以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明に係るスピーカーユニットの保持構造の一実施の形態を示す説明図、そして図2はスピーカーユニット、筐体、そしてスピーカーユニット保持体の関係を示す図である。
図1に示すように、スピーカーユニット1に、フレーム1cの先端がフランジ状に加工されたフランジ1dが設けられている。スピーカーユニット保持体3の一端がフランジ1dに取付けられ、さらに他端が筐体2の取付板2aの開口部に取付けられることにより、スピーカーユニット1は筐体2に保持されている。
従来技術では、対面するスピーカーユニットと筐体の間に振動吸収材が挿入されてきたが、本発明では、スピーカーユニット保持部材3のスピーカーユニット取付部と筐体取付部は、異なる部位に設けられている。この構造では、スピーカーユニット取付部と筐体のそれぞれに振動吸収材が設けられる利点と、スピーカーユニットと筐体に挟まれることによるスピーカーユニット保持体の圧迫を回避できる利点がある。また、従来技術では振動吸収材の表裏を直線的に振動伝達したものが、本発明では、振動伝達経路が非直線的に延長されるため、スピーカーユニット保持体の振動吸収効果が高く発揮される。さらに、本実施形態では、スピーカーユニット保持部材3のスピーカーユニット取付部と筐体取付部の間に、振動減衰部3aが設けられている。振動減衰部3aは、スピーカーユニット1と筐体2が非接触であるため、スピーカーユニット保持部材3の振動吸収材としての効果をより高めることができる。同時に、スピーカーユニット1や筐体2の振動を吸収するのに十分な量の振動吸収材を振動減衰部3aとして設けることが可能になる。したがって、スピーカーユニット1のフレーム1cや筐体2の振動が顕著に減衰されるとともに、フレーム1cと筐体2の間の振動伝達も効果的に抑制され、忠実な音響再生が達成される。
図2に示されるように、筐体の取付板2aにスピーカーユニット1を装着するための開口部が設けられている。筐体の取付板2a、スピーカーユニット保持体3、そして筐体用取付具7の所定の位置に貫通穴が設けられており、ネジ11とナット12の締付により、スピーカーユニット保持体3は、筐体用取付具7により押し付けられ、筐体の取付板2に取付けられる。スピーカーユニット1は、フレーム1cの先端がフランジ加工されたフランジ1dが設けられている。フランジ1d、スピーカーユニット保持体3、そしてスピーカーユニット用取付具4の所定の位置に貫通穴が設けられている。これらの貫通穴を貫通するネジ11aとナット12aによる締付により、スピーカーユニット保持体3は、スピーカーユニット用取付具4に押し付けられ、フランジ1dに取付けられる。これらの構造により、筐体2の開口部にスピーカーユニット1とスピーカーユニット保持体3が密閉して装着される。筐体用取付具7とスピーカーユニット用取付具4を用いることで、本発明のスピーカーユニットの保持構造が簡単に実施できる。
スピーカーユニット保持体3は、振動吸収効果のある素材であれば制限はなく、制振金属や発泡スチロールを用いることができるし、ゲル、皮、布、フェルト、そして気泡緩衝材などの可撓体、もしくはゴム、シリコンゴム、そしてウレタン等の弾性体でも良く、また、それらの素材に油やシリコンオイル等の振動吸収効果のある液体を塗布しても良い。可撓体や弾性体は振動吸収性の高さと振動伝達性の低さを有するため、スピーカーユニット保持体3の素材として望ましい。また、スピーカーユニット保持体3に可撓体や弾性体を用いることにより、振動減衰部3aに可動性を与えることができる。これにより、振動減衰部3aで振動が運動エネルギーに変換されるため、フレーム1cの不要振動が効果的に減衰される。
筐体の取付板2aやスピーカーユニット1に対するスピーカーユニット保持体3の配置は、筐体の内側でも外側でもよく、それぞれ独立に決定すれば良い。なお、スピーカーユニットの振動板の前側と後側で、逆位相の音が発生するため、両者が混合されると音が打ち消し合う。したがって、スピーカーシステムは、この性質を考慮して設計されなければならない。スピーカーユニット保持体3を用いることは、筐体内部の音を遮音するのに有効である。一方で、スピーカーユニット保持体に適度な開口を設けることにより、振動板の運動を適正化することや、音質を調節することも可能であるので、目的に応じてスピーカーユニット保持体の形態を決定すれば良い。以上の性質を考慮し総合的に設計されるのであれば、スピーカーユニット保持体の形態や数に制限はなく、例えば、スピーカーユニット保持体に穴が開が設けられても、網目状であっても、複数のスピーカーユニット保持体が放射状に配置されていても構わない。
スピーカーユニット用取付具4や筐体用取付具7は、スピーカーユニット保持体3を取付けられるのであれば、その形状を限定されなく、例えば、リング状や多角形等の板状であっても構わないし、線状の形態でも構わない。また、複数の取付具を用いてスピーカーユニット保持体を取付けても良い。スピーカーユニット用取付具4や筐体用取付具7を用いた取付けは、広い範囲でスピーカーユニット保持体を押止するため、スピーカーユニット1もしくは筐体2と、スピーカーユニット保持体3の間の密閉性を容易に確保できる。特に、スピーカーユニット保持体3が可撓体の場合、特に有効である。スピーカーユニット用取付具4や筐体用取付具7は、固有振動が少ない素材であることが望ましく、薄くて軽い素材を用いることにより、スピーカーユニット用取付具4や筐体用取付具7が発生する変調音を抑制できる。スピーカーユニット用取付具4や筐体用取付具7に用いる素材の例としては、金属、プラスチック、アクリル、木材などが望ましいが、スピーカーユニット保持体を取付ける目的が達成されるのであれば、その素材に制限はない。
スピーカーユニット用取付具とや筐体用取付具にネジ溝を設けることにより、ナットを使用しないでスピーカーユニット保持体3を取付けることも可能である。同様に、スピーカーユニット1のフランジ1dやフレーム1c、そして筐体2にネジ溝を設けて、スピーカーユニット保持体3を取付けることも可能である(図示せず)。
