JP6453609B2 - 耐オゾン性の評価方法及び耐オゾン寿命の予測方法 - Google Patents

耐オゾン性の評価方法及び耐オゾン寿命の予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐オゾン性の評価方法及び耐オゾン寿命の予測方法に関する。
静的オゾン試験において、ゴムの耐オゾン性能を評価する際に指標として主に2つの手法が提案されている。1つは、一定時間のオゾン照射後、クラックの数と深さを評価する方法、もう1つは、クラック発生までの時間を計測する方法(JIS−K6259)であり、後者の方がより直接的に製品寿命の評価が可能と考えられる。
しかしながら、クラック発生までの時間を計測する際、JISによる手法では、2,4,8,24,48,72,96時間ごとに試験片を観察し、亀裂発生の有無をチェックするため、亀裂発生時間は最大で100%(24.1時間での亀裂発生が48.0時間での亀裂発生とされ得、23.9/24×100=100%)の誤差を含むことになる。このことは、市場での製品使用時における耐オゾン寿命を最大で100%見誤りかねないことを示す。そのため、クラック発生時間の簡便で精密な計測手法を確立することが、市場における製品寿命を精密に予測するために必要不可欠であると言える。
更に耐オゾン性能に関し、ひずみが大きく影響することは周知であるが、耐オゾン性能に与えるひずみの影響を定量的に評価した例は少なく、使用環境下でのひずみを想定した試験を行わない限り、その耐オゾン寿命を推定できないため、より汎用性の高い手法の提供が望まれている。
本発明は、前記課題を解決し、高い精度でクラック発生時間、クラック発生速度の測定が可能な耐オゾン性の評価方法、及び、精密かつ迅速に使用時のクラック発生時間の予測が可能な耐オゾン寿命の予測方法を提供することを目的とする。
第1の本発明は、ゴム材料に静的なひずみを印加した状態でオゾンを照射し、一定時間ごとのクラックを計数する工程1−1と、計数されたクラック数の時間変化からクラック発生時間を見積もり、該クラック発生時間を耐オゾン性の指標とする工程1−2とを含む耐オゾン性の評価方法に関する。
前記耐オゾン性の評価方法では、下記式(1)を用いて、前記クラック発生時間を見積もることが好ましい。
Figure 0006453609
前記耐オゾン性の評価方法は、大気中のオゾンに曝露されるゴム材料に適用することが好ましい。
第2の本発明は、ゴム材料に静的な各ひずみを印加した状態でオゾンを照射し、各ひずみごとのクラック発生時間を計測する工程2−1と、ひずみとクラック発生時間の関係式を利用して、実使用下でのひずみにおけるクラック発生時間を予測する工程2−2とを含む耐オゾン寿命の予測方法に関する。
前記耐オゾン寿命の予測方法では、前記ひずみとクラック発生時間の関係式として、下記式(2)を用いることが好ましい。
Figure 0006453609
前記耐オゾン寿命の予測方法は、大気中のオゾンに曝露されるゴム材料に適用することが好ましい。
本発明によれば、ゴム材料に静的なひずみを印加した状態でオゾンを照射し、一定時間ごとのクラックを計数する工程1−1と、計数されたクラック数の時間変化からクラック発生時間を見積もり、該クラック発生時間を耐オゾン性の指標とする工程1−2とを含む耐オゾン性の評価方法であるので、高い精度でクラック発生時間、クラック発生速度の測定が可能になる。また、ゴム材料に静的な各ひずみを印加した状態でオゾンを照射し、各ひずみごとのクラック発生時間を計測する工程2−1と、ひずみとクラック発生時間の関係式を利用して、実使用下でのひずみにおけるクラック発生時間を予測する工程2−2とを含む耐オゾン寿命の予測方法であるので、精密かつ迅速に使用時のクラック発生時間の予測が可能になる。
クラック個数密度−曝露時間曲線の一例。 クラック発生時間の対数と、λ+2/λ−3(λ:静的なひずみの伸長比)との関係図の一例。
(耐オゾン性の評価方法)
