成分である。本発明の特徴であるMnが低濃度であることに伴い、鋼材の焼入れ性が低下するがその低下代を補う元素として添加するものである。B相度に関して微量添加でも効果が認められるが好ましい下限は0.0008mass%以上である。また、Bによる焼入れ性向上効果は飽和するので上限については0.0050mass%とした。ただし、好ましい上限は0.0035mass%である。
Tiは熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成して析出強化によりフェライトを強化し延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし破断分離性を向上させる効果がある。しかし、Tiを過剰に含有するとその効果が飽和するので上述の効果を得るためにTiを含有させる場合、Ti含有量の上限を0.050mass%とする。Tiの効果を十分に発揮させるためにはTi含有量の下限を0.005mass%とすることが好ましい。より好適なTi含有量の範囲は0.015〜0.030mass%である。
Nbは熱間鍛造後の冷却時に主に炭化物又は炭窒化物を形成して析出強化によりフェライトを強化し延性及び靭性を低下させる。延性及び靭性の低下は破断時の破断面近傍の塑性変形量を小さくし良好な破断分離性を得る効果がある。しかし、Nbを過剰に含有するとその効果が飽和するので上述の効果を得るためにNbを含有させる場合、Nb含有量の上限を0.030mass%とする。Nbの効果を十分に発揮させるにためはNb含有量の下限を0.005mass%とすることが好ましい。より好適なNb含有量の範囲は0.010〜0.030mass%である。
上記の化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、インゴットプロセスによって鋳造する。鋳造品は、更に分塊圧延工程等を経てビレットとする。得られたビレットをさらに熱間圧延によって丸棒とする。このようにして本実施形態の熱間圧延鋼材を製造する。なお、ビレットから丸棒形状までの圧延減面率は80%以上とすることが好ましい。これにより、鋼中のMnSを伸長化させることができる。
そこで、本発明では破断時に破断面の欠けを発生させない範囲で実験的に実現可能である顕著な破断面凹凸形状を上記の通りに規定した。
製造No.19、21、23、25、26、28はそれぞれC、Si、Mn、P、S、Crの濃度が本発明の範囲の上限を超えており、破断時の欠け発生が1.0mgを超える。
製造No.29はVの濃度が本発明の範囲の下限未満であり、脆性破壊面積率が98%未満になる。
製造No.30はNの濃度が本発明の範囲の上限を超えており、製造時の鋼材疵が多発し、特性評価が行えなかった。
Claims (3)
- 化学成分が
C:0.35〜0.45mass%、
Si:1.0〜1.9mass%、
Mn:0.10〜0.20mass%、
P:0.010〜0.035mass%、
S:0.06〜0.10mass%、
Cr:0.25mass%以下、
V:0.20〜0.40mass%、
N:0.0060〜0.0150mass%、
B:0.0050mass%以下を含有し、
残部が鉄及び不純物からなる
ことを特徴とする、破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品用の熱間圧延鋼材。 - 前記化学成分にさらに、
Ti:0.050mass%以下、
Nb:0.030mass%以下
のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品用の熱間圧延鋼材。 - 請求項1または2に記載された熱間圧延鋼材からなるとともに、破断面を有する鋼部品であり、
前記破断面が、引張応力方向に向けて80μmの高さで突出する凹凸が前記破断面上の任意の方向長さ10mmあたり2箇所以上の比率で形成され、かつ、前記破断面における脆性破壊破面が面積率にして98%以上であり、更に、破断面方向に沿って長さ80μm以上に渡って形成されたき裂または凹部の数が、前記破断面の任意の方向長さ10mmあたり3箇所未満であることを特徴とする破断分離後の破断面同士の嵌合性に優れた鋼部品。
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