JP6440254B2 - ゲル化剤 - Google Patents

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本発明は、工業的に製造容易である新規な脂肪酸−アミノ酸ポリオール型ゲル化剤、又は該ゲル化剤の自己集合化して形成される自己集合体、並びに該ゲル化剤又は自己集合体と各種水溶液より構成されるゲルに関する。
ヒドロゲルは水を媒質とするため生体適合性の高いゲルとして有用であり、紙おむつや化粧品、芳香剤の日用品向け用途をはじめとして、幅広い分野で使用されている。
従来型のヒドロゲルとしては、高分子鎖が架橋されて3次元網目構造を形成し、これが水などの媒体間と非共有結合を形成して水を保持し、膨潤することにより形成される高分子ゲルが挙げられる。この高分子ゲルの物性研究並びに用途開発は、アガロースなどの多糖類やタンパク質から形成される天然高分子ゲルや、アクリルアミドゲルなどの高分子鎖間を化学共有結合にて架橋した合成高分子ゲルにおいて数多くなされている。
近年、上述の高分子化合物からなるゲルだけでなく、比較的低分子量の有機化合物の自己集合化からなるヒドロゲルが見出され、種々検討されている。
低分子化合物の自己集合化によるゲル形成は、当初ランダムな状態にある物質(低分子化合物)群において、適切な外部条件(媒体中)下で、物質間の非共有結合性相互作用等により、物質群が方向性をもちつつ自発的に分子会合することによりマクロな分子集合体を形成し、それらがネットワークを形成し、周囲の溶媒を保持し、膨潤することによって起こると説明されている。この分子会合(自己集合化)の駆動力としては、比較的結合力の弱い水素結合の作用と、水素結合よりもさらに結合力の弱いファンデルワールス(van der Waals)相互作用(非水素結合)によるものが挙げられている。
これまでに提案されている低分子ゲル化剤の多くは疎水部である長鎖アルキル基と親水性部を組み合わせた両親媒性化合物であり、例えば、親水性部がアミノ酸のもの[非特許文献1]、ペプチドのもの[特許文献1、2]、単多糖類[非特許文献2〜4]又はポリオール[非特許文献5]であるものが挙げられる。また、バリンにより構成されたペプチドがβ−シート構造を容易に取ることを利用した低分子ゲル化剤[非特許文献6]も提案されている。
こうした低分子ヒドロゲル化剤は、該ヒドロゲル化剤と媒体である水とをおよそ100℃の温度条件にて加熱撹拌して、ゲル化剤を水に溶解・分散させた後、この溶液を室温に静置することにより、ヒドロゲルを形成することができる。
本発明の目的は、化粧品や医薬製剤に用いられるような安全で汎用性の高い高級脂肪酸、アミノ酸並びにポリオールを用いてなり、低温〜室温にて2段階反応により安価で容易に製造できることから工業化可能であり、少量添加であってもゲルを形成させる高いゲル化能を有する脂肪酸−アミノ酸ポリオール誘導体からなるゲル化剤を提供することである。
特に本発明は酸性からアルカリ性までの大変広い液性範囲においてゲルを形成でき、さらに無機塩が溶解した水溶液であっても、少量の添加でゲルを形成できる高いゲル化能を有し、また得られたゲルにチキソトロピー性を付与できるゲル化剤を提供することにある。
本発明は、第1観点として、式(1)
(式中、Rは不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、nは1乃至10を表し、mは1又は2を表す。)
で表される構造を有するアルキルアミド−D−グルカミンおよびアルケニルアミド−D−グルカミンからなる群から選択される少なくとも一種又はその薬学的に使用可能な塩からなることを特徴とするゲル化剤に関する。
第2観点として、R−(C=O)−基がパルミトイル基又はステアロイル基であり、R及びRが水素原子であり、nが1又は2であり、mが1である、請求項1に記載のゲル化剤に関する。
第3観点として、R−(C=O)−基がオレオイル基であり、R及びRが水素原子であり、nが1乃至3であり、mが1又は2である、請求項1に記載のゲル化剤に関する。
第4観点として、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一つに記載のゲル化剤と、水、アルコール、水溶液、アルコール溶液、親水性有機溶液又は疎水性有機溶液よりなるゲルに関する。
第5観点として、チキソトロピー性を発現する、第4観点に記載のゲルに関する。
本発明のゲル化剤は、化粧品や医薬品の添加剤として利用できる高級脂肪酸、アミノ酸誘導体及びポリオールより構成されるため生体安全性が高く、しかも二段階の低温乃至室温下における反応により容易にかつ大量に合成できるため、経済的にも優れた低分子型ゲル化剤である。
さらに本発明のゲル化剤は、例えば従来提案されている合成高分子型のゲルを形成時に必要とされた架橋剤等を用いずに、水をゲル化させてゲルを形成することができるため、得られるヒドロゲルにおいて未反応の架橋剤などの未反応物質の残存といった問題が起こらない。しかもゲル化剤は、3質量%程度の添加量にてヒドロゲルを形成でき、環境や生体内で取り込まれた際に負荷が少ない。
また本発明のゲル化剤は、酸性領域からアルカリ性領域までに至る広い液性範囲においてゲルを形成でき、無機塩等が溶け込んだ水溶液においてもゲルを形成することができる。特に、細胞培養の基材や医用材料、或いは化粧品用材料等において要求される高い安全性の観点から、中性領域においてゲル形成能を有する本発明のゲル化剤は、上記用途において非常に有用である。
さらに本発明のゲル化剤は、チキソトロピー性を発現するゲルを形成できる。
また本発明の自己集合体は、前記ゲル化剤が疎水性基を中心として自己集合する際、その最も外側(すなわち自己集合体表面)にポリオール部が位置することになるため、生体内に取り込まれた際、生体細胞と拒絶反応を起こしにくく、細胞接着性にも優れる。このため、医療用の徐放性担体や吸着剤、再生医療用足場材などへの応用が期待される。
上記用途のほか、食品工業、農林業、化粧品分野、繊維工業における安定剤、分散剤、湿潤剤として、金属や導電性物質をドープしたナノ部品として電子・情報分野において、さらにはフィルター用材料や導電性材料としても有用である。
そして本発明のゲルは、前述したように酸性領域からアルカリ性領域までの広い液性範囲に亘って、特に中性条件下でも安定にゲル構造を保つことができるため、細胞培養等の生化学向け材料や医用材料用途に好適である。
また本発明のゲルは、チキソトロピー性を発現できる。
また本発明のゲルは、上述のように比較的少量のゲル化剤の添加により得ることができるため、生体面・環境面の何れにおいても安全性の高いゲルといえる。
さらに上述のように、低分子化合物である脂肪酸−アミノ酸ポリオール誘導体から得られたゲルは、ゲル化剤の構成要素が天然物由来あるいは天然物と親和性の高い化合物であるため、外部環境中で、例えば土中で使用する場合、土壌細菌などによって容易に分解されること、また生体内で使用する場合には代謝酵素によって容易に分解されることが期待でき、環境・生体に対する負荷が少ないと考えられる。
