JP6474575B2 - 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法 - Google Patents

既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6474575B2
JP6474575B2 JP2014196078A JP2014196078A JP6474575B2 JP 6474575 B2 JP6474575 B2 JP 6474575B2 JP 2014196078 A JP2014196078 A JP 2014196078A JP 2014196078 A JP2014196078 A JP 2014196078A JP 6474575 B2 JP6474575 B2 JP 6474575B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
existing
steel
steel beam
brace
seismic reinforcement
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014196078A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016065428A (ja
Inventor
温子 長濱
温子 長濱
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daiwa House Industry Co Ltd
Original Assignee
Daiwa House Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daiwa House Industry Co Ltd filed Critical Daiwa House Industry Co Ltd
Priority to JP2014196078A priority Critical patent/JP6474575B2/ja
Publication of JP2016065428A publication Critical patent/JP2016065428A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6474575B2 publication Critical patent/JP6474575B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Working Measures On Existing Buildindgs (AREA)

Description

この発明は、ブレースを後付けすることによって耐震補強を施す既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法に関する。
従来、RC造(鉄筋コンクリート造)建物やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)建物の耐震補強方法として、図11に示すような鉄骨枠付ブレースによる補強方法が多く用いられている。この補強方法では、既存躯体の上下の既存梁50,50に沿う2本の鉄骨61,61と既存躯体の左右の既存柱70,70に沿う2本の鉄骨62,62とからなる鉄骨枠60に、鉄骨ブレース63と補剛材64とを付加している。鉄骨枠60の取付けでは、例えば同図におけるA部の側方および正面から見た縦断面図を示す図12(A),(B)のように行う。同図の例では、既存躯体の既存梁50に後施工アンカー65を設置し、H形鋼からなる鉄骨61の既存梁50と対向するウェブ部61aの裏面(グラウト充填側の面)には予めスタッドボルト66を立て、鉄骨61と既存梁50との間にスパイラル筋67を配置し(例えば、スタッドボルト66にスパイラル筋67を取付ける)、鉄骨61と既存梁50との隙間にグラウト68を充填して硬化させるという手順で、建物躯体に鉄骨枠60を取付けている。
しかし、上記の従来例では、上下の既存梁50,50に沿う2本の鉄骨61,61と、左右の既存柱70,70に沿う2本の鉄骨62,62とで組まれた鉄骨枠60が必要なため、使用する鉄骨材料が多く、コスト高になる。
上記の課題を解消する技術として、図13(A)のような圧縮ブレースを用いた耐震補強構造が提案されている(例えば特許文献1)。この耐震補強構造は、既存躯体の既存梁50に沿って設置した鉄骨梁71と、この鉄骨梁71に一端が接合されて他端が既存躯体の前記既存梁50とは別の既存躯体部分である既存柱70と既存梁50との接合部に接合される圧縮ブレース72とを備える。
特開2013−129982号公報 特開2008−88756号公報
図13の従来の耐震補強構造において、鉄骨梁71を既存梁50へ設置する構造は特許文献1には明確に記載されていないが、例えば図13(B),(C)のように既存梁50に打設した後施工アンカー73を鉄骨梁71のウェブ部71bに止め付けて、鉄骨梁71の凹み形状部分71aから既存梁50に渡ってグラウト74を充填し、グラウト74が硬化した後で後施工アンカー73を前記鉄骨梁71のウェブ部71bに座金75とナット76とで締め付けることが考えられる。
しかし、この場合、以下のような課題が残る。
