以下では、本発明の実施の形態に係る照明装置及び移動体について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
以降、本明細書において、「前方」とは、照明装置から光が出射する方向(光出射方向)であって、光が取り出される光取り出し方向(すなわち、照明方向)であり、「後方」とは、「前方」と反対の方向である。また、「前方」は、自動車が前進する際の進行方向とし、自動車が前進する際の右側方(右側)を「右方向」、その反対方向(左側)を「左方向」とし、自動車の天井側を「上方」又は「上側」、その反対方向を「下方」又は「下側」としている。
また、前後方向をZ軸方向とし、上下方向(鉛直方向)をY軸方向とし、左右方向(水平方向)をX軸方向としている。つまり、以下の実施の形態では、所定の照明方向は、照明装置が照明する方向、すなわち、「前方」であり、Z軸正方向である。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。なお、本明細書において、略平行などの「略」を用いた表現を用いている。例えば、略平行は、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行、例えば、数%程度の誤差を含むことも意味する。他の「略」を用いた表現についても同様である。
(実施の形態)
[自動車]
まず、本発明の実施の形態に係る自動車100について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る自動車100の正面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る自動車100は、四輪自動車などの移動体の一例であって、車体(車両)110と、車体110の前方の左右部分に配置された前照灯120とを備える。自動車100は、例えば、ガソリンエンジンで駆動するガソリン自動車、又は、電気で駆動する電気自動車などである。
前照灯120は、灯具であって、本実施の形態では、車両に搭載されるヘッドライト(車両用前照灯)である。前照灯120は、ハウジング121と、前面カバー122と、前面カバー122の後方に取り付けられた照明装置1とを備える。
ハウジング121は、例えば、金属製の筐体であって、照明装置1からの光を出射する開口部を有する。前面カバー122は、透光性を有するヘッドランプカバーであり、ハウジング121の開口部に設けられる。ハウジング121と前面カバー122とは、ハウジング121の内部に水又は塵埃などが進入しないように封止されている。
照明装置1は、前面カバー122の後方に配置され、ハウジング121に取り付けられている。照明装置1から出射する光は、前面カバー122を透過して外部に出射する。
[照明装置]
次に、本実施の形態に係る照明装置1について、図2〜図6を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る照明装置1の正面図である。図3は、図2のIII−III線における本実施の形態に係る照明装置1の断面図である。具体的には、図3は、照明装置1の中心を通る鉛直断面を示している。
図4は、図2のIII−III線における本実施の形態に係る照明装置1の断面図であって、導光部71又は突起80を通過する光の光路を示す図である。図5は、図2のV−V線における本実施の形態に係る照明装置1の断面図であって、導光部71を通過する光の光路を示す図である。図6は、図2のVI−VI線における本実施の形態に係る照明装置1の断面図であって、突起80を通過する光の光路を示す図である。また、図5及び図6において、紙面上下方向に描かれた一点鎖線は、ロービーム用レンズ30の中心軸である。当該中心軸は、照明装置1の略中心を通過する。
なお、図4〜図6において、太線で示す矢印は、本実施の形態に係る導光部71又は突起80を通過する光の光路を示している。細破線で示す矢印は、本実施の形態に係る導光部71又は突起80がない場合の光の光路を比較例として示している。
本実施の形態に係る照明装置1は、移動体に搭載される照明装置である。照明装置1は、例えば、車両用前照灯に用いられる車両用の照明装置であって、前方に光を出射する。つまり、車両の前方は、照明装置1の光の出射方向であり、照明装置1による照明方向である。照明装置1は、図1に示すように、車体110の前方部分に配置されている。
図2及び図3に示すように、照明装置1は、灯具本体として、ロービーム用光源モジュール10と、ハイビーム用光源モジュール20と、ロービーム用レンズ30と、ハイビーム用レンズ40と、放熱体50と、リフレクタ60と、シールド体70と、導光部71と、突起80とを備える。さらに、照明装置1は、ロービーム用光源モジュール10とハイビーム用光源モジュール20とを制御する照明制御部(不図示)を備える。
