JP6460847B2 - 有機ニッケル化合物からなる化学蒸着用原料及び該化学蒸着用原料を用いた化学蒸着法 - Google Patents

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Description

本発明は化学蒸着法によりニッケル薄膜又はニッケル化合物薄膜を製造するための有機ニッケル化合物からなる化学蒸着用原料に関する。詳しくは、反応ガスを使用することなく高純度のニッケル薄膜を製造することのできる化学蒸着用原料に関する。
集積回路(LSI、ULSI、CPU)に組み込まれるトランジスタ(FET)やフラッシュメモリ等の各種デバイスの電極としてニッケル(Ni)薄膜が適用されている。これらの電極には、微細化、立体化といった構造面での改良と共に、低抵抗化のために不純物が排除されたニッケル薄膜であることが要求されている。このニッケル薄膜の製造として、化学蒸着法(化学気相蒸着法(CVD法)、及び原子層蒸着法(ALD法))が適用される。
化学蒸着法によるニッケル薄膜製造用の原料としては、従来から多くの有機ニッケル化合物が知られている。それらの中で高純度のニッケル薄膜を製造できるものとして、特許文献1及び非特許文献1記載の有機ニッケル化合物からなる薄膜製造用原料がある。
特許文献1記載のニッケル薄膜製造用原料は、下記式で示される有機ニッケル化合物からなる。この原料は、反応ガスとして水素を適用することで高純度のニッケル薄膜を製造することができる。
(式中、Xは3〜9個の炭素原子から成る鎖状あるいは環状のアルケニル基又はその誘導体である。シクロペンタジエニル基の置換基R〜RはC2n+1であり、nは0〜6の整数である。)
また、非特許文献1記載のニッケル薄膜製造用原料は、下記式で示される有機ニッケル化合物からなる。この原料については、反応ガスとしてアンモニアを適用することで、窒素を含有するニッケル膜(NiNx(x=0.06〜0.33))を製造することができる。このニッケル膜中の窒素は、適宜に熱処理することで除去可能であり、これにより高純度のニッケル薄膜を得ることができる。
特許第5352024号明細書
ところで、化学蒸着法においては、使用する有機金属化合物の種類に応じた反応ガスを原料ガスに同伴させて反応器に導入し成膜することが一般的となっている。上記従来の有機ニッケル化合物も、水素(特許文献1)やアンモニア(非特許文献1)を反応ガスとしている。薄膜の成長は、原料化合物の分解により進行するが、加熱のみで十分に分解する原料化合物はさほど多くはない。そこで、反応ガスにより原料化合物の分解をアシストして金属析出・成膜を促進する。また、反応ガスである水素やアンモニアは還元性ガスであるので、析出した金属の酸化防止の機能も有する。これらから、反応ガスの使用は高純度のニッケル薄膜を得る上で必須の要素と捉えられている。
もっとも、反応ガスは薄膜の純度・品質を確保する上では有用であるが、成膜コストや作業安全性を考慮すれば好ましいものではない。上記で反応ガスとして挙げられた水素やアンモニアは、爆発性・腐食性・毒性が懸念されるガスであり、安全上の問題がある。そのため、成膜設備について安全対策や防食対応が要求されるので、設備コスト上昇を引き起こすこととなる。そして、従来から反応ガスを適用することなく高純度のニッケル薄膜を製造することのできる有機ルテニウム化合物の開発が求められている。
本発明は、上記のような背景のもとになされたものであり、水素等の反応ガスを使用することなくニッケルを析出させることができ、高純度のニッケル薄膜を成膜できるような有機ニッケル化合物を主成分とする化学蒸着用原料を提供する。
本発明者等は、有機ニッケル化合物の熱安定性、熱分解による薄膜の形成過程、及び、反応ガスによる熱分解の促進作用の各項目について考察を行い、以下の知見を得た。
(1)有機ニッケル化合物からの金属ニッケルの析出は、有機ニッケル化合物の熱分解により進行するものであるが、熱分解が起こり易いか否かは中心金属であるニッケルと配位子との結合力の強弱に左右される。従来の化合物は、ニッケルと配位子との結合力が強く、熱分解が容易には起こらない。そのため分解反応を促進するための反応ガスの使用が必要であった。
(2)上記化1、化2で示した従来の有機ニッケル化合物は、2価の正電荷を有するニッケルイオンに、1価の負電荷を有する配位子が2つ配位したものである。このような有機ニッケル化合物が分解して金属膜(電荷を持たないニッケル原子の集合体)を形成するためには、次の2つのプロセスを経ることが必要と考えられる。
