以下、図面に基づいて本発明に係る共用車両管理装置の一実施の形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明に係る共用車両管理装置10を、複数のユーザが、複数のステーションに配置された、複数の共用車両を共用するカーシェアリングシステムを管理運営する共用車両管理システム1に適用した一具体例である。本実施形態のカーシェアリングシステムを概説すると、一のステーション(出発ステーション)から借り出した共用車両を、他のステーション(帰着ステーション)へ返却することが許される、いわゆるワンウェイカーシェアリングシステム(乗り捨て型カーシェアリングシステムとも称される。)である。勿論、このワンウェイカーシェリングシステムでは、出発ステーションと帰着ステーションが同じステーションであってもよい。また以下の説明では、共用車両Vとして二次電池のみを駆動エネルギとする電気自動車を用いた実施形態を示すが、二次電池とガソリン又は軽油を駆動エネルギとするハイブリッド自動車や、ガソリン又は軽油のみを駆動エネルギとする内燃機関自動車にも本発明を適用することができる。
図1Aは、本実施形態の共用車両管理システム1の概要図であって、ユーザが共用車両を利用する手順を説明するための図である。ユーザは、ユーザ端末装置3Xを操作することで本実施形態の共用車両管理システム1を利用する。すなわち最初に、共用車両管理装置10が管理する複数のステーションST1,ST2,ST3の中から、任意のステーションを、共用車両V1,V2を借りるためのステーション(出発ステーション)として設定するとともに、当該出発ステーションに駐車している共用車両V1,V2の利用予約を設定する。また、これと同時に又は返却する際に、共用車両V1,V2を返却するためのステーション(帰着ステーション)を設定するとともに返却の設定をする。これにより、ユーザは、出発ステーションに駐車している、予約した共用車両V1,V2に乗車して共用車両を利用し、その後、利用した共用車両V1,V2を、予め設定した帰着ステーションに返却する。こうした手順でワンウェイカーシェアリングシステムを利用する。
本実施形態の共用車両管理システム1の利用手順について、図1Aに示す場面を例に挙げてさらに具体的に説明する。なお、図1Aに示す場面例では、共用車両管理装置10が管理するステーションとして3つのステーションST1〜ST3が存在し、これらのステーションST1〜ST3のうち、ステーションST1には共用車両V1が、ステーションST2には共用車両V2がそれぞれ駐車し、これら共用車両V1,V2がユーザにより利用可能な状態にあるものとする。
図1Aに示す場面において、ユーザはステーションST1からステーションST2へ行きたいものとする。この場合には、ユーザがユーザ端末装置3Xを操作することで、ステーションST1を出発ステーションとして設定するとともに、ステーションST1に駐車している共用車両V1の利用予約を設定し、併せて、ステーションST2を帰着ステーションとして設定する。そして、ユーザは、ステーションST1から共用車両V1に乗車し、所望の経路を辿って用事を済ませたのちステーションST2へ移動するか、又はステーションST1からそのままステーションST2へと移動し、ステーションST2に共用車両V1を返却するとともにユーザ端末装置3Xを操作して返却の設定をする。これにより、共用車両V1の利用が終了する。このとき、共用車両管理装置10は、ユーザが所持するユーザ端末装置3Xと、共用車両V1に搭載された車載装置との間で情報通信を行うことで、ユーザによる共用車両V1の利用状況を管理したり当該ユーザに課金したりする。こうしたワンウェイカーシェアリングシステムは、特に限定されないが、自宅と最寄駅との間の通勤、繁華街での買い物、観光地での観光所巡りなど、短距離又は短時間の車両の利用に適している。借りた場所に返却するといった従来のラウンドトリップ型カーシェアリングシステムでは、出発ステーションに共用車両を返却する必要があるため、一日単位の利用形態には適しているものの短時間又は短距離の利用形態には向かないからである。
図1Bは、このような共用車両管理システム1を示すブロック図である。図1Bに示すように、本実施形態の共用車両管理システム1は、共用車両管理装置10と、複数のユーザに利用される複数の共用車両V1〜Vnにそれぞれ搭載された車載装置2V1〜2Vnと、複数のユーザがそれぞれ所持するユーザ端末装置3X1〜3Xmと、を備える。本実施形態の共用車両管理システム1を構成する、車載装置2V1〜2Vnと、ユーザ端末装置3X1〜3Xmの各台数は特に限定されない(すなわち、m,nはいずれも自然数であればよい)。以下、共用車両V1〜Vnを総称する場合は共用車両Vといい、車載装置2V1〜2Vnを総称する場合は車載装置2Vといい、ユーザ端末装置3X1〜3Xmを総称する場合はユーザ端末装置3Xという。
共用車両管理装置10、車載装置2V1〜2Vn及びユーザ端末装置3X1〜3Xmは、それぞれ通信装置12,22,32を備え、インターネットなどの電気通信回線網4を介して相互に情報の送受信が可能とされている。通信経路は有線であっても無線であってもよい。
本実施形態のユーザ端末装置3Xは、本発明の共用車両管理装置に係るユーザ端末装置3Xに適用されるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、各機能を実行させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。本実施形態のユーザ端末装置3Xは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン又はPDA(Personal Digital Assistant)その他の可搬型の端末装置であってもよい。
本実施形態のユーザ端末装置3Xは、各ユーザによる共用車両Vの利用を求める利用要求などの入力情報を受け付ける入力装置31と、共用車両管理装置10などの外部装置と通信を行う通信装置32と、各ユーザに情報を通知するための表示装置33と、を備える。これらの機能は、ユーザ端末装置3Xにインストールされたアプリケーションソフトウェアにより実行してもよい。