後施工アンカー73は、既存梁50内の鉄筋の現況に応じ、鉄筋を傷つけない配置で打設するため、当初の設計位置とは若干異なることがある。そのため、鉄骨梁71のウェブ部71bには後施工アンカー73の挿通用孔として、図14のようにルーズ孔77を設けておき、後施工アンカー73の位置に多少のずれがあっても対応できるようにすることとなる。ところが、後施工アンカー73は相当の長さを有し固定度が低いので、前記ルーズ孔77が移動代となって後施工アンカー73が同図に矢印で示すように左右にぐらついてしまう。このため、作業性が悪く精度の高い施工を行えない。
また、鉄骨梁71の設置にあたり、鉄骨梁71の凹み形状部分71aから既存梁50に渡ってグラウト74を充填した後でないと、後施工アンカー73を締め付け完了できず、この点でも作業性が悪い。
後施工アンカー73の締め付けをグラウト74の充填前に行う方法として、図15に示す方法も考えられる。この方法では、先ず図15(A)のように、前記ルーズ孔77に挿入される前の後施工アンカー73において、鉄骨梁71の配置箇所でそのウェブ部71bが位置する高さにナット78および座金79を予め取付けておくことで、図15(B)のように鉄骨梁71を高さ方向に位置規制する。さらに、図15(C)のように前記ウェブ部71bの下面側から後施工アンカー73に別の座金75およびナット76を取付け、前記2つのナット78,76で鉄骨梁71を後施工アンカー73に固定して、鉄骨梁71のぐらつきを解消する。
この場合、上のナット78の取付け高さは、鉄骨梁71の配置高さに合わせるが、建方時に微調整が必要となる可能性がある。しかし、上のナット78があるために、鉄骨梁71を上方向に微調整できない。すなわち、鉄骨梁71は既存梁50に沿って配置するため、鉄骨梁71の配置後は上のナット78の位置まで手が入らず、ナット78を調整することができない。下方向へは微調整可能であるが、そうすると上のナット78と鉄骨梁71との間に隙間ができるため、鉄骨梁71を固定できない。つまり、図15に示す方法では、鉄骨梁71を配置した後に高さ調整ができない。
この発明の目的は、上記の各課題を解消できて、鋼材使用量を削減でき、施工性が良く高い施工精度で補強できる既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法を提供することである。
この発明の既存建物のブレース耐震補強構造は、既存建物をブレースで補強する耐震補強構造であって、
既存建物の既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて他端が前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを備え、
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に座金およびナットにより止め付けられ、
前記座金の外径は前記ルーズ孔の径よりも大径であり、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれてこの突っ張り用ボルトの先端が前記既存建物の既存梁に押し当てられ、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトが充填されて硬化したものである。
なお、「後施工アンカー」は、先に構築された鉄筋コンクリート躯体に孔を空け、その孔に埋め込み固着されるアンカーである。後施工アンカーとしては、孔の中へ一部を挿入し、孔内の隙間にグラウトを充填し硬化させ、化学的に固着させる接着系アンカーや、孔の内面を押圧して機械的に固着させる金属系アンカーを例示できる。
この構成によると、既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて、他端が既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを使用材料とする構成であるため、従来のような鉄骨枠が不要で、少ない鋼材使用量で済ませることができる。
また、既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが鉄骨梁のウェブ部に有するルーズ孔に挿通されて、前記ウェブ部に固定部材により止め付けられるため、後施工アンカーに多少の位置ずれがあってもルーズ孔で吸収できる。ルーズ孔を用いるが、鉄骨梁のウェブ部における前記ルーズ孔に対してウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれて、この突っ張り用ボルトの先端が既存梁に押し当てられる。そのため、前記2個の雌ねじ部の組をバランス良く配置することで、突っ張り用ボルトの押圧力を反力として鉄骨梁の設置時のぐらつきを抑えることができ、グラウトの充填前に後施工アンカーの締め付け作業を行うことができる。これにより、施工の工数を削減することができる。
前記「固定部材」としては、座金およびナットを用いても、溶接されたプレートを用いても良い。
また、既存梁に対して、後施工アンカーが若干斜めに設置されても、そのウェブ部の幅方向に配置される2個の雌ねじ部にねじ込む各突っ張り用ボルトのねじ込み量を調整することにより、鉄骨梁の設置姿勢を正しい姿勢に補正することができることから、高い施工精度で補強できる。これらにより、この既存建物のブレース耐震補強構造によると、使用する鉄骨材が少なくて済み、施工性が良く高い施工精度で補強できる。
この発明において、前記ブレースが圧縮ブレースであっても良い。圧縮ブレースは、圧縮力のみを負担可能なブレースである。
ブレースとして圧縮ブレースを用いることで、ブレースと既存建物躯体との応力伝達を支圧で行うことができ、ブレースでは引っ張り力を負担しないことから、引っ張り力による既存建物躯体との応力伝達を検討する必要がなく、既存建物の躯体との接合を簡素化できる。