(a)中心金属と配位子間の距離が大きくなり結合が切れる。
(b)中心金属、配位子が持つ電荷が中和されゼロ価になる。
(a)のプロセスは、加熱温度を高くして分子の熱運動が激しくなるようにすることで達成される。一方、(b)のプロセスを達成するためには、中心金属に電子を与えるための還元剤あるいは配位子から電子を取り去るための酸化剤の使用が必要である。上記化1、化2で示した従来の有機ニッケル化合物の場合、これら(a)、(b)の双方のプロセスの達成が必要であった。
本発明者等は、これらの知見から課題解決の方策として、上記(a)、(b)のプロセスの双方の達成ではなく、(a)のみの達成により金属ニッケルを析出させることができる有機ニッケル化合物の採用が好適であるとした。そして、その具体的手段として、中心金属ならびに配位子が共に電荷を持たないゼロ価のニッケル錯体(有機ニッケル化合物)の適用に想到した。原料段階からゼロ価のニッケル錯体を用いれば、熱分解(上記(a)プロセスの達成)によりゼロ価の金属原子と配位子に分離する。分離した配位子は電荷を持たない低分子量の有機化合物であるため容易に蒸発し、気相中に拡散する。従って、上記(b)のプロセス達成の有無を考慮する必要がなく、析出した金属膜の汚染の懸念もなく純粋な金属膜が得られやすくなる。
更に、本発明者等は、加熱のみでも十分な分解を可能とするため、従来の有機ニッケル化合物よりも中心金属と配位子との結合力が弱い有機ニッケル化合物が好適であると考えた。そして、これらの条件を具備しつつ、好適な配位子としてシクロオクタジエン及びアセチレン誘導体が配位するニッケル錯体を見出し、本発明に想到した。
上記課題を解決する本発明は、有機ニッケル化合物からなり、化学蒸着法によりニッケル薄膜又はニッケル化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、前記有機ニッケル化合物は、次式で示される、ゼロ価のニッケルに、シクロオクタジエン及びアセチレン誘導体が配位した有機ニッケル化合物である化学蒸着用原料である。
(式中、X、Xは、炭素数3以上13以下の置換基である。X、Xは同一の置換基であっても良く、相違する置換基であっても良い。)
以下、本発明に係る化学蒸着用原料を構成する有機ニッケル化合物について詳細に説明する。上記の通り、本発明における有機ニッケル化合物は、ニッケルにシクロオクタジエン及びアセチレン誘導体が配位した錯体である。シクロオクタジエン及びアセチレン誘導体は、いずれも電荷を持たないゼロ価の配位子である。従って、加熱による分解によってゼロ価の金属原子と配位子に分離し、反応ガスのアシストがなくとも速やかに金属ニッケルを析出させることができる。
そして、配位子としてのシクロオクタジエン及びアセチレン誘導体は、ニッケル金属との結合力も弱く、加熱のみによる分解・ニッケル析出が期待できる。
ここで、配位子であるアセチレン誘導体の置換基X、Xは、いずれも炭素数3以上13以下の置換基である。このように置換基が導入されたアセチレンの誘導体を配位子とするのは、錯体の安定性を調節するためである。金属の析出を容易にするためには化合物が分解しやすい結合の弱い配位子を用いれば良いが、化合物の安定性が低下しすぎると保管時(室温)でも分解が起こる、あるいは気化させる際の加熱によって分解が起こるといった問題が生じる。本発明においても、配位子として炭素数3以上13以下の置換基を有するアセチレン誘導体を適用することで、熱分解特性を好適なものとしている。アセチレン誘導体の置換基X、Xの炭素数は、10以下とするのが好ましい。尚、置換基X、Xは、炭素原子及び水素原子で構成される炭化水素基の他、炭素、水素以外の原子(窒素原子等)を含む官能基が適用される。
アセチレン誘導体として好ましいものとしては、まず、置換基X、Xとしてトリアルキルシリル基が導入された、ビス(トリアルキルシリル)アセチレンが挙げられる。この態様の有機ルテニウム化合物は、下記式で示される。
(式中、R、R、R、R、R、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R、R、R、R、R、Rは全て同一のアルキル基でも良く、相互に相違するアルキル基であっても良い。)
