実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
図1に実施の形態1にかかる通信システム1のブロック図を示した。図1に示すように、実施の形態1にかかる通信システム1は、第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20、第3のアクセスポイント30が企業内ネットワークを介してファイルサーバ40及び映像配信サービスサーバ41と接続される。第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20、第3のアクセスポイント30は、図1のクライアント端末と無線信号による無線通信を行う。
また、実施の形態1にかかる通信システム1は、各アクセスポイントと無線通信可能な範囲にクライアント端末11、21、22、31、32が存在する。つまり、図1に示した通信システム1では、クライアント端末はいずれも第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20、第3のアクセスポイント30と通信可能である。言い換えると、図1に示した通信システム1では、図中のクライアント端末とアクセスポイントが同一の通信範囲内に存在する。そして、図1では、第1のアクセスポイント10とクライアント端末11との間で通信を確立し、第2のアクセスポイント20とクライアント端末21、22との間で通信が確立し、第3のアクセスポイント30とクライアント端末31、32との間で通信が確率している状態を示している。
また、図1に示したアクセスポイントは、いずれも通信可能な範囲に対してビーコン信号を定期的にブロードキャスト送信する。図1では、ビーコン信号のうち通信が確立しているアクセスポイントとクライアント端末との間のビーコン信号のみを示した。
実施の形態1にかかる通信システム1では、アクセスポイントに搭載される通信設定プログラムと、クライアント端末に搭載される無線通信プログラムと、により複数のアクセスポイントの全通信量を1つの通信範囲内で規定される最大帯域を超えない範囲に抑制しながら、アクセスポイントとクライアント端末との通信帯域を十分に確保する。実施の形態1にかかる通信システム1では、異なる装置に実装される通信設定プログラムと無線通信プログラムとにより、1つの通信制御プログラムを構成する。そこで、以下で、通信システム1の詳細について説明する。
図2に実施の形態1にかかる通信システム1に設置されるアクセスポイントのブロック図を示した。なお、第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20及び第3のアクセスポイント30はいずれも同じ構成を有しているため、図2では第1のアクセスポイント10のみを示した。なお、図2に示したブロック図は、第1のアクセスポイント10において実施の形態1にかかる通信設定プログラムの動作に関係するブロックのみを示したものであり、第1のアクセスポイント10は図示していな他のブロックも含まれる。
図2に示すように、第1のアクセスポイント10は、記憶部50、処理部51、無線通信部52、有線通信部53を有する。記憶部50は、例えば、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリである。記憶部50には、通信制御プログラム、アクセスポイント最大帯域設定値及びクライアント最大帯域設定値が少なくとも格納される。通信制御プログラムは予め記憶部50に格納されているプログラムである。アクセスポイント最大帯域設定値及びクライアント最大帯域設定値は、実施の形態1にかかる第1のアクセスポイント10では、予め記憶部50に格納されているものとする。クライアント最大帯域設定値は、アクセスポイント最大帯域設定値を最大値とする値であり、アクセスポイント最大帯域設定値以下の大きさの値である。なお、アクセスポイント最大帯域設定値は、第1のアクセスポイント10が有するユーザーインタフェースを介してユーザーが入力した値を設定してもよく、工場出荷状態で記憶部50に書き込まれていても良い。また、クライアント最大帯域設定値については、空にしておき、第1のアクセスポイント10が動作する過程で生成することも可能である。
処理部51は、記憶部50から通信設定プログラムを読み出して、実行する。より具体的には、処理部51は、通信設定プログラムを実行することで、アクセスポイント最大帯域設定値に基づく通信帯域制限と、アクセスポイント最大帯域設定値とクライアント最大帯域設定値とを含むビーコン信号の生成とを行う。また、処理部51は、無線通信部52と有線通信部53との間の信号の転送を制御する。さらに、処理部51は、第1のアクセスポイント10に実装されたMACアドレスフィルタリング、マルチSSID機能に関する処理等の各種機能を実現するための処理を行う。
