図1、図2に本願発明の飲料抽出装置の全体斜視図及び断面図を示し、図3及び図4に第1の貯液タンクである湯タンクを示し、図5及び図6に第2の貯液タンクである抽出タンクを示し、図9乃至図12に冷却手段を示し、図13乃至図16に傾斜手段及び戻り手段を示す。
本願発明の飲料抽出装置は、小型の飲料抽出装置、例えば、主として家庭用の飲料抽出装置であって、抽出液を抽出できるものであれば、例えば、お茶、紅茶、コーヒー或いはティーバッグ等のどのようなものでもよいが、以下においては、茶葉からお茶を抽出するものとして説明する。なお、注ぎ口43を有する側を前方側とし、注ぎ口43の反対側を後方側とし、前後方向に直交する側を左右方向側として説明する。
図1に示すように、飲料抽出装置1は、本体2と蓋体15とベース部材25を有する。前記本体2は、上方が開口する容器状のものであって、筒状の上部ケース3及び略半球状の下部ケース4である本体ケースを有する。そして、略半球状の下部ケース4の下部には後記する円弧状開口部5及び円弧状レール部6を有する。
下部ケース4には、後記冷却手段60に送る空気を取り入れるための複数の空気取入口7が下方に形成され、空気を外部に排出するための空気排出口8が後方に形成される(図13、15等参照)。なお、上部ケース3及び下部ケース4は一体形成されるが、別体のものであってもよく、別体の場合はビス等で組み立てることになる。
前記本体2は、上部に肩部材9を有する。肩部材9は、上壁部10及び抽出タンク収容部11を有する。上壁部10は、肩部材9より略蓋体15の高さ分下方の位置で一体に形成される略水平な壁部であり、後方部には湯タンク30の外周より若干大きな湯タンク用開口部12(図17参照)が開口する。
前記抽出タンク収容部11は、湯タンク用開口部12の前方側の部分と、湯タンク用開口部12の前方側の略半円を囲む部分とを有する平面視略C字状で、且つ湯タンク30(但し、底部の加熱部33は除く)及び抽出タンク40の高さとほぼ同じ深さを有する下方に窪んだ部分であり、抽出タンク40が収容される。
なお、抽出タンク収容部11の内形は、抽出タンク40の外形より大きくされるが、一部の箇所の内面の大きさを抽出タンク40の外面の大きさと同じか、或いは若干小さくしてもよい。このような形態にすることにより抽出タンク40の収容時に、抽出タンク40の前後及び左右方向の動きを規制して抽出タンク40のがたつきを防止することができる。
前記蓋体15は、上板16及び下板17を有し、上板16及び下板17間には蓋ロック部材18が配設される。蓋ロック部材18は、対向する2個の押圧部材19、19と、2個の押圧部材19、19間に介在する図示しないばねと、押圧部材19、19のそれぞれに形成される図示しない係止片を有する。
そして、開蓋時には、2個の押圧部材19、19がお互い近づくようにばねの力に抗して中央方向に押圧して、押圧部材19、19のそれぞれの係止片と肩部材9の係止溝9a、9a(図17参照)との係合を解除し、蓋体15を上方に持ち上げて開蓋する。
閉蓋時には、蓋体15を肩部材9の開口部の上に置いて押し下げると、押圧部材19、19は近づくように中央寄りに移動し、押圧部材19、19のそれぞれの係止片が肩部材9の係止溝9a、9aに対向すると、ばねの戻り力によってそれぞれの係止片がそれぞれの係止溝9a、9aに係合して閉蓋する。
前記下板17の下面であって、湯タンク30の外周に対向する位置には、環状のシール材20が取り付けられ、環状のシール材20のほぼ中央箇所には転倒防止弁21が取り付けられており、湯タンク30で発生する蒸気は、転倒防止弁21の上方に形成される蒸気通路22を介して上板16に形成される蒸気口23より外部に排出され、飲料抽出装置1が転倒すると、転倒防止弁21が蒸気通路22を閉鎖して、湯タンク30内の湯が外部に流出するのを防止する。
蓋体15の閉蓋時、下板17は湯タンク30及び抽出タンク40を同時に覆うことになるが、その形態は、環状のシール材20は湯タンク30の上端に当接して湯タンク30の内部を密閉する。
