JP6450575B2 - インバータノイズ除去方法、およびインバータを含む設備の診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インバータノイズ除去方法、およびインバータ等を含む設備の診断方法に関する。
昨今、特に加工組立型プラントの生産現場において、PWMインバータ方式駆動のモータが多く使用されるようになってきている。PWMインバータ方式駆動のモータには、設定値(変調信号周波数)を変更するだけで、簡単に回転数を変えて運転することができるという利点がある。
一方で、モータなどの回転機器において回転軸を支持している転がり軸受やすべり軸受が何らかの異常が生じると常時とは異なる振動や異音が発生し、このような状態で駆動を継続すると転がり軸受やすべり軸受の破損に至り、設備停止に至ることがある。
そこで、従来、このような異常が生じているかどうか診断するため、例えば回転軸で回転している転がり軸受内輪転送面に発生したきずと転動体の接触により生じている音響を検出して音響信号を取り出し、該音響信号を利用して診断することによって設備の状態監視をすること(振動診断を利用した設備診断)が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−136776号公報
しかしながら、モータが上述のようなPWMインバータ方式駆動のものであると、キャリア周波数に起因するノイズ信号が発生するため、振動診断などの設備診断において状態監視が困難となる。具体的には、以下のとおりである。
(1)絶対値判定時の問題
絶対値判定(法)とは、以下の表1、表2に示す様な基準値に測定値を照合して現在の状態を判定する方法である。表1は、回転体のアンバランスやカップリングのミスアライメント、締結部の緩みやガタなどの揺れ現象を判定する基準の一例(AMD(Asahikasei Machine Diagnosis)速度判定基準)である。振動速度値の周波数範囲は、例えば10Hz〜1kHzである。
表2における各クラスおよびゾーンについて説明しておくと、以下のとおりである。
クラスI:通常の運転条件下で、全体の完成機の一部の構成要素として組み込まれたエンジン及び機械[代表例 出力15kW以下の汎用電動機]
クラスII:特別な基礎を持たない中形機械(代表例 15kW〜75kWの電動機)及び特別な基礎上に堅固に据え付けられたエンジン又は機械(300kW以下)
クラスIII:大形電動機及び大形回転機で、剛基礎又は振動の方向に比較的高い剛性を持つ重い基礎上に据え付けられたもの
クラスIV:大形電動機及び大形回転機で、振動の測定方向に比較的柔らかい剛性をもつ基礎上に据え付けられたもの(代表例 出力10MW以上のターボ発電機セット及びガスタービン)
ゾーンA:新しく設置された機械の振動値の通常の範囲で、一般的には新設機械の納入時の振動管理値となる場合がある。
ゾーンB:一般に何の制限もなく長期運転が可能である範囲
ゾーンC:長期間の連続運転は期待できない範囲で、改善処置のための限定した期間だけこの振動条件で運転可能である範囲で、このゾーン内に運転警報値が設定される。警報値は機械の特性にあわせて個別に設定されるべきであるが、経験・情報がない場合はゾーンB/Cの境界値の1.25倍に設定することを推奨している。
ゾーンD:このゾーンの振動値の機械は、損傷を起こすのに十分なほどに厳しいと通常考えられる範囲で、運転停止値はこの範囲にあるのが一般的である。
本件において、転がり軸受の絶対値判定といっているのは、図23のような基準で判定することである。横軸のdN値は、軸受内径と回転数の積であり、転がり軸受の転動体の周速を示す。例えば、軸受型式6312であれば内径60mmφなので回転数1500rpm時ではdN値は9.0×10E4となる。このとき測定値が1.0Gであれば「注意」と判定される。ノイズ成分により、正常値が高めで発生するので異常成分が上昇しても見分けづらくなる。
また、正常値との倍率で判定する方法を「相対判定法」と言う(図24、図25参照)。図24と図25は同じモータをインバータで駆動した場合と商用電源で駆動した場合の違いを示す。図24では図25で発生していないノイズ成分が高いレベルで発生していることが分かる。これらの成分は、すべてキャリア周波数周りの側帯波である。この成分の発生により、加速度レベルが上昇するので、先の基準値で「正常なのに注意」と判定されてしまう場合がある。このため、加速度値で判定する絶対値判定基準の利用が困難となる。また、正常時でも注意領域となる場合がある。ノイズ成分の高い振幅により、軽度な異常時における異常信号の振幅が小さい時期に、異常を精度良くとらえることができないので、異常を早期に検出することが困難となる。