ユーザ端末装置3Xの入力装置31としては、たとえば、ユーザの手操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されるタッチパネル、ジョイスティック、ユーザの音声による入力が可能なマイクなどの装置を用いることができる。表示装置33としては、ディスプレイなどが挙げられ、タッチパネル・ディスプレイを用いる場合には、入力装置31と兼用することができる。
本実施形態において、ユーザ端末装置3Xは、各ユーザから入力された共用車両Vの利用を求める利用要求などの入力情報を、通信装置32を介して、共用車両管理装置10に送信する。このような共用車両Vの利用を求める利用要求には、ユーザのID情報、ユーザが共用車両Vを利用開始するステーションとして設定する出発ステーションの情報、ユーザが利用しようとする共用車両VのID情報、ユーザが共用車両Vを利用後に返却するためのステーションとして設定する帰着ステーションの情報などが含まれる。
本実施形態において、ユーザは、ユーザ端末装置3Xを操作することで共用車両管理装置10と通信可能とされ、共用車両管理装置10から、各共用車両Vの情報及び各ステーションST1〜STu(uは任意の自然数,以下、ステーションST1〜STuを総称する場合はステーションSTという)の情報を得て、所望の共用車両Vを利用するための利用要求を入力できる。たとえば、ユーザは、ユーザ端末装置3Xを介して、共用車両管理装置10から、利用可能な共用車両Vの情報、出発ステーションとして設定可能なステーションSTの情報及び帰着ステーションとして設定可能なステーションSTの情報を得ることができる。また、得られた情報に基づいて、共用車両Vを借り出す出発ステーションと、出発ステーションに配置された共用車両Vのうち利用する共用車両Vと、利用後の共用車両Vを返却するための帰着ステーションとを設定することで、利用要求を入力する。
加えて、本実施形態において、ユーザ端末装置3Xは、ユーザに対して共用車両Vの走行経路を案内するためのナビゲーション装置として機能するものであってもよい。この場合には、ユーザ端末装置3Xは、たとえば、予めユーザ端末装置3Xに備えられたメモリなどの記憶媒体に地図情報を記憶させておき、表示装置33に、地図情報とともに、ユーザが現在利用している共用車両Vの現在位置、及びユーザが設定した帰着ステーションの位置を表示し、共用車両Vの現在位置から帰着ステーションまでの走行経路を案内するように構成することができる。
本実施形態の車載装置2Vは、各自の共用車両Vの現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)受信機21を備え、GPS受信機21により取得した共用車両Vの現在位置の情報などを、通信装置22を介して共用車両管理装置10に送信する。車載装置2Vは、共用車両Vに搭載されたナビゲーション装置の一部として組み込まれてもよい。
本実施形態の共用車両管理装置10は、共用車両管理システム1のサーバとして機能し、カーシェアリングシステムを管理運営するための制御処理を実行する制御装置11と、通信装置12と、データベース13とを備える。本実施形態の共用車両管理装置10は、ユーザ端末装置3Xを介して入力された利用要求に基づき、一のステーションSTから利用可能な共用車両Vをユーザに貸し出し、当該位置のステーションSTを含む他のステーションSTでユーザから共用車両Vの返却を受け付ける。
図1Cは、共用車両管理装置10に含まれる制御装置11の各機能を示すブロック図である。本実施形態においては、制御装置11は、各ユーザ端末装置3X及び各共用車両Vから、通信装置12を介して受信した情報を、適宜データベース13に記憶させる。そして、制御装置11は、通信装置12が受信した情報及びデータベース13に記憶させた情報に基づいて、ユーザによる共用車両Vの利用及び返却の管理を行う。各機能の詳細は後述する。
図2は、本実施形態に係る共用車両管理システムのステーションSTの配置例を示す平面図である。同図に示す本実施形態においては、図2に破線で示す地図上の所定の利用領域内に、丸印で示す複数のステーションSTが設けられている。そして、ユーザがステーションST1で借りた共用車両Vnを利用し、その後共用車両VnをステーションST2に返却するような場面において、共用車両管理装置10は、ユーザによる共用車両Vnの利用及び返却の管理を行う。なお、図2に示すステーションSTの配置例では、隣り合うステーション間の距離が等しくなるように、各ステーションが配置されているが、配置の態様はこれに限定されるものではない。たとえば、パーソントリップ情報などに基づいて利用ユーザが多いと予想される範囲に多数のステーションを配置し、利用ユーザが少ないと予想される範囲に少数のステーションを配置してもよい。
図1Bに戻り、本実施形態の共用車両管理装置10のデータベース13は、共用車両情報131と、ステーション情報132と、ユーザから受け付けた利用要求情報133と、地図情報134と、各共用車両VのSOC残量情報135と、各共用車両VのSOC消費実績情報136と、各ステーションSTの利用パターン情報137と、充電ステーション情報138とを記憶する。なお、記憶媒体としてのデータベース13は、物理的に一つの記憶媒体で構成してもよいが、上述した各情報を任意の組合せで記憶する複数の記憶媒体で構成してもよい。
データベース13に記憶する共用車両情報131は、各共用車両VのID、車種・車型、出力などを含む情報である。データベース13に記憶するステーション情報132は、各ステーションSTの位置情報、各ステーションSTの最大駐車可能台数、各ステーションSTの駐車台数又は空車台数、目印となる周辺の地名、各ステーションST間の距離や道路勾配などを含む情報である。
データベース13に記憶する利用要求情報133は、各ユーザがユーザ端末装置3Xを用いて入力した共用車両Vの利用を求める入力情報であり、利用要求情報133には、ユーザのID情報、ユーザが利用しようとする共用車両VのID情報、ユーザが共用車両Vの利用を開始するための出発ステーションSTの情報、ユーザが共用車両Vを利用後に返却するための帰着ステーションSTの情報などが含まれる。