下板17は抽出タンク40の上部に若干の隙間を有して近接するが、接するか或いは若干押圧する形態でもよい。このような形態にすることにより、湯タンク30からの液体の流出を防止するとともに、抽出タンク40のがたつきを防止することができる。
前記ベース部材25は、本体2を非傾斜状態である立設状態と傾斜状態とにするための載置部材であり、その上面には、下部ケース4の下面の略半球状の面が嵌入する略半球状の凹嵌部26を有するとともに、該凹嵌部26の後方寄りには、傾斜手段80の一部である矩形状ガイド部材81が取り付けられ、更にその底面には本体2の傾斜状態を立設状態にする戻り手段90のスプリング91が取り付けられる。
また、ベース部材25の側壁には、スイッチボタン27が設けられており、このスイッチボタン27を押すことにより図示しない制御装置により、加熱手段である加熱部33による液体の加熱、ポンプ75による加熱液体の送付及び冷却手段60による加熱液体の冷却が行われる。
図3及び図4に液体を貯液する第1の貯液タンクである湯タンク30を示す。この湯タンク30は、ステンレス或いはアルミ等の金属製で、上方開口の容器状のもので、その上端にフランジ部31を有し、更に下端に、内部に加熱手段であるシーズヒーター32を埋め込んでなる加熱部33を有する。なお、加熱手段は、湯タンク30内に挿入可能なヒーターでもよく、また、取出管34の下流側に連結されるパイプ35を加熱するようなヒーターであってもよい。
湯タンク30の底部中央には取出管34が一体に形成される(別体のものでもよい)とともに、この取出管34とポンプ75との間には樹脂製または金属製のパイプ35が連結され、湯タンク30内の液体をポンプ75に送る。
湯タンク30は、肩部材9の上壁部10に形成される湯タンク用開口部12の下面にビス等で取り付けられる(図2参照)。
その結果、閉蓋時には、環状のシール材20が湯タンク30の上端部に当接して内部を密閉することになる。湯タンク30は、上端部での支持であり、下端部は浮いた状態になり、下方への熱の伝達を低減する。そして、湯タンク30内に水が入れられると、水は取出管34及びパイプ35を介してポンプ75近傍に至る。そして、ポンプ75が駆動するとその作用によって下流側に送られる。
スイッチボタン27がオンされると、図示しない制御装置によりシーズヒーター32に通電され、湯タンク30内の水は沸騰する。そして、図示しない蒸気センサにより蒸気を検知してポンプ75及び冷却ファン67が駆動する。なお、ポンプ75及び冷却ファン67の駆動は、タイマーを用いてシーズヒーター32に通電後の所定時間経過後に行うようにしてもよい。また、湯タンク30内の水を沸騰させることにより水の中に含まれるカルキや塩素等を低減することができる。
図5及び図6に液体を貯液する第2の貯液タンクである抽出タンク40を示す。この抽出タンク40は、容器部41及び蓋部42からなる平面視略C字状で且つ樹脂製のものである。
前記容器部41は、上部が開口する容器状の部分で、前方側には内部に連通する注ぎ口43が一体に形成されるとともに、根本部には、茶葉の流出を防止する複数の開口からなる漉し部44を有する。そして、図6に示すように、注ぎ口43は、水平面に対し上方に向かって所定角度α、例えば35度上方に傾斜している。
また、容器部41は、前方側空間部45及び後方側空間部46を有する。前方側空間部45は平面視左右方向に細長い略矩形状の部分であり、その底部は、注ぎ口43と同様に水平面に対し所定角度α、例えば35度上方に傾斜している。
前記後方側空間部46は、前方側空間部45の左右後方側からそれぞれ後方に延びる部分であり、その対向する内面で、湯タンク30の半外周を囲むように湾曲している。そして、その底面は水平である。
このように前方側空間部45の後方に後方側空間部46を形成することにより容器部41の容量を大きくすることができる。因みにこの例では、抽出タンク40の容量を湯タンク30の容量より大きくしている。例えば湯タンク30を250ccにし、容器部41を例えば350ccとしている。
このような形態にすることにより、湯タンク30の沸騰した全湯を茶葉が入れられている容器部41に入れたとしても容器部41から湯があふれることがなくなる。例えば、同じ茶葉から2回抽出する場合、1回目の抽出により茶葉が水分を含んで容量及び重量が増大するが、そのような場合であっても容器部41から湯があふれることがなくなる。