照明装置1は、走行ビームであるハイビームと、すれ違いビームであるロービームとを照射可能な一体型の灯具である。なお、ハイビームは、自動車100の前方遠方を照射する光である。ロービームは、自動車100の前方下方を照射する光である。
図2に示すように、照明装置1は、照明方向(Z軸方向)から見た場合に所定の円形領域内に収まるように構成されている。より具体的には、ロービーム用光源モジュール10と、ハイビーム用光源モジュール20と、ロービーム用レンズ30と、ハイビーム用レンズ40と、放熱体50と、リフレクタ60と、シールド体70と、導光部71と、突起80とは、Z軸方向から見た場合に所定の円形領域内に収まるようにユニット化されている。所定の円形領域は、例えば、φ70mmである。
なお、本実施の形態に係る照明装置1は、米国などのように進行方向に対して、右側が走行車線(自車線)であり、左側が対向車線である場合の自動車100に搭載される照明装置である。照明装置1が、日本などのように進行方向に対して、左側が走行車線であり、右側が対向車線である場合の自動車に搭載されるときは、以下で説明する構成を、照明装置1の中心軸を中心に左右反転させればよい。
以下では、照明装置1の各構成部材の詳細について説明する。
[ロービーム用光源モジュール]
ロービーム用光源モジュール10は、近距離照明用の光を発する第1光源の一例である。具体的には、ロービーム用光源モジュール10は、ロービーム形成用のLED(Light Emitting Diode)モジュールであって、車体110の前方下方領域、具体的には、路面を照射するときに点灯する。
ロービーム用光源モジュール10は、夜間又はトンネル内などの周辺環境が暗い場合に点灯させる。本実施の形態では、ロービーム用光源モジュール10は、ロービームを照射するとき(近距離照明時)だけでなく、ハイビームを照射するとき(遠距離照明時)にも点灯する。つまり、本実施の形態では、ハイビームは、ロービーム用光源モジュール10から発せられる光と、ハイビーム用光源モジュール20から発せられる光とによって形成される。
ロービーム用光源モジュール10は、白色光源であり、例えば青色光を発する青色LEDチップと黄色蛍光体とを用いて白色光を出射するB−Yタイプの白色LED光源である。あるいは、ロービーム用光源モジュール10は、各々が青色光、赤色光及び緑色光を発するLEDチップを用いて白色光を出射する白色LED光源などでもよい。
図3に示すように、ロービーム用光源モジュール10は、ロービーム用発光素子11と、ロービーム用発光素子11が実装された基板12とを備える。
ロービーム用光源モジュール10は、SMD(Surface Mount Device)構造及びCOB(Chip On Board)構造のいずれでもよい。
SMD構造の場合、ロービーム用発光素子11は、例えば、樹脂製の容器内にLEDチップ(ベアチップ)を実装して封止部材(蛍光体含有樹脂)で封入した構成のSMD型のLED素子である。一方、COB構造の場合、ロービーム用発光素子11は、LEDチップ(ベアチップ)そのものであり、LEDチップが基板12に直接実装された構成である。この場合、基板12に実装されたLEDチップは、蛍光体含有樹脂などの封止部材によって封止される。
ロービーム用光源モジュール10は、放熱体50の第1ヒートシンク51に固定されている。具体的には、基板12が第1ヒートシンク51の所定の載置面に載置されて固定されている。本実施の形態では、図3に示すように、ロービーム用光源モジュール10は、光が上方側に出射するように基板12が横置き(水平置き)で配置されている。つまり、ロービーム用光源モジュール10(ロービーム用発光素子11)の光軸はY軸と平行である。
ロービーム用発光素子11は、ロービーム用レンズ30を通過する光を発する第1発光素子の一例である。ロービーム用発光素子11は、リフレクタ60の焦点(第1焦点)の位置に配置されている。ロービーム用発光素子11は、第1ヒートシンク51に熱的に結合されている。
基板12は、例えば、アルミナなどのセラミックスからなるセラミックス基板、樹脂からなる樹脂基板、又は、金属をベースとして絶縁被覆されたメタルベース基板などである。また、基板12の平面視形状は、基板12が載置される放熱体50の載置面の形状に応じた形状とすることができる。
[ハイビーム用光源モジュール]
ハイビーム用光源モジュール20は、遠距離照明用の光を発する第2光源の一例である。具体的には、ハイビーム用光源モジュール20は、ハイビーム形成用のLEDモジュールであって、車体110の前方の遠方領域(水平面より上方領域も含む)を照射するときに点灯する。
ハイビーム用光源モジュール20は、夜間又はトンネル内などの周辺環境が暗い場合で、対向車線に対向車などが存在しないときに点灯させる。具体的には、ハイビーム用光源モジュール20は、ハイビームを照射するときに点灯する。
