本発明に係る自動分析装置の一実施の形態について、検体の複数の依頼項目の分析を測光方式によって分析する多項目化学分析装置を例に、図面に基づいて説明する。なお、本発明に係る自動分析装置は、多項目化学分析装置に限られるものではなく、試薬交換が必要な種々の自動分析装置に適用可能である。
図1は、本発明の一実施例としての多項目化学分析装置の概略全体構成図である。
本実施例の多項目化学分析装置1は、検体が納められた検体容器10が周方向に沿って複数搭載された検体ディスク11と、装置内の試薬保管庫として、試薬が収容された試薬容器20が周方向に沿って複数搭載された試薬ディスク21と、反応容器30が周方向に沿って複数装着された反応ディスク31とを備えている。各検体容器10、各試薬容器20は、検体ディスク11、試薬ディスク21に着脱可能に搭載されている。そして、検体ディスク11と反応ディスク31との間、及び試薬ディスク21と反応ディスク31との間には、検体分注器12、試薬分注器22が設置されている。検体分注器12、試薬分注器22は、可動アームと、これに取り付けられたピペットノズルからなる分注ノズルとを備えている。
検体ディスク11、試薬ディスク21は、それぞれ回動可能に設けられ、その回動変位によって、搭載された複数の検体容器10、試薬容器20の中の一の検体容器10、試薬容器20を、例えば、検体分注器12による検体吸入位置、試薬分注器22による試薬吸入位置といった、ディスクの周方向に沿った所定位置に配置できる。
また、検体ディスク11、試薬ディスク21の周方向に沿った別の所定位置には、検体ID読取器13、試薬ID読取器23が配設されている。検体ID読取器13、試薬ID読取器23は、対向する読取位置に配置された検体容器10、試薬容器20に付された検体ID(identification data)、試薬IDを読み取る。検体ID読取器13、試薬ID読取器23は、検体ディスク11、試薬ディスク21の回動に応じて読取位置に位置する検体容器10、試薬容器20の検体ID、試薬IDを読み取り、検体ディスク11、試薬ディスク21上における検体、試薬それぞれの搭載状況を検出する。
検体分注器12は、その分注ノズルを検体ディスク11上の検体吸入位置に移動させ、検体吸入位置に配置された検体容器10からノズル内に所定量の検体を吸入して収容する。その後、分注ノズルを反応ディスク31上の検体吐出位置に移動させて、検体吐出位置に配置された反応容器30内に、ノズル内に収容されている検体を吐出して、検体の分注を行う。
試薬分注器22は、その分注ノズルを試薬ディスク21上の試薬吸入位置に移動させ、試薬吸入位置に配置された試薬容器20からノズル内に所定量の試薬を吸入して収容する。その後、分注ノズルを反応ディスク31上の試薬吐出位置に移動させて、試薬吐出位置に配置された反応容器30内に、ノズル内に収容された試薬を吐出して、試薬の分注を行う。それぞれ異なる検体、試薬の反応容器30への分注に備えて、検体分注器12及び試薬分注器22それぞれの分注ノズルの移動経路には、洗浄槽14、24が設けられ、分注を終えた分注ノズルの洗浄が行われ、検体、試薬の分注の際に検体同士、試薬同士のコンタミを起こさないようになっている。
同様に、反応ディスク31も回動可能になっており、反応ディスク31は、その間歇回動によって、反応ディスク31に周方向に沿って装着された反応容器30それぞれを、検体分注器12による検体吐出位置、試薬分注器22による試薬吐出位置、撹拌機構36による撹拌位置、測光系37による測光位置、洗浄機構38による洗浄位置に、順次配置できるようになっている。各反応容器30は、測光系37による測定のために透光性材料により構成されている。
加えて、反応ディスク31には、恒温槽(図示省略)が備えられており、その槽内には恒温維持装置(図示省略)により温度調整管理された流体が貯留されている。反応ディスク31に装着された各反応容器30は、この槽内の流体に浸漬されて保持され、反応ディスク31の回動によりこの槽内を移動しながら、所定温度(例えば37℃)に維持されて、検体吐出位置、試薬吐出位置等の各作業位置に移動位置させられる。
撹拌機構36、測光系37、洗浄機構38は、検体分注器12、試薬分注器22とともに、それぞれの作業位置を反応ディスク31のディスク周りに互いにずらして配置されている。撹拌機構36は、検体分注器12、試薬分注器22それぞれにより反応容器30内に分注された検体、試薬の混合液(反応液)の攪拌を行う。これにより、反応容器30内に分注された検体、試薬の混合液は、均一に攪拌されてその反応が促進される。
測光系37は、反応ディスク31の回動に連動して反応容器30が通過する測光位置を挟んで、光源(図示省略)と散乱光度計(図示省略)とが相対向して配置されて構成されている。散乱光度計は、混合液の濃度演算を行えるように、同軸光軸上、又は別ポジションに多波長吸光光度計を備えていてもよい。測光系37は、光源と散乱光度計との間の測光位置に位置する反応容器30内の混合液に、光源から測定光を照射し、その散乱光を散乱光度計により測光する。これにより、各反応容器30内の検体、試薬の混合液は、反応ディスク31の間歇回転による回動変位によって、各反応容器30が測光系37の測光位置に位置される毎に、その貯留液の散乱光が測定される。
洗浄機構38は、反応ディスク31に装着された反応容器30について、依頼項目の分析が終わった反応容器30内の混合液を廃棄し、新たな依頼項目の分析での使用に備えて容器内の洗浄を行う。洗浄機構38は、反応ディスク31の装着された複数の反応容器30それぞれについて、分析での繰り返し使用を可能にする。
次に、この多項目化学分析装置1における制御系及び信号処理系について説明する。
