以下、図面を参照しながら実施形態に係る医用画像処理装置1を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置1の構成を示している。医用画像処理装置1は、インターフェース部3と、記憶部5と、被検体厚決定部7と、散乱関数決定部9と、基準値決定部11と、画素値変換部13と、散乱線画像発生部15と、散乱線低減画像発生部17と、入力部19と、表示部21と、制御部23とを有する。
インターフェース部3は、ネットワークを介して複数の医用画像診断装置に接続される。医用画像診断装置は、例えば、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:以下、CTと呼ぶ)、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下MRIと呼ぶ)装置、超音波診断装置、核医学診断装置(例えば、陽電子放出コンピュータ断層撮影(Positron Emission Computed Tomography:以下、PETと呼ぶ)装置、単光子放出コンピュータ断層撮影(Single Photon Emission
Computed Tomography:以下、SPECTと呼ぶ)装置)などである。
インターフェース部3は、医用画像診断装置から取り込んだ医用画像およびX線条件を、後述する記憶部5に出力する。X線条件は、X線撮影およびX線透視における、管電圧、管電流、パルス時間、X線を照射する範囲を示す照射野などの条件である。なお、インターフェース部3は、医用画像診断装置から取り込んだ医用画像を、基準値決定部11、画素値変換部13、散乱線低減画像発生部17、表示部21などに、適宜出力してもよい。
記憶部5は、インターフェース部3から取り込んだX線条件、医用画像、後述する入力部19から送られてくる操作者の指示などを記憶する。なお、X線条件は、後述する入力部19を介して操作者が適宜変更可能である。操作者の指示は、後述する入力部19にて操作者が入力する各種指示、命令、情報、選択、設定などである。なお、記憶部5は、後述する散乱線補正処理に関するプログラムを記憶してもよい。
被検体厚決定部7は、記憶部5に記憶されたX線条件に基づいて被検体厚を決定する。X線条件はX線の発生に関する、管電圧、管電流、撮影時間などの条件である。被検体厚決定部7は図示していないメモリを備え、例えば、管電圧に対する被検体厚の対応表(以下、管電圧体厚対応表と呼ぶ)を記憶する。なお、管電圧体厚対応表は、管電圧以外の他の要素(例えば管電流、管電流時間積など)に対する被検体厚の対応表であってもよい。具体的には、被検体厚決定部7は、記憶部5から読み出したX線条件および管電圧体厚対応表に基づいて、被検体厚を決定する。なお、被検体厚は、後述する入力部19を介して、操作者の指示により決定されてもよい。
散乱関数決定部9は、記憶部5に記憶されたX線条件と、被検体厚決定部7で決定された被検体厚とに基づいて、散乱関数を決定する。散乱関数決定部9は図示していないメモリを備え、X線条件および被検体厚に対する散乱関数の対応表(以下、散乱関数対応表と呼ぶ)を記憶する。なお、散乱関数とは、医用画像において散乱線成分に対応する関数である。具体的には、散乱関数決定部9は、被検体厚決定部7で決定された被検体厚と記憶部5から読み出したX線条件、および散乱関数対応表とに基づいて、散乱関数を決定する。
基準値決定部11は、医用画像を構成する複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値を決定する。基準値決定部11は図示していないメモリを備え、所定の定数を記憶する。なお、所定の定数は、後述の入力部19を介して操作者の指示により変更されてもよい。所定の定数については、後程詳述する。基準値決定部11は、医用画像を構成する複数の画素値の最頻値を決定し、上記代表値として用いる。
なお、X線透視あるいは連続X線撮影などにおいて、上述の被検体厚決定部7、散乱関数決定部9、基準値決定部11の処理は、X線透視あるいは連続X線撮影などの前に実行されてもよい。上記各々の処理に用いられる医用画像は、X線透視あるいは連続X線撮影などの前に、インターフェース部3を介して入手される。
図2は、医用画像を構成する複数の画素値の分布(画素値分布)の一例を示す図である。画素値分布において直接線成分は、被検体Pの透過による線量の減弱がないため、非直接線成分に比べ高い画素値の範囲に存在する。
また、被検体Pのうち部分的に厚みの薄い部分(以下、薄体厚部分と呼ぶ)を透過した非直接線成分は、直接線成分と同様に、被検体Pの透過による線量の減弱が少ないため、非直接線成分に比べ高い画素値の範囲に存在する。説明を具体的にするため、胸部を対象とした医用画像を用いて説明する。胸部を対象とした医用画像において、胸部の厚みはほぼ一定である。しかし、被検体Pと背景との境界部分あるいは腕や首などの部分が、医用画像に投影される場合がある。上記部分は、胸部に比べ厚みが薄いため、被検体Pの透過による線量の減弱が他の非直接線成分に比べて少ない。従って、薄体厚部分を透過した非直接線成分は、他の非直接線成分に比べ高い画素値の範囲に存在する。
以下、説明を簡単にするために、直接線成分を有する医用画像についてのみ説明する。薄体厚部分を透過した非直接線成分を有する医用画像についても、同様の効果を有する。
画素値変換部13は、図示していないメモリを備え、画素値変換表を記憶する。画素値変換表は、変換前の画素値と変換後の画素値との対応関係を示している。画素値変換部13は、画素値変換表および基準値に基づいて、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換する。例えば、画素値変換部13は、医用画像における直接線成分を有する画素の画素値を、低い画素値に変換する。
具体的には、画素値変換表は、例えば以下のような、変換前の画素値と変換後の画素値との対応関係を表す。画素値変換部13は、医用画像の画素値のうち基準値以下の画素値に対して恒等変換を実行する。なお、画素値変換部13は、医用画像の画素値のうち基準値以下の画素値を不変としてもよい。画素値変換部13は、医用画像の画素値のうち基準値以上であって基準値の2倍以下である画素値を、基準値以下の画素値に変換する。画素値変換部13は、医用画像の画素値のうち基準値の2倍以上の画素値を0に変換する。なお、基準値以上であって基準値の2倍以上である画素値を低い画素値に変換することにより、医用画像の画素値を変換した画像(以下、変換画像と呼ぶ)を用いて、後述する散乱線画像発生部15により発生された散乱線画像において、アーチファクトの発生を抑制させることができる。