ハイビーム用光源モジュール20は、白色光源であり、例えば青色光を発する青色LEDチップと黄色蛍光体とを用いて白色光を出射するB−Yタイプの白色LED光源である。あるいは、ハイビーム用光源モジュール20は、各々が青色光、赤色光及び緑色光を発するLEDチップを用いて白色光を出射する白色LED光源などでもよい。
ハイビーム用光源モジュール20は、SMD構造及びCOB構造のいずれでもよい。SMD構造及びCOB構造の詳細は、ロービーム用光源モジュール10の場合と同様である。
図2及び図3に示すように、ハイビーム用光源モジュール20は、ハイビーム用発光素子21〜23と、ハイビーム用発光素子21〜23が実装された基板24とを備える。
ハイビーム用光源モジュール20は、第2ヒートシンク52に固定されている。具体的には、基板24が第2ヒートシンク52の所定の載置面に載置されて固定されている。本実施の形態では、図3に示すように、ハイビーム用光源モジュール20は、光が前方に出射するように基板24が縦置き(垂直置き)で配置されている。つまり、ハイビーム用光源モジュール20(ハイビーム用発光素子21〜23)の光軸はZ軸と平行である。
ハイビーム用発光素子21〜23は、ハイビーム用レンズ40を通過する光を発する第2発光素子の一例である。ハイビーム用発光素子21〜23は、互いに同じ色及び同じ光量の光を発してもよく、あるいは、互いに異なる色及び異なる光量の光を発してもよい。
ハイビーム用発光素子21〜23は、ロービーム用発光素子11より照明方向に配置されている。すなわち、ハイビーム用発光素子21〜23は、ロービーム用発光素子11より前方(Z軸正方向)に配置されている。ハイビーム用発光素子21〜23は、放熱体50の第2ヒートシンク52に熱的に結合されている。
ハイビーム用発光素子21は、ハイビーム用レンズ40のコリメートレンズ41を通過する光を発する。ハイビーム用発光素子22は、ハイビーム用レンズ40のコリメートレンズ42を通過する光を発する。ハイビーム用発光素子23は、ハイビーム用レンズ40のコリメートレンズ43を通過する光を発する。また、コリメートレンズ41〜43の各々から発せられる光は、互いに同じ領域を照射してもよく、あるいは、互いに異なる領域を照射してもよい。
基板24は、例えば、アルミナなどのセラミックスからなるセラミックス基板、樹脂からなる樹脂基板、又は、金属をベースとして絶縁被覆されたメタルベース基板などである。また、基板24の平面視形状は、基板24が載置される放熱体50の載置面の形状に応じた形状とすることができる。例えば、図2に示すように、基板24の平面視形状は、所定幅の円弧状である。
[ロービーム用レンズ]
ロービーム用レンズ30は、リフレクタ60による光の反射方向に配置され、リフレクタ60によって反射された光を所定の照明方向に出射する第1レンズの一例である。具体的には、ロービーム用レンズ30は、ロービーム用光源モジュール10から発せられた光を通過させて前方に出射する投影レンズである。
図4に示すように、ロービーム用光源モジュール10から発せられた光は、リフレクタ60で反射された後、ロービーム用レンズ30の入射面から入射し、ロービーム用レンズ30を通過して出射面から出射される。なお、入射面は、ロービーム用レンズ30の後方の平面であり、出射面は、ロービーム用レンズ30の前方の湾曲面(例えば、球面又は楕円球面)である。
本実施の形態では、ロービーム用レンズ30は、ロービーム用光源モジュール10及びシールド体70の前方(Z軸正方向)に配置されている。また、ロービーム用レンズ30は、ハイビーム用レンズ40より前方に配置されている。具体的には、ロービーム用レンズ30は、ロービーム用レンズ30の入射面と、ハイビーム用レンズ40の出射面(前方の主面)とが略面一になるように配置されている。ロービーム用レンズ30は、例えば、シールド体70(又は第1ヒートシンク51)に固定されることで位置決めされる。
ロービーム用レンズ30は、フォーカス面F上に形成される光源像を、反転像として、前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。つまり、ロービーム用レンズ30は、ロービーム用発光素子11から発せられた光であって、フォーカス面Fに形成される光源像(光の分布)を反転投影する。なお、フォーカス面Fは、ロービーム用レンズ30の後方側焦点を含む面であり、具体的には、リフレクタ60側のフォーカス面である。フォーカス面Fは、例えば、リフレクタ60の焦点(第2焦点)の近傍に位置する。
ロービーム用レンズ30は、例えば、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)又は環状オレフィン系の樹脂などの透明樹脂を用いた射出成形などにより作製することができる。例えば、ロービーム用レンズ30は、球又は楕円球の一部である。具体的には、ロービーム用レンズ30は、下部分が球体を1/4に切った形状(1/4球)であり、上部分が1/4球からハイビーム用レンズ40(3つのコリメートレンズ41〜43)の前方部分を除去した形状である。
