以下に、本発明の実施の形態を示し、本発明をより具体的に説明する。
<トナー>
トナーは、現像装置内において、トナー母粒子表面に付着している外添剤がトナー母粒子に埋没すると、感光ドラム1に対する付着力が増加する。そのため、転写効率が下がり、感光ドラム1上の転写残量が多くなる。その結果、高濃度画像での濃度均一性の低下などの画像不良が発生する。
本発明者らが検討を重ねた結果、トナー母粒子に付着している外添剤が、現像装置内のシェアにより母粒子に埋没するかどうかは、トナー表面の樹脂の塑性変形耐性が強く影響していることを見出した。
トナー母粒子表面の外添剤の粒径は、数nm〜500nm程度であるが、画像出力を行う際、現像装置内部の様々な場所でシェアがかかる。例えば、現像ローラ14と供給ローラ15間や、現像ローラ14と規制ブレード16間、現像ローラ14と感光ドラム1間などの摺擦部でトナーに対しシェアがかかる。その際、トナー母粒子表面の外添剤が各部材に押圧され、トナー表面の樹脂を変形させる。摺擦部を通過後はシェアが除かれるため、トナー母粒子表面の外添剤も除荷されるが、トナー表面の樹脂の弾性変形率に応じて、塑性変形量が決定され、塑性変形した分だけ外添剤が埋め込まれる。
トナーの表面組成として、環状構造を有するオレフィン系重合体だけでなく、0.930g/cm3未満の低密度であり、重量平均分子量が1万〜500万であるポリエチレンとを含有させることで、低密度ポリエチレンの持つ高弾性変形性能をトナー表面に機能付与することができる。その結果、トナー母粒子表面への外添剤の埋没耐性を高めることが可能となり、長期にわたり安定した良好な画像形成が可能となる。
尚、「環状構造を有するオレフィン系共重合体とポリエチレンとを含む表面組成を有する」とは、環状構造を有するオレフィン系共重合体とポリエチレンとが、外添剤としてトナー母粒子の表面に付着しているのではなく、トナー母粒子の表面部分が、環状構造を有するオレフィン系共重合体とポリエチレンとを含む組成物で構成されていることを意味する。
以下に、トナーの製造方法について説明しつつ、各成分について、詳細に記載する。
トナーの製造方法の1例として、結着樹脂、顔料、ワックス、荷電制御剤などを含む数μmサイズのコア粒子の表面に、20〜500nmの環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子を酸凝集法により付着し、さらに熱的/機械的に押潰し表面を平滑化することで、トナー表面の樹脂として、環状構造を有するオレフィン系重合体と、低密度ポリエチレンとを含むトナーを作製した。
以下に、本実施の形態におけるトナー製造方法の詳細について述べる。
上記の方法で、本発明のトナーを作製する場合には、
(1)コア粒子を作製する工程、
(2)20nm〜500nmの環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子の水分散液を作製する工程、
(3)コア粒子表面に該樹脂微粒子を付着させる工程、
(4)コア粒子表面に付着した該微粒子を含むトナーの表面を平滑化する工程、
が必要である。
(1)コア粒子の作製
本発明のトナーのコア粒子に用いることができる結着樹脂としては公知のものが使用可能であり、スチレン−アクリル樹脂などのビニル系樹脂やポリエステル樹脂、あるいはそれらを結合させたハイブリッド樹脂などが使用可能である。
また、重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。
具体的にはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミドなどのアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミドなどのメタクリレート系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセンなどのオレフィン系単量体が好ましく用いられる。
これらは、単独または、一般的にはJ.Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、p.209−277に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。
理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方、75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、画像の透明性が低下する。
さらに、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、結着樹脂の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
本発明のトナーのコア粒子に用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテートが挙げられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部用いる場合である。
本発明のトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでもよい。磁性トナーとして用いる場合には、以下に挙げられる磁性材料が好ましく用いられる。すなわち、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、およびこれらの混合物などが挙げられる。
上記磁性材料としては、例えば、四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(CdFe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジウム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)などが挙げられる。
上述した磁性材料を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用する。
本発明の目的に特に好適な磁性材料は四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
これらの磁性体は平均粒径が0.1乃至2μm(好ましくは0.1乃至0.3μm)で、795.8kA/m印加での磁気特性が保磁力は1.6乃至12kA/m、飽和磁化は5乃至200Am2/kg(好ましくは50乃至100Am2/kg)、残留磁化は2乃至20Am2/kgである場合がトナーの現像性の点で好ましい。
これら磁性材料の添加量は結着樹脂100質量部に対して、磁性体10乃至200質量部、好ましくは20乃至150質量部使用する場合である。
一方、非磁性トナーとして用いる場合の着色剤としては、従来知られている種々の染料や顔料など、公知の着色剤が用いることができる。