データベース13に記憶する地図情報134は、少なくとも図2に示す全てのステーションSTを包含する地図情報であり、道路、ノード間の距離・勾配・道路幅・道路種、建造物の名称などを含む情報である。
データベース13に記憶するSOC残量情報135は、電気自動車である各共用車両Vの二次電池残量を示す情報であり、電気自動車のバッテリコントローラで算出される二次電池のSOC(State of Charge,0〜100%)の実測値を所定時間間隔で読み出して記憶される。なお、ガソリン又は軽油などの石油系燃料を駆動エネルギとする共用車両の場合には、燃料タンクの残量計の情報が車両コントローラにて管理されているので、この実測値を所定時間間隔で読み出して記憶すればよい。
データベース13に記憶するSOC消費実績情報136は、各共用車両Vにおける単位SOC当たりの走行距離に関する情報であり、電力消費率情報、いわゆる電費情報である。本実施形態においては、SOC残量情報135を用いる関係で電費情報としてSOCに基づく消費実績情報を用いるが、電費情報として二次電池の単位容量当たりの走行距離[km/Wh]を用いてもよい。また、内燃機関自動車にあっては単位燃料体積当たりの走行距離[km/リットル]である燃費情報をもちいればよい。
データベース13に記憶する利用パターン情報137は、各ステーションSTにおける出発及び帰着パターンの履歴に関する情報である。たとえば、ステーションST1から出発した共用車両がどのステーションSTnに何回帰着したかという利用実績を示す情報である。この利用パターン情報137は、ユーザが出発ステーション及びそのときの帰着ステーションとした利用パターンの実績がデータベース13に蓄積され、ユーザが利用するたび又は所定時間間隔で更新される。
データベース13に記憶する充電ステーション情報138は、共用車両Vの駆動エネルギを補給する充電ステーションCSTの位置情報、各充電ステーションCSTの最大充電可能台数、各充電ステーションCSTの充電台数又は空車台数、目印となる周辺の地名、各ステーションSTとの距離・道路勾配などを含む情報である。電気自動車を共用車両Vに用いた場合に、充電装置は高価であるため各ステーションSTに充電装置を設けることは費用の面で好ましくない。また、共用車両Vは定期的に保守点検が必要であるため、その設備やスペースも必要とされる。このため本実施形態のワンウェイカーシェアリングシステムでは、図2に示す利用領域内又はこれの近傍の一箇所又は数箇所に充電ステーションCSTを設置することとしている。同図の例では2つの充電ステーションCST1,CST2を利用領域内に設置したものである。そして、詳細は後述するが、共用車両VのSOC残量が所定閾値以下になったり、あるいは保守点検作業が必要になったりすると、作業者がその共用車両Vを充電ステーションCSTまで搬送し、充電処理を行ったのち、再び作業者が所定のステーションSTに搬送する。なお、ステーションSTの幾つかに充電装置や保守点検設備を設置し、そのステーションSTを充電ステーションCSTとして共用してもよい。
以上、データベース13に記憶される各情報のうち、各共用車両VのSOC残量情報135と各共用車両VのSOC消費実績情報136は、その共用車両情報131に関連付けて記憶される。すなわち、特定の共用車両Vの共用車両情報131を抽出すると、現在のSOC残量情報135とSOC消費実績情報136も同時に抽出される。また、ユーザが共用車両Vを利用すると、共用車両管理装置10は、ユーザからの利用要求情報133に基づき、たとえば図3に示すように、ユーザID、車両ID(共用車両VのID)、予約時刻(ユーザから利用要求を受信した時刻)、出発ステーション及び帰着ステーションの情報をデータベース13に記憶する。なお、図3に示す例においては、データベース13には、これらの情報に加えて、さらに、利用状況の情報、すなわち、各共用車両Vの返却が完了したか否か(図3においては、返却が完了したものを「finished」と示した。)の情報を、利用要求情報133ごとに記憶する。
図1Bに戻り、本実施形態の共用車両管理装置10の制御装置11は、カーシェアリングシステムを管理運営する処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)112と、このROM112に格納されたプログラムを実行することで、共用車両管理装置10として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)113とを備える。そしてこの制御装置11は、図1Cに示すように、利用受付機能と、位置監視機能と、返却受付機能と、ユーザ間情報交換機能と、優先度算出機能と、インセンティブ特典算出機能とを実現する。本実施形態の制御装置11は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実現するコンピュータからなる。以下、共用車両管理装置10の制御装置11が実現する各機能についてそれぞれ説明する。
利用受付機能は、ユーザからユーザ端末装置3Xを介して一の共用車両Vの利用を要求する利用要求情報133を取得し、取得した利用要求情報133を、利用要求を受信した時刻(予約時刻)の情報と共にデータベース13に記憶させる機能である。
たとえば、図1Aに示す場面を例に説明すると、まずユーザが、ユーザ端末装置3Xの通信装置32を起動させて共用車両管理装置10にアクセスし、共用車両管理装置10のデータベース13に記憶されたステーション情報132の中から、希望の出発ステーションとしてステーションST1を特定し、出発ステーションとして特定したステーションST1に配置された共用車両Vのうち利用可能な共用車両V1を予約車両として特定し、さらに、データベース13に記憶されたステーション情報132の中から、希望の帰着ステーションとして、ステーションST2を特定する。そして、ユーザが、ユーザ端末装置3Xを用いて、このように特定した出発ステーション(ステーションST1)、予約車両のID(共用車両V1のID)及び帰着ステーション(ステーションST2)の情報を、利用要求情報133として共用車両管理装置10に送信することで、制御装置11が、利用要求を取得する。そして、制御装置11は、ユーザ端末装置3Xから取得したこの利用要求情報133を、利用要求を受信した時刻(予約時刻)の情報と共に、図3に示すように、データベース13に記憶させる。