[ハイビーム用レンズ]
ハイビーム用レンズ40は、ハイビーム用光源モジュール20から発せられた光を通過させて出射する投影レンズである。ハイビーム用レンズ40は、ハイビーム用発光素子21〜23の光出射方向(Z軸正方向)に配置された第2レンズの一例である。
具体的には、ハイビーム用レンズ40は、3つのコリメートレンズ41〜43が組み合わされて形成される。3つのコリメートレンズ41〜43はそれぞれ、ハイビーム用発光素子21〜23に一対一に対応している。3つのコリメートレンズ41〜43は、入射した光を平行光に変換する。
3つのコリメートレンズ41〜43の各々は、前方に向かって径が拡大する円錐台形状を有する。小径部側にハイビーム用発光素子21〜23がそれぞれ配置されている。
ハイビーム用レンズ40は、例えば、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)又は環状オレフィン系の樹脂などの透明樹脂を用いた射出成形などにより作製することができる。
本実施の形態では、ロービーム用レンズ30とハイビーム用レンズ40とは、別体で形成されているが、一体で形成されてもよい。また、3つのコリメートレンズ41〜43が一体に形成されているが、別体に形成されてもよい。3つのコリメートレンズ41〜43の配置、すなわち、3つのハイビーム用発光素子21〜23の配置についても図示した例に限らない。
[放熱体]
放熱体50は、ロービーム用光源モジュール10及びハイビーム用光源モジュール20で発生する熱を外部(大気中)に放熱するための放熱部材である。したがって、放熱体50は、金属等の熱伝導率の高い材料を用いて形成することが好ましい。放熱体50は、例えばアルミニウム合金を用いたアルミダイカスト製である。
図3に示すように、放熱体50は、第1ヒートシンク51と第2ヒートシンク52との2つに分割されている。つまり、放熱体50は、第1ヒートシンク51と第2ヒートシンク52とが組み合わされて一体化されている。第1ヒートシンク51及び第2ヒートシンク52の各々には複数の放熱フィンが設けられている。
第1ヒートシンク51は、ロービーム用発光素子11と熱的に結合された第1放熱体である。第1ヒートシンク51は、主としてロービーム用光源モジュール10(ロービーム用発光素子11)で発生する熱を放熱するための放熱部品である。第1ヒートシンク51には、ロービーム用光源モジュール10を載置するための載置面(設置面)が設けられている。
第2ヒートシンク52は、ハイビーム用発光素子21〜23と熱的に結合された第2放熱体である。第2ヒートシンク52は、主としてハイビーム用光源モジュール20(ハイビーム用発光素子21〜23)で発生する熱を放熱するための放熱部品である。第2ヒートシンク52には、ハイビーム用光源モジュール20を載置するための載置面(設置面)が設けられている。
第2ヒートシンク52は、第1ヒートシンク51との間にリフレクタ60を挟むように配置されている。本実施の形態では、図3に示すように、第1ヒートシンク51と第2ヒートシンク52との間には、ロービーム用光源モジュール10、リフレクタ60、導光部71及び突起80が設けられる空間が形成されている。
[リフレクタ]
リフレクタ60は、ロービーム用発光素子11が発する光を反射する。リフレクタ60は、放熱体50の内部に、かつ、ロービーム用光源モジュール10の上方に配置されている。リフレクタ60は、ロービーム用光源モジュール10から上方に出射する光を前方斜め下方に反射させて、ロービーム用レンズ30に入射させるような光反射面(湾曲反射面)を有する。
本実施の形態では、リフレクタ60の光反射面(ロービーム用発光素子11側の面)は、回転楕円面の一部を含んでいる。例えば、照明装置1の鉛直断面(図3に示す断面)においては、リフレクタ60は、焦点位置が互いに異なる複数の楕円を繋いだ形状を有する。なお、複数の楕円の各々の焦点の一方(リフレクタ60の第1焦点)は、ロービーム用発光素子11の近傍に位置する。複数の楕円の各々の焦点の他方(リフレクタ60の第2焦点)は、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fの近傍に位置する。例えば、リフレクタ60の略楕円形状における軸(長軸)の方向は、ロービーム用発光素子11と、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fにおけるシールド体70のエッジ(上面端)とを結ぶ方向である。
リフレクタ60は、ロービーム用発光素子11が第1焦点の近傍に配置されるように、放熱体50の第1ヒートシンク51に固定されている。これにより、ロービーム用発光素子11から発せられた光は、リフレクタ60によって反射され、第2焦点の近傍に向かって進行する。