図1は実施例1における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のゲル化試験の放冷後の各サンプル管の写真である[(a)PG−G水溶液のゲル化テスト、(b)PG2−G水溶液のゲル化テスト、(c)SG−G水溶液のゲル化テスト、(d)OG−G水溶液のゲル化テスト、(e)OG2−G水溶液のゲル化テスト、(f)OG3−G水溶液のゲル化テスト、(g)OA−G水溶液のゲル化テスト]。 図2は実施例2における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の各種水溶液[シュウ酸緩衝液(pH=1.68)、リン酸緩衝液(pH=6.86)、炭酸緩衝液(pH=10.11)、および1M塩化ナトリウム水溶液)]の放冷後の各サンプル管の写真である[(a)PG−G水溶液のゲル化テスト、(b)PG2−G水溶液のゲル化テスト、(c)SG−G水溶液のゲル化テスト、(d)OG−G水溶液のゲル化テスト、(e)OG2−G水溶液のゲル化テスト、(f)OG3−G水溶液のゲル化テスト、(g)OA−G水溶液のゲル化テスト]。 図3は実施例3における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(PG−G 0.5wt%、PG2−G 3.0wt%、SG−G 3.0wt%)のゾル−ゲル転移温度ならびにゲル−ゾル転移温度を示差走査熱量計測定結果である。 図4は実施例3における、オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(OG−G 3.0wt%、OG2−G 2.0wt%、OG3−G 2.0wt%、OA−G 3.0wt%)のゾル−ゲル転移温度ならびにゲル−ゾル転移温度を示差走査熱量計測定結果である。 図5は実施例4における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のチキソトロピー性試験結果の写真である[(a)PG−G 1wt%、(b)PG2−G 3wt%]。 図6は実施例4における、オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG3−G 2wt%)のチキソトロピー性試験結果の写真である。 図7は実施例5における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(PG−G 0.5wt%、PG2−G 3.0wt%、SG−G 3.0wt%)の(a)歪依存性および(b)周波数依存性の粘弾性特性評価結果を示す図である。 図8は実施例5における、オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(OG−G 3.0wt%、OG2−G 2.0wt%、OG3−G 2.0wt%、OA−G 3.0wt%)の(a)歪依存性および(b)周波数依存性の粘弾性特性評価結果を示す図である。 図9は実施例6における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(PG−G 0.5wt%、PG2−G 3.0wt%、SG−G 3.0wt%)のレオメータによるチキソトロピー性評価結果を示す図である。 図10は実施例6における、オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル(OG−G 3.0wt%、OG2−G 2.0wt%、OG3−G 2.0wt%、OA−G 3.0wt%)のレオメータによるチキソトロピー性評価結果を示す図である。 図11は実施例7における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルのキセロゲル(最低ゲル化濃度のゲルより調製)の走査型電子顕微鏡(SEM)像の写真を示す図である[(a)および(b)PG−G 0.5wt%キセロゲル、(c)および(d)PG2−G 3.0wt%キセロゲル、(e)および(f)SG−G 3.0wt%キセロゲル]。 図12は実施例7における、オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルのキセロゲル(最低ゲル化濃度のゲルより調製)の走査型電子顕微鏡(SEM)像の写真を示す図である[(a)および(b)OG−G 3.0wt%キセロゲル、(c)および(d)OG2−G 2.0wt%キセロゲル、(e)および(f)OG3−G 2.0wt%キセロゲル、(g)および(h)OA−G 3.0wt%キセロゲル]。 図13は実施例8における、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルおよびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルおよび対応するゲルの結晶サンプル(キセロゲル)についてのX線回折測定結果を示す図である[(a)ヒドロゲルサンプル(PG−G 0.5wt%、PG2−G 3.0wt%、SG−G 3.0wt%)、(b)結晶サンプル(PG−G 0.5wt%、PG2−G 3.0wt%、SG−G 3.0wt%)、(c)ヒドロゲルサンプル(OG−G 3.0wt%、OG2−G 2.0wt%、OG3−G 2.0wt%、OA−G 3.0wt%)、(d)結晶サンプル(OG−G 3.0wt%、OG2−G 2.0wt%、OG3−G 2.0wt%、OA−G 3.0wt%)]。 図14は、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)の分子モデル(分子長はChemDraw3Dにより算出)を示す図である。 図15は、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の推定され得るパッキング構造を示す図である(上図:PG−G、中図:OG−G、下図:OG3−G)。 図16は、水、アルコール、多価アルコール、親水性有機溶剤中における本発明のゲル化剤の自己集合化及びゲル化の概念図である。 図17は疎水性有機溶剤中における本発明のゲル化剤の自己集合化及びゲル化の概念図である。 図18は、アルコール、多価アルコール、親水性有機溶剤中における本発明のゲル化剤の自己集合化(ラメラ状の二次集合体)の概念図である。
[ゲル化剤]
本発明のゲル化剤であるアルキルアミド−D−グルカミンおよびアルケニルアミド−D−グルカミンは、下記式(1)で表される構造を有するアルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体又はその薬学的に使用可能な塩からなり、該アルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体は、脂溶性の高い長鎖を有する高級脂肪酸由来の部分、アミノ酸由来の部分、そしてポリオール(D−グルカミン)由来の部分より構成される。
上記式(1)において、脂肪酸由来の部分に含まれるRは、不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表す。
上記R及び隣接するカルボニル基(−(C=O)−)で構成される脂質部(アシル基)の具体例としては、ラウロイル基、ドデシルカルボニル基、ミリストイル基、テトラデシルカルボニル基、パルミトイル基、マルガロイル基、オレオイル基、エライドイル基、リノレオイル基、ステアロイル基、バクセノイル基、オクタデシルカルボニル基、アラキドイル基、エイコシルカルボニル基、ベヘノイル基、エルカノイル基、ドコシルカルボニル基、リグノセイル基、ネルボノイル基等を挙げることができ、特に好ましいものとして、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、マルガロイル基、ステアロイル基、オレオイル基、エライドイル基及びベヘノイル基が挙げられ、特にパルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基が挙げられる。
上記式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表す。
