以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、ブリスタシートとしてのPTPシート1について説明する。図1及び図2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明又は半透明な熱可塑性樹脂材料などによって形成されている。一方、カバーフィルム4は、例えばポリエステル樹脂等からなるシーラントが表面に塗布された不透明材料(例えば、アルミニウム箔等)により構成されている。
PTPシート1は、平面視略矩形状に形成されており、シート長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、シート短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、内容物としての錠剤5が1つずつ収容されている。
また、図2及び図3に示すように、錠剤5には、平面視正方形状をなす扁平なICタグ6が埋設されている。本実施形態において、ICタグ6は、設計上、錠剤5の中心に1つだけ埋設されるように構成されている。すなわち、ICタグ6は、設計上、錠剤5を平面視したときに錠剤5の中心に位置し、かつ、錠剤5を側面視したときに錠剤5のその高さ方向に沿った中心に1つだけ位置するように構成されている。さらに、ICタグ6は、設計上、錠剤5を平面視したときにほぼ正方形状に見える姿勢で錠剤5に埋設されるようになっている。
ICタグ6は、情報を記憶するための集積回路と、当該集積回路に接続されたアンテナとを有している。
集積回路には、例えば、錠剤5の固有情報と、錠剤5の製造に伴う変動情報とが記憶されている。錠剤5の固有情報の例としては、製薬会社名、医薬品名、型式、有効成分等が挙げられる。一方、錠剤5の製造に伴う変動情報の例としては、工場、ライン番号、製造日、ロット番号、有効期限、検査結果等が挙げられる。
アンテナは、前記集積回路に記憶された情報の読み取り及び前記集積回路への情報の書き込みのために用いられるものであり、所定の電波を送受信するものである。アンテナによって、前記集積回路に対する情報の読み取り及び書き込みを非接触で外部から行えるようになっている。
次に、上記PTPシート1を製造するためのブリスタ包装機としてのPTP包装機11の概略構成について図4を参照して説明する。
PTP包装機11の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に捲回されている。ロール状に捲回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が成形される。ポケット部2の成形は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。これにより、容器フィルム3は、テンションロール18及びフィルム受けロール20間において、停止することなく連続搬送される。
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤充填装置21、シール前検査装置22、及び、検査装置としてのICタグ検査装置23がこの順序で配設されている。
錠剤充填装置21は、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する充填手段としての機能を有する。錠剤充填装置21は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が充填される。尚、錠剤5は、不良品でない限り、予めICタグ6が埋設された状態となっている。
シール前検査装置22は、上流側より順に、第一検査装置T1、第二検査装置D及び第三検査装置Aを備えている。これら各検査装置T1,D,Aにより、錠剤5における割れや欠け、表面剥離の有無に関する検査、錠剤5に対する異物の付着の有無の検査、及び、錠剤5の形状や大きさが製造品種と適合しているか否かについての検査などが行われる。
ICタグ検査装置23は、上流側検査装置24及び下流側検査装置25を備えている。両検査装置24,25により、ICタグ6の埋設位置(二次元的な位置及び高さ位置)や数、形状(大きさ)、姿勢に関する良否が判定され、ひいては錠剤5が正常であるか否かが判定される。検査装置24,25の構成や検査手法については後に詳述する。
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に捲回されている。