多項目化学分析装置1の制御系及び信号処理系は、マイクロコンピュータ(コンピュータ)40を有して構成されている。マイクロコンピュータ40には、インターフェース41を介して、ハードディスクメモリや外部記憶メディアといった記憶装置42、図示せぬ管理装置(上位コンピュータ)との間で、検体情報、分析依頼項目、測定・分析結果等の情報伝送を行う外部機器インターフェース43、各種の指示、設定操作を装置に対して行うマウス、キーボード等の入力装置44、各種の指示、設定等で使用されるGUI(Graphical User Interface)や測定・分析結果を表示する表示装置45、測定・分析結果等を印字出力するプリンタ46が、それぞれ接続されている。その中、入力装置44及び表示装置45は、多項目化学分析装置1のユーザーインターフェースを構成する。
さらに、マイクロコンピュータ40には、インターフェース41を介して、検体ディスク11、試薬ディスク21、反応ディスク31、検体ID読取器13、試薬ID読取器23、検体分注制御部15、試薬分注制御部25、A/D変換器39といった、装置各部が接続されている。検体分注制御部15、試薬分注制御部25は、マイクロコンピュータ40からの指令を基に、検体分注器12、試薬分注器22の作動制御を行い、検体、試薬それぞれの分注動作を制御する。A/D変換器39は、測光系37の散乱光度計のアナログ検出信号をデジタル信号に変換して、マイクロコンピュータ40に供給する。
その上で、多項目化学分析装置1による検体の分析は、上述した制御系及び信号処理系によって、次のように装置各部を作動制御して行われる。
記憶装置42には、予め設定された、各オペレータのパスワード、キャリブレーション結果、分析可能な分析依頼項目それぞれの分析パラメータ、各画面の表示レベル等が記憶されている。また、記憶装置42には、検体の分析動作(オペレーション)の開始に先立って、これから分析を行う検体それぞれの検体情報及び分析依頼項目が、例えば外部機器インターフェース43を介して管理装置から伝送され、或いはユーザーインターフェースからオペレータ入力されて登録される。また、オペレーション中であっても、検体を追加したり、一度分析した検体を再度分析する必要が生じた場合は、ユーザーインターフェースからの検体の追加依頼又は再分析依頼のオペレータ入力により、追加依頼若しくは再分析依頼された検体情報及び依頼項目情報が記憶装置42に追加若しくは再登録される。
マイクロコンピュータ40は、検体の分析動作が行われていない待機状態(スタンバイ状態)で、ユーザーインターフェースからオペレーション開始指示のオペレータ入力を受けると、検体ディスク11、試薬ディスク21、反応ディスク31、検体分注器12、試薬分注器22等の装置各部を作動制御して、記憶装置42に登録されている検体情報及び依頼項目情報について、分析作業を実行開始する。
分析作業が実行開始されると、検体ディスク11、試薬ディスク21の回動に応じた検体ID読取器13、試薬ID読取器23それぞれの読み取り出力に基づいて、検体ディスク11、試薬ディスク21上における検体、試薬の搭載状況が、マイクロコンピュータ40によって取得され、記憶装置42に記憶される。
具体的には、検体ディスク11のオペレーション開始時の回動に伴って、検体ID読取器13により順次読み取られる検体容器10それぞれのIDに基づいて、検体ディスク11の周方向に沿って複数搭載された検体容器10それぞれの検体ディスク11上における搭載ポジション等が規定され、検体ディスク11上における各検体、すなわち各検体容器10の搭載状況が記憶装置42に記憶される。
同様に、試薬ディスク21のオペレーション開始時の回動に伴って、試薬ID読取器23により順次読み取られる試薬容器20それぞれのIDに基づいて、試薬ディスク21の周方向に沿って複数搭載された試薬容器20それぞれの試薬ディスク21上における搭載ポジション等が規定され、試薬ディスク21上における各試薬、すなわち各試薬容器20の搭載状況が記憶装置42に記憶される。
これにより、マイクロコンピュータ40は、検体ID読取器13、試薬ID読取器23それぞれの読み取り出力に基づき検体ディスク11、試薬ディスク21の回動変位を制御して、所望の検体及び検体容器10、所望の試薬及び試薬容器20を、検体分注器12による検体吸入位置、試薬分注器22による試薬吸入位置に配置できる。
このようにして、検体ディスク11、試薬ディスク21上における各検体容器10、各試薬容器20の搭載状況を取得した後、マイクロコンピュータ40は、検体ディスク11の回動により、記憶装置42に登録された依頼項目の分析の中、分析が済んでいない検体を収容した検体容器10が検体分注器12の検体吸入位置に配置されると、検体分注器12に、依頼項目の分析パラメータにしたがって所定量の検体を吸入させ、ノズル内に収容する。そして、この検体容器10内の検体液量を、この吸入された所定量分だけ減算し、検体容器10内に収容されている検体液量の更新を行う。
それから、マイクロコンピュータ40は、反応ディスク31の間歇回動により、検体分注器12の検体吐出位置に洗浄済の反応容器30が配置されると、検体分注器12に、ノズル内に収容した所定量の検体をこの反応容器30内に吐出させて検体の分注を行う。そして、この反応容器30とこの検体の依頼項目の分析とを対応づける。例えば、マイクロコンピュータ40は、記憶装置42に登録されているこの検体の依頼項目の分析に対応させて、この反応容器30若しくは反応ディスク31上の装着ポジションを記憶するともに、検体が分注済であることとして検体の分注完了時刻を記憶する。