無線通信部52は、受信した無線信号を処理部51が処理可能な信号に変換する処理と、処理部51が送信信号として出力した信号の無線信号に変換する処理とを行う。有線通信部53は、企業内ネットワークと第1のアクセスポイント10とのインタフェース回路である。有線通信部53は、企業内ネットワークとの間で信号の送受信を行う。
続いて、図3に実施の形態1にかかる通信システム1に設置されるクライアント端末のブロック図を示した。なお、クライアント端末11、21、22、31、32は、いずれも同じ構成を有しているため、図3ではクライアント端末11のみを示した。なお、図3に示したブロック図は、クライアント端末11において実施の形態1にかかる通信設定プログラムの動作に関係するブロックのみを示したものであり、クライアント端末11は図示していな他のブロックも含まれる。クライアント端末としては、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末等が想定される。
図3に示すように、クライアント端末11は、記憶部60、処理部61、無線通信部62を有する。記憶部60は、例えば、フラッシュメモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の書き換え可能なメモリである。記憶部60には、無線通信プログラム及びクライアント最大帯域設定値が少なくとも格納される。無線通信プログラムは予め記憶部60に格納されているプログラムである。記憶部60内のクライアント最大帯域設定値は、無線通信プログラムの動作により、クライアント端末11が受信したビーコン信号から抽出された値である。
処理部61は、記憶部60から無線通信プログラムを読み出して、実行する。より具体的には、処理部61は、無線通信プログラムを実行することで、クライアント端末11が受信したビーコン信号からクライアント最大帯域設定値を抽出して、抽出したクライアント最大帯域設定値を記憶部60に格納する。また、処理部61は、無線通信プログラムを実行することで、記憶部60に格納されたクライアント最大帯域設定値に基づく通信帯域制限処理を行う。また、処理部61は、図示を省略した他の処理回路と無線通信部52との間の信号の転送を制御する。図示を省略した他の処理回路は、クライアント端末11がパーソナルコンピュータであれば、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路が想定される。
無線通信部52は、受信した無線信号を処理部61が処理可能な信号に変換する処理と、処理部61が送信信号として出力した信号の無線信号に変換する処理とを行う。
上述したように、通信システム1では、アクセスポイントで通信設定プログラムを実行し、クライアント端末で無線通信プログラムを実行することで、1つの通信範囲内での通信帯域の制御を行う。また、実施の形態1にかかる通信システム1では、クライアント端末における帯域制限の制限値をビーコン信号により伝達する。そこで、まず、実施の形態1にかかる通信システム1で利用されるビーコン信号について説明する。
図4に実施の形態1にかかる通信システム1で利用されるビーコン信号のデータ構造を説明する図を示す。図4に示すように、ビーコン信号は、基本ビーコン情報と拡張ビーコン情報とを含む。基本ビーコン情報は、通信規格(例えば、IEEE801.11シリーズ)において規定されている情報であって、ビーコン信号の基本的な情報である。一方、拡張ビーコン情報は、通信規格において基本的な情報に付加することが許されている情報である。実施の形態1にかかる通信システム1では、拡張ビーコン情報として、クライアント端末側の帯域制限情報となるクライアント最大帯域情報が埋め込まれる。このクライアント最大帯域情報は、記憶部50に格納されているクライアント最大帯域設定値と同じ値である。
続いて、通信設定プログラムの動作と無線通信プログラムの動作とについて具体的に説明する。まず、通信設定プログラムの動作について具体的な説明を行う。通信設定プログラムは、少なくとも、ビーコン信号送出処理と、通信帯域制限処理を行う。ビーコン送出処理では、アクセスポイント内の記憶部50に格納されたアクセスポイント最大帯域設定値と、アクセスポイント最大帯域設定値を最大値としたクライアント最大帯域設定値と、を参照して、クライアント最大帯域設定値を拡張ビーコン情報として含むビーコン信号を送出する。通信帯域制限処理では、アクセスポイント最大帯域設定値を、クライアント端末との間の通信帯域の合計値の最大値として無線通信を実行する。以下の説明では、ビーコン送出処理と、通信帯域制限処理以外の他の処理も含めた通信設定プログラムの動作について説明する。
図5に、実施の形態1にかかる通信設定プログラムの動作を説明するフローチャートを示す。図5に示すように、実施の形態1にかかる通信設定プログラムは、起動すると、最初に記憶部50を参照してアクセスポイント最大帯域設定値が存在するか否かを確認する(ステップS0)。そして、ステップS0の確認処理で、記憶部50にアクセスポイント最大帯域設定値が無いと判断した場合(ステップS0のNOの枝)、通信設定プログラムは、ビーコン信号中のクライアント最大帯域設定値を空にしたビーコン情報を生成する(ステップS1)。その後、通信設定プログラムは、生成したビーコン情報をビーコン信号に設定して、ビーコン信号の送出を開始する(ステップS2)。このビーコン信号は定期的に第1のアクセスポイント10が送出する。また、ステップS2のビーコン信号の送信開始に合わせて、第1のアクセスポイント10は通信動作を開始する。このとき、第1のアクセスポイント10は通信帯域の制限を行うことなく通信を実行する。