例えばマゼンタ用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209;C.I.Pigment Violet 19;C.I.Vat Red 1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
シアン用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Blue 2、3、15:1、15:3、16、17、25、26;C.I.Vat Blue 6;C.I.Acid Blue 45;またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、155、180;C.I.Solvent Yellow 9、17、24、31、35、58、93、100、102、103、105、112、162、163;C.I.Vat Yellow 1、3、20などが挙げられる。
黒色着色剤としては、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、および上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
これらの着色剤の使用量は、着色剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対して総量で0.1乃至60質量部、好ましくは0.5乃至50質量部が適当である。
本発明において使用し得るワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックスおよびそれらの誘導体などが挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、あるいはそれらの化合物の酸アミドやエステル、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックスなどが挙げられる。
これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部であることが好ましく、さらには3.0乃至10.0質量部であることがより好ましい。
ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が難しくなり、15.0質量部を超えるとトナー中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー表面に多く存在することとなり、所望の帯電特性を阻害する可能性があり好ましくない。
また、本発明のトナーは、帯電特性を調節する目的で、荷電制御剤を使用してもよい。使用することができる荷電制御剤としては、例えば下記のようなものが挙げられる。
負帯電性の荷電制御剤としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基または、スルホン酸エステル基を有する高分子化合物、サリチル酸誘導体および、その金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールなどのフェノール誘導体類、尿素誘導体、ホウ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
また、正帯電性の荷電制御剤としては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩などによるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩およびこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類などが挙げられる。
また、本発明において、トナーの個数平均粒径(D1)は、帯電の安定性及び高画質な画像を得るという観点から、3.0乃至15.0μmであることが好ましく、より好ましくは4.0乃至12.0μmである。
なお、本実施の形態における、本発明のトナーの個数平均粒径(D1)は、主にコア粒子の粒径によって決定されるが、コア粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。
例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間などをコントロールすることによって調整することができる。
本発明のトナーに用いるコア粒子は、さまざまなトナー製造方法により製造可能である。例えば、結着樹脂と顔料、離型剤を混合し、混練、粉砕、分級工程を経てトナー粒子を得る混練粉砕法;重合性単量体と顔料、離型剤を混合、分散または溶解し、水系媒体中で造粒し重合反応によりトナー粒子を得る懸濁重合法;有機溶剤中に結着樹脂、顔料、離型剤を溶解または分散混合し、水系媒体中で造粒したのち、脱溶剤してトナー粒子を得る溶解懸濁法;結着樹脂、顔料、離型剤の各微粒子を水系媒体中に微分散し、それらをトナー粒径に凝集させてトナー粒子を得る乳化凝集法等が挙げられる。
本発明のトナーに用いるコア粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、高い平均円形度のトナーを比較的容易に得ることができる懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法など、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。
懸濁重合法によりコア粒子を製造する場合は、前記結着樹脂となる重合性単量体、着色剤、ワックス成分、および重合開始剤などを混合して重合性単量体組成物を調製し、重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒後、水系媒体中で重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させることにより粒子が得られる。
上記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。
より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)などのアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系などのレドックス開始剤などが挙げられる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系などが挙げられる。
これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて使用することができる。
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。