ロール状に捲回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール26によって加熱ロール27の方へと案内されている。加熱ロール27は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,27間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,27間を加熱圧接状態で通過することにより、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填された帯状のPTPフィルム7が製造されるようになっている。本実施形態では、フィルム受けロール20及び加熱ロール27によって、シール手段が構成される。
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム7は、テンションロール28及び間欠送りロール29の順に掛装されている。間欠送りロール29は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム7を間欠的に搬送する。テンションロール28は、PTPフィルム7を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール29との搬送動作の相違によるPTPフィルム7の弛みを防止してPTPフィルム7を常時緊張状態に保持する。
間欠送りロール29から送り出されたPTPフィルム7は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム7を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム7を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール29,32間でのPTPフィルム7の弛みを防止する。
間欠送りロール29とテンションロール31との間には、PTPフィルム7の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム7の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。刻印装置34は、PTPフィルム7の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム7は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム7の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム7をPTPシート1単位にその外縁を打抜く打抜手段としての機能を有する。
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、取出しコンベア38によって搬送され、完成品用ホッパ39に一旦貯留される。尚、シール前検査装置22やICタグ検査装置23によって不良判定された場合、不良判定に係るPTPシート1は、取出しコンベア38の搬送経路に沿って設けられた不良シート排出機構40によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、前記テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。尚、前記連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、前記不要フィルム部42を挟持しながら搬送動作を行う。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断しスクラップ処理する機能を有する。このスクラップはスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
尚、上記各ロール14,19,20,29,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、各ロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、基本的には、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が各ロール14等の凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