以下、説明を具体的にするために、上記対応関係を持つ画素値変換表を一例として用いる。
なお、後述の入力部19において、操作者などの指示により基準値を変更させることで、画素値変換表は変更される。基準値は、所定の定数を変更することで変更される。所定の定数について、詳細は後述する。以下、医用画像の画素値を変換した画像を、変換画像と呼ぶ。
散乱線画像発生部15は、医用画像を構成する複数の画素値を画素値変換部13により変換した変換画像を、散乱関数に基づいて、医用画像における散乱線画像に変換する。具体的には、散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を散乱関数のフーリエ変換と1との和で除算する(以下、除算の結果を散乱関数項と呼ぶ)。散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することで、散乱線画像のフーリエ変換を発生する。
散乱線画像発生部15は、散乱線画像のフーリエ変換に逆フーリエ変換を適用することで、散乱線画像を発生する。変換画像のフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することは、実空間において、医用画像の画素の位置に応じて近似的に散乱関数を変化させることに対応する。すなわち、散乱線画像は、散乱関数を医用画像の画素の位置に応じて近似的に変化させた画像である。
散乱線低減画像発生部17は、医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱線低減画像を表示部21に出力する。図3は、直接線成分を有する医用画像の散乱線低減画像の一例を示す図である。図3における領域Aは、直接線成分が多く含まれる画素領域である。図3から明らかなように、直接線成分を有する医用画像においても、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、適切に散乱線補正処理が実行されている。すなわち、過度に補正すること(以下、過補正と呼ぶ)なく散乱線補正処理が実行されている。図4は、直接線成分を有しない医用画像の散乱線低減画像の一例を示す図である。図4から明らかなように、直接線成分を有しない医用画像においても、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、適切に散乱線補正処理が実行されている。
入力部19は、操作者などからの各種指示、命令、情報、選択、設定などを後述する制御部23に入力する。なお、入力部19は、所定の定数を操作者の指示により制御部23に入力してもよい。入力に基づいて、制御部23は、基準値決定部11のメモリに記憶された所定の定数を更新する。所定の定数は、直接線成分の画素値を低い画素値に変換するような値が望ましい。
入力部19は、上記各種指示、命令、情報、選択、設定などを入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、マウス・ホイール、キーボード等の入力デバイスを有する。なお、入力デバイスは、表示部21における表示画面を覆うタッチパネルでもよい。入力部19は、基準値決定部11で用いる医用画像上の関心領域を入力することも可能である。例えば、表示部21が表示した医用画像上にマウスのカーソルを移動させ、クリック、ドラッグなどを行うことにより、関心領域を設定する操作を入力する。
表示部21は、散乱線低減画像発生部17で発生された散乱線低減画像を表示する。また、関心領域を入力する際に、医用画像を表示することも可能である。
制御部23は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御部23は、入力部19から送られてくる操作者の指示などの情報を、図示していないメモリに一時的に記憶する。制御部23は、メモリに記憶された操作者の指示などに従って、画像処理を実行するために、被検体厚決定部7、散乱関数決定部9、基準値決定部11、画素値変換部13、散乱線画像発生部15、散乱線低減画像発生部17などを制御する。
図5は、第1の実施形態における散乱線補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
X線条件が、記憶部5から読み出される(ステップSa1)。X線条件に基づいて、被検体厚が決定される(ステップSa2)。被検体厚とX線条件とに基づいて、散乱関数が決定される(ステップSa3)。X線条件によりX線撮影あるいはX線透視された医用画像を構成する複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値が決定される(ステップSa4)。医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値が基準値より低い画素値に変換される(ステップSa5)。医用画像の画素値を変換された変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像が発生される(ステップSa6)。医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像が発生される(ステップSa7)。散乱線低減画像が表示される(ステップSa8)。
(変形例)
第1の実施形態との相違は、基準値決定部11において、関心領域に含まれる画素値の代表値に基づいて基準値を決定することにある。
入力部19は、操作者などからの関心領域の設定を制御部23に入力する。
基準値決定部11は、入力部19で入力された関心領域に含まれる複数の画素値の平均値または中央値を代表値として用いることで、基準値を決定する。図6は、医用画像における関心領域の設定の一例を示す図である。
図7は、第1の実施形態の変形例における散乱線補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
