以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
図1は、実施形態における植物育成指標測定装置の構成を示すブロック図である。実施形態における植物育成指標測定装置は、測定対象である植物の葉に、測定光であるスポット光を、照射してその画像を取得することによって、前記植物における育成の度合い(育成の程度、育成の良否)を表す育成指標を求める装置である。このような植物育成指標測定装置Mは、例えば、図1に示すように、スポット光照射部1と、撮像部2と、制御処理部3とを備え、図1に示す例では、さらに、記憶部4と、入力部5と、表示部6と、インターフェース部(IF部)7とを備える。
スポット光照射部1は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、所定のスポット光を照射する装置である。前記所定のスポット光は、予め設定された輝度、予め設定された波長および予め設定された面積で、スポット光照射部1から照射される。後述の図9に示すように、測定対象が稲の葉である場合、稲の葉は、約500nm〜約670nmの波長範囲において、窒素含有量に応じて反射率が異なる分光反射特性を持つ。このため、前記予め設定された波長は、この約500nm〜約670nmの波長範囲のいずれかの波長である。本実施形態では、例えば、前記予め設定された波長は、650nmである。このようなスポット光照射部1は、例えば、レーザ光を発光するレーザ光源と、前記レーザ光源から発光されたレーザ光の形状を整形して射出する照射光学系とを備えて構成される。照射光学系は、レーザ光を断面円形でコリメート(平行光化)して射出する。したがって、本実施形態における植物育成指標測定装置Mでは、スポット光は、レーザ光である。また例えば、スポット光照射部1は、例えば、白色光を発光する例えばLED等の光源と、前記光源から発光された白色光が入射され所定の波長範囲を透過するバンドパスフィルタ(例えば中心波長650nmの狭波長範囲を透過するバンドパスフィルタ等)と、前記バンドパスフィルタから射出された光を断面円形でコリメートして射出する照射光学系とを備えて構成されても良い。
撮像部2は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、スポット光照射部1によってスポット光が照射される測定対象を撮像して測定対象の画像(画像データ)を生成する装置である。撮像部2は、この測定対象の画像(画像データ)を制御処理部3へ出力する。撮像部2は、例えば、測定対象の光学像を所定の結像面上に結像する結像光学系、前記結像面に受光面を一致させて配置され、前記測定対象の光学像を電気的な信号に変換するイメージセンサ、イメージセンサの出力に対し公知の画像処理を施して画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等を備えて構成される、いわゆるカメラ等である。
入力部5は、制御処理部3に接続され、例えば、育成指標を求める測定動作の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば測定対象の識別子の入力等の、育成指標を求める上で必要な各種データを、植物育成指標測定装置Mに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチおよびキーボード等である。
表示部6は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、画像を表示するための装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)および有機ELディスプレイ等を備えて構成される。表示部6には、後述するように、スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された測定対象の画像が表示される。
なお、入力部5および表示部6からタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部5は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置を含む。このタッチパネルでは、表示部6の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示部6に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として植物育成指標測定装置Mに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い植物育成指標測定装置Mが提供される。