この発明において、前記既存梁が鉄筋コンクリート梁または鉄骨鉄筋コンクリート梁であり、前記鉄骨梁がH形鋼であって前記既存梁の下面に沿って配置され、前記ブレースが互いに逆V字状に配置された2本であり、これら2本のブレースの上端が前記鉄骨梁に接合されたものであっても良い。このような逆V字状配置のブレースを設ける場合に、この発明の前記各効果が、効果的に発揮される。また、既存梁が鉄筋コンクリート梁または鉄骨鉄筋コンクリート梁である場合、梁内の鉄筋を避けて後施工アンカーを埋め込み、その後施工アンカーをルーズ孔に挿通して固定すると、後施工アンカーを直接に接合できる。
この発明の既存建物の耐震補強方法は、既存建物の既存梁の下面または上面に沿って鉄骨梁を配置し、この鉄骨梁に一端が接合されたブレースの他端を前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合して前記既存建物を補強する既存建物のブレース耐震補強方法であって、
前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対してウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
前記既存梁に複数本の後施工アンカーを設置する過程と、
前記既存梁に沿って前記鉄骨梁を配置し、前記複数本の後施工アンカーを前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通して前記鉄骨梁の前記ウェブ部に、外径が前記ルーズ孔の径よりも大径の座金およびナットにより止め付けることで前記鉄骨梁を支持する過程と、
前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトをねじ込んでこの突っ張り用ボルトの先端を前記既存建物の既存梁に押し当てる過程と、
前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトを充填し硬化させる過程、
とを含む。
この耐震補強方法によると、この発明の既存建物のブレース耐震補強構造につき前述したように、使用する鉄骨材が少なくて済み、施工性が良く高い施工精度で補強できる。
この発明の既存建物のブレース耐震補強構造は、既存建物をブレースで補強する耐震補強構造であって、既存建物の既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて他端が前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを備え、 前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に座金およびナットにより止め付けられ、前記座金の外径は前記ルーズ孔の径よりも大径であり、前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に固定部材により止め付けられ、前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれてこの突っ張り用ボルトの先端が前記既存建物の既存梁に押し当てられ、前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトが充填されて硬化したものであるため、使用する鉄骨材が少なくて済み、施工性が良く高い施工精度で補強できる。
この発明の既存建物の耐震補強方法は、既存建物の既存梁の下面または上面に沿って鉄骨梁を配置し、この鉄骨梁に一端が接合されたブレースの他端を前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合して前記既存建物を補強する既存建物のブレース耐震補強方法であって、前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対してウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、前記既存梁に複数本の後施工アンカーを設置する過程と、 前記既存梁に沿って前記鉄骨梁を配置し、前記複数本の後施工アンカーを前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通して前記鉄骨梁の前記ウェブ部に、外径が前記ルーズ孔の径よりも大径の座金およびナットにより止め付けることで前記鉄骨梁を支持する過程と、前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトをねじ込んでこの突っ張り用ボルトの先端を前記既存建物の既存梁に押し当てる過程と、前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトを充填し硬化させる過程とを含む方法であるため、使用する鉄骨材が少なくて済み、施工性が良く高い施工精度で補強できる。