表示部21で、医用画像が表示される(ステップSb1)。入力部19で入力された関心領域が、記憶部5に記憶される(ステップSb2)。X線条件が、記憶部5から読み出される(ステップSb3)。X線条件に基づいて、被検体厚が決定される(ステップSb4)。被検体厚とX線条件とに基づいて、散乱関数が決定される(ステップSb5)。X線条件によりX線撮影あるいはX線透視された医用画像の関心領域に含まれる複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値が決定される(ステップSb6)。医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値が基準値より低い画素値に変換される(ステップSb7)。医用画像の画素値を変換された変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像が発生される(ステップSb8)。医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像が発生される(ステップSb9)。散乱線低減画像が表示される(ステップSb10)。
以上に述べた構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
第1の実施形態における医用画像処理装置1によれば、医用画像に基づいて、基準値を決定することができる。画素値変換表および基準値に基づいて、医用画像を構成する複数の画素各々の画素値を変換し、変換画像を発生することができる。変換画像は、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。また、X線条件および被検体厚に基づいて、散乱関数を決定することができる。本実施形態によれば、変換画像を用いることで、散乱関数を医用画像の画素の位置に応じて変化させて散乱線画像を発生することができる。これにより、散乱線画像は、医用画像における直接線成分を低減して発生される。すなわち、直接線成分を有する医用画像に対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
薄体厚部分を透過した非直接線成分についても、直接線成分と同様の効果を有する。変換画像は、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。ゆえに、上記変換画像と散乱関数とに基づいて発生された散乱線画像は、医用画像における薄体厚部分を透過した非直接線成分を、低減して発生される。すなわち、薄体厚部分を有する医用画像に対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
また、第1の実施形態の変形例によれば、入力された医用画像上の関心領域に基づいて、基準値を決定することができる。基準値は、関心領域に含まれる複数の画素値の中央値あるいは平均値などである。決定された基準値に基づいて、医用画像を構成する複数の画素各々の画素値を変換し、変換画像を発生することができる。すなわち、関心領域を設定した医用画像に対して、関心領域に含まれる複数の画素各々の画素値に基づいて、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
以上のことから、第1の実施形態における医用画像処理装置1によれば、直接線を含む医用画像および、被検体のうち部分的に厚みの薄い部分(薄体厚部分)を透過した非直接線成分を有する医用画像でも、計算量を抑えて、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るX線診断装置25の構成の一例を示す構成図である。X線診断装置25は、X線発生部27と、X線検出部29と、支持機構31と、支持機構駆動部33と、医用画像発生部37と、インターフェース部3と、記憶部5と、被検体厚決定部7と、散乱関数決定部9と、基準値決定部11と、画素値変換部13と、散乱線画像発生部15と、散乱線低減画像発生部17と、入力部19と、表示部21と、制御部23とを有する。
X線発生部27は、図示していないX線管と高電圧発生器とを有する。高電圧発生器は、X線管に供給する管電流と、X線管に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生器は、X線撮影あるいはX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管に供給し、X線撮影あるいはX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管に印加する。X線管は、高電圧発生器から供給された管電流と、高電圧発生器により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)からX線を発生する。
X線検出部29は、X線発生部27において発生され、被検体Pを透過したX線を検出する。X線検出部29は、X線発生部27において発生されたX線を検出する。X線検出部29は、例えば平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)を有する。FPDは、光を電気信号に変える光電変換膜を有する。FPDは、光電変換膜によって、入射X線を電気信号に変換する。光電変換膜によって発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、図示していない前処理部に出力する。X線検出部29は、FPDにおけるX線入射面の前面に、グリッドを配置する。なお、X線検出部29は、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)を有してもよい。
支持機構31は、X線発生部27とX線検出部29とを移動可能に支持する。具体的には、支持機構31は、例えば、図示していないCアームとCアーム支持部とを有する。Cアームは、X線発生部27とX線検出部29とを、互いに向き合うように搭載する。なお、Cアームの代わりにΩアームなどが用いられてもよい。なお、X線診断装置25は、アームを有しない消化管撮影装置、胸部撮影装置、***撮影装置などであってもよい。
支持機構駆動部33は、後述する制御部23の制御のもとで、支持機構31を駆動する。具体的には、支持機構駆動部33は、制御部23からの制御信号に応じた駆動信号をCアーム支持部に供給して、Cアームを所定の方向にスライド、回転させる。X線撮影あるいはX線透視時においては、X線発生部27とX線検出部29との間に、天板35に載置された被検体Pが配置される。
