本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)〜(3)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂(A)より選択される一種以上と、後述する式(4)で表される多価カルボン酸化合物(B)を含有することを特徴とする。
まず、本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂(A)について説明する。
本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂(A)は下記式(1)〜(3)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂である。
式(1)中、R1は炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基を、R2は酸素原子もしくはフェニレン基を、Xはエポキシ基を有する有機基を、mは平均値で1〜10を、式中、複数存在するR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっても構わない。
R1は炭素数1〜6の一価脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基であり、炭素数1〜12の一価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基などの飽和一価脂肪族炭化水素基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基などの不飽和一価脂肪族炭化水素基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基であり、更に好ましくはメチル基である。また、炭素数6〜12の一価芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基や、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基であり、好ましくはフェニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
R2は酸素原子もしくはフェニレン基である。この中でも低ガス透過性の観点からフェニレン基が好ましい。
mは平均値で0〜10であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜2である。
Xにおける有機基とは、C、H、N、O原子からなる化合物を表し、エポキシ基含有の有機基の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3―グリシドキシプロピル基が挙げられ、硬化物の耐熱透明性の観点から3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。ここで、有機基における炭素数は1〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましい。また、炭素数1〜5のアルキレン基を介在して3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3―グリシドキシプロピル基が付加している基であることが好ましい。
式(2)中、R1、Xは前記と同じ意味を、nは1〜3の整数をそれぞれ表す。式中、複数存在するR1、Xはそれぞれ同一であっても異なっても構わない。
nは1〜3の整数であり、中でも2が好ましい。
式(3)中、R1、Xは前記と同じ意味をそれぞれ表す。式中、複数存在するR1、Xはそれぞれ同一であっても異なっても構わない。
式(1)〜(3)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂(A)は下記式(8)〜(110)で表されるハイドロジェンシロキサン化合物と、アルケニル基とエポキシ基を有する化合物の、付加反応によって得ることができる。
式(8)〜(10)中、 R1、R2、m、nは前記と同じ意味をそれぞれ表す。式中、複数存在するR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっても構わない。
アルケニル基とエポキシ基を有する化合物は、同一分子内にエポキシ基とアルケニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、下記式(11)、(12)で表される化合物が、シリコーン変性エポキシ樹脂とした際の反応性、硬化物の透明性、耐熱性の観点から好ましい。
式(11)および(12)中、R5はエステル、エーテル結合を含有してもよい炭素数0〜4のアルキレン基を表し、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、メチルエステル基、メチルエーテル基、メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、エチレンオキシエチレン基などである。
式(8)〜(10)で表されるハイドロジェンシロキサン化合物と同一分子内にエポキシ基とアルケニル基を有する化合物との反応割合としては、同一分子内にエポキシ基とアルケニル基を有する化合物のアルケニル基1個に対してハイドロジェンシロキサン化合物中のSiH基が0.25〜1.0個、特に0.5〜0.8個となる割合で反応させることが好ましい。なお、ヒドロシリル化反応は、従来公知の方法に従えばよい。
