JP6464741B2 - 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子及びバスバー - Google Patents

電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子及びバスバー Download PDF

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Description

本発明は、リードフレーム、端子、コネクタ、リレー、バスバー等の電子・電気機器用部品に適した電子・電気機器用銅合金、及び、この電子・電気機器用銅合金からなる電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子及びバスバーに関するものである。
従来、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品には、導電性の高い銅又は銅合金が用いられている。
電子機器や電気機器等の小型化にともない、これら電子機器や電気機器等に使用される電子・電気機器用部品の小型化および薄肉化が図られている。このため、電子・電気機器用部品を構成する材料には、高い強度及び導電率が求められている。特に、非特許文献1に記載されているように、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品として使用される銅合金としては、耐力が高いものが望ましい。
ここで、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品に使用される材料として、特許文献1−3にはCu−Zr合金等が提案されている。
特開昭52−003524号公報 特開昭63−130737号公報 特開平06−279895号公報
野村幸矢、「コネクタ用高性能銅合金板条の技術動向と当社の開発戦略」、神戸製鋼技報Vol.54No.1(2004)p.2−8
ところで、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品は、例えば銅合金の板材に対してプレス打ち抜きを行い、さらに必要に応じて曲げ加工等が施されて製造されている。このため、上述の銅合金には、プレス打ち抜き等において、プレス金型の摩耗やバリの発生を抑制できるように、良好なせん断加工性も求められている。
ここで、上述のCu−Zr系合金は、高い導電率を確保するために、Zr等の添加元素の含有量が少なく純銅に近い組成を有しており、延性が高く、せん断加工性が良好ではなかった。詳述すると、プレス打ち抜きを行った際に、バリが発生し、寸法精度良く打ち抜きを行うことができないといった問題があった。さらに、金型が摩耗しやすいといった問題や、打ち抜き屑が多く発生するといった問題もあった。
特に、最近では、電子機器や電気機器等のさらなる小型化および軽量化にともない、これら電子機器や電気機器等に使用されるコネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品のさらなる小型化および薄肉化が要求されている。このため、電子・電気機器用部品を寸法精度良く成形する観点から、これら電子・電気機器用部品を構成する材料として、せん断加工性を十分に向上させた銅合金が求められている。
ここで、銅合金のせん断加工性を向上させる手段として、銅合金のビッカース硬さを高くすることが効果的である。また、銅合金のビッカース硬さを高くした場合には、表面の傷つき難さ(耐摩耗性)も向上する。そのため、電子・電気機器用部品として使用される銅合金としては、上述のビッカース硬さが高いことが望まれる。
また、コネクタ等の端子においては、従来よりも優れた耐力が要求されている。特に、代表的な箱型メス端子を銅合金板のプレス加工により製造する場合、メス端子の長手方向が圧延方向に対し垂直方向を向くように板取りされるため、圧延方向に対して垂直方向に高い耐力を有することが望ましい。
さらに、ハイブリッド自動車や電気自動車等に用いられる消費電力の大きな電子・電気機器用部品においては、通電時の抵抗発熱を抑制するために、高い導電率を確保する必要がある。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れ、電子・電気機器用部品に適した電子・電気機器用銅合金、及び、この電子・電気機器用銅合金からなる電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子及びバスバーを提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明の電子・電気機器用銅合金は、Zrを0.01mass%以上0.11mass%未満、Siを0.0001mass%以上0.03mass%未満、含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、ZrとSiの質量比Zr/Siが、2≦Zr/Si≦1000の範囲内とされ、前記不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量が100massppm未満であり、材料表面における{111}面からのX線回折強度をI{111}、{200}面からのX線回折強度をI{200}、{220}面からのX線回折強度をI{220}、{311}面からのX線回折強度をI{311}、{331}面からのX線回折強度をI{331}、{420}面からのX線回折強度をI{420}とした場合に、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}=I{220}/(I{111}+I{200}+I{220}+I{311}+I{331}+I{420})が0.3以上とされていることを特徴としている。
上述の構成の電子・電気機器用銅合金によれば、Zrを0.01mass%以上0.11mass%未満、Siを0.0001mass%以上0.03mass%未満の範囲で含んでいるので、導電率を維持したまま耐力を向上させることができるとともに、ビッカース硬さを向上させることができる。