上記炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基とは、主鎖の炭素原子数が1乃至4であり、かつ炭素原子数1若しくは2の分岐鎖を有し得るアルキル基を意味し、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基などが挙げられる。
上記R及びRは、好ましくは、それぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1の分岐鎖を有し得る炭素原子数1乃至3のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
また上記nは1乃至10を表し、mは1又は2を表す。
中でも、上記R−(C=O)−基がパルミトイル基又はステアロイル基であるとき、R及びRが水素原子であり、nが1又は2であり、mが1である誘導体が好ましい。
また上記R−(C=O)−基がオレオイル基であるとき、R及びRが水素原子であり、nが1乃至3であり、mが1又は2である誘導体が好ましい。
[ゲル化剤より形成される自己集合体]
なお本発明のゲル化剤が、水、アルコール、水溶液、アルコール溶液又は親水性有機溶液中に投入されると、式(1)におけるアミノ酸由来の部分並びにポリオール由来の部分が水素結合により分子間非共有結合を形成し、一方、式(1)における脂肪酸由来の部分が疎水的にパッキングするように自己集合化(或いは自己組織化ともいう)し、図16に示すような筒状の二次集合体、すなわちファイバー、或いは図18に示すようなラメラ状の二次集合体が形成される。
参考として図16に本発明のゲル化剤を構成するアルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体の自己集合化及びゲル化の概念図の一例を示す(但し、本発明において、全てのアルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体が図16に示す自己集合化及びゲル化の形態をとっているとは限らない)。
すなわち、該アルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体分子(a)が前述の親水性の溶液中に投入されると、疎水性部位である脂肪酸由来の部分を中心として集合し(b)、自己集合化によりファイバー状の自己集合体(c)を形成する。自己集合体の形状は限定されないが、筒状又は板状の形状が挙げられる。
上記ファイバーが上述の水等の親水性の液体中で形成されると、このファイバーが三次元網目構造を形成し(例えば図16における(d)参照)、網目構造内部に溶媒分子を保持して膨潤することにより、親水性の液体全体がゲル化される。
また、本発明の上記ゲル化剤が、植物油などの疎水性の有機溶液中に投入されると、今度は反対に前記式(1)におけるアミノ酸由来の部分並びにポリオール由来の部分が親水的にパッキングするように自己集合化して中心部となり、脂肪酸由来の部分を表層部にして会合して自己集合化し、筒状の二次集合体、すなわちファイバー状の自己集合体が形成される。
参考として、図17に疎水性有機溶剤中の本発明のゲル化剤の自己集合化及びゲル化の概念図の一例を示す(但し、本発明において、全てのアルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体が図17に示す自己集合化及びゲル化の形態をとるとは限らない)。該アルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体分子(a)は親水性部位であるアミノ酸由来の部分及びポリオール由来の部分を中心として集合し(e)、自己集合化によりファイバー状の自己集合体(f)を形成する。そして上記ファイバーが疎水性有機溶剤の中で形成されると、このファイバーが三次元網目構造を形成し(例えば図17における(g)参照)、網目構造内部に溶媒分子を保持して膨潤することにより、疎水性有機溶剤全体がゲル化される。
[ゲル]
前述したように、上記自己集合体が水、アルコール、水溶液、アルコール溶液又は親水性有機溶液等の水性媒体中で形成されると、この自己集合体が三次元網目構造を形成し(例えば図16における(d)参照)、網目構造内部に溶媒分子を保持して膨潤することにより、水性媒体全体がゲル化し、ヒドロゲルが形成される。
また、上記自己集合体が植物油(疎水性有機溶液)などの疎水性媒体中で形成されると、この自己集合体が同様に三次元網目構造を形成しさらに、網目構造内部に溶媒分子を保持して膨潤することにより、疎水性媒体全体がゲル化し、ゲルが形成される。
なお本発明は、前記ゲル化剤である式(1)で表されるアルキロイル又はアルケニロイル又はアルカジエニロイル−アミノ酸ポリオール誘導体又はその薬学的に使用可能な塩を含有するゲル、並びに、該ゲル化剤を含み、チキソトロピー性を発現するゲルも対象とする。
上記水性媒体は、ゲル化剤の自己集合化やゲル化を妨げるものでなければ特に限定されないが、好ましい具体例として、水又は水に無機塩又は有機塩を溶解させた水溶液(本明細書において水溶液と称する。)、アルコール又は水とアルコールの混合溶液(本明細書においてアルコール溶液と称する。)、水と親水性有機溶媒の混合溶液(本明細書において親水性有機溶液と称する。)を用いることができる。
前記アルコールは、好ましくは水に自由に溶解する水溶性アルコールであり、より好ましくは炭素原子数1乃至6のアルコール、多価アルコール、高級アルコール、グリセライ
ド類が挙げられる。
具体的には、炭素原子数1乃至6のアルコールとしてはメタノール、エタノール、2−プロパノール又はi−ブタノール等;多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等;高級アルコールとしてはオクチルドデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等;グリセライド類としてはトリオクタノイン、トリ(カプリルカプリル酸)グリセリル、ステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
前記親水性有機溶媒とはアルコール以外の有機溶媒であって、かつ水に任意の割合で溶解する有機溶媒を意味する。用いる親水性有機溶媒の例としては、アセトン又はジオキサンなどが挙げられる。
前記無機塩又は有機塩は、複数種を加えてもよいが、好ましくは1又は2種である。塩を2種類加えることで、溶液が緩衝能をもつことも望ましい。
好ましい無機塩の例としては無機塩化物、無機シュウ酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、無機リン酸塩及び無機リン酸水素塩が挙げられる。より好ましくは、塩化ナトリウム、四シュウ酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウムであり、さらに好ましくは塩化ナトリウム、四シュウ酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウムである。
又、好ましい有機塩の例としては、有機アミンの塩酸塩若しくは有機アミン酢酸塩が挙げられる。より好ましくはエチレンジアミン塩酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩である。
上記疎水性媒体は、ゲル化剤の自己集合化やゲル化を妨げるものでなければ特に限定されないが、好ましい具体例として、植物油、エステル類及び炭化水素類からなる群から選択される少なくとも一種の疎水性有機溶媒の溶液を用いることができる。