ビス(トリアルキルシリル)アセチレンを好ましい配位子とする理由は、トリアルキルシリル基という立体的に嵩高い置換基が持つ保護効果によって錯体が適度に安定化されるためである。トリアルキルシリル基よりも嵩高い置換基を導入することで、より安定な錯体を得ることも可能であるが、安定性が高くなり過ぎると熱分解が生じ難くなる他、分子量の増加に伴う蒸気圧の低下により気化が困難となる。よって、熱分解性の確保と蒸気圧の適正化の観点から、アセチレン誘導体としてトリアルキルシリル基を導入したものを配位子とするのが好適であると判断した。
配位子であるビス(トリアルキルシリル)アセチレンについて、R、R、R、R、R、Rは、いずれも炭素数が1以上4以下のアルキル基である。これらは全て同じアルキル基であっても良いし、相違するものであっても良い。炭素数を1以上4以下とするのは、好適な分子量の錯体として、熱分解特性と蒸気圧とのバランスを確保するためである。好適な配位子としては、2つのトリメチルシリル基(R、R、R、R、R、Rの全てがメチル基)が導入されたビス(トリメチルシリル)アセチレンが挙げられる。
また、ビス(トリアルキルシリル)アセチレンに加えて、好適な配位子となるアセチレン誘導体としては、トリアルキルメチル基が導入されたビス(トリアルキルメチル)アセチレンが挙げられる。この態様の有機ルテニウム化合物は、下記式のように示される。
(式中、R、R、R、R10、R11、R12は、炭素数1以上4以下のアルキル基である。R、R、R、R10、R11、R12は全て同じアルキル基でも良く相互に相違するアルキル基であっても良い。)
このトリアルキルメチル基が導入されたアセチレン誘導体が配位子として好適である理由は、トリアルキルシリル基と同様であり、その嵩高さと適切な分子量による好適な分解特性が発揮される点にある。このアセチレン誘導体のR、R、R、R10、R11、R12は炭素数が1以上4以下のアルキル基であるが、全て同じアルキル基であっても良いし、相違するものであっても良い。好適な配位子として、2つのtert−ブチル基(R、R、R、R10、R11、R12が全てメチル基)が導入されたビス(tert−ブチル)アセチレンが挙げられる。
以上の説明の通り、本発明に係る化学蒸着用原料を構成する有機ニッケル化合物は、ニッケルと配位子との適度な結合力を有することで、熱分解のみでニッケル薄膜を生成することができる。そして、電荷を持たないニッケルと電荷を持たない配位子とが錯体形成しているので、分解後の配位子の副反応による薄膜の汚染の心配もない。これらにより、成膜時に反応ガスは不要となり、反応ガスの危険性・毒性等を懸念する必要がなく成膜の効率向上、コスト削減を図ることができる。特に、窒素雰囲気下で高品位の成膜を可能とすることのメリットは大きい。
また、本発明者等によれば、本発明で適用する有機ニッケル化合物は、高真空度での成膜が可能であることが確認されている。これにより、薄膜の酸化防止のため装置内を真空にすることが許容される。本発明では、ニッケル膜の酸化に配慮して還元性ガスを使用する必要もない。
本発明で適用する有機ニッケル化合物の製造方法としては、比較的入手容易なニッケル錯体であるビス(シクロオクタジエン)ニッケルを原料とし、ここに配位子となるアセチレン誘導体を反応させることで製造できる。この合成反応は、適宜の溶媒(テトラヒドロフラン(THF)等)にビス(シクロオクタジエン)ニッケルと、ニッケル錯体に対して過剰量(1倍以上10倍以下)のアセチレン誘導体を添加することで進行する。この合成反応の温度は、−100℃以上25℃以下とするのが好ましい。
そして、本発明に係るニッケル薄膜形成のための化学蒸着法では、原料であるニッケル化合物を真空中、加熱することにより気化させて原料ガスを発生させる。この原料ガスを基板がセットされた反応器に導入し、基板表面で加熱することで錯体を熱分解させてニッケル薄膜を形成させる方法である。
ここで、本発明に係る化学蒸着用原料は、反応ガスを使用することなく加熱のみでニッケル膜を製造することができる。つまり、反応器内が不活性ガス雰囲気であっても成膜反応を進行させることができる。この点、原料ガスを反応器へ導入する際にはキャリアガスの使用が一般的であるが、本発明ではこのキャリアガスとして不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴン等)を使用することができ。そして、この不活性ガスによる原料ガス供給のみでニッケル膜を製造することができる。特に、コスト面から窒素の適用が好ましく、本発明では窒素気流下であっても高純度のニッケルを成膜できる点にメリットがある。