本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、次のように変更することも可能である。
(i)スピーカユニット1へのスピーカーユニット保持体の取付けは、スピーカーユニット用取付具を用いずに、接着で行うこともできる。また、筐体へのスピーカーユニット保持体の取付けは、筐体用取付具を用いずに、接着で行うことも可能である。
(ii)スピーカーユニット保持体の振動減衰部を設けない実施形態も可能である。図3(a)は、スピーカーユニットの上端取付部の断面を示している。この図に示されるように、フランジ1dと筐体2aの間に振動減衰部が設けれていない。この形態では、スピーカーユニット保持体3Aがフランジ1dと筐体2の両方に設けられるため、従来技術より多くの振動吸収材を装着することが可能である。また、フランジ1dから筐体2への振動伝達経路が直線的でないため、スピーカーユニット保持体3Aによる振動吸収効果が高い。さらに、スピーカーユニット保持体3に可撓体や弾性体を用いる場合、可動性を有するので、振動が運動エネルギーに変換され、スピーカーユニット1の不要振動が効果的に減衰される。以上の理由により、フレームの振動が効果的に抑制され、忠実な音響再生が可能になる。
(iii)スピーカーユニット保持体は、平板状でなくてもよく、スピーカーユニットと筐体をスピーカーユニット保持体の異なる位置に取り付けできるのであれば、その形状は限定されない。図3(b)は、スピーカーユニット上端の取付部断面を示している。断面がコの字状のスピーカーユニット保持体3Bは取付板2aの開口部に周設されている。この実施形態では、スピーカーユニットと筐体が同一面に並ばず、フランジ1dが筐体2の前側(振動板面側)に位置している。この実施形態は、スピーカーシステム正面からのスピーカーユニット保持体の投影面積が小さいため、スピーカーシステムの小型化に有効である。なお、フランジ1dは、筐体の内側に位置することもできる。図3(b)では、スピーカーユニット保持体の断面はコの字状であるが、筐体への取付面とスピーカーユニットへの取付面が、前後に配置できるのであれば、スピーカーユニット保持体の形状に制限はない。
(iv)スピーカーユニット保持体の取付面は、筐体開口部の切断面であっても構わない。図3(c)は、スピーカーユニットの上端の取付部の断面を示している。断面がL字状のスピーカーユニット保持体3Cは筐体の取付板2aの開口部に周設され、開口部の中心側から筐体用取付具7’により筐体2aに取付けられる。図3(c)では、スピーカーユニット保持体の断面はL字状であるが、筐体開口部の切断面にスピーカーユニット保持体が取付けられるのであれば、その形状に制限はない。
(v)フレームの構成要素であるフランジにスピーカーユニット保持体を取付けることにより、本発明の形態が簡便に実施できる。しかしながら、フランジではなく、フレームにスピーカーユニット保持体を取付けることもできる。図3(d)に示すように、フレームの傾きに合わせた形状のスピーカーユニット用取付具4’により、フレーム1cにスピーカーユニット保持体3Dが取付けられる。なお、フレーム1cにネジ穴を設けることにより、ナットを用いずにスピーカーユニット保持体3Dを取付けることが可能である。図3(d)では、スピーカーユニット保持体の断面はL字状であるが、フレームにスピーカーユニット保持体が取付けられるのであれば、その形状に制限はない。
(vi)スピーカーユニット用取付具や筐体用取付具をそれぞれフレームや筐体に取付ける手段は、特に限定されない。嵌め込みによる取付け例を図4に示す。図4(a)は、本実施形態のスピーカーシステムの正面図である。図4(b)は、図4(a)のA−A’線断面図を示す。スピーカーユニットのフランジには、凸部を持つ対合部1fが設けられる。スピーカーユニット用取付具4Aには、凹部が設けられる。フランジの対合部1fの凸部とスピーカーユニット用取付具4Aの凹部が嵌め込み合うことで、両者に挟まれたスピーカーユニット保持体3Eがフランジ1dに取付けられる。同様に、筐体開口部もしくは開口部周辺に、凸部を持つ対合部2cが設けられる。また、筐体用取付具7Aに、凹部が設けられる。筐体の対合部2cの凸部と筐体用取付具7Aの凹部が嵌め込み合うことで、両者に挟まれたスピーカーユニット保持体3Eが筐体2に取付けられる。また、図4(c)に示すように、対合部の凸部と凹部の関係を逆に構成することも可能である。スピーカーユニットのフランジには、凹部を持つ対合部1gが設けられる。スピーカーユニット用取付具4Bには、凸部が設けられる。フランジの対合部1gの凹部とスピーカーユニット用取付具4Bの凸部が嵌め込み合うことで、両者に挟まれたスピーカーユニット保持体3Fがフランジ1gに取付けられる。同様に、筐体開口部もしくは開口部周辺に、凹部を持つ対合部2dが設けられる。筐体用取付具7Bに、凸部が設けられる。筐体の対合部2dの凹部と筐体用取付具7Bの凸部が嵌め込み合うことで、両者に挟まれたスピーカーユニット保持体3Fが筐体2に取付けられる。なお、本実施の形態において、スピーカーユニットのフランジとスピーカーユニット用取付具、そして筐体と筐体用取付具の嵌め込みは、全周に渡る必要はなく、スピーカーユニット保持体が取付けられるのであれば、部分的な嵌め込みでも構わない。また、スピーカーユニット用取付具と筐体用取付具に設けられる対合部の凹凸形状は、それぞれ独立に選択しても良い。スピーカーユニット用取付具と筐体用取付具は、筐体内側から、それぞれスピーカーユニットや筐体に取付けることも可能である。