この発明の第1の実施形態の耐震補強構造を適用した建物躯体の正面図である。 同耐震補強構造における既存梁と鉄骨梁との接合構造を示す断面図である。 既存梁と鉄骨梁との接合構造を示す斜視図である。 同耐震補強構造の施工手順を示す説明図である。 同耐震補強構造における既存梁と鉄骨梁との接合構造の施工手順を示す説明図である。 同耐震補強構造におけるブレースの要部外観斜視図および断面図である。 ブレースの圧縮時および通常時の状態を示す作用説明図である。 ブレースの引張時の状態を示す作用説明図である。 既存梁と鉄骨梁との接合構造の施工手順において、後施工アンカーに傾きがあった時の仕上がり状態を示す説明図である。 この発明の他の実施形態の耐震補強構造を用いた建物躯体の正面図である。 従来例を用いた建物躯体の正面図である。 同従来例における既存梁と鉄骨梁との接合構造を示す断面図である。 提案例の説明図である。 同提案例における課題の説明図である。 同提案例の課題に対する改善策の一例を示す説明図である。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図10と共に説明する。図1は、この実施形態の耐震補強構造を適用した既存建物の躯体構造を示す部分正面図である。この耐震補強構造は、既存建物をブレースを用いて補強する構造である。同図に示すように、既存建物の建物躯体は、隣合う2本の既存柱30、30間に既存梁40、40が横架されたものである。この耐震補強構造は、上側の前記既存梁40の下面に沿って設置された鉄骨梁20と、この鉄骨梁20に一端が接合されて他端が前記既存建物の既存梁40とは別の既存躯体部分に接合されるブレース1とを備える。ここでは、ブレース1は互いに逆V字状に配置された2本である。すなわち、2本のブレース1、1のうち1本のブレース1は、その上端が継手部9Aを介して鉄骨梁20の中間部に接合され、下端が別の継手部9Bを介して一方の既存柱30と下側の既存梁40との接合部に接合される。他の1本のブレース1は、その上端が継手部9Aを介して鉄骨梁20の中間部に接合され、下端が別の継手部9Bを介して他方の既存柱30と下側の既存梁40との接合部に接合される。建物躯体はRC造またはSRC造であり、既存梁40は鉄筋コンクリート梁である。
前記鉄骨梁20は、グラウトを充填可能な凹み形状部分20aが前記既存梁40に対向する断面形状を有する。ここでは、図2のように、鉄骨梁20としてH形鋼が用いられ、そのウェブ部20bと両フランジ部20c,20cとで囲まれた凹み形状部分20aが前記既存梁40の下面に対向するように、すなわちウェブ部20bが既存梁40の下面に対向する姿勢で鉄骨梁20が既存梁40の下面に沿って配置される。この鉄骨梁20の前記凹み形状部分20aの底面を構成するウェブ部20bの長手方向の複数箇所には、後施工アンカー10の挿通用のルーズ孔11が設けられ、かつこのルーズ孔11に対してウェブ部20bの幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部12,12の組が、前記長手方向の複数箇所に設けられる。前記雌ねじ部12は、例えば前記ウェブ部20bにボルト挿通孔(図示せず)を設けるとともに、ウェブ部20bの裏面(グラウト充填側の面)に前記ボルト挿通孔に整合するナットを溶接して構成される。なお、鉄骨梁20は、グラウトを充填可能な凹み形状部分を有する形鋼であれば良く、溝形鋼であっても良い。前記グラウトは、例えば無収縮モルタルとされる。
前記既存梁40の下面には、図5(A)のように前記鉄骨梁20のルーズ孔11に対応して複数本の後施工アンカー10が設置され、これらの後施工アンカー10が図5(B)のように鉄骨梁20の前記各ルーズ孔11に挿通されて、図5(C)のように鉄骨梁20の前記ウェブ部20bに固定部材、図示の例では座金13およびナット14により止め付けられ、これにより鉄骨梁20が支持される。また、前記各雌ねじ部12には、図5(C)のように前記ウェブ部20bの下側から突っ張り用ボルト15がねじ込まれて、この突っ張り用ボルト15の先端が既存梁40の下面に押し当てられる。突っ張り用ボルト15には全長に渡って雄ねじとされた両切りボルト等が用いられる。この状態で、後施工アンカー10が鉄骨梁20のウェブ部20bに締め付けられる。この後、鉄骨梁20の凹み形状部分20aから既存梁40に渡ってグラウト16が充填される。グラウト15の硬化により、既存梁40の下面に鉄骨梁20が固定される。
突っ張り用ボルト15の、鉄骨梁20の長手方向における設置箇所は、例えば両端の2か所とされるが、3か所以上であっても良い。鉄骨梁20の長手方向に対する突っ張り用ボルト15と後施工アンカー10との位置関係は、例えば後施工アンカー10の付近とされるが、離れていても良い。また、この実施形態では、後施工アンカー10に対する鉄骨梁20のウェブ部20bの幅方向の一側の突っ張り用ボルト15の位置と他側の突っ張り用ボルト15の位置とは、ウェブ部20bの幅の中心に対して対称とされているが、これに限られるものではなく、対称でなくてずれていても良い。
前記各ブレース1は、建物躯体に加わる水平力に抵抗する圧縮ブレースであって、図6に示すように、帯状の平鋼板である芯材2と、この芯材2の各平面に沿って配置されて芯材2の座屈を拘束する一対の拘束材3,3とを有する。芯材2は、帯状の平鋼板であり、SN材(建築構造用圧延鋼材)や、YP材(低降伏点鋼材)等の降伏点の低い鉄鋼材料からなる。
拘束材3は、例えば芯材2に向けて開口する溝形鋼材4内にモルタルまたはコンクリート5を充填して構成される。芯材2と拘束材3との間には粘性弾性体からなるアンボンド材6を介在させてある。芯材2の両側面には、対向する一対の拘束材3,3の間の隙間を確保するスペーサ19を介在させてある。スペーサ19は、線状の鋼材またはゴム材等からなるが、省略しても良い。
芯材2の両端には、建物躯体や前記鉄骨梁20に接合する継手部9A,9B(図1)がボルト(図示せず)で連結される。図6(A)のように、芯材2は、拘束材3で拘束されている範囲内で、長さ方向の途中部分、例えば中央で、一対の分割芯材2A,2Aに分割されている。これら一対の分割芯材2A,2Aの間には、長さ方向と垂直な鋼板7が対向する両拘束材3,3間に渡って介在させてある。鋼材7は、一対の分割芯材2A,2Aのいずれか一方の端面に溶接されている。各分割芯材2Aの拘束材3から突出する端部2Aaは、前記継手部9A,9Bとボルト接合される接合部分であって、その両面に長手方向に延びる補強リブ2Aaaを有する断面十字状とされている。
