以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態としての自動原稿搬送装置(ADF)5を備える画像形成装置1の構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、給紙装置2、画像形成部3、及び画像読取部4を有する装置本体1Mと、装置本体1M上に配置されたADF5とを備えたデジタル複合機である。画像読取部4及びADF5は、画像読取装置6を構成している。
給紙装置2は、それぞれカットシート状の転写紙Pを積層状態で収納可能な複数段の給紙カセット21A,21B,21Cを有している。各給紙カセット21A,21B,21Cには、例えば複数のシートサイズから予め選択されたシートサイズの転写紙P(例えば白紙)が、縦又は横の給紙方向に向けて収容されるようになっている。
給紙装置2は、給紙カセット21A,21B,21Cに収納された転写紙Pをそれぞれの最上層側から順次ピックアップして分離給紙する給紙装置22A,22B,22Cを有している。給紙装置2には、更に各種ローラ23等が設けられており、これらによって、各給紙装置22A,22B,22Cから給紙された転写紙Pを画像形成部3の所定の画像形成位置まで搬送する給紙経路24が形成されている。
画像形成部3は、露光装置31と、感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cと、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のトナーが充填された現像装置33K,33Y,33M,33Cとを備えている。また、画像形成部3は、一次転写部34と、二次転写部35と、定着部36とを備えている。
露光装置31は、例えば、画像読取装置6で読み取った画像に基づいて各色の露光用のレーザ光Lを生成するようになっている。また、露光装置31は、レーザ光を各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cを露光して、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cの表層部に読取画像に対応した各色の静電潜像を形成するようになっている。
現像装置33K,33Y,33M,33Cは、それぞれ対応する感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cに薄層状のトナーを近接させるように供給して、静電潜像をトナーにより顕像化する現像を行うようになっている。
画像形成部3は、感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上に現像されたトナー像を一次転写部34に一次転写し、一次転写部34に近接する二次転写部35でそのトナー像を転写紙Pに二次転写するようになっている。また、画像形成部3は、転写紙Pに二次転写したトナー像を定着部36により加熱・加圧して溶融させ、転写紙Pにカラー画像を定着させて記録するようになっている。
画像形成部3は、給紙装置2から給紙経路24を経て搬入された転写紙Pを二次転写部35側に搬送する搬送経路39Aを有している。この搬送経路39Aにおいては、まず、レジストローラ対37において、転写紙Pの搬送タイミング及び搬送速度が調整されるようになっている。そして、転写紙Pは、一次転写部34及び二次転写部35でのベルト速度に同期した状態で二次転写部35及び定着部36を通過した後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
画像形成部3は、手差トレイ25上に載置される転写紙をレジストローラ対37よりも上流側で搬送経路39Aに給紙する手差給紙経路39Bを併有している。
二次転写部35及び定着部36の下方には、それぞれ複数の搬送ローラ及び搬送ガイド等からなるスイッチバック搬送路39C及び反転搬送路39Dが配設されている。
スイッチバック搬送路39Cは、転写紙Pの両面に画像を形成する場合に、任意の一面に画像定着が済んだ転写紙Pを一端から進入させた後に、後退(進入時とは逆方向に移動)させるスイッチバック搬送を行うようになっている。
反転搬送路39Dは、スイッチバック搬送路39Cによりスイッチバック搬送された転写紙Pの表裏を反転させて、レジストローラ対37に再度給紙するようになっている。
これらスイッチバック搬送路39C及び反転搬送路39Dにより、一面に対する画像定着処理を終えた転写紙Pは、その進行方向を逆向きに切り替えられた後に表裏反転されて、再び二次転写ニップに進入する。そして、転写紙Pは、他面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
画像読取部4は、光源及びミラー部材を搭載した第1キャリッジ41と、ミラー部材を搭載した第2キャリッジ42と、結像レンズ43と、撮像部44と、第1コンタクトガラス45とを備えている。これらは装置本体1M側に配設され、第1コンタクトガラス45上を搬送される記録媒体としての原稿シートSの片側の画像面(例えば表側の画像面)の画像読み取りする第1面読取部40を構成している。ここにいう第1面とは、自動搬送される原稿シートSの片面、例えば表側の画像面である。
画像読取部4には、原稿シートSが載置される第2コンタクトガラス46と、原稿シートSの一辺の突当て及び位置決めが可能な突当部材47a等とが併設されている。
第1キャリッジ41は、第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46の下方に、図中の左右方向に移動可能に及び位置制御可能に設けられており、光源からの照明光をミラー部材で反射して露光面側に照射することができるようになっている。原稿シートSで反射した反射光は、第1キャリッジ41及び第2キャリッジ42に搭載された各ミラー部材を経由して結像レンズ43により結像され、撮像部44にてその結像した画像が読み取られるようになっている。
画像読取部4は、光源点灯状態で第1キャリッジ41及び第2キャリッジ42を例えば2:1の速度比で移動させつつ、第2コンタクトガラス46上に置いた原稿シートSの画像面を露光走査することができるようになっている。そして、画像読取部4は、この露光走査時に撮像部44により原稿画像を読み取ることで、固定原稿読取機能(いわゆるフラットベッドスキャナ機能)を発揮できるようになっている。
画像読取部4は、第1キャリッジ41を第1コンタクトガラス45の直下の定位置に停止させることができるようになっている。そして、画像読取部4は、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、自動原稿搬送中の原稿シートSの第1面の画像を読み取る移動原稿読取機能(いわゆるDFスキャナ機能)を発揮できるようになっている。
ADF5は、画像形成装置1の装置本体1Mの上部にヒンジ機構を介して開閉動作可能に連結されている。自動原稿搬送装置5は、画像読取部4における第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を露出させる開放位置と、第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を覆う閉止位置との間で回動操作されるようになっている。
ADF5は、シートスルー方式の自動原稿搬送装置として構成されている。ADF5は、原稿載置台である原稿テーブル51と、各種ローラ及びガイド部材等からなる原稿搬送部52と、画像読み取り後の原稿シートSを集積する原稿排紙トレイ53とを備えている。原稿テーブル51は、カットシート状の少なくとも1枚の原稿シートS、例えば複数枚の原稿シートSの原稿束を載置可能になっている。
画像形成部3は、露光装置31と、感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cと、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のトナーが充填された現像装置33K,33Y,33M,33Cとを備えている。また、画像形成部3は、一次転写部34と、二次転写部35と、定着部36とを備えている。
露光装置31は、例えば、画像読取装置6で読み取った画像に基づいて各色の露光用のレーザ光Lを生成するようになっている。露光装置31は、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cを露光し、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cの表層部に読取画像に対応した各色の静電潜像を形成するようになっている。
現像装置33K,33Y,33M,33Cは、それぞれ対応する感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cに薄層状のトナーを供給して、静電潜像をトナーにより顕像化する現像を行うようになっている。
画像形成部3は、感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上に現像されたトナー像を一次転写部34に一次転写し、一次転写部34に近接する二次転写部35でそのトナー像を転写紙Pに二次転写するようになっている。また、画像形成部3は、転写紙Pに二次転写したトナー像を定着部36により加熱・加圧して溶融させ、転写紙Pにカラー画像を定着させて記録するようになっている。
定着部36に搬送された転写紙Pは、定着部36内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着された後、定着部36から排紙ローラ対に送られ、機外の排紙トレイ38上に排出されるようになっている。