上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。
上記分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。
無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどが挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンなどが挙げられる。
また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。
例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどが挙げられる。
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが上記重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。
例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
また、乳化凝集法によりトナーのコア粒子を製造する場合は、例えば下記のような工程を経てコア粒子を製造することができる。
すなわち、前記結着樹脂、着色剤、ワックスなどのトナー構成成分の水分散体を調製する工程(分散工程)、続く、これら水分散体を混合後、凝集し凝集体粒子を形成する工程(凝集工程)、並びに、該凝集体粒子を加熱し融合する工程(融合工程)、洗浄工程、乾燥工程を経て、トナーのコア粒子を得ることができる。
各トナー構成成分の分散工程では、界面活性剤等の分散剤を用いる事が出来る。具体的には、トナー構成成分と界面活性剤と共に水系媒体に分散させてなる。水分散液は公知の方法で製造されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
上記界面活性剤としては、水溶性高分子、無機化合物、及び、イオン性または非イオン性の界面活性剤が挙げられる。特に、分散性の問題から分散性が高いイオン性が好ましく、特に、アニオン性界面活性剤が好ましく使われる。
また、洗浄性と界面活性能の観点から、界面活性剤の分子量は、100〜10,000が好ましく、より好ましくは200〜5,000である。
当該界面活性剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、の等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。
なお、これらは1種単独で用いても良く、また、必要に応じて2種以上を組み合せて用いてもよい。
凝集体粒子を形成させる方法としては、特に限定されるものではないが、pH調整剤、凝集剤、安定剤等を水分散体混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力(攪拌)等を適宜加える方法が好適に例示できる。
上記pH調整剤としては、特に限定されるものではないが、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸があげられる。
上記凝集剤としては、特に限定されるものではないが、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム等の無機金属塩の他、2価以上の金属錯体等があげられる。
上記安定剤としては、主に界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いても良く、また、必要に応じて2種以上を組み合せて用いてもよい。
ここで形成される凝集粒子の平均粒径としては、特に限定されるものではないが、通常、得ようとするトナー粒子の平均粒径と同じ程度になるように制御するとよい。制御は、例えば、前記凝集剤等の添加・混合時の温度と上記撹拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。さらに、トナー粒子間の融着を防ぐため、上記pH調整剤、上記界面活性剤等を適宜投入することができる。
融合工程では、上記凝集体粒子を加熱して融合することでトナー粒子を形成する。
加熱の温度としては、凝集体粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から樹脂の分解温度の間であればよい。例えば、凝集工程と同様の撹拌下で、界面活性剤の添加やpH調整等により、凝集の進行を止め、樹脂粒子の樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱を行うことにより凝集体粒子を融合・合一させる。
加熱の時間としては、融合が十分に為される程度でよく、具体的には10分間〜10時間程度行えばよい。
(2)環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子の水分散液を作製する工程
次に、環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子の水分散体液の作製工程および該微粒子の付着工程について詳細を述べるが、該微粒子の付着工程については、前記融合工程の前後どちらでもかまわず、場合によっては後述する(4)のトナー表面を平滑化する工程と前記融合工程を同一にしてもかまわない。
本発明で用いる環状構造を有するオレフィン系重合体は、例えばメタロセン系触媒、チーグラー系触媒及びメタセシス重合(metathesis polymerization)、すなわち二重結合開放(double bond opening)及び開環重合反応のための触媒を用いた重合法により得られる重合体である。この環状オレフィン重合体は、それ自体公知であり、その合成例は、例えば、特開平5−339327号公報、特開平5−9223号公報、特開平6−271628号公報、ヨーロッパ特許出願公開(A)第203799号明細書、同第407870号明細書、同第283164号明細書及び同第156464号明細書等に開示されている。
好ましくは、上記環状オレフィン重合体は、炭素数が2〜12、好ましくは2〜6の低級アルケン(α−オレフィン、広義には非環式オレフィン)と、炭素数が3〜17、好ましくは5〜12の少なくとも1つの二重結合を有する環式及び/又は多環式化合物(環状(シクロ)オレフィン)との共重合体であり、無色透明で高い光透過率を有するものである。当該重合体を構成する低級アルケンとしてはエチレン、プロピレン、ブチレンが例示され、環状オレフィンとしてはノルボルネン、テトラシクロドデセン(TCD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、シクロヘキセンが例示される。中でも、特に好ましくは、低級アルケンとしてはエチレンが、そして環状オレフィンとしてはノルボルネンが選択される。