なお、制御装置11が取得する利用要求情報133としては、ユーザが申込み直後に共用車両Vの利用を開始できる即時利用の申込みでもよいし、ユーザが指定する日時から共用車両Vの利用を開始できる利用予約の申込みでもよい。さらに、制御装置11が取得する利用要求情報133には、ユーザが共用車両Vを帰着ステーションに返却する予定時刻の情報を含んでいてもよい。
位置監視機能は、ユーザが利用している共用車両Vの現在位置の情報を取得する機能である。たとえば、共用車両Vが、車載装置2VのGPS受信機21により取得した現在位置の情報を、車載装置2Vの通信装置22から、共用車両管理装置10に送信することで、制御装置11は、ユーザが利用している共用車両Vの現在位置の情報を取得することができる。
返却受付機能は、ユーザが共用車両Vを帰着ステーションに返却しようとする際に送信する返却要求情報を取得する機能である。たとえば、ユーザが、利用した共用車両Vを帰着ステーションに停車した後に、ユーザ端末装置3Xを操作して、共用車両Vを帰着ステーションに返却する旨の返却要求情報を、ユーザ端末装置3Xを介して、共用車両管理装置10に送信した場合に、制御装置11は、この返却要求を取得する。なお、返却要求情報には、ユーザが利用した共用車両VのID情報及び現在位置情報が含まれる。そして、制御装置11は、通信装置12を介して返却要求情報を受信し、共用車両Vnの返却処理を実行する。すなわち、制御装置11は、受信した返却要求情報に含まれる共用車両VのID情報に基づき、データベース13に記憶された利用要求情報133の中から、該共用車両Vの利用要求情報133を読み出し、該共用車両Vが利用要求情報の帰着ステーションに位置しているか否かを判定し、共用車両Vが帰着ステーションに位置していると判定された場合には、共用車両Vが正しく返却されたものとして返却処理や課金処理を実行する。
ユーザ間情報交換機能は、制御装置11が通信装置12を制御することで、ユーザ端末装置3X間において情報の交換を可能とする機能である。本実施形態におけるユーザ間情報交換機能は、少なくとも、これから共用車両を使用しようとする一のユーザと、共用車両を利用中の他のユーザとの間で情報を交換する機能を有する。またこの情報交換に際し、制御装置11がデータベース13にアクセスすることで、登録されたユーザの中から現在共用車両を利用中のユーザを抽出する。そして、これから共用車両を利用しようとしている一のユーザが、所望の出発ステーションSTnに共用車両Vが存在しないか、存在しても既に予約されていて、いずれにしてもその出発ステーションSTnから共用車両を借りることができない場合に、この一のユーザから現在共用車両を利用中の他のユーザに対して、そのステーションSTnへ現在利用中の共用車両を返却して欲しい旨の要求情報を送信し、これに対する他のユーザからの回答情報を受け付け、これを一のユーザに提示する。
上記背景技術で言及した従来技術のカーポート管理方法では、複数存在するステーション間の車両の偏在は抑制できるものの、共用車両が要求するステーションに短時間で来ることまでは期待できず、したがって上記一のユーザの待ち時間が長くなるだけ、カーシェアリングシステムの稼働率が低下する。そこで、この一のユーザの待ち時間をできる限り短縮するために、共用車両を利用中の他のユーザに直接交渉するのが当該ユーザ間情報交換機能である。
優先度算出機能は、上述したユーザ間情報交換機能を実行するにあたり、交渉相手となる他のユーザが複数存在する場合に、交渉相手としてのユーザに優先順位を付与する機能である。上述したとおり本実施形態のカーシェアリングシステムでは、一のユーザの待ち時間を短縮することが第1目的であるから、一のユーザが希望する出発ステーションST(以下、第1ステーションSTともいう)までの到着時間が短いほど交渉相手として望ましい。したがって、制御装置11は、データベース13にアクセスすることで、共用車両を利用中の他のユーザの現在位置と第1ステーションSTとの距離又は現在位置から第1ステーションSTに至る到着時間を検出し、その距離又はその到着時間が短い他のユーザほど交渉相手としての優先度を高く設定する。ユーザ間情報交換機能により要求情報を受信した他のユーザが、当初設定した帰着ステーションがどこであれ、後述するインセンティブ特典との関係を含めて、その共用車両の利用を続けるよりも一のユーザの要求に答えたい場合もある。こうした状況の場合に、一のユーザの待ち時間が短縮される。
あるいはこれに代えて、制御装置11は、データベース13にアクセスすることで、共用車両を利用中の他のユーザの帰着ステーションと第1ステーションSTとの距離又は帰着ステーションから第1ステーションSTに至る到着時間を検出し、その距離又はその到着時間が短い他のユーザほど交渉相手としての優先度を高く設定してもよい。ユーザ間情報交換機能により要求情報を受信した他のユーザが、当初設定した帰着ステーションが第1ステーションに近く、後述するインセンティブ特典との関係を含めて、その共用車両の返却を当初設定した帰着ステーションを第1ステーションSTに変更し、一のユーザの要求に答えたい場合もある。こうした状況の場合に、一のユーザの待ち時間が短縮される。
さらにこれらに代えて、制御装置11は、データベース13にアクセスすることで、共用車両を利用中の他のユーザの出発ステーションと帰着ステーションを検出し、出発ステーションと帰着ステーションが同じユーザ(いわゆるラウンドトリップ型の借り出し)に比べて、出発ステーションと帰着ステーションが異なるユーザ(いわゆるワンウェイ型の借り出し)ほど交渉相手としての優先度を高く設定する。ラウンドトリップ型の借り出しをするユーザは、ワンウェイ型借り出しをするユーザに比べて、借り出し時間が長いことが経験的に知見されている。また、出発ステーションと帰着ステーションが同じステーションに設定されている場合には、その場所の周辺に自宅があったり、帰宅する際の最寄駅があったりすることも多い。このため、借り出し時間が比較的短い他のユーザの優先度を高くすることで、一のユーザの待ち時間が短縮される。