上記疎水性媒体の好ましい具体例としては、例えばオリーブ油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油又はヒマワリ油等の植物油;オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピル等のエステル類;ミネラルオイル又は水添ポリイソブテン等の炭化水素類が挙げられる。
なお本発明において、これら疎水性媒体を総称して疎水性有機溶液と称する。
以上のように、本発明のゲル化剤によって中性領域においても安定なゲルを形成することができる。また天然由来物質や安全性のある物質を原料とした低分子化合物である脂肪酸−アミノ酸ポリオールからなるゲル化剤であるため、ゲル化剤及びそれから得られるゲルとともに環境・生体内における分解が期待され、生体適合性の高いゲル化剤及びゲルを得ることができるものと考えられる。
このため、本発明のゲル化剤及びそれから得られるゲルは、細胞培養基材、細胞やタンパク質などの生体分子保存材、外用基材、医療用材料、生化学用材料、化粧品材料、食品用材料、コンタクトレンズ、紙おむつ、人工アクチュエーター、乾燥地農業用材、など様々な分野における材料に使用することができる。また、酵素などのバイオリアクター担体として、研究、医療、分析、各種産業に幅広く利用することができる。
また、本発明のゲル化剤は、幅広いpH領域の種々の水性媒体に投入した際にヒドロゲルを形成することから、前述の研究、医療、分析、各種産業における応用において、幅広い条件での使用が可能になるものと考えられる。
しかも本発明のゲルは低分子化合物(脂肪酸−アミノ酸ポリオール誘導体)によって形
成されたゲルであり、該化合物の設定によって、例えば外部刺激応答性によりゾル−ゲル転換するゲルを形成できるなど、高分子鎖の修飾や共重合反応の実施と必要せずとも、様々な機能を容易に付加することが可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下の製造例(合成例)および実施例で使用した試薬は東京化成工業(株)、溶媒は和光純薬工業(株)より入手し、そのまま使用した。また水(純水)はElix UV3 Milli−Q純水製造装置(日本ミリポア(株)製)により精製した。
以下に各種測定及び分析に用いた装置及び条件を示す。
(1)分子構造同定
H−NMRおよび13C−NMRスペクトル:AVANCE500(500MHz、ブルカーバイオスピン(Bruker Biospin)(株)製)
・質量分析:LC−MSシステム、マスディテクター3100、セパレーションモデュールe2695、UV/visディテクターs2489(日本ウォーターズ(株))
・元素分析:マイクロコーダーJM10((株)ジェイ・サイエンス・ラボ製)
(2)チキソトロピー性試験(ゲルの粉砕とその回復挙動の観察)
・装置:ボルテックスミキサー(ジェニー2)、アズワン(株)製
(3)示差走査熱量測定
・装置:EXSTAR6000 熱分析装置、(株)日立ハイテクサイエンス製
・使用容器:Ag製の密封型試料容器
・昇温速度及び降温速度:2℃/分
・ピークの立ち上がりもしくは立ち下がりの温度を転移温度とした。
(4)レオメータによるゲルの粘弾性評価およびチキソトロピー性評価
・レオメータ 粘弾性測定装置 MCR−301、(株)アントンパール・ジャパン製、・測定条件:測定治具 8mm直径の円形のパラレルプレート、0.50mmギャップ、測定温度25℃、はみ出たゲルは拭き取って測定
・周波数依存性測定:0.01%歪一定で測定
・歪依存性測定:角周波数(1 rad/秒)一定で測定
・チキソトロピー性評価:低せん断(歪振幅 0.01%、周波数 1Hz)と高せん断(0.1秒間でせん断速度 3000秒−1印加)を繰り返し印加して、弾性率の変化を測定
(5)走査型電子顕微鏡写真
・装置:SU−8000、日立ハイテクノロジーズ(株)製
・加速電圧:1.0kV
・サンプル処理:導電性の物質(Pt)によるイオンコーティング処理を行った(10nm)。
(6)X線回折測定
・D8 DISCOVER 多機能薄膜材料評価X線回折装置、ブルカー・エイエックスエス(株)製
・CuKα線使用、26℃で測定、1mm直径のキャピラリーガラスにサンプルを入れて測定
[製造例1:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の合成]
<合成法1:アルキロイル−アミノ酸誘導体およびオレオイル−アミノ酸誘導体の合成>
アルキロイル−アミノ酸誘導体(パルミトイル−アミノ酸誘導体またはステアロイルアミノ酸誘導体)およびオレオイル−アミノ酸誘導体を、非特許文献7に示されている方法に従って行った(下記[反応式1]参照)。
アルキロイルクロリド(1.00モル量)またはオレオイルクロリド(1.00モル量)のテトラヒドロフラン(THF)20ml混合液を準備した。これを、氷浴にて0℃にした下記反応式1に示す種々のアミノ酸誘導体(1.50モル量)の2M水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液40ml混合液に滴下し、引き続いて1時間そのまま氷浴にて反応させ、その後12時間室温にて反応させた。水10mlを加えた後、3M塩化水素(HCl)水溶液20mlを加え、pHを2以下にした。析出物をろ取、水洗し、真空乾燥した。精製はメタノールからの再結晶により行った。
以下に各種アミノ酸誘導体を用いたアルキロイル−アミノ酸誘導体およびオレオイル−アミノ酸誘導体の合成例の詳細を示す。
[合成例1−1:PGの合成]
パルミトイルクロリド(4.00g,13.82mmol)とグリシン(1.57g,20.73mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、PGを得た(白色結晶、2.85g,収率65.8%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.11(s(br),1H)、3.71(d,2H,J=5.7Hz)、2.10-2.18(m,2H)、1.48(m,2H)、1.24(m,24H)、0.86(t,3H,J=6.9Hz).
・質量分析:m/z 計算値C1835NO:313.26
実測値:312.0[M−H]
[合成例1−2:PG2の合成]
パルミトイルクロリド(4.00g,13.82mmol)とグリシルグリシン(2.77g,20.73mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、PG2を得た(白色結晶、2.50g,収率48.8%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.18(t,1H,J=5.4Hz)、7.21(s(br),1H)、3.63(d,2H,J=6.0Hz)、3.24(d,2H,J=4.1Hz)、2.12(m,2H)、1.53(m,2H)、1.24(m,24H)、0.86(t,3HJ=7.3Hz).
・質量分析:m/z 計算値C2038:370.28
実測値:369.1[M−H]
[合成例1−3:SGの合成]
ステアロイルクロリド(4.00g,12.81mmol)とグリシン(1.46g,19.21mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、SGを得た(白色結晶、3.24g,収率74.2%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.09(t,1H,J=5.4Hz)、3.71(d,2H,J=5.7Hz)、2.10(m,2H)、1.48(m,2H)、1.24(s(br),26H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz).