次いで、上流側検査装置24及び下流側検査装置25について説明する。図5に示すように、上流側検査装置24は、第一照明手段としての第一照明装置51及び第一撮像手段としての第一カメラ61を備えている。下流側検査装置25は、第二照明手段としての第二照明装置52及び第二撮像手段としての第二カメラ62を備えている。また、各検査装置24,25は、処理実行装置53を共有している。尚、各検査装置24,25が、処理実行装置53を個別に有していてもよい。
各照明装置51,52は、面発光可能になっており、容器フィルム3や錠剤5(特に最終的にPTPシート1となる部位)に対し所定の光(例えば近赤外光や可視光)を照射する。各照明装置51,52は、図6に示すように、容器フィルム3に対し平行に延びる拡散板91と、当該拡散板91の内部に設けられたLED実装基板92と、拡散板91の容器フィルム3側の面に取着された入射光制限フィルム93とを備えている。LED実装基板92には、LED92aが多数配列されている。
入射光制限フィルタ93は、LED92aからカメラ61,62に対する光の直接の入射を制限する。これにより、カメラ61,62に入射される光が強すぎることに伴う不具合(例えば、カメラ61,62として、後述のようにCCDカメラを用いた場合のスミア現象など)をより確実に防止することができ、ひいてはより正確な検査を実現可能となっている。
また、本実施形態において、各照明装置51,52は、照射する光の光量を変更可能に構成されている。
第一カメラ61及び第二カメラ62は、照明装置51,52により光の照射された錠剤5等を撮像する。本実施形態では、カメラ61,62として、照明装置51,52から照射される光の波長領域に感度を有するCCDカメラが採用されている。これに限らず、CMOSカメラを採用してもよい。
また、図7に示すように、上流側検査装置24において、第一照明装置51は容器フィルム3のポケット部2突出側に配置され、第一カメラ61は容器フィルム3のポケット部2開口側に設けられている。一方、下流側検査装置25において、第二照明装置52は容器フィルム3のポケット部2開口側に配置され、第二カメラ62は容器フィルム3のポケット部2突出側に設けられている。すなわち、カメラ61,62は、容器フィルム3を介して照明装置51,52とは反対側に設けられている。そして、カメラ61,62は、照明装置51,52から照射された光を二次元撮像する構成となっている。カメラ61,62によって撮像された画像データは、カメラ61,62内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で処理実行装置53に入力されるようになっている。
図5に戻り、処理実行装置53は、画像メモリ54、判定用メモリ55、検査結果記憶装置56、カメラタイミング制御装置57、マスキング装置58、二値化装置59、光量変更手段としての光量変更装置60、並びに、CPU及び入出力インターフェース63などから構成され、後述するような画像データの処理や錠剤5の検査等を実施可能となっている。
画像メモリ54は、カメラ61,62から出力される画像データを記憶する。また、画像メモリ54には、マスキング装置58によりマスキング処理が行われた画像データや、二値化装置59により二値化処理が行われた白黒画像データも記憶される。この画像メモリ54に記憶された画像データに基づいて検査が実行される。
判定用メモリ55は、検査に用いられる各種データを記憶するものである。検査に用いられる各種データには、例えば錠剤5やICタグ6の二次元形状、画像データにおける錠剤5領域を特定するために用いられる錠剤5の基準面積、検査領域を画定するための検査領域ウインドウ枠IWの形状、ICタグ6の埋設位置の良否を判定するための位置判定ウインドウ枠JWの形状、二値化処理に係る閾値、面積判定に係る判定値などが含まれる。二値化処理に係る閾値としては、例えば、第一閾値σ1、第二閾値σ2、第三閾値σ3及び第四閾値σ4が記憶されている(図12等参照)。第一閾値σ1、第二閾値σ2、第三閾値σ3及び第四閾値σ4は、この順序で値が大きなものとなっている。また、面積判定に係る判定値として、正しい姿勢で配置された正常な形状のICタグ6に基づき予め求められた、最小面積閾値及び最大面積閾値が記憶されている。
検査領域ウインドウ枠IWは、ポケット部2内の領域(ポケット部領域)と、ポケット部2外のシート部の領域(シート部領域)とを区別するためのものである。検査領域ウインドウ枠IWは、図8に示すように、ポケット部2と相似形状で、かつ、ポケット部2よりも一回り大きいポケット部ウインドウ枠PWを複数備えている。ポケット部ウインドウ枠PWの配列は、PTPシート1におけるポケット部2の配列と同様である。検査に際しては、画像データに対し検査領域ウインドウ枠IWが設定され、ポケット部2外の領域(図8の網目模様を付した領域)にマスキングが施され、ポケット部2内の領域が検査対象となるように設定される。