IF部7は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部7は、有線または無線によって通信する通信カード等であり、例えばイーサネット環境等の通信ネットワークを介して例えばサーバ装置等の外部装置との間で通信しても良い(イーサネットは登録商標)。
記憶部4は、制御処理部3に接続され、制御処理部3の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、スポット光の照射をオンオフするように、スポット光照射部1を制御するスポット光照射制御プログラム、撮像部2によって撮像された測定対象の画像(第1画像)に基づいて測定対象に対するスポット光の照射状態が所定の条件を満たすか否かを判定する照射状態判定プログラム、および、スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された測定対象の画像(オン画像、第2画像)、および、前記スポット光の照射のオフでの撮像部2によって撮像された前記測定対象の画像(オフ画像、第3画像)に基づいて、植物における育成の度合いを表す育成指標を求める育成指標演算プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。記憶部4は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部4は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部3のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部4は、比較的大容量のハードディスクを備えても良い。
制御処理部3は、植物育成指標測定装置Mの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、育成指標を求めるための回路である。制御処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部3には、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部31、照射状態判定部32および育成指標演算部33が機能的に構成される。
制御部31は、植物育成指標測定装置Mの各部を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するものである。そして、制御部31は、スポット光照射制御部として機能し、スポット光の照射をオンオフするように、スポット光照射部1を制御するものである。
照射状態判定部32は、撮像部2によって撮像された測定対象の第1画像に基づいて測定対象に対するスポット光の照射状態が所定の条件を満たすか否かを判定するものである。測定対象に対するスポット光の照射状態とは、測定対象に照射されているスポット光のありさまであり、育成指標を求めるために撮像部2によって撮像している間における測定対象の状態によって変化する可能性のあるものである。
前記スポット光の照射状態が所定の条件を満たす場合は、前記スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された前記測定対象における、前記スポット光の光軸に対する傾きが所定の第1範囲内である場合を含む。この場合では、照射状態判定部32は、撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像に基づいて、前記測定対象の傾きを求め、この求めた前記測定対象の傾きが所定の第1範囲内であるか否かを判定する。前記オン画像は、前記第1画像の他の一例に相当する。より具体的には、次のように、判定が行われる。スポット光照射部1から照射されるスポット光が拡散あるいは収斂が無いとしても、撮像部2で撮像される画像における測定対象の大きさおよびスポット光の大きさは、スポット光照射部1および撮像部2と測定対象との間における距離に応じて変化し、前記距離が大きくなるほど測定対象およびスポット光は、画像に小さく写る。このため、測定対象の標準的な大きさが例えば統計的に予め求められる。例えば、測定対象が植物の葉(例えば稲の葉)である場合、植物の葉における標準的な幅(基準幅)W0が統計的に求められる。スポット光の直径Wsが予め求められる。