JP6474575B2 - 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法 - Google Patents
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上記の課題を解消する技術として、図13(A)のような圧縮ブレースを用いた耐震補強構造が提案されている(例えば特許文献1)。この耐震補強構造は、既存躯体の既存梁50に沿って設置した鉄骨梁71と、この鉄骨梁71に一端が接合されて他端が既存躯体の前記既存梁50とは別の既存躯体部分である既存柱70と既存梁50との接合部に接合される圧縮ブレース72とを備える。
後施工アンカー73は、既存梁50内の鉄筋の現況に応じ、鉄筋を傷つけない配置で打設するため、当初の設計位置とは若干異なることがある。そのため、鉄骨梁71のウェブ部71bには後施工アンカー73の挿通用孔として、図14のようにルーズ孔77を設けておき、後施工アンカー73の位置に多少のずれがあっても対応できるようにすることとなる。ところが、後施工アンカー73は相当の長さを有し固定度が低いので、前記ルーズ孔77が移動代となって後施工アンカー73が同図に矢印で示すように左右にぐらついてしまう。このため、作業性が悪く精度の高い施工を行えない。
また、鉄骨梁71の設置にあたり、鉄骨梁71の凹み形状部分71aから既存梁50に渡ってグラウト74を充填した後でないと、後施工アンカー73を締め付け完了できず、この点でも作業性が悪い。
既存建物の既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて他端が前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを備え、
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に座金およびナットにより止め付けられ、
前記座金の外径は前記ルーズ孔の径よりも大径であり、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれてこの突っ張り用ボルトの先端が前記既存建物の既存梁に押し当てられ、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトが充填されて硬化したものである。
なお、「後施工アンカー」は、先に構築された鉄筋コンクリート躯体に孔を空け、その孔に埋め込み固着されるアンカーである。後施工アンカーとしては、孔の中へ一部を挿入し、孔内の隙間にグラウトを充填し硬化させ、化学的に固着させる接着系アンカーや、孔の内面を押圧して機械的に固着させる金属系アンカーを例示できる。
また、既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが鉄骨梁のウェブ部に有するルーズ孔に挿通されて、前記ウェブ部に固定部材により止め付けられるため、後施工アンカーに多少の位置ずれがあってもルーズ孔で吸収できる。ルーズ孔を用いるが、鉄骨梁のウェブ部における前記ルーズ孔に対してウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれて、この突っ張り用ボルトの先端が既存梁に押し当てられる。そのため、前記2個の雌ねじ部の組をバランス良く配置することで、突っ張り用ボルトの押圧力を反力として鉄骨梁の設置時のぐらつきを抑えることができ、グラウトの充填前に後施工アンカーの締め付け作業を行うことができる。これにより、施工の工数を削減することができる。
前記「固定部材」としては、座金およびナットを用いても、溶接されたプレートを用いても良い。
ブレースとして圧縮ブレースを用いることで、ブレースと既存建物躯体との応力伝達を支圧で行うことができ、ブレースでは引っ張り力を負担しないことから、引っ張り力による既存建物躯体との応力伝達を検討する必要がなく、既存建物の躯体との接合を簡素化できる。
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対してウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に複数本の後施工アンカーを設置する過程と、
前記既存梁に沿って前記鉄骨梁を配置し、前記複数本の後施工アンカーを前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通して前記鉄骨梁の前記ウェブ部に、外径が前記ルーズ孔の径よりも大径の座金およびナットにより止め付けることで前記鉄骨梁を支持する過程と、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトをねじ込んでこの突っ張り用ボルトの先端を前記既存建物の既存梁に押し当てる過程と、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトを充填し硬化させる過程、
とを含む。
拘束材3は、例えば芯材2に向けて開口する溝形鋼材4内にモルタルまたはコンクリート5を充填して構成される。芯材2と拘束材3との間には粘性弾性体からなるアンボンド材6を介在させてある。芯材2の両側面には、対向する一対の拘束材3,3の間の隙間を確保するスペーサ19を介在させてある。スペーサ19は、線状の鋼材またはゴム材等からなるが、省略しても良い。
このように一対の分割芯材2A,2Aは、作用荷重によって互いに突き当て状態となったり離れたりするが、両分割芯材2A,2Aの間に鋼板7を介在させているので、分割芯材2A,2Aの端面は鋼板7に当接する。そのため、分割芯材2A,2A同士に芯材3に板厚方向等の芯ずれが生じても、その芯ずれによる影響を緩和し、確実な圧縮力の伝達が行えるものの、必ずしも鋼板7を用いなくても良い。