このブレース1では、上記したように芯材2が、その長さ方向の途中部分で分割された一対の分割芯材2A,2Aからなるため、図7のような圧縮力の作用時には、両分割芯材2A,2Aの端部が鋼板7を介して突き当て状態となり、圧縮力の伝達が可能であるが、図8のような引っ張り時には、分割芯材2Aの端部が鋼板7から引き離され、一対の分割芯材2A,2Aが互いに離れることになって引張力を負担しない。
このように一対の分割芯材2A,2Aは、作用荷重によって互いに突き当て状態となったり離れたりするが、両分割芯材2A,2Aの間に鋼板7を介在させているので、分割芯材2A,2Aの端面は鋼板7に当接する。そのため、分割芯材2A,2A同士に芯材3に板厚方向等の芯ずれが生じても、その芯ずれによる影響を緩和し、確実な圧縮力の伝達が行えるものの、必ずしも鋼板7を用いなくても良い。
図4は、前記ブレース耐震補強構造の施工手順の説明図を示す。この図を参照して、その施工手順を以下に説明する。
先ず、既存建物における上側の既存梁40の下面には、前記鉄骨梁20を支持するための後施工アンカー10を設置しておき、既存梁40の下まで運ばれてきた前記鉄骨梁20に対して、2本のブレース1、1の上端を接合するための前記各継手部9A,9Aを、チェーンブロック等の揚重機器31で吊り上げられる前の鉄骨梁20の設置状態で下面となる面の長手方向中間位置にボルト接合しておく(図4(A))。
次に、各継手部9A,9Aが接合された前記鉄骨梁20を揚重機器31で吊り上げ、そのウェブ部20bの各ルーズ孔11に対応する後施工アンカー10が挿通するように、既存梁40の下面に鉄骨梁20を沿わせ、後施工アンカー10を鉄骨梁20のウェブ部20bに座金13およびナット14で止め付けて鉄骨梁20を支持する(図4(B))。 次に、両既存柱30、30と下側の既存梁40との各接合部に、前記2本のブレース1、1の下端を接合するための前記各継手部9B,9Bを別の後施工アンカー21で接合し、さらに各ブレース1を揚重機器31で吊り上げて、対応する上下の継手部9A,9Bに各ブレース1の上下端をボルト接合する(図4(C),(D))。
次に、鉄骨梁20の各雌ねじ部12に突っ張り用ボルト15をねじ込んで、この突っ張り用ボルト15の先端を既存建物の既存梁40に押し当て、この状態で後施工アンカー10を鉄骨梁20のウェブ部20bに締め付ける(図4(E))。
次に、鉄骨梁20の凹み形状部分20aから既存梁40に渡ってグラウト16を充填し硬化させる(図4(F))。
上記構成の既存建物のブレース耐震補強構造によると、上側の既存梁40の下面に沿って設置された鉄骨梁20と、この鉄骨梁20に一端が接合されて、他端が既存建物の前記既存梁40とは別の既存躯体部分(ここでは、既存柱30と下側の既存梁40との接合部)に接合されるブレース1とを使用材料とするものであるため、従来例の場合のような鉄骨枠が不要で、少ない鋼材使用量で済ませることができる。
また、既存梁40に設置された複数本の後施工アンカー10が鉄骨梁20のウェブ部20bに有するルーズ孔11に挿通され、前記ウェブ部20bに座金13およびナット14により止め付けられるので、後施工アンカー10の多少の位置ずれは許容される。鉄骨梁20のウェブ部20bにおける前記ルーズ孔11に対してウェブ部20bの幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部12に突っ張り用ボルト15がねじ込まれて、この突っ張り用ボルト15の先端が既存梁40に押し当てられるので、前記2個の雌ねじ部12の組をバランス良く配置することで、突っ張り用ボルト15の押圧力を反力として鉄骨梁20の設置時のぐらつきを抑えることができ、グラウト16の充填前に後施工アンカー10の締め付け作業を行うことができる。これにより、施工の工数を削減できる。
また、既存梁40に対して、後施工アンカー10が図9(A)のように若干斜めに設置されても、その鉄骨梁20のウェブ部20bの幅方向に配置される2個の雌ねじ部12、12にねじ込む各突っ張り用ボルト15のねじ込み量を調整することにより、鉄骨梁20の設置姿勢を図9(B)の姿勢から図9(C)のように正しい姿勢に補正することができることから、高い施工精度で補強できる。これらにより、この既存建物のブレース耐震補強構造によると、使用する鉄骨材が少なくて済み、施工性が良く高い施工精度で補強できる。
また、この実施形態では、ブレース1として圧縮ブレースを用いているので、ブレース1と既存建物躯体との応力伝達を支圧で行うことができ、ブレース1では引っ張り力を負担しないことから、引っ張り力による既存建物躯体との応力伝達を検討する必要がなく、既存建物の躯体との接合を簡素化できる。
図10は、この発明の他の実施形態の耐震補強構造を用いた建物躯体の正面図を示す。この実施形態では、先の実施形態の耐震補強構造において、鉄骨梁20が下側の既存梁40の上面に設置され、2本のブレース1は互いにV字状に配置されて、各ブレース1の上端がそれぞれ継手部9Bを介して既存建物の一方の既存柱30と上側の既存梁40との接合部と、他方の既存柱30と上側の既存梁40との接合部とに接合されている。また、各ブレース1の下端は継手部9Aを介して鉄骨梁20の中間部に接合されている。その他の構成および作用効果は、先の実施形態の場合と同様である。
1…ブレース
10…後施工アンカー
11…ルーズ孔
12…雌ねじ部
13…座金(固定部材)
14…ナット(固定部材)
15…突っ張りボルト
16…グラウト
20…鉄骨梁
20a…凹み形状部分
20b…ウェブ部
30…既存柱
40…既存梁