図2に示すように、ADF5は、複数の機能部として、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、排出部F、及びスタック部Gを備えている。上記の複数の機能部のうち、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、及び排出部Fの機能は、主に原稿搬送部52によって実現される。
原稿搬送部52は、少なくともその上方を開閉可能とした給紙カバー部12によって覆われている。給紙カバー部12は、原稿シートSの先端が給紙カバー部12の内部に臨むように給紙口55aを有している。また、給紙カバー部12は、給紙口55aよりも内部に原稿テーブル51の先端が位置するように、原稿テーブル51の先端の上方を覆っている。
原稿搬送部52は、給紙口55aから原稿排紙トレイ53の上方の排紙口55bに至る範囲が、給紙カバー部12の給紙カバー55等に形成されたリブ55cや他のガイド部材等により覆われ、原稿搬送経路56を形成している。
原稿搬送部52は、分離センサ11、突当センサ85、原稿幅センサ86、読取入口センサ87、レジストセンサ88、排紙センサ89を、原稿シートSの搬送方向上流側から下流側へと、この順に配置している。これらのセンサは、原稿搬送経路56における原稿シートSの位置や形状を検知するものである。特に、読取入口センサ87、レジストセンサ88、排紙センサ89は、原稿シートSの搬送距離や搬送速度等の制御並びにジャム検知等に用いられるようになっている。
原稿セット部Aは、原稿シートSの原稿束の給送方向の先端が原稿突当爪28に突き当てられた状態で、原稿テーブル51上に原稿束がセットされるようになっている。原稿シートSが片面原稿の場合には、表面を上向きにした状態で原稿テーブル51に原稿束がセットされるようになっている。
分離給送部Bは、原稿セット部Aの原稿テーブル51に載置された原稿シートSの原稿束から最上位のものを一枚ずつ分離して、原稿搬送経路56の入口に給送するようになっている。
レジスト部Cは、分離給送部Bから順次給送される原稿シートSを一次突当てにより所要の搬送姿勢に整合する機能と、その整合後の原稿シートSを下流側に引き出し搬送する機能を有している。
ターン部Dは、レジスト部Cにより引き出されて搬送される原稿シートSを表裏面が反転するよう折り返し搬送し、原稿シートSの表面を図中の下向きにする反転搬送機能を有している。
読取搬送部Eは、ターン部Dからの折り返し後の原稿シートSを第1コンタクトガラス45上の読取位置20を通過させつつ副走査方向(原稿幅方向である主走査方向に対し直交する方向)に所定速度で搬送するようになっている。
排出部Fは、読取搬送部Eで搬送されて原稿画像読み取りが完了した原稿シートSをスタック部G側に排出するようになっている。
スタック部Gは、排出部Fから順次排紙される原稿シートSをその表面を下向きにしつつ、原稿セット部Aの下方に配置された原稿排紙トレイ53に順次積載するようになっている。スタック部Gに積載される原稿シートSは、原稿セット部Aに載置したときと同じ頁順序であって、その束全体としては原稿面の向きが上下逆に積み重ねられるようになっている。
これら原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、排出部F、及びスタック部Gは、後述する自動原稿搬送制御用のコントローラ部100によって制御されるようになっている。
ADF5は、原稿テーブル51に載置された原稿シートSの原稿束から最上位の原稿シートSを1枚ずつ分離して、原稿搬送部52により、第1コンタクトガラス45上を通る所定の搬送経路で搬送するようになっている。さらに、ADF5は、原稿シートSが第1コンタクトガラス45を通過する際に画像読取部4により原稿シートSの画像を読み取った後、原稿シートSを原稿排紙トレイ53に排紙するようになっている。
原稿シートSが上向きに載置される原稿テーブル51は、原稿搬送部52側を原稿シートSの先端側として、その先端側が下方、その後端側が上方となるように傾斜して配置されている。
また、ADF5は、原稿テーブル51において給送方向に沿って離隔して設けられた原稿長さセンサ81A〜81Cを有している。原稿長さセンサ81A〜81Cは、例えば、公知の反射型フォトセンサで構成されているが、これに限定されず、スプリングやヒンジレバーを備えたアクチュエータの動作を感知するマイクロスイッチやフォトセンサであってもよい。
原稿長さセンサ81A〜81Cは、図2に示すように、原稿シートSの原稿束の先端が原稿突当爪28に突き当たり、原稿テーブル51上に原稿束がセットされた状態で、原稿束の概略の長さを検知するようになっている。ここで、原稿突当爪28は、原稿テーブル51上にセットされる原稿束の姿勢を整えるようになっている。
ADF5は、原稿シートSの原稿搬送方向を基準として給紙口55a側の上流端である原稿テーブル51の先端上部に、原稿テーブル51に載置された原稿シートSにより回動する原稿セットフィラー57を有している。
また、ADF5は、原稿テーブル51の先端寄りの底面付近に、原稿セットフィラー57の先端部の移動軌跡上の最下部を検知することによって、原稿テーブル51に原稿シートSがセットされたか否かを検知する原稿セットセンサ82を有している。原稿セットセンサ82は、原稿セットフィラー57が回動して原稿セットセンサ82から外れたか否かを検知することにより、原稿テーブル51にセットされた原稿シートSの有無を検知する。
また、ADF5は、平坦で板状に形成され第2コンタクトガラス46に対向して配置された圧板部27を備えている。圧板部27は、読み取られる本や原稿を第2コンタクトガラス46に圧接するよう構成されている。
原稿搬送部52は、給紙口55aよりも内側の近傍に配置された呼び出しローラとしてのピックアップローラ58と、原稿搬送経路56を挟んで対向するように配置された無端状の給紙ベルト59及びリバースローラ60(給紙部)とを有している。
ピックアップローラ58は、カム機構を介して上下動し、接触位置において原稿テーブル51に積載された原稿シートSのうち、最上位側から数枚(理想的には1枚)の原稿シートSを摩擦搬送してピックアップして順次分離ユニットに呼び込むようになっている。ここで、分離ユニットは、駆動ローラ71、従動ローラ72、給紙ベルト59、及びリバースローラ60からなる。
給紙ベルト59は、後述する給紙モータ102により駆動される駆動ローラ71により原稿シートSの搬送方向に回転するようになっている。
リバースローラ60は、給紙ベルト59の給送方向と逆方向に回転可能であり、最上位の原稿シートSとその下の原稿シートSとを分離して、最上位の原稿シートSのみを給紙できる構成となっている。また、リバースローラ60は、トルクリミッタを内蔵している。リバースローラ60は、給紙ベルト59に対し所定圧で接しており、給紙ベルト59と直接に接しているか、又は1枚の原稿シートSを介して接している状態では、トルクリミッタが作動し、給紙ベルト59に連れ回りするようになっている。
リバースローラ60は、複数枚の原稿シートSが給紙ベルト59とリバースローラ60との間に進入すると、反時計方向への連れ回り力がトルクリミッタの設定トルクに対応した力よりも低くなる。これにより、リバースローラ60は、本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿シートSを押し戻して、原稿シートSが重送されるのを防止するようになっている。
給紙ベルト59とリバースローラ60との作用により1枚に分離された原稿シートSは、給紙ベルト59によって更に送られ、突当センサ85によって先端が検知され、更に進んで停止している後述する搬送ローラ61に突き当たる。突当センサ85は、給紙ベルト59と搬送ローラ61との間に配置されており、原稿シートSの先端及び後端を検知するよう構成されている。
また、原稿搬送部52は、原稿搬送経路56を挟んで対向するように原稿シートSをニップして搬送するプルアウトローラとしての搬送ローラ61と、読取入口ローラとしての搬送ローラ63と、読取出口ローラとしての搬送ローラ65と、を有している。各搬送ローラは、例えば原稿搬送経路56を挟むように互いに径方向に近接してニップを形成する各一対の又は大小のローラを含んで構成されているが、軸方向における各ローラの配設数は任意である。これらの搬送ローラの配置数や配置場所は、原稿搬送経路56の経路設計や、ADF5が許容する原稿シートSの最小サイズの原稿搬送方向の長さ等に応じて適宜設定される。
原稿シートSは、突当センサ85で検知されてから所定の距離だけ送られ、搬送ローラ61に所定量の撓みを持って押し当てられる。この状態で後述する給紙モータ102を停止させることにより、給紙ベルト59の駆動が停止する。
その際に、後述するピックアップ昇降モータ101の回転により、ピックアップローラ58が原稿シートSの上面から退避する。このようにして、原稿シートSを給紙ベルト59の搬送力のみで送ることにより、原稿シートSの先端が搬送ローラ61の上下ローラ対のニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
搬送ローラ61は、後述するプルアウトモータ113の逆転により駆動されるようになっている。このプルアウトモータ113の逆転時には、搬送ローラ61は駆動されるが、ピックアップローラ58と給紙ベルト59は、駆動されないようになっている。このように、搬送ローラ61を独立した駆動源であるプルアウトモータ113によって駆動することにより、モータの立ち上げ時間及び立ち下げ時間を短縮することが可能となり、生産性が向上する。