また、上記したように、本発明に係る化学蒸着用原料は、高真空度での成膜が可能である。具体的には、反応器内の真空度を10,000Pa以下としてニッケル膜を成膜できる。より好適な真空度は10〜1,000Paである。このように反応器内を真空にすることで、成膜したニッケルの酸化を抑制することができる。反応器内の真空度の下限は、現実的側面から1pa以上とするのが好ましい。
尚、成膜ための加熱温度は100〜350℃とすることができる。100℃未満では、成膜反応が進行し難く必要な膜厚が得られ難い。高温過ぎると、均一な膜厚の薄膜を形成し難くなり、また、膜中に不純物が混入しやすくなる。加熱温度は150〜250℃とするのがより好ましい。
以上の通り、本発明の化学蒸着用原料によれば、反応ガスを使用することなく、不活性ガス雰囲気下及び高真空度雰囲気下であってもニッケル膜を製造することができる。本発明により成膜されたニッケル膜は、高純度・高品質である。
本実施形態で製造した有機ニッケル化合物([Ni(COD)(L)]{1,COD=1,5−シクロオクタジエン,L=1,2−ビス(トリメチルシリル)アセチレン}のH−NMRスペクトル。 本実施形態で製造した有機ニッケル化合物のTG−DTA曲線。 本実施形態で成膜したニッケル膜の表面及び断面写真。 本実施形態で成膜したニッケル膜のXRDプロファイル。 本実施形態で成膜したニッケル膜のXPS分析結果。
以下、本発明における最良の実施形態について説明する。本実施形態では、以下の工程によりニッケル薄膜の化学蒸着用原料である、下記の有機ニッケル化合物([Ni(COD)(L)]{1,COD=1,5−シクロオクタジエン,L=1,2−ビス(トリメチルシリル)アセチレン}を製造した。そして、その物性評価、成膜試験を行った。
[有機ニッケル化合物の製造]
ビス(シクロオクタジエン)ニッケル([Ni(COD)]100mg(0.36mmol)を入れた三口フラスコに、テトラヒドロフラン3.0mLを加え、さらにビス(トリメチルシリル)アセチレン276mg(1.39mmol:ビス(シクロオクタジエン)ニッケルに対して3.9倍量)を加えた。そして、溶液を−15℃に保持し12時間攪拌して合成反応を進行させた(下記反応式)。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣にメタノールを3.0mL加えて抽出した。更に、抽出液をろ過した後、−35℃にて一晩静置して再結晶を行った。本実施形態に係る有機ニッケル化合物の黄色結晶101mg(0.30mmol)を得た。収率は83%であった。尚、以上の操作は、窒素雰囲気にて行っている。製造した化合物について、H及び13C{H}NMR分析(日本電子株式会社製 JNM−AL300)を行った(25℃、窒素雰囲気)。図1にその分析結果としてH−NMRスペクトルを示す。
[物性評価]
上記で製造した有機ニッケル化合物について、熱分解特性と蒸気圧を評価・測定した。熱分解特性(TG−DTA)の分析は、エスアイアイ・ナノテクノロジー製のTG/DTA7300を用いて、窒素気流下(100cc(標準状態)/min)、15mgの有機ニッケル化合物を昇温速度10℃/minにて室温から500℃まで加熱した際の試料の重量変化を観察した。この測定結果を図2に示す。
図2のTG−DTA曲線によれば、83℃付近で吸熱ピークが観察されるが、このときの重量減が見られない。本実施形態の有機ニッケル化合物は、この温度で融解を開始するが、分解は生じていないことが分かる。そして、重量減は110℃付近から開始し、吸熱ピークが見られる約200℃で完了している。その後の重量減は極めて緩やかであることから、この200℃付近までの加熱でほぼ全量の化合物が分解したと考えられる。従って、本実施形態の有機ニッケル化合物は約200℃で熱分解を完了させることができ、加熱のみで達成されることが確認できた。
また、本実施形態の有機ニッケル化合物は常温で固体ではあるものの揮発性が高い。減圧条件では低い温度にて昇華を行うことが可能である。昇華精製を行った際の温度と圧力は45℃、90Paであった。この結果から、本実施形態の有機ニッケル化合物は、化学蒸着用原料として好適な蒸気圧を有するものであることが確認できた。また、この有機ニッケル化合物は、低温で昇華することができること、及び、この特性を活かして昇華法での精製が可能であることが分かった。
[成膜試験]
本実施形態の有機ニッケル化合物を原料として、チューブ型化学気相蒸着(CVD)装置を用いニッケル薄膜を形成した。基板は酸化シリコン(SiO)基板を用いた。成膜条件は、次の通りである。尚、本発明の目的により反応ガスは使用しない。
成膜条件