式(1)〜(3)で表される化合物は、前記したハイドロジェンシロキサンと同一分子内にエポキシ基とアルケニル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応によって得る方法の他に、例えば下記式(13)〜(15)で表される多価オレフィン系化合物を酸化エポキシ化することでも得ることができる。
式(13)〜(15)中、 R1、R2、R5、m、nは前記と同じ意味をそれぞれ表す。式中、複数存在するR1、R2、R5はそれぞれ同一であっても異なっても構わない。
酸化の手法としては過酢酸等の過酸で酸化する方法、過酸化水素水で酸化する方法、空気(酸素)で酸化する方法などが挙げられるが、これらに限らない。
過酸によるエポキシ化の手法としては具体的には日本国特開2006−52187号公報に記載の手法などが挙げられる。使用できる過酸の原料としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、安息香酸、m−クロロ安息香酸、フタル酸などの有機酸およびそれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、過酸化水素と反応して有機過酸を生成する効率、反応温度、操作の簡便性、経済性などの観点からは、ギ酸、酢酸、無水フタル酸を使用するのが好ましく、特に反応操作の簡便性の観点から、ギ酸または酢酸を使用するのがより好ましい。
過酸化水素水によるエポキシ化の手法においては種々の手法が適応できるが、具体的には、日本国特開昭59−108793号公報、日本国特開昭62−234550号公報、日本国特開平5−213919号公報、日本国特開平11−349579号公報、日本国特公平1―33471号公報、日本国特開2001−17864号公報、日本国特公平3−57102号公報等に挙げられるような手法が適応できる。
他にも、非特許文献1(James V.Crivello and Ramesh Narayan、Novel Epoxynorbornane Monomers. 1. Synthesis and Characterization、Macromolecules 1996、29巻、433〜438頁)に記載されている方法も適用することができる。具体的には、オキソンを使用して、アルケニル基をエポキシ化して得ることができる。
式(13)〜(15)で表されるオレフィン系化合物は、式(8)〜(10)であらわされるハイドロジェンシロキサンと、アルケニル基を有するシクロヘキセン化合物(例えばビニルシクロヘキセン)を付加反応することによって得ることができる。
本発明のシリコーン変性エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量(JIS K7236で測定)は、150〜800g/eqが好ましく、200〜600がさらに好ましい。エポキシ当量が150を下回ると、硬化物の硬さが高くなりすぎて例えば吸湿リフロー時の信頼性が劣る懸念があり、800を上回ると機械強度が劣るおそれがある。
次に本発明の多価カルボン酸化合物(B)について説明する。本発明の多価カルボン酸化合物(B)は下記式(4)で表される化合物である。
式(4)中、R3の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、イソヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられるが、得られる硬化物の耐熱透明性の観点からメチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
式(4)中、R4のうち炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられるが、得られる硬化物の耐熱透明性の観点からメチル基が好ましい。
R4の中でも、メチル基、カルボキシル基が好ましく、得られる硬化物の透明性の観点からはメチル基が好ましく、得られる硬化物のガスバリア性、高いガラス転移温度(Tg)、硬さの観点からはカルボキシル基が特に好ましい。
式(4)中、複数存在するR3、R4は同一であっても異なっていても構わない。
式(4)で表される多価カルボン酸化合物(B)は、下記式(16)で表される、イソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物と、下記式(17)で表される、カルボン酸無水物化合物との付加反応により得ることができる。
式(16)中、R3は、前記と同じ意味を表し、式中、複数存在するR3は同一であっても異なっていても構わない。
式(16)で表される化合物の中でも、下記式(18)〜(20)で表される化合物が、硬化物の透明性、ガスバリア性の観点から好ましい。
式(17)中、R4は、前記と同じ意味を表す。
式(17)で表される化合物のうち、下記(5)〜(7)で表される化合物が特に好ましい。
多価カルボン酸化合物(B)の製造は、溶媒中でも無溶剤でも行うことができる。溶剤としては、前述の式(16)で表されるイソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物と式(17)で表されるカルボン酸無水物化合物と反応しない溶剤であれば特に制限なく使用できる。使用しうる溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトニトリルの様な非プロトン性極性溶媒、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素等が挙げられ、これらの中で、芳香族炭化水素やケトン類が好ましい。
これらの溶剤は1種又は2種以上を混合して用いても良い。溶剤を用いる場合の使用量は、前述の式(16)で表されるイソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物と式(17)で表されるカルボン酸無水物化合物の合計100質量部に対して、0.5〜300質量部が好ましい。