また、不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量が100massppm未満に制限されているので、ZrやSiがこれら不可避不純物と反応して消費されてしまうことを抑制できる。
さらに、ZrとSiとの質量比Zr/Siが上述のように規定されているので、ZrとSiとの相乗効果により、確実に、耐力、導電率、ビッカース硬さを向上させることができる。
また、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}が0.3以上とされているので、材料の結晶方位が{220}面に配向させられており、耐力をさらに向上させることができる。
ここで、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、CuとZrとSiを含有するCu−Zr−Si粒子が存在することが好ましい。
この場合、Cu−Zr−Si粒子が存在することにより、導電率が低下することなく耐力を向上させることができる。また、ビッカース硬さを確実に向上させることが可能となる。
また、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、さらに、Mgを0.001mass%以上0.1mass%未満の範囲で含んでいてもよい。
この場合、上述の範囲で添加されたMgが銅に固溶することにより、耐力及びビッカース硬さをさらに向上させることができる。
また、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、前記Cu−Zr−Si粒子の少なくとも一部は、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内の比較的粒径の小さなCu−Zr−Si粒子が存在することにより、導電率を維持したまま耐力を向上させることが可能となる。また、ビッカース硬さを確実に向上させることが可能となる。
さらに、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、表面のビッカース硬さが120Hv以上であることが好ましい。
この場合、表面のビッカース硬さが120Hv以上とされているので、せん断加工性及び耐摩耗性が向上することになり、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品の銅合金として特に適している。
本発明の電子・電気機器用銅合金薄板は、上述の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなり、その板厚が0.05mm以上2.0mm以下の範囲内とされていることを特徴としている。
この構成の電子・電気機器用銅合金薄板によれば、上述のように、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金からなり、さらにせん断加工性にも優れていることから、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
本発明の電子・電気機器用部品は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴としている。なお、本発明における電子・電気機器用部品とは、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等を含むものである。
この構成の電子・電気機器用部品は、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金を用いて製造されているので、信頼性に優れている。
本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴としている。
この構成の端子は、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金を用いて製造されているので、信頼性に優れている。
本発明のバスバーは、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴としている。
この構成のバスバーは、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金を用いて製造されているので、信頼性に優れている。
本発明によれば、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れ、電子・電気機器用部品に適した電子・電気機器用銅合金、及び、この電子・電気機器用銅合金からなる電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子及びバスバーを提供することができる。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金の製造方法のフロー図である。 本実施例における電子・電気機器用銅合金のTEM(透過型電子顕微鏡)観察写真(倍率20,000倍)である。 本実施例における電子・電気機器用銅合金のTEM(透過型電子顕微鏡)観察写真(倍率100,000倍)である。 図3において観察された粒子を、EDX(エネルギー分散型X線分光法)によって組成分析した結果を示す図である。