上記文献によると、上記環状オレフィン重合体は、環状オレフィンの1種類以上のモノマーを、場合によっては1種類の非環式オレフィン−モノマーと−78〜150℃、好ましくは20〜80℃で、圧力0.01〜64barでアルミノキサン等の共触媒と例えばジルコニウムあるいはハフニウムよりなるメタロセンの少なくとも1種類からなる触媒の存在において重合することにより得ることができる。他の有用な重合体はヨーロッパ特許出願公開(A)第317262号明細書に記載されており、水素化重合体及びスチレンとジシクロペンタジエンとの共重合体も使用できる。
また、本発明で使用される環状オレフィン系重合体としては、
i)数平均分子量が、100〜10万であるものが好ましく、より好ましくは500〜5万であり、
ii)重量平均分子量が、200〜30万であるものが好ましく、好ましくは3000〜20万であり、
iii)ガラス転移点が、−20℃〜180℃であるものが好ましく、より好ましくは40〜80℃である。
また、本発明で使用される密度0.930g/cm3未満の低密度ポリエチレンとしては、公知の重合法によって得られる重合体を使用することができる。
具体的には、高圧法によって得られる高圧法低密度ポリエチレンと、触媒を用いてα−オレフィン類とエチレンとを中低圧で共重合させる中低圧法ポリエチレンがあり、必要に応じて適宜選択して使用可能である。
高圧法ポリエチレンは、公知の製造方法として、様々なものが提案されているが、それらを適宜選択して使用することができる。
例えば、ラジカル重合法を使用した高圧法ポリエチレンの製造方法においては、ラジカルの連鎖反応が発生し、ラジカルの移動により各種長さの分岐がある分子構造をとるようになり、短い分岐はポリエチレン鎖の結晶化を阻害することから、低密度で柔軟なポリエチレンを作製することができる。
また、中低圧法ポリエチレンに関しても、公知の製造方法として、様々なものが提案されており、それらを適宜選択して使用することができる。
例えば、特開平11−60617号公報などにあるような、メタロセン触媒を用いて製造されたものを用いることができる。この反応では、通常得られるものが直鎖状の構造となり、エチレン単独重合では分岐が殆どできず、高密度のポリエチレンが生成されるが、プロピレンや1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類との共重合により、短い分岐を導入し結晶化度を下げ、直鎖状低密度ポリエチレンを得ることができる。
このような金属原子が活性点となる触媒での重合法では、ポリエチレンが溶媒中へ溶解した状態で重合する溶液重合のほか、シリカやマグネシウム化合物への担持触媒を使用し、溶媒中に生成ポリエチレンがスラリーとして存在するスラリー重合や、エチレンその他ガス中での浮遊状態で重合する気相重合など、各種プロセスが開発・利用されており、適宜公知のプロセスを選択し使用することが可能である。また、2つ以上の連続した反応槽で条件を変えて重合し、分子量分布等の調整をすることも可能である。
ポリエチレンは、重量平均分子量が1万〜500万であることが必要であるが、3万〜20万であることが好ましい。
次に、樹脂微粒子の水分散液の作製工程について、詳細を述べる。
環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂と、密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンを含有する樹脂とを所望の比率で秤量した後、両方の樹脂を溶解し且つ水に不溶な溶剤に溶解した油相と、アニオン系界面活性剤をイオン交換水に溶解した水相を混合し、撹拌機によってせん断力をかけることで、油相サイズが数μmの水中油滴(O/W型)エマルションを作製する。
得られたエマルションを、更に高せん断力をかけられ、場合によっては加熱下において高せん断力をかけられる湿式微粒化装置(例えば、吉田機械興業社製ナノマイザー、スギノマシン社製スターバーストなど)にて複数回処理することで、油相サイズが20nm〜500nmの水中油滴(O/W型)エマルションを作製する。
その後に減圧蒸留をおこなって溶剤を除去することで、20nm〜500nmの環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子が分散された水系分散液を得ることができる。
(3)前記(1)記載のコア粒子表面に前記(2)記載の樹脂微粒子を付着する工程
前記(1)で作製したコア粒子をアニオン系界面活性剤で分散させたコア粒子水分散液中に、前記(2)で作製した環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子の水分散液を所望量混合し、撹拌しながらこの混合液中に凝集剤である希塩酸を少しずつ加えることにより、環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で重量平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子が略均一に付着したコア粒子の水分散液を得ることができる。
なお、上記樹脂微粒子をコア粒子表面に被覆させる方法としては、上述した湿式法の他に、ヘンシェルミキサーなどの高速流動型混合機を用いる乾式法を用いることも可能である。
環状オレフィン系重合体とポリエチレンとの表面組成における存在割合は、オレフィン系共重合体が該ポリエチレンよりも多いことが好ましい。
(4)コア粒子表面に付着した該樹脂微粒子を含むトナーの表面を平滑化する工程
前記(3)記載の工程で得られた樹脂微粒子が略均一に付着したコア粒子に対し、乾式および湿式のいずれかもしくは両方を用い、表面の樹脂微粒子を平滑化し、略円形のトナー粒子を得ることができる。
湿式工程の1例として、例えば、前記(3)記載の工程で得られた樹脂微粒子が略均一に付着したコア粒子の水分散液を、所望の条件で加熱し、表面の樹脂微粒子を溶融させることで、コア粒子の形状に合わせて表面が平滑化される。所定の平均円形度となるまで加熱を行ったところで、適切な条件で室温まで冷却する。
本工程後に得られたトナー粒子を、洗浄、濾過、乾燥等することにより、トナー粒子を得ることができる。
また、乾式工程の1例として、前記(3)記載の工程で得られたコア粒子の水分散液を洗浄、濾過、乾燥し、該微粒子が略均一に付着したコア粒子を得て、乾燥状態でヘンシェルミキサーやハイブリタイザーなどの装置を用い、所望の条件・時間でせん断力を印加することで、コア粒子上の樹脂微粒子を機械的に押しつぶし、表面を平滑化することで、トナー粒子を得ることも可能である。
本発明のトナーは、帯電特性や耐久特性などの観点から、得られたトナーに外添剤を添加することが好ましい。外添剤の種類・量は一概に規定できるものではないが、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したものなどの微粉体が使用できる。