多価カルボン酸化合物(B)は室温(25℃)にて固体であることが多いため、溶剤中で合成することが作業性の観点から好ましい。
本発明の多価カルボン酸(B)は無触媒でも、触媒を用いても製造する事ができる。触媒を用いる場合、用い得る触媒は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の酸性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の複素環式化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩、オルトチタン酸テトラエチル、オルトチタン酸テトラメチル等のオルトチタン酸類、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸マンガン、オクチル酸カルシウム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸カリウム等の金属石鹸類が挙げられる。
触媒を用いる場合、1種または2種以上を混合して用いることもできる。
触媒を用いる場合の使用量は、前述の式(16)で表されるイソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物と式(17)で表されるカルボン酸無水物化合物の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましい。
触媒の添加方法は、直接添加するか、可溶性の溶剤等に溶解させた状態で使用する。この際、メタノール、エタノール等のアルコール性の溶媒や水を用いることは、未反応の、式(17)で表されるカルボン酸無水物化合物と反応してしまうため、避けることが好ましい。
本発明の多価カルボン酸化合物(B)の製造時の反応温度は、触媒量、使用溶剤にもよるが、通常20〜160℃、好ましくは50〜150℃、特に好ましくは60〜145℃である。又、反応時間の総計は通常1〜20時間、好ましくは3〜18時間である。反応は2段階以上で行なっても良く、例えば20〜100℃で1〜8時間反応させた後に、100〜160℃で1〜12時間などで反応させても良い。これは特に式(16)で表されるカルボン酸無水物化合物は揮発性の高いものが多く、そのようなものを用いる場合、あらかじめ20〜100℃で反応させた後に、100〜160℃で反応させることで、揮発を抑えることができる。これにより、大気中への有害物質の拡散を抑制するだけでなく、設計どおりの多価カルボン酸化合物(B)を得ることができる。
触媒を用いて製造を行なった場合は必要に応じてクエンチ、および/又は水洗を行なうことで触媒を除くことができるが、そのまま残存させ、エポキシ樹脂組成物の硬化促進剤として利用することもできる。
水洗工程を行なう場合、使用している溶剤の種類によっては水と分離可能な溶剤を加えることが好ましい。好ましい溶剤としては例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンのようなケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ブタン酸イソプロピルなどのエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンのような炭化水素等が例示できる。
反応や水洗に溶剤を用いた場合、減圧濃縮などによって除くことができる。
製造された多価カルボン酸化合物(B)の酸価(JIS K2501に記載の方法で測定)は150〜415mgKOH/gのものが好ましく、185〜375mgKOH/gのものがより好ましく、特に200〜320mgKOH/gのものが好ましい。酸価が150mgKOH/g以上であれば硬化物の機械特性が向上するため好ましく、415mgKOH/g以下であれば、その硬化物が硬くなり過ぎず、弾性率が適度なものとなり好ましい。
また、多価カルボン酸(B)の官能基(カルボン酸)当量は、135〜312g/eqのものが好ましく、150〜300g/eqのものがより好ましく、特に180〜280g/eqが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記したシリコーン変性エポキシ樹脂(A)と多価カルボン酸化合物(B)の他にカルボン酸無水物化合物(C)を含有することも、硬化物の機械特性の観点から好ましい態様である。
カルボン酸無水物化合物(C)は、分子内にカルボン酸無水物基を含有する化合物であれば限定されないが、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物などを挙げることができ、中でも下記式(5)〜(7)で表される化合物であることが硬化物の透明性の観点から好ましい。
中でも、エポキシ樹脂組成物を室温(25℃)にて液状で使用する場合、前記式(6)で表される化合物を用いる事が、エポキシ樹脂組成物の粘度調整が容易にできる観点から好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)〜(3)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂(A)より選択される一種以上と、多価カルボン酸化合物(B)を混合して得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は前記各成分を常温もしくは加温下で均一に混合することにより得られる。例えば、薬匙、押出機、ニーダー、三本ロール、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ビーズミル等を用いて均一になるまで充分に混合し、必要によりSUSメッシュ等によりろ過処理を行うことにより調製される。