一方、ステップS0の確認処理において、記憶部50にアクセスポイント最大帯域設定値があると判断した場合(ステップS0のYESの枝)、通信設定プログラムは、再度記憶部50を参照して、クライアント最大帯域設定値があるか否かを確認する(ステップS3)。このステップS3の確認処理において、記憶部50にクライアント最大帯域設定値があると判断した場合(ステップS3のYESの枝)、通信設定プログラムは、記憶部50に格納されたクライアント最大帯域設定値を拡張ビーコン情報に設定したビーコン情報を生成する(ステップS4)。その後、通信設定プログラムは、生成したビーコン情報をビーコン信号に設定して、ビーコン信号の送出を開始する(ステップS5)。このビーコン信号は定期的に第1のアクセスポイント10が送出する。また、ステップS5のビーコン信号の送信開始に合わせて、第1のアクセスポイント10は通信動作を開始する。このとき、第1のアクセスポイント10は、アクセスポイント最大帯域設定値に基づき通信帯域の制限を行いながら通信を実行する。
また、ステップS3の確認処理において、記憶部50にクライアント最大帯域設定値がないと判断した場合(ステップS3のNOの枝)、通信設定プログラムは、クライアント最大帯域設定値を算出する。なお、このクライアント最大帯域設定値の算出処理は、繰り返し実行しても良く、その場合、再計算処理でクライアント最大帯域設定値は更新される。クライアント最大帯域設定値の再計算処理は、ステップS6で行われる。
ステップS6の計算処理では、自アクセスポイントの総通信量が、記憶部50に格納されているアクセスポイント最大帯域設定値を上回らないようにクライアント最大帯域設定値を算出する。計算の一例としては、通信中のクライアント端末が1台のみである場合には、アクセスポイント最大帯域設定値をクライアント最大帯域設定値とすることができる。また、別の例としては、通信中のクライアント端末が複数であった場合には、アクセスポイント最大帯域設定値を通信中のクライアント端末の数で割った値をクライアント最大帯域設定値とすることができる。ステップS6で算出したクライアント最大帯域設定値は、記憶部50に格納される。
そして、通信設定プログラムは、記憶部50に格納されたクライアント最大帯域設定値を拡張ビーコン情報に設定したビーコン情報を生成する(ステップS7)。その後、通信設定プログラムは、生成したビーコン情報をビーコン信号に設定して、ビーコン信号の送出を開始する(ステップS8)。このビーコン信号は定期的に第1のアクセスポイント10が送出する。また、ステップS5のビーコン信号の送信開始に合わせて、第1のアクセスポイント10は通信動作を開始する。このとき、第1のアクセスポイント10は、アクセスポイント最大帯域設定値に基づき通信帯域の制限を行いながら通信を実行する。
そして、ステップS6によるクライアント最大帯域設定値の計算処理を繰り返し実行する場合には、一定期間の経過を待つために、現計算処理サイクルの開始からの経過時間が設定値更新周期を超えたか否かを判断し(ステップS10)、経過時間が設定値更新周期を超えたことに応じて再度ステップS6の計算処理を実行する。
上記処理により、実施の形態1にかかる第1のアクセスポイント10は、記憶部50にアクセスポイント最大帯域設定値がないときは帯域制限を行うことなくクライアント端末と無線通信を実行する。実施の形態1にかかる第1のアクセスポイント10は、記憶部50にアクセスポイント最大帯域設定値及びクライアント最大帯域設定値の両方があるときは、アクセスポイント最大帯域設定値により無線通信の帯域を制限しながら、クライアント最大帯域設定値を含むビーコン信号を定期的に送出する。また、実施の形態1にかかる第1のアクセスポイント10は、アクセスポイント最大帯域設定値のみがある場合は、通信状況に応じてクライアント最大帯域設定値の値を設定し、その後、アクセスポイント最大帯域設定値により無線通信の帯域を制限しながら、クライアント最大帯域設定値を含むビーコン信号を定期的に送出する。
続いて、実施の形態1にかかる無線通信プログラムの動作について説明する。そこで、図6に実施の形態1にかかる無線通信プログラムの動作を説明するフローチャートを示す。図6に示すように、実施の形態1にかかる無線通信プログラムは、起動すると、最初に通信可能なアクセスポイントからのビーコン信号を受信したか否かを判断する(ステップS20)。ここで、クライアント端末が通信可能なアクセスポイントは、受信したビーコン信号に含まれるSSIDがクライアント端末内に通信可能なアクセスポイントとして登録されたアクセスポイントのSSIDか否かにより判断する。