第1の本発明は、ゴム材料に静的なひずみを印加した状態でオゾンを照射し、一定時間ごとのクラックを計数する工程1−1と、計数されたクラック数の時間変化からクラック発生時間を見積もり、該クラック発生時間を耐オゾン性の指標とする工程1−2と、を含む耐オゾン性の評価方法である。第1の本発明のポイントは、これまで注目されていなかったクラック発生後のクラック数に着目し、かつ全く異分野である一次核生成の概念と対比させることで、分単位でのクラック発生時間を見積もることが可能になる点を見出した点にある。
耐オゾン性を評価する上で、工業的にも学術的にも注視されてきたのは、オゾン反応が始まりクラックが発生するまでの過程であり、クラック発生後はほとんど扱われていない。そのため、クラック発生前の状態を詳細に調査するための方法論に関しては、学術的に発展し、例えば、赤外分光法や蛍光発光法、化学発光法などを用いた劣化状態を調査する手法がある。一方で、クラック発生後は、市場において損傷したとみなされるため、工業的な研究価値が見いだせず、学術的にも研究されていないのが実情である。
第1の本発明は、これまで見捨てられてきたクラック発生後の過程に主として注視することで、クラック発生時間(クラック発生までの時間)を精密に見積もるものである。先ず着目するのは、クラック個数の時間変化である。クラックの数は、ある誘導時間(クラック発生時間)を経た後、比較的短時間で時間と共に増加する。この現象は、各種の結晶性の物質の一次核生成過程と同様である。したがって、結晶化の一次核生成の解析技術をクラック発生に適用することで、精密な誘導時間(クラック発生時間)を見積もることができる。
一次核生成の解析では、偏光顕微鏡などを用いて結晶を認知し、その個数密度を時間に対してプロットすることで得られる、結晶個数密度−時間曲線に対して、以下の式を用いて解析することで、一次核生成速度kと結晶化誘導時間t0を見積もる。
Figure 0006453609
上記式は、過冷却により生じる過剰熱エネルギーを結晶化により凝縮エネルギーとして消費することを想定した式である。この際考慮されるのが結晶化の活性化エネルギーである。一次核形成では、結晶核が生成することによる凝集エネルギーの消費と新しい結晶面が生成することによる界面エネルギーの増加との釣り合いで活性化過程が定義され、結晶生成数はこの活性化過程に強く支配される。一般に結晶が発生するまでの誘導時間は、この活性化機構により、結晶が成長しうる一定の大きさにまで一次核が成長するのに費やされる時間として考えられている。
本発明では、この考え方をオゾンクラック発生に転用する。先ず、活性化過程はオゾンとゴム分子の反応によりゴム分子が切断する際の化学反応の活性化過程ととらえる。オゾンとゴム分子との反応は発熱反応であり、この両者が共存する条件では、すでにエネルギーを低下させる場が存在しており、結晶化における凝縮エネルギーと結晶化の活性化過程に対応させられる。更に誘導時間は、ゴム表面がオゾン劣化していく際に、クラックとして開裂するまで十分な量の分子鎖切断が起こるまでの時間としてとらえることができる。これらの対比により、クラック個数密度−時間曲線を得、その曲線に対して上記式に対応する以下の式(1)を適用することで、精密なクラック発生時間t0だけでなく、クラック発生速度kも定量的に得られる。
Figure 0006453609
以下に、本発明の耐オゾン性の評価方法を具体的に説明する。
先ず、ゴム材料に静的なひずみを印加した状態でオゾンを照射し、一定時間ごとのクラックを計数する工程1−1が実施される。
評価に供するゴム材料(種々の架橋ゴム材料等)としては特に限定されず、各種ゴム組成物等が挙げられる。具体的には、ゴム成分、カーボンブラックやシリカなどの充填剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを用いて作製されるゴム組成物(加硫済)等が挙げられる。