搬送ローラ61は、ピックアップローラ58の駆動タイミングに応じて、給紙した原稿シートSの先端を突き当ててスキューを補正するとともに、補正後の原稿シートSを搬送方向に引き出して搬送するようになっている。
なお、搬送ローラ61の駆動によってレジスト部Cからターン部Dに搬送される原稿シートSの搬送速度は、読取搬送部Eにおける原稿シートSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿シートSを読取搬送部Eへ送り込む処理時間の短縮が図られるようになっている。
また、搬送ローラ61の下流側には、原稿幅センサ86が配置されており、搬送ローラ61により搬送された原稿シートSの搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。原稿幅センサ86は、例えば、原稿シートSの幅方向に沿って複数並べた発光素子と、この発光素子と原稿搬送経路56を挟んで対向位置に配置した受光素子とで構成することが可能である。なお、原稿シートSの搬送方向の長さは、原稿シートSの先端及び後端を突当センサ85で読み取ることにより、モータのパルスカウントから検知することができる。
ADF5は、原稿シートSの先端が読取入口センサ87により検出されると、搬送ローラ63の上下ローラ対のニップに原稿シートSの先端が進入する前に、原稿シートSの搬送速度を所定の速度にするために減速を開始する。同時に、ADF5は、読取モータ103を正転駆動して搬送ローラ63及び搬送ローラ65を駆動する。
搬送ローラ63は、原稿読取ガイド91に向かって原稿シートSを搬送するようになっている。搬送ローラ65は、原稿読取ガイド91と対向する画像読取部4の第1コンタクトガラス45を通過し読み取りが完了した原稿シートSを排出部F側に搬送するようになっている。原稿読取ガイド91は、画像読取部4の第1コンタクトガラス45を通過中の原稿シートSをガイドするようになっている。
さらに、原稿搬送部52は、排紙ローラ67と、反転ローラ68と、分岐爪90と、を含む。
排紙ローラ67は、搬送ローラ65で搬送された原稿シートSを、原稿排紙トレイ53に排出するようになっている。また、この排紙ローラ67は、反転ローラ68及び分岐爪90によって反転した原稿シートSを搬送ローラ61に向かって搬送するようになっている。
反転ローラ68は、原稿シートSの表面の読み取りが終わり、更に裏面の読み取りを行う場合に、原稿シートSを原稿排紙トレイ53に排出せずに、分岐爪90をガイドにして搬送ローラ61に向かって搬送するよう、原稿シートSを反転するようになっている。
図3に示すように、給紙カバー部12は、給紙カバー55と、給紙カバー55を開閉する開閉機構13と、開閉センサ18と、を含んで構成されている。給紙カバー55は、原稿搬送部52の一部を覆うカバーとして構成されている。この給紙カバー55は、原稿搬送部52の搬送ローラ61の従動ローラと、原稿セットフィラー57と、を支持している。
開閉機構13は、回動軸及びこの回動軸を支持する軸受などの機構により構成されており、回動軸を中心として給紙カバー55を原稿テーブル51及び原稿搬送部52から離隔する方向に開閉できるようになっている。原稿搬送部52で、搬送途中の原稿シートSがローラなどの構成要素に押し込まれて詰まってしまった場合、ユーザが給紙カバー55を開いて、詰まった原稿シートSを取り出すジャム処理ができるようになっている。
開閉センサ18は、図3に示すように、例えば給紙カバー部12の内部に設けられており、給紙カバー部12の給紙カバー55の開状態及び閉状態を検知するようになっている。この開閉センサ18は、給紙カバー55の開状態及び閉状態を検知するものであればよく、例えば、給紙カバー55が開かれたときに遮蔽部材が退避し光を透過してオンとなる透過型フォトセンサからなる公知の素子で構成される。また、この開閉センサ18は、スプリングやヒンジレバーを備えたアクチュエータの動作を感知するマイクロスイッチであってもよい。
図4に示すように、画像形成装置1は、自動原稿搬送制御用のコントローラ部100と、装置本体制御用の本体制御部111と、本体制御部111に付帯する操作部108とを備えている。
操作部108は、スタートボタン(プリントキー)及びタッチパネル等を有している。コントローラ部100と本体制御部111とは、インターフェース107を介して接続されている。本体制御部111は、操作部108のスタートボタンが押下されると、インターフェース107を介してコントローラ部100に原稿給紙信号や読取開始信号を送信するようになっている。
コントローラ部100は、分離センサ11、開閉センサ18、原稿長さセンサ81A〜81C、原稿セットセンサ82、突当センサ85、原稿幅センサ86、読取入口センサ87、レジストセンサ88、及び排紙センサ89の検知信号を取り込むようになっている。
コントローラ部100は、ピックアップローラ58を昇降するピックアップ昇降モータ101、給紙ベルト59を駆動する給紙モータ102、搬送ローラ63,65、並びに原稿突当爪28を駆動する読取モータ103を作動させるようになっている。
また、コントローラ部100は、排紙ローラ67を駆動する排紙モータ104、搬送ローラ61を駆動するプルアウトモータ113、ピックアップローラ58を回転させるピックアップ搬送モータ115を作動させるようになっている。
コントローラ部100は、原稿シートSの先端をレジストセンサ88にて検知すると、所定の搬送距離をかけて搬送速度を減速し、読取位置20の手前で原稿シートSを一時停止させる。このとき、コントローラ部100は、本体制御部111にインターフェース107を介して搬送停止信号を送信する。以下、この搬送停止信号が送信される時の原稿シートSの先端位置をレジスト位置ともいう。
続いてコントローラ部100は、本体制御部111より読取開始信号を受信すると、一時停止していた原稿シートSを、読取位置20に原稿シートSの先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速して搬送する。
コントローラ部100は、原稿シートSの先端が第1面読取部40に到達するタイミングで、本体制御部111に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号を、原稿シートSの後端が第1面読取部40を抜けるまで送信する。ここで、上記タイミングは、読取入口センサ87により原稿シートSの先端が検知されてからの読取モータ103のパルスカウントにより検出される。
読取搬送部Eを通過した原稿シートSは、排出部Fへ搬送される。この際、コントローラ部100は、排紙センサ89により原稿シートSの先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ67を反時計方向に回転させる。また、コントローラ部100は、排紙センサ89による原稿シートSの先端検知からの排紙モータパルスカウントに基づいて所定パルスだけ原稿シートSを搬送する。この際、コントローラ部100は、原稿シートSの後端が排紙ローラ67の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ104の駆動速度を減速させて、原稿排紙トレイ53上に排出される原稿シートSが飛び出さない様に制御する。
ここで、画像形成装置1における省エネモードについて説明する。省エネモードでは、ユーザが画像形成装置1を使用する際の契機となる、例えば操作部108やADF5の原稿セットセンサ82などにだけセンシング用の電源が供給され、それ以外の電源が切断されるようになっている。このようにして、画像形成装置1では、省エネモード時にセンシング用の電源を除く他の電源をオフすることにより、低消費電力化を図っている。
省エネモード時に原稿シートSが原稿テーブル51にセットされると、原稿セットセンサ82が原稿テーブル51上への原稿シートSのセットを検知することにより、画像形成装置1が省エネ復帰した状態となる。また、画像形成装置1は、省エネモード時に操作部108のタッチパネル等が操作されることによっても省エネ復帰する。
省エネモード中の画像形成装置1は、上記のようにユーザによりADF5に原稿シートがセットされる、又は、操作部108が操作されることにより、ADF5を含む画像形成装置1のイニシャル動作を実行し、画像形成装置1自身を再起動する。この過程を経て初めて画像形成装置1は自動原稿搬送が可能な動作モード状態(ADFレディ)へと復帰する。
そのため、省エネ復帰時においては、ADF5のイニシャル動作の開始から完了までの時間(以下、「ADFイニシャル時間」ともいう)、画像形成装置1を操作することができないようになっている。したがって、省エネモード中の画像形成装置1を使用しようとする場合、ユーザは、ADF5が動作可能な状態に復帰し(ADFレディ)、画像形成装置1の操作が可能な状態になるまで待つことになる。
なお、ADFイニシャル時間に画像形成装置1の操作が不可能となるのは、上記のような省エネ復帰の場合だけでなく、ユーザの操作により画像形成装置1の主電源がオンとなった場合も同様である。
省エネ復帰時には、省エネ復帰信号が本体制御部111から出力され、コントローラ部100で受信される。コントローラ部100が省エネ復帰信号を受信することにより、ADF5の電源がオンとなる。
また、画像形成装置1の主電源がオフからオンとなった場合には、電源オン信号が本体制御部111から出力され、コントローラ部100で受信される。コントローラ部100が電源オン信号を受信することにより、ADF5の電源がオンとなる。電源オン信号と省エネ復帰信号とは、コントローラ部100で異なる信号として受信される。