そして、ステップS0のビーコン信号の受信確認処理で、通信可能なアクセスポイントからのビーコン信号を受信したと判断した場合(ステップS20のYESの枝)、無線通信プログラムは、通信規格に規定された手順に従ってアクセスポイントとの通信を確立する(ステップS21)。
続いて、通信設定プログラムは、ビーコン信号中にクライアント最大帯域情報があるか否かを判断する(ステップS22)。そして、ステップS22の判断処理において、ビーコン信号中にクライアント最大帯域情報がないと判断した場合(ステップS22のNOの枝)、無線通信プログラムは、自端末の帯域制限を解除して(ステップS24)、無線通信を開始する(ステップS25)。
一方、ステップS22の判断処理において、ビーコン信号中にクライアント最大帯域情報があると判断した場合(ステップS22のYESの枝)、無線通信プログラムは、ビーコン信号からクライアント最大帯域情報を抽出して、抽出したクライアント最大帯域情報をクライアント最大帯域設定値として記憶部60に格納する。そして、無線通信プログラムは、自端末の最大通信帯域を記憶部60に格納されたクライアント最大帯域設定値に基づき制限し(ステップS23)、無線通信を開始する(ステップS25)。
ここで、ビーコン信号からのクライアント最大帯域設定値の抽出処理を定期的行う場合には、通信開始後の経過時間が通信帯域更新期間を経過したことに応じて再度ステップS22のビーコン信号中のクライアント最大帯域情報の確認処理を行う(ステップS26)。
上記処理により、実施の形態1にかかるクライアント端末は、ビーコン信号によりクライアント最大帯域設定値を受信した場合に通信帯域の制限を行いながら無線通信を実行する。
なお、実施の形態1にかかる通信システム1におけるアクセスポイントとクライアント端末の通信帯域の制限は、例えば、通信を行う際に単位時間当たりの利用可能スロット数を制限する等の処理を行うことで可能である。
上記説明より、実施の形態1にかかる通信システム1では、通信設定プログラムによりアクセスポイントの最大通信帯域をアクセスポイント最大帯域設定値に基づき制限する。このような通信設定プログラムを用い、アクセスポイント内に記憶させるアクセスポイント最大帯域設定値として、無線通信区間の最大通信帯域を複数のアクセスポイント間で分割した値を設定することで、同一の通信範囲に存在する複数のアクセスポイントの通信量の総量を無線通信区間の最大通信帯域以下に抑制することができる。これにより、同一の通信範囲に存在する1つのアクセポイントの通信量が増加したことに伴い他のアクセスポイントの通信リソースが消費されることを防止することができる。つまり、実施の形態1にかかる通信設定プログラムを用いることで、同一の通信範囲に存在する1つのアクセポイントで利用されるスロット数を一定量以下に抑制しながら、各アクセスポイントに最低帯域を保証することが可能になる。
また、実施の形態1にかかる通信システム1では、クライアント端末において無線通信プログラムを用いることで、通信相手となるアクセスポイントが指定する端末毎の最大通信帯域に合わせた帯域制限を適用した無線通信が可能になる。この無線通信プログラムをアクセスポイントに搭載される通信設定プログラムと共に用いることで、クライアント端末がアクセスポイントに受理されないパケットを送出することを防止することができる。つまり、通信設定プログラムと無線通信プログラムの両方を用いることで、無線区間の通信帯域をより有効に利用することができる。
無線区間の最大通信帯域は、通信に用いる通信方式毎に最大値がきめられており、最大通信帯域内で複数のアクセスポイントの通信量の総量を制限することは大きな意味がある。図1に示した通信システム1の例を用いて複数のアクセスポイントの通信量の総量を制限する効果を説明する。例えば、クライアント端末21が映像配信サービスサーバ41から動画のストリーミング配信を受けている状態で、クライアント端末31がファイルサーバ40への大量データ送信を行った場合、クライアント端末21が受信するデータ量は無線区間の最大通信帯域以下であるにもかかわらず、クライアント端末31によりスロットが大量に消費されてしまうと、クライアント端末21が利用できるスロットが減ってしまい、ストリーミングが途切れる状態が発生する。しかしながら、実施の形態1にかかる通信システム1では、無線通信区間の最大通信帯域を3つのアクセスポイントで分割した最大帯域をアクセスポイントのそれぞれの帯域制限値とする。また、実施の形態1にかかる通信システム1は、各アクセスポイントに割り当てられた通信帯域の範囲内で、自アクセスポイントと通信するクライアント端末の最大帯域を設定する。これにより、クライアント端末21は、クライアント端末21が通信する第2のアクセスポイント20とは異なる第3のアクセスポイント30と通信するクライアント端末31が行うデータ転送の影響を受けることなくストリーミング配信を受けることができる。