(vii)図5は、磁石の吸引力でスピーカーユニット保持体を取付けた実施の形態である。図5(a)は、本スピーカーシステムの正面図である。図5(b)は、図5(a)のB−B’線断面図である。スピーカーユニット1のフランジ1dに磁石8が格納される磁石取付部1hが設けられている。スピーカーユニット用取付具4Bは磁石8’が格納される磁石取付部4bが設けられている。磁石8と磁石8’の吸着力により、スピーカーユニット保持体3Gがスピーカーユニット1のフランジ1dとスピーカーユニット用取付具4Bに挟まれ取付けられる。本実施の形態では、磁石8のN極8aと磁石8’のS極8bが対面しているが、磁石8のS極と磁石8’のN極が向き合って結合しても構わない。筐体2の開口部に磁石8’’が格納される磁石取付部2eが設けられている。筐体用取付具7Cには磁石8’’’が格納される磁石取付部7bが設けられている。磁石8’’と磁石8’’’の吸着力により、スピーカーユニット保持体3Gは、筐体2と筐体用取付具7Cに挟まれ取付けられる。本実施の形態では、磁石8’’のS極8bと磁石8’’’のN極8aが向き合っているが、磁石8’’のN極8aと磁石8’’’のS極8bが向き合って結合しても良い。磁石8、磁石8’、磁石8’’、そして磁石8’’’の形状、個数、そして配置などは限定されない。本実施形態では、磁石の吸引力を用いて係止するので、スピーカーユニット1の磁石取付部1h、スピーカーユニット用取付具4B、筐体2の開口部、そして筐体用取付具7Cは、非磁性体が望ましく、スピーカーユニット1やスピーカーユニット保持体3Gを保持する剛性があれば、材質は制限されない。本実施形態では、磁石を安定的に取り付けるために、磁石が格納される磁石取付部1h、磁石取付部4b、磁石取付部2e、そして磁石取付部7bが設けられている。機械的安定性が求められないのであれば、磁石取付部1h、磁石取付部4b、磁石取付部2e、そして磁石取付部7bを用いないで、磁石による支持を行うことも可能である。スピーカーユニット用取付具と筐体用取付具は、筐体内側もしくは外側のどちらからでも取付けることも可能である。
(viii)スピーカーユニット用取付具と筐体用取付具を外周から締め付けることにより、スピーカーユニット保持体を固定することも可能である。図6(a)は、本実施形態の上面図である。図6(b)は、図6(a)のC−C’線断面図、図6(c)は、図6(a)のD−D’線断面図である。筐体2の開口部に、筒状の突出構造である被締付部2fが設けられている。スピーカーユニット保持体3Hの一端は、被締付部2fを覆い、さらにスピーカーユニット保持体3Hに筐体用取付具7Dが周設される。筐体用取付具7Dの締付部 7cに設けられたネジ機構による締め付けにより、スピーカーユニット保持体3Hは、被締付部2fに取付けられる。スピーカーユニット1のフレーム1cの先端に、筒状の突出構造である被締付部1iが設けられている。スピーカーユニット保持体3Hの一端は、被締付部1iを覆い、さらにスピーカーユニット用取付具4Cが周設される。スピーカーユニット用取付具4Cの締付部 4cに設けられたネジ機構による締め付けにより、スピーカーユニット保持体3Hは、被締付部1iに取付けられる。筐体の被締付部2fは、筐体の内側でも外側でもどちらに設けられても構わない、また、スピーカーユニット保持体3Hは、スピーカーユニットの被締付部1iの前側でも後側でも、どちら側から設けられても構わない。スピーカーユニット用取付具4Cや筐体用取付具7Dの締め付け方法は、ネジ機構に限らず、どのような方法で締め付けても良い。
(ix)塑性変形性を持つスピーカーユニット用取付具や筐体用取付具を用いて、スピーカーユニット保持体を、それぞれスピーカーユニットや筐体に取付けることができる。図7(a)は、スピーカーユニット上端の結合部を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のE−E’線の断面図である。スピーカーユニット用取付具4Dには板状の押し曲げ部4dが設けられている。押し曲げ部4dは、スピーカーユニット1のフランジ1dに設けられた貫通穴1jとスピーカーユニット保持体3Iに設けられた貫通穴3cを貫通するとともに、フランジ方向に押し曲げられ、スピーカーユニット保持体3Iをフランジ1dに固定する。また、筐体用取付具7Eには板状の押し曲げ部7dが設けられている。押し曲げ部7dは、筐体2に設けられた貫通穴2bとスピーカーユニット保持体3Iに設けられた貫通穴3dを貫通するとともに筐体方向に押し曲げられ、スピーカーユニット保持体3Iを筐体2に固定する。本実施形態において、スピーカーユニット用取付具と筐体用取付具に用いられる素材は、塑性変形性を有すれば特に限定されない。また、スピーカーユニット保持体3Iは、筐体2やスピーカーユニット1のフランジ1dに対して、筐体内側や外側、どちらの位置に設けられてもかまわないし、それに応じて、スピーカーユニット用取付具4Dや筐体用取付具7Eの位置を変更すれば良い。
(x)塑性変形性を有する押止具で押止することで、スピーカーユニット保持体をスピーカーユニットもしくは筐体に取付けることができる。図8(a)は、スピーカーユニットとスピーカーユニット保持体の結合部を示す斜視図である。スピーカーユニット保持体3Jがスピーカーユニット1のフランジ1dとスピーカーユニット用取付具4Eで挟まれた重層構造を設け、この重層構造の両端を、スピーカーユニット保持体3Jの貫通穴3eを介して押止具13で押止することにより、スピーカーユニット保持体3Jをスピーカーユニットに係止することができる。図8(b)は、筐体とスピーカーユニット保持体の結合部を示す斜視図である。スピーカーユニット保持体3Jが筐体2と筐体用取付具7Fで挟まれた重層構造を設け、この重層構造の両端を、スピーカーユニット保持体3Jの貫通穴3fを介して押止具13aで押止することにより、スピーカーユニット保持体3Jを筐体2に取付けることができる。これらのように塑性変形性を持つ押止具でスピーカーユニット保持体を取付けることにより、スピーカーユニット保持体の脱着が容易になるので大量生産に適した構造である。また、スピーカーユニット保持体3Jは、筐体2やスピーカーユニット1のフランジ1dに対して、筐体内側や外側、どちらの位置に設けられてもかまわないし、それに応じて、スピーカーユニット用取付具4Eや筐体用取付具7Fの位置を変更すれば良い。