また、画像形成装置1の主電源がオンの状態で、給紙カバー55が開状態になった場合には開信号、給紙カバー55が閉状態になった場合には閉信号が、それぞれ本体制御部111から出力され、コントローラ部100で受信される。コントローラ部100が開信号又は閉信号を受信することにより、ADF5の電源がオンとなる。
図5は、原稿突当爪28の動作について説明する図である。原稿突当爪28は、原稿テーブル51に載置された原稿シートSの先端が突き当たる姿勢(ホームポジション)と、原稿シートSを給送させるための姿勢と、を取り得るよう構成されている。このような原稿突当爪28の姿勢の変更は、専用のソレノイドではなく、読取モータ103の駆動により行われる。
原稿突当爪28は、原稿シートSが原稿テーブル51にセットされていない場合には、図5(a)に示すように上昇した状態になっている。なお、図5(a)に示す原稿突当爪28の位置を原稿突当爪28のホームポジションとする。
原稿突当爪28は、原稿シートSが原稿テーブル51にセットされているが、操作部108のスタートボタンが押下されていない場合にも、図5(b)に示すようにホームポジションに位置する。
一方、原稿突当爪28は、原稿シートSが原稿テーブル51にセットされて、操作部108のスタートボタンが押下された場合には、図5(c)に示すようにホームポジションから下降した姿勢を取り、給紙可能状態になる。
そして、原稿テーブル51に載置されていた全ての原稿シートSの読取が完了すると、読取モータ103が所定量逆転することにより、原稿突当爪28がホームポジションに戻る。つまり、原稿突当爪28は、原稿シートSが搬送されていない間は、常にホームポジションに位置している。
以下、原稿突当爪28のイニシャル動作について説明する。原稿シートSのセット時には、原稿シートSの姿勢を規制するために、原稿突当爪28がホームポジションに位置していないと搬送性能が低下してしまう。例えば、原稿シートSが曲がった状態で原稿テーブル51にセットされた場合には、スキュー補正が保障できないことがある。
画像形成装置1の主電源オフ時には、ユーザが原稿突当爪28に手を触れるなどして原稿突当爪28がホームポジションから下降している可能性があり、その場合にはスキュー補正に影響が及ぶ場合がある。このため、原稿突当爪28はイニシャル動作の対象となっている。
従来のADFにおいては、イニシャル動作は、下記の条件1〜3のいずれの場合にも行われていた。
条件1:画像形成装置の主電源オン時
条件2:給紙カバーの開閉による省エネ復帰時
条件3:給紙カバーの開閉によらない省エネ復帰時
本実施の形態のADF5では、以下に説明するように、上記の条件1,2の場合にイニシャル動作を実行し、条件3の場合にはイニシャル動作を実行しない。
<条件1の場合>
図3(a)に示すように、画像形成装置1の主電源オフ時には、ユーザが給紙カバー55を開いて、原稿突当爪28を破線で示すホームポジションから実線で示す位置まで押し下げている可能性がある。このため、条件1の画像形成装置1の主電源オン時には、イニシャル動作を実行して原稿突当爪28をホームポジションに戻す必要がある。したがって、コントローラ部100は、電源オン信号を受信した場合にはイニシャル動作を実行するようになっている。
<条件2の場合>
図3(a)に示すように、省エネモード時にユーザが給紙カバー55を開くと、原稿テーブル51に原稿シートSがセットされた状態と同様に、原稿セットフィラー57の先端部が原稿セットセンサ82に検知されなくなる。このため、画像形成装置1は、省エネ復帰した状態となる。
このとき、給紙カバー55は開状態にあるため、ユーザが原稿突当爪28をホームポジション(破線)から押し下げる可能性がある。このため、条件2の省エネ復帰時には、給紙カバー55が閉じられた後にイニシャル動作を実行して原稿突当爪28をホームポジションに戻す必要がある。したがって、コントローラ部100は、省エネ復帰信号、開信号、及び閉信号を受信した場合には、イニシャル動作を実行するようになっている。
<条件3の場合>
図3(b)に示すように給紙カバー55が閉じた状態では、給紙口55aの狭い隙間δにユーザが指を差し込んで原稿突当爪28に触れることは困難である。このため、給紙カバー55の開閉がなく、原稿シートSが原稿テーブル51にセットされるなどの条件3の省エネ復帰時には、ユーザが原稿突当爪28をホームポジションから押し下げることは現実的に不可能であるため、イニシャル動作を実行する必要がない。
したがって、コントローラ部100は、電源オン信号、省エネ復帰信号、開信号、及び閉信号のうち、省エネ復帰信号のみを受信して省エネ復帰した場合には、イニシャル動作の実行を省略するようになっている。
なお、条件3の場合であっても、必要に応じて原稿突当爪28に対するイニシャル動作を実行できるように、操作部108の操作によってイニシャル動作の実行/不実行を設定可能であることが望ましい。
以上説明したように、本実施の形態のADF5は、画像形成装置1の電源投入時に出力される電源オン信号と、省エネ状態からの復帰時に出力される省エネ復帰信号とを区別して受信するコントローラ部100を有している。そして、コントローラ部100は、電源オン信号を受信した場合には、ADF5の各部を初期化する初期化動作を実行する。これにより、所定の条件を満たした場合のみイニシャル動作を実行することで、画像形成装置1の起動時や省エネ復帰時の騒音を低減することができる。
また、コントローラ部100は、省エネ状態において給紙カバー部12の給紙カバー55が開いた状態から閉じた状態になった場合には、省エネ復帰信号、開信号、及び閉信号を受信して初期化動作を実行する。これにより、所定の条件を満たした場合のみイニシャル動作を実行することで、省エネ復帰時の騒音を低減するとともに、原稿シートSに対するスキュー補正を確実に実行することができる。
また、コントローラ部100は、省エネ状態において給紙カバー部12の給紙カバー55が閉じた状態で、原稿セットセンサ82によって原稿シートSのセットが検知された場合には、省エネ復帰信号を受信して初期化動作を実行しない。これにより、イニシャル動作の実行を省略して、省エネ復帰時の騒音を低減することができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態としてのADF5を備える画像形成装置1について図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
近年、起動時間を必要とする複数の負荷を含む装置であって、装置の動作開始までの経過時間、すなわちADFイニシャル時間を短縮する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された装置は、各負荷の消費電流値を測定し、測定した消費電流値を基に、電源の起動シーケンスを起動時間が最短になるようにシーケンス制御することにより、ADFイニシャル時間のうちの電源起動時間を短縮している。
しかしながら、特許文献2に開示されたような従来の装置は、新たなジョブの原稿シートの搬送を実行する前に、以前のジョブで正常に装置外に排出されずに装置内に滞留した原稿シートを排出する残紙処理をADFイニシャル時間に行っていた。
このため、従来の装置では、残紙処理の時間分ADFイニシャル時間が長くなっており、ユーザによって主電源投入又は省エネ復帰が行われてから、ADFが実際に動作可能な状態(ADFレディ)になるまでの待ち時間が長いという問題があった。
本実施の形態のADF5は、このような従来の課題を解決するものであって、ADFイニシャルが完了してから別途残紙処理を実行することで、ADFイニシャル時間を短縮することを目的とする。
図6に示すように、本実施の形態では第1の実施の形態の構成に加えて、原稿搬送部52が、搬送ローラ62,64と、第1コンタクトガラス45の上方に対向するように配置された第1読取ローラ66と、を有している。
搬送ローラ62は、搬送ローラ61によって引き出し搬送されてきた原稿シートSを原稿搬送経路56の中間のターン部分56aに進入させるターンローラとなっている。
第1読取ローラ66は、コイルスプリング等の付勢部材を用いて第1コンタクトガラス45に向けて付勢されている。この第1読取ローラ66は、原稿シートSが搬送されるとき、第1コンタクトガラス45上に進入する原稿シートSを第1コンタクトガラス45に密着させつつ下流側に移動させるようになっている。
第1コンタクトガラス45を通過した原稿シートSは、第1の読取出口ローラである搬送ローラ64により後述する第2面読取部48側に搬送され、更に第2の読取出口ローラである下流側の搬送ローラ65によって排紙口55b側に搬送されるようになっている。
また、原稿搬送部52は、第1読取ローラ66よりも下流側であって搬送ローラ64と搬送ローラ65との間に位置する比較的直線的な原稿搬送領域内に、第2面読取部48を配置している。第2面読取部48は、第1コンタクトガラス45上を通過した後の原稿シートSの第2面、例えば裏側の画像面を走査するようになっている。
図6に示すように、本実施の形態のADF5は、複数の機能部として、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E1、第2読取搬送部E2、排出部F、及びスタック部Gを備えている。第1読取搬送部E1は、第1の実施の形態での読取搬送部Eに相当する。
原稿テーブル51は、可動原稿テーブル51Aと後端側原稿テーブル51Bとで分割されている。可動原稿テーブル51Aは、軸51Cを回動中心として原稿シートSの束厚に応じて先端が下方に傾くようになっており、後述する底板昇降モータ105を作動させることにより、図6に矢印a、矢印bで示す上下方向に回動するようになっている。