リフレクタ60は、例えば、耐熱樹脂を用いた樹脂成形によって形成され、その表面に反射膜が形成されている。例えば、耐熱樹脂としては、ポリカーボネート(PC)などを用いることができる。あるいは、耐熱樹脂の代わりに、繊維強化プラスチック(FRP(Fiber Reinforced Plastic)又はBMC(Bulk Molding Compound))を用いてもよい。反射膜は、例えば、アルミ蒸着膜などの金属蒸着膜である。反射膜は、ロービーム用発光素子11が発した光を鏡面反射する。
[シールド体]
シールド体70は、リフレクタ60によって反射された光の一部を遮る遮蔽部材の一例である。具体的には、シールド体70は、ロービーム用光源モジュール10から出射された光の一部を遮ることによって、所定の明暗境界であるカットオフラインを形成するための構造体である。
シールド体70は、リフレクタ60とロービーム用レンズ30との間に設けられている。具体的には、シールド体70は、第1ヒートシンク51に固定されている。
シールド体70は、例えば、リフレクタ60と同様に、耐熱樹脂又は繊維強化プラスチックなどを用いて形成される。シールド体70のロービーム用レンズ30側の表面には、反射膜が形成されている。反射膜は、例えば、アルミ蒸着膜である。
[導光部71]
導光部71は、シールド体70の一部であり、リフレクタ60とロービーム用レンズ30との間に設けられている。
導光部71は、図3〜図5に示すように、入射面72と、出射面73と、天面74と、底面75とを有する。導光部71は、リフレクタ60によって反射された光のうち入射面72から入射した光を中心軸に対して広げて、出射面73からロービーム用レンズ30に向けて出射する。具体的には、導光部71は、入射面72から入射した光を、走行車線側に広げ、かつ、水平線より上方領域を照射するように進行させる。
入射面72は、図5に示すように、リフレクタ60とは反対方向に凹に湾曲した面を有する。例えば、入射面72は、回転楕円面の一部を含んでいる。
入射面72は、上面視において、中心軸からずれた位置に設けられている。入射面72の中心軸からのずれの方向及び量(距離)は、例えば、突起80の入射面81の中心軸からのずれの方向及び量(距離)と略同じである。本実施の形態では、入射面72は、中心軸から走行車線側(右側)にずれている。
出射面73は、図5に示すように、リフレクタ60に向かって凹に湾曲した面を有する。例えば、出射面73は、回転楕円面の一部を含んでいる。
出射面73は、上面視において、中心軸を通るように設けられている。具体的には、図5に示すように、出射面73は、上面視における中心が中心軸を通るように設けられている。
天面74は、導光部71の入射面72と出射面73との間の上面である。具体的には、天面74は、第2ヒートシンク52側の面である。導光部71の天面74には、反射膜が形成されている。これにより、天面74から光が入射するのを抑制することができる。
底面75は、導光部71の入射面72と出射面73との間の下面である。具体的には、底面75は、第1ヒートシンク51側の面である。導光部71の底面75には、反射膜が形成されている。
導光部71は、シールド体70と一体に形成される。具体的には、成形した耐熱樹脂又は繊維強化プラスチックの表面に反射膜を形成する際に、入射面72及び出射面73には、反射膜を形成しないことで、導光部71を形成することができる。また、突起80も同様にして形成することができる。なお、反射膜は、例えば、アルミ蒸着膜である。
[突起(導光部材)]
突起80は、導光部71の天面74から上方に突出した透光性の突起である。具体的には、突起80は、ロービーム用レンズ30の光軸より上方まで突出している。なお、図3において、ロービーム用レンズ30の光軸は、ロービーム用レンズ30の入射面における中心軸と、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fにおけるシールド体70のエッジ(上面端)とを結ぶ方向である。
突起80は、図3に示すように、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fとリフレクタ60との間に配置される。具体的には、突起80は、リフレクタ60の第2焦点の位置と、リフレクタ60との間に配置される。
突起80は、図6に示すように、ロービーム用レンズ30の中心軸からずれた位置に配置されている。本実施の形態では、突起80は、中心軸から走行車線側(右側)にずれて配置される。
突起80は、図4及び図6に示すように、入射面81と出射面82とを有する。突起80は、リフレクタ60によって反射された光のうち入射面81から入射した光を、当該光の進行方向を変更して、出射面82からロービーム用レンズ30に向けて出射する。具体的には、突起80は、入射面81から入射した光の進行方向を、当該光が走行車線側に照射されるように変更する。また、突起80は、入射面81から入射した光の進行方向を、当該光がより前方遠方を照射するように変更する。