(xi)フック形状を有する部材を用いて、スピーカーユニット保持体をスピーカーユニットや筐体開口部に取付けることができる。図9(a)は、本実施形態によるスピーカーシステムの正面図であり、図9(b)は、図9(a)のF−F’線の断面図である。フック部を有する留具14がスピーカーユニット1のフランジ1dの周囲に複数設けられ、フック部を有する留具14aが筐体の取付板2aの開口部の周囲に設けられる。留具14のフック部は、スピーカーユニット保持体3Kの貫通穴3gを掛止する。同様に、各留具14aのフック部は、スピーカーユニット保持体3Kの貫通穴3hを掛止する。このようにすることにより、スピーカーユニット1は、スピーカーユニット保持体3Kを介して筐体2に保持される。留具14や留具14aの数、大きさ、そして形状は、スピーカーユニット1の保持に支障のない範囲で、任意に選択することができる。留具14や留具14aは、筐体の内側にも、外側にも設けることもできるし、それらの取付側は、それぞれ独立に選択できる。図9(c)に、留具を用いない場合の、実施形態を示す。図9(c)に示されるように、スピーカーユニット1のフランジ1dにフック部1mが複数設けられ、筐体2の開口部にフック部2hが複数設けられている。スピーカーユニット1のフック部1mは、スピーカーユニット保持体3Kの貫通穴3gを掛止し、筐体のフック部2hは、スピーカーユニット保持体3Kの貫通穴3hを掛止することにより、スピーカーユニット1は、スピーカーユニット保持体3Kを介して筐体2に保持される。フック部2hやフック部1mの数、大きさ、そして形状は、スピーカーユニット1の保持に支障のない範囲で、任意に選択することができる。フック部2hやフック部1mは、筐体の内側に設けることもできるし、フック部2hやフック部1mの取付側は、それぞれ独立に選択できる。
(xii)スピーカーユニット保持体に、スピーカーユニットと筐体をそれぞれ挟み込む部位を設けることにより、スピーカーユニット用取付具や筐体用取付具を用いなくても、スピーカーユニットを筐体に保持することが可能である。図10(a)は、本実施形態によるスピーカーシステムの正面図であり、図10(b)は、図10(a)のG−G’線の断面図である。スピーカーユニット保持体3Lに、スピーカーユニット1のフランジ1dを外周から挟んで取付ける対スピーカーユニット挟み込み部3iを設け、さらに筐体2の取付板2aの開口部を挟んで取付ける対筐体挟み込み部3jを設けることができる。対スピーカーユニット挟み込み部3iや対筐体挟み込み部3jが、それぞれスピーカーユニットや筐体に取付けられることにより、スピーカーユニット1は、筐体2に保持される。なお、フランジ1dを有しないスピーカーユニットの場合、対スピーカーユニット挟み込み部3iは、フレーム1cの先端を挟み込んでもよい。
スピーカーユニット保持体3Lは、スピーカーユニット1や取付板2aを挟み込みつつスピーカーユニット1を保持できる強度を有し、また、取付け過程において、対スピーカーユニット挟み込み部3iや対筐体挟み込み部3jが、それぞれスピーカーユニット1や筐体を挟み込むための変形性を有する必要がある。スピーカーユニット保持体3Lとしては、振動吸収性があり、先に述べた強度や変形性を有する素材であれば材質を制限されない。そのような材質の例として、ゲルやスポンジなどの可撓体、ゴムやウレタンなどの弾性体を用いることができる。
スピーカーユニット保持体3Lは、複数の素材で構成されても良い。例えば、対スピーカーユニット挟み込み部3i、対筐体挟み込み部3j、そして振動減衰部3aを別の素材で構成することもできる。このようにすることにより、スピーカーユニット保持のための強度や振動減衰効果を適正化することができる。例えば、金属等の剛体で形成された振動減衰部3aの両端に、可撓体や弾性体で形成された対スピーカーユニット挟み込み部3iや対筐体挟み込み部3jを設けることが可能である。各部材の一体化は、対スピーカーユニット挟み込み部や対筐体挟み込み部に振動減衰部を挟み込む部位を設けることや、接着等で行うことが可能である。また、2枚のスピーカーユニット保持体を貼り合わせ、非接着部を部分的に設けることにより、対スピーカーユニット挟み込み部や対筐体挟み込み部とすることも可能である。スピーカーユニット保持体3Lは、表側と裏側で異なる素材を用いることもできる。
対スピーカーユニット挟み込み部3iは、スピーカーユニット全周を挟み込んでも良いし、部分的に挟み込んでも良い。同様に、対筐体挟み込み部3jは、筐体開口部全周を挟み込みしても良いし、部分的に挟み込んでも良い。また、対スピーカーユニット挟み込み部3iとスピーカーユニットのフランジ、または対筐体挟み込み部3jと筐体の間を接着材等で補強することもできる。本実施形態は、スピーカーユニット用取付具や筐体用取付具を必要としないため、製造コストを低いことや、取付が容易であることから大量生産に適している。
(xiii)筐体やスピーカーユニットに突出部を設け、それらの突出部をスピーカーユニット保持体に設けた突出部で嵌め込むことで、スピーカーユニットを筐体に保持することができる。図11(a)は、本実施形態によるスピーカーシステムの正面図であり、図11(b)は、図11(a)のH−H’線の断面図である。スピーカーユニット1のフランジ1dにスピーカーユニット突出部1nが設けられている。スピーカーユニット保持体3Mには、対スピーカーユニット突出部3p’が設けられている。スピーカーユニット突出部1nを対スピーカーユニット突出部3p’が嵌め込むことで、スピーカーユニット1にスピーカーユニット保持体3Mを取付けることができる。また、筐体の取付板2aの開口部もしくは開口部の周辺に筐体突出部2iが設けられている。スピーカーユニット保持体3Mには、対筐体突出部3pが設けられている。筐体突出部2iを対筐体突出部3pが嵌め込むことで、筐体2にスピーカーユニット保持体3Mを取付けることができる。図11(c)に示すように、形態を変形することも可能である。スピーカーユニットのフランジ1dのスピーカーユニット突出部1oと筐体の取付板2aの開口部もしくは開口部の周辺に設けられた筐体突出部2kは、先端ほど両者の間隔が広がるように傾いて設けられている。スピーカーユニット保持体3Nの対スピーカーユニット突出部3rと対筐体突出部3r’が、突出部1oと突出部2kを嵌め込み結合することで、スピーカーユニット1を筐体2に保持することが可能である。スピーカーユニット突出部1oと筐体突出部2kの先端の間隔を広げることにより、より強固に対スピーカーユニット突出部3r’や対筐体突出部3rと嵌め込み合うことができる。