可動原稿テーブル51Aは、原稿搬送部52に向かう原稿シートSの給紙方向と直交する左右方向を位置決めするサイドガイド板54を有している。サイドガイド板54は、可動原稿テーブル51Aと原稿シートSの幅方向基準位置とを一致させるように、可動原稿テーブル51Aの幅方向に相対的に接近・離間可能に配置された一対のガイド板である。
後端側原稿テーブル51Bには、第1の実施の形態と同様の原稿長さセンサ81A〜81Cが設けられている。例えば、原稿長さセンサ81A〜81Cと、サイドガイド板54の対向距離を検知する検知センサとを併用することで、原稿テーブル51に載置された原稿シートSのサイズを検知することができる。
可動原稿テーブル51Aの先端の下方には、ホームポジションセンサ83が設けられている。このホームポジションセンサ83は、可動原稿テーブル51Aが下方に回動してホームポジションに達したことを検知するよう構成されている。
突当センサ85よりも原稿シートSの搬送方向上流側には、可動原稿テーブル51A上の原稿束の上面位置を検出するよう構成されたテーブル上昇センサ84が設けられている。
テーブル上昇センサ84は、可動原稿テーブル51Aの上昇に伴って、可動原稿テーブル51A上の原稿束の最上位の原稿シートSによりピックアップローラ58が上限の位置まで押し上げられたことを検知するよう構成されている。
テーブル上昇センサ84がオンになると、可動原稿テーブル51Aの上昇が停止するようになっている。給紙を繰り返すことで原稿束上面位置が下がりテーブル上昇センサ84がオフになると、可動原稿テーブル51Aを上昇させてテーブル上昇センサ84が再びオンになるように、コントローラ部100による制御が繰り返される。これにより、常に原稿束上面位置が給紙に適した高さに維持される。
そして、原稿テーブル51にセットされた原稿シートSが全て給紙されると、次の原稿束をセットできるように、可動原稿テーブル51Aがホームポジション位置へと下降するようになっている。
本実施の形態のADF5は、原稿テーブル昇降手段(底板昇降モータ105)とピックアップ昇降手段(ピックアップ昇降モータ101)と両方有している。だが、ピックアップローラ58を離間あるいは圧接させる手段としては、両者のうちいずれかのみが構成されていても構わない。
第2読取搬送部E2は、原稿シートSが両面原稿である場合に、その表面画像の主走査位置より下流側でプラテンガラスを通して図中の左斜め上方側から裏面画像を主走査し、原稿シートSを副走査方向に所定速度で搬送するようになっている。
第2読取搬送部E2における第2面読取部48は、原稿シートSの裏面画像を読み取る裏面走査ユニット69と、原稿搬送経路56を挟んで裏面走査ユニット69に対向するシェーディングローラ(第2読取ローラ)70と、搬送ギャップ調整手段等を有している。
裏面走査ユニット69は、原稿シートSの表面(第1面)の画像を画像読取部4の撮像部44で読み取った後の原稿シートSの裏面(第2面)の画像を読み取るようになっている。裏面走査ユニット69としては、CCD等のイメージセンサを利用した縮小光学系タイプや、原稿シートSの横幅方向(主走査方向)に渡るライン形状の光源とイメージセンサを並列的に配置した密着型の等倍光学系タイプの画像読取デバイスが使用可能である。
いずれのタイプの画像読取デバイスであっても、起動時にはデバイスの初期設定を含んだイニシャル動作が必要である。ADFのような限られたスペースに搭載する場合はサイズが小さい密着型イメージセンサ(以下、「CIS」という)を使用してADFの機械高さを低くすることが多い。以下では、裏面走査ユニット69がCISで構成されるものであるとして説明する。
第2読取ローラ70は、裏面走査ユニット69における原稿シートSの浮きを抑えると同時に、裏面走査ユニット69におけるシェーディングデータを取得するための基準白部を兼ねている。なお、原稿シートSは、裏面画像の読み取りを行わない場合には、裏面走査ユニット69を素通りするようになっている。
前述の搬送ギャップ調整手段は、例えば第2読取ローラ70を支持する軸受に付加されており、裏面走査ユニット69と第2読取ローラ70の間のギャップを調整できるようになっている。これにより、裏面走査ユニット69の焦点深度を読取画像品質が損なわれない状態に維持することができる。
図7に示すように、コントローラ部100は、第1の実施の形態の図4に示した構成に加えて、ホームポジションセンサ83、テーブル上昇センサ84の検知信号を取り込むようになっている。
さらに、コントローラ部100は、第1の実施の形態の図4に示した構成に加えて、第2面読取部48、底板昇降モータ105、読取入口モータ114、ソレノイド301、及び離間モータ304を作動させるようになっている。
本実施の形態では、読取モータ103は、搬送ローラ64,65を駆動するようになっている。底板昇降モータ105は、可動原稿テーブル51Aを昇降させるようになっている。読取入口モータ114は、読取入口ローラとしての搬送ローラ63を回転させるようになっている。
コントローラ部100は、原稿シートSの先端が第2面読取部48に到達するタイミングで、本体制御部111に対して第2面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号を、原稿シートSの後端が第2面読取部48を抜けるまで送信する。ここで、上記タイミングは、搬送ローラ64と第2面読取部48の間に配置された排紙センサ89により原稿シートSの先端が検知されてからの読取モータ103のパルスカウントにより検出される。
図8に示すように、第2面読取部48の裏面走査ユニット69は、LEDアレイ、蛍光灯、又は冷陰極管等からなる光源部200を有している。裏面走査ユニット69の動作用の電源(以下、「CIS電源」ともいう)は、コントローラ部100から供給されるようになっている。
第2面読取部48による読取位置に原稿シートSが進入するのに先立って、コントローラ部100から光源部200に点灯信号が送られる。光源部200は、この点灯信号に基づいて点灯し、原稿シートSの第2面に光を照射するようになっている。
裏面走査ユニット69は、主走査方向に並ぶ複数のセンサチップ201と、それぞれのセンサチップ201に個別に接続された複数のOPアンプ回路202と、それぞれのOPアンプ回路202に個別に接続された複数のA/Dコンバータ203とを有している。さらに、裏面走査ユニット69は、画像処理部204、フレームメモリ205、出力制御回路206及びインターフェース回路207(図中ではI/F回路と記す)等を併有している。
センサチップ201は、等倍密着イメージセンサと称される光電変換素子と集光レンズとを具備するものである。原稿シートSの第2面で反射した反射光は、複数のセンサチップ201の集光レンズにより光電変換素子に集光され、画像情報として読み取られるようになっている。
それぞれのセンサチップ201で読み取られた画像情報は、OPアンプ回路202によって増幅された後、A/Dコンバータ203によってデジタル画像情報に変換されるようになっている。
これらデジタル画像情報は、画像処理部204に入力されてシェーディング補正などが施された後、フレームメモリ205に一時記憶されるようになっている。さらに、デジタル画像情報は、出力制御回路206によって本体制御部111に受入可能なデータ形式に変換された後、インターフェース回路207を経由して本体制御部111に出力されるようになっている。
なお、裏面走査ユニット69では、画像処理部204がシェーディング補正を行うため、光源部200を含む各部を用いて、シェーディング補正用の白レベルとなる白基準データ(シェーディングデータ)を生成する処理も行う。
また、裏面走査ユニット69においては、実施される白基準データ生成処理を含むシェーディング補正処理のほか、起動時に、初期設定を含んだCISイニシャルとしての各種の処理が行われる。例えば、該CISイニシャルにおける各種の処理としては、CIS通信異常検出、CIS初期設定、CIS黒レベル確認、CIS白レベル確認、及び、CIS光源異常検出などが自動的に行われる。
ここで、上記CIS通信異常検出とは、裏面走査ユニット69と画像処理ASICとの間での通信異常を検出する処理である。上記CIS初期設定とは、裏面走査ユニット69及び画像処理ASICのレジスタ設定などを行う処理である。上記CIS黒レベル確認とは、画像データの黒レベルが所望の出力レベルになるように調整する処理である。上記CIS白レベル確認とは、画像データの白レベルが所望の出力レベルになるように調整する処理である。上記CIS光源異常検出とは、光源部200からの照明光が所望の明るさかどうかを検出する処理である。
なお、本実施の形態における画像形成装置1においては、主電源の投入時、このCISイニシャルが完了しないと、ADF5が自動原稿搬送の可能なADFレディ状態にならないように設計されている。
以下に、主電源投入時又は省エネ復帰時におけるADF5のイニシャル動作(ADFイニシャル)について具体的に説明する。
図9は、画像形成装置1の主電源投入時又は省エネ復帰時における主な処理の流れを示すフローチャートである。
ここでは、画像形成装置1の電源オフ状態において、画像形成装置1の主電源スイッチがオンされるか、あるいは、例えばユーザによって原稿テーブル51上に原稿シートSがセットされたことで画像形成装置1が省エネモードから省エネ復帰したとする。
まず、ステップS1において、本体制御部111は、自動原稿搬送が可能な動作モードを設定するための主電源を生成する。