そして、これら前記幅W0および前記直径Wsが記憶部4に予め記憶される。なお、円形のスポット光が植物の葉の表面に円形で照射されている場合(植物の葉の表面がスポット光照射部1の光軸に対し略直交している測定対象の植物の葉が基準状態(θ=0)にある場合)における植物の葉の基準幅W0が、前記植物の葉における標準的な幅W0として、オン画像から実測されてもよい。照射状態判定部32は、育成指標の測定にかかるオン画像におけるスポット光の大きさの画像数PsPと測定対象の大きさ(この例では植物の葉の幅)の画素数PsWを求め、測定対象の実際の大きさ(この例では植物の葉における実際の幅)WtをWt=(PsW/PsP)×Wsから求める。そして、照射状態判定部32は、前記基準幅W0と前記測定対象の実際の大きさWtとの比Wt/W0を求め、この比Wt/W0のアークコサインを求めて測定対象の傾きθを求め(θ=cos−1(Wt/W0)、この求めた傾きθが予め設定された所定の閾値(傾き許容閾値)tht以下であるか否かを判定する。前記傾き閾値thtは、複数のサンプルを用いた実験等によって適宜な値に予め設定される。本実施形態では、後述の図6に示すように、−45°≦θ≦+45°の範囲では、測定対象の傾きθが変化してもスポット光の反射光における輝度(測定対象の表面に照射されているスポット光の照度)に有意な変化はないので(変化しても測定結果に影響しない程度であるので)、照射状態判定部32は、前記比Wt/W0を求め、この比Wt/W0が1/√2以上であるか否かを判定する。この判定の結果、前記傾きθがθ≦±45°である場合(すなわち、Wt/W0≧1/√2である場合)には、前記測定対象の傾きθが所定の第1範囲内であると判定され、前記傾きθがθ>±45°である場合(すなわち、Wt/W0<1/√2である場合)には、前記測定対象の傾きθが所定の第1範囲内ではない(所定の第1範囲を超えている)と判定される。
そして、前記スポット光の照射状態が所定の条件を満たす場合は、前記スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された前記測定対象と前記スポット光の照射のオフでの撮像部2によって撮像された前記測定対象との間における前記測定対象の動きが所定の第2範囲内である場合を含む。この場合では、照射状態判定部32は、撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像における前後で撮像部2によって撮像された測定対象の1対のオフ画像(前オフ画像および後オフ画像)に基づいて前記測定対象の動きを求め、この求めた前記測定対象の動きが所定の第2範囲内であるか否かを判定する。前記1対のオフ画像は、前記第1画像の一例に相当する。オン画像は、上述したように、前記スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された測定対象の画像、すなわち、測定対象にスポット光を照射している場合に、撮像部2によって撮像された測定対象の画像であり、前オフ画像は、前記オン画像の生成前において、前記スポット光の照射のオフでの撮像部2によって撮像された測定対象の画像、すなわち、測定対象にスポット光を照射していない場合に、撮像部2によって撮像された測定対象の画像であり、そして、後オフ画像は、前記オン画像の生成後において、前記スポット光の照射のオフでの撮像部2によって撮像された測定対象の画像、すなわち、測定対象にスポット光を照射していない場合に、撮像部2によって撮像された測定対象の画像である。より具体的には、照射状態判定部32は、前オフ画像と後オフ画像との差分を前記測定対象の動きとして求め、この求めた差分が予め設定された所定の閾値(動き許容閾値)thm以下であるか否かを判定する。前オフ画像と後オフ画像との差分は、例えば、全画素について互いに同じ画素位置同士でその画素値の差を求め、これら求めた各画素における画素値の各差を全画素について合計することによって求められる。この判定の結果、前記差分が前記動き許容閾値thm以下である場合には、前記測定対象の動きが所定の第2範囲内であると判定され、前記差分が前記動き許容閾値thmを超えた場合には、前記測定対象の動きが所定の第2範囲内ではない(所定の第2範囲を超えている)と判定される。前記動き閾値thmは、複数のサンプルを用いた実験等によって適宜な値に予め設定される。