以下に、本発明の一実施形態である電子・電気機器用銅合金について説明する。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、Zrを0.01mass%以上0.11mass%未満、Siを0.0001mass%以上0.03mass%未満、含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、前記不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量が100massppm未満とされている。なお、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、Zr及びSiに加えて、さらにMgを0.001mass%以上0.1mass%未満の範囲で含んでいてもよい。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、ZrとSiの質量比Zr/Siが、2≦Zr/Si≦1000の範囲内とされていることが好ましい。
そして、本実施形態である電子・電気機器用銅合金おいては、CuとZrとSiを含有するCu−Zr−Si粒子が存在していることが好ましい。
このCu−Zr−Si粒子の少なくとも一部は、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされており、具体的には、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされた比較的微細なCu−Zr−Si粒子と、粒径が1μm以上50μm以下の範囲内とされた比較的粗大なCu−Zr−Si粒子とを有している。
また、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、材料表面における{111}面からのX線回折強度をI{111}、{200}面からのX線回折強度をI{200}、{220}面からのX線回折強度をI{220}、{311}面からのX線回折強度をI{311}、{331}面からのX線回折強度をI{331}、{420}面からのX線回折強度をI{420}とした場合に、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}=I{220}/(I{111}+I{200}+I{220}+I{311}+I{331}+I{420})が0.3以上とされている。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、導電率が80%IACS以上、0.2%耐力が300MPa以上、表面のビッカース硬さが120Hv以上といった特性を有している。
ここで、上述のように成分組成、X線回折強度、Cu−Zr−Si粒子の粒径、導電率、0.2%耐力、ビッカース硬さを規定した理由について以下に説明する。
(Zr:0.01mass%以上0.11mass%未満)
Zrは、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気によって転位の固着を起こすと考えられ、導電率を維持したまま耐力を向上させる作用効果を有する元素である。また、ビッカース硬さを向上させる作用効果を有する。
ここで、Zrの含有量が0.01mass%未満の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Zrの含有量が0.11mass%以上の場合には、導電率が大幅に低下してしまうおそれがあるとともに、溶体化が困難となり、熱間加工時や冷間加工時に断線や割れ等の欠陥が発生するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Zrの含有量を0.01mass%以上0.11mass%未満の範囲内に設定している。なお、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって導電率を維持したまま耐力を確実に向上させるためには、Zrの含有量を0.04mass%以上とすることが好ましく、0.05mass%以上とすることがさらに好ましい。また、導電率の低下や加工時の欠陥等を確実に抑制するためには、Zrの含有量を0.10mass%以下とすることが好ましい。
(Si:0.0001mass%以上0.03mass%未満)
Siは、上述のCu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気によって転位の固着を起こすと考えられ、導電率を維持したまま耐力を向上させる作用効果を有する元素である。また、ビッカース硬さを向上させる作用効果を有する。
ここで、Siの含有量が0.0001mass%未満の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Siの含有量が0.03mass%以上の場合には、母相中に固溶したSiにより導電率が大幅に低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.0001mass%以上0.03mass%未満の範囲内に設定している。なお、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって導電率を維持したまま耐力を確実に向上させるためには、Siの含有量を0.0003mass%以上とすることが好ましく、0.0005mass%以上とすることがさらに好ましい。また、導電率の低下を確実に抑制するためには、Siの含有量を0.025mass%以下とすることが好ましく、0.02mass%以下とすることがさらに好ましい。
(Mg:0.001mass%以上0.1mass%未満)
Mgは、銅合金の母相中に固溶することで、高い導電性を保持した状態で、耐力およびビッカース硬さを向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、Mgの含有量が0.001mass%未満の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、Mgの含有量が0.1mass%以上の場合には、熱間加工時に割れが生じ易くなるとともに導電率が大きく低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、上述のZr及びSiに加えてさらにMgを添加する場合には、Mgの含有量を0.001mass%以上0.1mass%未満の範囲内に設定している。なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、Mgの含有量を0.01mass%以上とすることが好ましい。また、導電率の低下を確実に抑制するためには、Mgの含有量を0.05mass%未満とすることが好ましい。