図示していない天板駆動部は、後述する制御部23の制御のもとで、天板35を駆動することにより、天板35を移動させる。具体的には天板駆動部は、制御部23からの制御信号に基づいて、天板35の短軸方向(図8のX方向)または天板35の長軸方向(図8のY方向)に、天板35をスライドさせる。また、天板駆動部は、鉛直方向(図8のZ方向)に関して、天板35を昇降する。加えて、天板駆動部は、長軸方向と短軸方向とのうち少なくとも一つの方向を回転軸(図8のX軸、Y軸)として、天板35を傾けるために天板35を回転してもよい。
図示していない前処理部は、X線検出部29から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、X線検出部29におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および脱落に関する補正等である。前処理されたディジタルデータは、後述する医用画像発生部37に出力される。
医用画像発生部37は、処理されたディジタルデータに基づいて、医用画像を発生する。医用画像発生部37は、医用画像を基準値決定部11、画素値変換部13、散乱線低減画像発生部17、表示部21に適宜出力する。なお、医用画像発生部37は、発生した医用画像を、後述する記憶部5に出力してもよい。
インターフェース部3は、医用画像診断装置から取り込んだ医用画像を、後述する記憶部5に出力してもよい。なお、インターフェース部3は、他の医用画像診断装置から取り込んだ医用画像およびX線条件を、基準値決定部11、画素値変換部13、散乱線低減画像発生部17、表示部21などに、適宜出力してもよい。
記憶部5は、後述する入力部19から送られてくる操作者の指示などを記憶する。記憶部5は、後述する入力部19において操作者の指示により入力されたX線条件を記憶する。なお、記憶部5は、インターフェース部3から取り込んだX線条件を記憶してもよい。なお、記憶部5は、医用画像発生部37から取り込んだ医用画像あるいはインターフェース部3から取り込んだ医用画像を記憶してもよい。記憶部5は、後述する散乱線補正処理に関するプログラムを記憶してもよい。
被検体厚決定部7は、記憶部5に記憶されたX線条件に基づいて被検体厚を決定する。被検体厚決定部7は、図示していないメモリを備え、管電圧体厚対応表を記憶する。具体的には、被検体厚決定部7は、記憶部5から読み出したX線条件および管電圧体厚対応表に基づいて、被検体厚を決定する。
散乱関数決定部9は、記憶部5に記憶されたX線条件と、被検体厚決定部7で決定された被検体厚とに基づいて、散乱関数を決定する。散乱関数決定部9は、図示していないメモリを備え、散乱関数対応表を記憶する。具体的には、散乱関数決定部9は、被検体厚決定部7で決定された被検体厚と記憶部5から読み出したX線条件、および散乱関数対応表とに基づいて、散乱関数を決定する。
基準値決定部11は、医用画像を構成する複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値を決定する。
画素値変換部13は、図示していないメモリを備え、画素値変換表を記憶する。画素値変換部13は、画素値変換表および基準値に基づいて、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換する。例えば、画素値変換部13は、医用画像における直接線成分を有する画素の画素値を、低い画素値に変換する。
散乱線画像発生部15は、画素値変換部13で変換された変換画像と散乱関数決定部9で決定された散乱関数とに基づいて、散乱線画像を発生する。具体的には、散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を散乱関数のフーリエ変換と1との和で除算する(散乱関数項)。散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することで、散乱線画像のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱線画像のフーリエ変換に逆フーリエ変換を適用することで、散乱線画像を発生する。
散乱線低減画像発生部17は、医用画像から散乱線画像発生部15で決定された散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱線低減画像を表示部21に出力する。
入力部19は、操作者が所望するX線条件、X線撮影位置、X線透視位置、X線撮影あるいはX線透視の開始および終了と、投影画像の表示と複数の断面画像の表示とを表示させる切り替えなどを入力する。入力部19は、操作者などからの各種指示、命令、情報、選択、設定などを後述する制御部23に入力する。なお、入力部19は、所定の定数を操作者の指示により制御部23に入力してもよい。入力に基づいて、制御部23は、基準値決定部11のメモリに記憶された所定の定数を更新する。
入力部19は、上記各種指示、命令、情報、選択、設定などを入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、マウス・ホイール、キーボード等の入力デバイスを有する。なお、入力デバイスは、表示部21における表示画面を覆うタッチパネルでもよい。入力部19は、基準値決定部11で用いる医用画像上の関心領域を入力することも可能である。例えば、表示部21が表示した医用画像上にマウスのカーソルを移動させ、クリック、ドラッグなどを行うことにより、関心領域を設定する操作を入力する。
表示部21は、散乱線低減画像発生部17で発生された散乱線低減画像を表示する。また、表示部21は、関心領域を設定する際に、医用画像を表示することも可能である。
制御部23は、図示していないCPUとメモリを備える。制御部23は、入力部19から送られてくる操作者の指示などの情報を、図示していないメモリに一時的に記憶する。制御部23は、メモリに記憶された操作者の指示などに従って、X線診断を実行するために、X線発生部27、散乱関数決定部9、画素値変換部13、散乱線画像発生部15、散乱線低減画像発生部17などを制御する。