位置判定ウインドウ枠JWは、ICタグ6の二次元的な位置の検査に用いられる。位置判定ウインドウ枠JWは、図9に示すように、錠剤5を平面視したときのその外縁形状とほぼ同じ形状をなす外縁ウインドウ枠GWと、当該外縁ウインドウ枠GWの中心に位置し、ICタグ6の対角線よりも一回り大きい直径を有する円形状のICタグウインドウ枠TWとを備えている。
図5に戻り、検査結果記憶装置56は、画像データに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース63の制御に基づき、例えばディスプレイなどの表示手段(図示せず)に適宜表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース63がPTP包装機11に制御信号を送出することも可能となっている。
カメラタイミング制御装置57は、カメラ61,62による撮像のタイミングを制御するものである。撮像のタイミングはPTP包装機11に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとに、カメラ61,62によって、シート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像が行われる。本実施形態では、照明装置51,52からの光量を四段階に変更させつつ、各カメラ61,62により各光量で撮像が行われるため、結果的に、1シート毎に少なくとも8つの濃淡画像データ(輝度画像データ)が得られるようになっている。
マスキング装置58は、画像データにマスキング処理を施すものであり、本実施形態では、前記検査領域ウインドウ枠IWを用いて、画像データにおける、ポケット部2外の領域にマスキングを施す。これにより、ポケット部2内の領域が検査対象となるように設定される。
二値化装置59は、判定用メモリ55に記憶された閾値に基づいて画像データに対し二値化処理を施し、二値化画像を得るものである。本実施形態では、錠剤5の位置を特定したり、ICタグ6の二次元的な位置を特定したりするために二値化処理が行われる。
光量変更装置60は、照明装置51,52から照射される光の光量を制御するものである。光量変更装置60は、カメラタイミング制御装置57からの信号に基づき、カメラ61,62による撮像タイミングに合わせて、照明装置51,52から照射される光の光量を段階的に変化させる。本実施形態において、照明装置51,52から照射される光の光量は、第一光量、第二光量、第三光量及び第四光量の四段階に変更される。第一光量、第二光量、第三光量及び第四光量は、この順に光量が大きなものとなり、少なくとも第二光量、第三光量及び第四光量は、錠剤5を十分に透過可能な程度の光量となっている。
CPU及び入出力インターフェース63は、錠剤5に対する検査処理などの各種処理プログラムを判定用メモリ55の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機11に制御信号を送出し又はPTP包装機11から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機11の不良シート排出機構40などを制御することができるようになっている。
尚、錠剤5に対する検査処理としては、カメラ61,62により得られた濃淡画像データに対する二値化処理、二値化処理により得られた二値化画像に対する塊処理、塊処理により得られた塊部分の数や面積、位置などの良否を判定する処理、塊部分の良否判定結果に基づき錠剤5の良否を判定する処理などが挙げられる。本実施形態では、ICタグ検査装置23における二値化処理や塊処理を行う際に用いられる装置(例えば、CPU及び入出力インターフェース63、判定用メモリ55、二値化装置59等)が陰影特定手段に相当する。また、ICタグ検査装置23における塊部分に関する良否を判定する際に用いられる装置(例えば、CPU及び入出力インターフェース63及び判定用メモリ55等)が検査手段に相当する。さらに、ICタグ検査装置23における錠剤5の良否を判定する際に用いられる装置(例えば、CPU及び入出力インターフェース63等)が良否判定手段に相当する。
また、CPU及び入出力インターフェース63は、ディスプレイ等の所定の表示手段(図示せず)に各種データを送出する機能をも有する。かかる機能により、二値あるいは濃淡の画像データや検査結果などを表示手段に表示させることができるようになっている。