また、実施の形態1にかかる通信システム1では、上記通信帯域の制限を、プログラムにより実現することができる。これにより、実施の形態1にかかる通信システム1は、ハードウェアを更新することなく、ソフトウェアのアップデートにより、上記通信帯域の制限の効果を得ることができる。通信帯域を制限する規格としてIEEE802.11eが策定されているが、この規格に対応していない機器も多く、ソフトウェアのアップデートだけで動作を実現できる効果は大きい。なお、実施の形態1にかかる通信システム1で用いた通信設定プログラムと無線通信プログラムは、ファームウェア、ドライバ等の形態で提供されるものである。また、通信設定プログラムと無線通信プログラムとにより実施の形態1にかかる通信制御プログラムが構成されるが、これらプログラムは個別に提供されても良く、また1つのプログラムとして提供されていても構わない。
実施の形態2
実施の形態2では、ビーコン信号のデータ構造の別の形態について説明する。そこで、図7に実施の形態2にかかる通信システムで用いられるビーコン信号のデータ構造を説明する図を示す。図7に示すように、実施の形態2にかかるビーコン信号は、拡張ビーコン情報として、通信規格毎のクライアント最大帯域情報を有する。
実施の形態2にかかる通信システム内のクライアント端末は、図7に示したデータ構造のビーコン信号を受信した場合、アクセスポイントとの通信で用いる通信規格に対応したクライアント最大帯域情報を参照して、クライアント端末内に記憶するクライアント最大帯域設定値を設定する。
一般的に、無線通信区間内の最大通信帯域は、通信規格毎に決まる。そこで、無線通信規格毎のクライアント最大帯域情報を拡張ビーコン情報として用いることで、通信規格の最大帯域を有効に利用することが可能になる。
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる通信システム1の別の形態について説明する。そこで、図8に実施の形態3にかかる通信システム2のブロック図を示す。図8に示すように、実施の形態3にかかる通信システム2は、第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20、第3のアクセスポイント30に代えて第1のアクセスポイント10a、第2のアクセスポイント20a、第3のアクセスポイント30aを有する。
第1のアクセスポイント10a、第2のアクセスポイント20a、第3のアクセスポイント30aは、第1のアクセスポイント10、第2のアクセスポイント20、第3のアクセスポイント30にアドホック通信機能を追加したものである。なお、一般的なアクセスポイントはこのアドホック通信機能をサポートしている。
そして、実施の形態3にかかる通信システム2は、アクセスポイント間でそれぞれビーコン信号の送受信を行う。これにより、実施の形態3にかかる通信システム2では、各アクセスポイントが他のアクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を知ることができる。そこで、実施の形態3にかかる通信システム2で用いられるビーコン信号のデータ構造を説明する図を図9に示す。
図9に示すように、実施の形態3にかかる通信システム2では、ビーコン信号の拡張ビーコン情報として、アクセスポイント最大帯域情報が含まれる。このアクセスポイント最大帯域情報は、ビーコン信号を送出したアクセスポイントの記憶部50に格納されているアクセスポイント最大帯域設定値である。
実施の形態3にかかる通信システム2では、図9に示したビーコン信号を参照して、アクセスポイントに搭載される通信設定プログラムが自アクセスポイント内に記憶されるアクセスポイント最大帯域設定値の大きさを調節する。そこで、実施の形態3にかかる通信設定プログラムの動作を以下で説明する。
実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、実施の形態1にかかる通信設定プログラムの動作に加えて、ビーコン信号受信処理及びアクセスポイント最大帯域設定値算出処理を行う。ビーコン信号受信処理では、他のアクセスポイントが送出するビーコン信号を受信する。このビーコン信号には、他のアクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値が拡張ビーコン情報に含まれる。アクセスポイント私大帯域設定値算出処理は、受信したビーコン信号に含まれる他のアクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値と、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値と、の合計値が、クライアント端末との通信に用いる通信方式で規定されている最大帯域を超えない範囲で、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を算出する。通信設定プログラムにより算出されたアクセスポイント最大帯域設定値は、記憶部50に格納される。