(不可避不純物:0.1mass%以下)
なお、不可避不純物としては、B,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Co,O,S,C,Ag,Sn,Al,Zn,Ti,Ca,Te,Mn,Sr,Ba,Sc,Y,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Re,Ru,Os,Se,Rh,Ir,Pd,Pt,Au,Cd,Ga,In,Li,Ge,As,Sb,Tl,Pb,Be,N,H,Hg,Tc,Na,K,Rb,Cs,Po,Bi,ランタノイド等が挙げられる。これらの不可避不純物は、材料の導電率を低下させる効果があるため、総量で0.1mass%以下とすることが好ましい。また、導電率の低下を確実に抑制するためには、これらの不可避不純物は総量で0.02mass%未満とすることが好ましく、総量で0.01mass%未満とするのがさらに好ましい。
(B,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Co:合計で100massppm未満)
本実施形態では、上述の不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coといった特定の不純物元素については、以下の理由から含有量をさらに規定している。
耐力、導電率、ビッカース硬度等の最適な特性を得るためには、Zr量、Si量を適正に制御する必要がある。ここで、銅合金中のZrと反応して晶出物を形成するB、Pは、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって強度およびビッカース硬さを向上させる効果の妨げとなるため、厳しく管理する必要がある。また、Ni,Cr,Ti,Fe,Coは、Siと化合物を形成し、同じく上記のCu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着を妨げることになる。さらに、これらの化合物は破壊の起点として働き、熱間圧延性、冷間圧延性を劣化させるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量を100massppm未満に規定している。ここで、Zr及びSiの消費を抑制してCu−Zr−Si粒子の形成、または固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着を確実に作用させるためには、B,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量を20massppm未満にすることがより望ましく、B,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量を10massppm未満にすることがさらに好ましい。さらに、銅合金中のZrと反応して晶出物を形成するB、Pは、その合計含有量が4massppm未満であることがより望ましい。また、Siと化合物を形成するNi,Cr,Ti,Fe,Coは、その合計含有量が16massppm未満であることがより望ましい。
(Zr/Si)
上述のように、ZrとSiをCu中に添加することにより、Cu−Zr−Si粒子が形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気によって転位の固着を起こすと考えられ、導電率を維持したまま耐力を向上させることができる。また、ビッカース硬さを向上させることができる。
ここで、Zrの含有量(mass%)とSiの含有量(mass%)との比Zr/Siが2未満の場合には、Zrの含有量に対してSiの含有量が多く、過剰なSiによって導電率が低下してしまうおそれがある。一方、Zr/Siが1000を超える場合には、Zrの含有量に対してSiの含有量が少なく、上述の作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Zrの含有量(mass%)とSiの含有量(mass%)との比Zr/Siを2以上1000以下の範囲内に設定している。なお、導電率の低下を確実に抑制するためには、Zr/Siを3以上とすることが好ましい。また、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって耐力を確実に向上させるためには、Zr/Siを500以下とすることが好ましく、300以下とすることがさらに好ましい。最も好ましくは100以下である。
({220}面からのX線回折強度の割合R{220})
すべり系の活動のし易さを示すシュミット因子を圧延方向に垂直な方向の引張で想定した場合、板表面において{220}面に配向した結晶方位は他の結晶方位と比較し、その値が低い傾向にあるため、変形に大きな応力が必要となる。そのため、材料の結晶方位を{220}面に配向させることにより、効率的に圧延方向に垂直な方向の強度を向上させることが可能となる。
よって、板表面における{220}面からのX線回折強度の割合R{220}を0.3以上とすることにより、耐力を向上させることができる。なお、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}は0.4以上が好ましい。
一方、{220}面の割合が高くなりすぎると、圧延方向に対して垂直方向に曲げ加工を行った場合に、曲げ加工性が劣化するため、好ましくは0.95以下とすることが好ましく、0.9以下とすることがさらに好ましい。最も好ましくは0.8以下である。
(Cu−Zr−Si粒子)