なお、動作モードには、例えば、自動搬送モード(ADFモード)や圧板モードなどがある。自動搬送モードは、第1面読取部40を固定して、読取対象の原稿シートSを所定の速度で搬送しながら、第1面読取部40、第2面読取部48の一方又は両方で画像を読み取るシートスルー方式の動作モードである。また、圧板モードは、読取対象の原稿シートSを固定して、第1面読取部40を移動させながら画像を読み取る原稿固定読取方式の動作モードである。また、動作モードとしては、例えば原稿シートSの片面読取モードや両面読取モードなどの読み取り条件も含まれる。
一方、主電源の生成後、ステップS2において、本体制御部111は、動作モードを設定するための起動処理を実行する。該起動処理においては、例えば、画像形成装置1の給紙装置2、画像形成部3、画像読取部4が、それぞれ、初期設定を含んだイニシャル動作(第1面読取部40のイニシャル動作)を実行する。また、本体制御部111は、該起動処理として、後述するADF電源フラグ及びCIS電源フラグをオンさせるための処理を行う。ADF電源フラグ及びCIS電源フラグのオン/オフは、本体制御部111によって制御される。
次いで、ステップS3において、本体制御部111は、動作モードを設定するための起動処理が終了したか否かを判断する。本体制御部111は、該起動処理の終了を判断すると(ステップS3のyes)、ステップS4において、コントローラ部100を介して後述するADFイニシャル(図10参照)を実行する。
一方、該起動処理の終了が判断されなかった場合(ステップS3のno)、該起動処理が終了するまで、このステップS3での判断処理が継続される。
次いで、ステップS5において、本体制御部111は、ADFイニシャルが完了したか否かを判断する。なお、該ADFイニシャルの完了が判断されなかった場合(ステップS5のno)、該ADFイニシャルが完了するまで、このステップS5での判断処理が継続される。
一方、本体制御部111が該ADFイニシャルの完了を判断すると(ステップS5のyes)、ステップS6においてADF5がADFレディ状態となる。そして、本体制御部111は、ステップS7において、コントローラ部100を介して後述するADF制御(図12参照)を実行する。
そして、該ADF制御が実行されたことにより、上述した一連の主電源投入時または省エネ復帰時における各処理が終了し、画像形成装置1は、常に上述した動作モードでの自動原稿搬送が可能な状態となる。
図10は、上記ステップS4において実行される、ADFイニシャルにおける主な処理(ADF電源の立ち上げ)の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、本体制御部111は、ADF電源フラグがオンか否かを判断する。ここで、ADF電源フラグがオンであることは、主電源の投入又は省エネ復帰が行われたことを示している。
本体制御部111は、ADF電源フラグがオンであると判断すると(ステップS11のyes)、ステップS12において、ADF5を自動原稿搬送が可能な動作モードに設定するためのADF電源を生成する。
一方、上記ステップS11において、ADF電源フラグがオンであると判断されない場合(no)、該ADF電源フラグがオンされるまで、このステップS11での判断処理が継続される。
ADF電源の生成が終了すると、ステップS13において、本体制御部111は、ADF5のコントローラ部100を初期設定するためのCPUリセット処理が解除状態にあるか否かを判断する。該CPUリセット処理の解除状態が判断されない場合(no)、該CPUリセット処理が解除されるまで、このステップS13での判断処理が継続される。
一方、本体制御部111は、該CPUリセット処理の解除状態を判断すると(ステップS13のyes)、ステップS14において、コントローラ部100を初期設定するためのCPU初期設定処理を実行する。
次いで、ステップS15において、本体制御部111は、コントローラ部100を介して後述するCISイニシャル(図11参照)を実行する。
次いで、ステップS16において、本体制御部111は、コントローラ部100を介して該CISイニシャルが完了したか否かを判断する。なお、該CISイニシャルの完了が判断されない場合(no)、該CISイニシャルが完了するまで、このステップS16での判断処理が継続される。
そして、該CISイニシャルが実行されたことにより(ステップS16のyes)、上述したADFイニシャルが終了し、ADF5による原稿シートSの自動搬送動作が可能な状態(ADFレディ)となる。
すなわち、主電源投入時又は省エネ復帰時においては、ADFイニシャルとして、ADF電源の立ち上げ後に連続して行われるCISイニシャルが完了して、ADF5が初めてADFレディの状態となる(図14(a)参照)。
図11は、上記ステップS15において実行される、CISイニシャルにおける主な処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS21において、ADF5のコントローラ部100は、CIS電源フラグがオンか否かを判断する。ここで、CIS電源フラグがオンであることは、主電源の投入又は省エネ復帰が行われたことを示している。
上記ステップS21において、CIS電源フラグがオンであると判断されない場合(no)、該CIS電源フラグがオンされるまで、このステップS21での判断処理が継続される。
一方、コントローラ部100は、CIS電源フラグがオンであると判断すると(ステップS21のyes)、ステップS22において、第2面読取部48を原稿シートSの裏面画像の読み取りが可能な状態に設定するためのCIS電源を生成する。
次いで、CIS電源の生成が終了すると、ステップS23において、コントローラ部100は、CIS電源が安定しているか否かを判断する。該CIS電源が安定するまで(no→yes)、このステップS23での判断処理は継続される。
一方、上記ステップS23において、該CIS電源が安定していることが判断された場合(yes)、コントローラ部100は、第2面読取部48に初期設定を含んだ各種の処理を実行させる。
すなわち、第2面読取部48は、ステップS24において、CIS通信異常検出の処理を実行し、その後、ステップS25において、CIS初期設定の処理を実行する。また、第2面読取部48は、該CIS初期設定の処理を実行した後、ステップS26において、CIS黒レベル確認の処理を実行する。また、第2面読取部48は、該CIS黒レベル確認の処理を実行した後、ステップS27において、CIS白レベル確認の処理を実行する。さらに、第2面読取部48は、該CIS白レベル確認の処理を実行した後、ステップS28において、CIS光源異常検出の処理を実行する。
そして、コントローラ部100は、第2面読取部48による該CIS光源異常検出の処理を実行した後、上述したCISイニシャルを終了する。これによって、ADF5は、原稿シートSの自動搬送動作に伴って、裏面画像の読み取りを含む、両面画像の読み取りを行う両面読取モードの設定が可能な状態となる。この後、処理は、上記ステップS16に移行される。
図12は、上記ステップS7において実行される、ADF制御における主な処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS31において、ユーザにより操作部108から原稿シートSの両面読取モードや片面読取モードの指定などの読み取り条件を含む動作モードの設定が行われる。ここでは、例えば、原稿テーブル51上にセットされた全ての原稿シートSに対して同じ読取モードが設定されてもよい。あるいは、それぞれの原稿シートSに対して異なる読取モードが設定されてもよい(例えば、全10枚の原稿シート中、1枚目と10枚目は両面読取モード、その他は片面読取モード等)。
そして、ADF5のコントローラ部100は、後述する残紙処理(ステップS32)を実行する。残紙処理は、ADF5に電源が投入されてから初めて実行されるジョブにおいて、1枚目に搬送される原稿シートSの給紙制御(ステップS34)が開始される前に実行される。
次いで、ステップS33において、コントローラ部100は、該残紙処理が完了したか否かを判断する。なお、該残紙処理の完了が判断されない場合(no)、該残紙処理が完了するまで、このステップS33での判断処理が継続される。
一方、上記ステップS33において、該残紙処理が完了したことが判断された場合(yes)、操作部108のスタートボタンがユーザによって操作されることに伴って、コントローラ部100は、ステップS34〜S37の制御を実行する。上記ステップS34〜S37における給紙制御(ステップS34)、搬送制御(ステップS35)、読取制御(ステップS36)、及び、排紙制御(ステップS37)は、上記ステップS31で設定された動作モードに従って実行される。
すなわち、原稿テーブル51上にセットされた原稿シートSが片面原稿の場合、該原稿シートSは、上記ステップS34での給紙制御によって、原稿テーブル51上より1枚ずつ取り込まれる。原稿テーブル51上より取り込まれた原稿シートSは、上記ステップS35での搬送制御によって、原稿搬送部52を搬送されて読取位置20へと送られる。そして、該原稿シートSは、読取位置20を通過する際に、上記ステップS36での読取制御によって、表面画像が画像読取部4の撮像部44により読み取られる。表面画像が読み取られた原稿シートSは、上記ステップS37での排紙制御によって、原稿排紙トレイ53上へと排紙される。
これに対し、原稿テーブル51上にセットされた原稿シートSが両面原稿の場合、上記ステップS34,S35まで片面原稿と同様の処理が行われる。読取位置20へと送られた原稿シートSは、読取位置20を通過する際に、上記ステップS36での読取制御によって、表面画像が画像読取部4の撮像部44により読み取られる。表面画像が読み取られた原稿シートSは、さらに第2面読取部48へと送られて、裏面画像が第2面読取部48により読み取られる。こうして、一回の搬送動作で表面画像及び裏面画像が読み取られた原稿シートSは、上記ステップS37での排紙制御によって、原稿排紙トレイ53上へと排紙される。