尚、本実施形態では、照明装置51,52から照射される光量を第一〜第四光量の各光量に変更させつつ、各光量にて撮像が行われ、各検査装置24,25においてそれぞれ四種類の濃淡画像データが取得される。以下においては、第一光量にて取得された濃淡画像データを第一濃淡画像データと称し、第二光量にて取得された濃淡画像データを第二濃淡画像データと称し、第三光量にて取得された濃淡画像データを第三濃淡画像データと称し、第四光量にて取得された濃淡画像データを第四濃淡画像データと称す。
第一濃淡画像データにおいては、例えば、図10に示すように、錠剤5に対応する部分が暗く表示された状態となる。一方、第二〜第四濃淡画像データにおいては、例えば、図11に示すように、錠剤5を光が透過し、ICタグ6に対応する部分が特に暗く表示された状態となる。そして、錠剤5内におけるICタグ6の埋設位置を一定とすると、図12に示すように、通常、第二濃淡画像データP2におけるICタグ6に対応する陰影部分の各部の輝度が最も低くなり、第四濃淡画像データP4におけるICタグ6に対応する陰影部分の各部の輝度が最も高くなる。また、第三濃淡画像データP3におけるICタグ6に対応する陰影部分の各部の輝度は、第二、第四濃淡画像データP2,P4におけるICタグ6部分に対応する各部の輝度のほぼ中間程度となる。本実施形態では、第二〜第四濃淡画像データが、「透過画像」に相当する。
さらに、錠剤5の高さ方向に沿ってICタグ6の位置にズレがある場合であって、例えば、図13に示すように、ICタグ6がカメラ61,62側により接近している場合には、図14及び図15に示すように、各濃淡画像データP2〜P4においてICタグ6に対応する陰影部分が比較的暗く表示された状態となり、陰影部分の各部の輝度は比較的低くなる。一方、例えば、図16に示すように、ICタグ6がカメラ61,62からより離れている場合には、図17及び図18に示すように、濃淡画像データP2〜P4においてICタグ6に対応する陰影部分が比較的明るく表示された状態となり、陰影部分の各部の輝度は比較的高くなる。
さらに、ICタグ6の二次元的な位置にズレがある場合、例えば、図19に示すように、濃淡画像データP2〜P4において、ICタグ6に対応する陰影部分についても二次元的な位置にズレがある状態で表れる。また、1つの錠剤5にICタグ6が複数存在している場合、例えば、図20に示すように、通常、濃淡画像データP2〜P4において、ICタグ6に対応する陰影部分が複数存在した状態で表示される。尚、ICタグ6が複数存在している場合には、複数のICタグ6が錠剤5の高さ方向に重なることで、濃淡画像データP2〜P4において、ICタグ6に対応する陰影部分が通常よりも面積の大きい状態で表示されることもある。
加えて、ICタグ6の姿勢に異常がある場合、例えば、ICタグ6が正常時よりも斜めになった状態で配置されている場合には、図21に示すように、濃淡画像データP2〜P4において、ICタグ6に対応する陰影部分の面積が通常よりも小さい状態で表示される。
次いで、ICタグ6に関する錠剤5の検査処理について説明する。尚、当該検査処理は、上流側検査装置24及び下流側検査装置25のそれぞれにおいて個別に実行される。各検査装置24,25にて実行される検査処理は同様であるため、以下においては、上流側検査装置24にて実行される検査処理のみについて説明する。
図22に示すように、検査処理では、まずステップS11において、検査対象となる1のシート部分における第一〜第四濃淡画像データがそれぞれ取得されたか否かを当該条件を満たすまで繰り返し判定する。つまり、検査処理の実行タイミングに到達したか否かを繰り返し判定する。
1のシート部分における第一〜第四濃淡画像データが取得された場合(ステップS11:YES)、ステップS12に移行し、第一濃淡画像データに基づき、錠剤5の位置(錠剤5の占める範囲)を特定するための処理(錠剤位置特定処理)を実行する。
錠剤位置特定処理では、図23に示すように、まず、ステップS121において、第一濃淡画像データに対し所定の閾値を用いて二値化処理を施し、第一白黒画像データを取得する。次いで、ステップS122において、第一白黒画像データに対し、前記検査領域ウインドウ枠IWを用いて、マスキング処理を施す。これにより、第一白黒画像データにおける、ポケット部2外の領域にマスキングが施され、ポケット部2内の領域が検査対象に設定される。
続くステップS123では、各ポケット部2領域において、面積値が錠剤5の基準面積以上となっている塊を抽出し、ステップS124へ移行する。
続くステップS124では、各ポケット部2領域における塊の個数が「1」であるか否かを判定する。各ポケット部2領域において塊の個数が「1」である場合には(ステップS124:YES)、ステップS125に移行する。