その一方で、マイクロコンピュータ40は、反応ディスク31の間歇回動により、試薬分注タイミングになった依頼項目の分析に対応する反応容器30が試薬分注器22の試薬吐出位置に配置されるのにタイミングに合わせて、試薬ディスク11を回動変位させてその分注する試薬の試薬容器20を試薬分注器22の試薬吸入位置に配置し、試薬分注器22に、この試薬容器20から依頼項目の分析パラメータにしたがって所定量の試薬を吸入させ、ノズル内に収容する。そして、この試薬容器20内の試薬液量を、この吸入された所定量分だけ減算し、試薬容器20に収容されている試薬液量の更新を行うとともに、試薬ディスク11の試薬種類毎の試薬液量の中、試薬種類が同じ試薬液量についてこの吸入された所定量分だけ減算し、試薬ディスク11の試薬種類毎の試薬液量(試薬残量)の更新を行う。なお、試薬ディスク21上における試薬容器20それぞれの試薬液量は、試薬ディスク21の周方向に沿った所定位置に液量測定機構を設け、直接測定することも可能である。
それから、マイクロコンピュータ40は、反応ディスク31の間歇回動により、この試薬分注タイミングになった検体の依頼項目の分析に対応する反応容器30が試薬分注器22の試薬吐出位置に配置されると、試薬分注器22に、ノズル内に収容してある所定量の試薬を反応容器30内に吐出させて、試薬の分注を行う。そして、記憶装置42に登録されているこの検体の依頼項目の分析に対応させて、試薬が分注済であることとして試薬の分注完了時刻を記憶する。
さらに一方で、マイクロコンピュータ40は、反応ディスク31の間歇回動により、検体、試薬が分注されて分析依頼項目が特定された反応容器30が測光系37の測光位置に配置されると、A/D変換器39を介して、その散乱光度計のデジタル検出出力を取り込み、検体の分析依頼項目の測定・分析結果を演算する。そして、記憶装置42に登録されているこの検体の分析依頼項目に対応させて、その測定・分析結果を記憶する。
このようにして、多項目化学分析装置1では、オペレーション開始指示のオペレータ入力によりオペレーションが開始され、検体それぞれの依頼項目の分析が開始されると、記憶装置42に登録されている検体それぞれの依頼項目の分析毎に、その検体の分注が済んだか否かを示す検体分注完了時刻情報や、試薬それぞれについての分注が済んだか否か示す試薬分注完了時刻情報や、測定・分析結果等が、オペレーションの進捗に伴って、逐次、追加記憶されて蓄積されていくことになる。
また、試薬容器20内に収容されて試薬ディスク21に搭載されて保管されている試薬に関しても、試薬容器20それぞれの試薬液量(試薬残量)や、試薬種類毎の試薬液量(試薬残量)が、オペレーションの進捗に伴って、逐次、更新記憶されていくことになる。
多項目化学分析装置1では、このようにオペレーションが開始され、検体それぞれの依頼項目の分析が進められると、試薬ディスク21に搭載された各試薬容器内の試薬の量は各分析で使用される都度、消耗する。そのため、試薬ディスク21上の試薬が無くなったり、僅かになったりした試薬切れの場合は、装置の全ての機構を待機状態(スタンバイ状態)にして、オペレータによる試薬切れになった試薬容器20の交換作業が必要となる。
そこで、本実施例の多項目化学分析装置1の制御系及び信号処理系は、オペレータが事前に設定した試薬交換指定時刻に、装置が自動で試薬登録可能状態(試薬登録の妨げとならないよう、測定中の検体に対し試薬分注が全て完了した状態)になっており、オペレータによる試薬交換作業を直ちに開始できるようにする試薬交換時刻指定機能を有している。図1に示した多項目化学分析装置1の制御系及び信号処理系は、この試薬交換時刻指定機能のため、さらに、次に述べるような処理を実行する。
図2は、試薬交換指定時刻を設定するための試薬交換時刻指定画面の一実施例の構成図である。
試薬交換時刻指定画面50は、ユーザーインターフェースにより試薬交換時刻指定の指示が入力されると、マイクロコンピュータ40によって表示装置45にGUI画面表示される。試薬交換時刻指定画面50は、入力装置44及び表示装置45を指定時刻入力部として機能させる。
試薬交換時刻指定画面50は、指定選択ラジオボタン51と、交換推奨情報欄52と、交換時刻指定欄53と、確定ボタン54と、キャンセルボタン55とを有する構成になっている。
指定選択ラジオボタン51は、試薬交換時刻の指定の有無を選択する。その‘指定有り’ボタン51aの操作により、装置を試薬交換指定時刻に試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が設定され、その‘指定無し’ボタン51bの操作により、この状態遷移の実行が解除される。
交換推奨情報欄52は、試薬交換が必要な試薬切れ状態をオペレータが規定するとともに、その試薬切れ状態になる予測時刻を基にして算出された試薬交換が行える交換推奨時刻をオペレータに案内する。
本実施例の多項目化学分析装置1では、試薬交換は試薬容器20ごと交換することによって行われるので、図示の例では、交換推奨情報欄52には、試薬切れ状態を規定する設定部として、使用可能試薬個数割合設定部52aが設けられている。
使用可能試薬個数割合設定部52aは、試薬種類毎で試薬容器20を別々にして試薬ディスク21に搭載されている各試薬の試薬切れ状態を、試薬ディスク21上における同じ試薬種類の試薬容器20の全数に占める試薬分注に使用可能な試薬容器20の個数割合(%)で、試薬種類の違いによらず共通に設定する構成になっている。なお、試薬切れ状態の設定部は、試薬分注に使用可能な試薬容器20の個数割合(%)で規定する使用可能試薬個数割合設定部52aに限られるものではなく、例えば、試薬分注に使用可能な試薬残量、試薬容器20の残り個数で規定するものであってもよいし、さらには、試薬種類毎に分けて別々に試薬切れ状態を設定するものであってもよい。
また、交換推奨情報欄52には、試薬交換を行う推奨時刻をオペレータに案内する交換推奨時刻表示部52bが設けられている。交換推奨時刻表示部52bには、使用可能試薬個数割合設定部52aで設定された試薬切れ状態(図示の例では、試薬種類いずれかの試薬で使用可能な試薬容器20の個数割合が40%未満となる状態)になる予測時刻(例えば、16時00分)を基に算出された、試薬交換を行う交換推奨時刻(例えば、16時05分)が表示される。この交換推奨時刻(16時05分)は、装置が分析動作(オペレーション)状態から試薬登録可能状態になるまでに掛かる状態遷移時間(例えば、5分)を、試薬切れ状態になる予測時刻(16時00分)に加えて、マイクロコンピュータ40によって演算される。