図9は、第2の実施形態における散乱線補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部19で、X線条件が入力される(ステップSc1)。入力されたX線条件に基づいて、被検体厚が決定される(ステップSc2)。被検体厚とX線条件とに基づいて、散乱関数が決定される(ステップSc3)。X線条件によりX線撮影あるいはX線透視された医用画像を構成する複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値が決定される(ステップSc4)。医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値が基準値より低い画素値に変換される(ステップSc5)。医用画像の画素値を変換された変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像が発生される(ステップSc6)。医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像が発生される(ステップSc7)。散乱線低減画像が表示される(ステップSc8)。
(変形例)
第2の実施形態との相違は、以下に記載する処理を実行することにある。X線透視あるいは連続X線撮影の前に被検体Pを撮影すること(以下、第1撮影と呼ぶ)により、第1撮影に関する医用画像(以下、第1医用画像と呼ぶ)を発生する。さらに、第1医用画像に基づいて、基準値が決定される。加えて、決定された基準値に基づいて、X線透視あるいは連続X線撮影(以下、第2撮影と呼ぶ)によって発生された医用画像(以下、第2医用画像と呼ぶ)に対して、散乱線補正処理が実行される。
X線発生部27は、第1撮影において、管球焦点からX線を発生する。X線発生部27は、第2撮影において、管球焦点からX線を発生する。
X線検出部29は、第1撮影において、X線発生部27から発生され被検体Pを透過したX線を検出する。X線検出部29は、第2撮影において、X線発生部27から発生され被検体Pを透過したX線を検出する。
図示していない前処理部は、第1撮影によってX線検出部29から出力されたディジタルデータ(以下、第1ディジタルデータと呼ぶ)に対して、前処理を実行する。前処理された第1ディジタルデータは、後述する医用画像発生部37に出力される。図示していない前処理部は、第2撮影によってX線検出部29から出力されたディジタルデータ(以下、第2ディジタルデータと呼ぶ)に対して、前処理を実行する。前処理された第2ディジタルデータは、後述する医用画像発生部37に出力される。
医用画像発生部37は、前処理された第1ディジタルデータに基づいて、第1医用画像を発生する。医用画像発生部37は、第1医用画像を基準値決定部11に出力する。医用画像発生部37は、第2撮影によって、第2ディジタルデータに基づいて、第2医用画像を発生する。医用画像発生部37は、第2医用画像を、画素値変換部13および散乱線低減画像発生部17に出力する。なお、第1および第2医用画像は、記憶部5に記憶されてもよい。
基準値決定部11は、第1医用画像を構成する複数の画素値の代表値に、所定の定数を乗算した基準値を決定する。
画素値変換部13は、図示していないメモリを備え、画素値変換表を記憶する。画素値変換部13は、画素値変換表および基準値に基づいて、第2医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換する。画素値変換部13は、画素値変換表および基準値に基づいて、医用画像発生部37で発生された第2医用画像の画素値を変換する。以下、第2医用画像の画素値を変換した画像を、変換画像と呼ぶ。
散乱線画像発生部15は、変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像を発生する。具体的には、散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱関数のフーリエ変換を散乱関数のフーリエ変換と1との和で除算する(散乱関数項)。散乱線画像発生部15は、変換画像のフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することで、散乱線画像のフーリエ変換を発生する。散乱線画像発生部15は、散乱線画像のフーリエ変換に逆フーリエ変換を適用することで、散乱線画像を発生する。
散乱線低減画像発生部17は、医用画像発生部37で発生された第2医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像を発生する。散乱線低減画像発生部17は、散乱線低減画像を表示部21に出力する。
表示部21は、散乱線低減画像発生部17で発生された散乱線低減画像を表示する。
なお、X線透視あるいは連続撮影などにおいて、X線発生部27、X線検出部29、図示していない前処理部、医用画像発生部37、画素値変換部13、散乱線画像発生部15、散乱線低減画像発生部17、表示部21の処理は、複数回実行されてもよい。
図10は、第2の実施形態における散乱線補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部19で、X線条件が入力される(ステップSd1)。入力されたX線条件に基づいて、被検体厚が決定される(ステップSd2)。被検体厚とX線条件とに基づいて、散乱関数が決定される(ステップSd3)。第1撮影において、第1医用画像が発生される(ステップSd4)。第1医用画像を構成する複数の画素値の代表値に所定の定数を乗算し、基準値が決定される(ステップSd5)。第2撮影が開始される(ステップSd6)。医用画像発生部37で、第2医用画像が発生される(ステップSd7)。第2医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値が基準値より低い画素値に変換される(ステップSd8)。第2医用画像の画素値を変換された変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像が決定される(ステップSd9)。第2医用画像から散乱線画像を差分することにより、散乱線低減画像が発生される(ステップSd10)。散乱線低減画像が表示される(ステップSd11)。第2撮影終了指示が入力された場合は処理終了、入力されない場合はステップSd7に戻る(ステップSd12)。