育成指標演算部33は、照射状態判定部32によってスポット光の照射状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、前記スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像、および、前記スポット光の照射のオフでの撮像部2によって撮像された前記測定対象のオフ画像に基づいて、植物における育成の度合いを表す育成指標を求めるものである。より具体的には、育成指標演算部33は、一態様では、前記オン画像および前記オフ画像に基づいて前記測定対象の反射率を求め、この求めた反射率に基づいて前記育成指標を求めるものである。より詳しくは、育成指標演算部33は、前記オン画像と前記オフ画像との差分を求めることでスポット光の反射光の光量(反射光量)を求め、この求めたスポット光の反射光量をスポット光の面積で除算することでスポット光の照度(スポット光の反射光の輝度)を求め、この求めたスポット光の照度を、測定対象に照射されるスポット光の輝度で除算することで測定対象の反射率を求め、この求めた反射率に基づいて前記育成指標を求める。また、後述するように、光合成の特性から葉の反射率(分光反射率)は、照度に依らず一定であり、反射光の光量(反射光量)は、照度に比例する。このことから、他の一態様では、育成指標演算部33は、前記オン画像および前記オフ画像に基づいて前記測定対象の反射光量を求め、この求めた反射光量に基づいて前記育成指標を求めるものである。より詳しくは、育成指標演算部33は、前記オン画像と前記オフ画像との差分を求めることでスポット光の反射光量を求め、この求めたスポット光の反射光量に基づいて前記育成指標を求める。
前記育成指標は、例えば、前記反射率そのものである。この場合、育成指標演算部33は、上述のように求めた測定対象の反射率を育成指標とする。
また例えば、前記育成指標は、前記反射光量そのものである。この場合、育成指標演算部33は、上述のように求めた測定対象の反射光量を育成指標とする。
また例えば、前記育成指標は、葉色板の値である。この場合、反射率あるいは反射光量と葉色板の値(通常、1から7までの整数値)との対応関係が予め求められ、この対応関係が記憶部4に記憶され、育成指標演算部33は、上述のように求めた測定対象の反射率あるいは反射光量を記憶部4に記憶された前記対応関係に基づいて葉色板の値に換算する。
また例えば、前記育成指標は、葉緑素計の値である。葉緑素計(Chlorophyll meter)の値は、例えば、葉緑素含量を示すSPAD値等である。この場合、反射率あるいは反射光量とSPAD(Soil & Plant Analyzer Development)値との対応関係が予め求められ、この対応関係が記憶部4に記憶され、育成指標演算部33は、上述のように求めた測定対象の反射率あるいは反射光量を記憶部4に記憶された前記対応関係に基づいてSPAD値に換算する。
なお、葉色板の値とSPAD値との間には、一例では、(SPAD値)=(葉色板の値)×5+15の関係がある。
次に、本実施形態の動作について説明する。図2は、実施形態における植物育成指標測定装置の動作を示すフローチャートである。図3は、実施形態の植物育成指標測定装置におけるスポット光のオンオフと反射光量との関係を示す図である。図3において、上段は、測定対象の葉にスポット光SLが照射されている様子を示し、中段は、スポット光SLがオンである場合における反射光量を示し、下段は、スポット光SLがオフである場合における反射光量を示す。図4は、実施形態の植物育成指標測定装置におけるスポット光の照射タイミングと画像の取得タイミングとの関係を示すタイムチャートである。図4(A)は、スポット光におけるオンタイミングおよびオフタイミングが垂直同期信号(VD)に一致する同期照射の場合を示し、図4(B)は、スポット光におけるオンタイミングおよびオフタイミングが垂直同期信号(VD)に一致しない非同期照射の場合を示す。図4(A)および(B)において、上段が垂直同期信号(VD)のタイミングチャートを示し、下段がスポット光のタイミングチャートを示す。図5は、実施形態の植物育成指標測定装置において、測定対象の傾きと撮像部から見込む測定対象の形状との関係を説明するための図である。図5(A)、(B)、(C)、(D)および(E)は、順に、測定対象の葉がスポット光の光軸に対し、60度、30度、0度、−30度および−60度で傾いている様子を示す。図5(C)は、測定対象の葉における所定の位置(基準位置)を示す。図6は、実施形態の植物育成指標測定装置において、波長650nmのスポット光を用いた場合における輝度レベルと測定対象の傾き角度との相関関係を示す図である。