・質量分析:m/z 計算値C2039NO:313.26
実測値:312.0[M−H]
[合成例1−4:OGの合成]
オレオイルクロリド(4.12g,13.29mmol)とグリシン(1.51g,19.94mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、OGを得た(白色結晶、3.45g,収率76.5%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.11(t,1H,J=5.8Hz)、5.33(t,2H,J=4.7Hz)、3.72(d,2H,J=6.0Hz)、2.10(m,2H,J=7.4Hz)、1.99(m,4H)、1.50(m,2H)、1.27(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz).
・質量分析:m/z 計算値C2238NO:339.28
実測値:338.2[M−H]
[合成例1−5:OG2の合成]
オレオイルクロリド(4.12g,13.29mmol)とグリシルグリシン(2.66g,19.94mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、OG2を得た(白色結晶、3.32g,収率63.0%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.14(t,1H,J=5.7Hz)、8.05(t,H,J=5.8Hz)、5.33(t,2H,J=5.2Hz)、3.75(d,2H,J=6.0Hz)、3.73(d,2H,J=6.0Hz)、3.70(d,2H,J=5.7Hz)、2.12(t,2H,J=7.4Hz)、1.99(m,4H)、1.51(m,2H)、1.25(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz).
・質量分析:m/z 計算値C1835NO:396.30
実測値:395.2[M−H]
[合成例1−6:OG3の合成]
オレオイルクロリド(5.00g,16.12mmol)とグリシルグリシン(4.67g,24.18mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、OG3を得た(白色結晶、2.22g,収率37.8%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.20(t,1H,J=6.0Hz)、8.13(t,1H,J=5.7Hz)、8.07(t,1H,J=5.7Hz)、5.33(t,2H,J=5.2Hz)、3.75(d,2H,J=5.7Hz)、3.71(d,2H,J=5.7Hz)、2.12(t,2H,J=7.4Hz)、1.48(m,2H)、1.25(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.9Hz).
・質量分析:m/z 計算値C2341:439.30
実測値:438.3[M−H]
[合成例1−7:OAの合成]
オレオイルクロリド(6.00g,19.34mmol)とβ−アラニン(2.61g
,29.00mmol)を前述の合成法1に従い反応および処理させることで、OAを得た(白色結晶、4.62g,収率67.5%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):7.86(t,1H,J=5.4Hz)、5.33(t,2H,J=4.7Hz)、3.21(q,2H,J=6.6Hz)、2.35(m,2H,J=6.9Hz)、2.00(m,4H)、1.51(m,2H)、1.24(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.9Hz).
・質量分析:m/z 計算値C2139NO:353.29
実測値:352.2[M−H]
<合成法2:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の合成>
前述の合成法1により得たアルキロイル−アミノ誘導体(PG、PG2またはSG:いずれも1.00mol量)またはオレオイル−アミノ酸誘導体(OG、OG2、OG3又はOA:いずれも1.00mol量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt、1.10mmol量)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)20mlの混合溶液に、窒素雰囲気下、0℃で、D−グルカミンおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)(それぞれ1.10mmol量)を加えた(下記[反応式2]参照)。この溶液を氷浴で1時間撹拌した後、室温で12時間撹拌した。DMFを減圧留去し、得られた白色残渣をメタノールで2回再結晶することにより、目的物を精製した。
以下に各種アルキロイル−アミノ酸誘導体およびオレオイル−アミノ酸誘導体を用いた各種アミノ酸−D−グルカミン誘導体の合成例の詳細を示す。
[合成例2−1:PG−Gの合成]
合成例1−1で得られたPG(1.20g,3.83mmol)とD−グルカミン(804mg,4.21mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、PG−Gを得た(白色結晶、1.83g,収率85.8%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):7.99(t,1H,J=5.2Hz)、7.68(t,1H,J=5.2Hz)、4.76(d,1H,J=4.4Hz)、4.47(d,1H,J=5.7Hz)、4.39(d,1H,J=6.3Hz)、4.34(t,1H,J=5.7Hz),4.30(d,1H,J=6.6Hz)、3.66(d,2H,J=5.7Hz)、3.58(m,3H)、3.48(m,1H)、3.40(m,2H)、3.29(m,1H)、3.04(m,1H)、2.12(d,2H,J=7.6Hz)、1.48(m,2H)、1.26(m,24
H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):172.99、169.65、74.40、72.03、70.28、63.81、42.53、42,45、35.68、31.75、29.51、29.47、29.41、29.20、29.16、25.61、22.54、14.39.
・質量分析:m/z 計算値C2448:476.35、実測値:477.35[M+H]
・元素分析:計算値C2448:C,60.48;H,10.15;N,5.88、実測値:C,60.39;H,10.12;N,5.85.
[合成例2−2:PG2−Gの合成]
合成例1−2で得られたPG2(1.00g,2.70mmol)とD−グルカミン(566mg,2.97mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、PG2−Gを得た(白色結晶、636mg,収率44.4%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.10(t,11H,J=5.0Hz)、8.03(t,2H,J=5.4Hz)、7.60(t,2H,J=5.0Hz)、4.79(d,1H,J=3.8Hz)、4.47(d,1H,J=5.4Hz)、4.38(d,1H,J=6.0Hz)、4.34(t,1H,J=5.2Hz)、4.31(d,1H,J=6.3Hz)、3.70(d,2H,J=3.2Hz)、3.59(m,3H)、3.47(m,1H)、3.41(m,2H)、3.32(m,1H)、3.05(m,1H)、2.13(d,2H,J=7.6Hz)、1.49(m,2H)、1.24(m,24H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):173.73、170.21、169.74、72.85、72.45、70.61、64.21、43.03、42.94、36.07、32.15、29.91、29.86、29.81、29.69、29.58、29.55、25.97、22.94、14.80.
・質量分析:m/z 計算値C2651:533.37、実測値:534.37[M+H]
・元素分析:計算値C2651:C,58.51;H,9.63;N,7.78、実測値:C,58.29;H,9.57;N,7.82.
[合成例2−3:SG−Gの合成]
合成例1−3で得られたSG(1.50g,4.39mmol)とD−グルカミン(921mg,4.83mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、SG−Gを得た(白色結晶、1.82g,収率82.0%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):7.99(t,1H,J=5.4Hz)、7.67(t,1H,J=4.9Hz)、4.75(d,1H,J=4.4Hz)、4.46(d,1H,J=5.4Hz)、4.38(d,1H,J=6.3Hz)、4.33(t,1H,J=5.4Hz)、4.27(d,1H,J=6.3Hz)、3.67(d,2H,J=5.7Hz)、3.58(m,3H)、3.48(m,1H)、3.40(m,2H)、3.28(m,1H)、3.05(m,1H)、2.12(d,2H,J=7.6Hz)、1.51(m,2H)、1.25(m,28H)、0.86(t,3H,J=7.3Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):173.41、170.08、72.80、72.45、70.69、64.22、42.93、42.84、36.08、32.15、29.90、29.86、29.82、29.70、29.60、29.55、26.01、22.94、14.79.