次に、本発明のトナーを用いて、画像形成を行うことができる画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置の概略構成図である。図1に示す本画像形成装置Aは、電子写真プロセスを利用したフルカラーレーザープリンタである。以下に本発明における実施形態である画像形成装置Aの全体的な概略構成について述べる。ただし、以下に説明する実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、特に特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
本発明を適用した実施形態に適用した画像形成装置を図1、図2に示す。この画像形成装置において、像担持体である感光体1は矢印方向に回転され、帯電装置である帯電ローラ2によって一様な電位Vdに帯電される。次に露光装置であるレーザー光学装置3からのレーザー光により露光され、その表面に静電潜像が形成される。この静電潜像を現像装置4によって現像し、トナー像として可視化する。可視化された感光体1上のトナー像は、一次転写装置5によって中間転写体6に転写されたのち、二次転写装置7によって記録メディアである紙8に転写される。転写されずに感光体1に残存した転写残トナーは、クリーニング装置であるクリーニングブレード9により掻き取られる。クリーニングされた感光体1は上述の作用を繰り返し、画像形成を行う。一方、トナー像を転写された紙8は、定着装置10によって定着された後、機外に排出される。
図2に示すように、感光体1と、帯電ローラ2と、現像装置4と、クリーニングブレード9とは、一体に構成され、本体に対し着脱可能なカートリッジ11として構成されている。本体にはカートリッジ11の装着部が4つ用意されている。そして中間転写体6の移動方向上流側から、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが充填されたカートリッジ11が装着されており、中間転写体6に順次転写することでカラー画像を形成することができる。
感光ドラム1は導電性基体であるAlシリンダ上に、正電荷注入防止層、電荷発生層、電荷輸送層の順に重ねて塗工された有機感光体が積層されて形成されている。また感光体1の電荷輸送層としてアリレートを用い、電荷輸送層の膜厚は23μmに調整した。
電荷輸送層は電荷輸送材料を結着剤と共に溶剤に溶解させて形成される。有機の電荷輸送材料の例としては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンオキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、及び不飽和樹脂等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種類、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
帯電ローラ2は、導電性支持体である芯金に半導電性のゴム層が設けられており、この帯電ローラの抵抗は、導電性のドラムに対して200Vの電圧を印加したときに約105Ωの抵抗を示す。
現像装置4は、現像剤であるトナー12と、現像剤収容部である現像容器13と、現像剤担持体である現像ローラ14と、現像ローラ14にトナー12を供給する供給ローラ15と、現像ローラ14上のトナーを規制する現像剤規制部材である規制ブレード16を備える。
現像ローラ14は、導電性支持体である外径6mmの芯金電極14aの周囲に、導電剤が配合された導電性のゴム層14bを設け、現像ローラ14基体の外径は11.5mmとした。ここで、ゴム層の材質はシリコンゴム、ウレタンゴム、EPDM(エチレン・プロピレン共重合体)、ヒドリンゴム、又はこれらが混合されたゴム、一般的にゴムが使用可能である。本例においてはシリコンゴムを2.5mm,ウレタン層を10μm形成したものを基体とした。また、導電剤としては、カーボン粒子、金属粒子、イオン導電粒子等を分散させることで所望の抵抗値を得ることができ、本例においてはカーボン粒子を用いた。また、現像ローラ全体の硬度調整のためには、シリコンゴム量と充填剤であるシリカ量を調整することで、所望の硬度を有する現像ローラ14を作製した。
供給ローラ15は現像ローラ14に接触して回転し、規制ブレード16はその一端が現像ローラ14に当接している。
供給ローラ15は、導電性支持体である外径5.5mmの芯金電極15aの周囲に、発泡ウレタン層15bが設けられている。発泡ウレタン層15bを含んだ供給ローラ15全体の外径は13mmである。供給ローラ15と現像ローラ14の侵入量は1.2mmである。供給ローラ15は、現像ローラ14との当接部において、お互いが逆方向の速度を持つような方向に回転する。発泡ウレタン層15bには、この周囲に存在するトナー12の粉圧が作用し、さらに供給ローラ15が回転することで、トナー12が発泡ウレタン層内に取り込まれる。トナー12を含んだ供給ローラ15は、現像ローラ14との当接部において現像ローラ14にトナー12を供給し、さらに摺擦することでトナー12に予備的な摩擦帯電電荷を与える。一方、現像ローラへトナー供給を行う供給ローラは、現像部で現像されずに現像ローラ上に残留したトナーを引きはがす役割も有する。
供給ローラから現像ローラ14へ供給されたトナー12、規制ブレード16に達し、所望の帯電量とトナー層厚に調整される。規制ブレード16は厚さ80μmのSUSブレードであり、現像ローラ14の回転に逆らう向きに配置されている。この規制ブレード16により、現像ローラ14上のトナー12に規制され、均一なトナー層厚を得るとともに、摺擦による摩擦帯電により所望の電荷量を得る。また、規制ブレード16には、現像ローラ14に対して−200Vの電位差を有して電圧を印加した。この電位差は、トナーコート層を安定化させるためのものである。
規制ブレードにより現像ローラ上に形成されたトナー層は、感光ドラムと当接する現像部へ搬送され、現像部において、反転現像が行われる。
当接位置Aにおいて、現像ローラ14端部の不図示のコロによって、現像ローラ14の感光体1への侵入量は40μmに設定される。感光ドラムに押しつけられることにより現像ローラ表面は変形することで、現像ニップを形成し安定した当接状態により現像を行うことができる。現像ローラ14は感光体1とその現像ニップにおいて、感光体1に対して117%の周速比を持って同方向に回転する。このような周速差を設ける理由は、現像するトナー量を安定させる役割を有する。
つぎに、本実施形態における具体的な電圧について述べる。帯電ローラへは、−1050Vを印加することで、感光ドラム表面を−500Vに均一に帯電することで、暗電位(Vd)を形成し、印字部は、露光手段であるレーザーにより−100V(明電位・Vl)に調整した。このとき、現像ローラへは、−300Vの電圧(Vdc)を印加することで、ネガ極性のトナーは、明電位へ転移し反転現像を行う。