この場合、予測時刻は、試薬交換完了直後に試薬ディスク21に搭載されている試薬種類毎の試薬分注に使用可能な試薬容器20の個数(試薬残量)、依頼項目の分析に対する装置自体の処理能力(例えば、依頼項目の分析の処理速度[検体数/時間])、記憶装置42に登録されている検体それぞれの依頼項目の分析、依頼傾向を基に算出した依頼項目の分析の依頼予測、等に基づいて、マイクロコンピュータ40によって算出される。図示の例では、予測時刻は、例えば、使用可能な試薬容器20の個数割合が40%未満になった試薬を使用した検体の依頼項目の分析での、最終試薬の分注完了予測時刻であってもよいし、使用可能な試薬容器20の個数割合が40%未満になる直近の試薬を使用した検体の依頼項目の分析での、最終試薬の分注完了予測時刻であってもよい。そして、試薬種類が複数である場合は、この試薬切れ状態になった試薬の試薬種類と、その検体の依頼項目の分析での最終試薬の試薬種類とは、同じであるとは限らない。また、分析動作(オペレーション)状態から試薬登録可能状態になるまでに掛かる状態遷移時間(この場合では、5分)は、装置の各機構の性能を基に、予め記憶装置42に登録されている。なお、この状態遷移時間については、実際の状態遷移時間を測定してその測定結果を基に自動設定することも可能である。
交換時刻指定欄53は、試薬交換指定時刻として、試薬交換作業を行うのにオペレータが都合がよい希望時刻(例えば、15時10分)を入力するためのものである。確定ボタン54は、指定選択ラジオボタン51の操作で選択した試薬交換時刻の指定の有無、及び交換時刻指定欄53で設定した試薬交換指定時刻の設定内容を、その操作により確定するためものである。一方、キャンセルボタン55は、指定選択ラジオボタン51の操作で選択した試薬交換時刻の指定の有無、及び交換時刻指定欄53で設定した試薬交換指定時刻の設定内容をクリアして無効にするためものである。
指定選択ラジオボタン51の操作で試薬交換時刻の指定が有ることが設定され、交換時刻指定欄53で試薬交換指定時刻が設定された場合は、この確定ボタン54の操作によって、設定された試薬交換指定時刻の妥当性が判定され、その妥当性に支障がなければ、この試薬交換指定時刻に装置を試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が、マイクロコンピュータ40によって記憶装置42に登録されて確定する。これに対し、指定有無ラジオボタン51の操作で試薬交換時刻の指定が無いことが設定された場合は、この確定ボタン54の操作によって、記憶装置42の従前の登録が消去され、試薬交換指定時刻に装置を試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が解除される。この解除状態で、本実施例の多項目化学分析装置1では、試薬ディスク21に搭載されている試薬が使用可能試薬個数割合設定部52aで設定された試薬切れ状態になったことが検出されると、その時点で実施されている検体の項目の分析について試薬交換の妨げとなるオペレーションが完了するのを確認した後、装置を試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行がマイクロコンピュータ40によって行われることになる。
交換時刻指定欄53で設定された試薬交換指定時刻の妥当性は、現在時刻や、試薬交換推奨情報設定欄52の推奨時刻表示部52bに表示するために算出された交換推奨時刻を基に、マイクロコンピュータ40によって判定される。例えば、設定された試薬交換指定時刻が現在時刻よりも前であったり、或いは現在時刻と近い差し迫った時刻である場合は、試薬交換指定時刻に装置を試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が間に合わない等の危惧があるとして、試薬交換指定時刻の設定が妥当でないと判定され、マイクロコンピュータ40は、図3に示すような注意画面57のダイアログボックスを、図2で示した試薬交換時刻指定画面50中にポップアップ表示する。
図3は、試薬交換指定時刻の設定が妥当でない場合の注意画面の一実施例である。
注意画面57は、設定された試薬交換指定時刻が翌日の時刻であるか、或いは誤設定であるかの確認をオペレータに促し、設定された試薬交換指定時刻では、翌日の同じ時刻に装置を試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が実施される旨の警告を行う。注意画面57には、確定ボタン57aと、キャンセルボタン57bとが備えられている。そして、オペレータにより確定ボタン57aが操作された場合は、設定された試薬交換指定時刻が翌日の同じ時刻であるものとして、装置を翌日の同じ時刻に試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が、マイクロコンピュータ40によって記憶装置42に登録されて確定する。これに対し、キャンセルボタン57bが操作された場合は、図2で示した試薬交換時刻指定画面50に戻り、オペレータが交換時刻指定欄53で試薬交換指定時刻を設定し直しできる。
同じく、設定された試薬交換指定時刻の妥当性について、設定された試薬交換指定時刻は現在時刻と近い差し迫った時刻ではないものの、その試薬交換指定時刻が、交換推奨情報欄52の推奨時刻表示部52bに表示されている交換推奨時刻よりも余りに(例えば、数時間以上)前であり、試薬交換指定時刻になっても、その時点で使用可能な試薬容器20の個数割合が、試薬切れ状態として規定された使用可能な試薬容器20の個数割合(40%)よりも遥かに高い状態にあると予測される場合には、マイクロコンピュータ40は、図4に示すような注意画面58のダイアログボックスを、図2で示した試薬交換時刻指定画面50中にポップアップ表示する。