ゴム成分としては特に限定されず、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)等の改質天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。また、ゴム成分としては、上記ジエン系ゴムを含むブレンド物も使用可能であり、例えば、上記ジエン系ゴムと、エチレンプロピレンジエン共重合体等との混合物等が挙げられる。ここで、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)は、エチレンとプロピレンとの共重合体であるエチレン−プロピレンゴムに比較的少量の第3成分を導入し、ポリマー分子中に二重結合を付与したものである。第3成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
カーボンブラックやシリカとしては特に限定されず、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなど;乾式法や湿式法などにより調製されたシリカ粒子が挙げられる。また、シリカを使用する場合、更にシランカップリング剤を添加することが好ましい。
ゴム材料において、各ゴム成分、カーボンブラック、シリカなどの充填剤、シランカップリング剤の含有量は、用途等に応じて適宜設定すれば良い。例えば、架橋ゴム材料において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量を40〜95質量%、BRの含有量を0〜40質量%などに調整し、また、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量を2〜100質量部、シリカの含有量を10〜150質量部などに調整する。
なお、試料には、前記成分の他、プロセスオイル、老化防止剤など、種々の添加剤を配合してもよい。架橋ゴム材料は、公知の方法で作製され、上記各成分を混練し、その後加硫する方法等により製造できる。また、空気入りタイヤの各種タイヤ部材(架橋ゴム材料)も適用可能である。
架橋ゴム材料の形状は特に規定されず、各種の静的なひずみを与えることが可能な形状を採用できる。なかでも、面積計算のしやすさから、矩形若しくは深淵を含む楕円であることが望ましい。汚れや試料形状などの観点で上記形状を有効に採用できない場合、面積の計測が可能な多角形やより複雑な形状でもよい。ただし、統計的に有用なデータを得るために、クラック長さ方向に対して2倍以上の正方形状の大きさを確保することが望ましい。一般的な条件下での初期クラックの大きさは数μm〜数mm程度であり、クラックの大きさに合わせて、最小で10μm角、最大で5mm角の大きさがあれば十分であると考えられる。なお、試料形状は矩形であればよく、一般的なJIS試験片を利用できる。
印加する静的なひずみは、評価に供するゴム材料に応じて、クラック個数の時間変化として、クラック発生時間を経た後、時間と共にクラック個数が増加するクラック個数密度−時間曲線を得ることが可能な静的歪みを適宜採用すれば良い。静的ひずみとしては、一軸伸長ひずみ、一軸拘束二軸伸長ひずみ、等二軸伸長ひずみを含む静的伸長ひずみ、静的圧縮ひずみ、せん断ひずみ等が挙げられる。ここで、静的伸長ひずみを与える場合、例えば、伸長歪み量(引張量)を10〜200%、好ましくは10〜50%、より好ましくは15〜25%にすることで前記曲線が好適に得られる。
静的なひずみを与えたゴム材料にオゾンを照射(曝露)する際、オゾン照射(オゾン曝露)は、ゴム材料をオゾン存在下に置くことで実施できる。オゾンは、例えば、オゾン発生装置に酸素を充満させ、UVを照射することによって発生し、市販の装置を用いてオゾン照射が可能である。オゾンの濃度、処理温度、処理時間などの条件は、ゴム材料の配合、大きさ、厚さ、などにより、適宜設定すれば良い。例えば、オゾンウェザーメーターを用いて、クラック発生時間を経た後、時間と共にクラック個数が増加するクラック個数密度−時間曲線が得られる条件を採用すれば良く、オゾン濃度5〜200pphm、温度20〜50℃の条件でオゾンを最大48時間程度照射する手法等を使用できる。