また、|Vd−Vdc|をVbackと呼び、Vbackを200Vとした。
さらに、現像装置内に充填するトナー量は、画像比率5%換算画像を3000枚印字可能相当量とした。画像比率5%の横線の具体例としては、1ドットライン印字後、19ドットライン非印字を繰り返すような画像を意味する。
画像形成プロセスにおいて、感光ドラム1は120mm/secの速度で画像形成装置により図中矢印r方向へ回転駆動される。また、本画像形成装置においては、厚い記録紙(厚紙)通紙時に定着のための熱量を確保するため、60mm/secのプロセススピードの低速モードを有している。また、本実施形態おいては、2種類のプロセスモードのみの動作であるが、記録紙に応じて、複数のプロセスモードを有してもよく、各プロセスモードに対応した制御を実行可能に構成されていてもよい。
以下に、各実施例および比較例で用いたトナーの製造工程において、詳細に述べる。
<実施例1>
(1)コア粒子を作製する工程
コア粒子として、懸濁重合法で樹脂微粒子C1を作製した。詳細工程を以下に示す。
[重合性単量体組成物調製工程]
下記組成を混合後、ボールミルで3時間分散させた。
・スチレン 82.0部
・アクリル酸2−エチルヘキシル 18.0部
・ジビニルベンゼン 0.1部
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.5部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、ガラス転移点65℃、重量平均分子量(Mw)10000、数平均分子量(Mn)6000)
得られた分散液をプロペラ撹拌羽根を備えた反応器に移し、回転数300rpmで撹拌しながら60℃に加熱後、エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度70℃、数平均分子量(Mn)704)12.0部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.0部を加え、溶解し、重合性単量体組成物とした。
[分散安定剤調製工程]
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)を取り付けた2l用四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/L−リン酸ナトリウム水溶液450部を添加し、回転数12000rpmで撹拌しながら、60℃に加熱した。ここに1.0mol/L−塩化カルシウム水溶液68.0部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤としてリン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
[造粒・重合工程]
上記水系分散媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌機からプロペラ撹拌羽根に撹拌機を交換し、内温を60℃で重合を5時間継続させた後、内温を80℃に昇温し、さらに3時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
[洗浄工程]
上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5に調整した。分散液を2時間撹拌後、ろ過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これをイオン交換水1200部中に投入して撹拌し、再び分散液とした後、ろ過器で固液分離した。この操作を3回行い、コア粒子として樹脂微粒子C1を得た。
(2)環状構造を有するオレフィン系重合体と密度0.930g/cm3未満で平均分子量1万〜500万であるポリエチレンとを含有する樹脂微粒子の水分散液を作製する工程
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 75質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX351:密度0.898g/cm3、重量平均分子量(Mw)80000) 25質量部
・キシレン 300質量部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製ノンサールLN1) 8質量部
・イオン交換水 925質量部
環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂としてのCOC樹脂と、ポリエチレン樹脂とキシレンを80℃の加熱環境にて混合・溶解して油相を作製し、アニオン系界面活性剤とイオン交換水を混合・溶解して水相を作製する。油相と水相を混合し、80℃の加熱環境下でプライミクス社製のロボミクスにて8000〜9000rpm条件で約30分撹拌し、油相サイズが約1μmの水中油滴(O/W型)エマルションを作製した。
更に得られたエマルションを、80℃まで加熱し、スギノマシン社製スターバーストにて3回程度処理し、油相サイズが約100nmの水中油滴(O/W型)エマルションを作製した。
このエマルションを減圧蒸留してキシレンを除去した結果、約80nmのCOC樹脂とポリエチレンとを含有する樹脂微粒子が分散された水系分散液E1(固形分濃度10質量%)を作製した。
(3)前記(1)記載のコア粒子表面に前記(2)記載の樹脂微粒子を付着させる工程
a)コア粒子C1 10質量部
b)アニオン系界面活性剤0.1質量%水溶液(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
48質量部
c)アニオン系界面活性剤0.2質量%水溶液(第一工業製薬社製:ノンサールLN1)
0.5質量部
d)イオン交換水 133質量部
e)樹脂微粒子水系分散液E1 10質量部
f)アニオン系界面活性剤0.1質量%水溶液(第一工業製薬社製:ネオゲンRK)
115.2質量部
前記工程(1)にて作製したコア粒子C1:a)と、アニオン系界面活性剤0.1質量%水溶液:b)と、アニオン系界面活性剤0.2質量%水溶液:c)と、イオン交換水:d)とを混合するにより、コア粒子分散液を調製する。
また、前記工程(2)で作製した樹脂微粒子水系分散液:e)とアニオン系界面活性剤0.1質量%水溶液:f)とを混合し、シェル微粒子分散液を調製する。
調製したコア粒子分散液とシェル微粒子分散液を混合し、混合液を加熱用ウォーターバスで43℃まで撹拌しながら加熱する。液温が43℃に到達したら撹拌を継続したまま、2mol/L塩酸を14mL/minの速度で滴下する。随時、混合液を少量抽出し、2μmのマイクロフィルターに通した濾液が透明になるまで(つまり混合液中に分散状態で存在する樹脂微粒子がほぼなくなり、ほぼ全ての樹脂微粒子がコア粒子に付着するまで)塩酸を投入し、樹脂微粒子が略均一に付着したコア粒子の水分散液T1を作製した。