図4は、試薬交換指定時刻の設定が妥当でない場合の注意画面の別の実施例である。
注意画面58は、設定された試薬交換指定時刻に試薬交換を行うか、或いは誤設定であるかの確認をオペレータに促し、試薬交換指定時刻には、分注に使用可能な試薬の試薬残量が未だ充分に残っている旨の警告を行う。
注意画面58にも、確定ボタン58aと、キャンセルボタン58bとが備えられている。そして、オペレータにより確定ボタン58aが操作された場合は、設定された試薬交換指定時刻がオペレータの都合に合わせた正しいものであるとして、装置をこの試薬交換指定時刻に試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行が、マイクロコンピュータ40によって記憶装置42に登録されて確定する。これに対し、キャンセルボタン58bが操作された場合は、図2で示した試薬交換時刻指定画面50に戻り、オペレータが試薬交換時刻指定欄53で試薬交換指定時刻を設定し直しできる。
したがって、本実施例の多項目化学分析装置1では、試薬交換時刻指定画面50を表示することによって、オペレータは、試薬種類がいずれかの試薬で、使用可能な試薬容器20の個数割合が所定値未満となる予測時刻を基にした交換推奨時刻を確認することができ、この交換推奨時刻での試薬交換がオペレータに都合が悪いときには、自身の都合に合わせた試薬交換時刻を指定し、多項目化学分析装置1をこの試薬交換指定時刻に試薬登録可能状態にしておくことができ、試薬交換指定時刻では直ちに試薬交換作業を開始することができる。
そこで、本実施例の多項目化学分析装置1では、ユーザーインターフェースからのオペレーション開始指示のオペレータ入力により、記憶装置42に登録されている検体それぞれの項目の分析が開始されて分析動作(オペレーション)状態になると、検体それぞれの項目の分析とともに、図5に示すような状態遷移制御処理が行われる。
図5は、オペレータにより試薬交換指定時刻が指定されている場合の状態遷移制御処理の一実施例のフローチャートである。
多項目化学分析装置1では、分析処理が開始され、検体ディスク11に搭載されている検体容器10の検体IDが検体ID読取器13で読み取られて認識されると、マイクロコンピュータ40は、認識した検体IDの検体に関する分析の依頼項目情報を、記憶装置42に登録されている検体それぞれの分析の依頼項目情報の中から取得する(S10)。
マイクロコンピュータ40は、認識した検体IDの検体に関する分析の依頼項目情報の中、未だ済んでいない依頼項目の分析が有るか否かをチェックし(S20)、未だ済んでいない依頼項目の分析が無く、検体の依頼項目の分析が完了している場合は(S20、N)、現在時刻、及び予め記憶装置42に登録されている、装置を分析動作(オペレーション)状態から試薬登録可能状態にするまでに掛かる状態遷移時間から、現時点で分析動作状態から試薬登録可能状態にしようとした場合、試薬交換が実際に可能になる状態遷移完了時刻を算出する(S60)。
これに対し、未だ済んでいない依頼項目の分析が有る場合は(S20、Y)、その依頼項目の分析で使用する試薬が、試薬ディスク21に搭載されている試薬容器20の中に分注に使用可能な試薬容器20としてあるか否かをチェックする(S30)。そして、依頼項目の分析に使用する試薬について、試薬ディスク21上に分注に使用可能な試薬容器20としてない場合は(S30、N)、記憶装置42に登録されているこの検体情報、依頼項目情報に対応させて、キャンセル回数等を登録する(S40)。このような状況にあっては、現在の試薬ディスク21上における試薬容器20の搭載情況では依頼項目の分析を行うことができないので、検体の依頼項目の分析が完了している場合と同様に、現在時刻、及び予め記憶装置42に登録されている状態遷移時間から、現時点で分析動作状態から試薬登録可能状態にしようとした場合の、試薬交換が実際に可能になる状態遷移完了時刻を算出する(S60)。
一方、未だ済んでいない依頼項目の分析で使用する試薬について、試薬ディスク21上に分注に使用可能な試薬容器20及び試薬液量がある場合は(S30、Y)、その検体の依頼項目の分析をスケジューリングし、そのスケジューリングされた依頼項目の分析における最終試薬の分注完了時刻に、予め記憶装置42に登録されている状態遷移時間を加えることにより、この依頼項目の分析を実行して分析動作状態から試薬登録可能状態にしようとした場合の、試薬交換が実際に可能になる状態遷移完了時刻を算出する(S50)。
これにより、多項目化学分析装置1では、検体ディスク11に搭載されている検体容器10の検体IDが検体ID読取器13で読み取られて認識される毎に、既に済んでいる項目の分析、及び使用できる試薬が無く実行できない項目の分析については、状態遷移完了時刻として、現在時刻に状態遷移時間を加えた時刻が算出されるのに対し(S60)、使用できる試薬がある実行可能な未だ済んでいない依頼項目の分析については、状態遷移完了時刻として、そのスケジューリングされた依頼項目の分析における最終試薬の分注完了時刻に状態遷移時間を足した時刻が算出される(S50)。
そして、多項目化学分析装置1では、認識した検体IDの検体に関する依頼項目の分析について、その処理状態(処理完了、処理不可、処理可で未着)に応じてステップS50,S60で算出した状態遷移完了時刻を、図2で示した試薬交換時刻指定画面50で交換時刻指定欄53を用いてオペレータにより予め設定された試薬交換指定時刻、又はその設定の際に交換推奨情報欄52に表示される交換推奨時刻と比較し、算出した状態遷移完了時刻が、この指定時刻及び交換推奨時刻に対して前になるか後になるかを判定する(S70)。