図6の横軸は、角度(度、deg)を示し、その縦軸は、輝度レベル(画素値)を示す。図7は、実施形態の植物育成指標測定装置におけるスポット光照射部および撮像部と測定対象の葉との関係を説明するための図である。図8は、実施形態の植物育成指標測定装置において、測定対象の動きに関する判定を説明するための図である。図8(A)は、測定中において、測定対象の葉に動きが所定の範囲内である場合を示し、図8(B)は、測定中において、測定対象の葉に動きが所定の範囲を超えている場合を示す。図9は、窒素含有量別における、稲の葉に関する分光特性を示す図である。図9の横軸は、波長(nm)を示し、その縦軸は、反射率を示す。曲線α1〜α6は、窒素含有量の順に、各分光特性を示しており、曲線α1は、相対的に窒素含有量が少ない分光特性を示し、曲線α6は、相対的に窒素含有量が多い分光特性を示す。図10は、窒素含有量別における、稲の葉に関する照度と単位面積当たりの反射光量との関係を示す図である。図10の横軸は、照度を示し、その縦軸は、単位面積当たりの反射光量を示す。直線β1〜β3は、窒素含有量の順に、照度と反射光量との各関係を示しており、直線β1は、相対的に窒素含有量が少ない場合の前記関係を示し、直線β3は、相対的に窒素含有量が多い場合の前記関係を示す。
このような植物育成指標測定装置Mでは、まず、ユーザ(オペレータ)によって測定対象の植物の葉に測定光のスポット光が当たるように、植物育成指標測定装置Mが配置される。これによって撮像部2の撮像方向は、前記測定対象に向く。ユーザによって図略の電源スイッチがオンされると、制御処理部3は、必要な各部の初期化を実行し、制御処理プログラムの実行によって、制御処理部3には、制御部31、照射状態判定部32および育成指標演算部33が機能的に構成される。そしてユーザによって入力部5を介して測定開始が指示されると、植物育成指標測定装置Mは、次のように動作する。
図2において、制御処理部3の制御部31は、予め設定された所定の時間、スポット光の照射をオンオフするように、すなわち、スポット光の点灯および消灯を所定の周期で繰り返すように、スポット光照射部1を制御し、測定対象の画像を撮像するように、撮像部2を制御する。これによって測定対象の植物の葉には、スポット光の照射および非照射が繰り返され、スポット光の照射のオン(照射時)での前記測定対象のオン画像およびスポット光の照射のオフ(非照射時)での前記測定対象のオフ画像が撮像部2によって取得され、これらオン画像およびオフ画像の各画像データが撮像部2から制御処理部3へ出力される(S1)。スポット光の非照射では、例えば、図3の下段に示すように、オフ画像は、環境光が測定対象の植物の葉REで反射された反射光量R2の情報を含み、スポット光の照射では、例えば、図3の上段に示すように、測定対象の植物の葉REにスポット光SLが照射され、オン画像は、図3の中段に示すように、環境光およびスポット光が測定対象の植物の葉REで反射された反射光量(R1+R2)の情報を含む。すなわち、オン画像は、環境光が測定対象の植物の葉REで反射された反射光量R2に、スポット光が測定対象の植物の葉REで反射された反射光量R1が重畳された情報を含む。
ここで、スポット光照射部1がスポット光の照射をオンオフするスポット光の照射タイミングと、撮像部2が画像を取得する画像の取得タイミングとは、図4(A)に示すように、一致し、同期照射が行われて良く、また、図4(B)に示すように、これらは、一致せず、非同期照射が行われて良い。
このようなオン画像およびオフ画像の取得中に、例えば、図5に示すように、測定対象の植物の葉REがスポット光照射部1の光軸に対し傾くと、植物の葉REで反射したスポット光の反射光が撮像部2で適切に受光することができなくなるために、撮像部2の画像に基づいて適切に反射率が求められなくなる。また例えば、図7に示すように、測定対象の植物の葉REが例えば風や虫等の接触等に起因して動くことが有り得る。測定対象の植物の葉REが動くと、植物の葉REの状態が変化し、植物の葉REとスポット光照射部1および撮像部2との位置関係がズレる。この結果、例えば、スポット光が植物の葉REに照射されなくなったり、撮像部2で撮像された画像中における植物の葉REの形状(撮像部2から見込んだ植物の葉REの形状)が変わったり等するために、撮像部2の画像に基づいて適切に反射率が求められなくなる。このため、本実施形態における植物育成指標測定装置Mは、スポット光の照射状態が所定の条件を満たすか否かを判定している。より具体的には、植物育成指標測定装置Mは、植物の葉REの傾きが所定の第1範囲内であるか否かを判定し、そして、植物の葉REの動きが所定の第2範囲内であるか否かを判定している。