以上の優先度は、上述したユーザ間情報交換機能を実行する際に、一のユーザの要求情報を送信する順序として利用したり、一のユーザの要求情報は優先度に拘わらず他のユーザに一斉送信し、複数の他のユーザから回答があった場合に一のユーザのユーザ端末装置3Xに表示する順序として利用したりする。詳細は後述する。
一方、共用車両を利用中の他のユーザに対して、その他のユーザが一のユーザが希望している出発ステーションSTまでその共用車両を運転し、このステーションを帰着ステーションに設定してもらうためには、何らかの動機付けがある方が好ましいし、他のユーザにとっても利益となる。そのため本実施形態では、この一のユーザの要求情報に、受諾してくれたユーザに対してはインセンティブ特典を含めることとしている。インセンティブ特典算出機能は、インセンティブ特典の対価値を算出する機能である。インセンティブ特典とは、特に限定されないが、カーシェアリングシステムやその他のサービスで利用できるポイント、割引券、優待券、金券、現金又はノベルティグッズなどの品物のほか、ユーザにカーシェアリングシステムの利用料金を割引いたり、利用料金の一部をキャッシュバックするようにしてもよい。こうしたインセンティブ特典は、カーシェアリングシステムの運営者から、要求を受諾してくれた他のユーザに譲渡してもよいし、又は一のユーザから、要求を受諾してくれた他のユーザに譲渡してもよい。インセンティブ特典の対価値は、上述した優先度が高いほど高くしたり、他のユーザの回答次第(いわゆる競り(オークション)方式)で変動させたりしてもよい。インセンティブ特典の算出方法の一具体例は後述する。
以上のようにして、共用車両管理装置10の制御装置11が実現する各機能により、カーシェアリングシステムの管理運営が行われる。
次に、本実施形態の制御例を説明する。図4は、本実施形態の共用車両管理装置10によるカーシェアリングシステムの制御手順を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローチャートは、一のユーザが、一の共用車両V1を利用するために、出発ステーションとしてステーションST1を設定し、帰着ステーションとしてステーションST2を設定することで利用要求を送信した後、共用車両V1を利用後に返却するまでの基本的な制御手順(通常に借り出し返却する手順)を示すものである。
まず、ステップS1では、共用車両管理装置10の制御装置11は、ユーザから、ユーザ端末装置3Xを介して利用要求情報が送信されたか否かを判定する。なお、利用要求情報には、ユーザのID情報、ユーザが利用しようとする共用車両V1のID、ユーザにより設定された出発ステーション(ステーションST1)及び帰着ステーション(ステーションST2)の情報が含まれる。そして、ステップS1において、利用要求情報が送信されたと判定された場合には、ステップS2へ進む。一方、ステップS1において、利用要求情報が送信されていないと判定された場合には、ステップS1で待機する。
ステップS2では、制御装置11は、利用受付機能により、ユーザのユーザ端末装置3Xから送信された利用要求情報を受信し、利用要求情報を、受信した時刻(予約時刻)の情報と共に、図3に示すように、データベース13に記憶させる。
ステップS3では、制御装置11は、利用要求情報を送信したユーザが、利用要求情報により利用予約した共用車両V1に乗車したか否かを判定する。具体的には、制御装置11は、位置監視機能により、ユーザが利用要求情報により利用予約した共用車両V1の位置を監視し、位置が変動した場合には、ユーザが共用車両V1に乗車したと判定する。そして、ステップS3において、ユーザが共用車両V1に乗車したと判定された場合には、ステップS4へ進む。一方、ステップS3において、ユーザが共用車両V1に乗車していないと判定された場合には、ステップS3で待機する。
ステップS4では、制御装置11は、ユーザから、共用車両V1を帰着ステーションに返却しようとする返却要求情報が送信されたか否かを判定する。なお、ユーザにより送信される返却要求情報には、ユーザのID情報、並びにユーザが利用した共用車両V1のID情報及び位置情報が含まれる。そして、ステップS4において、返却要求情報が送信されたと判定された場合には、ステップS5へ進む。一方、ステップS4において、返却要求情報が送信されていないと判定された場合には、ステップS4で待機する。ステップS5では、制御装置11は、ステップS4でユーザから送信された返却要求を受信する。
ステップS6では、制御装置11は、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1が、共用車両V1に対してステップS2で設定された帰着ステーションST2に位置しているか否かを確認する。ステップS7では、制御装置11は、ステップS5で受信した返却要求情報、及びデータベース13に記憶された利用要求情報133の情報に基づいて、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1のID情報と、該ユーザにより送信された利用要求情報133に含まれる共用車両V1のID情報とが一致するか否かを確認する。
ステップS8では、制御装置11は、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1について、返却処理を完了することができるか否かを判定する。具体的には、制御装置11は、ステップS6及びステップS7で確認した情報に基づいて、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1について、現在位置が、共用車両V1に対して設定された帰着ステーションST2の位置と一致しており、かつ、ID情報が、該ユーザにより送信された利用要求情報133に含まれる共用車両V1のID情報と一致していると判断した場合には、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定する。そして、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定された場合には、ステップS9へ進む。一方、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができないと判定された場合には、ステップS10へ進む。
ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定された場合には、ステップS9へ進み、ステップS9では、制御装置11は、共用車両V1の返却処理を完了させ、ユーザに対して、共用車両V1の利用料金を、たとえばクレジットカードの引き落とし等の方法により課金する。一方、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができないと判定された場合には、ステップS10へ進み、ステップS11では、制御装置11は、共用車両V1の返却処理を中断し、ステップS4に戻り、再びステップS4の返却要求処理を実行する。
以上がユーザによる共用車両Vの貸し出し及び返却手順であるが、次に一のユーザが所望のステーションにおいて共用車両Vを借り出すことができない状況である場合に実行されるユーザ間情報交換処理に関する制御手順について説明する。図5は、本実施形態のカーシェアリングシステムにおける制御前提となる状況を示す図であり、一のユーザAがステーションST1を出発ステーションとして設定したところ、共用車両管理装置10からステーションST1では貸出共用車両がない旨の返信を受けた場合に、一のユーザAが希望すれば、現在共用車両を利用中の他のユーザB,C,Dに対して、その共用車両をステーションST1まで持って来て欲しい旨とインセンティブ特典を含む要求情報を送信し、他のユーザB,C,Dからの回答があった場合には、その回答を一のユーザAに送信するといった場合である。図4のステップS2においては、ユーザからの利用要求を受信して共用車両を貸し出す場合のみを示しているが、実際には、当該ステップS2においてユーザからの利用要求を受信したら、共用車両管理装置10はデータベース13に記録された各ステーションSTの在庫状況及び予約状況から、貸出車両が存在するか否かを判断し、存在しない場合にはそのユーザに対して貸出できない旨の情報を送信する。
図6は、こうした場合に実行される本実施形態の共用車両管理装置によるユーザ間情報交換処理手順の基本例を示すフローチャートである。共用車両管理装置10が、一のユーザAが出発ステーションとして設定したステーションST1に貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1に駐車スペースがあるか否かを判断し、ステーションST1に貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1に駐車スペースがある場合には(ステップS11)、ステップS12において、制御装置11は、データベース13に記憶された共用車両情報131、ステーション情報132及び利用要求情報133を取得し、現在利用中の共用車両を抽出する。また、制御装置11は、通信装置12を用いて、抽出された現在利用中の共用車両の他のユーザB,C,Dのユーザ端末装置3X2,3X3,3X4と、一のユーザAのユーザ端末装置3X1とを通信可能に制御する。この種のユーザ間情報交換機能の通信装置として、汎用ソーシャルネットワークを利用してもよいし、ユーザ間で交換される情報量は少量であるため簡単なソフトウェアを組み込んでもよい。
ステップS13では、一のユーザAから他のユーザB,C,Dに送信される要求情報に含めるインセンティブ特典の対価値を算出する。図7は、ステップS13〜S15のサブルーチンを示すフローチャートである。なお、インセンティブ特典の対価値は一定値としてもよいが、一のユーザAの要求度と、他のユーザB,C,Dの応諾性を高めるために、本実施形態においてはインセンティブ特典の対価値を変動値としている。すなわち、図7のステップS131では、一のユーザAが、共用車両を利用したいレベル(どの程度利用したいかの要求レベル)をユーザ端末装置3X1に入力する。一例として、レベル1は対価の上限を100ポイントとして利用したい、レベル2は対価の上限を250ポイントとして利用したい、レベル3は対価の上限を500ポイントとして利用したい、レベル4は対価の上限を1000ポイントとして利用したい、といったようにポイント額の上限を規定する。たとえば、一のユーザAがどうしても共用車両をステーションST1から利用したい場合はレベル4に設定する一方、一のユーザAは可能であればステーションST1〜利用したい程度であればレベル1を設定する。
ステップS132では、制御装置11はデータベース13にアクセスして、現在利用中の各共用車両のステーションST1までの距離を取得する。この場合に、上述した優先度の設定のように、共用車両を利用中の他のユーザの現在位置と第1ステーションSTとの距離、又は共用車両を利用中の他のユーザの帰着ステーションと第1ステーションSTとの距離を取得する。そして、ステップS133では、取得した距離情報と走行速度推定値とから時間情報へ変換し、ステーションST1に到着するまでの時間を算出する。
ステップS134,S136,S138では、ズテップS133で算出した到着までの時間と比較処理する。すなわち、到着までの時間が5分以内であればステップ135へ進んでステップS131で設定したレベル上限額の100%をインセンティブ特典の対価値とし、到着までの時間が5分を超え10分以内であればステップ137へ進んでステップS131で設定したレベル上限額の70%をインセンティブ特典の対価値とし、到着までの時間が10分を超え15分以内であればステップ139へ進んでステップS131で設定したレベル上限額の50%をインセンティブ特典の対価値とする。到着までの時間が短いほどインセンティブ特典の対価値を高く設定することで他のユーザB,C,Dに対するインセンティブを高め、一のユーザAの待ち時間を短くして共用車両の稼働率を高める趣旨である。
ステップS140では、ステップS131〜S139にて決定したインセンティブ特典の対価値を含む要求情報を他のユーザB,C,Dに送信し、何れかの他のユーザB,C,Dから受諾の回答があれば、ステップS141へ進んで一のユーザAのユーザ端末装置3X1にそのインセンティブ特典の対価値を表示する。ステップS140にていずれの他のユーザB,C,Dからも受諾の回答がない場合は、ステップS142へ進み、予め設定された上限額の低減率、たとえばステップS131にて一のユーザAにより設定された上限額の80%に変更し、ステップS132へ戻り、ステップS132〜S140を繰り返す。このようにして、自動的にインセンティブ特典の対価値を算出する。