CuにZr,Siを添加した場合には、CuとZrとSiを含有するCu−Zr−Si粒子が存在することになる。本実施形態では、上述のように、Cu−Zr−Si粒子として、粒径が1μm以上50μm以下の範囲内とされた比較的粗大な粒子と、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされた微細な粒子が存在している。
ここで、粒径が1μm以上50μm以下の範囲内とされた粗大なCu−Zr−Si粒子は、溶解鋳造時に晶出または偏析したものと推測される。また、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされた微細なCu−Zr−Si粒子は、その後の熱処理等において析出したものと推測される。
粒径1μm以上50μm以下の粗大なCu−Zr−Si粒子は、強度向上には寄与しないが、プレス打ち抜き等に代表されるせん断加工を実施した際に破壊の起点となり、せん断加工性を大幅に向上させることが可能となる。
一方、粒径1nm以上500nm以下の微細なCu−Zr−Si粒子は、強度向上に寄与し、高い導電率を維持したまま耐力の向上を図ることができる。また、ビッカース硬さを向上させることができる。
(導電率:80%IACS以上)
Zr、SiがCuの母相中に固溶している場合には、導電率が大幅に低下することになる。そこで、本実施形態では、導電率を80%IACS以上に規定しているので、上述のCu−Zr−Si粒子が十分に存在していることになり、確実に耐力の向上及びせん断加工性の向上を図ることが可能となる。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、導電率を85%IACS以上とすることが好ましく、88%IACS以上とすることがさらに好ましい。
(0.2%耐力:300MPa以上)
本実施形態である電子・電気機器用銅合金において、0.2%耐力が300MPa以上である場合には、容易に塑性変形しなくなるため、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム等の電子機器用部品に特に適している。
なお、0.2%耐力は325MPa以上であることが好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましい。
(ビッカース硬さが120Hv以上)
本実施形態である電子・電気機器用銅合金において、ビッカース硬さを向上させるとせん断加工性が向上することになる。さらに、表面の傷つき難さ(耐摩耗性)も向上することになる。以上のことから、本実施形態では、ビッカース硬さを120Hv以上に設定している。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、ビッカース硬さは125Hv以上であることがさらに好ましい。
次に、このような構成とされた本実施形態である電子・電気機器用銅合金の製造方法について、図1に示すフロー図を参照して説明する。
(溶解・鋳造工程S01)
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、Zr、Siを添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を溶製する。なお、Zr、Siの添加には、Zr単体およびSi単体やCu−Zr母合金およびCu−Si母合金等を用いることができる。また、ZrおよびSiを含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。
銅溶湯は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは99.999mass%以上とされたいわゆる5NCu、あるいは99.9999mass%以上とされたいわゆる6NCuとすることが好ましい。また、銅合金溶湯の溶製時には、ZrおよびSiの酸化等を抑制するために、真空炉、あるいは、不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
(熱処理工程S02)
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために熱処理を行う。鋳塊を800℃以上1080℃以下にまで加熱する熱処理を行うことで、鋳塊内において、ZrおよびSiを均質に拡散、あるいは、ZrおよびSiを母相中に固溶させる。この熱処理工程S02は、非酸化性または還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱後の冷却方法は、特に限定しないが、水焼入など冷却速度が200℃/min以上となる方法を採用することが好ましい。
(熱間加工工程S03)
次に、粗加工の効率化と組織の均一化のために熱間加工を実施する。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は圧延を採用することが好ましい。線や棒の場合には押出や溝圧延、バルク形状の場合には鍛造やプレスを採用することが好ましい。熱間加工時の温度も特に限定されないが、500℃以上1050℃以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、熱間加工後の冷却方法は、特に限定しないが、水焼入など冷却速度が200℃/min以上となる方法を採用することが好ましい。
(中間加工工程S04/中間熱処理工程S05)
また、熱間加工の後、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性向上のための軟化を目的として中間加工、中間熱処理を加えてもよい。
中間加工工程S04における温度条件は特に限定はないが、冷間加工となる−200℃から200℃の範囲内とすることが好ましい。また、中間加工工程S04における加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、最終形状を得るまでの中間熱処理工程S05の回数を減らすためには、20%以上とすることが好ましい。また、加工率を30%以上とすることがより好ましい。中間加工工程S04における塑性加工方法は特に限定されないが、例えば圧延、線引き、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。