より詳しくは、まず、処理S2において、照射状態判定部32は、撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像に基づいて、前記測定対象の傾きを求め、この求めた前記測定対象の傾きが所定の第1範囲内であるか否かを判定する。図5(C)に示すように、測定対象の植物における葉RE0の表面がスポット光照射部1の光軸に対し略直交している場合が、傾きが0である基準状態(所定位置)とされ、この基準状態から植物の葉REが傾くと、撮像部2から見込む測定対象の植物における葉REtの形状は、図5(B)および(A)に示すように(あるいは、図5(D)および(E)に示すように)、細くなり、葉REt(REt2、REt1)の幅Wt(Wt2、Wt1)が狭くなる。このため、照射状態判定部32は、育成指標の測定にかかるオン画像における測定対象の大きさ(この例では植物の葉の幅)の画素数PsWを求め、測定対象の実際の大きさ(この例では植物の葉における実際の幅)WtをWt=(PsW/PsP)×Wsから求める。そして、照射状態判定部32は、前記基準幅W0と前記測定対象の実際の大きさWtとの比Wt/W0を求め、この比Wt/W0のアークコサインを求めて測定対象の傾きθを求め(θ=cos−1(Wt/W0)、この求めた傾きθが前記傾き許容閾値tht以下であるか否かを判定する。ここで、測定対象の植物における葉REの角度変化に対するスポット光の反射光における輝度レベルの変化は、図6に示すように、−45°≦θ≦+45°の範囲では角度変化に従って輝度レベルが徐々に変化し、θ<−45°、θ>+45°の各範囲では角度変化に従って輝度レベルが急激に変化するプロファイルを持つ曲線となる。このため、−45°≦θ≦+45°の範囲では、葉REの傾きθが変化してもスポット光の反射光における輝度に有意な変化はない(変化しても測定結果に影響しない程度である)。このため、本実施形態では、照射状態判定部32は、前記比Wt/W0を求め、この比Wt/W0が1/√2以上であるか否かを判定する。この判定の結果、前記傾きθがθ≦±45°である場合(すなわち、Wt/W0≧1/√2である場合)(Yes)には、葉REの傾きθが所定の第1範囲内であると判定され、照射状態判定部32は、次の処理S3を実行する。一方、前記判定の結果、前記傾きθがθ>±45°である場合(すなわち、Wt/W0<1/√2である場合)(No)には、葉REの傾きθが所定の第1範囲内ではない(所定の第1範囲を超えている)と判定され、照射状態判定部32は、処理を処理S1に戻す。
処理S3において、照射状態判定部32は、撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像における前後で撮像部2によって撮像された測定対象の1対のオフ画像(前オフ画像および後オフ画像)に基づいて前記測定対象の植物における葉REの動きを求め、この求めた植物の葉REの動きが所定の第2範囲内であるか否かを判定する(S3)。植物の葉REに有意な動きが無い場合では、図8(A)に示すように、前オフ画像における葉の画像REP−1と後オフ画像における葉の画像REP−2とは、略一致する。なお、図8では、前オフ画像における植物の葉REの輪郭が破線で示されている。一方、植物の葉REに有意な動きが有る場合では、図8(B)に示すように、前オフ画像における葉の画像REP−1と後オフ画像における葉の画像REP−2とは、一致しない。このため、本実施形態では、照射状態判定部32は、前オフ画像と後オフ画像との差分を前記測定対象の植物における葉REの動きとして求め、この求めた差分が前記動き許容閾値thm以下であるか否かを判定する。この判定の結果、前記差分が前記動き許容閾値thm以下である場合(Yes)には、植物の葉REの動きが所定の第2範囲内であると判定され、照射状態判定部32は、次の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記差分が前記動き許容閾値thmを超えた場合(No)には、植物の葉REの動きが所定の第2範囲内ではない(所定の第2範囲を超えている)と判定され、照射状態判定部32は、処理を処理S1に戻す。