入射面81は、図4及び図6に示すように、リフレクタ60に向かって凸に湾曲した面を有する。出射面82は、図4及び図6に示すように、リフレクタ60に向かって凹に湾曲した面を有する。入射面81及び出射面82は、例えば、回転楕円面の一部を含んでいる。
例えば、入射面81及び出射面82は、図4に示すように、上下方向(Z軸方向)に対して傾斜している。具体的には、入射面81及び出射面82は、上端が下端(シールド体70の天面との接続部分)よりも前方に位置するように傾斜している。つまり、突起80は、シールド体70の天面から上方、かつ、前方に向かって斜めに突出している。
突起80は、図6に示すように、側面83及び側面84を有する。側面83及び側面84は、入射面81と出射面82との間の側面であり、ロービーム用発光素子11の光軸に平行に設けられている。具体的には、側面83及び側面84は、Y軸方向に平行な平面である。つまり、側面83及び側面84は、シールド体70の天面に直交している。例えば、側面83及び側面84は、所定幅の楕円弧状又は円弧状の面である。
側面83及び側面84は、図6に示すように、中心軸に対して傾斜している。具体的には、側面83及び側面84は、後端(入射面81側の端部)が前端(出射面82側の端部)より中心軸から離れるように傾斜している。なお、側面83及び側面84は、導光部71の側面の一部(入射面72側の部分)と略面一である。
突起80は、透光性の樹脂材料から形成される。本実施の形態では、突起80は、シールド体70と一体に形成されている。したがって、突起80の材料は、シールド体70と同じであり、例えば、耐熱樹脂又は繊維強化プラスチックなどである。
なお、上述したように、シールド体70は、表面に反射膜が形成されているが、突起80には、反射膜は形成されていない。具体的には、入射面81には、反射膜が形成されていない。出射面82には、反射膜が形成されていない。
[導光部を通過する光]
続いて、本実施の形態に係る導光部71を通る光の光路について、図4及び図5を用いて説明する。
ロービーム用発光素子11から上方に発せられた光は、リフレクタ60によって反射されて前方に向けて進行する。図4及び図5に示すように、リフレクタ60によって反射された光の一部(細破線の矢印)は、導光部71の入射面72から導光部71に入射する。導光部71に入射した光は、導光部71内を進行し、出射面73から出射されて、ロービーム用レンズ30に向けて進行する。
このとき、導光部71とその周囲(空気)との屈折率の差によって、光は屈折する。例えば、導光部71の屈折率は、約1.48〜1.60である。また、導光部71内では、図4に示すように、入射した光が底面75によって反射される。これにより、図4に示すように、導光部71の出射面73から出射される光は、上方に向かって進行する。つまり、導光部71は、入射面72から入射した光を、当該光の進行方向を上方に変更して出射面73から出射する。なお、図4に示す例では、光が底面75のみで反射される例について示したが、入射した光の一部は、天面74でも反射される。
これにより、図4に示すように、導光部71の出射面73から出射された光(太実線)は、ロービーム用レンズ30を透過した後、中心軸より上方を中心軸に略平行に進行する。つまり、導光部71の出射面73から出射された光は、水平面より上方を照射する。
また、図5に示すように、導光部71の出射面73から出射される光は、導光部71がない場合よりも中心軸に対して広がって進行する。具体的には、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fにおいて、導光部71を透過した光(太実線)は、導光部71がない場合の光(細破線)よりも中心軸に対して広がっている。したがって、ロービーム用レンズ30は、フォーカス面Fを通る光の分布を反転投影するので、ロービーム用レンズ30の前方においては、広がった光が照射される。
図7は、本実施の形態に係る導光部71及び突起80による光の進行方向の変化を説明するための図である。図7において、ドットの網掛けを付した領域が、ロービーム用レンズ30から出射される光(ロービーム)によって照射される領域である。
上述したように、導光部71は、導光部71がない場合に対向車線側を照射する光を、水平線より上方、かつ、照射範囲を広げて照射するように、その進行方向を変更することができる。つまり、図7に示すように、導光部71は、例えば、領域90の明るさを抑制する代わりに、領域91を明るく照射することができる。これにより、例えば、道路の上方などに設けられた看板などを照射することができ、運転者にとって、より快適な運転環境を実現することができる。
[突起を通過する光]