中間熱処理工程S05における熱処理方法は特に限定はないが、好ましくは500℃以上1050℃以下の条件で、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で熱処理を行うことが好ましい。
なお、これら中間加工工程S04、中間熱処理工程S05は繰り返し実施してしてもよい。
(仕上加工工程S06)
次に、上記の工程を施した材料を必要に応じて切断するとともに、表面に形成された酸化膜等を除去するために必要に応じて表面研削を行う。そして、所定の加工率で冷間加工(仕上加工)を実施する。なお、この仕上加工工程S06における温度条件は特に限定はないが、−200℃から200℃の範囲内とすることが好ましい。
加工率は最終板厚や最終形状に応じて適宜選択すればよい。ここで、加工率が30%未満では、圧延により形成される(220)面を十分に高められず、耐力を向上させる効果が十分に得られなくなるおそれがある。そのため、加工率は30%以上であることが望ましい。さらに望ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上である。
一方、加工率が99%を超えれば、曲げ加工性、耐応力緩和特性が低下してしまうおそれがある。そのため、加工率は99%以下とすることが好ましく、98%以下とすることがさらに好ましい。
ここで、仕上加工工程S06における塑性加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は圧延を採用することが好ましい。線や棒の場合には押出や溝圧延、バルク形状の場合には鍛造やプレスを採用することが好ましい。
(時効熱処理工程S07)
次に、仕上加工工程S06によって得られた仕上加工材に対して、強度、導電率の上昇のために、時効熱処理を実施する。この時効熱処理工程S07により、粒径1nm以上500nm以下の微細なCu−Zr−Si粒子が析出することになる。
ここで、熱処理温度は特に限定しないが、最適なサイズのCu−Zr−Si粒子を均一に分散析出させるために、250℃以上600℃以下の範囲内とすることが好ましい。なお、導電率によって析出状態を把握できることから、所定の導電率となるように、熱処理条件(温度、時間)を適宜設定することが好ましい。
なお、上述の仕上加工工程S06と時効熱処理工程S07とを、繰り返し実施してもよい。また、時効熱処理工程S07の後に、形状修正や強度向上のために1%から70%の加工率で冷間加工を行ってもよい。さらに、調質や残留ひずみの除去のために熱処理を行ってもよい。なお、熱処理後の冷却方法は、特に限定しないが、水焼入など冷却速度が200℃/min以上となる方法を採用することが好ましい。
以上のようにして、本実施形態である電子・電気機器用銅合金が製出される。この電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が300MPa以上とされている。
また、仕上加工工程S06における加工方法として圧延を適用した場合、板厚0.05〜2.0mm程度の電子・電気機器用銅合金薄板(条材)を得ることができる。このような薄板は、これをそのまま電子・電気機器用部品に使用してもよいが、板面の一方、もしくは両面に、膜厚0.1〜10μm程度のSnめっきまたはAgめっきを施して、めっき付き銅合金条としてもよい。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金(電子・電気機器用銅合金薄板)を素材として、打ち抜き加工や曲げ加工等を施すことにより、例えばコネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバーといった電子・電気機器用部品が成形される。
以上のような構成とされた本実施形態である電子・電気機器用銅合金によれば、Zrを0.01mass%以上0.11mass%未満、Siを0.0001mass%以上0.03mass%未満の範囲で含んでいるので、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって、導電率を維持したまま耐力を向上させることができるとともに、ビッカース硬さを向上させることができる。
そして、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}が0.3以上とされているので、材料の結晶方位が{220}面に配向させられており、耐力をさらに向上させることができる。
また、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、Zr及びSiに加えてさらにMgを0.001mass%以上0.1mass%未満の範囲で添加した場合には、銅の母相中にMgを固溶させることで、高い導電率を維持したまま耐力をさらに向上させることができる。
また、不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量が100massppm未満に制限されているので、SiやZrがこれら不可避不純物と反応して消費されてしまうことを抑制でき、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって、確実に耐力及びビッカース硬さの向上を図ることができる。
また、本実施形態では、ZrとSiの質量比Zr/Siが、2≦Zr/Si≦1000の範囲内とされているので、ZrとSiとの相乗効果により、確実に、耐力、導電率、ビッカース硬さを向上させることができる。詳述すると、上述のように、ZrとSiの質量比Zr/Siを規定することにより、Cu−Zr−Si粒子の形成、もしくは固溶したZrとSiにより形成された溶質雰囲気あるいはコットレル雰囲気による転位の固着によって、導電率を低下させることなく耐力を向上させることができる。また、ビッカース硬さを確実に向上させることが可能となるのである。