調製する際、後述するカルボン酸無水物化合物(C)、エポキシ樹脂硬化促進剤(D)、リン系酸化防止剤(E)、フェノール系酸化防止剤(F)、接着助剤、光安定剤等を一緒に混合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物にカルボン酸無水物化合物(C)を添加する場合、シリコーン変性エポキシ樹脂(A)と多価カルボン酸化合物(B)の組成物に添加しても良いし、多価カルボン酸化合物(B)とカルボン酸無水物化合物(C)をあらかじめ混合し、多価カルボン酸組成物とした後に、シリコーン変性エポキシ樹脂(A)を添加することで、本発明のエポキシ樹脂組成物を調整してもよい。
この場合の調整においても、例えば、薬匙、押出機、ニーダー、三本ロール、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、ビーズミル等を用いて均一になるまで充分に混合し、必要によりSUSメッシュ等によりろ過処理を行うことにより調製することができる。
調製する際、後述するエポキシ樹脂硬化促進剤(D)、リン系酸化防止剤(E)、フェノール系酸化防止剤(F)、接着助剤、光安定剤等を一緒に混合してもよい。
多価カルボン酸化合物(B)とカルボン酸無水物化合物(C)の混合物である多価カルボン酸組成物を調整する場合、前述の多価カルボン酸化合物(B)の製造の際に式(17)で表されるカルボン酸無水物化合物と、多価カルボン酸組成物中のカルボン酸無水物化合物(C)が同じである場合、多価カルボン酸化合物(B)の製造時に式(16)で表されるイソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物に対して過剰のカルボン酸無水物化合物(C)中で反応を行い、多価カルボン酸(B)の製造が終了した時点で、多価カルボン酸化合物(B)とカルボン酸無水物(C)との混合物として得ることもできる。
この反応の際の両者の仕込み比率としては、その官能基当量で、該酸無水物基1当量に対して、イソシアヌル酸トリスヒドロキシアルキル化合物の水酸基当量で、0.001〜0.7当量、より好ましくは0.01〜0.5当量の範囲で仕込むのが好ましい。
このようにして得られた多価カルボン酸組成物にカルボン酸無水物(C)をさらに混合することで、多価カルボン酸組成物中の多価カルボン酸化合物(B)の濃度を調整することができる。
多価カルボン酸化合物(B)の製造時に、過剰のカルボン酸無水物化合物(C)を仕込んで反応させた場合、水洗工程時の水によって過剰のカルボン酸無水物化合物(C)が加水分解されてしまう恐れがあるため、前述の水洗工程は避けたほうがよい。
本発明のエポキシ樹脂中、多価カルボン酸(B)とカルボン酸無水物化合物(C)の存在割合は、多価カルボン酸(B)100質量部に対してカルボン酸無水物化合物(C)が1〜1000質量部が好ましく、さらに好ましくは10〜800質量部、特に好ましくは50〜500質量部である。
室温(25℃)にて液状のエポキシ樹脂組成物を得る観点からは、室温(25℃)にて液状の多価カルボン酸組成物を用いたほうが好ましい。この場合、カルボン酸化合物100質量部に対して、カルボン酸無水物化合物が10〜1900質量部、好ましくは100〜400質量部が好ましい。ここで、多価カルボン酸組成物を液状とすることで、液状で使用されることが求められる分野(例えば表面実装型LEDの封止)に適応することができる点から好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、シリコーン変性エポキシ樹脂(A)の他にもエポキシ樹脂を混合して用いることができる。例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。
他のエポキシ樹脂を混合して用いる場合、その使用量はエポキシ樹脂全体中、シリコーン変性エポキシ樹脂(A)が30質量%以上になるように混合することが、硬化物の耐熱透明性の観点から好ましく、50質量%以上がより好ましい。
本発明における、多価カルボン酸化合物(B)、または多価カルボン酸化合物(B)とカルボン酸無水物化合物(C)の混合物はエポキシ樹脂の硬化剤として機能するものであり、他のエポキシ樹脂硬化剤を含有することもできる。例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、多価カルボン酸樹脂が挙げられる。
多価カルボン酸樹脂は少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有し、脂肪族炭化水素基またはシロキサン骨格を主骨格とすることを特徴とする化合物である。本発明においては多価カルボン酸樹脂とは単一の構造を有する多価カルボン酸化合物だけでなく、置換基の位置が異なる、あるいは置換基の異なる複数の化合物の混合体、すなわち多価カルボン酸組成物も含包し、本発明においてはそれらをまとめて多価カルボン酸樹脂と称す。
多価カルボン酸樹脂としては、特に2〜6官能のカルボン酸が好ましく、炭素数5以上の2〜6官能の多価アルコールまたはシロキサン構造を有する多価アルコールと酸無水物との反応により得られた化合物がより好ましい。さらには上記酸無水物が飽和脂肪族環状酸無水物であるポリカルボン酸が好ましい。
2〜6官能の多価アルコールとしてはアルコール類としては、アルコール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されないがエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1.3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2−ヒドロキシメチル−1,4−ブタンジオール等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等のテトラオール類、ジペンタエリスリトールなどのヘキサオール類等が挙げられる。