ステップS125では、錠剤5の位置情報として、塊部分の占める範囲を示す座標データを取得し、本処理を終了する。尚、錠剤5の位置情報は、ポケット部2領域毎に取得される。
一方、各ポケット部2領域の少なくとも1つにおいて塊の個数が「1」以外である場合(ステップS124:NO)、ステップS126に移行し、不良判定処理を実行し、本処理を終了する。不良判定処理では、シート部分が不良であると判定するとともに、異常の発見された錠剤5を特定するための情報と、シート部分が不良である旨の情報とを検査結果記憶装置56に記憶する。また、不良判定処理では、不良フラグをセットする。不良フラグは、検査処理における錠剤位置特定処理S12以降の処理を実行するか否かを判断するために用いられる。
図22に戻り、錠剤位置特定処理S12に続くステップS13では、不良フラグがオンであるか否かが判定される。不良フラグがオンである場合(ステップS13:YES)、不良フラグをオフとした上で、検査処理を終了する。つまり、錠剤5自体に異常がある場合には、これ以降の処理をスキップする。
一方、不良フラグがオフである場合(ステップS13:NO)、ステップS14に移行し、ステップS12の錠剤位置特定処理にて取得された錠剤5の位置情報に基づき、第二〜第四濃淡画像データP2〜P4における錠剤5領域を特定し、この部分を検査対象として設定する。
続くステップS15では、各濃淡画像データP2〜P4の検査対象に対し二値化処理を行い、二値化画像データを得る。
第二濃淡画像データP2の検査対象に対する二値化処理では、第一閾値σ1及び第二閾値σ2を用いて、第二濃淡画像データP2の検査対象(錠剤5領域)から輝度値が第一閾値σ1以上第二閾値σ2未満である部分を抽出した二値化画像を得る。
第三濃淡画像データP3の検査対象に対する二値化処理では、第二閾値σ2及び第三閾値σ3を用いて、第三濃淡画像データP3の検査対象(錠剤5領域)から輝度値が第二閾値σ2以上第三閾値σ3未満である部分を抽出した二値化画像をえる。
第四濃淡画像データP3の検査対象に対する二値化処理では、第三閾値σ3及び第四閾値σ4を用いて、第四濃淡画像データP4の検査対象(錠剤5領域)から輝度値が第三閾値σ3以上第四閾値σ4未満である部分を抽出した二値化画像を得る。
尚、二値化処理で用いる閾値は適宜変更可能である。また、錠剤5の高さ方向に沿ったICタグ6の位置に比較的大きなズレが存在しているような場合(例えば、図13や図16にて示すような場合)、得られた二値化画像においては、ICタグ6に相当する部分が存在していなかったり、ICタグ6に相当する部分の面積が比較的小さなものとなったりすることがある。
次いで、ステップS16において各二値化画像に対し塊処理を行う。二値化処理及び塊処理により、ICタグ6に対応する陰影部分が特定される。つまり、陰影部分が存在するか否かが特定されるとともに、陰影部分が存在する場合には、その位置及び占める範囲(面積)が特定される。
その上で、ステップS17にて、各二値化画像に対し、各錠剤5領域における塊部分の個数が「1」であるか否かを判定する。つまり、錠剤5の高さ方向に沿った所定範囲内に、ICタグ6が1つのみ存在しているか否かを判定する。
各二値化画像において、各錠剤5領域における塊部分の個数が「1」となっていた場合(ステップS17:YES)、つまり、各錠剤5において、錠剤5の高さ方向に沿った所定範囲内にICタグ6が1つのみ埋設されている場合には、ステップS18に移行する。
一方、各二値化画像の少なくとも1つにおいて、塊部分の個数が「1」となっていない錠剤5領域が存在していた場合(ステップS17:NO)、ステップS19へ移行する。ステップS19では、ICタグ6の埋設個数及びICタグ6の高さ位置の少なくとも一方に異常があるとして錠剤5を不良判定するとともに、異常内容などを検査結果記憶装置56に記憶した上で、検査処理を終了する。尚、本実施形態では、錠剤5の高さ方向に沿った所定範囲外にICタグ6が存在している場合やICタグ6が埋設されていない場合に、塊部分の個数が「0」となり、錠剤5が不良と判定される。また、ICタグ6が2つ以上埋設されていると、塊部分の個数が「2」以上となる場合があり、この場合にも、錠剤5が不良と判定される。
ステップS18では、前記位置判定ウインドウ枠JWを用いて、ICタグ6の二次元的な位置が適正であるか否かを判定する。具体的には、錠剤5領域の重心に対し外縁ウインドウ枠GWの中心が重なるように位置判定ウインドウ枠JWを配置し、ICタグウインドウ枠TWから塊部分の外形線が逸脱していないか否かを判定する。