さらに、本実施形態では、Cu−Zr−Si粒子の少なくとも一部は、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされており、具体的には、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされた比較的微細な粒子と、粒径が1μm以上50μm以下の範囲内とされた比較的粗大な粒子とが存在しているので、比較的微細なCu−Zr−Si粒子によって、高い導電率を維持したまま耐力の向上を図ることができる。また、ビッカース硬さを向上させることができる。さらに、粒径1μm以上50μm以下の比較的粗大なCu−Zr−Si粒子により、せん断加工性を大幅に向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、導電率が80%IACS以上、0.2%耐力が300MPa以上、表面のビッカース硬さが120Hv以上といった特性を有しているので、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品の銅合金として特に適している。
また、本実施形態である電子・電気機器用銅合金薄板は、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金からなり、さらにせん断加工性にも優れていることから、コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
なお、表面にSnめっき又はAgめっきを施した電子・電気機器用銅合金薄板においては、各種電子・電気機器用部品の素材として適用可能である。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用部品(コネクタ等の端子、リレー、リードフレーム、バスバー等)は、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れた電子・電気機器用銅合金を用いて製造されているので、信頼性に優れている。
以上、本発明の実施形態である電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用部品、端子、リレー、バスバーについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、電子・電気機器用銅合金の製造方法の一例について説明したが、電子・電気機器用銅合金の製造方法は、実施形態に限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
純度99.9999mass%以上の高純度銅からなる銅原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。得られた銅溶湯内に、各種添加元素を添加して表1に示す成分組成に調製し、水冷銅鋳型に注湯して鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、厚さ約150mm×幅約150mm×長さ約150mmとした。
得られた鋳塊に対して、Arガス雰囲気中において、均質化と溶体化のために表2に記載の温度条件で4時間の加熱を行う熱処理工程を実施し、その後、水焼き入れを実施した。熱処理後の鋳塊を切断するとともに、酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。その後、表2に記載された加工率、温度にて熱間圧延を行い、水焼き入れを実施した。
中間加工工程として、26〜94%の冷間圧延を行った後に、中間熱処理としてソルトバスを用いて800〜900℃で1分〜1時間の熱処理を行った。
表2に記載された条件にて仕上加工工程として冷間圧延を実施し、厚さ約0.5mmの条材を製出した。
そして、得られた条材に対して、表2に記載された温度にて、表3に記載の導電率となるまで時効熱処理を実施し、特性評価用条材を作成した。
(加工性評価)
加工性の評価として、前述の仕上加工工程(冷間圧延時)における耳割れの有無を観察した。目視で耳割れが全くあるいはほとんど認められなかったものを「◎」、長さ1mm未満の小さな耳割れが発生したものを「○」、長さ1mm以上3mm未満の耳割れが発生したものを「△」、長さ3mm以上の大きな耳割れが発生したものを「×」とした。耳割れの長さが1mm以上3mm未満である「△」は実用上問題がないと判断した。
なお、耳割れの長さとは、圧延材の幅方向端部から幅方向中央部に向かう耳割れの長さのことである。評価結果を表3に示す。
(粒子観察)
Cu、Zr、Siを含有するCu−Zr−Si粒子を確認するため、透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子株式会社製、JEM−2010F)を用いて粒子観察し、EDX分析(エネルギー分散型X線分光法)を実施した。
まず、図2に示すように、TEMを用いて20,000倍(観察視野:2×10nm)で観察した。そして、観察された粒子について、図3に示すように、100,000倍(観察視野:7×10nm)観察を行った。また、粒径が10nm未満の粒子については、さらに500,000倍(観察視野:3×10nm)で観察を行った。
また、観察された粒子について、EDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて組成を分析し、Cu−Zr−Si粒子であることを確認した。EDX分析結果の一例を図4に示す。
Cu−Zr−Si粒子の粒径は、長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)のと短径(長径と垂直に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とした。
組織観察により、粒径1nm以上500nm以下の範囲内のCu−Zr−Si粒子が観察されたものを「有」、観察されなかったものを「無」として評価した。評価結果を表3に示す。