同様にして、原稿テーブル51上にセットされた全ての原稿シートSに対して、上記した一連の動作が繰り返される(ステップS38のno)。そして、原稿テーブル51上の最下位である最終紙の原稿シートSの排紙が完了することにより(ステップS38のyes)、上記ステップS7のADF制御が終了する。
既に述べたように、従来のADFにおいては、ADFイニシャル時に残紙処理が行われていた。これに対して、図14(a)に示すように、本実施の形態では、従来のADFイニシャル時間に占める割合が大きかった残紙処理をADFイニシャルの処理から除外している。
したがって、ADFイニシャル時に残紙処理を行っていた従来の処理と比較して、本実施の形態の処理では、ADFイニシャル時間(ADF電源の立ち上げからADFレディになるまでの時間)が短縮されている。これにより、主電源オン後又は省エネ復帰後に、ユーザが速やかに動作モードの設定(以下、「モード設定」ともいう)を行うことが可能となっている。なお、残紙処理が実行されるタイミングは、「モード設定」の直後であるとよい。
しかしながら、図12の処理では、「モード設定」から「残紙処理」が完了するまで、「給紙制御」の開始を待たなければならない。
そこで、図13のフローチャートに示すように給紙制御(ステップS42)と残紙処理(ステップS44)を並行処理することで、図14(b)に示すように残紙処理による待ち時間を短縮することができる。特に、ADF5に電源が投入されてから初めて実行されるジョブにおいて、1枚目に搬送される原稿シートSが給紙開始からレジスト位置に到達するまでのレジスト到達時間T1よりも、残紙処理時間T2が短い場合には、残紙処理による待ち時間は発生しない。なお、図13の各処理の内容は、図12の処理と同様であるため、説明を省略する。
以下、ADF5のコントローラ部100が実行する残紙処理について具体的に説明する。図6に示すように、搬送方向の最下流のセンサである排紙センサ89は、最下流のローラである排紙ローラ67よりも上流側に配置されている。これは、原稿シートSを確実に原稿排紙トレイ53に落下させ、かつスタック性を良好にするためである。
しかしながら、搬送時に原稿シートSがスリップしたり、モータが脱調したりするなどして、原稿シートSを狙いの距離分搬送することができずに、原稿シートSの後端が排紙センサ89と排紙ローラ67の間に留まってしまうことがあり得る。以下では、このように原稿搬送経路56内に留まった原稿シートを「滞留シート」ともいう。
このとき、滞留シートの後端は最下流の排紙センサ89を通過しているため、排紙センサ89が当該滞留シートを検知できず、そのまま滞留シートが排紙センサ89よりも下流のローラに挟持された状態となる。特に、小サイズ原稿の場合はユーザ自身も気付かずに滞留シートを取り忘れてしまうことが懸念される。しかしながら、仮に排紙ローラ67より下流側にセンサを設けて排紙が完了したかどうかを検知する機構とすれば、滞留シートを無くすことは可能であるがコストアップが生じてしまう。
そこで、本実施の形態のADF5は、このような滞留シートが挟持されている可能性があるローラを回転させて、滞留シートを確実に装置外に排出するようになっている。
一般的に、センサは異なる駆動源によって駆動されるローラの間に配置されることが多い。これは、各ローラへの原稿シートの進入タイミングを把握しやすく、駆動制御をコントロールしやすいためである。
図15(a)のように、排紙センサ89が搬送ローラ65(読取モータ103が駆動源)と排紙ローラ67(排紙モータ104が駆動源)の間に配置されていれば、滞留シートが挟持されているローラの駆動源(排紙モータ104)は1つである。
このように、最下流に配置されたセンサよりも下流側に配置されているローラの駆動源の個数が1つである場合には、仮にADF5の起動時に残紙処理をしなくても、次の原稿搬送動作で滞留シートが先行紙として問題なく排出される。ただし、ユーザに滞留シートの存在を気付かせるためには、残紙処理を実行する方が好ましい。
一方、図6や図15(b)に示すように、排紙センサ89の位置を裏面走査ユニット69の手前に配置する構成もある。この構成では、排紙センサ89の検知情報を、排紙モータ104の制御基準としてだけでなく、裏面走査ユニット69による裏面読取タイミングの基準として兼用することでコスト削減が図られている。
しかしながら、この構成の場合、図15(b)に示すように、読取モータ103及び排紙モータ104をそれぞれ駆動源とする2つのローラ(搬送ローラ65及び排紙ローラ67)に滞留シートが挟持されることもあり得る。
なお、読取モータ103の駆動開始タイミングは排紙モータ104よりも早い。このため、滞留シートが存在した状態で残紙処理を実行せずに新たなジョブの原稿シートの搬送を開始してしまうと、排紙ローラ67が滞留シートを押さえつけたまま搬送ローラ65が回転することになり、残紙を座屈させてしまう。したがって、滞留シートが複数の駆動源によって駆動される複数のローラに挟持されているような場合、残紙処理が必須となる。
残紙処理において、滞留シートの原稿搬送経路56内における長さが最も長いケースは、図15(a),(b)のように、滞留シートが最下流センサである排紙センサ89をぎりぎり通過した状態で滞留している場合である。
このような滞留シートS'を確実に排出するためには、排紙センサ89よりも下流で滞留シートS'を挟持しているローラの駆動源によって、滞留シートS'を「排紙センサ89から排紙ローラ67までの距離」以上の距離分搬送する必要がある。
ここで、「排紙センサ89から排紙ローラ67までの距離」をL1とすれば、レジスト到達時間T1よりも残紙処理時間T2を短くするためには、残紙処理における滞留シートS'の搬送速度をV1=L1/T1以上に設定すればよい。
なお、図15(b)のように、搬送ローラ65と排紙ローラ67に滞留シートが挟持される場合、読取モータ103及び排紙モータ104により駆動される搬送ローラ65及び排紙ローラ67の搬送速度を同速にすることが好ましい。これにより、滞留シートの座屈を防止することができる。
一方、既に述べたように、滞留シートが挟持されるローラの駆動源が1つだけである図15(a)の構成の場合、ステップS34又はS42以降の制御において滞留シートが座屈せずに先行紙として正常排出されるため、残紙処理を行わなくてもよい。
図16は、上記ステップS32又はS44において実行される、残紙処理における主な処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、図15(b)のように、最下流のセンサ89よりも下流側に配置された複数のローラ(例えば、搬送ローラ65及び排紙ローラ67)に滞留シートS'が挟持されている状態を例に挙げて説明する。なお、ステップS51〜S53の各処理と、ステップS54〜S56の各処理は、互いにタイミングを合わせて同時に行われる。
まず、ステップS51,S54において、コントローラ部100は、排紙モータ104と読取モータ103を同時に正転駆動させて、排紙ローラ67と搬送ローラ65を搬送方向に回転させる。このとき、最下流のセンサである排紙センサ89よりも下流に配置された搬送ローラ65及び排紙ローラ67による滞留シートS'の送り量は、排紙ローラ67から排紙センサ89までの距離L1以上となっている。
なお、所望の送り量L1及び搬送速度V1を満たすパルス数及びパルス速度が、排紙モータ104と読取モータ103それぞれについてあらかじめ設定されており、各モータは設定されたそれぞれのパルス速度で駆動されるものとする。
次いで、ステップS52において、コントローラ部100は、排紙モータ104が駆動されてからのパルスカウントが上記パルス数に到達したか否かを判断する。コントローラ部100は、パルスカウントが上記パルス数に到達したと判断すると(ステップS52のyes)、ステップS53において排紙モータ104を停止させる。
一方、パルスカウントが所定パルス数に到達していない場合(ステップS52のno)、パルスカウントが所定パルス数に到達するまで、このステップS52での判断処理が継続される。
また、ステップS52と同時にステップS55において、コントローラ部100は、読取モータ103が駆動されてからのパルスカウントが上記パルス数に到達したか否かを判断する。コントローラ部100は、パルスカウントが上記パルス数に到達したと判断すると(ステップS55のyes)、ステップS56において読取モータ103を停止させる。
一方、パルスカウントが所定パルス数に到達していない場合(ステップS55のno)、パルスカウントが所定パルス数に到達するまで、このステップS55での判断処理が継続される。
次いで、ステップS57において、コントローラ部100は、排紙モータ104と読取モータ103が停止したか否かを判断する。なお、排紙モータ104と読取モータ103の停止が判断されない場合(no)、排紙モータ104と読取モータ103が停止するまで、このステップS57での判断処理が継続される。
そして、排紙モータ104と読取モータ103が停止したことにより(ステップS57のyes)、残紙処理が終了する。
以上説明したように、本実施の形態のADF5は、コントローラ部100が、ADF5に電源が投入されてから所定時間が経過していない場合には、初期化動作の少なくとも一部を実行しない。ここで、所定時間とは、ADF5に電源が投入されてからステップS4のADFイニシャルの処理が完了するまでの時間である。具体的には、本実施の形態におけるADFイニシャルは、従来のADFイニシャル時に行われていた残紙処理を含んでおらず、ADFイニシャルが完了してから残紙処理が別途実行されるようになっている。