Claims (4)

  1. 既存建物をブレースで補強する耐震補強構造であって、
    既存建物の既存梁の下面または上面に沿って設置された鉄骨梁と、この鉄骨梁に一端が接合されて他端が前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合されるブレースとを備え、
    前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
    前記既存梁に設置された複数本の後施工アンカーが前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通されて前記鉄骨梁の前記ウェブ部に座金およびナットにより止め付けられ、
    前記座金の外径は前記ルーズ孔の径よりも大径であり、
    前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトがねじ込まれてこの突っ張り用ボルトの先端が前記既存建物の既存梁に押し当てられ、
    前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトが充填されて硬化した既存建物のブレース耐震補強構造。
  2. 請求項1に記載の既存建物のブレース耐震補強構造において、前記ブレースが圧縮ブレースである既存建物のブレース耐震補強構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の既存建物のブレース耐震補強構造において、前記既存梁が鉄筋コンクリート梁または鉄骨鉄筋コンクリート梁であり、前記鉄骨梁がH形鋼であって前記既存梁の下面に沿って配置され、前記ブレースが互いに逆V字状に配置された2本であり、これら2本のブレースの上端が前記鉄骨梁に接合された既存建物のブレース耐震補強構造。
  4. 既存建物の既存梁の下面または上面に沿って鉄骨梁を配置し、この鉄骨梁に一端が接合されたブレースの他端を前記既存建物の前記既存梁とは別の既存躯体部分に接合して前記既存建物を補強する既存建物のブレース耐震補強方法であって、
    前記鉄骨梁は、グラウトを充填可能な凹み形状部分が前記既存梁に対向する断面形状を有し、前記凹み形状部分の底面を構成するウェブ部の長手方向の複数箇所に後施工アンカーの挿通用のルーズ孔を有し、かつこのルーズ孔に対して前記ウェブ部の幅方向の両側にそれぞれ位置する2個の雌ねじ部の組を、前記長手方向の複数箇所に有し、
    前記既存梁に複数本の後施工アンカーを設置する過程と、
    前記既存梁に沿って前記鉄骨梁を配置し、前記複数本の後施工アンカーを前記鉄骨梁の前記各ルーズ孔に挿通して前記鉄骨梁の前記ウェブ部に、外径が前記ルーズ孔の径よりも大径の座金およびナットにより止め付けることで前記鉄骨梁を支持する過程と、
    前記各雌ねじ部に突っ張り用ボルトをねじ込んでこの突っ張り用ボルトの先端を前記既存建物に押し当てる過程と、
    前記鉄骨梁の前記凹み形状部分から前記既存梁に渡ってグラウトを充填し硬化させる過程、
    とを含む既存建物のブレース耐震補強方法。
JP2014196078A 2014-09-26 2014-09-26 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法 Active JP6474575B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014196078A JP6474575B2 (ja) 2014-09-26 2014-09-26 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014196078A JP6474575B2 (ja) 2014-09-26 2014-09-26 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016065428A JP2016065428A (ja) 2016-04-28
JP6474575B2 true JP6474575B2 (ja) 2019-02-27