(X線回折強度)
板表面における{111}面からのX線回折強度をI{111}、{200}面からのX線回折強度I{200}、{220}面からのX線回折強度I{220}、{311}面からのX線回折強度I{311}、{331}面からのX線回折強度I{331}、{420}面からのX線回折強度I{420}を、次のような手順で測定した。
特性評価用条材から測定試料を採取し、反射法で、測定試料に対して1つの回転軸の回りのX線回折強度を測定した。ターゲットにはCuを使用し、KαのX線を使用した。管電流40mA、管電圧40kV、測定角度40〜150°、測定ステップ0.02°の条件で測定し、回折角とX線回折強度のプロファイルにおいて、X線回折強度のバックグラウンドを除去後、各回折面からのピークのKα1とKα2を合わせた積分X線回折強度Iを求めた。
そして、R{220}=I{220}/(I{111}+I{200}+I{220}+I{311}+I{331}+I{420})から、板表面における{220}面からのX線回折強度の割合R{220}を算出した。なお、X線回折強度の測定部位は試料板幅方向の中心部とした。評価結果を表3に示す。
(導電率)
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して垂直になるように採取した。測定結果を表3に示す。
(機械的特性)
特性評価用条材からJIS Z 2241に規定される13B号試験片を採取し、オフセット法により0.2%耐力を測定した。なお、試験片は、引張試験の引張方向が特性評価用条材の圧延方向に対して垂直になるように採取した。評価結果を表3に示す。
(ビッカース硬さ)
JIS Z 2244に規定されているマイクロビッカース硬さ試験方法に準拠し、試験荷重0.98Nでビッカース硬さを測定した。評価結果を表3に示す。
(Zr、Si、Mg及び不純物含有量の測定方法)
Zr、Si、Mgと比較例5のPは、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて測定した。その他不可避不純物はグロー放電質量分析装置(GD−MS)を用いて測定した。
成分組成、製造工程、評価結果を表1、2、3に示す。
比較例1は、Zrが本発明の範囲よりも少なく、耐力及びビッカース硬さが不十分であった。
比較例2は、Zrが本発明の範囲よりも多く、冷間圧延時に大きな割れが発生した。このため、その後の評価を中止した。
比較例3は、Siが本発明の範囲よりも少なく、耐力及びビッカース硬さが不十分であった。
比較例4は、Siが本発明の範囲よりも多く、導電率が大きく低下した。
比較例5は、不可避不純物であるB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計が本発明の範囲より多く、冷間圧延時に大きな割れが発生した。このため、その後の評価を中止した。
比較例6は、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}が小さく、耐力及びビッカース硬さが不十分であった。
これに対して、本発明例においては、導電率が高く、かつ、耐力、ビッカース硬さに優れていた。
以上のことから、本発明によれば、耐力、導電率、ビッカース硬さに優れ、電子・電気機器用部品を構成する材料として特に適した電子・電気機器用銅合金を提供することができることが確認された。

Claims (9)

  1. Zrを0.01mass%以上0.11mass%未満、Siを0.0001mass%以上0.03mass%未満、含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    ZrとSiの質量比Zr/Siが、2≦Zr/Si≦1000の範囲内とされ、前記不可避不純物のうちB,P,Ni,Cr,Ti,Fe,Coの合計含有量が100massppm未満であり、
    材料表面における{111}面からのX線回折強度をI{111}、{200}面からのX線回折強度をI{200}、{220}面からのX線回折強度をI{220}、{311}面からのX線回折強度をI{311}、{331}面からのX線回折強度をI{331}、{420}面からのX線回折強度をI{420}とした場合に、{220}面からのX線回折強度の割合R{220}=I{220}/(I{111}+I{200}+I{220}+I{311}+I{331}+I{420})が0.3以上とされていることを特徴とする電子・電気機器用銅合金。
  2. CuとZrとSiを含有するCu−Zr−Si粒子を有することを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器用銅合金。
  3. さらに、Mgを0.001mass%以上0.1mass%未満の範囲で含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金。
  4. 前記Cu−Zr−Si粒子の少なくとも一部は、粒径が1nm以上500nm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子・電気機器用銅合金。
  5. 表面のビッカース硬さが120Hv以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなり、その板厚が0.05mm以上2.0mm以下の範囲内とされていることを特徴とする電子・電気機器用銅合金薄板。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
  8. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする端子。
  9. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とするバスバー。
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