また、注ぎ口43及び抽出タンク40の一部底部、即ち、容器部41の一部底部を図6に示すように同じ角度に一直線上に傾斜させることにより本体2の傾斜時、即ち注茶時に、容器部41内の全ての抽出液の排出を良好にすることができる。
なお、本体2の傾斜時に容器部41内の全抽出液の排出が良好に行われるのであれば、傾斜領域は注ぎ口43のみであってもよいし、注ぎ口43及び容器部41の全てであってもよく、また注ぎ口43の傾斜は、直線状以外、例えば若干の円弧状または若干の曲線状等であってもよい。しかし、注ぎ口43のみの傾斜にすると注ぎ口43を下げて容器部41の下端に取り付ける必要があり、また、容器部41全体を傾斜させると後方側空間部46が下方に長く垂下するとの弊害が生じる。
前記蓋部42は、容器部41の上端開口を閉蓋するもので、平面視形状は容器部41とほぼ同様である。そして、蓋部42の前方の左右側及び後方の左右側には計4個の締結部材47、47、47、47を有し、この締結部材47、47、47、47の先端の係止片を容器部41の図示しない係止溝に係合することにより、容器部41に蓋部42を締結することになる。
また、蓋部42には、蓋部42を持ち上げるための摘み48、48及び冷却手段60によって冷却した液体を導入するための導入口49が一体に形成されており、この導入口49に導入管50(図2参照)が連結され、この導入管50を介して冷却手段60によって冷却された湯が導入される。
飲料抽出装置1の使用時には、蓋体15を取り外し(図17参照)、湯タンク30内に水を入れ、抽出タンク40を取り出し、蓋部42を外して容器部41内に直接茶葉(ティーバッグでもよい。)を入れ、蓋部42で閉蓋し、元の位置にセットすることになる。
セット後、抽出タンク40内に冷却手段60によって冷却された湯が導入され、導入された適温の湯により茶葉から抽出液が抽出されるため、本体2を前方側に傾斜させて、抽出タンク40内の抽出液、即ちお茶を注ぎ口43からコップに入れることになる。
なお、抽出タンク40を容器部41と蓋部42の2部材とするとともに、抽出タンク収容部11に対して着脱自在にすることにより、茶葉の取り出し並びに内部の洗浄が容易になり利便性が向上する。
本体2内に湯タンク30と抽出タンク40がセットされると、図2に示すように、両タンクは、横方向、即ち、前後方向に近接して対向するようになる。その対向する位置は、例えば図2に示すように、飲料抽出装置1の中心線H−Hを挟んで前後方向になる位置が好ましい。前後方向に対向する形態により前後方向の重量バランスをより良好にすることができる。
上記のように、本体2内に湯タンク30と抽出タンク40とを横方向、即ち、前後方向に対向することにより、湯タンク30内の熱で抽出タンク40が暖められることになり、抽出タンク40内に導入する冷却手段60によって冷却された湯の温度が急激に低下する弊害が防止される。
図9乃至図12に湯タンク30による沸騰水を冷却するための冷却手段60を示す。お茶等にはいろいろな種類があり、例えば、玉露は50〜60度位の温度の湯で抽出するのがよいといわれている。この冷却手段60は、茶葉に適した所定の温度の湯、例えば、50〜60度位の温度の湯を抽出タンク40に供給し、おいしいお茶を提供できるようにするものであり、例えばケーシング61及び冷却部ユニット66を有するユニット状のものである。
前記ケーシング61は、冷却手段60の外郭を形成する樹脂製で一体形成されるもので、前後方向の貫通空間64を有するとともに、平面視円形で且つ略水平な上壁部62を有する。また、上壁部62の外周には上下方向に立設する形態の環状フランジ63が一体形成されている。
そして、本体2内に冷却手段60が設置されると、図2に示すように環状フランジ63は本体2の上下方向の略中央にて本体2の内面に当接する形態で位置し、ケーシング61は本体2の底部から挿入される複数のビスにより固定される。このような形態にすることにより、冷却手段60の取付を容易にすることができるとともに、がたつきを防止することができる。