(2)精密診断時の問題
ここでいう「精密診断」とは、周波数分析やエンベロープ解析などの信号処理を駆使して、異常の種類や発生メカニズムを解明し、対策を立案するものである。振動診断には、大きく分けて「簡易診断」と「精密診断」とがあり、「簡易診断」とは日常において決められた周期毎に振動値の測定を行い、振動値の傾向管理(トレンド管理)を行うことで状態監視を行うものである。
簡易診断技術の目的を挙げれば、以下のとおりである。
(1)設備の異常を早期に検出すること
(2)設備の状態を劣化傾向管理により定量的にトレースすること
(3)設備状態の監視と保護
(4)精密診断対象設備の抽出
「簡易診断」にて、正常ではない(上昇傾向を示してきている)あるいは基準値に対し「注意域」に入ってきたという傾向を示してきた場合に「精密診断」を行う。精密診断技術の目的を挙げれば、以下のとおりである。
(1)異常原因を明確にすること
(2)異常や劣化の種類及び発生位置を標定すること
(3)異常や劣化の程度(過酷度)を知り、進行を予測すること
(4)最適な修復方法や修復時期を決めること
上述した「簡易診断」と「精密診断」の2つの組み合わせた状態監視が実施されている。ところが、インバータ駆動時のモータ部における振動加速度値を求めると、ノイズによりレベル上昇して上記絶対判定法において誤診断となる可能性がある。また、インバータ駆動時のモータ部の振動加速度波形をエンベロープ処理すると2fs(変調信号周波数の2倍)およびその高調波が発生し、モータ異常の判定が困難となる。また、2fsおよびその高調波が転がり軸受のきず周波数(転がり軸受にきずがあることに起因して生じる周波数)と近似している場合があり、誤診となる可能性がある。
本発明は、PWMインバータ方式駆動のモータが使われている場合に、キャリア周波数に起因するノイズ信号の影響を回避して、振動診断における異常信号を精度よく検出できるようにした、インバータノイズ除去方法、およびインバータ等を含む設備の診断方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく、本発明は、インバータ、該インバータによって制御される誘導電動機、該誘導電動機によって駆動される回転機器を含む設備を動作時に生じるノイズを除去する方法であって、
前記インバータによって誘導電動機への入力信号を変調する際のキャリア周波数fbと、変調信号周波数fsによって、基本成分以外の主要な周波数成分を
(2n−1)*fb±2mfs
2n*fb±(2p−1)fs
(ただし、n,m:1,2,3,・・・であり、p:2,3,4)
で表したうえで、前記電流のキャリア周波数fbの各側波帯の周波数成分をfH(n)として、前記誘導電動機が発生するトルクの周波数
|fs±fH(n)|
を算出し、
該算出したトルクの周波数が振動周波数に一致または対応する関係にあることに基づき、
前記算出したトルク周波数に該当する振動スペクトルの振幅値を、当該振動周波数の前後の高い周波数および低い周波数のそれぞれの振幅値の平均値で置換することによって、前記振動のスペクトルに発生しているノイズ成分を除去し、
前記ノイズ成分を除去した前記スペクトルを逆フーリエ変換し、前記誘導電動機で採取された振動加速度波形をノイズ成分が除去された形で求めることを特徴とする。
一般に、加速度センサ(圧電型)より採取されたモータ部の振動加速度は、インバータ駆動の場合、ノイズ成分が含まれている。ノイズ成分(ここではこれはノイズという表現をしている)は、インバータのキャリア周波数に起因した加速度成分であり(キャリア周波数およびその高次成分の周りに変調周波数による側帯波である)、この成分が邪魔をすることでモータの健全性を評価(異常を検出)することが困難となっていると考えられる。また、振動加速度振幅値がノイズ分も含まれているため高めとなってしまい、異常兆候をとらえにくい。異常の種類を弁別する時も、エンベロープスペクトルに変調成分の2倍の高次成分が発生し、異常診断が困難となっていたとの知見が得られた。