スピーカーユニット突出部1nや1oは、スピーカーユニットのフランジ1dではなく、フレーム1cに設けることも可能である。スピーカーユニット保持体3Mや3Nの素材としては、振動吸収性があり、スピーカーユニット1を支持できる強度を有すれば、制限されない。そのような素材の例として、ゲルやスポンジなどの可撓体、ゴムやウレタンなどの弾性体を用いることができる。スピーカーユニット突出部1nや1oや筐体突出部2iや2kは、筐体内側でも外側でも、どちらに設けられても構わない。スピーカーユニット突出部1nや1o、そして筐体突出部2iや2k両突出部の向きに応じて、スピーカーユニット保持体に設けられた対スピーカーユニット突出部3p’や3r’、そして対筐体突出部3pや3rの向きを選択することができる。
(xiv)不定形な振動吸収材、もしくは振動吸収材の不定形な集合体を振動吸収材用容器に包含して、振動吸収性を有するスピーカーユニット保持体とすることも可能である。図12(a)は、スピーカーユニット保持体3Oの正面図であり図12(b)は、図12(a)のI−I’線の断面図である。振動吸収材用容器18は、中空の円盤状であり、スピーカーユニットの振動板を露出させるための開口部3zや、スピーカーユニットを結合するための貫通穴3tや筐体に結合するための貫通穴3sが設けられているが、振動吸収材用容器18の外部に内容物が漏れないように密閉性が保たれている。振動吸収材用容器18の内部に、粒状、フォーム状、そして液状などの振動吸収作用のある振動吸収材17を充填して、スピーカーユニット保持体3Oを形成する。スピーカーユニット保持体3Oは、スピーカーユニット用取付具や筐体用取付具などを用いて、スピーカーユニットや筐体に取付けられる。
振動吸収材17は、振動吸収作用を有し、振動吸収材用容器18に充填可能であれば、材質は限定されないが、例として、水晶粒、石材粒、木材粒、制振金属粒、そして発泡プラスチック粒などの粒状、そして水、油、液体金属等の液体、ウレタンフォーム等のフォーム状、もしくはそれらの複数の制振材を組み合わたものなどがある。振動吸収材用容器18は、振動吸収材17を内部に留めることができて、変調振動が少なければ、材質を限定されなく、振動吸収材17へ効率良く振動を伝達するために、薄い素材を用いることも可能であるし、振動吸収材用容器18にも振動吸収作用を持たせることも可能である。振動吸収材用容器18の材質の例として、ゲル、シリコン、プラスチック、ゴム、布、皮、合成皮、そして金属等があげられる。可撓性の高い材質で形成された振動吸収材用容器18に振動吸収材17を充填する時、振動吸収材用容器18の形状が崩れることもあり得る。その場合、振動吸収材用容器18の対面を所々で結合することで、振動吸収材用容器18の形崩れを抑制できる。スピーカーユニット保持体3Oは、円盤状に限らず、スピーカユニットや筐体の形状、そして取付手段に応じて、形状を変更しても良い。スピーカーユニット1や筐体2へのスピーカーユニット保持体3Oの取付け手段は、特に限定されない。
(xv)スピーカーユニット保持体の振動減衰部に錘を設けることにより、スピーカーユニット保持体の振動減衰効果を高めることが可能である。図13(a)は、本実施形態におけるスピーカーシステムの正面図であり、図13(b)は、図13(a)のJ−J’線の断面図である。振動減衰部3aaに錘29を設けることにより、振動減衰部3aaと錘29の間で急激な音響インピーダンスの変化をもたらし、フレーム1cの不要振動を振動減衰部3aaでより効果的に減衰することが可能になる。振動減衰部3aaと錘29の音響インピーダンスの差により振動が減衰されるため、錘29は、音響インピーダンスが高いことが求められる。そのような性質を満たせば錘29の材質は制限されないが、例えば、真鍮、鉛、砲金、鉄、石、水晶、樹脂等やそれらの複合素材であることが望ましい。
図13(b)に示すように、錘29は、ギボシ状の形態をしており、端部から振動減衰部3aaの貫通穴に挿入し、中間のクビレ部で振動減衰部3aaに取付けることが可能である。振動減衰部3aaが錘29のくびれ部で安定的に取付けれれるためには、振動減衰部3aaは、可撓性体もしくは弾性体である必要がある。重さ、大きさ、そして材質などが異なる複数種類の錘を用いても構わない。また、使用する錘の数や配置にも制限はない。錘の位置を非対称的に配置することにより、定在波の発生を抑制することも可能である。
図13(c)のように、錘29dは、振動減衰部3abの貫通穴を貫通するネジ部が設けられ、ナット29e等の締付部材により、錘29dを振動減衰部3abに取付けることも可能である。この場合、振動減衰部3abは、可撓性体、弾性体、そして剛性体を用いることができる。
図13(d)に示すように、錘29gに磁石29h、そして錘29g’に磁石29h’をそれぞれ結合し、振動減衰部3acを挟んで対面する磁石29hと29h’の吸着力により、錘29gおよび錘29g’を振動減衰部3acに取付けることも可能である。この場合、振動減衰部3acは、可撓性体、弾性体、そして剛性体を用いることができるが、非磁性体が望ましい。
図13(d)では、磁石29hのS極29kと磁石29h’のN極29i’が対面しているが、磁石29hのN極29iと磁石29h’のS極29k’が対面していても構わない。また、錘が磁石29hと磁石29h’の両方に結合している必要はなく、片側のみでも構わないし、磁石29hと磁石29h’が十分な音響インピーダンスを有する場合、錘を省略することができる。磁石29hと磁石29h’の間に、錘と振動減衰部3ac挟み、錘を振動減衰部3acに取付けることも可能である。
図13(e)のように、錘29mを振動減衰部3adに埋め込むことも可能である。この場合、振動減衰部3abは、可撓性体、弾性体、そして剛性体を用いることができる。