ケーシング61の前後方向の貫通空間64には、冷却部ユニット66が装着される。冷却部ユニット66は、冷却ファン67、冷却フィン68、冷却コイル69及び筒状ガイド部材70を有し、前後方向に配列される。
前記冷却ファン67は、冷却部ユニット66の前方に配置され、前方から空気を吸い込み後方に送るとともに、後方に送る際に冷却コイル69を冷却する。
冷却ファン67の軸方向の後方には、筒状ガイド部材70が配置される。筒状ガイド部材70は、前端が閉鎖し、後端が開放する容器状の部材で、後端の外周には、図8に示すように、半径方向に延び且つ放射方向に略等間隔に配置される複数の固定羽根71を有し、隣り合う固定羽根71間に複数の排出口72を有する。
筒状ガイド部材70の外周には、冷却コイル69が配置される。冷却コイル69は、コイル状のアルミ製でこの例では7巻きのものを用いており、ポンプ75によって送られる湯は、冷却コイル69の後方から冷却コイル69内に導入され、冷却コイル69内を通る間に所定温度、例えば、50〜60度に冷却されて冷却コイル69の前方から導入管50を介して抽出タンク40内に送られる。
なお、前記ポンプ75は、例えばダイヤフラムポンプであり、図7に示すようにケーシング61の左側に前後方向に向く形態でケーシング61に取り付けられ、パイプ35内の湯を導入管50を介して抽出タンク40に送る。なお、図11ではその位置を便宜的に示している。
前記冷却コイル69の外周には、上下部を除いた位置にアルミ製の冷却フィン68が配置される。冷却フィン68は、図11に示すように、上下方向に積層する形態で前後方向に複数個設けられており、各フィン間には冷却ファン67からの冷却空気が前方から後方に向かって流れる。
前記冷却部ユニット66は、上記した形態で組み立てられ、組み立てられた後には、ケーシング61の前後方向の貫通空間64内に前後方向に嵌入され、ビス等によりケーシング61に固定される。
固定後においては、筒状ガイド部材70の外周とケーシング61の内周との間に冷却空間78が形成されるとともに、この冷却空間78に冷却コイル69及び冷却フィン68が位置する。なお、図7に上部ケース3及び下部ケース4である本体ケースを取り除いた状態を前方から見た斜視図を示し、図8に同じく上部ケース3及び下部ケース4である本体ケースを取り除いた状態を後方から見た斜視図を示す。
本体2内に冷却手段60が取り付けられ冷却ファン67が駆動すると、冷却ファン67は、本体2の下方にある空気取入口7から空気を取り込み、取り込んだ空気を冷却空間78に送り、冷却コイル69内を流れる湯を所定温度に冷却する。なお、冷却コイル69の大きさ及び巻き数、更には冷却ファン67の回転速度またはポンプの電圧を変えることにより冷却温度を変えることができる。
湯タンク30及び抽出タンク40と、冷却手段60との間には、仕切り部材79が配置される。仕切り部材79は、金属製のほぼ円形の遮熱部材であり、湯タンク30及び抽出タンク40と、冷却手段60との間に略水平に配置され、湯タンク30及び抽出タンク40のと、冷却手段60とがお互い熱影響を受けにくくしている。そのため、湯タンク30及び抽出タンク40の温度低下を低減することができるとともに、冷却手段60の冷却効率を高めることができる。
なお、ケーシング61の上壁部62も一種の仕切り部材であり、この例においては、上壁部62と仕切り部材79との上下二重構造により仕切り構造をなしている。このような仕切り構造により遮熱効果をより高めることができる。
上記のように、湯タンク30及び抽出タンク40を上方に横並びで配置し、冷却手段60を下方に配置することにより、前後及び上下の重量バランスを良好にすることができるとともに、温度が高いものが上に位置し、温度が低いものが下に位置することにより、お互いの熱影響が低減するとともに、間に仕切り部材79を設けることにより、お互いの熱影響がより低減する。なお、熱い温度の湯でお茶を抽出する場合は冷却ファン67を作動させないようにする。
お茶抽出までの作用について説明する。まず、蓋体15を開蓋して、湯タンク30内に所定量の水、例えば一人分である約200cc入れ、更に抽出タンク40に必要な量の茶葉を入れた後に蓋体15を閉蓋する。