本発明は、これらのノイズ発生メカニズムから発生周波数の規則性を見出し、発生ノイズ周波数を求め、その周波数をスペクトル上でカットし、その周波数のスペクトルレベルをノイズ周波数の前後の周波数の平均値による置換を行いノイズカットしたスペクトルを求める。そのノイズカットされたスペクトルを逆フーリエ変換することでノイズを除去した加速度波形に戻し、それを用いてモータ設備の状態を示す振動加速度値を得る事を可能としたものである。すなわち、振動測定前に把握しているキャリア周波数と変調信号周波数の値からノイズ発生周波数が算出できることで、その周波数をスペクトルからカットしてノイズが含まれていないスペクトルを求め、そのスペクトルから逆フーリエ変換して加速度波形を求め、ノイズの含まれていない振動加速度値レベルを求めることができる。またこの加速度波形をエンベロープ変換したスペクトルから上記2fsおよびその高調波が発生しないエンベロープスペクトルを用いて精度の高い異常診断を実現した。
要は、本発明は、そもそも周波数が違う「電流」と「振動」に着眼し、電流スペクトルと、トルクのスペクトルとの共通性を見いだし、スペクトルからノイズを除去するという前処理をする点に一つの特徴を有する。また、異常の種類の弁別事にもノイズ成分が除去できることで異常の種類が明確に判別でき、的確なメンテナンス対応をすることが可能となる。これは、致命的な故障の未然防止に繋がり、生産停止に至らずにすむので、生産性の向上に寄与できる。
また、本発明に係る診断方法は、インバータ、該インバータによって制御される誘導電動機、該誘導電動機によって駆動される回転機器、および該回転機器を含む設備を診断する方法であって、上述のインバータノイズ除去方法を含む、というものである。
本発明によれば、PWMインバータ方式駆動のモータが使われている場合に、キャリア周波数に起因するノイズ信号の影響を回避して、振動診断における異常信号を精度よく検出することができる。
PWMパルスの発生原理を示す図である。 単相の場合のPWMパルス波形を示す図である。 二重フーリエ級数による解析を示す図である。 三相正弦波PWMインバータのパルス発生について示す図である。 三相PWMインバータの出力周波数スペクトルを示す図である。 インバータノイズ周波数確認試験における振動と電流スペクトルの比較(2kHz周辺)を示すグラフである。 インバータノイズ周波数確認試験における振動と電流スペクトルの比較(4kHz周辺)を示すグラフである。 電流スペクトルにおけるキャリア周波数(2000Hz)の側波帯を示す図である。 電流スペクトルにおけるキャリア周波数(4000Hz)の側波帯を示す図である。 振動スペクトルにおけるキャリア周波数(2000Hz)の側波帯を示す図である。 振動スペクトルにおけるキャリア周波数(4000Hz)の側波帯を示す図である。 試験装置のモータ軸受部の振動加速度スペクトル(商用電源60Hz)を示す図である。 試験装置のモータ軸受部のインバータ駆動時の振動加速度スペクトル(正常軸受)を示す図である。 インバータノイズカット後の加速度スペクトル(正常軸受)を示す図である。 軸受外輪きず時におけるインバータノイズカット後と商用電源時のスペクトル比較を示す図である。 軸受外輪きず時におけるインバータノイズ発生時と商用電源時のスペクトル比較を示す図である。 ノイズ除去後のエンベロープスペクトル(外輪傷軸受)を示す図である。 商用電源におけるエンベロープスペクトル(外輪傷軸受)を示す図である。 ノイズ除去後のエンベロープスペクトル(正常軸受)を示す図である。 インバータ駆動ではない場合として商用電源を表示した場合におけるエンベロープスペクトル(正常軸受)を示す図である。 設備の診断システムの概要を示すブロック図である。 設備の診断システムにおけるノイズ除去の流れの概要を示すフローチャートである。 電流スペクトルにおけるキャリア周波数、側波帯等を示す図である。 電流スペクトルにおけるキャリア周波数を、その両側(前後)に位置するスペクトルのそれぞれの振幅値の平均値で置換することについて説明する図である。 AMD転がり軸受判定基準を示すグラフである。 インバータモータにおける振動加速度スペクトル(キャリア周波数2kHz、変調周波数60Hz)を示す図である。 商用電源(インバータでない場合)における振動加速度スペクトル(キャリア周波数2kHz、変調周波数60Hz)を示す図である。 従来の異常診断システムの概要を参考として示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
<PWMインバータ(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)における電流スペクトル発生原理>(「PWM電力変換システム」、共立出版:谷口勝則著 参照)
現在、加工組立プラントの生産現場において、最も使用されているインバータ方式がPWMインバータである。この方式において、キャリア周波数およびその高次成分の周りに発生する側帯波が発生する。