(xvi)2つ以上の振動吸収体を用いて、スピーカーユニット保持体を形成することがが可能である。個々の振動吸収体は、吸収周波数特性や吸収レベルなど、固有の特性を持つ。そのため、2つ以上の振動吸収体を併用することにより、各振動吸収体の長所を合わせた振動吸収効果が得られる。複数の振動吸収体を重ねて、もしくは、さらに接着して使用することも可能であるし、複数の振動吸収体を部分的に繋げて1つの振動吸収体を形成しても良い。複数の振動吸収体を繋げるにあたり、その手段は特に制限されない。振動吸収体の材質も振動吸収効果があるものであれば、使用を制限されない。
図14(a)は2種類の振動吸収体を繋げて1つの振動吸収体を形成した実施の形態である。図14(b)は、図14(a)のK−K’線の断面図である。振動吸収体3Pの外周部と振動吸収体3Qの内周部は、リング状に重なり合う部位を持つ。この重なり合う部位を接合具15と15aが挟みこむことにより、振動吸収体3Pと3Qが繋がれる。ネジ11eは、接合具15、振動吸収体3P、振動吸収体Q、および接合具15aを貫通し、ナット12bにより締付られるので、振動吸収体3Pと振動吸収体Qは、接合具15および接合具15aにより係止される。本実施の形態では、スピーカユニット1は、振動吸収体3Pに設けられた貫通穴3vを利用してボルト等により、振動吸収体3Pに係合され、振動吸収体3Qは、振動吸収体3Qに設けられた貫通穴3wを利用してボルト等により、筐体に装着される。しかし、スピーカーユニット1の振動吸収体3Pへの係合や、振動吸収体3Qの筐体への係合は、安定に支持できるのであれば、それらの係合方法に制限を受けない。高い音響インピーダンスを持つ接合具15、15aを用いることにより、接合具15、15aを、不要振動吸収のための錘とすることも可能である。
(xvii)スピーカーユニット用取付具や筐体用取付具にスピーカー防護具を設けることにより、それらの取付具に、スピーカー防護機能を付加させることが可能である。本実施形態では、スピーカー防護具を筐体に取り付ける部材が必要なく、部品コストや組立時間を抑制できるため、産業上の利点がある。図15(a)は、挟み込み式の筐体用取付具7Aに、スピーカー防護具19を設けた実施の形態である。図15(b)は、挟み込み式のスピーカーユニット用取付具4Aに、スピーカー防護具19aを設けた実施の形態である。図15(a)と(b)では、挟み込み式の筐体用取付具の例を示したが、スピーカー防護具がスピーカー前面に取り付けられれば、スピーカー防護具をどのような形式の筐体用取付具や筐体用取付具に設けても構わない。一方、スピーカー防護具を脱着式にすることにより、意匠の異なるスピーカー防護具の付け替え、視聴時の取り外し、メインテナンス性の向上などの効果が得られる。
(xviii)スピーカーユニットは、スピーカーユニット保持体を介して保持できるのであれば、筐体のどの面で保持しても構わないし、球体、卵型、円筒形等、物理的に本発明のスピーカーユニットの保持構造で保持できるのであれば、どのような形状の筐体の、どの位置に設けても構わない。
(xix)図1のようにスピーカーユニットを横向きに保持した場合でも、本発明の効果は十分得られる。しかし、横向きに保持した場合、スピーカーユニットの重量バランスが悪く、スピーカーユニットの姿勢維持のために、スピーカーユニット保持体が強い張力でスピーカーユニットを保持する必要がある。さらに、振動板の運動と磁気回路に加わる反作用により、スピーカーユニットや筐体の揺動が発生する。スピーカーユニットや筐体の揺動は、振動板の基準点を曖昧にするため、音響再生を不明確にする。スピーカーユニットの揺動を抑制するために、スピーカーユニット保持体が強い張力でスピーカーユニットを保持する必要が生じる。スピーカーユニット保持体に張力が発生すると、スピーカーユニット保持体の振動吸収効果は減少する。
しかしながら、図16に示すように、スピーカーユニットを上向き、もしくは下向きに保持すると、重量バランスや揺動の問題が解決されるので、スピーカーユニット保持体の振動吸収効果が十分に発揮され、忠実な音響再生が可能になる。ここで、「スピーカーユニットを上向き、もしくは下向き」には、振動板の運動方向が鉛直方向である場合のほか、前記鉛直方向に対し傾いている場合も含まれる。図16(a)は、スピーカーユニットを上向きに保持した実施形態を示す。図16(b)は、スピーカーユニットを下向きに保持した実施形態であり、筐体下部を脚部2mで支持し、筐体下方に音波を放出する空間を設けている。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xx)スピーカーユニット保持体によるスピーカーユニットの保持以外に、スピーカーユニットの支持手段を設けることにより、本発明の効果をより高めることができる。図17(a)に示す実施の形態では、スピーカーユニット1の背面に設けられた磁気回路と筐体2の底板に結合する支持体20が設けられている。支持体20は、スピーカーユニット1の支持手段であり、筐体2に対するスピーカーユニット1の位置を決定している。スピーカーユニット保持体3がスピーカーユニット1の重量支持を行わないため、スピーカーユニット保持体3に荷重がかかることが回避されるとともに、スピーカーユニット保持体3を、フランジ1dとスピーカーユニット用取付具4、もしくは、筐体2と筐体用取付具7で圧着する力を弱めることができる。したがって、スピーカーユニット保持体3の圧迫や圧縮を避け、スピーカーユニット保持体3の振動吸収効果を高めることができる。結果として、本実施形態では、フランジ1dやフレーム1cの不要振動が効果的に減衰され、より忠実な音響再生が可能になる。さらに、支持体20を設けることにより、スピーカーユニット保持体3を撓ませてスピーカーユニット1を筐体2に保持することが可能になる。スピーカーユニット保持体3を撓ませることにより、スピーカーユニット1の不要振動を効果的に減衰するとともに、スピーカーユニット1から筐体2への振動伝達を顕著にに抑制することができる。前述のように、可撓体や弾性体のスピーカーユニット保持体のみでスピーカーユニットを保持すると、スピーカーユニットが傾くこともある。しかし、支持体を用いてスピーカーユニットを支持すると、スピーカーユニットが傾くことも回避される。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