ステップS50,S60で算出された状態遷移完了時刻が、試薬交換指定時刻よりも前であり、交換推奨時刻よりも前である場合は、多項目化学分析装置1は、分析動作(オペレーション)状態のままで、分析を継続する(S80)。この分析の継続は、試薬交換指定時刻、及び交換推奨時刻に達する前であれば、次の未着手の検体の依頼項目の分析を続けて行い得ること指し、さらに、検体を追加したり、一度分析した検体を再度分析する必要が生じた場合でも、その分析を行い得ることを指す。
一方、ステップS50,S60で算出された状態遷移完了時刻が、試薬交換指定時刻又は交換推奨時刻よりも後で、試薬交換指定時刻又は交換推奨時刻を過ぎる場合は、まだ記憶装置42に分析が済んでいない検体の依頼項目が残っている場合でも、この状態遷移完了時刻が試薬交換指定時刻又は交換推奨時刻よりも後になった検体の依頼項目の分析も含めて、それ以降の検体の依頼項目の分析を実行せず、それよりも前のスケジューリング済みの検体の依頼項目の分析までで分析処理を一時中断する(S90)。その上で、この分析中断までに実行される検体の依頼項目の分析で使用する試薬の最終分注完了後、多項目化学分析装置1では、装置を試薬交換指定時刻に試薬登録可能状態にしておくための状態遷移の実行がマイクロコンピュータ40によって行われ、試薬登録可能状態への状態遷移が開始される(S100)。これにより、オペレータが自身の都合に合わせて予め試薬交換指定時刻を設定してある場合は、その試薬交換指定時刻までに試薬交換可能な試薬登録可能状態へ遷移完了させることができる。
そして、試薬交換指定時刻に合わせて試薬交換可能な試薬登録可能状態になると、試薬交換指定時刻で試薬交換可能が直ちに行える旨をオペレータに報知し、表示装置45には、試薬交換画面60がGUI画面表示される(S110)。
図6は、試薬交換の際に表示される試薬交換画面の一実施例の構成図である。
試薬交換画面60は、試薬補充リスト61と、キャンセル項目リスト62と、試薬交換実行ボタン63と、試薬交換時刻指定ボタン64と、分析再開ボタン65とを有する構成になっている。
試薬補充リスト61は、試薬の消費傾向及び依頼項目数の傾向等から 今後の試薬種類毎の試薬消費量を予測して、試薬ディスク21に搭載する試薬種類毎に必要な試薬容器20の個数を表示し、オペレータがどの試薬種類の試薬容器20を幾つ試薬ディスク21に補充すればよいかを把握し易い構成になっている。図示の例では、試薬名と補充目安の試薬容器20の個数を表示しているがこれに限られるものではなく、その予測方法及び表現方法については、オペレータが効率よく試薬補充を行い、より早く分析を再開させる目的に合わせて、種々の方法が適用可能である。例えば、試薬種類毎に必要な試薬容器20の個数をさらに依頼項目毎に細分化表示したり、併せて試薬ディスク21上で試薬切れ状態になっている試薬容器20の交換搭載ポジションを表示するようにしてもよい。
キャンセル項目リスト62は、図5のステップS40で登録された、試薬ディスク21上に搭載されている試薬容器20の試薬液量が足りず、又は試薬ディスク21上に搭載されておらず、試薬ディスク21上に分注に使用可能な試薬容器20が存在しないため未だ分析が済んでいない検体の依頼項目と、そのキャンセル回数と表示したものである。このキャンセル項目リスト62によれば、オペレータは、例えば、試薬ディスク21上における試薬種類毎の試薬容器20の搭載数のバランス等の不具合、キャンセルされた検体の依頼項目の分析についての集中的な処理の必要性、等を判断することができる。その表現方法についても、例えば、試薬の分注ができなかった試薬名を併せて表示する等、オペレータが効率よく試薬補充を行い、より早く分析を再開させるために種々の方法が適用可能である。
また、試薬交換実行ボタン63は、試薬登録可能状態になっている多項目化学分析装置1において、試薬交換を行うための操作ボタンである。試薬交換時刻指定ボタン64は、分析再開に当たって、試薬交換時刻の指定の有無、試薬切れ状態、試薬交換時刻を変更するために試薬交換時刻指定画面50を開くための操作ボタンである。分析再開ボタン65は、多項目化学分析装置1を分析動作(オペレーション)状態にして、検体の依頼項目の分析を再開させるための操作ボタンである。
そこで、オペレータは、試薬交換画面60を参照にして新たに搭載する試薬容器20を用意し、試薬交換実行ボタン63を操作して、例えば試薬ディスク21上に搭載された試薬容器20を取り出し、搭載できるようにし、試薬ディスク21の試薬交換作業を行う(S120)。また、必要であれば、試薬交換時刻指定ボタン64を操作して、試薬交換時刻指定画面50を開き、次回の試薬交換の指定等を設定変更する。その後、分析再開ボタン65の操作により、検体の依頼項目の分析を再開させる(S130)。これにより、分析が再開された後、多項目化学分析装置1では、記憶装置42に登録されている通常の依頼項目の分析に加え、図5のステップS40で登録された、キャンセルされた検体の依頼項目の分析も再び行われる。
次に、図5に示した状態遷移制御処理において、ステップS90に示した分析中断処理に係り、分析中断により実行される検体の依頼項目の分析と実行されない検体の依頼項目の分析との境界を示す分析の中断タイミングについて、オペレータが交換推奨時刻16:05(16時05分)に対して自身の都合のよい試薬交換時刻15:10を設定した場合を例に、具体的に説明する。この分析の中断タイミングは、分析中断により実行される検体の依頼項目の分析と実行されない検体の依頼項目の分析とを、依頼項目単位で分ける項目単位の中断タイミングと、検体単位で分ける検体単位の中断タイミングとがある。
まず、分析の中断タイミングとしての項目単位の中断タイミングについて、図7、図8に基づいて説明する。