ICタグウインドウ枠TWから塊部分の外形線が逸脱していない場合(ステップS18:YES)、つまり、ICタグ6の二次元的な位置に問題がない場合、ステップS20へと移行する。
一方、ICタグウインドウ枠TWから塊部分の外形線の少なくとも一部が逸脱している場合(ステップS18:NO)、ステップS21に移行する。ステップS21では、ICタグ6の二次元的な位置に異常があるとして錠剤5を不良判定するとともに、異常内容などを検査結果記憶装置56に記憶した上で、検査処理を終了する。
ステップS20では、塊部分の面積(画素数)が、前記最小面積閾値以上前記最大面積閾値以下であるか否かを判定する。塊部分の面積が最小面積閾値以上最大面積閾値以下である場合(ステップS20:YES)、ステップS22にて錠剤5を良品判定し、本処理を終了する。
一方、塊部分の面積が最小面積閾値未満である場合、又は、塊部分の面積が最大面積閾値を超える場合(ステップS20:NO)、つまり、ICタグ6の形状(大きさ)や姿勢に異常があると想定される場合、ステップS23に移行する。ステップS23では、ICタグ6の姿勢及び形状(大きさ)の少なくとも1つに不良があるとして錠剤5を不良判定するとともに、異常内容などを検査結果記憶装置56に記憶した上で、本処理を終了する。尚、ICタグ6の埋設個数が複数であるときに、錠剤5の高さ方向にICタグ6の一部が重なっていると、塊部分の面積が最大面積閾値よりも大きくなる場合があり、この場合にも、錠剤5が不良と判定される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、濃淡画像データP2〜P4における陰影部分に基づき、錠剤5内におけるICタグ6の三次元的な埋設位置、ICタグ6の個数や形状、姿勢に関する検査を行うことができる。また、検査を行うにあたって、ICタグ6等に対して検査のための特別な機能を持たせる必要はなく、検査効率の向上やコストの増大抑制を図ることができる。
さらに、光量を変更して得られた複数の濃淡画像データP2〜P4に基づき、ICタグ6に対応する陰影部分の位置や濃淡、数などに関するより細かな情報を得ることができる。これにより、検査精度の向上を図ることができる。
加えて、錠剤5を表裏両面から撮像することで得られた濃淡画像データに基づき、ICタグ6に対応する陰影部分の濃淡や数などに関するより正確な情報を得ることができる。これにより、ICタグ6の埋設位置や数などをより精度よく把握することができ、検査精度を一層向上させることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、第一濃淡画像データに基づき取得された錠剤5の位置情報に基づき、第二〜第四濃淡画像データP2〜P4における錠剤5領域を特定し、この領域を検査対象として設定するように構成されている。これに対し、第二〜第四濃淡画像データなど、ICタグ6の検査に用いられる画像データに基づき、錠剤5領域を特定してもよい。
また、例えば、ポケット部2内において錠剤5の位置がほぼ一定となるような場合には、錠剤5領域を検査対象とせずに、ポケット部2領域を検査対象としてもよい。この場合、例えば、位置判定ウインドウ枠は、ポケット部2の外縁に対応する外縁ウインドウ枠と、当該外縁ウインドウ枠の内側に位置するICタグウインドウ枠とを備えたものとされる。そして、ポケット部2領域の重心に対し前記外縁ウインドウの中心が重なるように位置判定ウインドウ枠を配置し、前記ICタグウインドウ枠からICタグ6に相当する塊部分の外形線が逸脱していないか否かを判定することで、ICタグ6の二次元的な位置の良否が判定される。このように構成することで、錠剤5領域の特定に係る各種処理(例えば、第一濃淡画像データの取得処理など)を行う必要がなくなる。これにより、検査の効率化を図ることができ、より高速な検査を実現することができる。
(b)上記実施形態では、1つの錠剤5に対し1つのICタグ6が埋設されるように構成されているが、ICタグ6の埋設個数は特に限定されるものではない。従って、1つの錠剤5に対し複数のICタグ6が埋設されていてもよい。
(c)上記実施形態では、内容物が錠剤5である場合について具体化しているが、内容物の種別、形状等については特に限定されるものではなく、例えばカプセルや食品など、内容物が錠剤5とは異なるものであってもよい。
(d)上記実施形態では、容器フィルム3がPPやPVC等の熱可塑性樹脂材料により形成され、カバーフィルム4がアルミニウム箔等を基材として形成されているが、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。