試料加熱温度:55〜60℃
基板加熱温度:200℃
キャリアガス:窒素10sccm
反応器圧力:75Pa
成膜時間:30分
ニッケル膜を製造後、窒素気流下、300℃で1時間アニーリングし、このニッケル膜についてSEM観察、面粗さ評価(AFM)、抵抗測定、膜の組成評価(XRD、XPS)を行った。
図3は、本実施形態で成膜したニッケル膜の表面及び断面写真である。これらの写真から本実施形態で形成されたニッケル膜は、連続的で平滑な薄膜である。ひび割れ、穴、島状の凝集といった欠陥は観察されなかった。また、AFM(原子間力顕微鏡)にて薄膜の面粗さ(自乗平均面粗さ(RMS))を測定したところ、11nm(膜厚:約150nm)であった。これらから、このニッケル薄膜は、形態的に良好な状態にあるといえる。
また、図4にXRD(X線回折分析)によるX線プロファイルを示す。2θ=44.3°及び52°付近に鋭いピークが観察されるが、これはfccであるニッケルの(111)面、(200)面のピークである。このX線プロファイルには、それ以外のピークは見られず、薄膜中にはニッケル以外の合金相、化合物相の形成はないことが確認された。また、図5にはXPS(X線光電子分光分析)の分析結果を示す。この結果からも、薄膜が金属ニッケルで構成されていることが確認された。ニッケル以外のピークはほぼみられず、炭素による汚染がわずかに見られたが、それも1%未満であった。これらのXRD及びXPSの結果から、本実施形態で成膜したニッケル膜は高純度のニッケルからなることが分かった。そして、本実施形態の有機ルテニウム化合物がCVD用原料として好適であることが確認できた。
そして、ニッケル膜の比抵抗を4端子法で測定したところ、43μΩcmであった。この値は、純ニッケル(比抵抗:約6μΩcm)と対比すれば高い値ではあるものの、他のニッケル原料で製造される薄膜と対比しても良好な数値であった。本実施形態のニッケル膜はデバイスの電極材料としての利用可能性を示すことが確認できた。
本発明に係る原料は、反応ガスを使用することなく、窒素気流下で高真空度の環境であってもニッケル薄膜を形成させることができる。従って、反応ガスの危険性等を気にすることなく設備設計・工程管理を進めることができ、製造コスト低減に資する。本発明は、各種デバイスの電極材料等に好適なニッケル薄膜の原料として有用である。

Claims (5)

  1. 有機ニッケル化合物からなり、化学蒸着法によりニッケル薄膜又はニッケル化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、
    前記有機ニッケル化合物は、次式で示される、ゼロ価のニッケルに、シクロオクタジエン及びビス(トリアルキルシリル)アセチレンが配位した有機ニッケル化合物である化学蒸着用原料。
    (式中、R 、R 、R 、R 、R 、R は炭素数1以上4以下のアルキル基である。R 、R 、R 、R 、R 、R は全て同一のアルキル基でも良く、相互に相違するアルキル基でも良い。)
  2. 有機ニッケル化合物からなり、化学蒸着法によりニッケル薄膜又はニッケル化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、
    前記有機ニッケル化合物は、次式で示される、ゼロ価のニッケルに、シクロオクタジエン及びビス(トリアルキルメチル)アセチレンが配位した、有機ニッケル化合物である化学蒸着用原料。
    (式中、R 、R 、R 、R 10 、R 11 、R 12 は炭素数1以上4以下のアルキル基である。R 、R 、R 、R 10 、R 11 、R 12 は全て同一のアルキル基でも良く、相互に相違するアルキル基でも良い。)
  3. 有機ニッケル化合物からなる原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを反応器に導入してニッケルを析出させるニッケル薄膜又はニッケル化合物薄膜の化学蒸着法において、
    前記原料として請求項1又は請求項2記載の化学蒸着用原料を用い、反応ガスを使用することなくニッケルを析出させる化学蒸着法。
  4. 原料ガスのキャリアガスとして不活性ガスを適用し、窒素気流下でニッケルを析出させる請求項3記載の化学蒸着法。
  5. 反応器内の真空度を1Pa以上10,000Pa以下とする請求項3又は請求項4記載の化学蒸着法。
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