ゴム材料へのオゾン照射中に、一定時間ごとに、単位領域あたりのクラック個数を計測することで、オゾン照射時間−クラック個数密度曲線が得られる。本発明では、クラック発生密度を計測する必要があるため、決められた面積内のクラック個数の計測が必要となる。先ず、面積について特に規定はないが、統計的に有用なデータを得るために、10個以上のクラックを含む領域が好ましい。また、時間経過に伴い計数面積を変更することは可能であるが、データの統一性の観点から、なるべく初期の段階で計測した面積を保つことが好ましい。統計的に有用なデータが得られるのであれば、毎回の計数場所を限定する必要はないが、データの統一性の観点から、なるべく同じ個所のクラック個数を計測することが望ましい。
クラックの計数には、例えば、目視又は写真、ルーペによる目視又は写真、各種顕微鏡による拡大像を得、その画像から計数する領域を決定し、領域内部のクラック個数を計数することができる。計数手法は特に限定されないが、計数機を用いる手法や境界値によるクラック部位を限定するような画像処理による手法などが挙げられる。
工程1−1を、具体的な実施形態の一例を示しながら、より具体的に説明する。
評価に供するゴム材料として、以下の配合をバンバリーミキサーで混合後、170℃で20分間プレス成形して作製した厚さ2mmのシート状のゴム架橋体(加硫ゴムシート)を用いた。なお、よりクラックの影響を見やすくするため、老化防止剤とWAXを抜いている。
(配合)
SBR(ジェイエスアール(株)製のSBR1502、スチレン単位量23.5質量%):80質量部
BR(宇部興産(株)製のBR150B):20質量部
シリカ(デグッサ製のウルトラジルVN3、NSA:175m/g):85質量部
カーボンブラック(昭和キャボット(株)製のショウブラックN220、NSA125m/g):10質量部
シランカップリング剤(デグッサ製のSi69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド):7質量部
ステアリン酸(日油(株)製のステアリン酸):1.5質量部
酸化亜鉛(三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号):2.5質量部
アロマオイル((株)ジャパンエナジー製のJOMOプロセスX140):10質量部
硫黄(鶴見化学(株)製の粉末硫黄):1.4質量部
加硫促進剤TBBS(大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド):2質量部
加硫促進剤DPG(大内新興化学工業(株)製のノクセラーD、N,N’−ジフェニルグアニジン):2質量部
JIS K6259に準拠し、オゾン濃度10±3pphm、温度40℃の雰囲気下で、加硫ゴムシートを引張量(静的伸長歪み量)20%の状態で96時間連続放置してオゾン曝露を行った。曝露中、30分間(一定時間)ごとに、試験片を試験槽から取り出し、亀裂の状態をビデオマイクロ(キーエンス社製VP9000)を用いて観察した。1.3mm角の範囲内のクラック数を計数し、曝露時間30分ごとのクラック個数密度を測定した。得られたクラック個数密度−曝露時間曲線を図1に示す。図中のプロット(黒丸)は、観測結果を示す。これにより、静的なひずみを印加したゴム材料をオゾン曝露した際における一定時間ごとのクラック個数密度が計測される。
次に、工程1−1で計数されたクラック数の時間変化からクラック発生時間を見積もり、該クラック発生時間を耐オゾン性の指標とする工程1−2を実施する。
計測された一定時間ごとのクラック個数密度の変化を用いて、オゾン曝露下でゴム材料にクラックが発生するまでの時間(クラック発生時間)を見積もることができる。例えば、一定時間ごとのクラック個数密度から作製したクラック個数密度−オゾン曝露時間曲線を用い、前記式(1)を用いてフィッティングすることにより、クラック発生時間やクラック発生速度を得ることができ、得られた結果を耐オゾン性の指標にすることが可能である。
工程1−2を、前記の具体的な実施形態の一例を用いて、より具体的に説明すると、図1のクラック個数密度−オゾン曝露時間曲線(実線)は、曝露時間30分ごとに測定されたクラック個数密度について、前記式(1)によりフィッティングした結果を示したものである。この結果から、この試料のクラック発生時間は0.38時間、すなわち23分であることがわかる。