以上に述べた構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
第2の実施形態におけるX線診断装置25によれば、医用画像に基づいて、基準値を決定することができる。画素値変換表および基準値に基づいて、医用画像を構成する複数の画素各々の画素値を変換し、変換画像を発生することができる。変換画像は、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。また、X線条件および被検体厚に基づいて、散乱関数を決定することができる。本実施形態によれば、変換画像を用いることで、散乱関数を医用画像の画素の位置に応じて変化させて散乱線画像を発生することができる。これにより、散乱線画像は、医用画像における直接線成分を低減して発生される。すなわち、直接線成分を有する医用画像に対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
薄体厚部分を透過した非直接線成分についても、直接線成分と同様の効果を有する。変換画像は、医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。ゆえに、上記変換画像と散乱関数とに基づいて発生された散乱線画像は、医用画像における薄体厚部分を透過した非直接線成分を低減して発生される。すなわち、薄体厚部分を有する医用画像に対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
また、第2の実施形態の変形例によれば、X線透視あるいは連続X線撮影において、X線透視あるいは連続X線撮影の前に撮影した第1医用画像に基づいて、基準値を決定することができる。画素値変換表および基準値に基づいて、第2医用画像を構成する複数の画素各々の画素値を変換し、変換画像を発生することができる。変換画像は、第2医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。また、X線条件および被検体厚に基づいて、散乱関数を決定することができる。変換画像と散乱関数とに基づいて、散乱線画像を発生することができる。散乱線画像は、第2医用画像における直接線成分を低減して発生される。従って、直接線成分を有する第2医用画像においても、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
薄体厚部分を透過した非直接線成分についても、直接線成分と同様の効果を有する。変換画像は、第2医用画像を構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換されたものである。ゆえに、上記変換画像と散乱関数とに基づいて発生された散乱線画像は、第2医用画像における薄体厚部分を透過した非直接線成分を低減して発生される。従って、薄体厚部分を透過した非直接線成分を有する第2医用画像において、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
以上のことから、第2の実施形態におけるX線診断装置25によれば、直接線成分を有する医用画像および、被検体Pのうち部分的に厚みの薄い部分(薄体厚部分)を透過した非直接線成分を有する医用画像でも、計算量を抑えて、過補正なく散乱線低減画像を発生することができる。
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置39の構成の一例を示す構成図である。X線コンピュータ断層撮影装置39は、ガントリ41と、投影データ発生部65と、記憶部5と、被検体厚決定部7と、散乱関数決定部9と、基準値決定部11と、投影データ値変換部67と、散乱線データ発生部69と、散乱線低減投影データ発生部71と、再構成部73と、入力部19と、表示部21と、制御部23とを有する。
ガントリ41には、回転支持機構43が収容される。回転支持機構43は、図示していない回転リングと、回転軸Zを中心として回転自在に回転リングを支持する図示していないリング支持機構と、回転リングの回転を駆動する回転駆動部45(電動機)とを有する。回転支持機構43には、高電圧発生器47と、X線管49と、コリメーターユニット51、2次元アレイ型または多列型とも称されるX線検出器53、データ収集回路(Data Acquisition System:以下、DAS57と呼ぶ)、非接触データ伝送部59、図示していない冷却装置及びガントリ制御装置などが搭載される。
高電圧発生器47は、後述する制御部23による制御の下で、スリップリング61を介して供給された電力を用いて、X線管49に印加する管電圧と、X線管49に供給する管電流とを発生する。高電圧発生器47は、発生した管電圧をX線管49に印加する。高電圧発生器47は、発生した管電流をX線管49に供給する。
X線管49は、高電圧発生器47からの管電圧の印加および管電流の供給を受けて、X線の焦点からX線を放射する。
X線の焦点から放射されたX線は、X線管49のX線放射窓に取り付けられたコリメーターユニット51により、例えばコーンビーム形(角錐形)に整形される。X線の放射範囲63は、点線で示されている。X軸は、回転軸Zと直交し、放射されるX線の焦点を通る直線である。Y軸は、X軸および回転軸Zと直交する直線である。なお、説明の便宜上このXYZ座標系は、回転軸Zを中心として回転する回転座標系として説明する。
X線検出器53は、回転軸Zを挟んでX線管49に対峙する位置およびアングルで、回転リングに取り付けられる。X線検出器53は、複数のX線検出素子を有する。ここでは、単一のX線検出素子が単一のチャンネルを構成しているものとして説明する。複数のチャンネルは、回転軸Zに直交し、かつ放射されるX線の焦点を中心として、この中心から1チャンネル分のX線検出素子の受光部中心までの距離を半径とする円弧方向(チャンネル方向)とZ方向との2方向に関して2次元状に配列される。
なお、X線検出器53は、複数のX線検出素子を1列に配列した複数のモジュールで構成されてもよい。このとき、モジュール各々は、上記チャンネル方向に沿って略円弧方向に1次元状に配列される。