特に好ましいアルコール類としては炭素数が5以上のアルコールであり、特に1,6-ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等の化合物が挙げられ、中でも2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4−ジエチルペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ノルボルネンジオール等の分岐鎖状構造や環状構造を有するアルコール類がより好ましい。高い照度保持率を付与する観点から、2,4−ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
2〜6官能の多価アルコールに付加する 酸無水物としては特にメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が好ましく、中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましい。ここで、硬度を上げるためには、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましく、照度保持率を上げるためにはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸無水物が好ましい。
付加反応の条件としては特に指定はないが、具体的な反応条件の1つとしては酸無水物、多価アルコールを無触媒、無溶剤の条件下、40〜150℃で反応させ加熱し、反応終了後、そのまま取り出す。という手法である。ただし、本反応条件に限定されない。
本発明のエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂硬化剤の配合量は、シリコーン変性エポキシ樹脂(A)を含むエポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、エポキシ基と反応性を有する官能基(酸無水物系硬化剤の場合には−CO−O−CO−で表される酸無水物基)が0.3〜1.0モルとなる量、好ましくは0.4〜0.8モルとなる量である。エポキシ基と反応性を有する官能基が0.3モル以上であれば、硬化物の耐熱性、透明性が向上するため、望ましく、1.0モル以下であれば硬化物の機械特性が向上するため、好ましい。ここで、「エポキシ基と反応性を有する官能基」とは、アミン系硬化剤が有するアミノ基、フェノール系硬化剤が有するフェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤が有する酸無水物基、多価カルボン酸樹脂が有するカルボキシル基である。
他のエポキシ樹脂硬化剤を含有する場合、その使用量はエポキシ樹脂硬化剤全体中、多価カルボン酸(B)が10質量%以上になるように混合することが、硬化物の耐熱透明性の観点から好ましく、15質量%以上がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物はシリコーン変性エポキシ樹脂(A)と、多価カルボン酸化合物(B)と、エポキシ樹脂硬化促進剤(D)を含有する。
ここからは、エポキシ樹脂硬化促進剤(D)について説明する。
エポキシ樹脂硬化促進剤(D)としては、テトラブチルホスホニウム・O,O−ジエチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどの第四級ホスホニウム塩、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等の有機フォスフィン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン系硬化触媒、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 フェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 オクチル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 p−トルエンスルホン酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7 ギ酸塩等の第四級アンモニウム塩、オクチル酸亜鉛、ナフチル酸亜鉛等の有機カルボン酸塩、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミキレート化合物、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンチモン系スルホニウム塩等の熱カチオン硬化促進剤、アンチモン系スルホニウム塩、リン系スルホニウム塩等の光カチオン硬化促進剤などを挙げられる。
エポキシ樹脂硬化促進剤(D)の配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部である。エポキシ樹脂硬化促進剤(D)の配合量が前記下限値より少ないと、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させる効果が十分ではないおそれがある。逆に、エポキシ樹脂硬化促進剤の配合量が前記上限値より多いと、硬化時やリフロー試験時の変色の原因となるおそれがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物はシリコーン変性エポキシ樹脂(A)と、多価カルボン酸化合物(B)と、リン系酸化防止剤(E)を含有する。