処理S4において、制御処理部3の育成指標演算部33は、照射状態判定部32によってスポット光の照射状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、すなわち、本実施形態では、測定対象の植物における葉REの傾きθが所定の第1範囲内であると判定されるとともに、葉REの動きが所定の第2範囲内であると判定された場合に、前記測定対象のオン画像(例えば前オフ画像と後オフ画像との間のオン画像)および前記測定対象のオフ画像(例えば前記後オフ画像)に基づいて前記測定対象の植物における葉REの反射率あるいは反射光量を求める。なお、図4に示すように、スポット光の照射における1回のオンで、複数のオン画像を撮像部2によって撮像している場合、これら複数のオン画像のうちのいずれか1つのオン画像が前記処理S2および処理S4で用いられるオン画像とされて良く、また、これら複数のオン画像のうちのいずれか複数のオン画像が前記処理S2および処理S4で用いられるオン画像とされて良い。この場合、互いに同じ画素位置の画素値を足し合わせることで複数のオン画像を積算した画像(積算オン画像)、あるいは、その画像を平均することで複数のオン画像を平均した画像(平均オン画像)が、前記処理S2および処理S4で用いられるオン画像とされる。同様に、スポット光の照射における1回のオフで、複数のオフ画像を撮像部2によって撮像している場合、これら複数のオフ画像のうちのいずれか1つのオフ画像が前記処理S3および処理S4で用いられるオフ画像とされて良く、また、これら複数のオフ画像のうちのいずれか複数のオフ画像が前記処理S3および処理S4で用いられるオフ画像とされて良い。この場合、互いに同じ画素位置の画素値を足し合わせることで複数のオフ画像を積算した画像(積算オフ画像)、あるいは、その画像を平均することで複数のオフ画像を平均した画像(平均オフ画像)が、前記処理S3および処理S4で用いられるオフ画像とされる。
ここで、植物の育成状態と反射率あるいは反射光量との関係について説明する。植物の育成状態、例えば稲の育成状態は、葉の色によって判定され、黄緑色から濃い緑色になるに従って育成状態は、より良好と判定される。したがって、葉色が黄緑色である場合、例えば追肥等の対策が必要となる。この葉色は、葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)の単位量、すなわち、窒素含有量に依存する。窒素含有量が相対的に少なければ(窒素含有量の値が相対的に小さければ)、葉色は、黄緑色となる。一方、窒素含有量が相対的に多ければ(窒素含有量の値が相対的に大きければ)、葉色は、濃い緑色となる。このため、稲の分光反射特性は、例えば、図9に示すように、窒素含有量が相対的に最も少ない場合の曲線α1から、窒素含有量が多くなるに従って曲線α2、曲線α3、曲線α4、曲線α5となり、窒素含有量が相対的に最も多い場合の曲線α6となる。これら分光反射特性の各曲線α1〜α6から分かるように、稲の分光反射特性は、波長約500nmないし波長約670nmの範囲で、窒素含有量によって異なる。このため、葉の反射率を求めることにで、窒素含有量が分かり、その結果、育成状態が判定できる。
そして、葉の分光反射率は、光合成の特性から、照度に依らず一定であるので、葉の反射光量は、例えば、図10に示すように、窒素含有量別で、照度に比例する。稲の葉に関する照度と単位面積当たりの反射光量との関係は、窒素含有量が相対的に最も少ない場合の直線β1から、窒素含有量が多くなるに従って直線β2を介して、窒素含有量が相対的に最も多い場合の直線β3となる。これら前記関係の各直線β1〜β3から分かるように、前記関係における直線の傾きは、窒素含有量によって異なり、窒素含有量が少ないほど、前記関係における直線の傾きは、大きくなる。図10に示す例では、各直線β1〜β3間における各傾きの関係は、(直線β1の傾き△R1/△L)>(直線β2の傾き△R2/△L)>(直線β3の傾き△R3/△L)となる。このため、環境光が照射されている葉にスポット光を照射することで葉に照射されている照度を変化させ(△L)、その場合における葉の反射光量の変化△Rを実測することで、前記関係における直線の傾き△R/△Lが分かって窒素含有量が分かり、その結果、育成状態が判定できる。
より具体的には、反射率を求める場合、育成指標演算部33は、前記オン画像と前記オフ画像との差分を求めることでスポット光の反射光量を求め、この求めたスポット光の反射光量をスポット光の面積で除算することでスポット光の照度(スポット光の反射光の輝度)を求め、この求めたスポット光の照度を、測定対象に照射されるスポット光の輝度で除算することで測定対象の反射率を求める。また、反射光量を求める場合、育成指標演算部33は、前記オン画像と前記オフ画像との差分を求めることでスポット光の反射光量を求める。このように前記オン画像と前記オフ画像との差分を求めるので、環境光は、キャンセルされる。