・質量分析:m/z 計算値C2652:504.38、実測値:505.38[M+H]
・元素分析:計算値C2652:C,61.87;H,10.38;N,5.55、実測値:C,61.80;H,10.31;N,5.51.
[合成例2−4:OG−Gの合成]
合成例1−4で得られたOG(1.50g,4.78mmol)とD−グルカミン(1.00g,5.26mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、OG−Gを得た(白色結晶、1.72g,収率71.4%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.00(t,1H,J=5.7Hz)、7.70(t,1H,J=5.5Hz)、5.31(t,2H,J=5.5Hz)、4.78(d,1H,J=4.7Hz)、4.50(d,1H,J=5.7Hz)、4.40(d,1H,J=6.3Hz)、4.37(t,1H,J=5.4Hz)、4.31(d,1H,J=6.6Hz)、3.71(m,2H,J=5.7Hz)、3.59(m,3H)、3.49(m,1H)、3.38(m,2H)、3.27(m,1H)、3.04(m,1H)、2.11(d,2H,J=7.6Hz)、1.97(m,4H),1.53(m,2H)、1.24(m,20H)、0.85(t,3H,J=6.6Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):173.38、170.10、130.43、130.38、72.82、72.44、70.68、64.21、42.94、42.85、36.08、32.16、30.06、30.00、29.73、29.63、29.56、29.49、27.52、27.46、26.01、22.96、14.72.
・質量分析:m/z 計算値C2650:502.36、実測値:503.37[M+H]
・元素分析:計算値C2650:C,62.12;H,10.03;N,5.57、実測値:C,62.07;H,10.01;N,5.52.
[合成例2−5:OG2−Gの合成]
合成例1−5で得られたOG2(1.50g,4.05mmol)とD−グルカミン(894mg,4.45mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、OG2−Gを得た(白色結晶、1.86g,収率81.9%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.08(m,2H)、7.71(s(br),1H)、5.32(t,2H,J=5.4Hz)、4.78(s(br),1H)、4.50(d,1H,J=5.4Hz)、4.40(d,1H,J=6.0Hz)、4.34(t,1H,J=5.0Hz)、4.29(d,1H,J=6.0Hz)、3.70(m,4H,J=3.5Hz)、3.59(m,3H)、3.49(m,1H)、3.42(m,2H)、3.29(m,1H)、3.06(m,1H)、2.15(d,2H,J=7.6Hz)、1.92(m,4H)、1.54(m,2H)、1.25(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.6Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):173.3、169.82、169.36、130.07、130.04、72.43、72.05、70.20、63.79、42.62、42.54、35.65、31.75、29.63、29.57、29.53、29.31、29.20、29.14、29.06、27.10、27.05、25.57、22.54、14.36.
・質量分析:m/z 計算値C2853:559.38、実測値:560.39[M+H]
・元素分析:計算値C2853:C,60.08;H,9.54;N,7.51、実測値:C,59.78;H,9.48;N,7.41.
[合成例2−6:OG3−Gの合成]
合成例1−6で得られたOG3(1.00g,2.20mmol)とD−グルカミン(
462mg,2.42mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、OG−Gを得た(白色結晶、945mg,収率69.5%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):8.13(t,1H,J=5.7Hz)、8.10(t,1H,J=5.7Hz)、8.02(t,1H,J=5.7Hz)、7.70(t,1H,J=5.4Hz)、5.33(t,2H,J=5.7Hz)、4.77(d,1H,J=4.4Hz)、4.50(d,1H,J=5.4Hz)、4.41(d,1H,J=6.0Hz)、4.36(t,1H,J=5.4Hz)、4.29(d,1H,J=6.6Hz)、3.72(td,6H,J=9.9Hz,J=5.6Hz)、3.59(m,3H)、3.48(m,1H)、3.42(m,2H)、3.29(m,1H)、3.06(m,1H)、2.16(d,2H,J=7.3Hz)、1.95(m,4H)、1.52(m,2H)、1.24(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.9Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):173.19、170.13、169.55、169.31、130.08、130.05、72.43、72.02、70.21、63.79、42.54、35.64、31.74、29.62、29.57、29.52、29.30、29.20、29.13、29.06、27.10、27.05、25.57、22.54、14.37.
・質量分析:m/z 計算値C3056:616.40、実測値:617.4[M+H]
・元素分析:計算値C3056:C,58.42;H,9.15;N,9.08、実測値:C,58.56;H,9.18;N,8.99.
[合成例2−7:OA−Gの合成]
合成例1−7で得られたOA(1.50g,4.08mmol)とD−グルカミン(856mg,4.49mmol)を前述の合成法2に従い反応および処理させることで、OA−Gを得た(白色結晶、1.59g,収率72.5%)。
H−NMR(500MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):7.81(m,1H)、7.70(m,1H)、5.33(t,2H,J=5.0Hz),4.74(s(br)、1H)、4.47(d,1H,J=5.0Hz)、4.37(d,1H,J=5.7Hz)、4.33(s(br),1H)、4.22(d,1H,J=6.3Hz)、3.57(m,3H)、3.49(m,1H)、3.40(m,2H)、3.22(m,3H)、3.05(m,1H)、2.24(d,2H,J=7.1Hz)、2.00(m,6H)、1.48(m,2H)、1.27(m,20H)、0.86(t,3H,J=6.6Hz).
13C−NMR(125MHz、DMSO−d、TMS、δ、ppm):172.95、171.59、130.48、130.47、73.01、72.61、72.41、70.45、64.23、42.87、36.40、36.24、36.19、32.14、30.02、29.97、29.92、29.70、29.57、29.54、29.46、29.44、27.49、27.45、26.13、22.94、14.77.
・質量分析:m/z 計算値C2752:516.38、実測値:517.37[M+H]
・元素分析:計算値C2752:C,62.76;H,10.14;N,5.42、実測値:C,62.72;H,10.11;N,5.47.