先ず、既存建物における上側の既存梁40の下面には、前記鉄骨梁20を支持するための後施工アンカー10を設置しておき、既存梁40の下まで運ばれてきた前記鉄骨梁20に対して、2本のブレース1、1の上端を接合するための前記各継手部9A,9Aを、チェーンブロック等の揚重機器31で吊り上げられる前の鉄骨梁20の設置状態で下面となる面の長手方向中間位置にボルト接合しておく(図4(A))。
次に、各継手部9A,9Aが接合された前記鉄骨梁20を揚重機器31で吊り上げ、そのウェブ部20bの各ルーズ孔11に対応する後施工アンカー10が挿通するように、既存梁40の下面に鉄骨梁20を沿わせ、後施工アンカー10を鉄骨梁20のウェブ部20bに座金13およびナット14で止め付けて鉄骨梁20を支持する(図4(B))。 次に、両既存柱30、30と下側の既存梁40との各接合部に、前記2本のブレース1、1の下端を接合するための前記各継手部9B,9Bを別の後施工アンカー21で接合し、さらに各ブレース1を揚重機器31で吊り上げて、対応する上下の継手部9A,9Bに各ブレース1の上下端をボルト接合する(図4(C),(D))。
次に、鉄骨梁20の各雌ねじ部12に突っ張り用ボルト15をねじ込んで、この突っ張り用ボルト15の先端を既存建物の既存梁40に押し当て、この状態で後施工アンカー10を鉄骨梁20のウェブ部20bに締め付ける(図4(E))。
次に、鉄骨梁20の凹み形状部分20aから既存梁40に渡ってグラウト16を充填し硬化させる(図4(F))。
また、既存梁40に設置された複数本の後施工アンカー10が鉄骨梁20のウェブ部20bに有するルーズ孔11に挿通され、前記ウェブ部20bに座金13およびナット14により止め付けられるので、後施工アンカー10の多少の位置ずれは許容される。鉄骨梁20のウェブ部20bにおける前記ルーズ孔11に対してウェブ部20bの幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部12に突っ張り用ボルト15がねじ込まれて、この突っ張り用ボルト15の先端が既存梁40に押し当てられるので、前記2個の雌ねじ部12の組をバランス良く配置することで、突っ張り用ボルト15の押圧力を反力として鉄骨梁20の設置時のぐらつきを抑えることができ、グラウト16の充填前に後施工アンカー10の締め付け作業を行うことができる。これにより、施工の工数を削減できる。
10…後施工アンカー
11…ルーズ孔
12…雌ねじ部
13…座金(固定部材)
14…ナット(固定部材)
15…突っ張りボルト
16…グラウト
20…鉄骨梁
20a…凹み形状部分
20b…ウェブ部
30…既存柱
40…既存梁
Claims (4)
- 既存建物をブレースで補強する耐震補強構造であって、
既存建物の既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて他端が前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを備え、
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に座金およびナットにより止め付けられ、
前記座金の外径は前記ルーズ孔の径よりも大径であり、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれてこの突っ張り用ボルトの先端が前記既存建物の既存梁に押し当てられ、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトが充填されて硬化した既存建物のブレース耐震補強構造。 - 請求項1に記載の既存建物のブレース耐震補強構造において、前記ブレースが圧縮ブレースである既存建物のブレース耐震補強構造。
- 請求項1または請求項2に記載の既存建物のブレース耐震補強構造において、前記既存梁が鉄筋コンクリート梁または鉄骨鉄筋コンクリート梁であり、前記鉄骨梁がH形鋼であって前記既存梁の下面に沿って配置され、前記ブレースが互いに逆V字状に配置された2本であり、これら2本のブレースの上端が前記鉄骨梁に接合された既存建物のブレース耐震補強構造。
- 既存建物の既存梁の下面または上面に沿って鉄骨梁を配置し、この鉄骨梁に一端が接合されたブレースの他端を前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合して前記既存建物を補強する既存建物のブレース耐震補強方法であって、
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に複数本の後施工アンカーを設置する過程と、
前記既存梁に沿って前記鉄骨梁を配置し、前記複数本の後施工アンカーを前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通して前記鉄骨梁の前記ウェブ部に、外径が前記ルーズ孔の径よりも大径の座金およびナットにより止め付けることで前記鉄骨梁を支持する過程と、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトをねじ込んでこの突っ張り用ボルトの先端を前記既存建物に押し当てる過程と、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトを充填し硬化させる過程、
とを含む既存建物のブレース耐震補強方法。
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JP2014196078A JP6474575B2 (ja) | 2014-09-26 | 2014-09-26 | 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法 |
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