次に、処理S5において、育成指標演算部33は、この求めた反射率あるいは反射光量に基づいて育成指標を求める。より具体的には、例えば、前記育成指標が前記反射率そのものである場合、育成指標演算部33は、上述の処理S4で求めた測定対象の植物における葉REの反射率を育成指標とする。また例えば、前記育成指標が前記反射光量そのものである場合、育成指標演算部33は、上述の処理S4で求めた測定対象の植物における葉REの反射光量を育成指標とする。また例えば、前記育成指標が葉色板の値である場合、育成指標演算部33は、上述の処理S4で求めた測定対象の反射率あるいは反射光量を記憶部4に記憶された前記対応関係に基づいて葉色板の値に換算する。また例えば、前記育成指標が葉緑素計の値、例えばSPAD値である場合、育成指標演算部33は、上述の処理S4で求めた測定対象の反射率あるいは反射光量を記憶部4に記憶された前記対応関係に基づいてSPAD値に換算する。
そして、次に、処理S6において、制御処理部3の制御部31は、処理S5で求めた育成指標、および、この育成指標の演算に用いた、スポット光の照射のオンでの撮像部2によって撮像された測定対象のオン画像を表示部6に表示し、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法は、照射状態判定部32を備えるため、スポット光の照射の適否が判定可能となる。すなわち、スポット光が測定対象の植物における葉に適切に照射されているか否かが判定可能となる。そして、本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法は、照射状態判定部32によってスポット光の照射状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、育成指標を求める育成指標演算部33を備えるため、スポット光の照射の適否を判定可能とすることで有意な測定結果を得ることができる。
測定対象がスポット光照射部1の光軸に対し所定の範囲を超えて傾いてしまうと、オン画像に写り込むスポット光の形状が許容範囲を超えて異なる結果、反射率あるいは反射光量を適切に求められず、したがって、育成指標を適切に求めることができなくなってしまう。本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法では、スポット光の照射状態が所定の条件を満たす場合は、測定対象の傾きが所定の第1範囲内である場合を含むので、本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法は、測定対象の傾きによるスポット光の照射の適否を判定でき、有意な測定結果を得ることができる。
スポット光の照射のオンオフ中に測定対象が所定の範囲を超えて動いてしまうと、測定対象のオン画像と前記測定対象のオフ画像とでは、その形状が許容範囲を超えて異なる結果、反射率あるいは反射光量を適切に求められず、したがって、育成指標を適切に求めることができなくなってしまう。本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法では、スポット光の照射状態が所定の条件を満たす場合は、測定対象の動きが所定の第2範囲内である場合を含むので、本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法は、測定対象の動きによるスポット光の照射の適否を判定でき、有意な測定結果を得ることができる。
スポット光照射部1が適切な方向に向けられていない場合、スポット光が測定対象に照射されていない場合が生じ得、この場合、測定対象の反射率あるいは反射光量を求められず、したがって、育成指標が求められない。本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法では、測定対象のオン画像を表示部6に表示するので、この表示部6に表示されたオン画像を参照することで、オペレータ(ユーザ)は、測定対象の植物における葉に対するスポット光の照射の適否を判定できる。
また、本実施形態における植物育成指標測定装置およびこれに実装された植物育成指標測定方法は、レーザ光をスポット光として用いるので、スポット光をより明るくでき、明るい屋外でも測定可能となり、また、より遠隔な測定対象も測定可能となる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。