[実施例1:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のヒドロゲル化試験]
4mlサンプル管にアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)と、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導
体あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の添加量が所定の質量パーセント(wt%)となるように水を入れ、110℃で加熱溶解し、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体水溶液を作製した。その後、これら水溶液を室温(およそ25℃)で放冷し、ゲル化を確認した。
なお、放冷後、溶液の流動性が失われて、サンプル管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を「ゲル化」と判断した。このゲル化試験を種々の濃度の溶液について行い、ゲル化に要するアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の最低濃度(wt%)を、最低ゲル化濃度とした。
得られた結果を表1に示す。ゲル化試験の放冷後および時間経過後の各サンプル管の写真を図1[(a)〜(g)]に示す。
表1および図1に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体は水溶媒に対するゲル形成能を有するという結果が確認された。加えて、これらのヒドロゲルは少なくとも半年経過しても離液することなく、また結晶化も認められなかった。
[実施例2:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の各種水溶液に対するゲル化試験]
実施例1と同様の手順にて、各種水溶液(シュウ酸緩衝液(pH=1.68)、リン酸緩衝液(pH=6.86)、炭酸緩衝液(pH=10.11)、および1M塩化ナトリウム水溶液)を用いて、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のゲル化試験を行った。
得られた結果を表2に示す。またゲル化試験の放冷後の各サンプル管の写真を図2[(a)〜(g)]に示す。
表2および図2に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体は幅広いpH領域下ならびに高濃度の塩存在下においてもヒドロゲルを形成することが確認された。加えて、それぞれの混合ゲルは少なくとも半年経過しても離液することなく、また結晶化も認められなかった。
なお、非特許文献8および非特許文献9において、アルキルアミド−D−グルカミド誘導体(ドデシルアミド−D−グルカミドあるいはオクチルアミド−D−グルカミド)のヒドロゲル形成能が報告されているが、非特許文献8に記述があるように、これら低分子ゲル化剤からなるヒドロゲルでは、界面活性剤を添加しないとそれらヒドロゲルは結晶化する傾向にあり、安定なゲルを形成しない。
これに対し、本発明が対象とするアルキルアミド−D−グルカミド誘導体にアミノ酸構造を導入した分子構造の誘導体である本実施例の低分子ヒドロゲル化剤、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体では、実施例1に示すとおり、水溶媒において安定なゲルを形成することが示された。さらに実施例2に示すとおり、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体は様々な水溶媒において安定なゲルを形成することが示された。
このように、アルキルアミド−D−グルカミド誘導体にアミノ酸構造を導入することにより、ゲル状態を保持するために界面活性剤の添加が必要な従来提案されたアルキルアミド−D−グルカミド誘導体と比較して、ゲル形成能に優れる低分子ゲル化剤を得ることができた。
[実施例3:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を用いて得られるヒドロゲルの熱挙動]
前述の製造例1で得られたアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)から、実施例1と同様の手順にてアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の水溶液を調製し、その後室温で放冷してヒドロゲルを形成させた(各誘導体の濃度:表3参照)。
次に得られた各ヒドロゲルについて、ゾル−ゲル転移温度ならびにゲル−ゾル転移温度を示差走査熱量計により測定した。得られた結果を表3、図3(アルキロイル−アミノ酸
D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルの熱挙動)、および図4(オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルの熱挙動)に示す。
表3、図3、および図4に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を低分子ヒドロゲル化剤として用いたヒドロゲルは、ほぼ同様な熱量の出入りを伴う熱転移を示すことが確認され、これらヒドロゲルが可逆的にゾル−ゲル転移するゲルであることが定量的に確認された。
[実施例4:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体からなるヒドロゲルのチキソトロピー性試験]
アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)からなるヒドロゲルのゲル粉砕後の挙動を評価した。
まず、各種アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のヒドロゲルを実施例1と同様の手順にて作製した(各誘導体の濃度:表4参照)。なお、PG−Gは、最低ゲル化濃度(0.5wt%)では弱いヒドロゲルしか形成しなかったので、後述の図5に示すチキソトロピー性試験(写真)は1.0wt%のヒドロゲルを作製し、評価したものである。
次に、サンプル管をボルテックスミキサーにあてて、内部のゲルを10秒間粉砕し、所定時間(1分、5分、60分、90分、12時間、24時間)静置した後、サンプル管を倒置し、ゲルが流れるかどうかを確認した。ゲルが流れなかったものを○、ゲルが流れ落ちる或いは所定時間経過後にゲルと溶媒の二層に分離したままであったものを×として評価した。得られた結果を表4に示す。
また図5にアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の例として、(a)PG−Gおよび(b)PG2−Gの結果、図6にオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の例としてOG3−Gのヒドロゲルのチキソトロピー試験結果を示す。
表4、図5、および図6に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のヒドロゲルは、チキソトロピー性を発現することが確認された。
これまで、前述の非特許文献8および非特許文献9に報告されたようなアミノ酸部分を有していないアルキルアミド−D−グルカミド誘導体では、チキソトロピー性の報告例はない。
このようにアミノ酸部位を適切に分子構造中に導入することで、チキソトロピー性を示すヒドロゲルを形成する低分子ヒドロゲル化剤を得ることができた。
これは、アミノ酸部位導入による水素結合性部位の適切な導入が、粉砕されたゲル内のファイバーが形成するネットワークの回復に関与しているものと推察される。
なお、低分子ゲル化剤を使用するチキソトロピー性のゲルの研究は、非特許文献10および非特許文献11などの総説にまとめられているが、その多くは煩雑なペプチド合成法やカラムクロマトグラフィー等の精製法を使用する報告例である。
これに対し、本発明での目的の低分子ゲル化剤は、簡便かつ温和な反応条件およびメタノール溶液からの再結晶による簡便な精製条件で得られることに特徴がある。さらに本発明の低分子ゲル化剤、すなわちアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体に類する低分子ゲル化剤から得られる新たな効果(チキソトロピー性)についての報告例は無い。
このように本実施例は、本発明のゲル化剤が有する特異な効果を示す結果となった。
[実施例5:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルの粘弾性特性評価]
アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルの粘弾性特性評価を行うことで、ゲル状態が得られていることを確認した。得られた結果を図7(アルキロイル−アミノ酸D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルの粘弾性特性)および図8(オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルの粘弾性特性)に示す。
なお使用したヒドロゲルは、実施例1と同様の手順にて、アルキロイル−アミノ酸−D
−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)の水溶液を調製し、その後室温で放冷してヒドロゲルを形成させた(各誘導体の濃度:最低ゲル化濃度、段落[0011]に記載の[図面の簡単な説明]における図7及び図8に関する記載も参照)。
図7(b)および図8(b)に示す周波数依存性測定の結果によれば、いずれのヒドロゲルも周波数に依存せず平坦な貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G″)を示し、かつG′>G″であることから、測定サンプルはゲル状態(固体状態)にあることが確認された。