リン系酸化防止剤(E)としては、構造中にリン原子を含有し、樹脂および/または硬化物の酸化を防止する機能を有していれば特に限定されず、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイドなどが挙げられる。
上記リン系酸化防止剤(E)は、市販品を用いることもできる。市販されているリン系化合物としては特に限定されず、例えば、HCA、ADEKA製として、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、三光株式会社製としてHCAが好ましい例として挙げられる。
リン系酸化防止剤(E)の配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部、好ましくは0.02〜1.5質量部である。リン系酸化防止剤(E)の配合量が前記下限値より少ないと、硬化物の耐熱透明性が劣るおそれがある。逆に、リン系酸化防止剤(E)の配合量が前記上限値より多いと、硬化時やリフロー試験時の変色の原因となるおそれがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物はシリコーン変性エポキシ樹脂(A)と、多価カルボン酸化合物(B)と、フェノール系酸化防止剤(F)を含有する。
フェノール系酸化防止剤(F)は、構造中にフェノール系水酸基を含有し、樹脂および/または硬化物の酸化を防止する機能を有していれば特に限定されず、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−〔2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'−ブチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノールアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤(F)は、市販品を用いることもできる。市販されているフェノール系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製としてIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX295、IRGANOX3114、IRGANOX1098、IRGANOX1520L、アデカ製としては、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−90、アデカスタブAO−330、住友化学工業製として、SumilizerGA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、Sumilizer GPなどが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(F)の配合量は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜3質量部、好ましくは0.02〜1.5質量部である。フェノール系酸化防止剤(F)の配合量が前記下限値より少ないと、硬化物の耐熱透明性が劣るおそれがある。逆に、フェノール系酸化防止剤(F)の配合量が前記上限値より多いと、硬化時やリフロー試験時の変色の原因となるおそれがある。
<その他の成分>
上記各成分に加えて、慣用の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、劣化防止剤、蛍光体、熱可塑剤、希釈剤などを必要に応じて併用しても差し支えない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分および必要により各種の添加剤を配合して、溶解または溶融混合することで製造することができる。溶融混合は、公知の方法でよく、例えば、上記の成分をリアクターに仕込み、バッチ式にて溶融混合してもよく、また上記の各成分をニーダーや熱三本ロールなどの混練機に投入して、連続的にて溶融混合することができる。エポキシ樹脂硬化促進剤(D)は、多価カルボン酸化合物(B)または多価カルボン酸化合物(B)とカルボン酸無水物化合物(C)の混合物である多価カルボン酸組成物に予め加熱溶解混合し、混合の最終段階でシリコーン変性エポキシ樹脂(A)成分等と分散混合することが好ましい。
以下、本発明を合成例、実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら合成例、実施例に限定されるものではない。なお、合成例、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。ここで、部は特に断りのない限り質量部を表す。
○GPC:GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)は下記条件にて測定した。
メーカー:ウォーターズ
カラム:SHODEX GPC LF−G(ガードカラム)、KF−603、KF−602.5、KF−602、KF−601(2本)
流速:0.4ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
○エポキシ当量:JIS K7236に記載の方法で測定した。
○官能基当量:以下の方法により測定した。
多価カルボン酸組成物を約0.15g秤量し、メタノール(試薬特級)40mlで溶解したのち、20〜28℃で10分間撹拌し、測定サンプルとした。測定サンプルを、京都電子工業製滴定装置AT−610を使用し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて滴定し、酸価として得られた値を官能基当量として算出した。
[合成例1]SiH基を有するオルガノポリシロキサン1の合成
フェニルトリメトキシシラン(1mоl、198.44g)、アセトニトリル30