続いて、本実施の形態に係る突起80を通過する光の光路について、図4及び図6を用いて説明する。
図4及び図6に示すように、リフレクタ60によって反射された光の一部(細破線の矢印)は、突起80の入射面81から突起80に入射する。突起80に入射した光は、突起80内を進行し、出射面82から出射されて、ロービーム用レンズ30に向けて進行する。
このとき、突起80とその周囲(空気)との屈折率の差によって、光は屈折する。例えば、突起80の屈折率は、導光部71と同じであり、約1.48〜1.60である。これにより、図4に示すように、突起80の出射面82から出射される光は、突起80がない場合よりも下方を進行する。つまり、突起80は、入射面81から入射した光を、当該光の進行方向を下方に変更して出射面82から出射する。
したがって、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fにおいて、突起80を透過した光(太破線)は、突起80がない場合の光(細破線)よりも下方を進行する。ロービーム用レンズ30は、フォーカス面Fを通る光の分布を反転投影するので、フォーカス面Fにおいて所定の線より下方を通る光は、ロービーム用レンズ30の前方においては、当該線より上方を通る。
具体的には、出射面82から出射した光は、図4に示すように、側面視において、ロービーム用レンズ30を透過した後、中心軸より下方を略平行に進行する。このとき、出射面82から出射した光(太破線)は、突起80がない場合の光(細破線)よりも中心軸に近い方向、すなわち、より水平に近い方向に出射される。したがって、本実施の形態に係る突起80を透過した光は、突起80がない場合の光よりも遠方を照明することができる。このように、本実施の形態によれば、突起80によって光を屈折させることで、車体110の近くを照射していた光をより遠方に進行させることができる。したがって、照明効果を高めることができる。
なお、突起80がない場合の光(細破線)のように下方に向けて進行する光は、自動車100の近くを照明する。このとき、自動車100の近くが明るくなりすぎると、運転者にとっては、自動車100の遠方又は側方などを暗く感じてしまう。これに対して、本実施の形態によれば、突起80によって、自動車100の近くを照射していた光をより遠方に進行させることができる。これにより、運転者にとって、より快適な運転環境を実現し、安全運転に寄与することができる。
また、図6に示すように、突起80の出射面82から出射される光は、突起80がない場合よりも対向車線側を進行する。つまり、突起80は、入射面81から入射した光を、当該光の進行方向を対向車線側(左側)に変更して出射面82から出射する。具体的には、ロービーム用レンズ30のフォーカス面Fにおいて、突起80を透過した光(太破線)は、突起80がない場合の光(細破線)よりも対向車線側(左側)を進行する。
出射面82から出射した光は、図6に示すように、上面視において、ロービーム用レンズ30を透過した後、中心軸に交差するように進行する。つまり、出射面82から出射した光は、走行車線側に向けて出射される。
このように、本実施の形態によれば、突起80によって光を屈折させることで、対向車線側を照射していた光を、走行車線(自車線)側に進行させることができる。具体的には、突起80は、突起80がない場合に対向車線側を照射する光を、走行車線側、かつ、遠方を照射するように、その進行方向を変更する。つまり、図7に示すように、突起80は、例えば、領域90を照射する光の進行方向を、当該光が領域92を照射するように変更する。これにより、領域90の明るさを抑制する代わりに、領域92を明るく照射することができる。
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る照明装置1は、自動車100に搭載される照明装置であって、ロービーム用発光素子11と、ロービーム用発光素子11が発する光を反射するリフレクタ60と、リフレクタ60による光の反射方向に配置されたロービーム用レンズ30と、リフレクタ60とロービーム用レンズ30との間に設けられた導光部71とを備え、導光部71は、入射面72と出射面73とを有し、リフレクタ60によって反射された光のうち入射面72から入射した光を、ロービーム用レンズ30の中心軸に対して広げて、出射面73からロービーム用レンズ30に向けて出射する。また、例えば、本実施の形態に係る自動車100は、照明装置1を、車体110の前方部分に備える。
これにより、導光部71は、導光部71がない場合に対向車線側を照射する光を、水平線より上方、かつ、照射範囲を広げて照射するように、その進行方向を変更することができる。これにより、光を有効に利用することができるので、照明効果を高めることができる。また、例えば、道路の上方などに設けられた看板などを照射することができ、運転者にとって、より快適な運転環境を実現することができる。