図6のステップS14に戻り、上述した図7のステップS140〜S142と一部重複するが、制御装置11は、通信装置12を制御して、算出されたインセンティブ特典の対価値を含む要求情報を他のユーザB,C,Dに送信し、これら他のユーザB,C,Dのユーザ端末装置3X2,3X3,3X4に一のユーザAからの要求情報を提示する。そして、これを見た他のユーザB,C,Dは、応諾する用意がある場合はその要求情報に対する回答を返信し、制御装置11はこれを受信して一のユーザAのユーザ端末装置3X1に提示する。この提示に対して一のユーザAが承諾すれば交渉が成立するが、到着までの時間やインセンティブ特典の対価値が想定外であった場合などのように承諾できない場合は拒否する旨の返答を制御装置11へ送る。ステップS16では、一のユーザAと他のユーザB,C,Dの何れかとの間で交渉が成立し、当該他のユーザB,C,Dの何れかが帰着ステーションをステーションST1に変更したか否かを判断する。他のユーザB,C,Dの何れかが、帰着ステーションをステーションST1に変更した場合にはステップS18へ進み、受諾ユーザとそのインセンティブ特典の対価値の支払い処理を実行する。これに対して、いずれの他のユーザB,C,Dも受諾しない場合は、ステップS17へ進み、一のユーザAのユーザ端末装置3X1に[利用ステーションを変更してください」といったメッセージを提示する。
図8は、本実施形態の共用車両管理装置によるユーザ間情報交換処理手順の他の例を示すフローチャートである。上述した図6に示すユーザ間情報交換処理においては、ステップS11にて、一のユーザAが出発ステーションとして設定したステーションST1に貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1に駐車スペース(空車であっても帰着ステーションとして設定されている場合は駐車スペースはないものとされる)があるか否かを判断し、ステーションST1に貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1に駐車スペースがある場合には、ユーザ間情報交換機能を起動させた。これに対して、本例においては、ステップS21において、一のユーザAが出発ステーションとして設定したステーションST1に貸出車両がない場合であって、当該ステーションST1を帰着ステーションとして設定している共用車両がある場合は、その共用車両に対して返却時間を短縮するべき交渉を行う点が相違する。
すなわち、共用車両管理装置10が、一のユーザAが出発ステーションとして設定したステーションST1に貸出車両がないか否かを判断し、ステーションST1に貸出車両がない場合には(ステップS21)、ステップS22において、制御装置11は、データベース13に記憶された共用車両情報131、ステーション情報132及び利用要求情報133を取得し、現在利用中の共用車両のうちステーションST1を帰着ステーションに設定した共用車両があるか否かを判断し、存在する場合はその共用車両を抽出してステップS23へ進む。また、制御装置11は、通信装置12を用いて、抽出されたその共用車両の他のユーザ(図示はしないがEとする。複数でもよい。)のユーザ端末装置(図示はしないが3X5とする)と、一のユーザAのユーザ端末装置3X1とを通信可能に制御する。
ステップS23では、一のユーザAから他のユーザEに送信される要求情報に含めるインセンティブ特典の対価値を算出する。インセンティブ特典の対価値の算出例は図7に示したとおりである。ステップS24では、制御装置11は、この算出されたインセンティブ特典の対価値を含む要求情報を他のユーザEに送信し、ステップS141へ進んで他のユーザEから受諾の回答があるか否かを判断し、受諾の回答があれば一のユーザAのユーザ端末装置3X1にそのインセンティブ特典の対価値を表示する。ステップS25において受諾の回答がなければステップS26へ進む。なお、ステップS22において一のユーザAが希望するステーションST1を帰着ステーションに設定している共用車両が存在しない場合はステップS27〜S32の処理を実行するが、このルーチンは上述した図6に示す処理と基本的には同じである。
図9は、本実施形態の共用車両管理装置によるユーザ間情報交換処理手順のさらに他の例を示すフローチャートである。本例では、図10に示すように、上述した実施形態の「一のユーザA」が複数あり(A1〜A4とする)、またこれら一のユーザA1からA4のうちユーザA1,A2の要求する出発ステーションがST1、ユーザA3,A4の要求する出発ステーションがST2というように、他のユーザに対して返却を希望するステーションST1,ST2も複数存在する場合のユーザ間情報交換処理の一例を示す。
まず共用車両管理装置10が、一のユーザA1〜A4が出発ステーションとして設定したステーションST1,ST2のいずれにも貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1,ST2のいずれにも駐車スペースがあるか否かを判断し、ステーションST1,ST2に貸出車両がなく、且つ当該ステーションST1,ST2に駐車スペースがある場合には、ステップS41において、制御装置11は、データベース13に記憶された共用車両情報131、ステーション情報132及び利用要求情報133を取得し、現在利用中の共用車両を抽出する。また、制御装置11は、通信装置12を用いて、抽出された現在利用中の共用車両の他のユーザF(複数でもよい)のユーザ端末装置3X6と、一のユーザA1〜A4のユーザ端末装置(図示はしないが3X11〜3X14とする)とを通信可能に制御する。
ステップS42では、一のユーザA1〜A4のそれぞれから他のユーザFに送信される要求情報に含めるインセンティブ特典の対価値をそれぞれ算出する。インセンティブ特典の対価値の算出例は図7に示したとおりである。図10に示すように、一のユーザA1〜A4の各インセンティブ特典の対価値は、1000ポイント、500ポイント、1000ポイント、500ポイントとする。