Family

ID=55805132

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014196078A Active JP6474575B2 (ja) 2014-09-26 2014-09-26 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6474575B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114382177A (zh) * 2021-12-27 2022-04-22 江苏缘恒建设有限公司 装配式建筑用钢结构抗震节点

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4832255B2 (ja) * 2006-10-31 2011-12-07 株式会社中央サービス コインランドリーおよびその設置方法
JP4917168B1 (ja) * 2010-12-15 2012-04-18 大和ハウス工業株式会社 圧縮ブレースによる耐震補強構造および補強方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016065428A (ja) 2016-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20100107545A1 (en) Construction Frame Shear Lug
JP4917168B1 (ja) 圧縮ブレースによる耐震補強構造および補強方法
KR101548608B1 (ko) 접합 플레이트를 갖는 철골보 및, 철골보와 기둥의 연결 구조
KR101711614B1 (ko) 철골기둥과 철골 보의 접합구조
JP2011074604A (ja) 橋梁の移動抑制装置および移動抑制方法
JP4888915B2 (ja) 梁端部をpc造とする複合構造梁を用いた建物構造
KR20200068205A (ko) 강연선과 길이조절 가능형 트러스 구조를 이용한 내진보강공법
JP6474575B2 (ja) 既存建物のブレース耐震補強構造および耐震補強方法
JP7243007B2 (ja) 木質梁接合構造
JP6026794B2 (ja) 鉄骨柱の柱脚構造
JP2010043435A (ja) 構造物における補強部材の取付構造
JP5087026B2 (ja) 耐震補強構造
KR101638564B1 (ko) 구조물의 강성 및 인성 개선을 위한 내진 보강체 및 이를 이용한 내진 보강방법
JP5934033B2 (ja) 圧縮ブレースによる耐震補強構造および補強方法
JP6860412B2 (ja) 木造建築物の構造躯体の接合方法、接合構造及び木造建築物
JP2007284925A (ja) 壁パネル固定構造および建築物
KR101360360B1 (ko) 간격유지부재의 설치가 용이한 거푸집조립체
JP3209111U (ja) たて枠材およびスチールハウス
JP4431986B2 (ja) 建物の耐震補強構造および耐震補強方法
JP7265417B2 (ja) 柱梁接合方法
JP2008121246A (ja) 制震補強部材の取付方法
JP3161023U (ja) 鉄骨柱及び鉄骨梁の接合構造
JP7217143B2 (ja) 柱と基礎の接合構造
JP5844781B2 (ja) 太陽電池架台と鋼管杭の接合構造および杭頭キャップ金物
KR102157288B1 (ko) 조적조 건물의 내진 보강용 고정모듈 및 이를 이용하는 내진 보강 공법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170908

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180710

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180830

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190130

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6474575

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250