gを混合し、内温を10℃以下に冷却した。そして濃硫酸16gを30分かけて滴下し、
その後、水81gを1時間かけて滴下した。次に1,1,3,3−テトラメチル−1,3
−ジシロキサン(1.5mоl、201.48g)を30分かけて滴下し、終夜攪拌した
。廃酸分離した後、トルエン500gを添加し、熱水で3回、熱純水で2回洗浄した。得
られたトルエン溶液を減圧蒸留することにより、下記式(8)で示される化合物を主成分とするオルガノポリシロキサン1を得た。得られたオルガノポリシロキサン1の純度は97%であった(GPCの分子量分布における主成分のピーク面積より算出)
[合成例2]SiH基を有するオルガノポリシロキサン2の合成
ジフェニルジメトキシシラン(1mоl、244.36g)、アセトニトリル10gを混合し、内温を10℃以下に冷却した。そして硫酸19gを30分かけて滴下し、その後、水43gを1時間かけて滴下した。次に1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサン(3mоl、402.96g)を30分かけて滴下し、終夜攪拌した。廃酸分離した後、トルエン500gを添加し、熱水で3回、熱純水で2回洗浄した。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することにより、下記式(9)で示される化合物を主成分とするオルガノポリシロキサン2を得た。得られたオルガノポリシロキサン2の純度は97%であった(GPCの分子量分布における主成分のピーク面積より算出)
[合成例3]SiH基を有するオルガノポリシロキサン3の合成
ジフェニルジメトキシシラン(1.0mоl、244.36g)、アセトニトリル7gを混合し、内温を10℃以下に冷却した。そして硫酸14gを30分かけて滴下し、その後、水43gを1時間かけて滴下した。次に1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジシロキサン(0.75mоl、100.73g)を30分かけて滴下し、終夜攪拌した。廃酸分離した後、トルエン500gを添加し、熱水で3回、熱純水で2回洗浄した。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することにより、下記式(10)で示される化合物を主成分とするオルガノポリシロキサン3を得た。
[合成例4]シリコーン変性エポキシ樹脂(1)の合成
2Lのセパラブルフラスコに0.5質量%塩化白金酸トルエン溶液0.38g、トルエン200g、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(3.6mоl、447g、)を入れ、攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、上記で得られたオルガノポリシロキサン1(1mоl、330.76g)を1時間かけて滴下し、100℃で2時間反応させた。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することで下記化合物(11)を主成分とするシリコーン変性エポキシ樹脂(A−1)を得た。シリコーン変性エポキシ樹脂(A−1)のエポキシ当量は237g/eqであった。
[合成例5]シリコーン変性エポキシ樹脂(2)の合成
2Lのセパラブルフラスコに0.5質量%塩化白金酸トルエン溶液0.26g、トルエン200g、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(2.4mоl、298.03g、)を入れ、攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、上記で得られたオルガノポリシロキサン2(1mоl、332.61g)を1時間かけて滴下し、100℃で2時間反応させた。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することで下記化合物(12)を主成分とするシリコーン変性エポキシ樹脂(A−2)を得た。シリコーン変性エポキシ樹脂(A−2)のエポキシ当量は296g/eqであった。
[合成例6]シリコーン変性エポキシ樹脂(3)の合成
2Lのセパラブルフラスコに0.5質量%塩化白金酸トルエン溶液0.78g、トルエン200g、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(2.4mоl、298.03g、)を入れ、攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、上記で得られたオルガノポリシロキサン3(1mоl、530.91g)を1時間かけて滴下し、100℃で2時間反応させた。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することで下記化合物(13)を主成分とするシリコーン変性エポキシ樹脂(A−3)を得た。シリコーン変性エポキシ樹脂(A−3)のエポキシ当量は400g/eqであった。
[合成例7]シリコーン変性エポキシ樹脂(4)の合成
2Lのセパラブルフラスコに0.5質量%塩化白金酸トルエン溶液1.68g、トルエン200g、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(2.4mоl、596.06g)を入れ、攪拌した後、内温を80℃まで上昇させた。その後、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン(1mоl、240.51g)を1時間かけて滴下し、100℃で2時間反応させた。得られたトルエン溶液を減圧蒸留することで下記化合物(14)を主成分とするシリコーン変性エポキシ樹脂(A−4)を得た。シリコーン変性エポキシ樹脂(A−4)のエポキシ当量は200g/eqであった。