これにより、ADFイニシャル時間を短縮することができるので、ユーザによって主電源投入又は省エネ復帰が行われてから操作部が操作可能になるまでの待ち時間を短縮することができる。また、ADF5が起動してから、ユーザが速やかにモード設定を行うことが可能になるため、ユーザが感じる待ち時間に対するストレスを減らすことができる。
また、コントローラ部100は、最下流に配置されたセンサよりも下流側に配置されているローラを原稿シートSの搬送方向に回転させる残紙処理を所定時間経過後に実行する。これにより、ADFイニシャル動作において、残紙処理によるモータ駆動音を発生させることがない。
また、コントローラ部100は、ADF5に電源が投入されてから初めて実行するジョブにおいて、1枚目に搬送される原稿シートSの先端が読取位置20に到達する前に残紙処理を完了する。これにより、残紙処理の完了を待たずに、新たなジョブの原稿シートSの搬送を開始できる。また、給紙制御での紙搬送音(搬送中の原稿シートSが原稿搬送経路56上のガイドと擦れる音)は、残紙処理音を十分に掻き消してしまうレベルであるため、残紙処理と給紙制御が並行して実行される場合には、残紙処理音による耳障りな音を低減できる。
また、コントローラ部100は、残紙処理において、最下流に配置されたセンサよりも下流側に配置されているローラの全てが等しい搬送速度で動作するように制御する。これにより、滞留シートの座屈を抑制することができる。
また、コントローラ部100は、残紙処理において、最下流に配置されたセンサよりも下流側に配置されているローラの送り量が、最下流に配置されたセンサから最下流に配置されたローラまでの距離以上となるように制御する。これにより、原稿搬送経路56内に滞留シートがある場合、確実に滞留シートを排出することができる。
また、コントローラ部100は、最下流に配置されたセンサよりも下流側に配置されているローラの駆動源の個数が1つである場合には残紙処理を実行しない。これにより、残紙処理時間と、残紙処理時に発生する騒音を無くすことができる。
(第3の実施の形態)
続いて、本発明の第3の実施の形態としての自動原稿搬送装置について図面を参照しながら説明する。なお、第1,2の実施の形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
近年、排出原稿の後端残りや整合性を改善する目的で、長さの長い原稿についての最終排出速度を短い原稿に比べて速くする、また薄紙原稿の場合は厚紙原稿に比べて最終排出速度を速くする装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、装置に作動電源が投入されて、記憶手段にシート処理手段が初期化された状態であることが記憶されている場合、シート処理手段に初期化動作をさせないようになっているシート処理装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4に開示された装置は、電源投入後の初期化動作に起因する、処理動作開始の遅延、消費電力の増大、騒音の増大、各処理手段の耐用年数の短縮化等を改善することを目的としたものである。
しかしながら、特許文献3,4に開示されたような従来の装置では、以前のジョブの滞留シートと新たなジョブの原稿シートの排出シートが重なってスタックされてしまい、滞留シートがあったことにユーザが気付きにくいという問題がある。
以下、図6を参照しながら、従来のADFにおける問題点を具体的に説明する。本実施の形態のADF5は、図6に示した全体構成を有するものとする。第2の実施の形態で述べたように、従来のADFにおいては、画像形成装置1の主電源オン時又は省エネ復帰時のADFのイニシャル動作として、残紙処理が行われていた。
しかしながら、第2の実施の形態の図15に示したような位置に滞留シートがある場合というのは稀であるため、主電源オン時及び省エネ復帰時に毎回残紙処理を行うのは効率的でない。
また、毎回イニシャル動作が終わるまで以降のジョブが開始できない、イニシャル動作時に発生する音が耳障りであるというようなデメリットもあるため、イニシャル動作は実施しないという製品設計思想があり得る。
ただし、その場合、主電源オン後又は省エネ復帰後の新たなジョブの1枚目の原稿シートが滞留シートに追いつくことがないタイミングで読取モータ103及び排紙モータ104の動作を開始して、それ以前の別ジョブの滞留シートを排出することが必要になる。
しかしながら、そのようにした場合、当該別ジョブの滞留シートが、後続する新たなジョブの1枚目以降の原稿シートと、原稿排紙トレイ53上で混ざってしまい、両者の判別が困難になるという問題がある。
本実施の形態のADF5は、このような従来の課題を解決するものであって、以前のジョブで滞留シートがあったことをユーザに気付きやすくさせることを目的とする。
以下では、本実施の形態におけるADF5の構成と動作の一例を、図13及び図17(a),(b)を参照しながら説明する。
図17(a)は、主電源オン後又は省エネ復帰後の初回のジョブにおいて原稿シートSが原稿テーブル51にセットされ、それ以前の別ジョブによる滞留シートS'が原稿搬送経路56内に滞留している状態を示している。このとき、滞留シートS'の搬送方向の後端は、排紙センサ89よりも下流にある。
ADF5は、図13のフローチャートの残紙処理(ステップS44)において、最下流の排紙ローラ67及び最下流から2番目の搬送ローラ65を通常の排紙制御(ステップS47)時の搬送速度よりも高速に搬送動作させる。このとき、ADF5は、並行して1枚目の原稿シートSに対する給紙制御(ステップS42)を実行している。
これにより、それ以前の別ジョブで原稿搬送経路56内に滞留した滞留シートS'を高速排出して、図17(b)に示すように、スタック部G上で通常の原稿シートSのスタック位置よりも飛び出させることができる。
その後、初回のジョブの1枚目の原稿シートS以降に搬送される原稿シートは、通常の排紙制御によって通常のスタック位置にスタックされるので、飛び出して積載された別ジョブの滞留シートS'をユーザに気付きやすくさせることができる。
なお、第2の実施の形態の図15(a)に示したように、排紙センサ89の下流側に配置されているローラが1つの場合には、最下流のローラである排紙ローラ67のみを通常の排紙制御(ステップS47)時の搬送速度よりも高速に搬送動作させればよい。
本実施の形態におけるADF5の構成と動作の他の一例を図13及び図18(a),(b)を参照しながら説明する。
図18(a)は、主電源オン後又は省エネ復帰後の初回のジョブにおいて原稿シートSが原稿テーブル51にセットされ、それ以前の別ジョブによる滞留シートS'が原稿搬送経路56内に滞留している状態を示している。このとき、滞留シートS'の搬送方向の後端は、排紙センサ89よりも下流にある。
ADF5は、図13のフローチャートの残紙処理(ステップS44)において、最下流の排紙ローラ67及び最下流から2番目の搬送ローラ65を通常の排紙制御(ステップS47)時の搬送方向と逆方向に搬送動作させる。このとき、搬送ローラ65及び排紙ローラ67による滞留シートS'の送り量は、排紙ローラ67から排紙センサ89までの距離L1以上となっている。これにより、滞留シートS'の後端が排紙センサ89に検知される位置に確実に到達することになる。
このように、滞留シートS'が、排紙センサ89に検知されていない図18(a)の状態から、図18(b)のように検知される状態にすることで、滞留シートS'をジャム検知して、滞留シートS'の存在をユーザに気付かせることができる。
なお、第2の実施の形態の図15(a)に示したように、排紙センサ89の下流側に配置されているローラが1つの場合には、最下流のローラである排紙ローラ67のみを通常の排紙制御(ステップS47)時の搬送方向と逆方向に搬送動作させればよい。
以上説明したように、本実施の形態のADF5においては、コントローラ部100が、ADF5に電源が投入されてから初めて実行するジョブにおいて、原稿シートSの搬送方向の最下流に配置されたローラを搬送動作における搬送速度よりも高速に動作させる。これにより、以前の別ジョブで滞留シートが原稿搬送経路56内にある場合、当該滞留シートを通常のスタック位置よりも下流側の飛び出した位置にスタックさせることで、滞留シートがあったことをユーザに気付かせることができる。
また、コントローラ部100は、最下流に配置されたローラ及び最下流から2番目のローラを、搬送動作における搬送速度よりも高速に動作させる。これにより、滞留シートの後端が、最下流から2番目の搬送ローラに挟持されている場合であっても、以前の別ジョブの滞留シートがあったことをユーザに気付かせることができる。
また、コントローラ部100は、ADF5に電源が投入されてから初めて実行するジョブにおいて、原稿シートSの搬送方向の最下流に配置されたローラを搬送動作における搬送方向と逆方向に動作させる。これにより、滞留シートの後端が最下流のセンサよりも下流にあり、滞留シートが検知されていない状態から、検知される状態にすることで、滞留シートをジャム検知してユーザに気付かせることができる。
また、コントローラ部100は、最下流に配置されたローラ及び最下流から2番目のローラを、搬送動作における搬送方向と逆方向に動作させる。これにより、最下流のセンサが最下流から2番目の搬送ローラの上流にある場合でも、滞留シートをジャム検知してユーザに気付かせることができる。
以上により、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。