また、複数のX線検出素子は、チャンネル方向とスライス方向との2方向に関して2次元状に配列させてもよい。すなわち、2次元状の配列は、上記チャンネル方向に沿って一次元状に配列された複数のチャンネルを、スライス方向に関して複数列並べて構成される。このような2次元状のX線検出素子配列を有するX線検出器53は、略円弧方向に1次元状に配列される複数の上記モジュールをスライス方向に関して複数列並べて構成してもよい。
撮影又はスキャンに際しては、X線管49とX線検出器53との間の円筒形の撮影領域55内に、被検体Pが天板35に載置され挿入される。X線検出器53の出力側には、DAS57が接続される。
DAS57には、X線検出器53の各チャンネルの電流信号を電圧に変換するI−V変換器と、この電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器と、この積分器の出力信号を増幅するアンプと、このアンプの出力信号をディジタル信号変換するアナログ・ディジタル・コンバータとが、チャンネルごとに取り付けられている。DAS57から出力されるデータ(純生データ(pure raw data))は、磁気送受信又は光送受信を用いた非接触データ伝送部59を経由して、後述する投影データ発生部65に伝送される。
投影データ発生部65は、DAS57から出力される純生データに対して前処理を施し、投影データ(生データ(raw data))を発生する。前処理には、例えばチャンネル間の感度不均一補正処理、X線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下または、信号脱落を補正する処理等が含まれる。投影データは、データ収集したときにビュー角を表すデータと関連付けられて、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリを備えた記憶部5に記憶される。
なお、投影データとは、被検体を透過したX線の強度に応じたデータ値の集合である。ここでは説明の便宜上、ワンショットで略同時に収集したビュー角が同一である全チャンネルにわたる一揃いの投影データを、投影データセットと称する。また、ビュー角は、X線管49が回転軸Zを中心として周回する円軌道の各位置を、回転軸Zから鉛直上向きにおける円軌道の最上部を0°として360°の範囲の角度で表したものである。例えば、円軌道上において、円軌道上の位置が同一である−90°と270°は、同一のビュー角である。円軌道上において、円軌道上の位置が同一である450°と90°は、同一のビュー角である。すなわち、n°と(n±360)°は同一のビュー角である。なお、投影データセットの各チャンネルに対する投影データは、ビュー角、コーン角、チャンネル番号によって識別される。
記憶部5は、投影データ発生部65で発生された投影データセット、散乱線データセットおよび散乱線低減投影データセットを記憶する。記憶部5は、後述する入力部19から送られてくる操作者の指示などを記憶する。記憶部5は、インターフェース部3から取り込んだX線条件を記憶する。なお、記憶部5は、所定の閾値を記憶してもよい。
被検体厚決定部7は、投影データ発生部65から発生されたビューのうち、90°異なるビュー(以下、被検体厚決定ビューと呼ぶ)に対応する投影データセットに基づいて、ビューごとの被検体厚を決定する。
図12は、ビュー角とチャンネル番号とにより規定される投影データ値を濃淡で表したサイノグラムの一例を示す図である。図12は、ビュー角i°の被検体を決定するとき、ビュー角が90°異なる(i−90)°あるいは(i+90)°のビュー角に対応する投影データセットを用いることを示す。被検体厚決定部7は、図12に双方向矢印で示す被検体厚Aあるいは被検体厚Bを、被検体厚として決定する。具体的には、例えば、被検体厚決定部7は、対象ビューと90°異なるビューの投影データセットにおいて、所定の閾値より大きい投影データ値に対応する複数のチャンネルのうち、最小のチャンネル番号から最大のチャンネル番号との間の距離に基づいて、被検体厚を決定する。具体的には、被検体厚決定部7は、最小のチャンネル番号から最大のチャンネル番号までの距離を拡大率で除することで、被検体厚を決定する。拡大率は、管球焦点と被検体との距離、および管球焦点と被検体との距離に基づいて、決定される。なお、被検体厚決定部7は、被検体厚Aと被検体厚Bとの平均値などに基づいて、被検体厚を決定してもよい。
なお、対象ビューに対して被検体厚決定ビューが存在しない場合、被検体厚決定部7は、投影データ発生部65により、補間法などを用いて被検体厚決定ビューに対応する投影データセットを発生させる。投影データ発生部65は、被検体厚決定ビューに対応する投影データセットを被検体厚決定部7に出力する。被検体厚決定部7は、被検体厚決定ビューに対応する投影データセットに基づいて、被検体厚を決定する。
散乱関数決定部9は、被検体厚決定部7で決定された被検体厚と、記憶部5に記憶されたX線条件とに基づいて、ビューごとの散乱関数を決定する。散乱関数決定部9は図示していないメモリを備え、散乱関数対応表を記憶する。具体的には、散乱関数決定部9は、被検体厚決定部7で決定されたビューごとの被検体厚と記憶部5から読み出したX線条件、および散乱関数対応表とに基づいて、ビューごとの散乱関数を決定する。
基準値決定部11は、投影データセット各々を構成する複数の投影データ値の代表値に所定の定数を乗算し、ビューごとの基準値を決定する。基準値決定部11は図示していないメモリを備え、所定の定数を記憶する。
投影データ値変換部67は、図示していないメモリを備え、投影データ値変換表を記憶する。投影データ値変換表は、変換前の投影データ値と変換後の投影データ値との対応関係を示している。投影データ値変換部67は、投影データ値変換表およびビューごとの基準値に基づいて、投影データセットを構成する複数の投影データ値のうち上記基準値より高い投影データ値を、上記基準値より低い投影データ値に変換する。例えば、投影データ値変換部67は、投影データセットにおける直接線成分を有する投影データ値を、低い投影データ値に変換する。以下、投影データセットの投影データ値を投影データ値変換部67により変換したものを、変換データセットと呼ぶ。