図1にPWMパルスの発生原理を示す。商用電源の周波数である交流を直流に変換し、その入力直流電圧を図1のように切り刻んで出力電圧をパルス状にし、そのパルスの数、間隔、幅などを制御し目的の周波数の交流を得るものである。
変調信号として正弦波es、キャリア信号として三角波ebを用いた場合を示す。ebとesを比較してスイッチング素子をON、OFFすることにより電圧波形を得る。つまり、(1)es>ebの時 Ed/2を出力し、(2)es<ebの時 −Ed/2を出力する ことで図1(b)のパルス波形を得る。
このように得られた単相の場合のPWMパルス波形を図2に示す。この波形はパルス幅が周期的に変調を受ける波形(Pulse幅変調波形)となっており、フーリエ級数では表せなく2重フーリエ級数で表される。
つまり、図3に示すように面XOY上に壁の高さHでf(y)なる同一波形の壁が2π周期で並んでいる立体波形上に面XOYに垂直な面OAを考えると、OAがf(y)を切った断面をOX上に投影した波形図3(b)がPulse変調波形となる。
ここで、x=ωbt,y=ωstとすると、このときの波形の二重フーリエ級数は数式(1)のように示される。
ここで、
である。
一般には、数式(2)に示す複素二重フーリエ級数の形で表される。
ここで、
である。
次に、単相ハーフブリッジインバータ(図1、図2参照)で考える。変調信号es
で表すと、パルスエッジが生じる位相角θ1、θ2は図1(a)の関係から次式となる。
ここで、Es:変調信号の振幅値、Eb:キャリア三角信号の振幅値
M:変調度(=Es/Eb
この場合の複素二重フーリエ係数は数式(3)となる。
ただし、
また、今回の解析対象となる三相正弦波PWMインバータのパルスは図2の波形が120°の位相差を持つものということができ、これは、図4のような波形となる。
ここで、数式(3)に変換係数λb,nを乗じて、
(1)直流成分(m=0,n=0)、
(2)基本周波数成分(m=0,n=1)
(3)基本波の高調波成分(m=0,n>1)
(4)キャリア周波数の高調波成分(m≧1、n=0)
(5)キャリア周波数の側帯波成分(m≧1,n≠0)
それぞれの複素二重フーリエ係数を求めると基本周波数成分とキャリア周波数の側帯波のみの以外はすべて振幅0となる。
これにより三相正弦波PWMインバータの出力波形は数式(4)のようになる。つまり、側帯波の周波数は、
m=1,n=±2のとき …… mωb±nωs=ωb±2ωs
m=1,n=±4のとき …… mωb±nωs=ωb±4ωs
m=1,n=±6のとき …… mωb±nωs=ωb±6ωs
m=2,n=±1のとき …… mωb±nωs=2ωb±ωs
m=2,n=±5のとき …… mωb±nωs=2ωb±5ωs
なお、n=±3のときは、三相の場合各相で打ち消し合って発生しない。
・・・(4)
ここで、
である。
したがって、基本成分以外の主要な周波数成分は、
fb±2fs,fb±4fs,fb±6fs・・・
2fb±fs,2fb±5fs,2fb±7fs・・・・
ですべてキャリア周波数の側帯波成分である。なお、
fb:キャリア周波数、fs:変調信号周波数
である。
<誘導電動機が発生するトルクの周波数>(「インバータに起因する圧縮機の強制ねじり振動」、p74、(2)式:田中謙次他 参照)
上記のPWMインバータ誘導電動機が発生するトルクの周波数は次式(数式(5))で求められる。すなわち、電流のキャリア周波数の各側帯波の周波数成分をfH(n)とすると、
このトルクは固定子と回転子間の電磁力であり、この電磁力によって振動が発生する。したがって、インバータによって発生するノイズ振動は、このトルクの周波数に一致する(図5参照)。
<インバータノイズ周波数確認試験>
実験室の電動機15kWをインバータのキャリア周波数2000Hz、変調信号周波数40Hzで計測した振動スペクトルと電流スペクトルの結果を図6、図7に示す。上記シミュレーション結果と一致した周波数が電流、振動とも発生していることがわかる。
つまり、電流スペクトルは以下の規則性(表3参照)に基づいてキャリア周波数の側帯波が発生する(図8、図9参照)。
また、振動スペクトルは以下の規則性(表4、表5参照)に基づいてキャリア周波数の側帯波が発生する(図10、図11参照)。
<インバータノイズカット試験>
図12に商用電源60Hzで駆動した(インバータ駆動ではない場合)の試験装置モータ軸受部の振動加速度スペクトルを示す(FFT12800ライン)。また、図13に同じモータでキャリア周波数2kHz、同じく変調信号周波数60Hzの場合の加速度スペクトルを示す。全く異なったスペクトルとなり、ほとんどインバータノイズが占めていることがわかる。