次いで、スイッチボタン27をオンする。すると、図示しない制御装置により加熱部33が加熱されて湯タンク30内の水は沸騰する。その沸騰は図示しない蒸気センサで検知され、その検知信号を受ける制御装置によりポンプ75及び冷却ファン67が駆動される。
すると、沸騰した湯は、ポンプ75の作用で冷却コイル69に送られ、所定温度に冷却される。冷却された湯は、導入管50を介して抽出タンク40に送られ、抽出タンク40内の茶葉からお茶を抽出する。そのお茶は本体2が傾斜されるまで抽出タンク40内に留まることになる。
次に、本体2を傾斜させる傾斜手段80について説明する。ところで、本願発明の飲料抽出装置1は、小型のもの、例えば主として家庭用のものを対象にしており、抽出タンク40で抽出したお茶を取り出す場合、飲料抽出装置1を持ち上げて注ぐことも可能であるが、湯をも含むため重量は重くなり使用者に負担を掛けることになる。
傾斜手段80は、そのような負担を軽減するものである。上記したように、飲料抽出装置1は、湯タンク30を上方且つ後方側に配置し、抽出タンク40を上方且つ前方側に配置するとともに、冷却手段60を下方に配置するものである。
そのため、湯タンク30での湯沸かし時である非傾斜時には本体2の重心は、本体2の上方後方側にあり立設状態を維持し易い状態になるが、抽出タンク40での抽出時には、湯タンク30内の全湯は抽出タンク40に移動しており、本体2の重心は、本体2の上方前方側に移動しており、前方側に傾斜し易い状態になっている。
その結果、傾斜手段80による本体2の前方側への傾斜は、小さな力で行うことができるようになる。即ち、湯タンク30及び抽出タンク40の位置及び傾斜手段80の位置からなる構造と、傾斜構造とは傾斜をより良好にするためのものである。
図13に非傾斜状態、即ち、通常の立設状態での傾斜手段80の概略を示し、図15に傾斜状態での傾斜手段80の概略を示す。傾斜手段80は、上記した本体2側の円弧状開口部5及び円弧状レール部6と、ベース部材25側の矩形状ガイド部材81とを有する。
下部ケース4であるが、半球状の下部ケース4の下部には、前後方向に開口した1個の円弧状開口部5を有する。この円弧状開口部5は、前後方向に開口し、平面視細長い矩形状で、側面視円弧状の開口部である。
また、この円弧状開口部5の左右両側の下部ケース4には、円弧状開口部5に沿ってそれぞれ同形の円弧状レール部6を有する。この2個の円弧状レール部6は、左右方向に対向し、円弧状開口部5の前後長とそれぞれ同じ長さで、円弧状開口部5の左右端からそれぞれ同じ若干長さ(数mm)下方に凹み、左右方向のそれぞれの幅は同じで且つ円弧状開口部5の幅より短く、それぞれ平面視細長い矩形状で、側面視円弧状で円弧状開口部5の側面に平行のものである(図13、15参照)。
ベース部材25の凹嵌部26の後方側には、傾斜手段の一部である矩形状ガイド部材81が上方から取付部材、例えば、図13に示すように4本のビス85〜85でベース部材25に固定される。
この矩形状ガイド部材81は、矩形状の樹脂製または金属製(例えば、アルミニウム製)部材であり、短辺側を左右方向にし、長辺側を前後方向に配置する。そして、短辺側の長さは円弧状開口部5の左右幅より若干短くされ、長辺側の長さは円弧状開口部5の前後長さより短くされている。
また、矩形状ガイド部材81の前方側の左右側面及び後方側の左右側面には、それぞれ細径の軸83が左右方向に突出する形態で取り付けられるとともに、これら4個の軸83〜83にはそれぞれローラー82が回転自在に取り付けられている。
矩形状ガイド部材81の取り付けは以下のように行われる。即ち、ベース部材25の凹嵌部26の上に略半球状の下部ケース4を置く。次いで、下部ケース4の上から矩形状ガイド部材81を、下部ケース4の円弧状開口部5に入り込み且つ締結可能な所定位置になるように置く。
すると、矩形状ガイド部材81は、円弧状開口部5の後方側内に嵌入する形態で位置し、4個のローラー82〜82は下部ケース4の左右の円弧状レール部6、6の上方に位置する。そのような位置になった後、矩形状ガイド部材81を4本のビス85〜85でベース部材25に固定することになる。