散乱線データ発生部69は、投影データセットを構成する複数の投影データ値を投影データ値変換部により変換した変換データセット各々を、ビューごとの散乱関数に基づいて、ビューにそれぞれ対応する散乱線データセットに変換する。具体的には、散乱線データ発生部69は、ビューごとに変換データセットのフーリエ変換を発生する。散乱線データ発生部69は、ビューごとに散乱関数のフーリエ変換を発生する。散乱線データ発生部69は、ビューごとに散乱関数のフーリエ変換を散乱関数のフーリエ変換と1との和で除算する(散乱関数項)。散乱線データ発生部69は、ビューごとに変換データセットのフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することで、ビューごとの散乱線データセットのフーリエ変換を発生する。散乱線データ発生部69は、ビューごとに散乱線データセットのフーリエ変換に逆フーリエ変換を適用することで、ビューごとの散乱線データセットを発生する。なお、散乱線データセットは、ビューに対応する数だけ発生される。
散乱線低減投影データ発生部71は、投影データセットから散乱線データセットをビューごとに差分することにより、散乱線を低減した散乱線低減投影データセットをビューごとに発生する。なお、散乱線低減投影データセットは、ビューに対応する数だけ発生される。散乱線低減投影データ発生部71は、散乱線低減投影データセットを表示部21に出力する。
再構成部73は、ビュー角が360°又は180°+ファン角の範囲内の散乱線低減投影データセットに基づいて、略円柱形のボリュームデータを再構成する。再構成画像は、記憶部5に記憶される。
入力部19は、操作者などからの各種指示、命令、情報、選択、設定などを後述する制御部23に入力する。なお、入力部19は、所定の定数を操作者の指示により制御部23に入力してもよい。入力に基づいて、制御部23は、基準値決定部11のメモリに記憶された所定の定数を更新する。
入力部19は、上記各種指示、命令、情報、選択、設定などを入力するためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、マウス・ホイール、キーボード等の入力デバイスを有する。なお、入力デバイスは、表示部21における表示画面を覆うタッチパネルでもよい。
表示部21は、散乱線低減投影データ発生部71で発生された散乱線低減投影データセットを表示する。
制御部23は、図示していないCPUとメモリを備える。制御部23は、入力部19から送られてくる操作者の指示などの情報を、図示していないメモリに一時的に記憶する。制御部23は、メモリに記憶された操作者の指示などに従って、画像処理を実行するために、被検体厚決定部7、散乱関数決定部9、基準値決定部11、投影データ値変換部67、散乱線データ発生部69、散乱線低減投影データ発生部71などを制御する。
図13は、第3の実施形態における散乱線補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
1スキャンにおける複数のビューにそれぞれ対応する複数の投影データセットが発生される(ステップSe1)。ビューのうち90°異なるビューに対応する投影データセットに基づいて、ビューごとの被検体厚が決定される(ステップSe2)。被検体厚とX線条件とに基づいて、散乱関数が決定される(ステップSe3)。投影データセット各々を構成する複数の投影データ値の代表値に所定の定数を乗算することにより、投影データセット各々の基準値が決定される(ステップSe4)。投影データセット各々に対応する基準値を用いて、投影データ値のうち基準値より高い投影データ値が、基準値より低い投影データ値に変換される(ステップSe5)。変換投影データセット各々が、ビューごとの散乱関数に基づいて、ビュー各々に対応する複数の散乱線投影データセットが変換される(ステップSe6)。投影データセットから散乱線データセットをビューごとに差分することにより、散乱線を低減した複数の散乱線低減投影データセットが発生される(ステップSe7)。散乱線低減投影データセットに基づいて、ボリュームデータが再構成される(ステップSe8)。
以上に述べた構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
第3の実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置39によれば、ビューのうち90°異なるビューに対応する投影データセットに基づいて、ビューごとの被検体厚が決定される。被検体厚とX線条件に基づいて、散乱関数を決定することができる。投影データセット各々を構成する複数の投影データ値の代表値に基づいて、投影データセット各々の基準値を決定することができる。投影データセット各々に対応する基準値を用いて複数の投影データ値を変換し、変換投影データセットを発生することができる。変換投影データセットは、投影データセットを構成する複数の投影データ値のうち、基準値より高い投影データ値を基準値より低い投影データ値に変換されたものである。本実施形態によれば、変換データセットを用いることで、散乱関数を投影データセットのデータ番号に応じて変化させて散乱線データセットを発生することができる。これにより、散乱線データセットは、投影データセットにおける直接線成分を低減して発生される。すなわち、直接線成分を有する投影データセットに対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減投影データセットを発生することができる。従って、散乱線低減投影データセットを再構成することで、過補正なく散乱線低減処理が実行されたボリュームデータを発生することができる。
薄体厚部分を透過した非直接線成分についても、直接線成分と同様の効果を有する。変換投影データセットは、投影データセットを構成する複数の投影データ値のうち、基準値より高い投影データ値を基準値より低い投影データ値に変換されたものである。ゆえに、上記変換投影データセットと散乱関数とに基づいて発生された散乱線データセットは、投影データセットにおける薄体厚部分を透過した非直接線成分を低減して発生される。すなわち、薄体厚部分を透過した非直接線成分を有する投影データセットに対して、本実施形態における散乱線補正処理を適用することにより、過補正なく散乱線低減投影データセットを発生することができる。従って、散乱線低減投影データセットを再構成することで、過補正なく散乱線低減処理が実行されたボリュームデータを発生することができる。
加えて、実施形態に係る各機能は、散乱線補正処理プログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。