図17(b)は、スピーカーユニット1を取付板2aから支持体20aで支持した実施形態である。支持体20aは、スピーカーユニット1の磁気回路に結合し、さら取付板の複数箇所に結合することにより、スピーカーユニット1を支持している。支持体は、スピーカーユニットを支持する目的が達成されるのであれば、筐体のどの位置からスピーカーユニットを支持しても構わないし、支持体の形状や個数の制限もない。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xxi)支持体によるスピーカーユニットの支持は、スピーカーユニットが上向き、もしくは下向きの場合でも可能である。図18は、上向きのスピーカーユニット1が支持体20bにより、筐体2Aの底板から支持されている。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
また、吊り上げ体を用いてスピーカーユニットを筐体から吊り上げることが可能である。この実施形態の正面図を図19(a)、そして側面図を図19(b)に示す。筐体2Aの外部に吊り上げ体22が設けられ、吊り上げ支持体23を介してスピーカーユニット1Aが吊り上げられて支持されている。吊り上げ支持体23は、スピーカーユニット1Aの振動板側から磁気回路に結合している。この実施形態では、吊り上げ体と吊り上げ支持体を用いた支持手段により、スピーカーユニットが吊り上げられているため、スピーカーユニット保持体にスピーカーユニットの荷重がかからないため、スピーカーユニット保持体の振動吸収効果が十分に発揮される。また、スピーカーユニットの揺動も抑制されている。さらに、吊り上げ支持体23と吊り上げ体22は、筐体外部に設けられているため、筐体内部に設けられた場合よりも、振動の影響を受けにくく、より忠実な音響再生が可能になる。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
図20(a)は、下向きのスピーカーユニット1を、筐体2Bの天板から支持体20eで支持したスピーカーシステムの正面図である。支持体20eの筐体への結合位置は、スピーカーユニット1の重量を支持できるのであれば、天板に限らず、筐体のどの位置に結合することもできる。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
図20(b)に示すように、筐体2Bの内部に、門型の吊り上げ体22aを設けて、吊り上げ支持体23でスピーカーユニットを支持することも可能である。この実施形態では、吊り上げ体22aは、スピーカーユニット1の重量を吊り上げ支持できるのであれば、形状は制限されない。また、吊り上げ体22aは、筐体底面に限らず筐体のどの位置に結合しても良い。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xxii)スピーカーユニットの支持手段に振動伝達抑制材を設け、筐体からスピーカーユニットのフレームに伝わる振動を抑制することができる。吊り上げ体に振動伝達抑制材を設けた実施形態の正面図を図21(a)、そして側面図を図21(b)に示す。筐体に設けられた吊り上げ体22bの上面に貫通穴が設けられている。そして、貫通穴が設けられた振動伝達抑制材25が、吊り上げ体22bの上面に配置されている。さらに、上端部に平板状の引掛部23rが設けられた吊り上げ支持体23aは、振動伝達抑制材25の貫通穴と吊り上げ体22bの貫通穴を貫通し、そして下端に上向きのスピーカーユニット1Aの磁気回路が結合されている。この実施形態では、振動伝達抑制材25を介して吊り上げ支持体23aの引掛部23rが支持される。さらに、吊り上げ体22bの貫通穴の内径は、吊り上げ支持体23aの貫通部の外径より大きいため、吊り上げ支持体23aは、吊り上げ体22bに接触することなく支持される。その結果、筐体2Aからスピーカーユニットのフレーム1cへの振動伝達が抑制される。
本実施例では、吊り上げ支持体23aを支持するための貫通穴が、吊り上げ体22bに設けられているが、貫通穴である必要もなく、吊り上げ体22bの端が貫入する部位で支持することや、複数の吊り上げ体が吊り上げ支持体の側方から支持することも可能であり、吊り上げ支持体23aの引掛部23rが支持できるのであれば形式や形状に制限はない。また、振動伝達抑制材25についても、引掛部23rと吊り上げ体22bの上面の間に挿入できるのであれば、形状に制限はない。吊り上げ支持体23aの引掛部23rは、振動伝達抑制材25の上面で係止できれば、平板状に限らず、形状に制限はない。振動伝達抑制材25は、引掛部23と吊り上げ体22bと間の振動伝達を抑制できれば素材に制限なく、例えば、ゲル、ゴム、フェルト、ウレタンスポンジ、気泡緩衝材、そして制振金属等を用いてもよい。
スピーカーユニット用錘33を、スピーカーユニット1の磁気回路に設けることにより、スピーカーユニット1の不要振動が減衰され、さらに、スピーカーユニット1と支持体20iの複合体を下方に安定化される。この実施の形態では、スピーカーユニット用錘33は、スピーカーユニットの不要振動を吸収するために設けられているが、不要であれば、スピーカーユニット用錘33を用いずに、外部吊り上げ支持体36とスピーカーユニット1を直接結合しても良い。
本実施形態の変形例として、吊り上げ支持体の上端部に設けられた被挿入部に吊り上げ体の先端を挿入し、振動伝達抑制材を吊り上げ支持体と吊り上げ体の間に挿入することも可能である。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xxiii)下向きのスピーカーユニットの支持手段にも振動伝達抑制材を設けることができる。図22(a)は、筐体と支持体の間に振動伝達抑制材を設けた実施形態を示す。筐体2Cの天板には、貫通穴が設けられている。そして、貫通穴が設けられた振動伝達抑制材25が、筐体2Cの天板の上面に配置されている。さらに、支持体20jは、上端部に設けられた平板状の引掛部20rで振動伝達抑制材25に吊り下げられ、振動伝達抑制材25と筐体2Cの天板に設けられた貫通穴を貫通し、そして下端に下向きのスピーカーユニット1を、スピーカーユニット用錘33を介して結合している。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