上記動作をフローチャートを用いて説明する。図10に実施の形態3にかかる通信設定プログラムの動作を説明するフローチャートを示す。なお、図10は、通信設定プログラムの処理のうち実施の形態3にかかる通信設定プログラムで追加されたビーコン信号受信処理及びアクセスポイント最大帯域設定値算出処理を示すものである。
図10に示すように、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、他のアクセスポイントからのビーコン信号の受信を待機する(ステップS30)。そして、他のアクセスポイントからビーコン信号を受信すると(ステップS30のYESの枝)、通信設定プログラムは、受信したビーコン信号から他のアクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を抽出する。その後、通信設定プログラムは、全アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値の合計値を算出し、当該合計値が通信方式の最大帯域以下であるか否かを判断する(ステップS31)。
ステップS31の判断処理において、アクセスポイント最大帯域設定値の合計値が通信方式の最大帯域以下であった場合(ステップS31のYESの枝)、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域増加閾値以下であるかを判断する(ステップS32)。この帯域減少閾値は、現時点のアクセスポイント最大帯域設定値よりも小さな値、かつ、後述する帯域減少閾値よりも大きい値である。
そして、ステップS32において、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域増加閾値以下であった場合(ステップS32のYESの枝)、通信設定プログラムは、全アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値の合計値が通信方式の最大帯域以下で収まるように、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を大きくする(ステップS33)。また、ステップS32において、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域増加閾値よりも大きかった場合(ステップS32のNOの枝)、通信設定プログラムは、自アクセスポイントの通信量に上限値に対して余裕があると判断して、アクセスポイント最大帯域設定値の更新を行うことなく次のビーコン信号の受信を待機する(ステップS30)。なお、ステップS33の処理が完了した後も次のビーコン信号の受信を待機する(ステップS30)。
つまり、ステップS31からステップS33の処理を行う状況では、通信可能な範囲にあるアクセスポイントの通信量の最大量が通信方式の最大帯域に対して余裕があり、かつ、自アクセスポイントの通信量が上限値に近い状態であると通信設定プログラムが判断する。そこで、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、このような状況では、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を大きくして上限値を引き上げる。一方、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、通信可能な範囲にあるアクセスポイントの通信量の最大量が通信方式の最大帯域に対して余裕があっても、自アクセスポイントの通信量に余裕がある場合は現状のアクセスポイント最大帯域設定値を維持する。
一方、ステップS31の判断処理において、アクセスポイント最大帯域設定値の合計値が通信方式の最大帯域よりも大きかった場合(ステップS31のNOの枝)、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域減少閾値以上であるかを判断する(ステップS34)。この帯域減少閾値は、現時点のアクセスポイント最大帯域設定値よりも小さな値、かつ、帯域増加閾値よりも小さい値である。帯域増加閾値と帯域減少閾値をこのような関係に設定することで、通信設定プログラムは、ヒステリシスを持ってアクセスポイント最大帯域設定値の増減を操作することができる。
そして、ステップS34において、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域減少閾値以上であった場合(ステップS34のYESの枝)、通信設定プログラムは、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を減少させて、全アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値の合計値が通信方式の最大帯域以下となるように、アクセスポイント最大帯域設定値を更新する(ステップS33)。また、ステップS34において、自アクセスポイントの現時点での通信総量と自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値との差が帯域減少閾値よりも小さかった場合(ステップS34のNOの枝)、通信設定プログラムは、自アクセスポイントの通信量に上限値に対して余裕がないと判断して、アクセスポイント最大帯域設定値の更新を行うことなく次のビーコン信号の受信を待機する(ステップS30)。なお、ステップS35の処理が完了した後も次のビーコン信号の受信を待機する(ステップS30)。