図7は、分析の中断タイミングとしての項目単位の中断タイミングの説明図である。
図8は、項目単位の中断タイミングでの、図5に示した状態遷移制御処理の関係個所の具体的な処理内容を示したフローチャートである。
図7は、分析動作(オペレーション)の開始13:30から所定時間経過した状況でのスケジューリングされた検体m、m+1の依頼項目(図示の例では、検体m、m+1とも、依頼項目A、B、C)の分析予約の状況を示している。ここでは、依頼項目Aの分析は、反応容器30への検体分注器12による検体mの分注と試薬分注器22による試薬(試薬種類)1の分注とを含み、同様に、依頼項目Bの分析は、検体mの分注と試薬1、2、3の分注とを含み、依頼項目Cの分析は、検体mの分注と試薬1、2の分注とを含むものとする。
そして、図5及び図8に示した状態遷移制御処理では、検体mについては、項目A、項目B、項目Cの分析予約が、それ以前にスケジューリングされた検体の依頼項目の分析と検体同士、試薬同士の分注が重ならないようにして、かつ検体m自身に係る依頼項目A、B,C間でも検体同士、試薬同士の分注が重ならないようにして、図7に示すようにスケジューリングされている。また、検体m+1についても、検体mを含めたそれ以前にスケジューリングされた検体の依頼項目の分析と検体同士、試薬同士の分注が重ならないようにして、かつ検体m自身に係る依頼項目A、B,C間でも検体同士、試薬同士の分注が重ならないようにして、図7に示すようにスケジューリングされている。
ここで、仮に、記憶装置42には、分析の中断タイミングとしての項目単位の中断タイミングがデフォルトされていて、状態遷移時間として5分が登録され、図2で示した試薬交換時刻指定画面50で、交換推奨時刻として16:05、試薬交換指定時刻として15:10が登録されている場合、検体m、検体m+1それぞれの依頼項目A、B,Cそれぞれについての図5に示した状態遷移制御処理では、図8に示すような状態遷移制御処理が行われることになる。
図8において、ステップS11、12の検体情報取得、依頼項目情報取得は、図5でS10で示した検体認識、依頼項目情報取得に該当し、同様に、図8における遷移完了時刻の算出(S50)、試薬交換指定時刻に対する判定(S70)、分析継続(S80A)、分析中断(S90A)は、図5でステップS50、S70、S80、S90で示した各処理に該当する。そして、図8では、分析の中断タイミングとしての項目単位の中断タイミングがデフォルトされているのに関係して、ステップS80Aに示した分析継続は項目単位で行われるため、検体についての未だ済んでいない依頼項目の残りがあるか否かに応じて(S85)、残りがある場合はそれについてのスケジューリングを行い、残りが無い場合は次の検体の未だ済んでいない依頼項目についてのスケジューリングを行うようになっている。
その結果、図7に示すように、試薬交換指定時刻15:10にまでに試薬交換が可能な状態とするためには、15:05(=15:10−5分)に状態遷移を開始する必要があるため、検体mについての依頼項目A、B,Cを含む、検体m+1の依頼項目Aについては、15:05より前に試薬分注を全て終えるため、一方、検体m+1の依頼項目Bの分析に係るスケジューリングでは(S50)、試薬1、2も含め、その最終分注試薬である試薬3の分注完了が15:05よりも後になってしまうため(S70、N)、検体m+1の依頼項目B、Cを含む、記憶装置40に登録されている検体それぞれの依頼項目それぞれについては分析は行われずに、検体m+1の依頼項目Aの分析での最終試薬(試薬1)の分注完了後、分析処理は、検体に関係なく依頼項目の分析単位で中断させられる(S90A)。これにより、試薬交換指定時刻内で、できるだけ多くの依頼項目の分析を実行できるので、試薬交換時刻を指定してオペレータの都合に合わせて試薬交換を行っても、装置の分析動作状態での分析のスループットも、オペレータが装置の試薬切れに合わせて試薬交換を行う場合と変わりない。
なお、本実施例の多項目化学分析装置1では、図1に示したように、一の反応ディスク31に対してそれぞれ一の試薬ディスク21及び試薬分注器22を備えるため、図7に示すようなスケジューリング結果になったが、例えば、一の反応ディスク31に対する試薬ディスク21及び試薬分注器22の数が複数になれば、そのスケジューリング結果は、検体の依頼項目同士で試薬の分注タイミングが重なることも可能になるが、その場合であっても。図8で述べた、試薬交換指定時刻に対する判定(S70)、分析継続(S80A)、分析中断(S90A)は、変えることなく、適用可能である。
続いて、分析の中断タイミングとしての検体単位の中断タイミングについて、図9、図10に基づいて説明する。
この検体単位の中断タイミングは、図5におけるステップS130で、装置を試薬登録可能状態にした後、検体の依頼項目の分析を再開するに当たって、検体の余計な消費を防ぐことを可能にする。図1で説明した分注ノズルを備えた検体分注器12では、検体吸入時、ダミー量の検体吸入が必要となる。ダミー量は、検体の分注を正確にするために、検体の吐出量(分注量)よりも吸入量を余分に多くする量のことである。洗浄後、検体分注器12の分注ノズル内には、洗浄水が残っているため、検体吸入時、洗浄水と検体が接するため検体の一部が薄まってしまう。そのため、検体の吸引量が吐出量と同じであると、残っている洗浄水との境界の検体が薄まった部分を吐出してしまい、正確な検体分注ができないため、この薄まった部分を吐出しないようにするダミー量の吸引が必要である。したがって、図5におけるステップS130で検体の依頼項目の分析を再開するに当たって、同一検体から連続して分注する場合は、再度のダミー量の吸引が必要となるため、検体をその分だけ余計に消費する。特に、検体量が少ない場合は、なるべく余計な消費を防ぐため、分析のスループットは多少落ちても、図5におけるステップS90では、検体単位で分析を中断させる必要がある。