一方、図7(a)および図8(a)に示す歪依存性測定の結果によれば、歪が増加していくと、平坦な貯蔵弾性率(G′)および損失弾性率(G″)を示しかつG′>G″であったものが、歪み10%前後にて急転しG′<G″となることが確認された。すなわち、この時点にて、サンプルはゲル状態(G′>G″)から液体状態(G′<G″)へと変化することが確認された。このように、ゲル状態のサンプルに歪をかけることでゲル−ゾル転移が生じることが確認された。
[実施例6:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の単独系および混合系のレオメータによるチキソトロピー性評価]
アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルにおいて、周期的な大変形印加によるゲル粉砕前後の弾性率の経時変化をレオメータ測定によりみることで、チキソトロピー性を定量的に評価した。各種アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)のヒドロゲルは実施例1と同様の手順にて作製した(各誘導体の濃度:最低ゲル化濃度、段落[0011]に記載の[図面の簡単な説明]における図9及び図10に関する記載も参照)。得られた結果を図9(アルキロイル−アミノ酸D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルのチキソトロピー性評価結果)および図10(オレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を用いたヒドロゲルのチキソトロピー性評価結果)に示す。
図9および図10に示すようにアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルおよびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルでは、定期的な大変形を加えても、貯蔵弾性率(G′)と損失弾性率(G″)の回復が大きいことが確認された。特に図10に示すようにオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルにおいて、安定した弾性率の回復を観測した。
以上の結果より、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルおよびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルにおいて、特にオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルにおいて、良好なチキソトロピー性が確認された。
[実施例7:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を用いて形成される単独系ゲルの微細構造観察]
ヒドロゲルの微細構造に関する情報を得る目的で、対応するキセロゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。各種アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(PG−G、PG2−G、SG−G)およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体(OG−G、OG2−G、OG3−G、OA−G)のヒドロゲルを実施例1と同様の手順にて作製した(各誘導体の濃度:最低ゲル化濃度、段落[0011]に記載の[図面の簡単な説明]における図11及び図12に関する記載も参照)。こうして得られたヒドロゲルを凍結乾燥させることにより得たキセロゲルの状態をSEMにて観察した。得られた結果
を図11および図12に示す。
図11および図12に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のキセロゲルは、サブマイクロメートル径の繊維状物質のネットワークから構成されていることが確認された。

上述の結果は、非特許文献8および非特許文献9で報告しているアルキルアミド−D−グルカミド誘導体からなるヒドロゲルにおいてもみられた繊維状構造形成に対応する結果である。アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体から構成されるヒドロゲルは、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体あるいはオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体からなる繊維状物質が、高分子ヒドロゲルのようにネットワーク構造を形成しているものであると推察される。
[実施例8:アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルのX線回折測定]
上記実施例7で確認された繊維状物質に関する知見を得るために、前述のアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のヒドロゲルおよび対応するキセロゲルについて、X線回折測定を行った。測定結果を図13に示す。また、ChemDraw3Dにより計算したアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体の分子長を図14に示す。さらにそれぞれの誘導体の推定されうるパッキング構造を図15に示す。
図13に示すように、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル[図13(a)]およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲル[図13(c)]は、キセロゲルサンプル(繊維状物質の結晶サンプル)[図13(b)、(d)]に比べ、同等あるいは短周期で回折を示すことが確認された。
前述の非特許文献8および非特許文献9には、本発明が対象とするアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体に類似した分子構造を有するアルキルアミド−D−グルカミド誘導体は、それらが形成する繊維状物質の中で、ラメラ構造もしくは二分子同士が対となった二分子層を単位としたパッキング構造をとっていると推察されている。
本実施例のアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルでの測定結果において、回折ピークはそれぞれの誘導体の2分子分の分子長より同等あるいは短いことから(図14)、図15(上図)に示すようなアルキル基が相互貫入したパッキング構造をとり、これにより短周期側にピークが生じたものと推察される。またアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体キセロゲルの測定結果において、回折ピークは2分子分の分子長とほぼ同じであることから、ラメラ構造をとっているものと推察される。
また本実施例のオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体ヒドロゲルでの測定結果においても、回折ピークは2分子分の分子長とほぼ同じであることから(図14)、図15(下図)に示すようなラメラ構造をとっているものと推察される。ただし、OG3−GおよびOA−Gにおいては、ラメラ構造の2分子分の長さ以上の長周期において回折が生じているものと推察される。
このように、ヒドロゲルおよびキセロゲルのX線回折測定から、繊維状物質内は結晶性であり、低分子ヒドロゲル化剤がラメラ構造のパッキングをとっていることが示唆された。
上記の実施例7および実施例8の結果より、アルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体のヒドロゲルでは、他の低分子ヒドロゲル化剤からなるヒドロゲルと同様に、結晶性の繊維状物質がネットワークを構成することが示された。
以上の実施例で示したように、従来の界面活性剤を添加しないと良好なヒドロゲルを形
成不可能であったアルキルアミド−D−グルカミド誘導体に対して、適切にアミノ酸を導入したアルキロイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体およびオレオイル−アミノ酸−D−グルカミン誘導体を低分子ヒドロゲル化剤とすることで、結晶化を抑制し、各種水溶液でのヒドロゲル形成が可能となり、しかも該ヒドロゲルにチキソトロピー性を付与でき得ることが示された。
国際公開第2009/005151号パンフレット 国際公開第2009/005152号パンフレット
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Claims (5)

  1. 式(1)
    (式中、Rは不飽和結合を0乃至2個有し得る炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1若しくは2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、nは1乃至10を表し、mは1又は2を表す。)
    で表される構造を有するアルキルアミド−D−グルカミンおよびアルケニルアミド−D−グルカミンからなる群から選択される少なくとも一種又はその薬学的に使用可能な塩からなることを特徴とするゲル化剤。
  2. −(C=O)−基がパルミトイル基又はステアロイル基であり、R及びRが水素原子であり、nが1又は2であり、mが1である、請求項1に記載のゲル化剤。
  3. −(C=O)−基がオレオイル基であり、R及びRが水素原子であり、nが1乃至3であり、mが1又は2である、請求項1に記載のゲル化剤。
  4. 請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のゲル化剤と、水、アルコール、水溶液、アルコール溶液、親水性有機溶液又は疎水性有機溶液よりなるゲル。
  5. チキソトロピー性を発現する、請求項4に記載のゲル。
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