また、例えば、導光部71の入射面72と出射面73との間の底面75には、反射膜が形成されている。
また、例えば、導光部71の入射面72と出射面73との間の天面74には、反射膜が形成されている。
これにより、天面74から光が導光部71に入射するのを抑制することができる。また、導光部71を進行する光が天面74から出射するのを抑制することができる。また、天面74と底面75との間で反射を起こさせることにより、光を水平方向に近い方向で出射面73から出射させることができる。
また、例えば、入射面72は、リフレクタ60とは反対方向に凹に湾曲した面を有し、出射面73は、リフレクタ60に向かって凹に湾曲した面を有する。
これにより、導光部71とその周囲(空気)との屈折率差を利用して光の進行方向を変えることができ、光を広げることができる。
また、例えば、入射面72は、上面視において、ロービーム用レンズ30の中心軸からずれた位置に設けられ、出射面73は、上面視において、ロービーム用レンズ30の中心軸を通るように設けられている。
これにより、例えば、本来(導光部71がない場合)、対向車線側に向かう光を広げることができるので、照明効果を高めることができる。
また、例えば、照明装置1は、さらに、導光部71の天面74から上方に突出した透光性の突起80を備える。また、例えば、突起80は、導光部71の天面74のうち、反射膜が形成されていない部分から上方に突出している。
これにより、例えば、透光性の突起80が、本来は対向車線側に向かう光の進行方向を走行線(自車線)側に向かうように変更することで、走行車線側を明るくすることができる。したがって、光を有効に利用することができるので、照明効果を高めることができる。
また、例えば、出射面73から出射した光は、側面視において、ロービーム用レンズ30を透過した後、中心軸より上方を中心軸に略平行に進行する。
これにより、水平面より上方を照射することができるので、例えば、道路の路肩又は上方に設置された看板などを照射することができる。したがって、運転者にとって、より快適な運転環境を実現することができる。
また、例えば、導光部71は、透光性の樹脂材料から形成される。
これにより、樹脂材料を用いることで、容易に導光部71を形成することができる。
また、例えば、ロービーム用発光素子11は、LEDである。
これにより、LEDを用いることで、消費電力を少なくすることができる。
(その他)
以上、本発明に係る照明装置について、上記実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施の形態では、導光部71の天面74及び底面75に反射膜を設ける例について示したが、天面74及び底面75には、反射膜が設けられていなくてもよい。この場合であっても、導光部71を進行する光は、導光部71とその周辺との屈折率差によって天面74及び底面75によって反射されながら進行する。
また、例えば、上記の実施の形態では、突起80を導光部71と一体に形成する例について示したが、これに限らない。突起80は、導光部71(又は、シールド体70)と別体で形成されてもよい。また、照明装置1は、突起80を備えなくてもよい。
また、例えば、導光部71及び突起80の形状及び配置は、上述した例に限らない。例えば、突起80は、フォーカス面Fよりロービーム用レンズ30側に配置されてもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、照明装置1が複数のハイビーム用発光素子21〜23を備える例について示したが、ハイビーム用発光素子は1つのみでもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、自動車100が2つの照明装置1(前照灯120)を備える例について示したが、これに限らない。例えば、自動車100は、例えば、車体110の左右に2つずつの照明装置1など、3つ以上の照明装置1を備えてもよく、あるいは、1つのみの照明装置1を備えてもよい。
また、例えば、上記の実施の形態では、ロービーム及びハイビームを照射する前照灯に適用する例について説明したが、フォグランプ用又はDRL(Daytime Running Light)用の前照灯に適用してもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、発光素子の一例としてLEDを例示したが、半導体レーザなどのレーザ素子、有機EL(Electro−Luminescence)又は無機EL素子などの発光素子を用いてもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、自動車100として四輪自動車を例示したが、二輪自動車などのその他の自動車でもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。