[合成例8][多価カルボン酸化合物と酸無水物化合物の混合物の合成(1)]
ガラス製500mlセパラブルフラスコに、窒素パージを施しながらイソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)43.9g、リカシッドMH−T(四国化成工業製 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)213.4gを仕込み、ジムロートコンデンサ、撹拌装置、温度計を設置し、オイルバスにフラスコを浸した。オイルバスを加熱し、内温を65℃に保ち2時間反応させた後、70℃で1時間、75℃で1.5時間、80℃で1.5時間反応させた。GPCでイソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)のピーク1面積%以下を確認し、多価カルボン酸とカルボン酸無水物化合物の混合物である多価カルボン酸組成物(C−1)257gが得られた。得られた混合物は無色透明の液状であり、GPCによる純度は下記式(15)で表される多価カルボン酸が58.2面積%、下記式(16)で表される4−メチルヘキサヒドロフタル酸が0.8面積%、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物が40.7面積%であった。外観は無色透明液体であった。また官能基当量は188.3g/eqであった。
[合成例9][多価カルボン酸化合物と酸無水物化合物の混合物の合成(2)]
ガラス製500mlセパラブルフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール41.2g、リカシッドMH−T(四国化成工業製 4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)182.5gを仕込み、ジムロートコンデンサ、撹拌装置、温度計を設置し、オイルバスにフラスコを浸した。オイルバスを加熱し、内温を40℃に保ち2時間反応させた後、50℃で3時間、60℃で1.5時間反応させた。GPCでトリシクロデカンジメタノールのピーク1面積%以下を確認し、多価カルボン酸とカルボン酸無水物化合物の混合物である多価カルボン酸組成物(C−3)223gが得られた。得られた混合物は無色透明の液状であり、GPCによる純度は下記式(17)で表される多価カルボン酸が59.9面積%、4−メチルヘキサヒドロフタル酸が0.7面積%、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物が39.4面積%であった。外観は無色透明液体であった。また官能基当量は190g/eqであった。
[合成例10]
[硬化剤として使用した多価カルボン酸樹脂と酸無水物化合物の混合物の合成(3)]
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール15g、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH)70g、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸-1,2-無水物(三菱ガス化学製、H−TMAn)15gを加え、40℃で3時間反応後、70℃で1時間加熱撹拌を行った。GPCによりトリシクロデカンジメタノールの1面積%以下を確認し、多価カルボン酸樹脂とカルボン酸無水物化合物の混合物(C−3)が100g得られた。得られた無色の液状樹脂であり、GPCによる純度は下記式(18)で表される多価カルボン酸樹脂を37面積%、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸-1,2-無水物が11面積%、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物が52面積%であった。また、官能基当量は171g/eq.であった。
−組成物の調製−
下記表1に示す配合(質量部)で樹脂組成物を調製した。これらの表中の各成分は以下のとおりである。また、表中、空欄は「0」を意味する。
(D)硬化促進剤:第四級ホスホニウム塩(サンアプロ株式会社製、U−CAT5003)
(E)リン系酸化防止剤:イソデシルジフェニルホスファイト(株式会社ADEKA製、アデカスタブ135A)
(F)フェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]((株)ADEKA製、アデカスタブAO−60)
−組成物及び硬化物の特性評価−
得られた組成物及び硬化物の特性評価を以下の方法で行なった。硬化は、組成物を100℃で1時間、次いで150℃で4時間加熱して行なった。結果を表1に示す。
(1)粘度
東機産業製B型回転粘度計(製品名:TVB−15M)にて、23℃で測定した。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率
80mm×10mm×4mmの棒状硬化物を作製し、島津製作所製のオートグラフ(製品名:AG−IS)にてJIS K7171に準拠して測定した。
(3)耐熱性
1mm厚のシート状硬化物の、波長450nmにおける光透過率(T0)を分光光度計U−4100(日立ハイテック社製)にて測定した。該硬化物を、150℃×500時間加熱した後の光透過率(T1)を同様にして測定し、T1/T0(%)を求めた。
(4)水蒸気透過率
厚さ0.5mmを有する各硬化物の水蒸気透過率をJIS K 7129に準拠して測定した。
(5)硬度
JIS K6301に準拠して棒状硬化物について測定した(タイプD)。
表1の結果から明らかなように実施例1〜3の組成物は強度、耐熱性、低ガス透過性に優れる。一方、比較例の組成物は低ガス透過性に優れているものの、強度、耐熱性では劣る。