図9は、分析の中断タイミングとしての検体単位の中断タイミングの説明図である。
図10は、検体単位の中断タイミングでの、図5に示した状態遷移制御処理の関係個所の具体的な処理内容を示したフローチャートである。
図10において、ステップS11、S12の検体情報取得、依頼項目情報取得は、図5でS10で示した検体認識、依頼項目情報取得に該当し、同様に、図10における遷移完了時刻の算出(S50)、試薬交換指定時刻に対する判定(S70)、分析継続(S80B)、分析中断(S90B)は、図5でステップS50、S70、S80、S90で示した各処理に該当する。そして、図10では、分析の中断タイミングとしての検体単位の中断タイミングがデフォルトされているのに関係して、ステップS80Bに示した分析継続は検体単位で行われるため、検体についての未だ済んでいない依頼項目の残りがあるか否かに応じて(S75)、残りがある場合はそれについてのスケジューリングを行い、残りが無い場合はその検体についての依頼項目それぞれの分析を検体単位で継続して行うこととして(S80B)、次の検体についての検体単位のスケジューリングを行うようになっている。また、ステップS70で、ステップS50で算出した遷移完了時刻が試薬交換指定時刻よりも後になると判定した場合は、既に遷移完了時刻が試薬交換指定時刻よりも前になると判定された同じ検体の依頼項目も含めて、その検体についての全依頼項目ごと、検体単位で分析を中断させるようになっている(S90B)。
その結果、図9に示すように、試薬交換指定時刻15:10にまでに試薬交換が可能な状態とするためには、15:05(=15:10−5分)に状態遷移を開始する必要があるため、検体mについての依頼項目A、B,Cについては、15:05より前に試薬分注を全て終えるため、一方、検体m+1の依頼項目A、B,Cについては、依頼項目Aについては、15:05より前に試薬分注を全て終えるものの、依頼項目Bの分析に係るスケジューリングでは(S50)、試薬1、2も含め、その最終分注試薬である試薬3の分注完了が15:05よりも後になってしまうため(S70、N)、検体m+1の依頼項目A、B、Cそれぞれについては分析は行われずに、検体mの依頼項目A、B、Cの分析での最終試薬(依頼項目Bの試薬3)の分注完了後、分析処理は検体単位で中断させられる(S90B)。
なお、本実施例では、分析の中断タイミングとして、項目単位の中断タイミング、検体単位の中断タイミングのいずれかがデフォルトされているものとして説明したが、図2で示した試薬交換時刻指定画面50上に、分析中断タイミング選択欄を設け、オペレータによって所望の分析の中断タイミングを選択できるようにすることも可能である。
図11は、本発明の他の実施例としての多項目化学分析装置の概略全体構成図である。
本実施例の多項目化学分析装置101は、図1に示した多項目化学分析装置1が複数備えられたシステム装置として構成され、これら複数の多項目化学分析装置1のマイクロコンピュータ40を備えた制御系及び信号処理系が、各多項目化学分析装置1とネットワーク接続された全体管理コンピュータ140によって統括制御される構成になっている。全体コンピュータ140は、例えばPC(personal computer)等からなり、ユーザーインターフェースとしての入力部144、表示部145等を有する構成になっている。
そして、本実施例では、全体管理コンピュータ140のユーザーインターフェースとしての入力部144、表示部145を用いて、各多項目化学分析装置1の試薬交換時刻指定機能に係り、試薬交換時刻の指定の有無、試薬切れ状態の規定、試薬交換指定時刻、分析の中断タイミングの選択を、その表示部145に表示される試薬交換時刻指定画面150によって、多項目化学分析装置1毎、別々に設定できる構成になっている。
図12は、本実施例の多項目化学分析装置に係る試薬交換時刻指定画面の一実施例の構成図である。
試薬交換時刻指定画面150は、試薬交換時刻を指定する多項目化学分析装置1を選択するための装置選択タブ56を有し、対応する多項目化学分析装置1の試薬交換時刻指定画面ウィンドウ50’を選択表示できる構成になっている。各装置1の試薬交換時刻指定画面ウィンドウ50’は、図2に示した試薬交換時刻指定画面50の場合と同様に、指定選択ラジオボタン51と、交換推奨情報欄52と、交換時刻指定欄53と、確定ボタン54と、キャンセルボタン55とを有し、さらにタイミング選択ラジオボタン57を有する分析中断タイミング選択欄が設けられた構成になっている。タイミング選択ラジオボタン57は、‘項目単位’ボタン57aの操作により図7、図8で示した項目単位の中断タイミングの実行が選択され、‘検体単位’ボタン57bの操作により図9、図10で示した検体単位の中断タイミングの実行が選択される。
本実施例によれば、オペレータは、全体管理コンピュータ140のユーザーインターフェースとしての入力部144、表示部145を用いて、試薬交換時刻指定画面150上で、試薬交換時刻の指定の有無、試薬切れ状態の規定、試薬交換指定時刻、分析の中断タイミングの選択を、多項目化学分析装置1毎に別々に独立に設定できる。特に、分析の中断タイミングについては、システム装置として接続されている多項目化学分析装置の種類によっては、分析のスループットを重視した項目単位が好ましい装置もあるし、検体の消費を抑えることを重視した検体単位が好ましい装置もあるので、それぞれの重視内容に合わせて個別に設定できる。
以上、述べたように、本発明に係る自動分析装置の実施の形態について、多項目化学分析装置を例に説明したが、本発明に係る自動分析装置は、多項目化学分析装置に限られるものではなく、そのオペレータの都合のよい時刻に試薬交換作業を直ちに開始できるための構成は、検体の定量、定性分析を行う自動分析装置であれば、種々の自動分析装置に適用可能である。