図14に上記方式でノイズ周波数を計算し、カットしたスペクトルと図12で示した商用電源時のスペクトルの比較を示す。つまり、キャリア周波数2000Hzと変調信号60Hzから数式(4)、数式(5)を用いて算出したノイズ周波数の振幅を0としたスペクトルである。多少、高周波数領域に残るもののノイズ周波数の多くがカット出来ていることがわかる。
また、モータ軸受の外輪に幅0.3mmのスリットきずを付加した時のインバータノイズカット後のスペクトルと商用電源時のスペクトルの比較を図15に示す。軸受きずの時もインバータノイズがカットされ、商用電源時と変わらないスペクトルが得られている。図16に示すようにインバータノイズが除去されていることがわかる。
次に、図15で得たノイズ除去された加速度スペクトルを逆フーリエ変換して加速度波形に戻し、エンベロープ処理を行って再度フーリエ変換したエンベロープスペクトルを図17に示す。数式(6)で示す外輪きず周波数foutおよびその高調波が明確に発生していることがわかる。つまり、商用電源時と同じ結果が得られている(図18参照)。
正常軸受をノイズカットした場合のエンベロープスペクトルを図19に示す。少々残っていたインバータノイズ成分の影響で120Hz(変調信号周波数60Hzの2倍)の高次成分が低いレベルで発生していることがわかる。なお、図20は、インバータ駆動ではない場合として商用電源を表示した場合におけるエンベロープスペクトル(正常軸受の場合)を示す図である。
<診断システムの概要と、診断システムにおけるノイズ除去のフロー>
ここで、上述した診断処理ないし機能を実現する診断システム100の一例を図21に示し、併せて、該診断システム100におけるノイズ除去のフローを図22Aに示して説明する。診断システム100は、振動センサ10、プリアンプ20、コンピュータ30を含む。
振動センサ(一例として、圧電型加速度センサ)10は、モータ軸受等(以下、単に軸受という場合がある)における振動を検出し、検出信号(ノイズを含む加速度波形)を振動データとして出力する。プリアンプ20は、振動センサ10の検出信号を増幅し、コンピュータ30に送信する。
コンピュータ30は、設備診断ソフトを有しており、振動センサ10が検出し送信した振動データの各種処理、判定とその結果の出力を行う。本実施形態のコンピュータ30は、フィルタ部32、アンプ部34、FFT部36等の各部としての機能を有し、以下のような各処理を実行する(図21参照)。
フィルタ部32は、プリアンプ20によって増幅された振動データをフィルタリングする。アンプ部34は、フィルタリングされたデータを増幅する。FFT部36は、増幅されたデータを高速フーリエ変換する。
また、コンピュータ30は、キャリア周波数fbと、変調信号周波数fsとを入力し(図22AのステップSP1)、ノイズ周波数を自動計算する。すなわち、
(2n−1)*fb±2mfs
2n*fb±(2p−1)fs
(ただし、n,m:1,2,3,・・・であり、p:1,3,4,・・・)を算出し(ステップSP2)、次に、電流のキャリア周波数fbの各側波帯の周波数成分をfH(n)として、前記誘導電動機が発生するトルクの周波数
|fs±fH(n)|
を算出する(ステップSP3)。
ちなみに、n=1時はキャリア周波数の1倍成分、m=1は1個目の側帯波を示す。したがって、n,mを含む上述の2つの式の上側(上式)においては、キャリア周波数の奇数倍時に変調信号周波数の偶数倍の側帯波が発生し、下式においてはキャリア周波数の偶数倍時に変調信号周波数の奇数倍の側帯波が発生する。但し、3倍の側帯波は発生しない(三相なのでそれぞれで打ち消し合うため)。よって、pの値は1,3,4・・・となる。
さらに、コンピュータ30は、この計算結果と、高速フーリエ変換されたデータとから、ノイズ周波数カット処理をする。具体的には、算出した |fs±fH(n)| のレベル(振幅値)を0とすることによって(ステップSP4)、電流のスペクトルに発生しているノイズ成分を除去する(ノイズ周波数カット処理)。なお、これは、当該算出した|fs±fH(n)| のレベル(振幅値)を、電流のキャリア周波数fbの両側(前後)に位置する高い周波数のスペクトルおよび低い周波数のスペクトルのそれぞれの振幅値の平均値で置換することに相当する(図22B、図22C参照)。上記のノイズ周波数カット処理後、コンピュータ30は、該処理後のデータ(ノイズ除去後の加速度スペクトル)を出力する。