ステップS44では、一のユーザA1〜A2毎に、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからステーションST1又はST2に至る距離又は到着時間が最も小さいか否かを判断する。本例の場合には、ステーションST2の方が帰着ステーションST3よりも近いものとするので、ステップS44において一のユーザA3,A4(希望ステーションST2)がステップS45へ進み、一のユーザA1及びA2(希望ステーションST1)がステップS48へ進む。ステップS45では、一のユーザA3,A4のインセンティブ特典の対価値を比較し、最も高いユーザ(この場合は1000ポイントユーザA3)はステップS46へ進み、送でないユーザ(この場合は500ポイントのユーザA4)はステップ50へ進む。
ステップS46では、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからの距離又は到着時間が最も短く、且つインセンティブ特典の対価値が最も高いユーザA3の要求情報を他のユーザFに送信する。ステップS47では、他のユーザFからの受諾を判断し、受諾した場合は、最も到着時間が短く且つ最もインセンティブ特典の対価値が高いユーザA3が出発ステーションST2として共用車両を借り出すことができる。
一方、ステップS45において、インセンティブ特典の対価値が相対的に低いユーザA4はステップS50へ進み、インセンティブ情報の残りがあるから(ユーザA1,A2)、ステップS51へ進み、希望するステーションST2のユーザA3,A4の中で次番目にインセンティブ特典の対価値が高いのでステップS46へ進む。他のユーザFが複数存在する場合には、上述したユーザA3の場合と同様に、ステップS46では、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからの距離又は到着時間が最も短く、且つインセンティブ特典の対価値が次番目に高いユーザA4の要求情報を他のユーザFに送信する。ステップS47では、他のユーザFからの受諾を判断し、受諾した場合は、最も到着時間が短く且つ次番目にインセンティブ特典の対価値が高いユーザA4が出発ステーションST2として共用車両を借り出すことができる。
ステップS44において、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからの到着時間が最短ではないユーザA1,A2については、ステップS48へ進むが、ユーザA1,A2のうちの一方についてはインセンティブ情報の残りがあるから、ステップS49へ進み、希望するステーションST1が次番目に到着時間が短いのでステップS45へ進む。そして、ステップS45では、インセンティブ特典の対価値が相対的に高いユーザA1がステップS46へ進み、他のユーザFが複数存在する場合には、上述したユーザA3,A4の場合と同様に、ステップS46では、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからの距離又は到着時間が次番目に短く、且つこのうちインセンティブ特典の対価値が最も高いユーザA1の要求情報を他のユーザFに送信する。ステップS47では、他のユーザFからの受諾を判断し、受諾した場合は、次番目に到着時間が短く且つこのうち最もインセンティブ特典の対価値が高いユーザA1が出発ステーションST2として共用車両を借り出すことができる。
ちなみに、最後に残った、他のユーザFの現在位置又は帰着ステーションからの到着時間が最も長く且つインセンティブ特典の対価値が最も低いユーザA2については、希望するステーションST1からの借り出しを止めるか、途中でインセンティブ特典の対価値を挙げない限り、本例の直接交渉はできず、図示は省略するが、本処理を終了する。
以上のとおり、本実施形態によれば、一のユーザが共用車両を利用しようとして設定した第1ステーションが貸出不可(共用車両が存在しないか、存在しても予約済みである場合を含む)である場合に、その一のユーザが、現在共用車両を利用中の他のユーザとの間で、当該他のユーザの共用車両を第1ユーザが希望するステーションを帰着ステーションに変更する交渉を直接行うことができる。その結果、共用車両Vの稼働率を高めることができる。
また本実施形態によれば、共用車両を利用中の他のユーザの現在位置と第1ステーションとの距離又は現在位置から第1ステーションに至る到着時間を検出し、この距離又は到着時間が短い他のユーザほど交渉相手としての優先度を高く設定するので、一のユーザが交渉を開始してから借り出しできるまでの待ち時間をより短縮することができる。
また本実施形態によれば、共用車両を利用中の他のユーザの帰着ステーションと第1ステーションとの距離又は帰着ステーションから第1ステーションに至る到着時間を検出し、この距離又は到着時間が短い他のユーザほど交渉相手としての優先度を高く設定するので、一のユーザが交渉を開始してから借り出しできるまでの待ち時間をより短縮することができる。
また本実施形態によれば、共用車両を利用中の他のユーザの出発ステーションと返却ステーションを検出し、出発ステーションと帰着ステーションが同じユーザに比べて、出発ステーションと帰着ステーションが異なるユーザほど交渉相手としての優先度を高く設定するので、一のユーザが交渉を開始してから借り出しできるまでの待ち時間をより短縮することができる。
また本実施形態によれば、要求情報には、交渉が成立した場合に付与されるインセンティブ特典情報が含まれるので、交渉の成立率を高めることができる。また、優先度が高いほどインセンティブ特典の対価値を大きく設定するので、稼働率の向上と交渉の成立率の両立を図ることができる。さらに優先度が高いほど他のユーザからの回答情報を優先して提示するので、一のユーザが交渉を開始してから借り出しできるまでの待ち時間をより短縮することができる。
上述した実施形態における共用車両管理装置10の制御装置11は本発明の制御手段、利用受付手段、位置取得手段及び利用可否検出手段に、共用車両管理装置10のデータベース13は本発明の記憶手段に、通信装置12は本発明のユーザ間情報交換手段に、それぞれ相当する。