(4)コア粒子表面に付着した該樹脂微粒子を含むトナーの表面を平滑化する工程
前記(3)で得られた樹脂微粒子が付着した粒子の水分散液を、水洗浄・濾過を繰り返して界面活性剤を洗浄した後に乾燥機で乾燥させることにより、樹脂微粒子が略均一に付着した粒子T2を作製した。
その後、粒子T2を、奈良機械製作所製ハイブリダイザー1型を用い、2500rpmで6分間処理することで、粒子T2表面の樹脂微粒子を固着平滑化し、トナー表面の樹脂として、環状構造を有するオレフィン系共重合体と、低密度ポリエチレンとを含む樹脂を用いたトナーを作製した。
上記の実施例で得られたトナー粒子について、トナー粒子100質量部に、BET法で測定した比表面積が200m2/gである疎水化処理されたシリカ微粉体1.8質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で乾式混合して、外添処理を行った。
<実施例2>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 70質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製スミカセンF−200:密度0.924g/cm3、重量平均分子量(Mw):70000) 30質量部
<実施例3>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 75質量部
・ポリエチレン樹脂1(三井化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 12.5質量部
・ポリエチレン樹脂2(三井化学社製スミカセンF−200:密度0.924g/cm3、重量平均分子量(Mw):70000) 12.5質量部
<実施例4>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂1(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 50質量部
・COC樹脂2(ポリプラスチック社製TOPAS(TB)) 30質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX351:密度0.898g/cm3、重量平均分子量(Mw)80000) 20質量部
<実施例5>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂1(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 50質量部
・COC樹脂2(ポリプラスチック社製TOPAS(TB)) 30質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 15質量部
<実施例6>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂1(三井化学社製アペル(APL8008T)) 30質量部
・COC樹脂2(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 30質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 20質量部
<実施例7>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 75質量部
・ポリエチレン樹脂(住友精化社製フロービーズCL2080:密度0.919g/cm3、重量平均分子量(Mw):75000) 25質量部
<実施例8>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 50質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX351:密度0.898g/cm3、重量平均分子量(Mw)80000) 50質量部
<実施例9>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 25質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX351:密度0.898g/cm3、重量平均分子量(Mw)80000) 75質量部
<実施例10>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 40質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 60質量部
<実施例11>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(三井化学社製アペル(APL8008T)) 50質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 50質量部
<実施例12>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 75質量部
・ポリエチレン樹脂1(三井化学社製エクセレンFX452:密度0.880g/cm3、重量平均分子量(Mw):80000) 12.5質量部
・ポリエチレン樹脂2(三井化学社製スミカセンF−200:密度0.924g/cm3、重量平均分子量(Mw):70000) 12.5質量部
また、実施例1の工程(3)において、樹脂微粒子水系分散液の投入部数を10質量部から20質量部に変更した。
<実施例13>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂および低密度ポリエチレンを含有する樹脂をそれぞれ以下の種類および比率に変更した。
・COC樹脂1(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 50質量部
・COC樹脂2(ポリプラスチック社製TOPAS(TB)) 30質量部
・ポリエチレン樹脂(住友化学社製エクセレンFX351:密度0.898g/cm3、重量平均分子量(Mw)80000) 20質量部
また、実施例1の工程(3)において、樹脂微粒子水系分散液の投入部数を10質量部から20質量部に変更した。
<実施例14>
本実施例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(3)において、樹脂微粒子水系分散液の投入部数を10質量部から2質量部に変更した。
<比較例1>