矩形状ガイド部材81を4本のビス85〜85でベース部材25に固定すると、矩形状ガイド部材81の後端部81aは円弧状開口部5の後端部5aに当接して本体2が後方側に傾斜するのを防止する。即ち、本体2を立設状態に保持する。
また、ローラー82のそれぞれは左右の円弧状レール部6、6のそれぞれに対して近接状態、即ち、本体2が前方側に傾斜する際、ローラー82が円弧状レール部6で回転し、本体2の前方側への傾斜を容易にする状態になる。
上記のように、傾斜手段80は、本体2とベース部材25との連結手段と、本体2の傾斜を兼用する部材であり、このような形態により傾斜手段80の構造を簡略化することができる。
図15に本体2を前方側に最大限傾斜した状態を示す。即ち、図13の状態から本体2を前方側に傾けると下部ケース4の円弧状開口部5は、矩形状ガイド部材81にガイドされながら後方側に最大長さS(図13参照)移動し、図15の傾斜状態、即ち、注茶状態になる。
上記したように、抽出タンク40からの抽出時には、湯タンク30内の全湯は抽出タンク40に移動しており、本体2の重心は、本体2の上方前方側に移動しているため、本体2の前方側への傾斜は、小さな力で行うことができる。
即ち、本体2をベース部材25に対して前方向に所定角度傾け、本体2が最大長さS前方側に傾くと矩形状ガイド部材81の前端部81bは円弧状開口部5の前端部5bに当接して本体2が更に前方側に傾斜するのを防止し、本体2を傾斜状態に保持する。即ち、円弧状開口部5の前端部5b及び後端部5aはそれぞれ位置決め部を兼用する。
そして、傾斜手段80による本体2の最大傾斜角度である最大移動長さSは、注ぎ口43の所定角度(例えば35度)より大きくされている(例えば40度)。このように傾斜手段80による本体2の最大傾斜角度を、注ぎ口43の所定角度より大きくすることにより、本体2の最大傾斜時に注ぎ口43の先端が水平面より下方になって抽出タンク40内の抽出液の取り出しが容易になるとともに、抽出タンク40内の全抽出液を確実に取り出すことができる。
図14に非傾斜状態での戻り手段90を示し、図16に傾斜状態での戻り手段90を示す。戻り手段90は、コイルスプリング91と、このコイルスプリング91を取り付けるベース部材突部92及び下ケース突部93とからなる。
ベース部材突部92は、ベース部材25の前方側の左右に設けられる下方に突き出た2個の部分であり、下ケース突部93は、下部ケース4の中央側の左右に設けられる下方に突き出た2個の部分であり、2個のベース部材突部92と2個の下ケース突部93のそれぞれの左右方向の幅はほぼ同じである。
そして、左右それぞれのベース部材突部92と下ケース突部93とにはそれぞれコイルスプリング91の端部が連結され、左右それぞれのベース部材突部92と下ケース突部93との間には1個づつコイルスプリング91が介在する。
コイルスプリング91、91の介在は、非傾斜時では図14に示すように多少の引っ張り力が生じる長さの短い状態であり、この引っ張り力により本体2を後方側に引っ張って立設状態を維持し、最大傾斜時では図16に示すようにより大きな引っ張り力が生じる長さの長い状態になり、この大きな引っ張り力により本体2を後方側により強い力で引っ張って立設状態に戻そうとする。
この例では、傾斜させた本体2から手を離した状態で、自動的に戻るようにコイルスプリング91のばね力を設定しており、傾斜させた本体2から手を離すと本体2は自動的に立設状態に戻る。しかし、手で軽く戻すことにより戻るようなばね力にしてもよい。いずれにしても、このような戻り手段90を設けることにより、飲料抽出装置1の利便性をより高めることができる。
本願発明は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能であり、例えば、上記冷却手段60はコイル状のものに変えて、例えば、ペルチェ効果を奏する熱電素子を用いる冷却手段(例えば、特開平8−131334号公報参照)でもよく、また、熱い温度の湯のみを抽出するもの等、冷却手段は必要に応じて省略可能である。