併せて、コンピュータ30は、該処理後のデータ(ノイズ除去後の加速度スペクトル)を逆フーリエ変換し、簡易診断する場合は、変換後のデータ(ノイズ除去後の加速度波形)のO/A値(オーバーオール値:FFT分析された各周波数のパワースペクトル(Y軸値)の積和)を算出し(ステップSP6、SP7)、算出後のデータ(ノイズ除去後の加速度値)を出力する(ステップSP10)。この診断システム100によれば、この加速度値の傾向管理(トレンド管理)を行うことで状態監視を行うことができる。なお、O/A値の代わりとして、RMS値(実効値)、平均値を算出することもできる。
また、コンピュータ30は、精密診断する場合は、逆フーリエ変換後のデータ(ノイズ除去後の加速度波形)に包絡線処理(エンベロープ処理)し(ステップSP6、SP8)、さらに高速フーリエ変換する(ステップSP9)。さらに、コンピュータ30は、軸受の回転周波数から、当該軸受のきず周波数(転がり軸受等にきずがあることに起因して生じる周波数)を自動計算する。コンピュータ30は、この自動計算後のデータと、高速フーリエ変換後のデータ(加速度エンベロープスペクトル)とから、軸受の異常種類を自動判定して弁別し、判定後のデータ(異常種類、対策)を出力する(SP10)。異常種類には、軸受きず(外輪、内輪、転動体、保持器)、軸受潤滑不良(油ぎれ、異物混入)、軸受はめあいガタなどがある。また、対策としては、軸受の各種状態に対応した判定の内容(表1参照)を表示すること等がある。
以上、ここまで説明した本実施形態の異常診断方法では、振動測定前に把握しているキャリア周波数と変調信号周波数の値からノイズ発生周波数が算出できることで、その周波数をスペクトルからカットして(またはカット周波数の両側のスペクトルレベル平均値で置換して)ノイズが含まれていないスペクトルを求め、そのスペクトルから逆フーリエ変換して加速度波形を求め、ノイズの含まれていない振動加速度値レベルを求めることができる。また、この加速度波形をエンベロープ変換したスペクトルから2fs(変調信号周波数の2倍)およびその高調波が発生しないエンベロープスペクトルを用いて精度の高い異常診断を実行することを実現した。
<比較例>
従来の異常診断では、振動変位、振動速度値を求める際、加速度波形(フィルタリングし、アンプで増幅したもの)を積分回路に通してレベルを求め、そのレベル(振動加速度値)による傾向管理が行われていた(図26参照)。そこでは、振動や音のトルク周波数と、加速度診断手法との関係は知見されていなかった。
本発明は、インバータ、該インバータによって制御される誘導電動機、該誘導電動機によって駆動される回転機器、および該回転機器を含む設備を診断する場合に適用して好適である。
10…振動センサ
20…プリアンプ
30…コンピュータ
100…診断システム

Claims (2)

  1. インバータ、該インバータによって制御される誘導電動機、該誘導電動機によって駆動される回転機器を含む設備を動作時に生じるノイズを除去する方法であって、
    前記インバータによって誘導電動機への入力信号を変調する際のキャリア周波数fbと、変調信号周波数fsによって、基本成分以外の主要な周波数成分を
    (2n−1)*fb±2mfs
    2n*fb±(2p−1)fs
    (ただし、n,m:1,2,3,・・・であり、p:2,3,4)
    で表したうえで、前記キャリア周波数fbの各側波帯の周波数成分をfH(n)として、前記誘導電動機が発生するトルクの周波数
    |fs±fH(n)|
    を算出し、
    該算出したトルクの周波数が振動周波数に一致または対応する関係にあることに基づき、
    前記算出したトルク周波数に該当する振動スペクトルの振幅値を、当該振動周波数の前後の高い周波数および低い周波数のそれぞれの振幅値の平均値で置換することによって、前記振動のスペクトルに発生しているノイズ成分を除去し、
    前記ノイズ成分を除去した前記スペクトルを逆フーリエ変換し、前記誘導電動機で採取された振動加速度波形をノイズ成分が除去された形で求めることを特徴とする、インバータノイズ除去方法。
  2. インバータ、該インバータによって制御される誘導電動機、該誘導電動機によって駆動される回転機器を含む設備を診断する方法であって、
    請求項1に記載のインバータノイズ除去方法を含む、インバータを含む設備の診断方法。
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