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、低密度ポリエチレンを含有する樹脂は混合せず、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂を以下の比率で使用することに変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 100質量部
<比較例2>
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、低密度ポリエチレンを含有する樹脂は混合せず、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂を以下の比率で使用することに変更した。
・COC樹脂1(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 70質量部
・COC樹脂2(ポリプラスチック社製TOPAS(TB)) 30質量部
上記の実施例及び比較例で得られた各トナー粒子について、下記に記載の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
<比較例3>
本比較例は、基本的には実施例1に準ずるが、以下の点が異なる。
実施例1の工程(2)において、低密度ポリエチレンを含有する樹脂のかわりに、より分子量の低い低密度ポリエチレンワックスを使用し、環状構造を有するオレフィン系重合体を含有する樹脂と該ワックスとを以下の比率で使用することに変更した。
・COC樹脂(ポリプラスチック社製TOPAS(TM)) 70質量部
・低密度ポリエチレンワックス(三井化学社製ハイワックスNL500:密度0.920g/cm3、重量平均分子量(Mw):4200) 30質量部
<評価項目>
(転写効率評価)
転写効率とは、感光ドラム上に現像されたトナーが何%中間転写ベルト上に転写されたかを示す転写性の指標である。転写効率の評価は、フルカラー電子写真装置(キヤノン社製:LBP−5050)のドラムカートリッジに本発明のトナーを充填し、シアンのベタ画像を連続して記録媒体上に形成して行った。上記画像を3000枚形成した後、中間転写ベルト上に転写されたトナーの濃度と、転写後も感光ドラム上に残留したトナーの濃度との和を100%としたときの中間転写ベルト上のトナー濃度の割合を転写効率とした。この割合が高いほど耐久後の転写効率に優れる。本発明では転写効率の評価は下記のような基準で判断した。
A:非常に良好(転写効率が98%以上)
B:良好(転写効率が95%以上98%未満)
C:実用可(転写効率が90%以上95%未満)
D:劣る(転写効率が90%未満)
転写効率が95%以上であれば、転写効率が良好であると判断した。
(最低定着温度評価)
ベタ画像印字時の定着前における記録紙上のトナー量が、0.6mg/cm2になるようにあらかじめ画像形成装置を調整する。調整後、定着器の定着温度を100℃から200℃まで5℃おきの21点の条件にて、ベタ画像を印字し、得られた画像に対してオフセット画像試験と定着性試験をした。
定着温度を決めるに当たり、高温側はホットオフセット限界温度があり、この温度を超えるとホットオフセット現象が発生する。反対に、低温側は定着性限界温度があり、この温度を下回ると定着不良が発生する。
この定着性限界温度を最低定着温度とし、低温定着性指標として、以下のようにランク付けを行った。
A:最低定着温度が130℃以下
B:最低定着温度が130℃を超え、140℃以下
C:最低定着温度が140℃を超え、150℃以下
D:最低定着温度が150℃を超え、160℃以下
E:最低定着温度が160℃を超える
最低定着温度が150℃以下であれば、低温定着性が良好であると判断した。
<評価結果について>
実施例1〜7では、本発明の構成における効果をよく表した例を示している。
すなわち、実施例1〜7では、上述したように、各トナー粒子の表面の樹脂が、環状構造を有するオレフィン系共重合体と、ポリエチレンとを含み、該ポリエチレンの密度は0.930g/cm3未満で、該ポリエチレンの分子量が1万〜数100万の範囲にある樹脂であるようにトナーを製造した。
これによって、トナーの表面の外添剤の埋没性能を抑制することが可能となる。また、トナー表面を形成する樹脂に環状構造を有するオレフィン系共重合体と、ポリエチレンを含有している構成であることで、トナー表面を低吸湿化でき、環境によらず帯電安定性を有した、耐久を通じ転写残の少ないトナーとなっている。
一方、比較例1および2においては、トナー表面の樹脂に、環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む樹脂であるようにトナーを製造しており、ポリエチレンが含まれていない構成であるために、低密度ポリエチレンの持つ高弾性変形性能をトナー表面に機能付与することができず、トナー表面の塑性変形耐性を得ることができず、耐久により外添剤が埋没した結果、転写残が悪化してしまっていると考えられる。
さらに、比較例3では、低密度ポリエチレンの分子量が1万を下回る、ポリエチレンワックスを使用した例を示しているが、トナー表面の樹脂の分子量に対し、ポリエチレンの分子量が小さすぎると、低密度ポリエチレンのもつ鎖の柔軟性を得られない、すなわちトナー表面の樹脂としての高弾性変形性能を得ることができず、外添剤が埋没した結果、転写残が悪化してしまっていると考えられる。
また、実施例8〜11においては、上述したように、トナー表面の樹脂の含有比率において、環状構造を有するオレフィン系共重合体の方がポリエチレンよりも少なくなるように、トナーを製造した例を示しており、実施例1〜7のトナーよりも、最低定着温度が高くなる傾向がある。これは、環状構造を有するオレフィン系共重合体のほうが低密度ポリエチレンよりも少なくなっているため、トナー表面の樹脂の溶融特性をより高粘度化している影響であると考えられる。
なお、本発明においては、トナー表面の樹脂に含有されるポリエチレンの比率について規定しているが、トナー全体としてのポリエチレン含有量としては、トナー全体に対し3%未満であることが、トナーの低温定着性の観点から、より好ましい。
実施例12および13で示すように、トナー表面の樹脂の含有比率は環状構造を有するオレフィン系共重合体の方がポリエチレンよりも多くなっているが、トナー全体としてのポリエチレン比率は3%を超えており、転写性能は良いものの、やや最低定着温度が上昇した結果となっている。
また、トナー表面の樹脂として、環状構造を有するオレフィン系共重合体と低密度ポリエチレンとを含む樹脂の総量が極端に少なくなってくると、本発明の効果が薄れてくるため、トナー全体に対し0.5%以上含有することが好ましく、3%以上含有することがより好ましい。
実施例14は、トナー表面の樹脂として、環状構造を有するオレフィン系共重合体と低密度ポリエチレンとを含む樹脂の総量は略0.5%であり、その結果、トナー表面の低吸湿化や外添剤埋没耐性の効果が実施例1〜13に比べ少なく、かぶりや転写残が他の実施例のトナーよりもやや低い評価結果となっている。