図22(b)は、吊り上げ体で構成された支持手段に振動伝達抑制材を設けた実施形態を示す。吊り上げ体22cが筐体内部に設けられている。吊り上げ体22cの上面板に、貫通穴が設けられている。そして、貫通穴が設けられた振動伝達抑制材25が、吊り上げ体22cの上面に配置されている。さらに、吊り上げ支持体23bは、上端部に設けられた平板状の引掛部23rで振動伝達抑制材25に吊り下げられ、振動伝達抑制材25と吊り上げ体22cの貫通穴を貫通し、そして下端に下向きのスピーカーユニット1を、スピーカーユニット用錘33を介して結合している。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xxiv)スピーカーユニットの支持手段は、筐体の外部構造物に結合することもできる。図23(a)は、外部構造物である壁に外部吊り上げ体を結合した実施形態である。外部吊り上げ体35は、その一端が外部構造物40に結合し、他端に貫通穴が設けられている。筐体2Cも外部構造物40に取り付けられ、さらに筐体2Cの天板に貫通穴が設けられている。また、貫通穴が設けられた振動伝達抑制材25は、外部吊り上げ体35の上面に配置されている。外部吊り上げ支持体36は、上端部に設けられた引掛部36aにより、振動伝達抑制材25を介して、外部吊り上げ体35に吊り下げ支持されている。さらに、外部吊り上げ支持体36は、筐体2Cの天板に設けられた貫通穴を貫通し、下端でスピーカーユニット用錘33を介して下向きのスピーカーユニット1に結合することにより、スピーカーユニット1を支持している。このようにして、支持手段を筐体の外に設けることにより、筐体内部の振動の影響を受けず、忠実な音響再生が可能になる。安定に支持できるのであれば、どのような外部構造物に外部吊り上げ体や筐体が設けられても構わない。また、外部吊り上げ体や筐体は、それぞれ別の外部構造物に設けられても良い。この実施の形態では、スピーカーユニット用錘33は、スピーカーユニットの不要振動を吸収するために設けられているが、不要であれば、スピーカーユニット用錘33を用いずに、外部吊り上げ支持体36とスピーカーユニット1を直接結合しても良い。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
図23(b)は、スピーカーユニットを筐体外部から支持体を用いて支持した実施形態である。筐体2Cは、外部構造物40に取り付けられ、さらに筐体2Cの天板に貫通穴が設けられている。外部支持体37は、その一端が外部構造物40に結合し、筐体2Cの天板に設けられた貫通穴を経由し、他端に下向きのスピーカーユニット1が、スピーカーユニット用錘33を介して結合されている。この実施の形態では、支持体および支持手段と筐体は外部構造物に結合しているが、それぞれ別の構造物に結合しても良い。この実施の形態では、スピーカーユニット用錘33は、スピーカーユニットの不要振動を吸収するために設けられているが、不要であれば、スピーカーユニット用錘33を用いずに、外部支持体37とスピーカーユニット1を直接結合しても良い。本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。
(xxv)内部に空間をもつ構造物を筐体にして利用することができる。例えば、本発明を天井裏や車のドア内部やトランクの空間を利用して筐体を構築することができる。本発明のスピーカーユニット保持構造で天井埋込型スピーカーを構築した実施形態を図24に示す。取付板2pに、吊り上げ体22c、振動伝達抑制材25、および支持体23aで構成された支持手段がスピーカーユニット1が取り付けられている。そして、フレーム1cの振動はスピーカーユニット保持体3により吸収される。取付板2pは、天井に設けた取付穴を塞ぐように取り付けられ、天井裏の構造と取付板2pでスピーカーシステムの筐体が形成される。
本実施形態では、スピーカーユニット用取付具4と筐体用取付具7により、スピーカーユニット保持体3が取付けられているが、スピーカーユニット保持体の取付手段はこれに制限されない。この実施の形態では、スピーカーユニット用錘33は、スピーカーユニットの不要振動を吸収するために設けられているが、不要であれば、スピーカーユニット用錘33を用いずに、吊り上げ支持体23aとスピーカーユニット1を直接結合しても良い。振動伝達抑制材を用いず、吊り上げ体22cと吊り上げ支持体23aで構成された支持手段でスピーカーユニットを支持することもできる。天井裏の梁など、建物の構造物を吊り上げ体として、スピーカーユニットを支持することも可能であるし、吊り下げ体として用いている建物の構造物と支持体の間に振動伝達抑制材を設けることも可能である。
(xxvi)スピーカーユニット保持体は、筐体への取付部から、さらに延長して筐体を覆う外装としても用いることができる。
(xxvii)スピーカーユニット保持体に振動減衰部を設けない実施形態も可能であるが、振動吸収の効果を鑑みて、スピーカーユニット保持体のスピーカーユニット接触面と筐体接触面の間隔が、1mm以上設けられることが望ましい。
(xxviii)スピーカーユニットのフレーム部は、丸型である必要はない。また、筐体の開口部も丸型である必要はない。使用するスピーカーユニットの形状や筐体の開口部の形状は、制限なく任意に決定すれば良い。
(xxix)スピーカーユニットや筐体へのスピーカーユニット保持体の取付手段は、任意にそれぞれ独立に選択することができる。また、スピーカーユニットや筐体それぞれに複数の取付手段でスピーカーユニット保持体を取付けることも可能である。