ここで、図1を用いるクラック発生時間の評価手法を、クラックの発生有無のみを判定基準とするJIS法と対比すると、JIS法による場合、最初のチェック点は2時間後であるので、同配合の試料のクラック発生時間は2時間となる。従って、実際の発生時間とは、2/0.38=526%の誤差が発生している。この例は2時間以下の時間でクラックが発生する試料で極端な例ではあるが、このようにJIS法ではクラック発生時間に大きな誤差を含むことが分かる。
これに対し、本発明の耐オゾン性の評価方法は、従来の精度よりもはるかに高い精度でクラック発生時間を計測できるようになり、製品の寿命予測手法につなげられるようなデータ取得が可能になる。同時にクラック発生速度が得られ、クラック発生後の製品が使用不可になるような損壊を起こすまでの速度の評価も新たに可能となる。
(耐オゾン寿命の予測方法)
第2の本発明は、ゴム材料に静的な各ひずみを印加した状態でオゾンを照射し、各ひずみごとのクラック発生時間を計測する工程2−1と、ひずみとクラック発生時間の関係式を利用して、実使用下でのひずみにおけるクラック発生時間を予測する工程2−2と、を含む耐オゾン寿命の予測方法である。第2の本発明のポイントは、オゾンとゴムの反応の活性化機構において、ひずみエネルギーの影響を組み込むことで、ゴムとオゾンの反応速度に与えるひずみの影響を理論的に見積もり、ゴムの耐オゾン寿命を理論的に精密に見積もることが可能になる点を見出した点にある。
一般的な化学反応は、反応の活性化エネルギーΔEの山を越えることで反応が進行し、その反応速度は最も単純には以下のアレニウス型の式で記述される。
Figure 0006453609
一般的にゴムとオゾンの反応もこの式に従うと考えられる。そこで、ゴムとオゾンの反応前後の状態を考察する。一般的にオゾンはゴム中のポリマー分子の炭素−炭素の二重結合と反応し、二重結合を開裂させ、カルボニル基と水酸基に変換する。この反応によりゴム中のポリマー分子は徐々に切断されていき、最終的にはマクロなクラックとして現れる。
ゴムにひずみを印加した場合もゴムとオゾンの反応過程や最終反応物は変わらない。すなわち、ゴム中のポリマー分子とオゾンの反応の活性化エネルギーと、反応後のエネルギー状態は、ひずみの有無によって変化しない。一方で、反応前の状態はひずみの有無により大きく異なる。ひずみの印加によりゴムは引き伸ばされ、ひずみ印加前の状態よりも高エネルギー状態になる。この際、ゴム中のポリマー分子自体にもひずみが印加され、通常よりも高エネルギー状態になることが知られている。この現象は、例えばラマン又は赤外分光法を用いてひずみに誘発されるピークシフト現象として広く確認されている。これらは、ひずみ印加時のゴム中のポリマー分子自体がすでにひずみ印加前よりも高エネルギー状態になっており、このひずみエネルギーの上昇分だけ反応の活性化エネルギーの山が見かけ上低くなり、反応速度が速まることを意味している。
このひずみエネルギー(W)は、ゴム弾性分子論により詳細に検討されており、以下の式で記載される。
Figure 0006453609
このひずみエネルギーWを用いることで、ひずみ印加時のゴムとオゾンの反応速度式は、次の式で記述できる。
Figure 0006453609
クラック発生時間tは反応速度vの逆数に比例すると考えられるため、tは以下の式(2)で記述できる。
Figure 0006453609
一般的に、ゴムのようなポアソン比が0.5に近い物質では、λxλyλzの積は1に保たれており、伸長軸をxとすれば、例えば単純な一軸伸長ではλx=λ、λy=λz=1/√λ、また、一軸を拘束された状態での伸長では、λx=λ、λy=1、λz=1/λとなる。
JISに記載されているような一般的なオゾン試験では、単純な一軸伸長を行うため、上記式にλx=λ、λy=λz=1/√λを代入することで、反応速度のひずみ依存性を導ける。
Figure 0006453609
すなわち、複数のひずみにおける各々のクラック発生時間を計測することで、実使用でのひずみに対応する耐オゾン寿命(クラック発生時間)を見積もることができる。