つまり、ステップS31、S34、S35の処理を行う状況では、通信可能な範囲にあるアクセスポイントの通信量の最大量が通信方式の最大帯域を上回っており、かつ、自アクセスポイントの通信量が上限値対して余裕がある状態であると通信設定プログラムが判断する。そこで、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、このような状況では、自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を小さくする。これにより、全アクセスポイントの通信量の総量を無線通信区間の最大通信帯域以下にすることができる。一方、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、通信可能な範囲にあるアクセスポイントの通信量の最大量が通信方式の最大帯域を上回る状況、自アクセスポイントの通信量に余裕がない場合は他のアクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値が小さくなることを期待して、現状のアクセスポイント最大帯域設定値を維持する。
上記説明より、実施の形態3にかかる通信システム2では、アクセスポイント間でアクセスポイント最大帯域設定値を含むビーコン信号を送受信して、アクセスポイントに搭載される通信設定プログラムにより自アクセスポイント内のアクセスポイント最大帯域設定値を調節する。このとき、実施の形態3にかかる通信設定プログラムは、全アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値の合計値が通信方式の最大通信帯域を超えないように自アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値を操作する。これにより、実施の形態3にかかる通信システム2は、無線通信区間の通信帯域を最大通信帯域以内に維持しながらアクセスポイント最大帯域設定値を通信状況に応じて柔軟に変更することができる。
また、実施の形態3にかかる通信システム2では、通信設定プログラムが自アクセスポイントの通信量に対してヒステリシスを持ってアクセスポイント最大帯域設定値を変更する。これにより、実施の形態3にかかる通信設定プログラムでは、自アクセスポイントの通信量の変動に対してアクセスポイント最大帯域設定値が頻繁に更新されてしまうことを防止することができる。
また、実施の形態3にかかる通信設定プログラムでは、全アクセスポイントのアクセスポイント最大帯域設定値の合計値のみならず、自アクセスポイントの通信量の当該通信量の上限値に対する余裕度も考慮して、自アクセスポイントの通信量に余裕度があるときに優先的に他のアクセスポイントに通信帯域が割り当てられるようにアクセスポイント最大帯域設定値を更新する。これにより、通信量が多いアクセスポイントの通信帯域が無理に減少されることを防止することができる。
実施の形態4
実施の形態4では、ビーコン信号のデータ構造の別の形態について説明する。そこで、図11に実施の形態4にかかる通信システムで用いられるビーコン信号のデータ構造を説明する図を示す。図11に示すように、実施の形態4にかかるビーコン信号は、拡張ビーコン情報として、クライアント端末毎のクライアント最大帯域情報を有する。
実施の形態4にかかる通信システム内のクライアント端末は、図11に示したデータ構造のビーコン信号を受信した場合、自クライアント端末を指定したクライアント最大帯域情報がある場合はそのクライアント最大帯域情報を参照して、クライアント端末内に記憶するクライアント最大帯域設定値を設定する。また、自クライアント端末を指定したクライアント最大帯域情報がない場合は、クライアント端末は、端末を指定しないクライアント最大帯域情報(図11のゲスト用のクライアント最大帯域情報)を参照して、クライアント端末内に記憶するクライアント最大帯域設定値を設定する。
無線LAN通信では、通信課程でアクセスポイント或いはクライアント端末のMACアドレス(機器に固有の値)を用いるため、このMACアドレスにより端末を指定することで端末毎のクライアント最大帯域を設定することが可能になる。
上記説明より、実施の形態4にかかる通信システムでは、端末毎に通信帯域を設定することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2で説明した通信方式毎の帯域制限、或いは、実施の形態4で説明したクライアント端末毎の帯域制限と、実施の形態3で説明したアクセスポイント最大帯域設定値の操作とを組み合わせることもできる。