以下に、本発明の耐オゾン寿命の予測方法を具体的に説明する。
先ず、ゴム材料に静的な各ひずみを印加した状態でオゾンを照射し、各ひずみごとのクラック発生時間を計測する工程2−1が実施される。
評価に供するゴム材料は、前記と同様の材料を使用できる。印加する複数の静的なひずみは、前記と同様の歪みをそれぞれ採用でき、各ひずみ条件におけるオゾン照射(曝露)も前記と同様に実施できる。そして、各々のひずみ条件ごとにオゾン照射によるクラック発生時間を計測する。ここで、各ひずみ条件ごとのクラック発生時間の計測方法は特に限定されず、JIS−K6259の手法等が挙げられるが、より精密な予測という点から、前述の耐オゾン性の評価方法を用いて計測することが好ましい。
工程2−1を、具体的な実施形態の一例を示しながら、より具体的に説明する。
評価に供するゴム材料として、前述の配合の厚さ2mmのシート状のゴム架橋体(加硫ゴムシート)を用いた。
JIS K6259に準拠し、オゾン濃度10±3pphm、温度40℃の雰囲気下で、加硫ゴムシートを引張量(静的伸長歪み量)10%、15%又は20%の3状態の各々において、96時間連続放置してオゾン曝露を行った。曝露中、30分間(一定時間)ごとに、試験片を試験槽から取り出し、亀裂の状態をビデオマイクロ(キーエンス社製VP9000)を用いて観察した。1.3mm角の範囲内のクラック数を計数し、曝露時間30分ごとのクラック個数密度を測定した。計数されたクラック数の時間変化から、前記耐オゾン性の評価方法を用いて、静的伸長歪み量10%、15%又は20%を印加した場合の各々のクラック発生時間を測定する。
次に、工程2−1で得られた各ひずみごとのクラック発生時間を用い、ひずみとクラック発生時間の関係式を利用して、実使用下でのひずみにおけるクラック発生時間を予測する工程2−2を実施する。
得られた各静的なひずみ条件でのクラック発生時間に基づき、例えば、前記式(2)で示されるひずみとクラック発生時間の関係式を用いることで、耐オゾン寿命を見積もることができる。従って、実使用(実際の使用状態)でのひずみに対応するケースにおける耐オゾン寿命の予測が可能となる。
工程2−2を、前記の具体的な実施形態の一例を用いて、より具体的に説明すると、例えば、前記式(2)を用いて、工程2−1で見積もったクラック発生時間の対数を(λ+2/λ−3)に対してプロットし、図2を得る。図中のプロット(○:静的伸長歪み10%、□:静的伸長歪み15%、△:静的伸長歪み20%)は観測結果を、実線は式(2)によるフィッティング結果を示している。この結果から、この試料の耐オゾン寿命とひずみの関係を得ることができ、例えば、ひずみ30%が印加されるような状態では、耐オゾン寿命が3.26分程度しか持たないことがわかる。
一方、図2を用いる耐オゾン寿命の予測手法をJIS法と対比すると、JIS法の場合、最初のチェック点は2時間後であるので、同配合の試料のクラック発生時間は2時間となる。従って、実際の耐オゾン寿命とは、120/3.26=3600%の誤差が発生している。この例は2時間以下の時間でクラックが発生する試料で極端な例ではあるが、このようにJIS法では耐オゾン寿命に大きな誤差を含むことが分かる。
これに対し、本発明の耐オゾン寿命の予測方法は、従来の手法よりも理論的に裏付けられた手法を用いるものであるため、より高ひずみで反応速度の速い領域から外挿することによって耐オゾン寿命を予測できるようになり、精密かつ迅速な耐オゾン予測が可能になる。

Claims (2)

  1. ゴム材料に静的なひずみを印加した状態でオゾンを照射し、一定時間ごとのクラックを計数する工程1−1と、
    計数されたクラック数の時間変化からクラック発生時間を見積もり、該クラック発生時間を耐オゾン性の指標とする工程1−2とを含み、
    下記式(1)を用いて、前記クラック発生時間を見積もる耐オゾン性の評価方法。
    Figure 0006453609
  2. 大気中のオゾンに曝露されるゴム材料に適用する請求項1記載の耐オゾン性の評価方法。
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